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結成30年の「渋さ知らズ」をテレビで見られる幸せ

知らない人は全く知らないものの、その存在を知っている人なら詳しく知っているバンドというのは、オリジナリティがあり長く続けている良質のバンドだと思うのですが、今回紹介する「渋さ知らズ」というバンド形態の集団のパフォーマンスを記録したのがこの番組でした。何と「渋さ知らズ」は結成30年が経ったということで、改めて衰えないパワーにその存在感の大きさを改めて感じました。

この番組は、CSでの放送なのですが、私は本放送を見ていません。どういう基準で選ばれたのかはわかりませんが、民放の見逃し配信をネットで一定期間見られるサービスの「TVer」で、しかも無料で見られるというのは本当に嬉しく、ネット配信では85分間だった箱根彫刻の森美術館でのライブに見入ってしまいました。

渋さ知らズの楽曲というのはほとんどが歌なしのもので、分かりやすく踊りやすいテーマをひとしきり流した後は、参加メンバーのソロ回しという、ちょっとジャズ的な展開になるので長尺の曲が多く、ロックフェスのようにずっと縦ノリの気分でという感じではありません。地上波のテレビで1コーラス流されて終わるヒットソングを聴き慣れている人からすると最初びっくりするもののだんだん退屈になり、そしてまた盛り上がるというような感じで曲が進んでいくのでかなり戸惑うことが多いのではないでしょうか。

さらに、渋さ知らズのメンバーは楽器を演奏する人だけでなく大きな人形を動かしたり自分の体を使ってパフォーマンスをしたりというような、様々な人がステージに入り乱れるように集まっています。初見ならまさに一昔前の「見せ物小屋」の中を覗くようなドキドキ感のある、今の日本のミュージックシーンでは珍しい音楽パフォーマンスではないかと個人的には思っています。

今回は音だけではなく、演奏場所となるテントを建てるところから、観客の様子にもカメラを向けながら、どのようにして渋さ知らズのパフォーマンスが作られ、どんな人が楽しんでいるのかということがわかるような構成になっていましたが、当然のごとくたまたま彫刻の森美術館に来館した人を除けば、結成30年ということで長年応援してきた年季の入ったファンの方々の姿が目立ちました。今回のテレビ放送が実現したのも、ある程度のコアなファンが番組を作っている側にもいるということになるのでしょうし、CSとはいえきちんとそのライブが放送され、その番組が一定の時期だけとは言え、ネット上から誰でも見られるような形でアップされていたというのは、渋さ知らズの音楽をもっと広く発信していきたいという志の表れという感じもしました。

私自身は結成当初から渋さ知らズの事は知っていて、番組では2体目のサキソフォンを吹く人形として登場した、メンバーの故・片山広明さん(ts)が登場したのには驚きとともにほろっとしました。本当はこの番組で吹きまくる片山さんの姿を見たかったと思うのは私だけではないでしょう。そうした想いを形にしたメンバーの表現というのは素晴らしいと思いますし、今後もこうしたパフォーマンスは続けて欲しいなと素直に思いました。

実際の演奏場面で印象に残ったのは、多分オリジナルのメンバーだと思われるギターの石渡明廣のソロでした。他の人々はホーンセクションが主だったので、立って勢いよく演奏するため目立つのですが、石渡さんはあえて立つこともせずに淡々と、でも熱いソロを延々と続ける姿に、こういう人もいて、ステージ前面で目立つ人もいて、渋さ知らズというユニットが成り立っているんだなと思い、機会を見付けてライブを見に行ってみたいものだと感じましたね(^^)。

ただこれはテレビの番組の中のライブだったので、掛け値なしのライブ感をそのまま感じることができたわけではありません。番組内でちょっと流れていた、林栄一さん作の「ナーダム」が流れていましたが、この曲は林さんのソロアルバムで聴いて以来の好きな曲なので、渋さ知らズの「ナーダム」もちゃんと聴きたかったなというところではあります。

そうは言ってもテレビというのはあくまで現実を写すショーウィンドウという側面があるので、この番組やTVerを見た人にとって、もし好運にも「渋さ知らズ」という人たちの事を知ってくれる人がいたとしたら、地上波のテレビでは収まらない音というものの存在を十分に感じさせたのではないかと思います。

もしこの文章を読んで「渋さ知らズ」というものに興味を持つ方がいましたら、同名でYou Tubeで検索をかければ、この番組よりも短いものの彼らのパフォーマンスを記録した動画をいくつも見付けられるでしょう。できれば、動画だけで満足せず、さらにはテレビのライブだけで良しとせずに、実際にライブパフォーマンスが近くで行なわれていたら、足を運んでみて下さい。

(番組データ)

渋さ知らズオーケストラ×彫刻の森美術館「箱根渋天幕芸術祭」フジテレビNEXT ライブ・プレミアム
2019/09/17 01:00 ~ 2019/09/17 02:30 (90分)

(番組内容)

彫刻の森美術館開館50周年を記念して開催された「箱根渋天幕芸術祭」。夕暮れのライブステージの模様をお届け
<収録>2019年8月24日(土)〜彫刻の森美術館


芸人人生「急がば回れ」の平畠啓史さんの立ち位置

最初に、今回語らせていただきたい平畠啓史さんの話をする前に、DonDokoDonというコンビでかつて平畠啓史さんとコンビでテレビに出ていた山口智充さんの話をさせていただきます。彼の姿がかつてほどテレビで見られなくなって久しいというのが実に寂しくもあります。というのも、この文章を書いている私が静岡在住ということで、まだ山口さんが全国的な人気になる前にコンビで出演されていた静岡限定のローカル番組、静岡県にある飲食店を紹介する番組「くさデカ」(フジテレビ系列のテレビ静岡の番組)を見るだけでなく、出掛けた先でロケーションを行なっていて、得意のギターで即興でお店を紹介する歌を歌っているのを見たことがあったからです。山口さんのそのスター性というかかなり脂ぎったパワーに圧倒されているうちに全国ネットの番組に出演するようになったという感じでした。

山口さんはものまねがうまく歌もお上手で、メインのMCとしてもきっちりとやるだけの技量を持ったタレントとしてある意味「天下を取った」のではないか? と思われるほどテレビで見ない日はなかったのですが、なぜか最近になってめっきりテレビで見る機会がなくなってしまったような気がします。

逆に山口さんが全国ネットで活躍すればするほどその地味な存在感でいじられてきたのがDonDokoDonというコンビで相方だった平畠啓史さんのことです。山口さんが静岡の番組を卒業し、東京へ出て行った後にも、同じ静岡の番組に出続けて地味な食レポを続けていたのが平畠さんで、グイグイ前に出ていく感じの山口さんとは違って、マイペースで食レポを続ける平畠さんはテレビを見ている静岡県の方々の気質に合ったのか、県内でロケをしていれば地元の方に暖かく迎えられ、山口さんが抜けたあとも番組をクビになることなく現在も番組の出演者として過去と変わらぬ食リポを毎週見せてくれています。

かつて、テレビ朝日系の「アメトーーク!」で平畠さんを始めとする「地方の有名タレント」という形で紹介された時に、全国でほとんど無名であったにも関わらず、静岡県民にインタビューをしたところ、彼の名前を知らない人がいないほどの有名タレントとして認知されていることに東京で活躍されている他の出演者達はひどく驚くとともに、格好のいじりネタになったのですが、たまたま呼ばれただけかも知れない静岡でタレント活動をすることによってタレント活動に新たな展開を見せることになります。

というのも、静岡県というのは現状でこそ代表選手がいなくなってしまい、高校選手権でもなかなか全国で勝てなくなってしまった感じはありますが、小学生からJリーグまでを見まくるサッカーのファンがいる地域でもあります。平畠さんは実は高校生の時にサッカー部のキャプテンとしてインターハイの出場を果たしているほどサッカーがうまく、サッカーという競技に造詣が深い方でもあります。そうしたサッカー愛が講じて、いわゆるトップリーグのJ1だけでなく下部リーグのJ2やJ3のカテゴリーの試合でもプライベートで見に行くほどのサッカーフリークという一面もあるのです。

サッカーに関する静岡県内での仕事はそれなりに存在し、最近でも静岡朝日テレビの「ピエール瀧のしょんないTV」でサッカーの話題になるとキャスティングされるなど、彼のサッカー通というところは多くの人に静岡県では認知されています。地方だけでなく、サッカーに関するお仕事は今回の番組を放送しているスカパーでの仕事も多いのですが、Jリーグの試合がネット配信のDAZNで行なわれるようになると、中継に人員を割くことが難しいJ3での試合の実況をも平畠さんお一人で行なわれることもあります。その記念すべき一試合目が、静岡県藤枝市を本拠地とする藤枝MYFCの試合でした。

今回の番組は普段スカパーに加入していないので(^^;)初めて見ましたが、「くさデカ」での定番食レポのコメントは封印して、Jリーグのホームタウンの一つである神戸周辺のグルメレポートと観光スポット紹介を挟みながら、主に全国のサポーターが試合を見に行く際のいいレポートとして番組は機能しているように感じました。選手とのインタビューでは、多くのJリーグの試合を生で見ているという面からの質問が出てくるわけですし、選手の方もそれほど硬くならずに本音を吐き出しているようで、今回は鳴り物入りで神戸に入団したイニエスタの話題で相当盛り上がっていたように感じています。

テレビの世界で生き残るためには、「いかにして人より前に出るか」という相方の山口さんのような姿勢の方が大切だろうと思うのですが、今回の番組を見ていて思ったのですが、見ていて全く構えることがなく、その中にも神戸のスポット情報やサッカー情報が散りばめられていてこれはこれで芸人さんとしてありなのではないかと思えます。平畠さんの他にも、恐らく数多くの「サッカー芸人」と呼ばれる人がいるとは思いますが、現在もずっと日本のプロリーグを会場まで行き生で見ている平畠さんが言うことと、テレビでしか見ない人の言うことは説得力も違い、早くからサッカーと芸能活動を結ぶことを実行してこられた平畠さんの立場にとって代わる人というのは出てこないだろうと改めて番組を見て思いました。

テレビの世界というのは難しいもので、いくら才能のある芸人の方でも、全て才能だけでトップを取れるかというとそういうことでもなく、ちょっとした力関係のきっかけでテレビに出る機会を失なってしまって、その間に自分に変わる新たな人にとって代わられてしまう恐怖というものがいつも付きまといます。そうしたとって代わられる恐れというのは少なくとも平畠さんには当てはまらないのではないでしょうか。

最近の人気芸人について言えば、ガツガツとした感じで目立つことが売れる近道だというような感じでテレビに出演している方がほとんどかとは思うのですが、それがテレビで活躍する方法の全てではないということがわかっていただけるのではないかと思います。平畠啓史さんのように、自分の得意な専門知識をテレビを見ている人に優しく伝えるような才能を持っている人であれば、継続してのご活躍が見込めるという先例になったような感じがします。

(番組データ)

平ちゃんの「ほな行こか。」#19 ~神戸篇~ スカサカ!(Ch.580)
11/3 (土) 12:00 ~ 13:00 (60分)
▼出演者 ・平畠啓史 ・林智美

(番組内容)

今回は神戸をぶらり旅!郷家友太選手・藤谷壮選手のロングインタビューもお楽しみに!

Jリーグのホームタウンを平ちゃん独自の目線で紹介します!選手・監督のインタビューはもちろん、地元の人だけのディープゾーンまで、知られざるJタウンの必見スポットを駆け巡るスカパー! オリジナルプログラム、アウェイゲームに行きたくなる“ぶらり旅”の第19回目は神戸を特集します。


通販専門チャンネルの存在意義とは

テレビというものは、一つの大きな事件が起こると各社横並びで同じテーマでワイドショーのプログラムを占めてしまうので、その話題を見たくもないという人からすると拷問のように思えてしまいます。また、これを書いているのは2018年のサッカーロシアワールドカップ開催期間中なので、サッカーを見たくもない人にとっては特に日本の試合の前後などはどのチャンネルも同じ日本チームの話題しかしないので、これもうんざりしてしまうことはあるでしょう。

平日のお昼という時間帯はそうしたワイドショーの他はドラマの再放送が主で、さらに最近まれに見る勢いで民放のプログラムを真似しつつあるNHK総合テレビも、見る人にとっては民放の二番煎じと感じてしまっては、もはやまともに見ることはできない有様になっています。

これがテレビ好きでない人から見ると、それならテレビを消して自分の趣味の時間でも作ったらとか、テレビを捨てて外に出ろだとか、YouTubeで面白い動画でも見ていればとなってくるはずですが、デレビを付けてその内容に一喜一憂する人にとってはそんな時にもテレビを付けてどこかで自分の見たいという欲求に合ったチャンネルはないかと探すわけです。そんな中、普段の内容と違って個人的な興味あるプログラムとして最近話題の「スマートスピーカー」の紹介を通販専門チャンネルのQVCが行なうことを番組表でつかんだので、とにかくなかなか普通の通販番組ではやらないスマートスピーカーのメリットをテレビを見ている人にどのように伝え、売っていくのか楽しみにその時刻に見てみたのです。

この番組で紹介するスマートスピーカーは、GoogleでもAppleでもAmazonでもないLINEから販売されているものです。実は、たまたま家電量販店で「Clova Friends [BROWN] 」をものすごく安くなっているのを見て購入し、さらに本体に付いていたLINE Musicのクーポン券だけをネットオークションで叩き売ったので(^^;)、本体を3千円、実質2千円ちょっとで手に入れていたのですが、ここではいくらで何を売るのかというところから注目してみました。

まず、今回紹介された製品は新発売のClova Friends miniで、価格はネットと比較しても価格comと同じくらいの当日限定4,860円(税込・送料無料)になっています。また、WAVEも当日限り6,999円とネット価格ぐらいで注文できていて、しっかり家電のON OFFができる様子が紹介されていました。生放送の中でClova Friends mini限定でできるLINE電話のやり取りやLINEメッセージの音声によるやり取りを試しているのですが、生放送らしく声が認識できなかったり、LINEメッセージの音声読み上げに失敗したりとまだ完全にスムーズにできるものではないということを明かしてしまっているような形での商品紹介になってしまっています。

さらにClova Friends mini限定の「ドラえもんトーク(ドラえもん型のみ)」の内容の紹介をしていましたが、今いちナビゲーターの方が生でうまく会話できていなかったのも微笑ましい感じでした(^^;)。恐らく、こういったハプニングを含めて実際の商品の状況が伝わるということはあると思います。特にネットの情報だと店頭では特に「ドラえもん」のタイプが品薄になっているようで、運良くこの番組を見て欲しいと思っていた人であれば、番組中に注文をすると定価より安く手に入ったということにもなり、ちゃんと品物を用意した上で売るという点からなかなか他のショッピングと比べてもあなどれないなという実感を持ちました。今後は番組表をチェックしながら何が売られているかの確認を行ない、価格をネットと比べて安ければそこで購入するというのは有りだと思います。

しかし、今回の内容を見ていて気になったのは、根本的な説明に欠けているところがあり、すでにLINEやLINE電話を十二分に使っている人にとっては大変魅力的に感じられたと思うのですが、そもそもLINEについてそこまで知識がない人にとっては「LINE電話は家の中のWi-Fiを使ってインターネットに接続するので、通話料もかからないし、スマホで外で使う場合に高速クーポンが減るようなこともない」という事について最後まで全く話さないで番組が終わってしまったことはネットに不慣れでテレビ中心に楽しんでいる人にとってはちょっとその点が説明不足かな? とは思いましたが、最近のスマートスピーカーでどんなことができて、家庭の中でどのような活用法があるのかということについては番組の中で一通り紹介できていた感じでした。

どちらにしても、商品を購入するという点から言うと、ついふらっと見てそのまま価格も確認せずに購入するというのはうまくありません。紹介したように、事前に番組表をチェックして欲しい商品やなかなか店頭で買えなかったものに絞って見るようにすれば、とにかく番組開始時には商品の在庫はきちんとあるので、価格を見て購入するかどうかの判断をするように利用するのがいいのではないでしょうか。

(番組内容)

LINEスマートスピーカー QVC(キューヴィーシー)(Ch.525)
6/15 (金) 15:00 ~ 16:00 (60分)
出演 石橋尚弘 細田麻理恵 モーリー・小森

(番組データ)

LINEが販売するスマートスピーカーの商品紹介および販売。


チャンバラ活劇ではない時代劇への期待

年末年始には一挙放送された、落語家の語る口に合わせて口パクで噺の内容を演じる「超入門!落語THE MOVIE」(NHK)が好評なようですが、昔からの時代劇ファンからしてみると、時代劇のおいしいところを全てNHKが持って行ってしまっているようでちょっと複雑な気持ちがしています。

このブログでは過去にBSTBSで新作が放送された武田鉄矢主演による「水戸黄門」について紹介させていただきましたが、時代劇は全て「水戸黄門」に代表されるようなチャンバラ劇ではありません。NHKが実現させた落語の人情噺のドラマ化が受けたのは、単に江戸時代の侍が豪快に斬り合うものだけが時代劇ではないということを示したと言えます。

民放でもBSジャパンが一話完結型のミステリータッチで山本周五郎さんなどの小説を題材にしたシリーズを放送していますが、今回紹介する「ぶらり信兵衛 道場破り」(フジテレビ)も原作は山本周五郎(「人情裏長屋」)さんですが、こちらはコミカルな人情噺で、さらに時代劇ファンとしては必須であり、決してNHKでは真似出来ない定番(一部には「マンネリ」と言う方もいますが(^^;))の「道場破りシーン」と主人公の信兵衛に想いを寄せる町娘・おぶんによる「妄想シーン」がからまってそれが番組にいい影響を与えてくれています。さらに、悪人が出てきて殺陣により人が斬られるシーンが全くないという意味でも安心して見ていられますし、今回改めて見ても十分面白いのです。

この「道場破り」という設定は、私がオリジナル放送を見ていた時には全く気付かないで楽しんでいたのですが、よくよく考えてみるとあの名監督である山中貞雄氏の今にも残る傑作時代劇「丹下左膳餘話 百万両の壺」を彷彿とさせる作りになっています。本来、丹下左膳と言えば伊藤大輔監督のシリーズですが、主演こそ大河内傳次郎であるものの、ストーリーは全くオリジナルの林不忘の原作とは関係のない作品で、映画の中の丹下左膳も今の言葉で言うと「ツンデレ」だったり、道場破りをしてわざと道場主に敗れて金を要求するような小遣い稼ぎをするなど、原作者の林不忘としては許せないものだったらしく製作の日活に猛抗議をしたことから題名が「丹下左膳餘話」となっているいわく付きの作品なのですが、その作品の面白さは今でも語り継がれ、さらにはこの作品にも影響を与えているわけで、つくづく山中貞雄という才能を奪った社会情勢が恨めしくなります。

話を「ぶらり信兵衛 道場破り」に戻しますが、現在では娘さんの影響もありバラエティ番組でしか見る機会のない高橋英樹さんの魅力が十分に詰まっているものになっています。すでに民放が時代劇から総撤退になっている(先述のBS JAPANの番組などかろうじてあることはあるのですが)中、NHKの「金曜時代劇」の枠の中で「慶次郎縁側日記」のような人情時代劇を演じてはいるものの、「ぶらり信兵衛 道場破り」のようなお笑い要素はありません。もちろん、NHKで無理に「おもしろ要素」を入れ込んだ時代劇を作ったとしたらかつての「お江戸でござる」のようなものになってしまう可能性がありますので、やはりこういった笑える時代劇というのは民放でしか作れないなと、月一回の無料放送の中で一挙放送という形でCSにお金も払っていない人にも魅力的なプログラムを見せてくれたホームドラマチャンネルには感謝です。

過去のドラマの再放送というのはお金を掛けずに放送できる放送手法であるのですが、最近ではBS日テレだけでなくTwellVでも中村梅之助主演の「伝七捕物帳」を再放送するなど、古き良き時代劇を好む人達というのは今もいます。それが冒頭に紹介した「超入門!落語THE MOVIE」の好評さにもつながっていると思うのです。

昨年新編が放送された「水戸黄門」に主演された武田鉄矢さんは、水戸黄門でなくむしろ人情味あふれる長屋に暮らす浪人の方がはまっている気がするのは私だけでしょうか。何しろ映画「刑事物語」で木製ハンガーをヌンチャクのように操ってアクションをされた方ですから、そんな風にして新たな民放の時代劇を再考していただくのも面白いと思うのですが。

(番組データ)

ぶらり信兵衛 道場破り 【一挙放送】ホームドラマチャンネル
1/7 (日) 7:30 ~11:30
演出:松尾正武
原作:山本周五郎
脚本:飛鳥ひろし
出演:高橋英樹 浜木綿子 武原英子
大宮敏充 柳沢真一 渡辺篤史

(番組内容)

≪時代劇一挙放送≫
高橋英樹が武士を捨てた浪人を好演した人情時代劇!(全50話)
1973-1974年 47分(一話分)