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「フェイクニュース」全盛の時代に地上波でも「フェイク番組」が

何の予備知識もなく深夜にこの番組を見た方は、ひどく消化不良を起こしたのだろうと思います。よくBSでありそうな一つのテーマ(この番組では「パン屋探訪」?)を基本に街歩きをし、出演タレントの魅力とともにテーマを視聴者に伝えるような番組であることを期待して見ていた人は裏切られ、恐らく今後も裏切られ続けるだろうと思います。

このブログの最後に紹介している「番組内容」はこちらが独自に書いたものではなく、テレビ局経由の紹介に基づいているものをそのまま紹介しているのですが、そこで書かれている「お店にお邪魔」ではなく「お店をお邪魔」して、秋山さん自身が「クリエーターズファイル」で行なっているように、自論(もちろん事前の設定がある「フェイク」満載の)を延々と述べることで、予定調和を崩しつつ絶妙な笑いの世界を作り出しています。

同時にYou Tubeで公開されているナレーションの斎藤ちはるアナウンサーの番組収録後のインタビューも実に確信犯的で(スタッフが番組内容をナレータに伝えないまま収録させたのではないかと感じさせる雰囲気を出していました)、かなり秋山さんとスタッフが綿密に打合せをして作っているという印象を受けました。

逆に言うと、街ぶら番組を期待してこの番組を見て、あまりにも目論見が外れてテレビ局に抗議してくるような人がいたら、それは番組にとっては目論見通りであると言えるわけです。一応、番組上の設定で事実と違うことについては、番組最後にテロップで流しているのでその点では問題がないと思います。

さらに、この番組を「フィクション」と呼ぶのも違うような気がします。訪れたパン屋さんは実在し、秋山さんは食べてまともなコメントは言わないながらも画面からおいしそうなパンを紹介していますし、全てが「フィクション」ではありません。

つまり、この番組は最初に書いたような「街歩き的食べ物ガイド」(番組のコンセプトからはNHK BSでシリーズ化されている「パン旅」を意識している?)を茶化し、あえて今はやりの「フェイク」を入れながらゆるーく笑ってもらいたいというコンセプトの番組であって、フェイク情報を出しているからと言って怒り出すのは間違いだということです。

そうしたコンセプトを理解した、秋山さんの話の中から出てきたキーワードをスタッフが事後取材するのも面白く、「御殿場アウトレット」あたりの広報の人が今回実際に出演してフェイク拡散に貢献し、番組の面白さを引き出すことに貢献した椎名林檎さんのように、茶目っ気ある回答をしてくるようになると(スタッフの入れ知恵も含めて)、さらに番組の可能性が広がって面白くなるような気がします。今後の番組の成長に期待したい、そんな番組ですね。

(番組データ)

秋山とパン テレビ朝日
2020/10/08 01:56 ~ 2020/10/08 02:16 (20分)
【出演】秋山竜次(ロバート)
【ナレーション】斎藤ちはる(テレビ朝日アナウンサー)
【VTR出演】椎名林檎

(番組内容)

ロバートの秋山竜次が、街で愛されるパンの名店を訪れ、お店ご自慢のパンに舌鼓を打ちます。美味しいパンと小粋なおしゃべり。真夜中にあなたのお腹を鳴らします。

どの国の、どんな街にもパンはある。 人生のいかなる瞬間にも優しく寄り添ってくれる存在、それがパン。 初回の本日は、六本木にあるクロワッサンが絶品と噂のお店にお邪魔します。さてどんな小粋なおしゃべりがとびだすのでしょうか。 真夜中にあなたのお腹を鳴らします。


これじゃ地方局はネット同時配信の流れの中生き残れない

この番組は、年度末の時期に地方局が夜7時代のゴールデンタイムに主に県内の視聴者に向けて自社制作の番組を発信するという形の番組ですが、TVerで見逃し配信として一定期間見られるようなのでここで紹介することにしましたが、静岡県(特に静岡市)在住の身としては、ただただ恥ずかしい番組であったということをまずは感じました。

なぜかと言うと、テレビ朝日系の件の番組のようにタレントのマツコ・デラックスさんを連れ回す番組で、しかも「静岡」の特色というものをマツコさんに知って欲しいというコンセプトの番組であるのに、ことごとく番組の進行や事前準備の足りなさをマツコさんに指摘され、ついにはマツコさんが決して豊富ではないだろう静岡に関する知識や、バラエティを面白くするためのツッコミについて全く対応できない現場のスタッフの愚かさが目立っただけの番組で、本当にスケジュールを調整して静岡まで仕事をしにきてくれたマツコさんに申し訳ないと、テレビの仕事とは全く関係ない私ですら思ってしまうほどの「仕上り」に終止していたのです。

基本的にはいわゆる「マツコの知らない世界」的な効果を狙って、「静岡にはこんなすごいものがあるんですよ」ということをマツコさんや視聴者に見せる番組であったと思うのですが、これは静岡に限らず地方の人々が陥りやすい罠にハマっているということでもあるので、番組の成り行きとともにその駄目なところを紹介させていただこうかと思います。

最初にマツコさんは番組を制作する静岡朝日テレビの正面玄関に到着し、局員およびアナウンサーの歓迎を受けるのですが、マツコさんがはじめにやったことは、東京から出向してきているセント・フォースのキャスターに手を挙げさせ、その個人への批判でした。別にセント・フォースが悪いということではないのですが、セント・フォースと静岡朝日テレビと言うと、局アナとして入社したものの地方局への入社をステップアップととらえたのかどうか知りませんが、人気が出てきた時点でセント・フォースに移籍してしまった牧野結美アナウンサーとの浅からぬ因縁があります。さらにマツコさんは静岡県内出身のアナウンサーに手を挙げさせました。これは、やはり地元のテレビ局はその土地で育った人材を大切にしないとというメッセージだったのかと思いますが、その彼女らに(インタビューは主に女性アナウンサーのみでした)静岡でおすすめなものを紹介させ、そのあまりのステレオタイプの答えにがっかりしていました。時間がない中で、カットされた部分を斟酌するにしても、地元民のプライドはどこへ行ったのか? と思ってしまった一瞬でした。

今回、マツコさんがこの番組の出演を了解した背景には、やはり東京キー局が中心のテレビにあって地方局はどんな番組を作り、東京にないものを発信していく力があるかに興味を持ったのだろうと思ったのですが、それに十分応えられる人材が静岡朝日テレビに存在しないのか、その後の展開でも全くマツコさんのツッコミに対応できないやり取りが続いていきます。

私自身、地元を離れて地方に旅行しに行く場合、観光地化されている土産物店よりも、より普通の人が利用しているであろう地元独自に展開しているスーパーに入って、地元では見たことのないものを探そうとします。今回のマツコさんがスーパーに入った際に見ていたところがまさにそれで、局のプランには「静岡のスーパーで売っているマグロは他県に比べてレベルが高いのだ」というものしかなく、マツコさんがマグロ以外に静岡独自のものはないのかと聞かれてもすぐには対応できず、ようやくスタッフが「のっぽパン(沼津のメーカーが製造している細長いパンで静岡でしか販売していないものだがそう珍しいものではない)」と絞り出したものの、マツコさんが訪れたスーパーでは「のっぽパン」は扱っていませんでした。なぜかというと一般的な菓子パンとの競争に敗れた「のっぽパン」は一時期製造を中止しており、静岡駅構内など限られた場所でしか現在は売っていないためで、いかに場当たり的でマツコさんのキャラクターと台本に任せた番組進行をしているかというのが明らかになってしまったのでした。

当のマツコさんは、スーパーの中に売っていた「おはぎ」をマグロより先に食べてお付きの静岡朝日テレビの男性アナウンサーを慌てさせていましたが、臨機応変にマツコさんも唸るくらいの地元の名産品をなぜ出せないのか、個人的には実に不思議に思いました。

というのも、静岡だけではなく全国の地方局ではいわゆる定番のものではない地方の業者の方に取材し、その様子を夕方のワイドショー枠で紹介する企画を数え切れないくらい行なっています。そうしたノウハウを取材する中で培ってきたのに、なぜいざという時に出せないのかというのは、実は地方であるがゆえの卑屈さにあるのではないかと個人的には思っています。

東京ではそれこそ有楽町・銀座かいわいに行けば全国どこの名産品も手に入るのですが、日常的に食べるには高かったりする場合もあります。ほとんどの地元民が普通に食べていて「こんなものは東京の人にお出しするものではない」と思っているものの中に、実はマツコさんが欲しい未知の名物というものがあったかも知れないのに、それをみすみす放棄するような事前準備のなさと言うのか、自分で地元にあるお宝に気付かないのか、そういうことは全国を旅しているとよく感じることです。それと今回番組で最後に紹介した「冷凍マグロ」とは微妙にシンクロしてくるので、その点をもっとわかってくれば、マツコさんを唸らせるものをもっと番組の中で出せたのではないかと思うと大変残念でしたね。

ちなみに、最後には地元民でも食事代が高すぎておいそれとは行けない静岡市清水の末廣鮨でマグロの希少部位を食べつくすのですが、ここで初めてマツコさんは静岡にしかない名物のパワーを感じたのではないかと思います。

一般的に高級マグロというと、青森の大間で獲れた一本釣りのマグロということになるでしょうが、この末廣鮨では遠洋漁業で獲れたミナミマグロの冷凍マグロで勝負しています。食通からすると生でなく冷凍なんてと言われるかも知れませんが、冷凍といっても零下70度で一瞬にして凍らせるため、その食感は生とは別の味わいがあり、それは静岡に来ないと味わうことができない(つまり、いいものは東京に持って行かせない)と言う末廣鮨の大将の言葉にマツコさんは納得したのです。

結局は、きちんと食材に向かい合い、掛け値なしの真剣勝負をしてきた人の言葉でないとマツコさんの心を揺さぶらなかったということで、これはテレビ局の手柄ではなくあくまでも末廣鮨さんの手柄であると言えます。だったら取材するのは地元局ではなく東京のキー局でもいいということになるのですが、地元局の存在意義が無くなるような番組をよく嬉々として放送しているなと思った今回の地元局特番でした。このままではネット配信にやられて本当に地方局はいらなくなってしまうような気がします。本当にそれでいいのか、全国の地方にいる方にも考えてもらいたい問題提起のような番組であったことは確かでしょう。

(番組データ)

マツコ、静岡でマグロを喰らう。 静岡朝日テレビ
2020/03/09 18:57 ~ 2020/03/09 20:00 (63分)
出演 マツコデラックス  須藤誠人(あさひテレビアナウンサー)

(番組内容)

マツコ、静岡に降臨!!静岡が誇るマグロを堪能。世界一寒い!マイナス70℃の冷凍倉庫で悶絶。さらに寿司の名店でマグロの「超希少部位」に感涙!
◆店内騒然!?静岡のご当地スーパーへ 静岡はスーパーのマグロでさえもうまい?そんな噂を検証するためマツコがご当地スーパーへ。「○○マグロは知らない!」とマツコが驚いた さらに静岡の名産にも興味深々!?いったいマツコが気になったものとは?
◆冷凍マグロが眠るマイナス70℃の世界へ 世界一低温!?マイナス70℃の冷凍倉庫でマツコが大ピンチ!?「こぇええ」「すげぇぇええ」と大絶叫するマツコ。「死を感じた」というほど、衝撃的な体験に!!
◆有名人も通う 寿司の名店へ 冷凍マグロだからこそのおいしさを楽しめる寿司の名店へ。ここでしか味わえない超希少部位を使った「幻のマグロ」にマツコ大興奮! 静岡でマグロを喰らいつくしたマツコが思うこととは…。


「スポーツ大将」は権威に文句も言えないから打ち切られるのか?

先日、ネットニュースを見たら「スポーツバラエティの難しさ」という事をテーマにして「ビートたけしのスポーツ大将」が2018年9月いっぱいで打ち切られることが決定したという内容でした。

前回にはちょっと心配しながら、2020年まで続くのかどうかということがありましたが、まさか1年も持たずに終了するとは思いませんでした。ただ、スペシャルで時間を伸ばすのはいいとしても、毎週放送せずに休止が多いというのはいただけません。同じようになかなか進まないTwellVの「チャリお遍路」でさえ、進まない時には再放送で凌いでいるのに、野球中継以外の事で簡単に別番組に振り替えるというのは、やはり本気でスポーツバラエティを作る気がないと思われても仕方のないところがあったのではないかと疑ってみたくもなるものです。

今回のスペシャルはその「チャリお遍路」の最新回を見た後に残りの部分だけ見たのですが、番組の最後にとんでもない「忖度」を見てしまったのです。さらに、その事について番組出演者は一切異論を出しませんでした。

どういう事かというと、元プロ野球選手で長嶋茂雄氏が読売巨人軍監督時代に活躍したピッチャーである西本聖氏が出て来て選手時代の想い出話をしたのですが、その内容について、広島カープとの対戦で投げていた西本氏は、味方が大量リードをしているにも関わらず、1イニングに3つも死球を当ててしまい、最後には引き分けに持ち込まれてしまったのですが、試合終了後にスタッフから角盈男さんとともに監督室に呼び出され、そこで何と20発ものビンタを受けたというのです。

この内容を時間が経ってから読まれる方のために、番組が放送されている少し前に起こった事について書いておきます。スポーツとパワハラ、体罰など多くの事がからんで問題になった女子体操選手とそのコーチの暴力について朝や昼のワイドショーで紹介される中で、あるテレビ局がコーチが本気で一発ビンタをその選手にしている姿(関係者による盗撮とおぼしき動画)を流し、番組の司会者やコメンテーターが「暴力を伴う指導は絶対にダメ」ということをテレビを通じて言っている内容を何度も放送しているということがあったばかりなのに、いくら昔の話とは言え、いくら長嶋茂雄氏からビンタを受けた側の西本さんがその暴力について問題にしていないからと言って、例えば「今ではそんなことをやってはダメでしょ」くらいのツッコミも入らなかったのには驚きました。

テレビ朝日は長嶋茂雄さんの息子の長嶋一茂氏を「モーニングショー」金曜レギュラーコメンテーターとして起用し、過去には娘の長島三奈氏を同社の記者としてスポーツ取材にあたらせていましたが(長島三奈氏は現在フリーで活躍しています)、そういう事も関係があるのか? と疑った人がいたとしてもしょうがないくらいの内容です。

今回のゲストの中には西本聖氏の他に読売巨人軍の元選手としては定岡正二氏と元木大介氏がいましたが、長嶋茂雄監督は怒ると怖いという話に相槌を打つばかりでした。そうした理屈が通るなら、過去にひどいビンタをした体操コーチの所業については長嶋茂雄氏と同じように問題にならないのか? と思ってしまいます。

どうもこの辺が私自身はテレビのいいかげんなところではないかと思っていて、いやしくもスポーツバラエティを名乗るなら、今のスポーツをとりまく話題についてはキチンと抑えつつ、現代の社会の中でこうしたスポーツ選手と監督・コーチとの関係についてもしっかりとした指針を持ってコメントでもテロップでも入れていくようにしないと、改めてスポーツ指導における体罰(暴力)肯定派が力を持ってくることにもつながりかねません。バラエティと言えども単に面白ければいいのではなく、ナーバスな問題については十分に考えた上で作った方がいいのではないかと単純に思ってしまうのです。

今回の番組を見ていた人の中にも、そうした違和感を持った方はいるのではないかと思います。そのような疑問にテレビ朝日はどう答えるのでしょう。果たしてテレビ朝日にそこまでの覚悟を持って過去の体罰を肯定するような発言をそのまま流してしまったのか、個人的には大変気になります。

(番組内容)

ビートたけしのスポーツ大将 2時間スペシャル 桑田真澄野球対決&名場面秘蔵映像 テレビ朝日
9/16 (日) 18:57 ~ 20:54 (117分)
出演 ビートたけし・ナインティナイン 他

(番組データ)

今回は豪華2時間SP「名場面&秘蔵映像!あの時実は○○だったSP」「桑田真澄vs最強中学生ナイン」さらに、テニス「大坂なおみvs最強中学生対決」も!熱戦に大興奮!

日本男子マラソン界のレジェンド 瀬古利彦 五輪5大会連続出場し、5つのメダルを獲得した柔道界のレジェンド 谷亮子 長嶋茂雄率いる巨人軍のエースとして活躍した野球界のレジェンド 西本聖 誰もが知っている名場面のウラにはたけし・ナイナイも知らない事実が隠されていた!? 驚きの新事実を見逃すな!

“野球対決”では、 PL学園で甲子園に5季連続出場、通算20勝を記録し、プロ野球で通算173勝を誇る投手 桑田真澄 NPB歴代最高となる3021試合出場を誇る捕手 谷繁元信 が登場! さらに“テニス対決”では、 大坂なおみvs最強中学生が実現! 豪華レジェンドアスリートvs次世代アスリートのガチンコ対決を見逃すな!!


「スポーツ大将」レギュラー化は成功するのか

テレビ朝日が27ぶりの放送と気合いを入れている「ビートたけしのスポーツ大将」ですが、すでにTBSには「炎の体育会」がありますし、同じテレビ朝日には改編期や正月のスペシャル番組として続いているとんねるずの番組もあります。さらにオリンピック後の特番などでメダリストをもてなすような番組まで含めると、特段の目新しさはすでになくなりつつあると言えるでしょう。今から新しく番組を作るにしてもそこまでのワクワク感はないのではと思ってしまいます。

なぜなら、世界を相手にして戦うだけのポテンシャルを持ったスポーツ選手のうち、テレビのバラエティに出てくれる現役選手の数は限られるので、出てくれるような選手達は当然他局のスポーツバラエティにも出ますし、その一流アスリートと対決するキッズについても、すでに今回見た「スポーツ大将」の初回放送分から先日放送された「炎の体育会」に出たばかりの子が「スポーツ大将」にも出てきました。つまり優れた人材を出そうとすればするほど、人選によるサプライズが演出しにくいのです。

ただそんな中でも、27年前から始まった同じ番組から生まれたレールの上を走って一般ランナーと競う当時のテレビ朝日の美術スタッフが精魂込めて作った「カール君人形」から派生した「北野暴流闘(きたの・ぼると)君」がどのように仕上がっているかが今回の番組の見どころだと思って見ていました。この点については過去の特番でも使っていたからなのか動作が安定しているようで、多少の誤差はありますが、100メートルをおおよそ10秒以内でコンスタントに走る能力を身に付けていたのはさすがでした。昔のカール君人形は人が押すことでスタートさせていたためか、レールを外れて出走不能になるような事もたまにはありましたが、今度はそうした事故も最小限に抑えることができれば、全国のアマチュアスポーツを楽しむ人たちの目標とすることも可能だと思います。

しかしながら、今回の内容や公式ページで紹介されている次回予告を見た範囲では、オリンピックを目指す子供を一流アスリートと対決させる事を主にやるようなので、こうした企画だけではどうしても種目や出場者のインフレが起こって回数を重ねるごとに番組としての魅力が薄れるかも知れません。さらに悪いことに前日の土曜に放送される「炎の体育会」があるので、同番組との企画や出演者のダブリが目立つようになったら、わざわざ見なくてもいいやとなってしましまいかねません。こうした状況を逆転するためには放送日を金曜日にできれば良かったですが、それができない以上、現状では過去の番組を見たことのない人からすると、炎の体育会の劣化版だと見られてしまう可能性があります。

その点、昔の「スポーツ大将」にはビートたけしさん本人が参加する草野球企画もあったりして、当時のたけし軍団をテレビに出す場としても機能していて、一般参加者との交流が面白い部分もありました。今回の番組の出演者について見ていくと、2015年に放送された特番も今回からの新番組も、アシスタント的なMCにはナインティナインを起用することで、なかなかたけし軍団が入ってくる余地もなさそうです。

後から様々な番組紹介のサイトを見ていくと、この番組自体1年間の期間限定で放送されるという記述があるサイトがありました。公式ページにはそうした記載はありませんので、何らかのインタビューや取材記事から引いているとは思うのですが、それだとさらに2020東京オリンピックを盛り上げるという理由で作られるものでもなさそうですし、一体何の目的で作られたのかという疑問の方が大きくなってしまうという変な番組ですね。もちろん、この「1年間限定」という事がガセネタではなく本当だったらという前提はありますが。

それとも、「スポーツ大将」というブランドをビートたけしさんからナインティナインに譲り渡すための1年限定の番組なのか? という風に考えてしまうと、もはや番組でどんなスポーツが行なわれるかということは関係なく、一年後にこの番組はそのままひっそりと終わるのか、それとも全く何の説明もなく「ナインティナインのスポーツ大将」という風に来年の今頃には名前が変わっているのか、そちらの方に興味が出てきてしまうということになってしまいます。

それはまさにお笑いの世代交代と言ってもいいのかも知れませんし、ビートたけしさんは優先順位的にはやはりご自身の監督される映画の方に集中したいということもあるでしょう。ただし、日曜夜8時というのはNHK大河ドラマでさえ苦しいと言われる「世界の果てまでイッテQ!」という高視聴率番組がありますので、そもそも1年間の放送が無事に持つかということも言えてくると思います。

そんな事を考えてみると、改めてその地力が試されるのがナインティナインのお2人で、視聴率的イッテQ!に惨敗ということにでもなれば、新たな冠番組どころか他の仕事にも影響が出てくるのではないでしょうか。となると、岡村さん矢部さんはかなり体を張ってロケを頑張らなければいけなくなり、裏番組の宮川大輔さんとのガチな勝負が展開される可能性があります。そんな形でこの番組が化けていくのか、短い期間でいつの間にか終了してしまうのか、まさにナインティナインにとっては正念場ということで、今後の状況を継続して観察していこうかなと思っています。

(番組データ)

ビートたけしのスポーツ大将 初回2時間スペシャル 27年ぶりにレギュラー復活! テレビ朝日
11/12 (日) 18:57 ~ 21:00
出演 ビートたけし・ナインティナイン

(番組内容)

伝説のスポーツバラエティーが27年ぶりにレギュラー復活!初回はたけし&ナインティナインが卓球対決に参戦! アスリートVS天才キッズ、水泳・卓球・暴流闘陸上対決!