月別アーカイブ: 2020年3月

新型コロナウイルスの感染経路について考えさせられる番組

最初にお断りしておきますが、この番組「ロンドンハーツ」を挙げて不謹慎だと糾弾する目的でこのエントリーを立ち上げたわけではありません。この放送の収録をされた時期は日本政府や東京都知事が「不要不急の外出を自粛して欲しい」というような声を挙げていませんでしたし、この番組はまっとうに企画され、視聴者を楽しませるためのプログラムです。このことに間違いはありません。

しかし、この直後に芸能界では初めての新型コロナウイルスの陽性反応が、コメディアンの志村けんさんに起こってしまいました。なぜ志村さんは感染してしまったのかということを考える中で、この番組の企画のなかで出てくるお笑い芸人のネットワークが関係しているのではないかと思えるところもあるので、今回は単に面白いと笑うだけではなく、今後は他にも芸能界の関係者のなかでも新型コロナウイルスが広がる可能性について考えてみたいと思います。

まず、この番組で出てきたように、芸能界の中には会食や飲み会を頻繁に行うグループが存在し、今回の藤本敏史さんのように中心になる人物が一言電話やLINEでその日の相手を誘っただけでも結構な人数がお店に集まります。志村けんさんを地上波テレビのレギュラーを複数持っているので、番組終わりやそうでないときでも取り巻きの芸能人をいきなり招集して飲むことも多くあったでしょう。そうした飲み会が続けば当然体調に良くないですし、体が弱って免疫力が落ちた時に風邪やインフルエンザ、さらに新型コロナウイルスに感染する可能性はぐんと上がるわけです。

私は志村さんに陽性反応が出たというニュースを聞いた時、いったい芸能人の飲み会事情はどうなっているのかということを心配したのですが、70歳を過ぎて、今回のロンドンハーツで紹介されたような飲み会を連日行っていれば、新型コロナウイルスに感染する可能性は高くなるだろうと妙に納得したのでした。

ですから、志村軍団に属していて連日の会食や飲み会に付き合っていた人が濃厚接触者にならないような感じで報道されているのははなはだ疑問ですし、飲み会の関連から新たな陽性反応が出てしまうなら、本格的に地下にあって換気がうまくいっていないような飲食店の営業について行政の対応が必要ではないかと本気で思います。

そういったことを思い起こさせてくれたという点において、今回の企画は私にとってはドキュメンタリーのような感じで見られてしまいました。番組ではお店に来られるような状況なのに結局やってこなかったコロコロチキンペッパーズのナダルさんをいじるいつものくだりがありましたが、今の状況であればナダルさんのようにお誘いには適当な返事をしつつも行かないというのが一番いいのではないかと思ってしまいました。これを読んでいる方々も、今は多少の義理より命を優先して会食や飲み会の参加について考えてみることをおすすめします。

(番組データ)

ロンドンハーツ 傷ついてるョ!全員集合 フジモンの飲みの誘い後輩は何人来る? テレビ朝日
2020/03/24 23:15 ~ 2020/03/25 00:15 (60分)
出演者 田村淳(ロンドンブーツ1号2号)/藤本敏史(FUJIWARA)、山崎弘也(アンタッチャブル) 他

(番組内容)

色々あって傷心のフジモンに緊急企画。フジモンが可愛がる後輩たちに、急な飲みの誘いをしたら、一体何人の後輩が駆けつけるのか検証!!

飲みに誘ったのは、千鳥ノブ、フルポン村上、パンサー向井、かまいたち濱家、ジャンポケおたけ、ナダル、など10名。 後輩たちに「今日、9時半頃から飯行ける人いる?」と連絡を送り、あとは後輩が来るのを待ち続ける! さらに、後輩たちの仕事終わりを、ロンハースタッフが追跡!! 後輩がちゃんとお店にやってくるのか?を徹底チェック!! 可愛がってる後輩たちは、一体何人集まるのか!?


AI美空ひばりの何が「不謹慎」なのか?

NHKの番組(NHKスペシャルや紅白歌合戦)が先か、AI美空ひばりに「新曲」を歌わせる企画が先だったのか、まずはそういう話をNHKが暴露していただかないと、このような検証番組を真面目に見る気にはならないというのが正直なところです。できれば民放がしっかりとした検証番組を作ってくれることを希望しますが、当事者が自分のやった行為をいくらゲストパネラーに抜擢された藤井隆氏らを使って正当化しようとしても、私にはどうしてもお金の問題でAI美空ひばりが作られたのではないか? という疑問が払拭できないのです。

東京目黒区青葉台にある「東京目黒 美空ひばり記念館」(美空ひばりさんのご自宅を改装)が売りに出され、美空ひばりの著作権を受け継ぐひばりプロダクションの社長でひばりの養子である加藤和也氏の借金苦が報道されたのを私が確認したのが、AI美空ひばりの姿をNHKスペシャルで見た後の事でした。その後、目黒のひばり記念館は売却を免れたのか、ホームページにでも予約ができるようになっているようで、最悪の状況からは脱したのかとは思うものの、そのためにAI美空ひばりの出現が企画され、最初からNHKとタッグを組み、紅白歌合戦出場からCDの販売である程度のお金を得ることが予定されていたとしたら? という件については当然この番組では全く触れられませんでした。

さらに、出演されていた人もNHKの意に沿うようなコメントを吐くばかりで、かろうじて歌の中のセリフに意味を持たせると人心を惑わすような事に悪用されるという批判はあったものの、それは美空ひばりという歌手の話とは関係ない一般的なAIの弊害について述べただけです。そもそも、マスコミやネットでも話題になった山下達郎氏のAI美空ひばりに対するラジオ番組でのコメントを受けてのインタビューを、なぜこの番組では取れなかったのでしょう。もし山下氏に取材を拒否されていたとしても、その旨について丁寧に説明することがこういった番組を放送するにあたってはあってもいいように思うのですが。

私自身は、最初のNHKスペシャルでAI美空ひばりを見た時、すでに故人である美空ひばりの名声にすがり、最後まで甘い汁をしゃぶりつくそうとする人々の心の卑しさに辟易しながらも、今回の番組を通してヤマハの「ボーカロイド」用の音源の一つとして「美空ひばり風の音声データ」が誰でも利用できるように販売されれば、それを使った新しい才能を持つ人々がどんな風に美空ひばりの歌声を生かすような創作ができるのかと前向きに捉えていました。例えば、現在東京オリンピックを前にして国民的ソングになっている「パプリカ」を美空ひばりの声で作品にしたらどうなるか? という風な形で紅白歌合戦の余興で披露するくらいがちょうどいいボーカロイド音源との付き合い方だと紅白を見ながら思っていました。

もちろん、そうした試行錯誤の中で、今回紅白で歌われ、CD販売された曲もあればよかったと思うのですが、そうでなくAI美空ひばりの権利を独占することで単なるデータ音声に特別な意味を持たせて金儲けの種にするようなAI美空ひばり周辺の状況が変わらない限り、疑念はいつまでも付きまといます。あと、できれば秋元康氏以外に美空ひばりの楽曲提供に関わった人物の意見も出して欲しかったと思うのは私だけではないと思うのですが。

(番組データ)

AI美空ひばり あなたはどう思いますか NHK総合
2020/03/20 23:45 ~ 2020/03/21 00:38 (53分)
【ゲスト】東京大学大学院教授…松尾豊,ミッツ・マングローブ,藤井隆,
【VTR出演】ビートたけし,つんく♂,山口一郎,大友良英,渋谷慶一郎,東京大学医学部附属病院 循環器内科…稲葉俊郎,弁護士…水野祐ほか

(番組内容)

議論百出の「AI美空ひばり」についてじっくり語り合う。あの有名アーティストや大物タレントは、AIが芸術を生み出すことをどう考えているのか?最新AIの現場も必見!

NHKスペシャルや紅白歌合戦に登場し、さまざまな反響が寄せられたことから企画した番組。AIという存在が目の前に現れたとき、私たちは何を受け入れ、何に違和感を持つのか?AIとアートの融合が進む今の時代、どう付き合っていけばよいのか考えてみませんか。


これじゃ地方局はネット同時配信の流れの中生き残れない

この番組は、年度末の時期に地方局が夜7時代のゴールデンタイムに主に県内の視聴者に向けて自社制作の番組を発信するという形の番組ですが、TVerで見逃し配信として一定期間見られるようなのでここで紹介することにしましたが、静岡県(特に静岡市)在住の身としては、ただただ恥ずかしい番組であったということをまずは感じました。

なぜかと言うと、テレビ朝日系の件の番組のようにタレントのマツコ・デラックスさんを連れ回す番組で、しかも「静岡」の特色というものをマツコさんに知って欲しいというコンセプトの番組であるのに、ことごとく番組の進行や事前準備の足りなさをマツコさんに指摘され、ついにはマツコさんが決して豊富ではないだろう静岡に関する知識や、バラエティを面白くするためのツッコミについて全く対応できない現場のスタッフの愚かさが目立っただけの番組で、本当にスケジュールを調整して静岡まで仕事をしにきてくれたマツコさんに申し訳ないと、テレビの仕事とは全く関係ない私ですら思ってしまうほどの「仕上り」に終止していたのです。

基本的にはいわゆる「マツコの知らない世界」的な効果を狙って、「静岡にはこんなすごいものがあるんですよ」ということをマツコさんや視聴者に見せる番組であったと思うのですが、これは静岡に限らず地方の人々が陥りやすい罠にハマっているということでもあるので、番組の成り行きとともにその駄目なところを紹介させていただこうかと思います。

最初にマツコさんは番組を制作する静岡朝日テレビの正面玄関に到着し、局員およびアナウンサーの歓迎を受けるのですが、マツコさんがはじめにやったことは、東京から出向してきているセント・フォースのキャスターに手を挙げさせ、その個人への批判でした。別にセント・フォースが悪いということではないのですが、セント・フォースと静岡朝日テレビと言うと、局アナとして入社したものの地方局への入社をステップアップととらえたのかどうか知りませんが、人気が出てきた時点でセント・フォースに移籍してしまった牧野結美アナウンサーとの浅からぬ因縁があります。さらにマツコさんは静岡県内出身のアナウンサーに手を挙げさせました。これは、やはり地元のテレビ局はその土地で育った人材を大切にしないとというメッセージだったのかと思いますが、その彼女らに(インタビューは主に女性アナウンサーのみでした)静岡でおすすめなものを紹介させ、そのあまりのステレオタイプの答えにがっかりしていました。時間がない中で、カットされた部分を斟酌するにしても、地元民のプライドはどこへ行ったのか? と思ってしまった一瞬でした。

今回、マツコさんがこの番組の出演を了解した背景には、やはり東京キー局が中心のテレビにあって地方局はどんな番組を作り、東京にないものを発信していく力があるかに興味を持ったのだろうと思ったのですが、それに十分応えられる人材が静岡朝日テレビに存在しないのか、その後の展開でも全くマツコさんのツッコミに対応できないやり取りが続いていきます。

私自身、地元を離れて地方に旅行しに行く場合、観光地化されている土産物店よりも、より普通の人が利用しているであろう地元独自に展開しているスーパーに入って、地元では見たことのないものを探そうとします。今回のマツコさんがスーパーに入った際に見ていたところがまさにそれで、局のプランには「静岡のスーパーで売っているマグロは他県に比べてレベルが高いのだ」というものしかなく、マツコさんがマグロ以外に静岡独自のものはないのかと聞かれてもすぐには対応できず、ようやくスタッフが「のっぽパン(沼津のメーカーが製造している細長いパンで静岡でしか販売していないものだがそう珍しいものではない)」と絞り出したものの、マツコさんが訪れたスーパーでは「のっぽパン」は扱っていませんでした。なぜかというと一般的な菓子パンとの競争に敗れた「のっぽパン」は一時期製造を中止しており、静岡駅構内など限られた場所でしか現在は売っていないためで、いかに場当たり的でマツコさんのキャラクターと台本に任せた番組進行をしているかというのが明らかになってしまったのでした。

当のマツコさんは、スーパーの中に売っていた「おはぎ」をマグロより先に食べてお付きの静岡朝日テレビの男性アナウンサーを慌てさせていましたが、臨機応変にマツコさんも唸るくらいの地元の名産品をなぜ出せないのか、個人的には実に不思議に思いました。

というのも、静岡だけではなく全国の地方局ではいわゆる定番のものではない地方の業者の方に取材し、その様子を夕方のワイドショー枠で紹介する企画を数え切れないくらい行なっています。そうしたノウハウを取材する中で培ってきたのに、なぜいざという時に出せないのかというのは、実は地方であるがゆえの卑屈さにあるのではないかと個人的には思っています。

東京ではそれこそ有楽町・銀座かいわいに行けば全国どこの名産品も手に入るのですが、日常的に食べるには高かったりする場合もあります。ほとんどの地元民が普通に食べていて「こんなものは東京の人にお出しするものではない」と思っているものの中に、実はマツコさんが欲しい未知の名物というものがあったかも知れないのに、それをみすみす放棄するような事前準備のなさと言うのか、自分で地元にあるお宝に気付かないのか、そういうことは全国を旅しているとよく感じることです。それと今回番組で最後に紹介した「冷凍マグロ」とは微妙にシンクロしてくるので、その点をもっとわかってくれば、マツコさんを唸らせるものをもっと番組の中で出せたのではないかと思うと大変残念でしたね。

ちなみに、最後には地元民でも食事代が高すぎておいそれとは行けない静岡市清水の末廣鮨でマグロの希少部位を食べつくすのですが、ここで初めてマツコさんは静岡にしかない名物のパワーを感じたのではないかと思います。

一般的に高級マグロというと、青森の大間で獲れた一本釣りのマグロということになるでしょうが、この末廣鮨では遠洋漁業で獲れたミナミマグロの冷凍マグロで勝負しています。食通からすると生でなく冷凍なんてと言われるかも知れませんが、冷凍といっても零下70度で一瞬にして凍らせるため、その食感は生とは別の味わいがあり、それは静岡に来ないと味わうことができない(つまり、いいものは東京に持って行かせない)と言う末廣鮨の大将の言葉にマツコさんは納得したのです。

結局は、きちんと食材に向かい合い、掛け値なしの真剣勝負をしてきた人の言葉でないとマツコさんの心を揺さぶらなかったということで、これはテレビ局の手柄ではなくあくまでも末廣鮨さんの手柄であると言えます。だったら取材するのは地元局ではなく東京のキー局でもいいということになるのですが、地元局の存在意義が無くなるような番組をよく嬉々として放送しているなと思った今回の地元局特番でした。このままではネット配信にやられて本当に地方局はいらなくなってしまうような気がします。本当にそれでいいのか、全国の地方にいる方にも考えてもらいたい問題提起のような番組であったことは確かでしょう。

(番組データ)

マツコ、静岡でマグロを喰らう。 静岡朝日テレビ
2020/03/09 18:57 ~ 2020/03/09 20:00 (63分)
出演 マツコデラックス  須藤誠人(あさひテレビアナウンサー)

(番組内容)

マツコ、静岡に降臨!!静岡が誇るマグロを堪能。世界一寒い!マイナス70℃の冷凍倉庫で悶絶。さらに寿司の名店でマグロの「超希少部位」に感涙!
◆店内騒然!?静岡のご当地スーパーへ 静岡はスーパーのマグロでさえもうまい?そんな噂を検証するためマツコがご当地スーパーへ。「○○マグロは知らない!」とマツコが驚いた さらに静岡の名産にも興味深々!?いったいマツコが気になったものとは?
◆冷凍マグロが眠るマイナス70℃の世界へ 世界一低温!?マイナス70℃の冷凍倉庫でマツコが大ピンチ!?「こぇええ」「すげぇぇええ」と大絶叫するマツコ。「死を感じた」というほど、衝撃的な体験に!!
◆有名人も通う 寿司の名店へ 冷凍マグロだからこそのおいしさを楽しめる寿司の名店へ。ここでしか味わえない超希少部位を使った「幻のマグロ」にマツコ大興奮! 静岡でマグロを喰らいつくしたマツコが思うこととは…。