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技術的には十分可能な「国会中継延長のサブチャンネル化」だが

2019年3月5日に地上波のNHK総合チャンネルで放送されていた「国会中継」は午後6時までで終了し、定時のニュースへと移行しました。番組の編成上の都合とは言え、国会での審議というのはスポーツ中継よりも国民に伝えなければならない情報だということは多くの人が一致する見解だと思いますが、NHKではサブチャンネルでの中継継続をしないで、深夜などに中継録画(ラジオの場合は録音)で残りを放送するという形を崩していません。

これは、放送技術の発達にともなってテレビが変わると地デジに変わる時に相当宣伝されたことと反するのではないかという気がしていて、NHKの真意を計りかねる思いを多くの人が抱いているのではないかと思います。

サブチャンネルの取扱について、スポーツ中継では主にNHKで頻繁に利用されているにも関わらず、民放ではほとんど利用されていないという問題もあります。ただこれは、定時の番組の裏に継続するスポーツを持ってくることによって、そのサブチャンネルでのコマーシャルはどうするのか? また、当初予定されていた番組のスポンサーがサブチャンネルを多くの人が見ることによって、広告効果が上がらなかったと言われたらどうするのかというような、民放の経営基盤を揺るがすかも知れない大きな問題をはらんでいます。しかし、最近ではスポーツ中継を延長するよりも、ドラマやバラエティを定時に見たいという人も少なからずいるため、今後はいい具合の棲み分けによって民放でのサブチャンネルの活用がうまくできるようになって欲しいと思っています。

さて、改めてスポンサーの影響のないNHKでの国会中継におけるサブチャンネルの扱いについて考えてみます。実に皮肉な話ですが、テレビが今でもアナログ放送だったら、現在の録画中継で十分だというところで話は終わっていたのですが、今後もNHKが同じような形を続けていくと、違ったところでの影響が考えられます。

ご存知の方も多いでしょうが、注目の国会質疑についてはインターネットテレビのAbemaTVで緊急中継を続ける場合もありますし、通常の国会中継の場合ではYouTubeのチャンネルで中継されています。つまり、今までテレビの方を見ていた人がネットの方に移動し、そのままテレビの方に戻ってこなくなってしまう可能性をNHKの中の人は考えたことがあるのでしょうか。2019年の映画の祭典アカデミー賞では、初めてビデオオンデマンドによる配信をしているNetflixが製作した映画が受賞したことでもわかるように、テレビと映画がタッグを組んで進めるビジネスモデルにも影響がこれから出てくるのではないかとすら思います。

そのNHKも、近い将時には総合テレビの内容をネットで同時配信しようとしているのですが、確かに停電でテレビが見られなくなったり、大きな災害時にはネットで配信する意義はあるかと思いますが、途中で打ち切られる様々な中継の続きを見たい人は、そのサイトから去られてしまう可能性をはらんでいるということも確かでしょう。

最近のスマホの中にはテレビのフルセグ(サブチャンネルを見ることが可能)を搭載している機種もありますので、いざという時には高速クーポンを消費するネット配信よりも、サブチャンネルを活用して様々な情報を流してくれる放送局があれば、スマホでテレビを見る人も増える可能性すらあると思っているのですが、今の状況ではそんな事も期待できないのではないでしょうか。

地方局は地元視聴者の立場で再放送・再配信を考えてほしい

大きな地震による広域災害でなくても、地域によってはテレビの放送が途切れることがあります。石川県にお住いの方で、1月10日夜から翌11日の間にかけて、同じ送信設備を利用している石川テレビ(フジテレビ系)と北陸放送(TBS系)が40万世帯で16時間以上見られなくなる状況が発生したのです。

これは、送信設備の鉄塔に落雷が起き、その影響で火災が発生したことによるのですが、同時に大雪が降ったことにより復旧に影響が出たようです。実際問題、テレビ放送というのはライフラインの一つに入れてもいいのかというかという事もありますが、フジとTBSの番組を楽しみにしていた方には気の毒としか言いようがありません。

単に、災害のための報道という点で見ると石川県にはこの二局だけではないのでニュースなどの受信には影響がなく、またラジオを使えば情報は入ってくるとは言いつつも、たとえ災害には関係ないバラエティ番組といえども楽しみにしていたものが見られないというのは悲しいことだろうと思います。

北陸放送のフェイスブックを見ると、自社制作の番組については放送できなかった分を翌週に伝える旨のコメントがありましたが、東京制作の放送の再放送をどうするのかという点については二局のホームページやSNS上でも具体的な対策については語られていませんでした。また、北陸放送ではケーブルテレビでは中断することなく全ての番組を放送していたのとことで、地域によってはテレビアンテナに頼るよりも、基本ケーブルテレビで視聴し、もしケーブルテレビに不調があったらワンセグを使って復旧するまでの代替として利用するような方向で考えた方がいいかも知れません。

地上波と比べてBSやCSは局地的な災害に影響されず、アンテナさえ衛星に向けられれば見えるという点で有利なところはあるものの、厚い雲に覆われて天気が悪くなると相当高性能なアンテナを使わないと画面がまっ暗になって見えないトラブルに地域によっては見舞われることがあります。

こうしたトラブルと同じように考えると、テレビ局自体が落雷被害により送信できなかった分の放送については、必ずしも代替放送をしなくてもいいということにもなるので、どうしても当日の番組が見たいと思った人は諦めるしかないかと思うところがあるのは確かです。

ただあくまでテレビ放送を流せなかったテレビ局側が視聴者の事を思って再放送ができるならやって欲しいですし、地域限定で可能にならないかと思うのが、流せなかった番組を一定の期間だけその局のホームページから「見逃し配信」することができないかということです。自社制作の番組なら簡単だと思うのですが、東京や大阪で制作された番組の場合、権利関係がどうなっているかということですね。まず、地元テレビ局には、ドラマや一部バラエティなど既存のインターネットサイト「TVer」や、系列局の見逃し配信を行なうサイトで見られる番組を確認し、視聴者をそのサイトに誘導することです。少なくともこれで、どうしても見たいドラマやバラエティ番組がある人の何割かはネット経由ではありますが番組を見せることができます。

問題になるのは、そうした「見逃し配信」の対象になっていない番組をその地域限定で一定期間でネット配信ができないかということでしょう。もし、こうした事故に関する取り決めがないようなら、地方局とキー局との間ですぐに話し合いを行ない、「TVer」の方で地域限定で流すのか、それとも地方局のホームページに見逃し配信コーナーを臨時に作るのか、そもそも再配信自体が必要ない事として無視をするかをしっかりとアナウンスしていただければ、今後私たちがテレビに固執して地元局を見るようにするのか、地上波は終わったと思ってネット配信を中心に見る視聴者が増えるのか、そんなところにも影響が出てくるのではないかと思います。

現実的には違法にYouTubeにアップされた番組を見ている人は見ていると思うのですが、こうした時にこそきっちりとした判断で正式な形でネット配信の番組を見せるようにしないと、今後も違法にアップされ続けるテレビ番組についてそこまで強く糾弾できなくなることも考えられなくもありません。

このブログでは違法なアップロードを支持するつもりは決してありませんので、地方局が今後生き残って行くためにも、今回の問題で放送中断があった石川テレビと北陸放送には、しっかりとした地元視聴者へのアフターフォローをしていただけることを希望します。

「番組単体課金」の実現がエンターテインメントを変えるかも

日本ではどうしても東京中心に人が集まりがちになり、地方から若年層がいなくなってしまうのが問題になっていますが、地方在住の身からするとまだ特に都市部から地方への歩み寄りが足りないのではと思うことがあります。

ただ、インターネットとBSやCSテレビが使えるようになってかなり地方でも買いたいものが買え、見たいものが見られるようになってきたとは思います。楽天やYahoo!、そしてアマゾンで買い物をして、支払いはコンビニを使うことで離島の場合は余分に送料はかかりますが、価格的には十分安いものを直接購入することは可能になりましたし、衛星放送やネット配信なら日本国内にいれば全て同じプログラムを楽しむことができるわけですから、直接見に行けないもの以外は何とか楽しむことができると考えることもできます。

ただ、地方だとどうしても叶わないのが生のライブを直接見られなかったり、大都市でなければ商売にならない映画や演劇・演芸を見る機会が持てないことではないでしょうか。こうしたディメリットを払拭するために、全国各地には多くのイベンターのような事をやっている人がいて、自分で映画やコンサートを企画してしまうというケースもあったわけですが、それはそれで素晴らしいことではあると思いつつも、皆のために呼んでくれる個人がいなくなってしまえばなかなか続かないことも事実です。

そんな中で、テレビの薄型化・高画質画が進み、インターネットも高速回線が普通になっていくとエンターテインメントについてはテレビで出来ることは相当あるのではないかと思うことがあるので、ここで書かせていただきたいと思います。

すでにあるテレビ番組の場合、今後東京でしか放送されていない深夜枠の番組や、そもそも地方に系列局のないテレビ東京をどうするのかという問題がありますが、今回書きたいのはその種のことではありません。例えば落語の好きな人だったら有名な寄席であったり、音楽であればライブハウスであったりします。演劇なら小劇場でもあったりするのですが、要は今まで東京へ行かなければ見られなかった様々なエンターテインメントをカメラに映したものをそのまま中継することで見せる方法はないのか? ということです。

大きなコンサートの場合にはBSやCSで生中継をしている場合が多いですが、ユーザーからするとちょっと使い勝手が悪いと感じるところがあります。例えば、局の番組の中でも一つのコンサートやスポーツ中継が見たいという場合、多くの有料サービスは月単位の契約を要求するわけですが、月額の料金を支払うことについてはしょうがないと思うものの、自らサービスに入会した場合に改めてサービスを解約しないと見もしないプログラムについての毎月の負担が生まれてしまいます。

東京でコンサートやスポーツを見に行く場合は予約するにしろ当日券を購入するにしてもその日一回のためのチケットを購入するだけで済むので、その点が気楽でお手楽な都市生活の強みだと思えるとともに、もしCSでもネット配信でも、見たいプログラム1つからでも利用できるエンタメ系サービスがあれば、自分の興味に沿ったサービスを展開していればかなり生活の質が都市でのそれと近くなるのではないでしょうか。

例えば、「ジャズ」というジャンル一つ取っても様々な嗜好の差があります。有名な海外のミュージシャンが来日したセッションなら見たいが、わけのわからない国内アーティストには見向きもしない人もいれば、国内でも特定のライブハウスでしか演奏しない人が位好きな人もいます。それが「ブルーノート東京」と「新宿ピットイン」のような通うライブハウスの違いになってくるのなら、各ライブハウスに簡単な中継設備を置き、毎日のライブを連日配信する中で、見たい人は月間のスケジュールを見てそのメンツによって1ライブからでも番組配信を購入できるようなサービスがあれば、ネット配信を大画面テレビに映すことで、生の臨場感までは行かなくても地方在住でもかなり都会並みに楽しめるのではないかと思います。

多くのエンターテインメントで、特に地上波やBSでもめったに見られないミュージシャンや劇団、落語、地下アイドルなど、太い回線を用意しなくても良さそうなジャンルであれば設備投資(特に中継回線)の問題は回避できると思いますし、演ずる側にもその料金の一部が行き渡るというなら「絶対にテレビでは見られない」という人の出演となれば、コンサートのチケットより少し安いような金額でも売れるのではないかと思うのです。

料金の支払いを電子マネーにして、送金完了したらその番組だけを見るためのワンタイムパスワードを送るようにするとか、何かしら使えるアイデアはあると思うので、個人的にはCS放送でもこうした一番組だけの視聴が実現できないかなと思います。こうした視聴方法が一般化すれば、逆にテレビは地方にはなくてはならないものになっていくかも知れません。