この番組は、過去の歴史上の人物を「被告」とし、時代劇では出てこない事実を検察官役の渡辺いっけいさんがあぶり出す法廷劇です。NHK教育テレビで「昔話法廷」という番組がありました。これは2015年の番組ですが地上波で放送され一部の新聞でも取り上げられたりするなどしたことで覚えているのですが、実はこちらの番組の方が同じコンセプトで2010年から放送され、さらに2011年に放送された田沼意次を被告にした回がギャラクシー賞を受賞するなど、実はNHKがこの番組のコンセプトをそのままに番組を作って評価を得たということがあるのです。個人的に思うのは、その当時「昔話法廷」を紹介する新聞のテレビ欄の紹介の中にこの番組の事を書いて知らせてくれれば、少なからぬ人たちが、早くにこの番組に触れるきっかけになっていたかも知れないということです。
なぜこんな話をするかというと、この「時代劇法廷」という番組はBSフジの制作した番組ではなく、CS放送の有料放送の会社「日本映画衛星放送」が作ったオリジナル番組で、「時代劇専門チャンネル」で放送されたのですが、何とCS放送専門局がギャラクシー賞を獲得したのはこの番組が初めてであったということなのです。時代劇を心から愛する人はこのチャンネルにお金を払って加入して、こうした番組を見る機会もあるでしょうが、浅く広くまんべんなくテレビ番組を見たいと思う人までには届かなったところもあったのではないかと思うのです。
今回の徳川吉宗と大岡忠相を被告とした回は2011年10月にCSで放送されたものですが、5年以上前の放送ながら、前日のNHKBSプレミアムで新シリーズが放送されたリメイク版の「大岡越前」放送の次の日に放送を持ってくるところはBSフジの方で何か意図があったのかと勘ぐりたくもありますが、無料放送でそのまま話題の番組を見せてくれるのは有難いことです。
BS放送のプログラムの中にはかなりの歴史紀行番組がありますが、このような現代の価値感のもとに時代劇のヒーローを法廷に出すことでかなり人間的な魅力を伝えることができ、新たな歴史についての知識を得ることもできるという点でやはり賞を取るだけのことはあると思われます。
今後、このプログラムをBSフジがどう取り扱うのかと思ってネット上を調べていたら、何と昨年の一月末にも同じ徳川吉宗被告の回がBSフジで放送されていたのを発見しました。このシリーズの中では、現在大河ドラマから朝ドラマで出演されて絶大な人気を誇る高橋一生さんを土方歳三役で出している回など、ぜひ見てみたいと思ったのですが、初放送から時間が経過しているものでも、そのままの形で流すのは難しいのかということも考えられます。
ただ、現状のBS民放のプログラムは興味深いオリジナル番組もあるものの、その多くがQVCやShopチャンネルの同時放送や、中国・韓国のドラマ、放送枠をそのまま使った通販番組であることを考えると、通販番組をバラエティ化したり、ドラマで出演していた中国・韓国で活躍する俳優を出すバラエティ番組というような形での発展の仕方はあるものの、せっかく日本のテレビ番組の中にCS放送のオリジナル番組というストックがあるのですから、その資産を有効に活用して欲しいと思うのは私だけではないでしょう。
今回は「時代劇専門チャンネル」と「BSフジ」との間での話ですが、例えばCSのテレ朝チャンネル1で放送されている「ゲキレア珍百景」をBS朝日で通常放送にするとか、様々なやり方はあると思うので、そうした試みも今後されて欲しいなと思うところです。
(番組データ)
時代劇法廷 被告人は徳川吉宗 BSフジ(制作・日本映画衛星放送)
1/13 (土) 15:00 ~ 16:00 (60分)
<出演者>
渡辺いっけい 福士誠治 眞島秀和 森下哲夫 茅島成美 井沢元彦 ほか
(番組内容)
享保の改革・目安箱など、まさに”スーパースター”と呼ぶにふさわしい吉宗は本当に名君だったのか?罪名は「詐欺罪」。「被告人・徳川吉宗は庶民の味方という揺るぎないスターダムを築き上げたが、それは吉宗自身による自己像のでっちあげであり、その実像は苛烈な倹約政策と重税を推し進め、庶民を疲弊させた張本人」というのが時代劇検察官の主張だ。 「大岡越前」でおなじみの大岡忠相が弁護人側証人として出廷し、”時代劇黄金コンビ”で余裕の構えの吉宗だが、やがてそのスター然とした態度の裏に潜む弱気で孤独な本性が垣間見え…。時代劇検察官が歴史の嘘に切り込み、”スターの孤独”を浮き彫りにする!