月別アーカイブ: 2018年4月

テレビの取材能力が信頼できなくなる事例

昔から「嘘も100回言えば真実になる」という言い回しがあります。これは、私の経験ではナチスドイツのプロパガンダがなぜドイツの人々に受け入れられたか? という謎を解くカギとして出てくることが多いように記憶していますが、そこまで大きなことでなくても、嘘がテレビでもっともらしく語られることによってその嘘があたかも真実のように多くの人に浸透していくということもあります。インターネット以上に多くの人が見るものであればこそ、バラエティや情報番組であっても事実関係のチェックは怠らないで欲しいと思うところです。

今回、「サタデープラス」の一コーナーでTOTOが日本で初めて発売し、大ヒット商品となり、今では付いていないと違和感があるとまで言われるようになった商品名「ウォシュレット」のコマーシャルに焦点を当て、製作秘話を紹介しているのですが、当時のコマーシャルにおける「常識」として「おしり」という言葉を使うことがはばかられ、CMディレクターの仲畑貴志さんが当時の社長に根回しして「おしり」という言葉をCMのキャッチコピーとして使う案を了承させたというくだりがあったのですが、これは全て真実なのか? というのが番組を見ていて私が違和感を持った点です。

ちなみに、ウォシュレットが発売されたのは1980年6月で、今回番組でも話題とした「おしりだって、洗って欲しい」というコピーで流れたCMが出たのは1982年です。ではその前にウォシュレットのテレビCMはなかったのかというとそうではなく、キャッチコピーではありませんが、ヒカシューが演奏し巻上公一氏が歌ったCMソングの形で「おしり」という言葉が使われた初代CMがあったことは意図的であるのかそうではないのかわかりませんが、番組では無視されています。この事実は個人的に見た記憶があるので間違いないと言えますが、ネット上に実際にお仕事に関わった吉江氏のブログがありますのでリンクを貼っておきます。

https://ameblo.jp/kazuoyoshie/entry-10131498653.html
(吉江一男のブログ 「TOTOウォシュレットの初CM」)

ただ、困ったことにGoogleで「ウォシュレット 初代 CM」で検索すると、最初に戸川純さんのコマーシャルの動画にアクセスできるようになってしまっています。さらに、検索一ページ目に出てくる以下のリンクのサイトと今回放送された内容がほとんど同じだったこともちょっとテレビ制作の現場の仕事として安易すぎるのでは? と思ってしまったのです。

https://middle-edge.jp/articles/rkU3q
(ミドルエッジ 「おしりだって洗ってほしい」TOTOウォシュレットを爆発的なヒット導いた戸川純のCM)

このサイト上では戸川純さんのCMはウォシュレットの初代CMとは書いてはいませんが、一つ気になる内容として、私は次の一文に注目しました。

『当時、下品なイメージを持たれる『おしり』というワードは宣伝にはタブーであった。』(上記サイトからの一部引用)

単に「当時宣伝にはタブーであった」とサイト上に書かれているだけなので、以前にこのワードが使われていないということにはなりませんが、番組での再現VTRでは社内会議の席上でこの「おしり」という言葉が問題になり、事前に社長にこの言葉の使用について根回しを行なっていたということで、社長の鶴の一声で「おしり」という言葉の採用が決まり、戸川純さんのCMにつながったという風になっています。しかし、ウォシュレット新発売の際にはすでに「おしり」という言葉の入ったコマーシャルが作られていたとすると、なぜ社員はその言葉に過剰反応してキャッチコピーに反対したのか、ちょっとわかりません。

別に初CMと戸川純さんのCMを流してそのインパクトの違いを印象付けるということで、改めてTOTOという会社の社風を紹介するような作りにしても十分伝わったのではないかと思うのですが、恐らく最初に紹介した吉江氏のホームページも確認しないで二番目に簡単にヒットした内容だけを基にして番組のコーナーを作ってしまったと言われても仕方のないところであるでしょう。

このような詰めの甘いVTRを作る事が許されるなら、意図的に間違っている内容を正しいかのように出す「フェイクニュース」のようなものを無意識にMBSは許しているということにもなってしまいます。そうした内容で放送するのが当り前になるなら、もはやテレビの情報が信頼できるとは言えなくなるわけであり、番組の最後に「この番組はフィクションです」というテロップを付けて初めて成立するというものになってしまう気がするのですが。

(番組データ)

サタデープラス【嵐二宮主演『ブラックペアン』撮影現場潜入★GW!進化形駅弁】MBS
4/28 (土) 8:00 ~ 9:25 (85分)
【MC】 丸山隆平(関ジャニ∞) 小堺一機 小島瑠璃子
【ゲスト】 桂南光 ミッツ・マングローブ 高橋茂雄(サバンナ)
【VTR出演】 二宮和也 小林しのぶ
【プレゼンター】 西村麻子(MBSアナウンサー) 福島暢啓(MBSアナウンサー)

(番組内容)

毎週土曜日あさ8時から生放送! 丸山隆平(関ジャニ∞)&小堺一機&小島瑠璃子。 各世代を代表するMCの3人がゴシップや旅や 旅行グルメとは一線を画す生活に『プラス』になる 情報をあなたにお届けします!お楽しみに!!

【マルわかり1週間!】 話題のニュースにプロならではの知識をプラス。 さらに、日曜劇場『ブラック・ペアン』の撮影現場に福島アナウンサーが潜入!主演の二宮和也さんから、MC丸山隆平に辛口コメントが…。

【“駅弁”の新常識】 4月に続々と新作が発表され“今が旬”の駅弁。駅弁の食べ歩き歴20年以上で、これまで5000種類の駅弁を食べ歩いた「駅弁クイーン」の小林しのぶが、駅弁の新常識をプラスします。

【マルわかりプレイバック】 海外セレブにも人気の大ヒット商品“ウォッシュレット”。その火付け役になった名CMの誕生の裏側に迫ります。

本を肴にメディア論

この番組は2018年3月17日に放送されていたものの再放送で、どこかでこの番組の感想を見て再放送があるということを知ったことで今回見ることができました。今の世の中に絶望など微塵もなく、バラ色の未来しか見えないという方にとってはあまりピンと来ないかも知れませんが、特に世の中の様子を一斉に伝えることができるテレビ・ラジオ・新聞、そしてインターネットをも含むマスメディアの動向に危機感を覚えている方には、面白く見られたと思います。

そもそも、自らマスメディアの一つであるテレビがこの問題について、単なるメディア論を戦わせるのではなく、昔の本を題材にして現代の社会やメディアについての問題がかなり昔からあったとともに、その状況について的確に憂いていた先人がいることを明らかにしていくというのは、テレビの自己批判とも言えるかも知れません。そうした行為をともなった番組は正当に評価したいというのが私の考えでもあったので興味深く番組を見ることができました。

討論の中で言われていたことに「歴史をひもとく」ことの大切さというものがありました。権力批判やマスコミ批判というのは現代になって発生したものではなく、日本では新聞というマスメディアが登場した西南戦争の起こった明治時代から時の政府によって大衆の心理をコントロールするために官軍を「善」とし、西郷軍を「悪」の権化と新聞を抱き込みつつ巧みに論じ続けることで、一定の政府寄りの世論を作ることができるという成功体験が今も続いているという指摘もありました。そんな悪の権化だったはずの西郷隆盛さんが現代は大河ドラマの主役なわけですから、当時の新聞報道は正直どうだったのか? というように歴史を冷静に考えることができるわけです。

そんな形で大きくなっていった日本のマスメディアにおいて、さらにテレビというのは番組の時間が今回の放送でも100分という風に限られるメディアであるので、全ての参加者が言いたいことを全て言えたわけではないですし、本当はもっと言いたかった話を編集する段階でカットされてしまったかも知れません。どこまで今回の番組を作ったNHKEテレを信じるかということもあるのですが、今はテレビを見るのにも、今回出演されている方々はインターネット上に独自にブログなりツイッターで発信をされている方もいるので、番組で言い足りなかったことを補足したり、そもそも番組自体の評価を後から確認することも可能です。さらに運が良ければ質問をすれば答えてくれる可能性すらあるわけですから、こういう番組をきっかけにしてメディアに対する考えを深めていくというような活用の仕方もあるでしょうし、さらに進めてテレビを単に見る側の人であっても必要に応じて自分でも動くという反応の仕方ももちろんあります。

番組の進行は、各講師の方々が持ち寄った本をヒントにして昔と今のメディアについて討論をしていくというものですが、基本的にはどの時代であっても為政者は自らの行なう政策について最高のものだと思って行なっているわけで、そうした政策に反対する人たちを何とかして抑え込みたいと思うのが普通です。その対処法としてマスコミを使って大衆にわかりやすいようなレッテルを貼り、いかに自らが正しいことを行なっているかを明らかにしたいというのは、もはや人間の性とでも言うべきことなので、昔でも今でも程度の違いこそあれ事実を捻じ曲げてでも発信されるものの中にはそんな情報が混ざっているということを前提にして考えることも必要になるかも知れません。

もちろんそうした傾向が強くなるに従って揺り戻しのように権力を批判するような勢力も現われてはきます。ただ過去の歴史をひもとくと、そうした勢力の多くは権力側の勢力に力で弾圧されてきたということもあり、いわゆる「反権力」と呼ばれる側は自ら武力を持って革命を起こしでもしなければ自分達の主張を広く世間に認めさせることは難しいというのも同時にわかってきます。私自身は暴力的なものに支配されるような世界というのはそれこそ「北斗の拳」の世界に陥ってしまう可能性もあるので、できれば権力を持つ側の勢力が批判に対してもっともだという点があるなら、態度を改めるなど大人の対応を期待したくもなるわけですが。

ただ、現実の社会で何をしでかすかわからない人間というものは、とんでもない事をしでかしてそれが拡散して炎上してしまうのも確かです。インターネットでツイッターなどのSNSを連日追い掛けている人にとっては、例えば今の日本の与党と野党の支持者の間で、かなりエキサイトした印象操作がお互いに行なわれており、いわゆる議論とはかけ離れた過激な言葉のやり合いを行なっている中でお互いにかなり消耗しているように私には思えます。それは、当時者として自分の作り出した「空気」の押し付け合いに参加していないからで、まさに「岡目八目」という言葉のように、いっとき議論から離れて論争を見ながら考えることで、こうした噛みつき合いのような言葉の応酬や、そもそも根本的な問題はどこにあるのかという議論についての整理ができるようになるのではないかと思います。

例えば、「NHKは悪だ」という命題こそが絶対だと思っている人にとっては、NHKの中でこのような番組が作られることこそが権力側か反権力側かはわかりませんが(^^;)誰かの陰謀に思え、「どんなに良さそうな番組を作っていてもNHKの番組は見るべきではない」というような極端な思考につながっていってしまい、その後の議論には転化していきません。確かにそこで思考をストップした方が楽ではあるのですが、個人的には対立するだけでなくお互いの理解を深めるというところまで行ってもらいたいというのが、この番組を作っている人も考えているところだろうと思います。

インターネットと違ってテレビの場合は、そもそもが政府から電波を飛ばすための免許を受けて放送をしていることもあり、あからさまな嘘を流すような事をしないような仕組みもあるので、それなりの取材をしてから報道をしているという事は言えるでしょう。もちろん、取材者の予断が多くのチェックをかいくぐって必ずしも正しくないかも知れない情報をマスコミが出してしまうことはあります。それはマスコミ側の人達も十分承知しているところだと思いますので、単に鬼の首を取ったような感じでその間違いだけを指摘して喜ぶのではなく、なぜ報道が間違ってしまったのかを冷静に指摘するような事がインターネットでの情報発信をしている側にとっては必要になってくるのではないでしょうか。それがこの番組を見た人間がテレビに対してできるフィードバックだと思うのですが。

(番組データ)

100分deメディア論 NHKEテレ
2018/04/22 00:30 ~ 2018/04/22 02:10 (100分)再放送
【講師】
ジャーナリスト…堤未果,「世論」リップマン
東京工業大学リベラルアーツ研究教育…中島岳志,「イスラム報道」サイード
社会学者…大澤真幸,「『空気』の研究」山本七平
作家/明治学院大学教授…高橋源一郎,「一九八四年」オーウェル
【司会】伊集院光,島津有理子,
【朗読】滝藤賢一,
【語り】小口貴子

(番組内容)

激変するメディア状況。作家、ジャーナリスト、社会学者、政治学者などさまざまな視点から「メディアとどう向き合うか」を探りながら、難解な名著を易しく読み解いていく。

時代は私たちのテレビ視聴習慣や紙メディアへの接し方を大きく変えつつある。こんな状況にあって私たちはメディアとどう向き合っていけばよいのか。古今東西の名著では、すでにこうした現状を予言していたような洞察が数多くなされている。作家、ジャーナリスト、社会学者、政治学者などさまざまな視点から「激変するメディアとどう向き合うか」を探りながら、難解な名著を易しく読み解いていく。

巡礼の最初に生臭い話から

すでにこの番組は4月8日に始まり、先週は第二回目の放送があったようですが、なかなかリアルタイムで見る機会がなく残念に思っていたのですが、今回第三回目とはならず、スタートから再放送しているようなので、他の方はまた最初からかと思う方もいるかも知れませんが、新たな気持ちで見ることができました。

四国八十八か所めぐりを行なうという番組の性質上、テレビのバラエティ番組での露出も多い小島よしおさんと狩野英孝さんのロケを中心にした番組ということで、単純にロケ日が限られているということと、ロケ現場ではかなりナチュラルに進行しているのでなかなか進まないということはあるとは思います。

しかしトゥエルビのホームページで「毎週放送」と書いてあることに嘘はないにしても、番組の進行としては月に1回から2回ぐらいになった場合、もう少しテレビ局側にも、今後の放送予定についてきちんとしたアナウンスは必要かと思います。

ただそうは言っても、今回の番組の仕上がりはかなり面白いものになっていたように思います。人の話を聞いているようで聞いていない二人がお遍路のしきたりを理解しないまま回ってしまってなかなか進まない様子は、今後の珍道中を予想させるわけですが、本当に最後まで回れるのか、番組自体が中途半端に終わってしまう可能性すらあると思っています。でも、この二人には何とかして八十八ヶ所巡礼を完結させて欲しいと思いながら見たいと思っています。

ただ今回、番組を見ていて思ったのが、四国八十八ヶ所巡りの利権と言いますか、そのコストの多くをいわば八十八ヶ所の一寺に過ぎないお寺が独占してしまうのは改めてこれでいいのか? という思いがありました。というのも、私自身もすでに八十八ヶ所巡りは結願しているのでその中で聞いた話があるのですが、どこだということはここでは控えますが、とある八十八ヶ所の一寺で納経帳に御朱印をいただいている時に、強く言われた事が今でも忘れられないからです。

多くの人はこの番組の小島よしおさんと狩野英孝さんのように何も持たずにこれからお遍路を始めようとする人は、一番札所の霊山寺でお遍路用品を揃えると思うのですが、装束から御札、数珠やローソク、線香に100円ライターまで進められるままに購入して一人あたり約12,000円くらいかかるのは仕方がないかも知れませんが、境内で鐘をつくにもお賽銭、さらに本堂と薬師堂でもお賽銭を払った上に御朱印をいただくために納経料を払うということになると、費用の面でなかなか大変だと思わざるを得ません。

さらに、番組では紹介されませんでしたし、現在はどうなっているかわかりませんのであくまで私の場合として紹介しますが、霊山寺で購入した納経帳の最後のページに「最初に参拝したお寺に八十八ヶ所結願したらお礼参り」という項目で御朱印をいただくようにページが用意されています。そのページについてとあるお寺の御朱印を書いていた方が言われるには、「このような事はしなくていい。お礼参りは高野山へ行けばいいので、このようなことをするのは特定のお寺の利益にしかならない」というような事を言われ、その意見がもっともだと思ったので、私はそのページにだけは御朱印をいただいていません。ただこれはその方の話が十分に私に理解できたからなので、最初にお参りしたお寺にぜひお礼参りをして御朱印をいただきたいと思うならば、そういう行為自体を咎めるものではありませんので誤解なきよう。

一つ言えるのは、あくまでこうしたことはお参りする個人の意志だとは言うものの、大切なのはスタンプラリーのように御朱印を集めまくることではなく、修行として全てのお寺の参拝をすることだと思います。今回の番組を見つつ、遍路の大変さを想いながらこの番組自体が結願する前にギブアップされることのないように、番組を立ち上げた以上は全うして欲しいと思います。もしかしたら、出演されている二人も、旅を終える頃には他の番組で見せる顔も変わってくるのではないかと期待しています。

(番組データ)

小島よしお&狩野英孝のチャリお遍路 #1 BS12 トゥエルビ
4/22 (日) 19:00 ~ 19:55 (55分)本放送は4/8
出演:小島よしお、狩野英孝

(番組内容)

芸能界きってのロードバイク乗りの小島よしおと、禊を済ませる理由が満載の狩野英孝が四国八十八ヵ所お遍路を自転車で巡ります。
旅のはじまりは徳島県。ロードバイク初心者の狩野英孝は、小島よしおから自転車講習を受ける。狩野英孝の自転車スキルに不安を感じつつ、二人は1番札所の霊山寺に向かう。

テレビ局が関連するニュース報道について

テレビを含むマスコミは事件について取材をする側でありますが、場合によっては自社の社員が事件を起こすようなケースがあります。今回紹介する状況というのは少し毛色は違いますが、社員の行動が注目を浴びるような事が起こってしまった場合、どのように報道すべきなのか、改めて考えることになってしまいました。

簡単に今回の事についてその内容を紹介すると、まず財務次官がマスコミの女性記者にセクハラと思われる言動を行なっているという週刊誌報道があり、財務次官および財務省がその指摘について真っ向から否定をしたことで、真実はどこにあるのかという話になりました。さらに財務省は、調査のために被害を受けたという女性がいたら名乗り出て欲しいと文書で示し、これは女性の人権をないがしろにする行為ではないか? という疑問も出る中、当事者の財務次官は職を辞す事を決めたものの、事実関係については週刊誌を訴えて裁判で争うことを名言しました。

こうした決着の付け方には当の女性記者が憤りを感じたようで、彼女の属する会社であるテレビ朝日に相談の上で出した結論が、4月18日テレビ朝日の看板番組である「報道ステーション」終了前のタイミングで、この件について午前0時から記者会見を行なうことを告知しました。

私はたまたま報道ステーションを見ていたので、テレビ朝日・BS朝日・AbemaTVという関連の会社を含む媒体で記者会見を生中継すると思っていたのですが、普段重要な記者会見があると通常番組を潰してでも生中継することの多いAbemaTVでも通常通り、先立って放送された「報道ステーション」の再放送を行なっていただけでした。

他のテレビ局ではこの記者会見をニュースの中で報じた局もありまして、個人的にはまたいつものパターンかと思いました。自社の社員が関係する事件報道について、今回のテレビ朝日に限らず、自社の報道ではそこまでは深く掘り下げないのに対し、他のテレビ局ではその失態(社員が起こした事件報道の場合)をあげつらうかのように細かく報道することが多いと思います。ただ今回の場合は加害者ではなくセクハラの被害者という立場で、女性記者の話を聞いて一番知っているのがテレビ朝日なだけに、なぜ自分のテレビ局で生中継しないのか不思議に思いました。

もっとも、世間の一部において反体制的だというようなテレビ朝日ではあるものの、自由に誰でも番組が持ててバラエティに豊んだ内容があるAbemaTV自体「体制にまっこうから反発する」というようなポリシーを持って運用されているわけでもないという事実があります。例えば、幻冬舎の見城徹さんがホストをしている「徹の部屋」という番組が放送されており、その番組には安倍晋三首相が出演して自説を述べたりしているということもあるので、テレビ朝日の関係だから全て反体制的な体質であるということは決して言えないでしょう。むしろ体制側に近い勢力も大勢いるという風に考えるのが普通です。

恐らく、テレビ朝日社内においても、この問題について無視を決め込みたいと思っていた勢力が強かったのですぐに声を挙げられず、女性記者が意を決して会社に訴え、会社が記者会見で発表するに至った段階でも自局および系列局での生中継をしなかったのだと思われます。ただ翌日の「モーニングショー」で詳細に報告しているのは反対勢力の揺り戻しのように感じるものの、やはりこの件で問題になった財務省と財務次官と同じようにすぐに対応できなかったことは多くの事が明らかになった時点で考えると隠さずに早く自社の媒体で報道すべきだったように思います。

一般人がマスコミに対する不信感を抱く理由の一つとして、人を追求するときには強気の取材をするものの、自分の身内で何か起きると、身内をかばったり隠そうとしたりして、そんな態度を見せることがしばしばあることです。これはテレビ朝日に限った話ではなく、他の報道機関でも不祥事や事件の主役に自社がなってしまった時にどのような伝え方をするのかというところに、今後のテレビ報道がまともに見られるようになるかどうかがかかっているように思えるのです。

おバカな面々は飽きられるが出川哲朗さんが生き残る理由

この番組のコンセプトとしては、最近はリアクション芸人としての姿というよりも多くの世代に好かれるキャラクターとしての魅力があり、言い間違いや常識のなさをあえて前面に出すことでも面白い姿をテレビのこちら側にいる多くの人に見せて楽しませてくれる出川哲朗さんがメインになっています。ただ、表面的に出川さんの発言や行動を「おバカな面々」というゲストの人たちと同一に捉えていいのか、個人的には疑問に思っていました。

確かにみやぞんさんや滝沢カレンさん、丸山桂里奈さんなどは多くのバラエティ番組に出演なさっていて、その普通よりちょっと違った感性を口に出すことで、テレビ番組的にかなり面白い素材であることは確かです。

ただ、普通の人は何回も同じような事を答え、受け答えに慣れてくると言っていることに新鮮味がなくなり、単に自分の感性だけで受け答えをしているだけではテレビを見ている人達を笑わせられなくなる事も確かです。過去にはフジテレビ系の「クイズ ヘキサゴン」でおバカな解答者として歌まで出した「羞恥心」の中の2人、つるの剛士さんと上地雄輔さんは今では過去におバカキャラだったことを知らない人がいるのではないかと思うほど、普通にタレントとして活躍されていますし、元AKB48の川栄李奈さんも、過去にはおバカキャラで通していたものの、今の活躍を見るとそんな風には思えず、それだけ努力をして今の芸能界での居場所を作り出してきたと言えるでしょう。

逆に言うと、年を重ねていくに従っていわゆる「おバカな言動」というものがチャーミングに見えなくなり、単にこの人は莫迦だというイメージが形成される中で、当然テレビでの活躍の場は限られています。何しろテレビに出たい若い才能は今も掃いて捨てるほどいるのです。そういう点ではこの番組のゲストとして出ていた「おバカな面々」と呼ばれている人は、これからどのようにして芸能界をわたっていくのかを真剣に考えなければならないのではと、テレビを見ているこちら側が心配になるほどです。

そんな中、これは番組の演出としてわざとやっていたのか、そのまま素が出てしまったのかはわかりませんが、一つの象徴的な場面がこの番組の中で出てきました。番組の講師役として様々な知識を説明するパートがあるのですが、特定のゲストがそうした話をまるで聞いていないところがしっかり映ってしまっていたのでした。

学校の勉強ができる子とできない子は確かに出てしまうことはあるのですが、私個人の印象にはなりますが、出川哲朗さんは少なくとも真剣に講師の方の発言を聞いた上で「全然わからない」と言い放つものの、わかろうと努力したり、自分の得意なものを伸ばそうとしているように思います。だからこそ多くの人が入れ替わるお笑い界の中でも生き残り、現在ブレークするほど注目を浴びているのだと思います。しかし今回出演したゲストの中にはそうした講師の方のお話をおしゃべりや他の事をしていて全く聞いていないのでできないしわからないというような感じでそのままテレビに出ているという風に感じる人がおりました。こういう人というのは次に自分とかぶるような人が出てきたらとたんにお呼びがかからなくなることを理解しなければならないでしょう。

逆にそうした人に向かって講義をしなければいけない講師役として番組に呼ばれた方々は本当に大変だったろうと思います。スタジオでの講義でも出川さんはわからないなりに講師の方の話を集中して聞いていましたが、そうでない人たちの注目を集めて多くの人に物を教えなければならない教師という職業は本当に大変な仕事だということも改めてわかりました。

ただそんな中面白かったのが、講師役として出演した橋下徹さんの印象でした。最近は政治的な動向が見え隠れする中で、どうしても今の与党か野党かという勢力争いの中でどうしても橋下氏とそれに対抗する人達との間でギスギスするような番組に出演することが多く、見ていて後味を悪い事が個人的には多かったのですが、今回の橋下講師の話にもゲストはまるでトンチンカンな反応を見せ、あまりの受け答えに苦笑いからしだいに表情がゆるみつつ自説を述べるのですがそれがまたゲストの芸能人には一向に伝わらないという状況になってしまっていました。そんな時にはいつもは強い口調で相手をやり込めるのが得意な橋下氏でも、こうした人が相手だとまさに暖簾に腕押しで、テレビ的にはにこやかに終了したということでこれはこれで十分楽しめました。

(番組データ)

出川哲朗のアイ・アム・スタディー 知っとかなきゃヤバイよ日本のピンチSP 日本テレビ
4/17 (火) 19:00 ~ 20:54 (114分)
【MC】出川哲朗
【進行】羽鳥慎一
【ゲスト】みやぞん、滝沢カレン、丸山桂里奈、渚(尼神インター)、定岡ゆう歩、平沼ファナ
【講師】小池百合子、橋下徹、原晋、デヴィ夫人、齋藤孝、河野玄斗、左巻健男
【企画・演出】石崎史郎
【監修】古立善之
【プロデューサー】笹部智大

(番組内容)

小池都知事が「東京の秘密」を初授業!出川のアブナイ質問攻め▽デヴィ夫人の「終活」に密着!みやぞん歌う感動&爆笑の模擬葬式▽橋下徹も参戦!おバカ軍団と激論で降参?

この番組は、皆様に有益な情報をお伝えするのではなく、出川率いるおバカな面々がコミカルに学ぶ様を楽しむものです…
(1)小池都知事が初めて案内!東京を災害から守っている巨大地下○○潜入!総理大臣になりたい?出川が切り込む!
(2)神脳で話題の天才・現役東大生が直伝!偏差値上がる記憶術をみやぞん実践
(3)青学・原監督が教えるマラソン速く走る裏ワザとは
(4)ベストセラー作家から学ぶ「大人の語彙」出川・滝沢カレンの爆笑食リポ

99.9 ドラマと現実と

刑事事件を毎週一回無罪にしていくジャニーズ事務所所属の俳優・松本潤さんの出演するドラマの題名が「99.9」(TBS系)で、事前の番組告知についてもこのドラマの事を想像させるような感じだったり、番組内でも仲間の弁護士の方々と今村弁護士が飲みながら語っている場面では、ドラマを意識するような発言も出ていました。

ただドラマでの弁護士軍団は実にスマートに活動するさまが描かれていますが、現実の世界とはかなり違うことが改めてわかりました。番組内での同僚の方へのインタビューによると、ドラマのような弁護士の人数の事務所で刑事の冤罪事件をやり続けるのは、かなり財政的に厳しいのだそうです。今回の主役である今村弁護士は25人くらい弁護士がいる合同事務所の中の一人だから、何とかやっていけているということがあるのだそう。逮捕されて無実を主張する人の弁護を引き受ける場合でも、この今村弁護士が受けている事件は世間的に注目されるような事件でないことが多く、ほとんどが依頼人にお金がなく、裁判に勝たないと報酬を受けられない中で弁護活動をしていくので(その場合の報酬も比較的少ないと言うことです)、支援者からのカンパが頼りの仕事になることが多いという事でした。

そんな今村核弁護士がテレビの取材を受けられ、過去に無罪を勝ち取った一部の裁判の内容を紹介するのがこの番組の主な内容です。いかにもカメラを向けられ記者の質問に答えたくなさそうな今村弁護士は怖くてとっつきにくいという感じがするのですが、番組を通して見ていくうちに、記者とも打ち解けてきて、儲からない刑事事件を多く扱う事についても口を開いていきます。

その中で改めて語られるのが刑事事件の裁判においては、「疑わしきは罰せず」ではなく、被告人の方で無罪を証明する事ができないと有罪になってしまう現実です。こうしたえん罪を晴らすためには科学的な眼が必要で、そのため独学で科学についての本を読みながら相当勉強をしている跡が彼の書斎を見る限りは伝わってきました。裁判で検察が依頼した学識経験者に科学的根拠に基づいた鑑定書が提出され、弁護側はその意見を根本的に崩さなければいけないのですから、いかに科学的で雑学にも秀でる眼を持つことが大事かということが改めてわかります。

番組内で2件目の事件として紹介された痴漢冤罪事件については、その裁判を扱う裁判官によって正しい判決が歪められることもあるという世の中の理不尽さを示しています。というのも、意図的に今村弁護士によって提出された重要な資料を不採用にし、残りの証拠物件のわずかなスキを付くような形で誰もが予期しなかった有罪判決を下したことで、今村弁護士からこんな判決は聞いたことがないとまで言わしめています。そのレポートの中で大変興味深いのは、事件を取材したジャーナリストの方が改めてこのような判決を出す裁判官は一体どんな生き方をしてきたのかと調べたところ、実に興味深い過去の話に行き付いたというのです。

その裁判官の方は昔はリベラルな考えを持っていて、あまりに理不尽な警察の逮捕状要求にはあえて逮捕状を出さないということもしばしばあったとのこと。そんな人が検察や警察の意を汲むような判決を普通に出すようになるには、恐らく大きなリベラル派としての挫折があったのだろうと推測されますが、政治でもそうですがいわゆる「転向」した人というのはまるで過去に信じていた自分の考えと同じような考えを持つ人に対してはアレルギー反応のようにかたくなな拒否感を出すことがあります。紹介された裁判官の方にどのような事があったのかはわかりませんが、正しいことを正しいと通すことのできない社会があり、今村弁護士は青年から中高年に至っても未だその世界を信じて戦っているのに対し、裁判官の方にはもはや諦めの境地が感じられます。私たちも世の中こんなもんだと諦めるしかないのでしょうか。

一つの希望というところまで行かないかも知れませんが、私自身、こんな地味な番組を見ようと思ったのは、最初に紹介したTBSのドラマを知っていて、実際にそんな弁護士の方がいるのかと興味を持って見たからで、ドラマはドラマとして荒唐無稽な役者同士のやり取りとかがあって笑ったり怒ったりして見ていた人の中にも、この番組の事前告知を見て、本物のえん罪弁護士とはどういうものかという事に興味を持った方も少なくないと思えます。冤罪事件に関わらず、今社会で問題になっていることをドラマで取り上げることは、あながち人気の若手俳優を使って多くの人が楽しめる筋立てにしたドラマであっても捨てたものではないと思えるのです。ちなみに、上記の裁判直後にツイッターでこの判決の話が拡散し、多くの人の怒りの感情が今村弁護士が感じたものと同じような考えだったことから、控訴審に向けての力となり、ついには控訴審で無罪が確定しています。裁判の世界においても社会大衆の声は全く無視することもできない存在なのではないかと、この話を見て思いました。

テレビのニュースにならないような小さな事件でも、それまで普通に生活していた人がいきなり刑事事件の犯人として拘束され、罰を受けざるを得なくなってしまう現実がある中、警察や検察の思い込みだけで逮捕から有罪までにされるような現状については、一人一人では伝わらなくても今の社会はネットで繋がっていくこともできるので、地道にお仕事をされている今村弁護士を含む全国の弁護士の活動を何らかの形で応援することの必要性を感じた今回の視聴でした。

(番組データ)

BS1スペシャル「ブレイブ 勇敢なる者“えん罪弁護士”完全版」NHK BS1
4/15 (日) 22:00 ~ 23:50 (110分)
【出演】弁護士…今村核,
【語り】本田貴子,
【声】若林正,相沢まさき,桐井大介,中野慎太郎,中尾衣里,下山吉光

(番組内容)

大反響を呼んだ「ブレイブ“えん罪弁護士”」の未放送映像を加え、再構成した100分完全版。有罪率99.9%に挑み、無罪14件という驚異的実績を誇る今村核に迫る。

「無罪14件」。その実績に他の弁護士は「異常な数字」と舌を巻く。“えん罪弁護士”の異名を持つ今村核(いまむら・かく)は、20年以上も刑事弁護の世界で闘ってきた。過去に取り組んだ事件では、通常裁判の何倍もの労力をかけ科学的事実を立証し、えん罪被害者を救ってきた。勝てる見込みも少なく、報酬もわずかな「えん罪弁護」。それなのになぜ、今村は続けるのか?自身の苦悩を乗り越え、苦難の道を歩み続ける男に迫る。

若い女性が大谷翔平選手を見る前に見る番組

表題のような思いを今回紹介する番組を見終えた後に感じざるを得ないということは、実際に番組を見た方にとっては何となくわかっていただけるのではないかと思います。

日本で野球が人気種目になり、太平洋戦争前でも甲子園大会や東京六大学野球は人気を呼び、日本でプロ野球ができたのは、1934年(昭和9年)アメリカのメジャーリーグから選抜チームを招聘した際、メジャーリーガーに対抗するために集められた全日本軍がそれで、当時ホームランでメジャーリーグ界を席巻していたベーブ・ルースが来日したことで多くの人の関心を呼び、その時の全日本軍が「大日本東京野球倶楽部」となり、このチームが今の読売ジャイアンツの前身であったのです。

今後、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平選手が活躍する中でこの「ベーブ・ルース」という名前がクローズアップされてくると思いますが、日本ではこの日米野球でベーブ・ルースを抑えた伝説の投手・沢村栄治選手のいた当時の話であり、いかに古い時代のベースボールと比較されているかおわかりでしょう。そういう意味では正に百年に一人の選手といってもいいかも知れません。

日本において、こうしたスポーツの世界にとどまらない、社会現象になるかもしれない人物について、興味を持つのはコアな野球ファンだけではなくトレンドの動きに敏感な若い世代であると言えます。そんな中でさらに爆発的なブームを呼ぶか否かは、今までメジャーリーグどころか野球すら見たことのない人たちだったりすることは、日本のプロ野球における「カープ女子」のように、若い女性がどれだけ食いついてくれるかということにかかっているといっても過言ではありません。

なにせ、普通の「オヤジ」が楽しめることをやってもさっぱり話題にならないのに、そのオヤジがやっていることを若い女性が真似しただけで話題になるというのがこの世の中の流れです。なぜこんなことになるかというと、基本的に若い世代の方が年寄りより行動的であることだけでなく、その世代に引っ張られるように趣味に関する物品の販売が増える傾向があるからです。

テレビというのはスポンサーとつながっていますから、若い男性と比べてレジャーにお金を掛ける傾向があり、若い女性自体が他の世代の男女を巻き込んでブームの牽引車になっていく事例は私がここで挙げるまでもないでしょう。男女差別という観点で考えると若い女性ばかりがちやほやされる事に不快感を覚える方もいるかも知れませんが、景気を上げるためには何でもやらなくてはというところに今のテレビを含めた多くのものが毒されてしまっていることは確かですが、今の大谷翔平選手の活躍というのはマスコミによって作られた偽物のブームでないことは確かなので、大谷選手のニュースを見てその試合を生で見たいと思った野球未経験者のためのこんな番組もありではないでしょうか。

番組自体は若い女の子がまだ片想い中の彼がいるグループでメジャーリーグのワールドシリーズをテレビ観戦するにあたり、メジャーリーグ通の同性の友人からメジャーリーグ観戦のための基礎的な知識をクイズ形式で教えてもらいながらメジャーリーグについての感心を深め、彼に好かれる女の子へと変わっていくというロールプレイングゲーム形式のストーリーが展開していきます。

この番組きっかけでメジャーリーグや日本のプロ野球に興味を持つ人が増えればそれはそれでいいと思いますが、それだけテレビはスマホ民を取り込まないとテレビの一つの醍醐味である生中継の試合ですらも興味を持って見てくれなくなるのではないかと思っているからこそ、こんな番組を作っているという風にも考えられます。あと、それと同時に大谷選手の活躍を「全米が熱狂」とあおっている日本のテレビ関係者がいると思いますが、アメリカにおけるベースボール自体がバスケットやアメリカンフットボールに対して人気で負けていますし、正確には「全米のコアなMLBファンが熱狂」というのが正しい状況分析ではないかと思います。

(番組データ)

our SPORTS!「5min.観戦マニュアル“恋するメジャーリーグ”」 NHK BS1
4/14 (土) 9:00 ~ 9:05 (5分)
【声】金本涼輔,金子有希,吉川未来

(番組内容)

スポーツの魅力を伝えるourSPORTS。今回はアニメゲーム感覚でメジャーリーグの観戦マナーやオモシロ情報などを紹介。

お金のかからない「トリビアの泉」は居酒屋トーク的クイズ

この「クイズ☆モノシリスト」という番組はいかにもBSらしい、お金を掛けずにアイデアだけでそれなりに成り立たせようと考えられた番組のように思えました。一応この番組のジャンルは「クイズ」になっていますが点数を競うわけでもなく、罰ゲームがあるわけでもなく、「モノシリスト」と呼ばれるパネラーがコースターに何らかのウンチクを含んだクイズを書き、そうしたクイズを出して全員で考えていくという、飲み屋ですぐ真似できそうな企画です。

恐らく地上波で同じようなウンチクを披露することになるとフジテレビの「トリビアの泉」のようになって、VTRを作るのにお金を掛けるようになり、別の意味で番組を続けることが大変になるようなことも出てくるのでしょうが、このシステムはゲストの人選をしっかりやっておけば、毎回違うジャンルの権威を連れてきて、翌日周りに話したいようなネタをクイズの形で提供してもらうことは可能でしょう。それはいつもテレビで見る有名な人である必要性はなく、お話好きな大学教授のような方や、マニアの中で有名な方をオファーして、まず視聴者が知らないような知識をクイズにして解説を他の出演者を巻き込んで行なえれば、さらに面白くなるのではないかと思います。

ただ、テレビを見過ぎている私にとっては、今回のBS朝日が満を持して放送した問題の中に、過去に別のテレビで放送した内容とかぶるものを見付けてしまいました。それは名字の「渡辺」さんに関わる問題で、NHKの「人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!」で放送されたものと全く内容がかぶってしまって興ざめしてしまいました。

この辺は盗作とは違いますが、番組のオリジナル性を出したいと思えば思うほど、番組担当者は他のクイズやバラエティで同じ内容を扱う企画がないかということを調べてから採用されるようにしないと、いかにBSとは言ってもちゃんと見ている人もいるわけですから、今後も内容が他番組とかぶらないように気を付けて欲しいと思います。

また、今回に限ってはスペシャルだからということもあるかも知れませんが、居酒屋のウンチクトークのような番組で2時間は見ていてかなりだれます(^^;)。出演者の方々は濃いメンツでお話される時には楽しいので、長い話も気にならないのかも知れませんが、テレビを見ている方としては、この種の番組の場合1時間が限度のような感じがします。ともあれ、今後のやり方によってはお金を掛けずに化ける可能性のある番組として今後チェックしていきたい番組ではあると思うのでこれから期待して見ます。

(番組データ)

[新]クイズ☆モノシリスト 初回スペシャル BS朝日
4/10 (火) 21:50 ~ 23:44 (114分)
【MC】いとうせいこう(クリエイター)
【モノシリスト】市川猿之助(歌舞伎俳優)、春風亭一之輔(落語家)、竹俣紅(女流棋士)、武井壮(タレント)、田中寅彦(棋士)、鈴木貴博(経済評論家)、原孝寿(KADOKAWA編集長)、能町みね子(コラムニスト)
【制作】BS朝日、イースト・エンタテインメント

(番組内容)

「寄席で一番最後に出る資格を持つ演者を表す、落語の真打ち、”真”って何?」「芝居が終わることを意味する、芝居がはねるの”はねる”とは?」など、歌舞伎界・落語界で使われる言葉に関するクイズが博識なモノシリストたちを唸らせる。他にも「動く歩道にスムーズに乗る方法とは?」「若者言葉”絶起”とは?」「142857という数字でしばらく楽しむ方法は?」など、すぐ試してみたい裏ワザ的クイズも!

主宰・いとうせいこう進行の下、各界を代表する知識人=“モノシリスト”たちが、無尽蔵の“とっておきモノシリ知識”をクイズ形式で出し合う、全く新しいクイズ番組!全員が出題者・解答者となって知識合戦を繰り広げる!さらに、問題をきっかけにモノシリストたちの雑学知識が次々連鎖。ここでしか聞けないオールジャンルの雑学クイズ満載で、貴方の知的好奇心をくすぐります。

フジテレビの新しい番組制作の試みに拍手

この番組はたまたま新聞のコラムで成り立ちを知ったことをきっかけにここで紹介させていただくものです。現在の民放の視聴率トップと言えは言わずと知れた日本テレビで、春の改変期の現在でも、人気番組が多いためか多くの番組は継続ということになっており、そこまで変化というものが見えませんが、フジテレビだけは違います。

古くは「笑っていいとも!」、今年に入ってからは「とんねるずのみなさんのおかげでした」「めちゃイケ」「ウチくる?」、さらにBSで放送されていた「ポンキッキーズ」も終了し、その後の展開をどのようにして視聴率を回復させていくのかというのは、今後地上波のテレビを見ていく中での個人的な興味にもなっています。

新聞のコラムによると、今回紹介する「99人の壁」という番組は2017年の大晦日に放送されて好評を博し、今回が第2回目になりますが、実はこの番組は入社2年目の社員のプレゼンが番組としての形になったものなのだそうです。今回が初見という方の中には番組内容を見ても良くわからないところがある方もいるかも知れませんが、恐らく見続けていくうちにその面白さに引き込まれていくだろうと思います。

クイズとしての面白さももちろんありますが、100人いる出演者でありクイズ回答者がこの番組のキモのように思えます。オーディションをしていかに番組が面白くなるかを考えて人選をしていると思うのですが、100人の回答者にはそれぞれ自分の得意とするジャンルがあり、なぜそのジャンルを選んだのかにもドラマがあり、クイズを答えていく中でパーソナリティがはっきりとしてきます。さらに出演者は司会者にやじを浴びせるガヤとしての役割も持つため、うまく収録を編集していけばかなり面白い部分を抜き出して楽しめるものとなるでしょう。というか、今回の放送はそういう意味でも十分楽しむことができました。

番組を見た方ならお気付きでしょうが、今回の番組ではかなりの部分を切って編集しており、それはあまりにもガチすぎてブロックする側の回答者がつまらないミスを連発したり、どんどんチャレンジャーが変わっていくことが繰り返されるだけの状況が今回の番組でもあったことが想像できます。素人いじりのうまさを見せてMCとしての評価を上げた俳優の佐藤二朗さんでもどうにもならない中だるみの状況があったかとは思いますが、そういった部分は削った方がテレビを見ている側としては有難かったりします。

さらに、今回は特別ゲストとしてギャラを貰って(回答者として出演した方の中にはノーギャラでオーディションから参加した能町みね子さんのような方も出ていたので)クイズに挑戦するゲスト回答者のコーナーも有りました。

今回はゲストが出てくる前に、前回の出演で全く実力を発揮できなかった切手通の出演者が百万円を獲得したこともあり、さらに出演者はゲストの存在を全く知らされていなかったため普通に場内が盛り上がっていましたが、さらにXジャパンのToshiさんのクイズのお題が音楽関係でなく「ガトーショコラ」というのも意外でしたし(結果はまさかの5問連続正解で百万円獲得でした(^^))、そこからゲストの人間性が垣間見える感じがしてチャレンジはかなり見ている人にとっては面白く見られたと思います。

そういう意味でもこの番組は単なるクイズ番組ではなく、1人のチャレンジャーの人間性を見せてくれるものであり、今後のさらなる番組としての発展が期待できると思います。今後も回答者のオーディションを丁寧に行ない新たなキャラクターを開拓し、今までクイズとは無縁だと思われた人と出演交渉をするなどして、今度は秋にでもさらにパワーアップした内容で楽しませていただけると嬉しいですね。

(番組データ)

超逆境クイズバトル!!99人の壁・春の乱【1人VS99人!全員敵の新型クイズ】フジテレビ
4/5 (木) 22:00 ~ 23:34 (94分)
【MC】 佐藤二朗
【スペシャルワンマッチ・ゲスト】 滝沢カレン  Toshl  長嶋一茂  (五十音順)
【チーフプロデューサー】 濱野貴敏
【プロデューサー】 木月洋介
【演出】 千葉悠矢
【制作著作】 フジテレビ

(番組内容)

挑戦者1人VSブロッカー99人の早押しクイズ!挑戦者は5問連続正解で100万円!99人を撃破し100万円を獲得するのは誰か!?俳優・佐藤二朗が司会

MCは、俳優の佐藤二朗が務めます。  この早押しクイズは、100人の一般公募の参加者の中から選ばれた1名のチャレンジャーが、それを阻止しようとする99人のブロッカーを相手に早押しクイズで対決するというもの。

見事5問連続で正解すれば賞金100万円をゲットできるのですが、1問目は25人のブロッカーが2問目は50人と増えていき、最終的に99人となります。その“99人の壁”を乗り越えなければなりません。当然、人数で圧倒的に不利なチャレンジャーに与えられた唯一のアドバンテージは、自分の“得意ジャンル”を指定してクイズに挑戦できることです。“将棋”“刀”“イントロ”“カーリング”などジャンルは何でもOK!

自分のためだけに作られたクイズで100万円獲得を狙うことができるのです。今回のスペシャルではボーナスステージとして芸能界から3人のスペシャルゲストが参戦。Toshl、長嶋一茂、滝沢カレンが、スペシャルワンマッチで「このジャンルならば誰にも負けない自信がある」という得意ジャンルを掲げて、99人の壁に挑戦します。芸能人たちのガチファイトにもご期待ください。

もはや松坂大輔はBSの目玉でもないのか

2018年4月5日、中日ドラゴンズ対読売ジャイアンツの試合に日米のプロ野球で大活躍したかつての日本のエースピッチャー松坂大輔選手が満を持して登場しました。私はその日のニュースか何かで知ってはいたのですが、夕方にヤフーニュースのトップで松坂選手が投げることのニュースが載っていたので、これはテレビで見なくてはとテレビを付けてどのチャンネルで試合が放送されているか探したのですが、おそらく愛知県周辺の地域以外(静岡県はその地域に入っていません)では地上波・BSともに見られない状況であることがわかりました。

ただ、今年からはネット配信のDAZNが日本のプロ野球中継を充実させてくれることも知っていたので、何とか試合をライブで見られるようになりましたが、何の障害なのだかわかりませんが、動画は見られても音が全く出ないという状況に、見られても嬉しさは半分くらいという感じになってしまっています。

逆に言うと、長時間音が出ない中継をしていても許されるのはネット中継だからこその話なのかも知れません。もし電波を使った放送でこんなことが起これば翌日のトップニュースとして放送事故扱いになってしまったでしょう。有料でネット配信をしているのですから少なくとも契約者にきちんとした放送内容を提供して欲しいですが、そんなひどい中継を見ているからこそ、今の放送における日本のプロ野球のコンテンツの旨味がないということが証明されるということになってしまったように思います。

しかし、松坂大輔選手が高卒のルーキーとして初登板した時には、当時はまだテレビのプロ野球中継はセリーグ重視、ジャイアンツ偏重の形だったのにも関わらず、当時の民放では予定を変更してまでパ・リーグの松坂登板の試合を放送しました。今になって思えば、プロ野球の歴史の中でパ・リーグの試合に焦点を当て、多くのファンを呼ぶきっかけになったのが松坂大輔登板試合のテレビ中継ではなかったでしょうか。ある意味、昨日今日とメジャーでホームランを打って盛り上がっている大谷翔平以上の興奮が当時にはあったような気がします。

個人的にはその時の記憶が今でも思い出され、先日春の甲子園大会が終わったばかりでもありますし、かつての甲子園のヒーローがどのような復活をとげるかということをせめてBSでも放送してあげるべきではなかったかなと普段プロ野球をそこまで見ることのない私でも思うくらいです。

今回私はタイムラグがあるとはいいながらも(しばらくDAZNの音が出なかったので試合を中継しているNHKラジオからの音を掛けているのでよけいそう感じました)、ネット配信で見ているのですが、このまま生中継のスポーツのコンテンツが次々とテレビでは流されずネットだけでしか見られなくなるということになると、スポーツを見る人たちもより細かなジャンルのものや今回の松坂大輔選手の復活登板というストーリーを期待している人がテレビでスポーツを見なくなる可能性も出てきてしまうように思います。

それでいて、日本のプロ野球選手で構成された日本代表チームの出るコンテンツなら単なる親善試合でも優先して放送するというのは何だろうなあと思います。昨シーズン終了前にも一部のクライマックスシリーズを見るためにはDAZNに加入するしかなかった地域があったことも気にかかります。こうした細かなことが一つ一つ積み上がっていくことによって、プロ野球ファンの中には「もうDAZNで見るからいいや」というような流れになって本当にテレビ関係者はいいと思っているのでしょうか。