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「山谷」をバラエティで簡単に扱う人の根底にあるもの

現代の日本のテレビは様々な「コンプライアンス」にがんじがらめになっていて、昔のテレビと比べると明らかにテレビ制作者がやりたいことができないようになってきているということは当然あります。だからこそ、そんな制約の中で面白い番組を作っている人や番組は応援したいという風に思っているのですが、流石に今回の「山谷」に行くというのは反則ではないかと、見ていて違和感を覚えました。

ただ、このような「地域の有名人」に取材しその人の様子を笑うという番組はあり、最近は複数の番組でそうした事を毎回やっているような番組も存在します。昔の「天才たけしの元気が出るテレビ」(日本テレビ)や「さんまのからくりテレビ」(TBS系)では番組の方からの演出もあったのかも知れませんが、最近の番組ではそうした強烈なキャラクターをそのままカメラの前に出し、強烈な個性を持つ人を取り合っているような感じもあります。「月曜から夜ふかし」(日本テレビ)で注目されたキャラクターがなぜか「町のご意見番」として「バイキング」(フジテレビ)に出ていたりしているのも、そこまでテレビはキャラクター不足でなさそうなのにとも思ったりします。

今回、山谷にいる人の「あだ名」について調査するということで山谷の町や飲み屋に取材カメラが入ったわけですが、当然ながらまともにカメラの前に顔を出せるような人は少なく、露天市である「ドロボウ市」にいたってはそこに集まる人の顔を出すことはもちろん、場所の特定すらもコンプライアンスの関係でしませんでした。山谷に生きる人の事を楽しく番組出演者は見ていたような感じではあるのですが、そもそも山谷とはどんな街で、そこで生きる人はなぜ集まってきたのか? というような予備知識なしに単にその人個人のキャラクターを面白がるというのは、それこそ山谷地域に住んでいる小学生と同じレベルの興味の持ち方ではないかと思えます。

現在の山谷はもはや単なる日雇い労働者の街ではなく、生活保護を受けて生きる人の方が多くなっている「貧困」「高齢化」という正に未来の日本の一部はこうなってしまうのではないかと思われる様々な問題が渦巻いている街です。そうした街の歴史や内情を知っている人がテレビ視聴者に多くいるなら説明不要で一気に現場報告でもいいとは思うのですが、「山谷」という場所で取材するなら今回は「銀座のあだ名」は別の回に回して一回分濃密に山谷を紹介するような形でも良かったのかなと思いますね。

今後、単なる興味本位なだけで今後山谷や釜ヶ崎、寿町のようなところでロケをするような企画があったとして、番組を見た人にとっては残るのは大きな違和感と偏見だけで、それがまた街のイメージを悪くし、ひいてはそこに住む人の居住環境を悪くすることにテレビが一役買ってしまう事も十分に有りえます。全く山谷を知らない人にとっては、単に面白がって作ってしまったテレビの企画によってその人の考えが形作られてしまうわけで、その辺は十分考えてこうした対象と向き合っていただければと思います。

(番組データ)

親愛なる、あだな様【噂のあだ名を大調査~銀座高級クラブの世界~】テレビ東京
2019/06/18 00:12 ~ 2019/06/18 01:00 (48分)
【出演者】
山崎弘也(アンタッチャブル)
大久保佳代子(オアシズ)
向井康二(Snow Man/ジャニーズJr.)
福田典子(テレビ東京アナウンサー)
あだな調査隊

(番組内容)

【銀座の高級クラブ】 座っただけで3万5000円以上もかかる銀座の高級クラブ。それを支えるのが「ドンペリママ」「銀座の女王蜂」など強烈なあだなを持つママ達!さらに、そんな高級な場所に来るお客さんにもあだな調査をすると…「イヤホンマン」「銀座の先生」などクセが強すぎるキャラが続々!さらに伝説のスカウトマン「銀座の黒服王」にも密着調査。
【日本3大ドヤ街 山谷】 日雇い労働者の街として知られる山谷には、「キャッチボールおじさん」「お上手さん」「ニタリ」など、不可思議でワケありのあだな様だらけ!さらに「ドロボウ市」と呼ばれるディープスポットにも潜入。


最後の役名が「大杉漣」だったドラマをネット経由で見る気持ち

このドラマの前のシリーズから興味を持って見ていたこともあり、新たに名脇役と言われる人たちを中心として「ドラマ内朝ドラ」を島で撮るという設定に、見たいなと思いながらテレビ東京の見られない地域にいる私はまだるっこしい思いをしていたのですが、そんな時に入ってきたのがこのドラマを撮影中に心筋梗塞でお亡くなりになったドラマの主役中の主役と言える大杉漣さんの訃報でした。

亡くなった時の状況が、ロケ地近くのホテルに宿泊中、腹が痛くなってドラマ共演者のグループLINEでその旨を発信したところ、劇中でも他の出演者の食事や生活の世話をかいがいしく焼きながら「バイプレーヤーズ」の中でも一番の年下ということから貧乏くじを引くという風に描かれていた松重豊さんで、臨終にも家族や番組スタッフとともにドラマで共演したメインキャスト4名(松重豊・田口トモロヲ・光石研・遠藤憲一の各氏)の方が立ち合ったということでしたので、当初はこの後のドラマは放送されるのか、放送されたとして私の住んでいる地域で放送してくれるのはいつになるのかと半ば絶望的な気分になりました。

大杉漣さんについては多くのテレビドラマや映画で悪役だけでない様々な役をされているのを拝見しているだけでしたが、サッカー好きでギターも弾けて、人生を楽しみながらも役者としての存在感の高さから、これからどんなドラマや映画で活躍してくれるのだろうと思っていただけに66才という若さでの急逝というのは全く実感がわいてきませんでした。そんな中で、もしかしたらテレビ東京のネットがない場所でも見られるかも知れないと一縷の望みを持ってアクセスしたのが民放の番組を放送直後に配信してくれる「TVer」というサイトでした。

大杉さんの訃報があった時には第3話放送前だったので、私が気付いた時には「TVer」では第3話からしか見ることができなかったのですが、その3話では田口トモロヲさんが熱を出して寝込んでいる設定で、大杉さんは第3話ゲストの女性版バイプレーヤーズに囲まれてカラオケに没頭して前シリーズのエンディングテーマ「フォーエバーヤング」を歌いながら田口トモロヲさんのLINEからのSOSに気付かないという、まさにご自身の経験の逆を演じていられていたことに、もしかしてこんなシーンを撮ったから連絡をグループLINEで発信したのかと見て思ったりしました。

その翌週、ご遺族の好意によってドラマ終了まで(第5話)放送が続くことになり、第4話の配信があったと思ったら、これもテレビ東京のご好意なのか前週には見られなかった第1話から第3話までも見られるようになっていました。そこで改めて時間を作って第1話から通しで第4話まで見ることができました。これはテレビ東京の非ネット地方民にとっては大変ありがたいことであり、テレビ東京が見られない地域にいる人が大杉漣さんが最後にどんなドラマに出ていたのかという想いに応えてくれた近年まれにみる英断だったと思います。

そんなこんなで先日、本放送から若干のタイムラグがあるものの、無事にネット経由で第5話の最終回を見ることができました。最後まで大杉さんが撮影をこなしたわけではないので、ドラマ内朝ドラの打ち上げパーティーが開催しているのに大杉さんだけドラム缶風呂に入っているという変な演出になってしまっていますが、それでもオフショットの大杉さんのブルースハープの奏でている様子などをドラマ内でそのまま流したりしながら、見事に大杉さんが撮影を全うしたような形に仕上げていたのはさすがでした。

それにしても、まだ大杉さんが元気でお芝居をしている中で、島で共同生活をしていた家を改造して「大杉漣記念館」にしようとか、しかも有料で大人から800円入場料を取るなどと大杉さんの神格化をドラマ内でしていたというのは改めてドラマとして見るだけでたまらない気持ちになってしまいます。その後の現実の結果を知っているというのは何と残酷なことか、そんな事を思いながらドラマを堪能させていただきました。

残念なのは、私自身はラッキーにもこのドラマをネットを通して全て通して見ながら大杉漣さんを偲ぶことができましたが、第5話が配信されると同時に第1話から第4話については見られなくなってしまいましたし、「TVer」で再配信されることを早めに気付いた人以外のテレビ東京非ネット地域にお住まいの人は、ドラマを見られるかどうかは地元の放送局が番組をテレビ東京から購入するか、それともビデオオンデマンドで配信されるのを待って見るかというように、見る手段が限られてしまうということです。

このドラマは大杉漣さんの役者としての生き様ということを考えると、もっと多くの人に見て欲しいものであったのですが、地域差で見られない人が出てしまうというのは本当に残念です。テレビ東京のドラマだからということで終わりにしないで、やはり都市部と地方との情報格差を無くすという意味でも、地上波で放送されている番組については何とか民放連ででも話し合ってテレビ東京ないし他の民放がネットされていない地域で同時配信が行なえるような事はできないのかと改めて思った今回のネットによるドラマ視聴でした。

(番組データ)

バイプレイヤーズ~もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら~ テレビ東京
2018/03/07 21:54 ~ 2018/03/07 22:48 (54分)
【メインキャスト】遠藤憲一 大杉漣 田口トモロヲ 松重豊 光石研 (※あいうえお順)
ジャスミン…北香那
【朝ドラキャスト】 本田望結 吉田羊 野間口徹 森下能幸 滝藤賢一 でんでん 渡辺いっけい
【脚本】 ふじきみつ彦
【監督】 松居大悟 佐藤洋介
【オープニングテーマ】 10-FEET「Fin」 (BADASS / EMI Records)
【エンディングテーマ】 竹原ピストル「ゴミ箱から、ブルース」 (SPEEDSTAR RECORDS / VICTOR ENTERTAINMENT)
【制作】 テレビ東京 ドリマックス
【製作著作】 「バイプレイヤーズ2018」製作委員会

(番組内容)

大杉漣さんありがとう!
バイプレイヤーより愛を込めて…「しまっこさん」撮影中止の危機をバイプレイヤーが救う!おじさん達の共同生活もついに最終回…

【第5話】 「バイプレイヤーより愛をこめて」
「しまっこさん」のクランクアップを間近に控えたある日、予知夢のような夢を見た大杉は、スタッフへの恩返しを決意する。そんな中、島おじさんと島ママの撮影は終了!その日に島を離れることにした遠藤、田口、松重、光石の4人だが、島ハウスを出る前に大杉が書いたある手紙を発見する…。
スタッフ不足で混乱中の現場で、ひとり残った大杉が取った行動とは?「しまっこさん」は一体どうなるのか!?おじさん達の共同生活もついに最終回!