01NHK総合」カテゴリーアーカイブ

「この人が悪い」という結論ありきのテレビ報道は考え直すべき

先日民放のゴールデンタイムから放送されたフジテレビのドキュメンタリーと歩調を合わせたのではないと思いますが、事件としてはよりテレビのワイドショーで報道され、テレビを見ている人たちに「悪女」としてのイメージを植え付けていったテレビの存在を考えさせられる「和歌山カレー事件」で死刑判決を受けた女性の息子さんに密着取材したドキュメンタリーをNHKが放送していたので、事件の違いをはじめ民放とNHKの違いを感じながら見てみました。

この番組はシリーズの中の一本で、別の日には別の事件について事件の周辺にいる人の「涙」を追うような形を取っていますので、フジのドキュメンタリーのように作り込んだものではなく、簡単な現状の説明に終始せざるを得ない感じで、番組もコマーシャルがないとは言え、25分と短いので、改めての復習が必要な題材ではないかと思います。

この「和歌山カレー事件」というのは、北九州の身内殺人が弁護士が精神鑑定を要求して正常な判断ができなかった事を証明しない限り、犯罪によって罪を受けるのは仕方のない明らかな事件であるのに対し、本人の自白がないまま状況証拠のみで死刑判決が出ました。ですから、母親が本当に犯行に及んだのか、刑が確定した現在であってもはっきりとはわからない中で社会生活をし、父母の世話なども行なっているこの息子さんは、他に3人いたお子さんが両親との縁を切って出て行ったのとは違い、様々な困難に突き当たってしまうのです。

長年付き合ってきた彼女の両親に自分の両親の事を打ち明けたところ、娘と結婚するなら自分の両親との関係を絶ってくれと迫られたのですが、彼はそこで自分の両親を切ることができなかったので、彼女との結婚はできなくなりました。もっとも、結婚した後で近所の人にその事がわかってしまったとしたら、実際に事件とは関係のない彼女にも世間の注目が向けられることになり、週刊誌やテレビに狙われたり執拗ないじめに子供があったりする可能性があることも考えると、無理からぬことだと思える部分もあります。だからこそ、特にテレビはあの「和歌山カレー事件」で何を伝えてきたのか、今こそ真剣に考えなければならないと思われます。

今回の番組でも自宅の前にカメラやマイクを持って押しかけたテレビ局の大勢の人間を前にして、ホースで水を撒き散らす母親の表情をカメラがとらえたものをそのまま放送していました。多くの人がふてぶてしい表情でひどいことをする悪女であるという印象を持つには十分の「資料映像」で、このVTRの後でテレビコメンテーターやワイドショーの司会者などは、推定無罪の考え方などないかのごとく、ただこの夫婦のひどい犯罪歴をあげつらえ、この事件の犯人に間違いないという流れで放送していました。

確かに、この夫婦は自分の体を犠牲にすることによってわざと「事故」というものを捻出し、保険会社からの保険金でいい生活をしているということはあったでしょう。「和歌山カレー事件」の動かぬ証拠となった自宅で発見された「ヒ素」についても、ヒ素の入った食事を食べても保険が下りるということから、健康に影響が出ないくらいで症状が出るくらいのヒ素の量について研究していたことが疑われ、この事についてはしっかり裁かれるべきだと私も思います。

しかし、ご近所との仲がおかしくなった場合、引っ越すという手段も考えられる中、単なるいやがらせならそこまで研究していた体調をひどくするにしても致死量までのヒ素を与えないで食べた人の体調をおかしくしてうさ晴らしするというオトシマエの付け方というのも十分あったわけで、自分が行なっていたデータをそのまま生かすには、殺してしまっては意味がないということも十分考えられます。

現実的には日本の裁判所が人の人生を左右する死刑判決を出しているのですからそれなりの合理性は十分あったとは思いますが、母親が逮捕されるまでのテレビのワイドショーではこのような考察を前面に出したことはないと思います。単に名前の後に「容疑者」という言葉を付ければ何を報道してもいいのではなく、常に「やっているとは思うけど万が一やっていなかったらどうなるのか?」という緊張感の中でテレビ報道を行なっていくようでないと、この事件で死刑が執行された後で真犯人だと告白してくる人が表われたらどうするのかという問題が出てきます。

番組ではそこまでの強い想いを息子さんに告白させることはありませんでしたが、番組の題名のように「事件の涙」が本当に息子さんから流れることのないように、テレビの事件報道については当事者だけでなく周辺の人達の運命も変えてしまうことを考えながら慎重にやっていくべきだということは確かでしょう。特に今では自分が何者であるかもわからずに自分の裁判のやり直しを待っている「袴田事件」の袴田巌さんの様子を見るにつけ、その想いが強くなります。

(番組データ)

事件の涙 HumanCrossroads死刑囚の母 息子の選択 毒物カレー事件 NHK総合
12/26 (火) 22:50 ~ 23:15 (25分)
【語り】ミムラ(女優)

(番組内容)

1998年、和歌山市で夏祭りのカレーにヒ素が入れられ、4人が死亡した「毒物カレー事件」。林眞須美死刑囚はいまも一貫して無実を訴え続けている。事件後「カエルの子はカエル」となじられ、人生が一変した息子の孝一さん(仮名・30歳)は、拘置所にいる母と手紙のやりとりを続けながら葛藤の日々を送る。親子の関係を断ち切り、別の道を歩むべきか。それとも、現実を背負って生きるのか。息子の選択を見つめる。


真面目なNHKと不真面目なテレビ東京が訪れた同じ場所とは

所ジョージさんの出演するテレビ番組というのは、まるで枕詞のように「所さん」という言葉が付く番組が多いのが特徴です。この「所さん!大変ですよ」もそうですが、思い付くままに挙げてみると、

「所さんの目がテン!」(日本テレビ)
「所さんお届けものです!」(TBS)
「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」(テレビ東京)
「所さんの世田谷ベース」(BSフジ)

なんて番組が引っ掛かってきました。一通り見てみると、最後の世田谷ベース以外は「所さん」の他に「!」が必ず入っていますし、「笑ってこらえて!」(日本テレビ)には「所さん」の文字が入っていないのが意外でした。基本的には所ジョージさんの人柄に依存して番組を作ってしまおうという意図とも取れてしまいます。今回紹介する「所さん!大変ですよ」も、本来はもっと真面目なドキュメンタリーにしたいところ、視聴者の支持が低いだろうと「所さん!」という題名を付けて視聴者の興味を引き付け、番組は所さんに報告するという形を取りながら堅い内容を柔らかく伝えようとしているように感じます。実に真面目なNHKらしい番組だと言えます。

今回のテーマは温泉で、番組の中では温泉旅館で働く仲居さんが減っていて求人を出しても人が集まらないという問題を提起する中で、前橋市にある「NIPPONおもてなし専門学校」を取材していました。学校の方の話によると、当初は日本人の学生と留学生を合わせた形でやっていこうと思っていたものの、留学生だらけの状況になってしまったとのことでした。

番組ではこうした状況に、日本で生まれた人は、幼い時から生活をしている中でなかなか温泉旅館を利用する機会がなく、旅館の良さを感じないまま一人でビジネスホテルを渡り歩くような旅をしているからではないかと分析されていました。それは裏を返すと、一人で泊まると割高になるなど同じ部屋でも人数によって料金が跳ね上がる温泉旅館のあり方が時代とは一部ずれてしまっているということでもあると思うのですが、番組ではそうした事には触れることなく温泉に関する話題をてんこ盛りに「所さん!これもこれも」という感じでたたみかけていきます。かなり民放の所ジョージさんが出ている番組を意識しているなという感じもします。

ところで、番組で出てきた前橋市の「NIPPONおもてなし専門学校」ですが、以前全く別の番組でその中で行なわれていることや、留学生のアルバイト事情などを紹介していたのを見たことがありました。その番組こそテレビ東京の「YOUは何しに日本へ?」です。その経緯というのは、「YOUはナゼここに?」というコーナーで視聴者から外国人の集まる場所についての情報をもらい、その場所へ行ってみるという企画の中で、その場所がこの専門学校だったという事で男女2人でこの学校で勉強しているという人に密着して紹介していたのでした。

何と言ってもおもてなしの心を教える学校だけに、アルバイトも取材を受けた方は飲食店で行なっていて、夢に向かって日本式のおもてなしの心を真面目に学んでいる様子を見ることができたのですが、同じ場所を取材するにもその番組色の違いに今回は注目してみました。

NHKの取材というのは「温泉」をキーワードにして出てきたキーワードの中で日本の温泉旅館の中にも外国人が進出してくるというような感じのする取り上げ方で、ドキュメンタリー色が強いものだったのに対し、「YOUは何しに日本へ?」の方は、とにかく群馬県前橋市の特定の場所に外国人が集まって来るのはナゼ? という興味から取材をして、改めて外国人達が日本のおもてなし文化というものに興味を持って、その文化を真剣に学びに来ているということを番組を見ている日本人に気付かせてくれるという、ある意味安定した内容をユーモアとともに紹介してくれるといった感じでした。

どちらの方が番組として面白いのかというような意見はそれぞれにあるとは思いますが、「所さん!大変ですよ」の今回の取り上げ方としては、はっきり言って詰め込みすぎのきらいがあるように思います。それも真面目に温泉についての問題をリサーチする中で、あれもこれも所さんに伝えたいと思っての事だろうとは思いますが、一つの項目を伝える時間が短くなるとどうしても見ている方に誤解が生じやすくなりますし、内容を見たことでわかってしまう気になってしまうのがテレビの特質だと言うことになると、NHKには同じ真面目でもじっくりと今回の内容については伝えて欲しかったという気がしました。

個人的な想いとしては、おもてなしを受けるような旅館に泊まるというのは、番組で紹介されていた海外資本に買収された贅を尽くした一泊12万円なんて宿に泊まらないと無理になっていくのではないか? というような所に話を持って行っても欲しくはないのです。

一泊1万円以内の宿やそれより安く泊まれる民宿やとほ宿のような所でも、おもてなしの心を感じて十分に命の洗濯のできる宿はありますし、海外から評価を受けているのはおもてなしの「心」であって金にあかせておもてなしの押し売りをすることではないというところもあると思います。まずは温泉旅館には「一人客をいやがる」「日によって大幅な料金の違いがある」というような現代の日本人旅行客がネットで料金を見ながら予約しずらい所を改善するような旅館についても取り上げて欲しいものです。

(番組データ)

所さん!大変ですよ「温泉!仰天スペシャル」[再] NHK総合
12/24 (日) 9:00 ~ 9:45 (45分)
【司会】所ジョージ,黒崎めぐみ,徳永圭一,
【ゲスト】橋本マナミ,
【出演】澤口俊之,牛窪恵,モーリー・ロバートソン,
【リポーター】獣神サンダー・ライガー,
【語り】吉田鋼太郎

(番組内容)

温泉大好き女優・橋本マナミが「現代湯治」を初体験。短期間で体のメンテナンスができると、女子たちの間で人気だという。プロレスラー獣神サンダー・ライガーが体を張って紹介するのは温泉好きすら見たことがない「幻の秘湯」!さらには外国人が選ぶ「ニッポンナンバー1」の温泉や自宅で温泉気分を味わえる絶品温泉料理も登場。温泉通すら知らない温泉宿の裏側にも密着!この冬イチオシ、知られざる温泉の魅力を深掘りします!


紅白のPRに「さんま&しのぶ」のデュエットは役に立ったか

いわゆる、大晦日にNHKホールで行なわれるNHK紅白歌合戦の事前告知番組であると書いてしまえば、この番組の説明はできてしまうのですが、今回で第3回を数えるということになると3年連続で、明石家さんまさんを出してまで番組告知をしているという風にも見えますが、実際の中味を見るとそこまで紅白のPRをしていないので、改めて何をやりたかったのかという疑問が残る番組であったことを最初に告白しておきます。ただし番組をさらに台無しにしかねない局のアナウンサーをMCにしなかった点については評価します。

何と3回目の今年は大竹しのぶさんとさんまさんがセットで出してしまうというのは、ある意味NHKが頼んだからと言えるのかも知れませんが、安易に元夫婦を番組内でデュエットさせると煽る手法などは民放を含めての視聴率競争に参戦している印象を強く持たざるを得ません。

さらに、乃木坂46とのからみでは、案の定というか「恋のから騒ぎ」(日本テレビ)状態になっていました。乃木坂46目当てでこの番組を見ている人ならそれなりに楽しめるでしょうが、そうでない人にとってはわざわざこんなからみをNHKニュースの後でまで見たくないという人の方が多いのではないでしょうか。

一体これからどうなるのかなと思いながら見ていたのですが、とにかく46人いるメンバーとさんまさんが次々とアンケートの結果を受けてメンバーに話を振り、個人的にはあまり噛み合っていないように見えたところもあったので、早く歌に移行した方がいいのではと思いながら結構見ながらハラハラしてしまいました(^^;)。しかし、そんな中でもやりとりは続き、ついにはメンバーの一人がさんまさんのコメントにうまく答えられずに涙目になった時には、「さんまのまんま」(関西テレビ)に出演した山瀬まみさんを泣かせた伝説の回を思い出しました。

結局、その後歌になったものの、乃木坂46は一曲を歌ったのみだったので、せっかくNHKのゴールデンタイムの歌番組に出てきたのですから、もう一曲ぐらい歌を入れて、その分メンバーへのいじりについてはさんまさんの厳しいツッコミをしっかり返すことができるメンバーに限定した方が、何よりさんまさんと乃木坂46のお互いのファンのためにも、テレビを見ている側が安心して見ていられたように思ったのですが。

その後、大竹しのぶさんが登場し、元夫婦の軽妙なトークが始まりました。大竹しのぶさんの過去の紅白出場時の映像として、役者顔で「愛の讃歌」を歌ったVTRをさんまさんに相当突っ込まれていましたが、真剣にやればやるほど面白くなるというのは良くあることで、こうしたいわば小学生のような親しい人へのいじりは微笑ましいものです。しかし大竹さんの方がそうしたツッコミを真に受けてしまって喧嘩になったであろうことがもしかしたら離婚の原因の一つになっていたとしたら悲劇ですが、今ではそれを逆手にとって、NHKでも大竹さんの還暦記念コンサートの時、出演者を含む全員から2万5千円取ったという話で非難の応酬をするなど、今やすっかりNHKでもやれる「営業化」したお二人のトークを楽しませていただきました。

しかし、そこまでは個人的に許容できたものの、番組内でデュエット曲として披露されたあの大竹しのぶさんとの夫婦喧嘩を模したデュエットソング「キライナヒト」は明らかにやり過ぎではないのか? と思ったことも事実です。なんでもこの曲は「還暦記念パーティでの二人のやり取りからヒントを得て作られたそうで、11月23日のいい夫婦の日に大竹さんのアルバムの中の一曲として既に発売されているということですが、まさかテレビの歌番組でデュエットをさせるとは、NHKも罪なことをするものです。

この曲は冷静になって聞けばさんまさんのパーティでのアドリブをそのまま固めたような歌詞になっているので、時が経ては経つほど古くさくなり、将来においては歌っているお二人にとって、特にさんまさんにとっての「黒歴史」になりそうな、ある意味貴重な楽曲だと思えます。これが紅白のPRに役に立ったのかは疑問ですね。単に人目を引くためにこのデュエットが行なわれたのだとしたら、大竹さんには全く影響はないものの、さんまさんにとっては今後も人前で歌えと強要されればされるほど、地獄の沙汰になってしまう可能性さえあるように思います。

個人的には「さんま&しのぶ」のからみというのは、そう頻繁に行なわないから面白味が増すと思っているので、できれば今後しばらく二人の顔合せは封印してもらって、できればNHKでなく民放のラジオで(ニッポン放送での過去のお二人の掛け合いは何しろ邪魔が入らないで続いたので絶妙でした)やるくらいにとどめておいた方がいいのではないでしょうか。

(番組データ)

第3回明石家紅白! NHK総合
12/18 (月) 19:30 ~ 20:43 (73分)
【司会】明石家さんま,
【出演】大竹しのぶ,T.M.Revolution,高橋優,乃木坂46

(番組内容)

さんま流紅白に、なんと禁断のゲスト・元妻「大竹しのぶ」が参戦!別れても息ぴったりの爆笑トークがさく裂。さらに初デュエットで歌も披露!乃木坂のものまねや悩み相談も。さんまの激しいトークに涙するメンバー?!西川貴教とさんまの思い出の曲をさんまが飛び入りでコラボ!高橋優はさんまが大好きな名曲「糸」を弾き語る。そしてライブのトークに、さんまが笑いのダメ出しも!今回もお笑い怪獣がNHKで歌に笑いに大暴れする


無意識に地方軽視の姿勢を露呈させたJOBK

現在の日本では、本当に払う根拠があるのかという考えを持つ人もいますが、それほどの例外はなく、国内にテレビ受信機とアンテナを設置しただけでNHKの受信料を払っています。さらにその額というのは北海道から沖縄まで一律になっています。

この事について何の疑問も持たないのは生まれてからずっと全ての民放キー局を受信して見る事ができる地域に住んでいるからこそのものでしょう。しかし、例えばスポーツ中継などで、

「この後も、一部の地域をのぞいて中継をお送りします」

とアナウンスされることがあり、自分の地域がその「一部の地域」であることを自覚している人からすると、なぜ自分の地域だけがと思って悲しくなってしまうのではないでしょうか。NHKの受信料は民放も含めて払っているわけではないですが、場所の違いで見られるチャンネルが変わってくるなら、現在のペイチャンネルの考え方が当り前になってきている今であればなお、東京と青森が同じ受信料を取っているのはおかしいのではないかと思う人が出てきてもおかしくないでしょう。

ただ、こうしたTVチャンネルの地域差における大きな問題として、昔から今まで常に問題にされてきたものとして、「テレビ東京系列の番組がリアルタイムで見られない地域が多くある」というものがあります。かくいう私の住む静岡県内にもテレビ東京系の地方局はありませんので、このブログで取り上げたいテレビ東京の番組は多くあるのですが、リアルタイムで見られない事で、他のチャンネルのように取り上げづらいという問題が起こっています。

ちなみに、現在テレビ東京の番組がリアルタイムで見られるのは、北海道・関東・愛知・大阪・岡山・香川・福岡・佐賀(佐賀県と徳島県については地方局がなくても隣県で見られるなどの条件を考慮してあります)で、残りの地域では見られないわけですが、例えば静岡県であっても神奈川県に近い熱海や伊豆などではアンテナを向ければ映ってしまうような場所はあるものの、私の住む地域では全く見られないなど、同じ県でも差がある場合も出てきます。

こうした民放局の「地域格差」を無くすために衛星放送(BS)開始の時に期待されたのが、地上波アナログの難視聴地域対象に作られた東京地区で流れている地上波アナログ放送をBSのチャンネルで常時同時配信するチャンネルでした。ただ、このチャンネルを見るには地上波が見られない地域に住んでいることを証明して申請することが必要で、もしその申請が通ったとしても同時配信するチャンネルを全て見られるわけではありませんでした。もし申し込んだ人の住んでいる地域でテレビ東京が見られなかったとしたら、ご丁寧にテレビ東京のチャンネルだけスクランブルが掛けられて見られなくなってしまっていたのでした。

最初に書いたHNKの受信料が全国一律であるということから考えると、当時からBSのアンテナと専用テレビを持っている日本国内に住んでいる人に関してはこれら東京で見られるチャンネルを全て見られるようにするのが公平と言えそうな気もするのですが、そういう事を許すと地元の地方局の経営が圧迫されるからということで、護送船団方式で全国の地方局が守られてきたということですが、それでも常にリアルタイムで見られないチャンネルだけはスクランブルを掛けずに見せるべきでなかったかと私は思います。

そうした流れのせいもあり、テレビ東京が地上波でリアルタイムに見られないという状況は今のデジタルテレビの時代にも続いています。この件については、全く同じ時間に同じ番組を放送するわけではないので、地方局の営業阻害とは関係ないことです(静岡のテレビ局はテレビ東京の番組を買って週末などに一気に放送していますが、そんな事をしなくても済む分、むしろ地方局の経費削減にはいい影響も出るのではないかと思います)。このようなテレビに関するブログをやっていても、地方在住であれば見られる番組に制限がかかり、同じ事をやっている人がいたとしたら、それだけでハンデになってしまうからです。

ここまで前置きが長くなりました。しかし、こういった状況を知った上でこれから書くことを読んでいただけると、違った感想になってくるのではないかという考えの元で書かせていただきました。本日のドラマの内容は、落語「時うどん」を笹野高史さんが再現して素晴しかったのですが、ドラマが終了して次週案内のために出てきたのが、女義太夫の芸人リリコに扮した広瀬アリスさんと、主人公の親戚で、京都の薬種問屋に奉公している手代の風太に扮する濱田岳さんでした。

夫婦漫才のような感じで、濱田岳さんはご丁寧にびくと釣り竿を携えています。二人は来週のあらすじの紹介し終えると、濱田岳さんがいきなり「チヌ釣りに行こう」と急にごねだし、広瀬アリスさんがビンタを食らわすという知っている人にはおなじみのネタを披露して番組は終了したのですが、この時、ネットの実況を見ていると多くの人はそのネタ元をご存知だったものの、全くそのネタを知らない人にとっては、何故唐突にこの二人が仲良くなってるの? と疑問を持った方もいたようです。

普通にこのドラマだけ見ていれば風太と近い関係なのはむしろ同じ店で奉公しているトキに扮する徳永えりさんの方ですので、制作者の意図がわからないと思われても仕方のない面もあります。しかし、広瀬アリスさんと濱田岳さんが、テレビ東京のドラマ「釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助」で恋人関係から新婚の夫婦役になっているのを知っていれば、あのままの調子で演技されていたこともあり、ここに「テレビ東京とNHKとのコラボ」が実現していたということがわかり、余計に楽しめたというわけです。

しかし、ここで大きな問題になるのが最初に紹介した通り、テレビ東京の番組は全国一律で見られるものではないということです。私自身はテレビ東京のドラマは、地方局が購入したものを時間差で見たり、ネット配信されたものを見ているということはあるものの、リアルタイムには見ることはできません。ただ、視聴率とは関係なく地道にいいドラマを作るなという感じはあります。それは、出演料の関係で人気絶頂の俳優やアイドルを使えない分、地道なキャスティングをすることでカバーし、安心して見られるように作られているという風に思われるからです。ただ、それにしてもテレビ東京が全く見られない地域については「釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助」という、有名な同名映画をスーさん役を映画では浜ちゃんを演じた西田敏行さんが演じる形でリメイクしたドラマが放送されていたことすらも知らない人が今朝ドラを楽しみに見ている人の中にもいると思います。

個人的にNHKの大阪放送局に対して改めて問いたい事というのは、このような日本全国に届く放送を毎日行なっている中で、日本全国どこでもテレビ東京系列の放送がリアルタイムで見られる人ばかりだと思ってテレビ東京のドラマ内コラボを実現したとでも言うのかということです。

少なくとも今回の放送によって、私の中では半ば眠っていたテレビ視聴に関する地域格差の存在を思い出し、こんな形で爆発してしまいました。NHK大阪放送局は寝る子を起こしてしまったということになります。先日は来年の朝ドラでも企業のPRのような題材を扱うということで批判させていただいたばかりですが、この調子では来年の今頃にも何をしでかすかと考えると、ブログのネタを提供してくれる点ではありがたいですが、あまりつっ走り過ぎてもどうかと思います。

それこそ、将来的にNHKがネットで同時配信をするというなら、テレビ東京の見られない地域限定でも(もちろん、他の民放ネットが整っていない地域での民放も)NHKに加えて地上波で見られない同局の番組を常時同時ネット配信することが実現されなければ、今後も今回のように不平等な番組同士のコラボが生じる恐れも出てきます。そんな議論が出てくれば、改めてネットでの常時同時配信自体に影響が出るような騒動も起こりかねない今回のNHKの所業であったことは確かではないでしょうか。

(番組データ)

連続テレビ小説 わろてんか(42)「風鳥亭、羽ばたく」NHK総合
11/18 (土) 8:00 ~ 8:15
【出演】葵わかな,松坂桃李,大野拓朗,岡本玲,兵動大樹,藤井隆,内場勝則,笹野高史,高橋一生,鈴木京香
【作】吉田智子

(番組内容)

てん(葵わかな)と藤吉(松坂桃李)は風鳥亭の存続をかけ、文鳥(笹野高史)の特別興行を開催した。伊能(高橋一生)の助言で新聞にも取り上げてもらい、風鳥亭にはこれまでで一番大勢の客が押し寄せた。ところが高座に上がった文鳥が前座噺(ばなし)の『時うどん』をやると言うと、文鳥の十八番を期待していた客たちは驚いて騒ぎ出す。だが噺(はなし)が進むにつれ文鳥の巧みな芸に引き込まれ、寄席は爆笑に包まれてゆく。


民放キラーの番組紹介番組 さらに特定のお店の宣伝まで?

中高年に向けて、「水戸黄門」無き後、月曜夜の定番の番組になりつつある「鶴瓶の家族に乾杯」ですが、今回は再放送の深夜に見ました。番組のコンセプトとしては、ゲストが選んだ地域に、アポイントを取らないで直接カメラを回し、その地域の家族を訪ねるというコンセプトの番組ですが、当初は今のようなNHKのドラマや新番組に出るゲストがゆかりの場所を回ることでちゃっかりそのドラマの広報までやってしまおうというような番組ではなかったのですが、現在の番組のテーマ曲を作曲した「さだまさし」さんが出なくなって変わってしまいました。

さらに、現在の番組の放送時間はかなり計算されて変えられているという印象です。最初はさだまさしさんと笑福亭鶴瓶さんとの2人旅で、月一回の特集バラエティという扱いでしたが、2005年から月曜夜8時からの45分番組になり、前後編を2週に分けて放送するという形式で月曜夜の視聴率競争に殴り込みを掛けたかのようにすごい勢いで視聴者を増やしていきました。

当時の月曜の夜と言えば、TBSの一人勝ちといった状況で、午後7時からの「東京フレンドパーク2」からの同8時には「水戸黄門」、さらに9時からは一話完結のサスペンスで渡瀬恒彦さんの十津川警部シリーズなど個性の強いキャラクターが登場と、ゴールデンの勢いをそのまま深夜まで保つような勢いがあったのですが、その中に割って入ろうとしたのが他の民放でなくNHKだったのですから当時はNHKもえげつないことをするなあと思いながら見ていました。

その後、テレビ時代劇全般の視聴率低迷が言われ、「水戸黄門」でさえも苦戦する中、「鶴瓶の家族に乾杯」は支持を中高年層に広げていき、その圧力や他民放の月曜夜7時台の攻勢に押し出されるような形で2009年に「東京フレンドパーク」が月曜から木曜に時間を変更したあたりから雲行きがさらにおかしくなりました。その状況を察したのか、1年後にフレンドパークの放送は月曜に戻りましたが1年木曜日へ行っている間に視聴者は他の民放に取られ、そのおかげであの水戸黄門でさえも、2011年末に最終話を迎えることになってしまいます。

パナソニック提供のドラマ枠は残ったものの、現代劇を見慣れない中高年の方々は、裏番組の水戸黄門を気にせずに鶴瓶の家族に乾杯を見られるようになったことで、さらにTBSの状況はおかしくなってしまったのではないかと私自身は思っています。それでも、現在の放送時間である午後7時半からの放送に変わるまでは、「鶴瓶の家族に乾杯」→「月曜ミステリー劇場(番組名は当時のもの)」という形でまだTBSは見られていたのではないかと思うのですが、現在は一話完結のドラマ枠が午後8時からと一時間開始時間が早まってしまったので、恐らく中高年の視聴者は途中からミステリー・ドラマを見ることはせず、他のチャンネルかNHKを見続ける方の方が多くなっているのではないかと思います。

こういった経緯を見ると、鶴瓶の家族に乾杯はTBSが自分で転んだという面はあるにせよ、きっちりと視聴者の流出を防ぐ形で巧みに編成されているということをまずは感じます。
番組内容はゲストが誰かによって面白さが違ってくるということはあるものの、安心して見ていられ、さらに露骨なNHKの番組とのタイアップであるにも関わらず(話題のドラマで人気の俳優はほとんど出ますので(^^;))、そうした姑息さを感じさせない笑福亭鶴瓶さんの働きはさすがというしかありません。

ただ、現在の一回完結のパターンになって唯一問題がある点といいますか、こんなものを流していいのか? と思うのが女優の常盤貴子さんがナレーションをする「家族に一杯」というコーナーです。

本編の中でもその土地の有名なお店に鶴瓶さんやゲストが突撃するので、これはそのお店にとってはかなりいい宣伝になるなと思っていて、本来NHK自体が商標登録をされた言葉を出さないなど、特定の人や会社が潤うような宣伝については厳しいはずなのに大丈夫かと思いながら見ていたのですが、「家族に一杯」というコーナーは鶴瓶さんとゲストの旅とは全く関係ない独自のコーナーなので、きちんとロケハンをして撮っているのに、明らに見る人が見ればわかるお店の有名なメニューを紹介したと思えば、番組を見た人が放送された土地に行ってあの一杯を食べてみたいと思っても、土地の人達の集まりのようなところでカメラを回し、土地の人が食べる家庭料理の紹介で終わってしまう場合もあるなど、首尾一貫していない中途半端なものになっている気がするのです。

そもそも、番組内でのあからさまなNHKで放送する番組宣伝以外の宣伝もどきの行動について、この番組だから許されるのか、NHKも変わってきたのかということもちょっとわかりかねます。番宣という行為すら、NHKの公共放送という理念とはちょっと違うのではないかと思う方もいるかも知れませんし、その辺を全てなあなあで済ましてしまっている感じがある、その象徴的なコーナーとして私はあの「家族に一杯」というコーナーを見ています。

ちなみに、今回のゲスト、リオデジャネイロオリンピック重量挙げ銅メダリストの三宅宏実さんをゲストで出したのも、政府が推進しNHKが主になって放送する2020年の東京オリンピックについて、多くの人に知ってもらうための告知という目的があってのものです。個人的にはNHKにはどこの部分が番宣だなんて野暮なことを民放を見ている時のように考えなくていいバラエティを放送して欲しいと思っているのですが、今のところそういった希望を叶えるためには、ネット放送の方に逃げるしかないのかなという感じになっているのが残念です。

(番組データ)

鶴瓶の家族に乾杯[再] NHK総合
11/3 (金) 0:10 ~ 1:25
【ゲスト】三宅宏実
【司会】笑福亭鶴瓶,小野文惠
【語り】久米明,常盤貴子

(番組内容)

「東京2020SP メダリスト三宅宏実とぶっつけ本番旅」
素敵な家族を求めて笑福亭鶴瓶とゲストのウエイトリフティングの三宅宏実が青森県黒石市でぶっつけ本番旅。二人は次々と素敵な出会いを繰り広げていく。

 

 


管理人

2017-10-28

ネット検索で一番最初に出てくるという渋谷のスマホ修理店に72時間密着し、その店を訪れる人たちのスマホと、その中味を見せてもらうという企画なのですが、番組内で取材を受けた東大の学生という人でも全てを一台のスマホに集約してバックアップの方法を用意していなさそうという状況を見てなんだかなあと思ってしまったのが大きな感想というか疑問になりました。

さらに多くの人が修理に持ってくるスマホの画面がバキバキに割れていることが多いのですが、長くスマホを使っていればどこかにぶつけたり、落下の事故が多いことがわかっているにも関わらず、その対策になるであろうストラップや画面保護用のカバーを付けていない人がテレビに連続して出てくるという違和感も同時に感じていました。

これは、単にスマホをおもちゃの用途にも使えるような形で物心が付いた時から与えられている人が多いからなのでしょうか。さらに、最近の製品こそ防水機能が付いてきたiPhoneですが、防水機能が付いていないにも関わらず、水没の恐さを感じないで使っている人もいるのだろうなという事が、画面割れしたまま多くの人がスマホを修理しないで使っている状況からも推測でき、この番組で改めて確認できたような感じです。

さらに番組のコンセプトとして出ていたのが、修理しないと改めて見ることができないというスマホで撮影した写真や動画の数々でした。もちろん、単体で撮影した写真や動画、さらに本体で受けたメールは本体の画面が映らなくなったら確認すらできない事は確かです。しかし、きちんと対策をしておくことで、端末自体が修理不可能なほど壊れたとしても、データを復活させることは十分可能なのですが、世間というものは本当に無知だということが、テレビの向こう側では起こっていることを知り、ただただ愕然とするしかありませんでした。

例えば、カメラで撮影したものをまるまるバックアップする方法(例えばDropboxやOneDriveのようなクラウドに自動的に保存する設定とかGoogleフォトを使って同じように自動保存の設定をするとか)があることすら知らないの? とか、メールもキャリアメールにこだわらず、Gmailに一元化すれば端末がなくなっても古いメールを過去に遡ってパソコンや新しいスマホやタブレットを使えば見ることはできるのに(ネットカフェのパソコンを使ってクラウドにアクセスし、手持ちのUSBメモリ(千円前後で家電量販店で購入可能)にダウンロードするような事も可能)、ドキュメンタリー番組ということもあってかそんな情報を取材者には提供せずというのも何か切ないなあと感じてしまいます。

ただ、このドキュメンタリーに「やらせ」は無いという風に仮定すると、本当にパソコンを使わないでスマホのみを情報源にしている若年層(番組には年配の方はほとんど登場しませんでした)の方は、本当に何の対策もせず裸のままのスマホを使い、もしデータが見られなくなったらということを考えずにスマホに依存した生活を送っているということになってしまいます。

これは一般的な問いとしての「人はなぜスマホに依存するのか」という答えを考える上でも大事な観点になります。パソコンでのインターネットとスマホやタブレットという風に、用途によって使うものを分けている人なら、深刻なスマホ依存にならずに、インターネットを楽しむことができるかもしれませんが、全てをスマホ一台に集約することでたとえ一瞬でもスマホを使えない状態になった場合にパニックになることは十分ありえます。きちんとIDとパスワードを管理しておけば、メールだけでなくLINEをパソコンで使うことも可能ですし、スマホがなくても代替手段があることを知っていれば精神的にも安定するでしょう。

ただ、一日でもスマホを手放したくないと思う人々の存在によって取材先のようなスマホ修理専門店が流行るというオチまで付いてしまうのですが、買って2週間で画面が割れてしまい、手を切ってしまったと嘆くフリーターの子が修理に時間がかかったり、高額になった修理代に文句を言う場面があったので、あえて一つの提案をします。きちんとバックアップさえしていれば、修理金額よりも安くスマホを使い続けたいなら、とりあえずの連絡だけはSIM入れ替えでできるスペアの中古スマホでも購入した方が安く済むでしょう。そしてそもそも、どの通信業者もやっている「スマホの保証サービス」に入れば、買ってすぐ画面が割れてしまっても、買ったお店で少ない負担で修理してもらえるのに何で入らないの? という根本的な疑問もあります。

ただこれは、番組では直接明らかにしない裏の事情があることが考えられます。フリーターで毎月使えるお金が少ないために、つい契約の時に毎月の支払い額が多くならないように、補償サービスに掛けるお金も出し惜しみしてしまう人が少なからずいるのではないかという点です。実はこの部分が今回番組を最後まで見ていて強く違和感を感じた部分で、大手キャリアでスマホを買って使っている人がほとんどな中、なぜキャリアのショップではなく修理専門のショップへ人々は向かうのか。そこにあるのは、実はスマホを売ることによって利益を得るために、肝心な事を説明しないまま売っているお店の存在があるからではないかと勘ぐってしまうのです。無知な利用者を増やし、そこからお金を絞り取るような姑息な商売というのは止めて欲しいですし、スマホが再生不可な状態になったとしても、データを無料で取り戻す手段があるということを多くの人に知って欲しいと番組を見ていて思った次第です。

(番組データ)

ドキュメント72時間「渋谷 スマホ修理店」(再放送)
10/28 (土) 11:25 ~ 11:50 NHK
【語り】仲里依紗

(番組内容)

舞台は東京・渋谷にあるスマホ修理店。故障で動かなくなったスマホが次々と持ち込まれる。人々は何を守り、残したいのか。修理を終えたスマホの中身をのぞかせてもらう。


日本の「ものづくり」を守るには口うるさい国内の消費者も一役?

日本のメーカーの不祥事が相次いでいます。自動車メーカーでは三菱自動車やスズキ、日産、自動車部品メーカーのタカタ(エアバック)、さらに最近ではそんな自動車などの製品の材料となる神戸製鋼でも不正が発生したことにより、日本のものづくりに大きな危機が訪れているとも言われています。

今回の「クローズアップ現代+」は、上記のメーカー以外にも、すでに日本のメーカーの出す製品で起こっている「サイレントチェンジ」という事にスポットを当ててその恐ろしさを紹介したのですが、この話はたった25分で語り切れることではありませんが、放送された内容をかみくだいて問題を明らかにするような事をこのブログでやってみることにします。

まず、「サイレントチェンジ」とは何か? ということになるかと思いますが、これは日本のメーカーが製品を作る際、昔なら設計から生産まで全て自社でやっていたのが、コストの問題から製造や部品調達を海外の下請けに出すことで生じるリスクと言えるでしょう。

番組で紹介していたのは主に東南アジアや台湾・中国の下請け・孫受け工場で行なわれることが多いというのですが、メーカーの方ではきちんと部品の種類や組み立て方法や工程を細かく指定するのですが、下請けや孫受けの方で、請け負った金額でより高い利益を上げようと発注元から指定された条件を勝手に変更し、わざと耐久性のない部品を使ったりすることで、見た目には不良でない製品であっても、耐久性が低い製品を完成させてしまうことになります。しかもその不具合は、あくまで部品の劣化によって起こるので、プロでも簡単には見分けが付かず、不具合自体もいつ起こるかはなかなか判断できないのです。劣悪な部品の「静かなる劣化」が起こす番組で紹介された事故例としては以下のようなものがあります。

・突然火をふいたビデオプロジェクター

・ユニットを天板に止めていたネジが破損して落ちたため火事の原因になったこたつユニット

・平坦な道を歩いていても極端に転ぶ回数の多くなった滑りやすい靴底素材を使った紳士用の革靴

・パイプをつないでいるネジが壊れ、座ろうとした人が大怪我をしたパイプ椅子

・電気コードやプラグを安全に使うための難燃剤として使われる「赤リン」をコーティングする指示を無視して使ったため絶縁性が劣化して発火事故が起こったACアダプター

この他、パソコンや除湿器でもメーカーの想定する経年劣化の期間を待たずに事故が起きるケースがあり、日本のメーカーはその対応にいちいち追われることになります。こうした事故というのはメーカーが想定した部品と違うものを使ったことによって起こったことがわかれば、自然故障とは言えませんし、もちろんユーザーの使い方の問題で事故が起こったわけでもないので、多くのメーカーの責任として製品の無償交換(リコール)という形での決着が図られることが多く、その費用はメーカーが全て負担しなければなりません。

では、一体どこの下請けや孫請けがそんないいかげんな事をやっているかというと、その背景には産業のグローバル化が暗い影を落としていました。というのも、とある日本のメーカーが台湾のメーカーに生産を委託していた製品で「サイレントチェンジ」と思われる不具合が出た際、直接下請け業者を呼んで業務の改善を求めたところ、実は不正をしていたのは台湾の下請けではなく、さらにその作業の中の一部の工程を請け負わせた孫請けの企業が中国本土にあったことがわかり、その企業が勝手に指示に沿わない方法で部品を調達していたことがわかったのでした。

この種の不正については、海外の工場で生産を委託する日本のメーカーや企業にとっては大変大きな問題になっています。過去に大きなリコールを経験した家具メーカーのニトリでは、自社ブランドの製品のうち海外で生産をしている比率が90%で、下請けや孫請けの会社が約600社もあるそうです。そんな状態で自社ブランドの品質を守るために、製品や使われている部品の検査を行なうための機材を1億円かけて導入し、職員も100人ほどとかなり力を入れてやっているものの、そうした検査だけでは全ての不正を見付けることはできないので、こまめに海外に視察に出向いたり、一部の下請け企業に自社の品質管理マニュアルを渡し、孫請けに対する指導を求めていくなど色々行なっているようです。

しかし、そうした事をいくらやってもいたちごっこのようにコストの問題から不正が生まれることを完全に無くすことはできないとのこと。それはつまり、技術だけをうまく真似たとしても、ものづくりにかける心意気がないといいますか、ものづくりに対する熱い思想の違いというものが海外と日本のかつてのメーカーにはあり、その着を埋めるのがなかなか難しいということです。それなら、いっそのことコスト高になることは承知の上で日本国内で下請けにやってもらうようにするか、品質を向上させた場合に報奨金を払うなどの対策で高品質な製品を作るためにコストを掛けるかというような解決への糸口のような方法が示された時点で番組は終了しました。

最後にゲストコメンテーターが言っていた「安全にはお金がかかることを理解する」という言葉が印象に残りました。とにかく安いものを買うような消費活動に終始していると、どうしても作りの甘いまがい物をつかまされる可能性は高まります。ただ、名の通った日本の一流メーカーの品を信頼して購入しても、全て日本で作っているのか、一部の部品が海外製だったりするともう追跡は個人レベルでは困難で、いつ「サイレントチェンジ」が起こっても不思議ではない事には変わりありません。

番組でもう一つ言われていた事は、主に消費者側が「サイレントチェンジ」を減らすための心構えのようなもので、それは明らに部品の不良があった場合はきっちりとメーカーに苦情を言うということです。多くの苦情が集まることで、生産出荷後どのくらいで不具合が出ているかがわかり、リコールの資料になりますし、メーカーの社内でコスト偏重に陥っていた場合、そのためにクレームが出まくったことがわかれば、方針の転換に向く可能性もあります。

直接言っても何のリアクションもなかった場合には、ネットで報告するような形で多くの人と情報を共有し、同じような不具合で困っている人がいないかもネットで探すことによって、メーカーも把握していない部品の不良による問題が明らかになることもこれから十分考えられます。

そうした情報の蓄積にはネットというものはやはり便利で、あらゆるものを購入する前に、その型番で検索をかけてみて不具合の報告がネットに上がっていた場合は、単なる初期不良の結果なのか、製造段階での下請け・孫請け企業の不正による「サイレントチェンジ」によるものなのか自分なりに考えた上で購入するかどうか決めるというのがいいだろうと思います。なお、番組の中で少しだけ紹介されていたのですが、「製品評価技術基盤機構(NITE)」の事故・リコール情報のページにリンクを張っておきますので、これから買おうと思っている製品や、今使っているものが以下のリンクにないことを確認しておきましょう。

http://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/index.html

このようなことを書くと、いちいち口うるさい消費者として疎んじられるような気もするのですが、日本のものづくりを支えてきたもののうちの一つが、メーカーに厳しい意見を言う世界一細かい消費者の意見であることもまた事実ではないかと思います。最初に紹介した日本企業の不正の様子がショックだったのは、これからは海外での下請けメーカーが関わった製品だけでなく、メイドインジャパンの製品にも不具合が出るかどうか心配しながら使わなければならないという事にもなるかも知れないことです。ただ、恐くて使えないようなメーカーの製品はあえて使わないことで消説者としての意志表示をし、政治に頼らずとも消費者の力で大企業のあり方を変える試みがあってもいいと、今回の番組を見終ってしみじみ感じた次第です。

(番組データ)

クローズアップ現代+ NHK制作
2017年 10/24 (火) 22:00 ~ 22:25
【ゲスト】明治大学名誉教授…向殿政男,品質管理コンサルタント…根本隆吉,
【キャスター】武田真一,鎌倉千秋(NHKアナウンサー)

(番組内容)

▽家電が突然発火する!?~知られざる“サイレントチェンジ”
相次ぐ製品事故。その原因の一つとしていま、メーカーが知らない間に下請けが部品を変えてしまう「サイレントチェンジ」に注目が集まっている。その危うい実態に迫る。


テレビ体操60年で将来に期待したいこと

この番組「どーも、NHK」はいわゆるNHKの広報番組です。最近はバラエティ番組の出演者にドラマの出演者を入れて番組告知をさせるような事が見ている側もあからさまにわかるような形で番組が作られている場合が多いですが、この番組の前半ではまさしく「おすすめ番組の紹介」ということで、これからの注目番組を番組進行役のアナウンサーとタレントが行なう形で進んでいきます。

さらに、NHKが受信料を徴収するための根拠としてどのような事を今までやってきたのかなどNHKの取り組みを紹介する「もっとNHK」のコーナーで紹介されたのが、今年で開始から60年になるという長寿番組「テレビ体操」についてでした。

現在の収録風景をまずは映し出し、広いスタジオに出演者とピアノ伴奏の方が音と動きを合わせるために、何回も体操の動作を行ない、VTRチェックなども入念に行なわれる様子が紹介されました。取材時の体操指導として出演された多胡肇さんによると、ピアノを含めた全員がぴったり合う美しい体操を目指しているものの、本当に満足する出来になるのは一年に一度くらいしかないとのことでした。

出演者は体育大学で体操を専門にやっている方が選ばれており、過去の資料映像ということで出演者がまだレオタードではなくショートパンツに体操指導者が着るようなポロシャツという出で立ちながら、オープニングは新体操さながらのボールを使ったパフォーマンスを行なっていたところを見ると、女子新体操の選手であると思われます。新体操の団体ではかなりの一致性を見るのに、そうした出演者の動きでさえも納得しないということになると、かなり要求が高いだろうということを視聴者に印象付けるような形で報じていたということになるでしょうか。

ただ最初に述べたようにこの番組自体がNHKがこんなことをやっているという広報番組であるので、現在の体操指導者以外の出演者や、過去に人気のあった出演者へのインタビューや言及すらもなく(^^;)、前の体操指導者の長野信一氏によるテレビ体操の転機になったとされる、ラジオ体操をするのは大変な高齢者や体に不自由なところがある人に向けての「みんなの体操」を作った話や、実際にそのみんなの体操を毎日行なっている脳性麻痺のある少女に取材したり、副音声で目の不自由な人向けに解説放送をしていることの方をしっかりアピールしていました。

個人的はそこまでやるなら、現在多くの運動不足でメタボ体型の人が運動する習慣を付け、実際に成人病にならないような運動についての指導も期待したいと思うのですが。現在ではお金を出して直接トレーナーに指導を受けるタイプの驚きの効果がコマーシャルによってクローズアップされたり、通販番組では相も変わらず本当に効果があるのか素人ではわからないサプリメントやダイエット系食品や、寝ながらテレビを見ていても腹筋が鍛えられるマシンなど、楽に痩せられる方法をお金で何とかしようという方のニーズに応える品物があふれています。

元々、ラジオ体操が作られたのは、アメリカの生命保険会社が、自社の保険金の支払いを抑えるために加入者向けに健康な体を維持させようという目的で始まったという説があります。ラジオ体操の健康な体を作るための効果について語られることも多いですが、せっかくNHKに受信料を払うならば、ラジオ体操が誕生した当時の思想に立ち戻り、テレビ体操という番組の中で一年間なら一年間通しての指導をしてくれるような事があってもいいように思うのです。

もし、そうした指導で実際に痩身の効果が出ることになれば、その点だけでもNHKに対して受信料を払う価値があるという考えになる人も出てくるのではないでしょうか。恐らく、今後は国の健康保険が破綻する可能性なども言われるほど高額になる傾向のある成人病に悩まされる人が増加する事が予想されますので、今回の「テレビ体操60周年」を機に、もう少しこの国の問題について突っ込んだ番組作りを期待したいところです。

(番組データ)

どーも、NHK NHK制作
2017年10月22日(日) 11時20分~11時54分
司会 豊田エリー,中條誠子

(番組内容)

番組独自のキャッチコピーでおすすめ番組を紹介!週刊どーもナビ:「秘境中国 謎の民 天頂に生きる~長江文明を築いた悲劇の民族~」「超入門!落語 THE MOVIE」「サイエンスZERO イグ・ノーベル賞」「子どもたちの夢」など、1週間の見たい番組、気になる番組が見つかるかも▽NHKの取り組みを紹介!もっとNHK:テレビ体操60年の歩み▽あなたの街のNHK:気まぐれ旅で地域の魅力再発見・鳥取局


映画は残りテレビは消えゆくものなのか……

初回放送から毎回楽しみにして、裏番組を見ている時も録画までして全回を通して見終えたのがNHKの土曜ドラマ、原作にボードビリアンの小松政夫さんの自伝的長編小説を使った「植木等とのぼせもん」でした。

ドラマの前説には小松政夫さん本人が出演し、当時の「ハナ肇とクレイジーキャッツ」のメンバーに扮した役者さん達は全て自前の演奏ができるという、かなりリアルな形での小松政夫さんと植木等さんの関係を中心に物語が進んでいきます。

恐らく、クレージーキャッツや植木等さんの事をよく知らない人は何だと思うかも知れませんが、当時の事については渡辺プロダクションの渡辺美佐氏が一切出て来ないことをのぞけば、良く作られていたと思います。

最終回に出てきた中では、勝村政信さんが演じるクレージーキャッツの映画「無責任シリーズ」の監督をされた古澤憲吾さんが植木さんの出したCD「スーダラ伝説」に関してのインタビューを受けている時に突然登場し、放った言葉が印象的でした。

「映画は、残るね」

というのがそのセリフですが、圧倒的なドリフターズ世代であった人たちも、年を経るにしたがってその記憶も薄れていきます。特にバラエティ番組において、テレビ番組のアーカイブス化ということについてはあまりにも権利者が多すぎるため、現代でもなかなか難しいところがあるのに比べ、映画というのはその辺はしっかりしており、ソフト化されたものをレンタルして見たり、最近ではビデオオンデマンドでも見ることができます。

私がこのブログをテレビをテーマにしてオープンさせたというのも、せっかくいいドラマを作ってもテレビドラマというものはなかなか後世に残らないというような、テレビの特性が前提にあります。人気ドラマもそれほど人気ではなかったドラマでも、映画のように番組終了後にDVD化されることが当り前になりつつも、全て見終わるまでは何シーズンもあると長いですし、2時間前後で一つの物語が終わる映画とはちょっと違って、よっぽど好きな人でなければ全巻揃えて見ないですし、それがお子さん世代や孫の世代まで受け継がれるかというと疑問な点があります。

そういう「映画」と「テレビ」の違いについていち早く気が付いたのが、北野武氏だと言えるかも知れません。今から50年後くらいに北野武氏の事は知っている人が多かったとしても、明石家さんまさんはどうかと考えてみてみましょう。いわゆる、伝説のコメディアンと呼ばれた人たちを活字では知っていても、一体どんなことをしていて、何が面白かったかというのは、実際にその映像を見なければわかりません。

特に戦前に活躍していた人などは役として出演している映画を見て当時の活躍を空想するしかなく、テレビ創成期に大活躍した芸人さんやコメディアンであっても、さすがにおじいちゃんがよく知っている人でお孫さんまでよく知っているという例というのは僅かなものです。テレビの出演というのは断片的なもので、そうした断片をつなげてまとめてもらえるような人でない限り、今大人気の人であっても将来的に名前が広く知られ続けるということはテレビに出ているだけでは難しいと思われます。

そうしたテレビの特徴に気づき、テレビはあくまで映画の宣伝として出て、メインの活動は映画にシフトするような北野武氏の生き方の方が名は残せるかなとも思います。しかし、放送しては消えゆくテレビの方が、世の中の今というものを直接的に映していることは確かなので、このような形で記録を残すことで、テレビ放送直後の想いというものをブログという場でキープしておきたいという気持ちがあるのだとご理解いただければ幸いです。

さて、ドラマの本編は満足いくものだったことは述べましたが、唯一残念だったのが番組のエンディングがひどくあっさり「スーダラ節」が流れただけで終わってしまったことです。せっかくなら紅白歌合戦のステージセットを作り、植木等さんの声色を作って必死に役作りしていた山本耕史さんに1990年の紅白のステージの再現をしてもらっても良かったですし、まだ植木等さんの物凄さを感じられていないかも知れない人に向けて、当時の紅白の資料映像を時間の許す限り流して欲しかったという想いもあります。

その年の紅白歌合戦はステージ裏での話題にも事欠くことなく、当の植木等さんも予定の時間よりもかなり巻きが入っている中でかなりストレスがたまっていた出演者もいたようなのですが、植木等さんがステージに登場するやいなやそんなステージ裏の雰囲気は一瞬で消えたように盛り上がって、まだ第2部が始まったばかりなのに大トリのようなステージで見ている人を十分に楽しませてくれたまさに「伝説となった紅白出演」だったと思っています。NHKのアーカイブスは有料ですのでなかなかその様子を見ようと思っても難しいので、せめてドラマのエンディングとしてあのステージの一部でも流してくれたら、クレージーキャッツの黄金期を知らない世代にも植木等さんの凄さを感じられたでしょう。

ただ、この文章を書いている現在では、Googleで「紅白歌合戦 スーダラ伝説」と検索をかけると、その時の様子がYouTubeでしっかり出てきます。リアルタイムでこの書き込みを見ていない方が同じように検索をしても動画は消されてしまっているかも知れませんが、このドラマを一通り見て、植木等さんの事に興味が出てきた方はぜひその動画を視聴してみることをおすすめします。

(番組データ)

土曜ドラマ 植木等とのぼせもん NHK制作
2017年10月21日(土) 20時15分~20時45分
山本耕史,志尊淳,山内圭哉,浜野謙太,武田玲奈,でんでん,高橋和也,優香,伊東四朗,中島歩,坂井真紀,富田靖子,勝村政信

(番組内容)

(8)「スーダラ伝説」