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ランキングに忖度がなくても説明のない番組

後から読む方もいると思うので、今回の放送が生放送だったこともあり、テレビなどマスコミがこぞって政府批判を放送された当時にしていた事について書いておきます。内閣総理大臣が任命する日本学術会議の会員のうち、推薦のあった人の中から6名だけ任命されなかった事について、「任命しない理由」を説明するべきだという事が言われています。基本的には説明責任がないとは言え、行政への不満を抑えるためにも、多くの人を納得させるためにもきちんと任命しない理由を説明してから任命拒否すれば良かったのにと思います。今回の番組は、最後の最後に同じような問題を起こしたまま終わってしまったように思います。

番組の内容は、女性歌手限定でプロの声楽家131人が忖度なしでランキングを選んだものですが、ランキング番組の宿命として「この人がランキングに入らないのはなぜか」とか「この人がランキング上位なのは納得できない」という個人の主観による不満があります。さらに、ランキングを決めるための「ルール」を細かく設定することも大事ではないかと思います。

例えば番組に呼ばれたらその場でランキング入りを納得できる生歌を披露できる現役の歌手に限定するのか、さらに無名の歌手まで含めるのか、過去の伝説の歌手まで含めるのか、その際動画が残っていなくてもいいのか、それによって今回のランキングも変わってくると思うのですが、個人的には過去の素晴らしい歌唱能力を持っていた歌手も含めてのランキングになっていたものの、いわゆる皆が知っていて現在も活躍している人が多く選ばれ、いわゆる「サプライズ」的なものは少ないのは残念でした。

ただ、そんな中で第六位にノミネートされた演歌歌手の島津亜矢さんは、視聴者の中には誰? と思った人も多いサプライズ選出だと思いますが、製作側が島津さんにあえて持ち歌を歌わせず、声楽家にアンケートを取ったJPOPの楽曲の中で一番歌うのが難しいというランキング一位の 「白日」(King Gnu)を生披露させ、その歌唱力とともに演歌歌手の枠を超えた歌手としての魅力を感じさせることに成功しています。作り手側の狙いというのがあるとしたら、JPOPの歌手以外にもこんな人がいるんだぞという事を紹介することもあったと思うのですが(今後の島津亜矢さんの歌手としての売り出し方を考えての企画であったとしても)、それにしては2時間という枠は短すぎて、ランキング以外の見どころは少なかったのではないかと思います。

そして時間が足りなかったこととも関係あるのですが、ランキング自体の問題として最後のところでのネットコメントが象徴していたのですが第一位の発表があった後に「忖度がないと言っておきながら最後に忖度した」というように言われっぱなしになってしまったことがあります。個人的には第一位は現役歌手だけでないランキングで、動く映像が残っている歌手の中ということでは第一位は美空ひばりさん以外にはないと思っていたのですが、ネットで美空ひばりさんが一位を取ったことに不満を述べている方は、恐らく晩年のひばりさんの動画を見ただけで幼少期から多岐にわたった歌手としての活動について無知であるという可能性が高いと思います。個人的にこうした感情が残って、何も聞かないで美空ひばりさんの歌手としての能力を否定するような事になってしまわないかと心配になります。

そうした批判は恐らくランキング決定後からあったと思うので、番組の構成としては、さわりで流れた「川の流れのように」と、第一位の理由付けとして紹介された「愛燦燦」だけでなく昔の映像も活用して、その凄さをちゃんと説明すべきだったと思います。

恐らく同じランキングをラジオで一日かけて紹介する番組を作っていたら、ランキング外で知名度はないが素晴らしい歌唱力を持っている現役歌手をリスナーに紹介することもできたでしょうし、ランキング上位の歌手のどこが素晴しいかをきちんとリスナーが納得するように説明でき、聞いている人も満足するような番組が作れたのではないでしょうか。

今回のランキングがあくまで「人気ランキング」なら2時間で収めてもそんなもんかと思ったでしょうが、なまじ忖度なしのランキングと銘打っただけに消化不良が残った番組に終わってしまったと思います。どうせならこの番組で作ったランキングを基にして審査した方に再取材して、皆が納得する内容の番組をどこかでやって欲しいものですが。

(番組データ)

本当のとこ教えてランキング TBS
2020/10/04 21:00 ~ 2020/10/04 22:54 (114分)
【MC】 坂上忍
【ゲスト】 朝日奈央・小芝風花・ヒロミ・吉村崇 (50音順)
【進行】 良原安美(TBSアナウンサー)
【総合演出】 竹永典弘
【プロデューサー】 谷沢美和 井上整 高宮望

(番組内容)

様々な「禁断のランキング」だけに特化した生放送ランキング番組!今回は【プロの声楽家が選ぶ、本当に歌がうまい女性歌手ベスト30】を紹介

緊急生放送!日本音楽史でNo.1歌唱力の歌姫は誰なのか?今夜決定!プロの声楽家131人が忖度なしで選んだ歌姫とは!?さらに声楽家が一番歌うのが難しいと認めたあの名曲をスタジオで生歌唱!


掟破りのジャンル超えドラマは後に何を残したか?

実は、以前の半沢直樹シリーズは話題になっても全く見る気が起きませんでした。普通に大人気すぎるドラマというのは多くの事が語られすぎていて、あえてここで書くこともないし、自分が書く前に誰かが書くことが多すぎる気がして自ら見ることを避けていたということはあります。

ただ今回は、放送以前に前シリーズのあらすじ(いわゆるドラマの復習)番組から見たので、よりスムーズに本編に入っていくことができたのですが、今回新シリーズを追って行こうと思ったのは、このドラマ直前に面白がって見た「課長バカ一代」(TwellV)の存在があります。

半沢直樹シリーズは歌舞伎役者を多く起用することによってその「顔芸」に注目が集まりましたが「課長バカ一代」も負けず劣らず尾上松也、市川左團次、坂東彦三郎という豪華な面々が出演されています。こちらはあくまでも「下町ロケット」のような企業ドラマのパロディで、全編ギャグが入った半沢直樹とは比べられないほどくだけたドラマですが、新半沢直樹シリーズではその主役・課長補佐代理心得の八神和彦を演じた尾上松也さんが出演されると聞いて、八神という役柄の影響を残したまま出てくるのか? という単純な興味で見てみようという気になったわけです。

半沢直樹の方は当然、逆的な要素など全くなくストーリーが進んでいくわけですが、その中で単なる顔芸というところを超えた「大げさな確信犯的な演技」のオンパレードになっています。ご覧になった方はご存知ですが、ドラマを見ていなくても様々なモノマネ芸人が半沢直樹キャラクターの真似をするだけでなく、放送局の枠を超えて半沢直樹に出演した俳優がバラエティー番組上でドラマの名セリフをアレンジして披露し、ドラマの人気にも相乗効果を出しています。これだけ「ご本人」がテレビに出まくると、モノマネ芸人の影が薄くなるだけではなく、いわゆる「ドラマ・半沢直樹のパロディ」自体を作ったとしてもドラマ本編より面白くはならないだろうと思います。

翻って「課長バカ一代」は当時の池上遼一画のパロディであることとともに、真面目な企業ドラマを思いっ切りパロディにして笑いを取った漫画が原作です。しかし、この半沢直樹については、すでにパロディを作りようがないほど出演者のキャラが立ちまくり、これ以上のインパクトを見る人に与えることは極めて難しく、二次創作の楽しさという面から言うともはや完成されつくしてしまっていて、パロディが作りずらいドラマになってしまったように思います。

当然、このドラマにはシリアスな展開があり、それを楽しみにする人たちを満足させ、さらにキャラクターを中心に見て腹をかかえて笑う人たちもいて、さらに同局のかつての人気番組、「水戸黄門」を彷彿とさせるような勧善懲悪(主人公の半沢直樹が負けることはない)物でもあるので、お年寄りでも安心して見ることができるという、多くの種類の視聴者をまとめて面倒見て、さらにその後には何も残らないという視聴者総取りのドラマであると言えましょう。

歯がゆいのはこのドラマを放送できなかったNHKを含めた他民放局でしょうが、NHKすらニュースでいわゆる「半沢直樹チックな文字」を使ったニュースを報道したり、半沢直樹の出演者を他の番組に出すことで視聴者の興味をあおることで結局ウィンウィンになっていました。しかし、ドラマとしてはこうしたドラマを続けてはさすがに勢いが落ちてきますし、前シリーズから7年という間を空けたということは、やはり作り手の側もこの種のドラマは続けて企画しては飽きられることを見越していたのだと思われます。

今後のドラマについて、さすがにこのシリーズより多くの視聴者を引きつけ、なおかつ面白いものをというのは酷な話でしょう。ただ問題なのは、こうした勧善懲悪ドラマで与党の幹事長が千倍返しを受けるような内容に視聴者が拍手喝采しても、現実の世界ではこのドラマで「悪」とされるであろう多くの人や団体がぬくぬくと生き続けているということです。ドラマ・半沢直樹はそうした事も私たちに問い掛けているのかも知れません。

(番組データ)

日曜劇場「半沢直樹」最終回1000倍返しなるか!そしてまさかの辞表!?最終決戦
2020/09/27 21:00 ~ 2020/09/27 22:09 (69分)
【出演者】堺雅人、上戸彩、及川光博、片岡愛之助、賀来賢人、筒井道隆、江口のりこ、西田尚美、石黒賢、入江甚儀、丸一太、山田純大、山本亨、粟島瑞丸、持田将史、児嶋一哉、浅野和之、夏目三久、井川遥、尾上松也、木場勝己、段田安則、柄本明、北大路欣也(特別出演)、香川照之など
【原 作】池井戸潤
【脚 本】丑尾健太郎、谷口純一郎
【音 楽】服部隆之
【ナレーション】山根基世
【プロデューサー】伊與田英徳 川嶋龍太郎 青山貴洋
【演出】福澤克雄

(番組内容)

中野渡(北大路欣也)から裏切られ失意の半沢(堺雅人)だったが、仲間たちからの恩返しを受け再び戦うことを決意。運命の最終決戦、待っているのはー倍返しか?辞表か?

箕部(柄本明)の不正の決定的証拠が、大和田(香川照之)と中野渡(北大路欣也)に握りつぶされてしまう。怒りに燃える半沢(堺雅人)は3人に1000倍返しを誓うも、最も信頼していた頭取にまで裏切られたことで茫然自失に。そんな半沢に手を差し伸べたのはかつての仲間・森山(賀来賢人)たちだった。再び戦うことを決意した半沢はついに紀本(段田安則)の居場所を突き止めある事実に行き着くが…タイムリミットが迫っていた


「見逃し配信」NGタレントは共演者としてどうなのか?

社会の変化とともにテレビの見られ方というのは変わってきていて、私は同じ時間で見たい番組がかぶってしまうような場合は、ある一定の法則に乗っ取って見る番組を決めています。

というのも、今回の「モニタリング」の中の企画、例によってヤラセかどうかつい疑ってしまうテレビタレントの心霊系ドッキリですが、今回は特定のターゲットを2組作って同時にドッキリを進行するという企画の斬新さに、それなりに面白がって見ていました。

このブログ最後の(番組内容)にある【ニンゲン観察(2)】Snow Manとトリンドル姉妹が廃墟で怪奇現象に遭遇!自分たち以外には見えない女性の姿が…そして最後に待ち受ける最恐の仕掛けで大パニック! というのがその企画で、トリンドル姉妹が遠くから聞こえるSnow Manが発する叫び声やベルの音におののいたり、逆にSnow Manのメンバーが、後ろを向いたトリンドル姉妹がピアノの前に座っているのを、直前に仕掛けられた髪の長い女性の幽霊だと思ってびびったりと、かなりスリリングな展開でした。

しかし、こうしてブログで紹介していても、本放送を見た方および、放送を自分で録画して見た人以外は、その面白さを感じることができないのです。それは、特定のタレントがテレビに出演しても見逃し配信で見られることにNGを出していて、今回はSnow ManがNGになるようで、Snow Manの登場自体が見逃し配信サイトで「無かったこと」になってしまうようなのです。

今回の番組は117分ですが、民放テレビの見逃し配信サイト「TVer」の「モニタリング」の見逃し配信では番組の配信時間が70分ちょっとに短縮されていて、番組説明でも【ニンゲン観察(2)】の内容がまるまるカットされてしまっていました。

これだと、本放送を見ないで「TVer」だけで見た人はSnow Manとトリンドル姉妹は元からいないことになってしまっているのです。可哀想だと思うのはトリンドル姉妹で、今までの独立したドッキリだったら配信もされると思うのですが、なまじ同時進行のドッキリ企画にしたがために、多くのスマホユーザーに見逃し配信で見てもらえる機会を逃したと言えるでしょう。

この10月から日本テレビのプライムタイムの番組が試験的に同時配信および見逃し配信され、今まで「TVer」で見られなかった番組もネット経由で見ることができるようになるとのことです。ただ、その際も依然として見逃し配信NGのタレントは存在するので、そのタレントと絡んでコーナーを盛り上げるお笑いタレントが割を食うということも十分に考えられます。

個人的に見逃し配信では見られないと思うものには(これはあくまで個人的な見解なので、実際に見逃し配信では見られるかも知れませんが)、日本テレビ月曜の「有吉ゼミ」の中の人気コーナー「八王子リフォーム」があります。

VTRの中でSixTONESのメンバーであるジェシーさんとからむ部分がほとんどのため、今回のトリンドル姉妹のように、ヒロミさんが単独で出演する部分だけ切り取ることができず、コーナーすべてが最初から無いもののように「有吉ゼミ」が見逃し配信されるようだと、ヒロミさんとしても面白くはないでしょうし、今後テレビの見られ方が本格的にスマホでの配信にそれなりの割合がシフトしてくるようだと、いわゆる「見逃し配信NGのタレントとの共演NG」を言うタレントも出てくるかも知れません。

この問題は、遅かれ早かれ解決しなければならない問題であると思いますので、テレビ局も見逃し配信で見られた分のギャラについてきちんと出すように交渉するか、改めて見逃し配信のルールについて「誰が出ていたら配信できないのか」ということをちゃんと視聴者に明らかにすべきでしょう。

こちらとしては、あくまで想像の中でこのタレントは見逃し配信NGらしそうな人が出ている番組を生放送で優先的に見て、大丈夫そうな番組は後でゆっくりネット経由で見るようにしています。ただ、テレビよりつい「TVer」の方でバラエティを消化するような方は、いくら特定の芸能事務所が推してくるタレントがいたとしても、その人を見られないケースが出てきて、結果としてそのタレントの認知度が落ちるといった芸能事務所としてはあまりよろしくない結果にもつながってしまうと思うので、全局全番組同時配信&見逃し配信を実現するためにも、多くの人が知恵を出して欲しいと思います。

(番組データ)

ニンゲン観察!モニタリング★Snow Man心霊&仲里依紗が七変化!
2020/09/17 20:00 ~ 2020/09/17 21:57 (117分)
【MC】ブラックマヨネーズ(小杉竜一・吉田敬)
【レギュラー】川口春奈 小泉孝太郎 笹野高史 NAOTO ハリセンボン(箕輪はるか・近藤春菜)

(番組内容)

Snow Manが廃墟で心霊体験!?最後にとんでもない仕掛けが!仲里依紗がIMALU・森三中黒沢に気づかれず七変化!ガソリンスタンドで相川七瀬が熱唱!
【ニンゲン観察(1)】仲里依紗が親友・IMALU&森三中黒沢に気づかれずギャルや女子アナ、占い師に変装!気づかれずにやり切れるか?
【ニンゲン観察(2)】Snow Manとトリンドル姉妹が廃墟で怪奇現象に遭遇!自分たち以外には見えない女性の姿が…そして最後に待ち受ける最恐の仕掛けで大パニック!
【ニンゲン観察(3)】川口春奈とハリセン春菜が居酒屋に…2人のケンカに巻き込まれたターゲットは?
【ニンゲン観察(4)】ガソリンスタンドで相川七瀬が大ヒット曲熱唱や新モノマネ女王登場に大盛り上がり!
今回は新モニタリングファミリー川口春奈さんがロケに出動!居酒屋で遭遇するという夢のようなシチュエーションでターゲットもデレデレ!さらに仲里依紗さんの貴重な変装姿も必見です!Snow Manも怪奇現象にひっくり返って驚く爆笑リアクションを連発!お楽しみください!


とても民放らしい「ご先祖さま探し」

この番組は2回目の企画で、前回はお笑い芸人の宮川大輔さんが家系図上で日本の映画の祖である牧野省三氏につながり、それはわかる人にとってはすごい事なのですが、あくまでテレビ的にわかる人をということでなのか「津川雅彦さんと親戚」ということで大いに盛り上がりました。ただ、この番組の潔いところは、たとえ養子つながりで血縁が途絶えているような場合でも、つながりが面白ければどんどんその家系図を書き続けていってしまうところにあると思います。

同じように自分の先祖の事を調べる番組にはNHKの「ファミリーヒストリー」がありますが、あちらの方はNHKの綿密な取材力を使ってドキュメンタリータッチで仕上げているという感じなのですが、この番組は親族ご本人にわかっている家系図を書いてもらうところから始まり、思ってもいなかった人物と出演タレントがつながっているという事をメインに楽しむバラエティとしてうまく仕上がっています。

今回のメインはDAIGOさんで、少し詳しい人なら彼のおじいさんが元総理大臣の竹下登氏ということはわかっているので、そこからの親戚関係はだいたい予想できましたが、意外だった点が何点かありました。まずは、トヨタ自動車創業者と日産自動車創業者が親戚関係にあったということの中で、家系図に書かれていた「豊田佐吉」の文字が無視され、スタジオ内でも全く話題にされなかったことです(^^)。豊田佐吉の自動織機をはじめとした様々な発明が後のトヨタ自動車につながったという意味で、ネームバリュー的にもトヨタ自動車という名前を出すなら豊田佐吉とDAIGOさんが親戚だったという風に紹介した方が面白かったのではないかと思うのですが。

そして、この番組独特の面白さが出た点として、豊田佐吉から安田財閥にも親戚関係が家系図でつながっていく中で、DAIGOさんがロックシンガーである点から「小野洋子(オノ・ヨーコ)」という文字が出た時点で、自動的にその夫である「ジョン・レノン」とも親戚ということになってしまいました。当然、相当遠い親戚でありDAIGOさんとジョン・レノンには血縁関係はないので(^^;)、音楽的な才能がどうこうということは全くないのですが、ビートルズのメンバーが「親戚」という枠で一くくりになってしまうというのは、結構面白いと素直に思えます。

さらに、DAIGOさんの家系図を辿ると何と維新の英雄である西郷隆盛にたどり付き、西郷と親戚関係にあった岩倉具視の直系の子孫ということでスタジオに登場したのが加山雄三さんでした。加山さんのお母さんが岩倉具視のひ孫だということなのですが、これで加山雄三さんとDAIGOさんが遠い親戚で、さらに加えて加山さんとジョン・レノンも親戚関係になっているという事になってしまったのです(^^)。

加山雄三さんは、ザ・ビートルズが来日した時にメンバーに会うことができた数少ない人物の一人でした。ただこの件も番組では加山さんとビートルズが会った時にすき焼きを食べたという話を、単に親戚同士の会食と片付けてしまいましたが、当然その時点では加山さんとジョン・レノンは親戚では有りませんでした(^^;)。その点は見ている人もわかってはいると思うのですが、最初から親戚ということで加山さんとジョン・レノンは会ってはいません(^^;)。

当時の記録を見てみると、周辺の人々が加山さんを何とかビートルズに会わそうとお膳立てをしたそうなのですが、当初加山さん本人は気乗りがしなかったということです。でも何とかヒルトンホテルのビートルズ滞在中の部屋に出向き、一緒にすき焼きを食べるということになったのですが、食べ方のわからないメンバーに加山さんが食べ方を教え(若大将の映画ではすき焼き屋の息子という役をこなしていたから?)、行儀の悪い食べ方をしたジョン・レノンを叱ったという話もあります(^^)。まさか後に親戚になるとはこの時には思わなかったでしょうね。できればそんな話も加山さんに振ってもらえれば、ネットでは出てこなかったビートルズの裏話が加山さんから出てきたかも? と思うとちょっと見ていて残念でした。

で、この番組で一番笑ったのは、次に出てきた俳優の千葉雄大さんの家系図をたどっていく中で、何とまた維新の英雄である木戸孝允に行き付き、西郷隆盛・木戸孝允・岩倉具視(この3人には親戚関係がある)が並んだ写真が出た時点でまさかと思ったのですが、DAIGOさんの時に出て退席したはずの加山雄三さんが再びスペシャルゲストとしてスタジオに登場した時です(^^;)。つまり、DAIGOさん・加山雄三さん・千葉雄大さんは遠い親戚で、3人ともジョン・レノンの親戚だったということで、この時点でお腹いっぱいという感じでしたね。

後から出た壇蜜さんと武田真治さんはそこまでのインパクトが与えられずにかわいそうな気がしましたが、渡部建さんは同じ総理大臣でも決して国民から好かれたとは言い難い山県有朋氏と遠い親戚であることがわかり、これはこれで面白かったです。できれば渡部建さんの芸能界の立ち位置とからめていじってほしいという気もしましたが、これはテレビ上では突っ込むのは無理でしょう。今後もある意味無責任に、とんでもない人物とつながっていそうな芸能人を番組で発掘して紹介して欲しいと思います。これこそ民放のバラエティという感じだったので、次回があることを期待します。

(番組データ)

はじめまして!一番遠い親戚さん【DAIGOと千葉雄大が遠い親戚だと判明SP!】TBS
2020/02/11 19:00 ~ 2020/02/11 20:54 (114分)
【MC】相葉雅紀
【ゲスト】DAIGO・武田真治・壇蜜・千葉雄大・宮川大輔・渡部建(五十音順)
【SPゲスト】加山雄三
【プロデューサー】國谷茉莉
【演出】山森正志(イースト・エンタテインメント)

(番組内容)

芸能人の家系図バラエティー!
▽ DAIGOの親戚はまだまだスゴかった!西郷隆盛にアノ小説家…華麗すぎる偉人の連続に大パニック!
▽千葉雄大の親戚に「1964年東京五輪にまつわるスゴイ方」や「ピカソと交流を重ねた日本人」がいた!
▽DAIGOと千葉雄大が遠い親戚だと判明!2人を繋ぐまさかの人物が登場
▽渡部建が大興奮!「元首相」や「日本が誇る名女優N」との繋がりが!
▽武田真治の親戚&壇蜜の初恋親戚さんも!


芸人より面白い素人がいる大阪ローカルの底力

大阪はお笑いの街と言われ、VTRで街を行く素人のインタビューを取ってその面白さをアピールする番組は「秘密のケンミンSHOW」をはじめ多くあるものの、そうした「街のご意見番」は芸人より面白いのか? という事について今回は考えさせる内容になりました。

私自身が関西出身ではないので、仲間うちのそれほど緊張感のない掛け合いを見ていてもそれほど面白さを感じないのですが、今回の明石家電視台は大阪という地域の面白さを余すことなく伝えてくれた素晴らしい構成になりました。

基本的に、明石家さんまさんがMCとなり、トークを行なう番組というのは、有名なところでは日本テレビの「踊る!さんま御殿!!」やフジテレビの「さんまのお笑い向上委員会」があります。前者における芸人の立ち位置はあくまでメインゲストの飾りという感じで、芸人の力量が試されるところがあります。逆に俳優やスポーツ選手、文化人というスタンスの出演者をいじってその面白さを引き出すところにこの番組の面白さがあり、出演する芸人はいかにMCであるさんまさんの意図を汲んで発言をするのかというところに難しさがあるでしょう。

そして、芸人にとってさらに過酷なのが「お笑い向上委員会」でしょう。かなりのトークがカットされる中で、頭の中に何も浮かばずに立ち往生してしまう芸人も多く、番組との相性が良くないと番組自体を敬遠する方もいるのではないかと思います。そんな中、番組後にはその内容についてネット上が炎上するほどの爪痕を残しつつも一般視聴者からほとんど支持されない(^^;)、爆笑問題の太田光さんの懲りない行動は、なかなか真似できないという意味ですごいなあと思うわけです。

ただ、多くの芸人にとっての理想は、その場を壊すことなくごくごく自然にさんまさんとのやり取りを行ない、ある時にはさんまさんが喋っている最中にも容赦なく合いの手を入れ、それなりに笑いを取るというような事だと思います。その普通の人ならほとんど不可能で、芸人さんであっても難しい事をやすやすとしていたのが、番組のネットデータでは名前さえも出ていない新世界のアニマル服専門店「なにわ小町」の名物店長で「声おっさん・顔べっぴん」を自称する高橋真由美さんの素人離れした面白さが半端ない今回の放送でした。

番組レギュラーの中川家・礼二さんもそのキャラクターに食いつき、恐らく近々収録される「お笑い向上委員会」では必ず高橋さんの「笑うてるのに声出てへん」モノマネが実践されるでしょう。そもそも考えると、こうした礼二さんのモノマネの面白さというのは、素人離れした面白さを持つ大阪で生活している素人さんを観察し、それを脚色なしに再現するだけでも面白くなってしまうところもあるのではないかとも思えてきました。少なくとも高橋さんは必死に爪痕を残そうとしたゆりやんレトリィバァさんよりも笑いを取っていましたし、同じ芸人としての土俵で争うことがないことだけが幸いだという感じもしました。

やはり毎日、新世界で丁々発止のやり取りをしているので、ご自身は「日常会話」の延長でしか語っていないにも関わらず、大阪とは縁もゆかりもない多くの人を笑わすことのできる能力が自然と備わってしまったのでしょう。高橋さんがすごいのは、芸人は一部テレビには適さないような言葉を発したりする素人の面白さを切り取って表現することが絶妙なのですが、高橋さんは素人でもきちんとテレビを見ている人にそこまでの不快感を与えずに場を面白く回しているバランス感覚の良さが絶妙なのでした。

最近の明石家電視台はトーク中心で様々な人達が出演されているので、その中から少しテレビの枠から飛び出るくらいの個性を持つ素人さんをスタッフが見付けてきてくれることもあるかも知れません。見逃し配信のTVerならネットされていない地方でも見られるので、現在のお笑いにちょっと不満を持っている方はちぇっくしてみるといいかも知れません。

(番組データ)

痛快!明石家電視台【大集合!計920kgぽっちゃり美人★ゆりやん珍恋愛】
2020/01/13 23:56 ~ 2020/01/14 00:53 (57分)MBS毎日放送
【レギュラー】明石家さんま 間寛平 村上ショージ 中川家(剛・礼二) 重盛さと美 アキナ(山名文和・秋山賢太)
【ゲスト】 安藤なつ ゆりやんレトリィバァ 五十嵐サキ ほか10人
【アシスタント】 辻沙穂里(MBSアナウンサー)

(番組内容)

新喜劇マドンナ1年でまさか30kg増量!?
▼「ぽっちゃりがゆえの身体の不思議がある」「譲れないこだわりがある」…から「股ずれ」「便器を割った」まで、赤裸々告白!!
「実際どうなん!?ぽっちゃり美人」と題し、メイプル超合金の安藤なつ、ゆりやんレトリィバァ、吉本新喜劇の五十嵐サキらお笑い芸人をはじめ、ぽっちゃりアイドルのびっくえんじぇる、歌手、主婦、販売店員ら70キロ~135キロの10人が登場!テーマに沿ってさまざまなエピソードを披露する。最年長は69歳で80キロの主婦!
●ぽっちゃり以前の写真も披露!「新喜劇のマドンナ」に「栃木の北川景子」!?ビフォーアフターにさんまもビックリ!!
●「ただ食べてるだけ」のユーチューブで「生活できるようになった」
●太っていると外国人からモテる!? …赤裸々な告白やエピソードが次々披露!ぽっちゃり美人10人がとっておきのトーク


アスリートとメディアの関係を掘り下げないと何も変わらない

2019年9月15日に行なわれる、2020年東京オリンピックマラソン代表を決める一発勝負、マラソングランドチャンピオンシップについて生放送する中で、かつて一発選考とされていた日本陸連の選考基準が変えられたソウルオリンピック男子代表の選考についてのVTRによる解説がされたのですが、その内容に気にかかることがありました。

当時、代表有力だったダイエー所属の中山竹道選手がインタビューに答えた週刊誌の記事が画面に大写しなり、選考レースである福岡国際に怪我のため出場が不可能となった瀬古利彦選手に向かって「這ってでも出てこい」と中山選手が発言したかのような当時と同じ内容を報じていましたが、あれから相当の時間が経ち、当時の状況を当時者が説明した本も出版される中、この内容についてそのままVTRにしてしまうのはいかがなものなのかという気がしたのです。

というのも、私自身はその後の中山竹道氏へのインタビューを読んだのですが、その中で言った言葉は「這ってでも出てこい」ではなく「自分なら這ってでも出ますけどね」というニュアンスの違いが今となっては明らかな事実として認識されています。その発言には瀬古利彦選手への敵意はなく、あくまで自分の心情を述べているだけなのですが、当時のマスコミはこの週刊誌の内容に沿って中山選手のイメージを作ってしまったのです。

当時のマスコミは、いわゆる「空白の一日」事件で悪役となったプロ野球読売ジャイアンツの江川卓選手のように、それまでの経緯や直接発言した内容を捻じ曲げたり肝心な事を紹介しなかったりしてまで、テレビの視聴率を上げたり、雑誌の売り上げを伸ばそうとしたり、そんな時代背景の中マラソンに関する話題もヒートアップしていったのだろうと思います。しかし、あらゆる報道の裏側が明らかになった2019年の今、まだ中山竹道氏の発言についての裏取りをしないで週刊誌報道をそのままVTRにして出してしまうのか、本当に理解に苦しむとともに、この番組に関わった人の中には本気で陸上競技を愛している人がいないのではないかと思ってしまいました。

ただ、番組が生放送で、VTRの最中に抗議の電話が局に入ったのか入らなかったのか、その真偽はわかりませんが、VTRが終わった後にスタジオでの話になった際、MCの安住紳一郎アナウンサーが有森裕子さんに振るような形でその話を出し、「自分なら這ってでも……」という内容を紹介したにとどまりました。本当ならソウルオリンピックに出場した瀬古利彦選手と不可解な選考基準によって落選した工藤一彦氏とのVTR対面を間接的に演出するよりも、当時の記事を湾曲して週刊誌に掲載した責任者が中山竹道氏のところに行って直接謝罪させるくらいの方が良かったのではないかと思います。ちなみに、スタジオの後ろに設置されている過去の内容を写真とともに紹介したパネルには「瀬古、這ってでも福岡へ来い!」という文字が刻まれていました。これはあくまで個人的な印象ですが、上記のコメントは用意されたものでなく、前半の内容についての批判の声が入ったから急遽行なわれたものではないかと思えて仕方ありません。

いつの世も、売らんがなのために実際の取材内容と微妙にニュアンスを変えて報道するマスコミはいるものですが、今回のマラソングランドチャンピオンシップについても、事前・事後に何らかのマスコミが起因する問題が起こった場合、TBSはどのように報道するのかということまで考えてしまった今回の放送でした。

(番組データ)

マラソン・グランド・チャンピオンシップ 東京五輪代表を懸けた運命の決戦へ TBS
2019年9月11日(水) 20時00分~22時00分(120分)
MC:安住紳一郎、江藤愛 ゲスト:有森裕子、高橋尚子、原晋、土田晃之
ドラマ:徳重聡、三浦理恵子、武井壮、佐藤真弓、手塚とおる、嶋大輔

(番組内容)

順位なのか、タイムなのか、はたまた実績なのか…。選手も国民もスッキリしない、あいまいな選考システム。その裏には、誰も踏み込めないマラソン界のタブーが存在していた…。ソウル五輪代表選考で、あいまいな選考基準によって、代表の座を逃した悲運の男が生まれたた。この騒動は、日本マラソン界最大の事件として、これまで誰も触れることができなかったのだ。あれから32年、悲劇のランナーが、封印してきた禁断の選考問題を初告白。そして今回、瀬古が長年心にしまっていた思いを初めて彼に伝える。「人生を変えてしまって申し訳なかった…」その思いを聞いた男は…。


後からの言い訳は傷口を広げるだけか?

私のいる静岡県内では、東京で7月5日深夜(実際の放送時間は7月6日未明)に放送された今回紹介する「2019年上半期のTBS」という番組が8月4日の午後という変則的な時間に放送されたので、今さらという感じもする方もいるかも知れませんが、このブログでも触れさせていただいた「世界リレー」中継に関するTBSの見解について司会の安住紳一郎氏がコメントしましたので、今回はその内容についてのみになりますがコメントの内容を検証していきたいと思います。

この「世界リレー」についての中継におけるドタバタ劇については、以前にこのブログで紹介させていただきました。

スポーツのライブ中継では何を伝えるべきなのか

上のリンクの中で3つの問題だと思った点を指摘させていただきました。それは以下のような事です。

・その1
世界リレー初日の地上波の放送前にBSで競技内容が中継されていたものの放送時間が終わってしまって中継できなかったレースについて、地上波内ではキャスターを含め全く伝えなかったこと。

・その2
地上波の中継でも全レースを中継する事ができず、直後にある通常の生放送番組「新・情報7DAYS ニュースキャスター」でも、番組が始まってレースの内容を中継するのに10分くらい時間がかかり、結果が気になる視聴者は、安住紳一郎氏とビートたけし氏の雑談にしばし付き合わされたこと。

・その3
翌日の第二日の中継におけるレース結果について、字幕では正しい結果が発表されているのに、本来はその事をきちんと伝えるべきキャスター(織田裕二氏・中井美穂氏)の元には伝わっておらず、しばし推測と憶測を元にしてのコメントが続いたこと。

このうち、番組で安住紳一郎氏が弁解した点はご自身が携わった「その2」の部分のみで、会社として陸上についてはかなり長いこと「TBSの顔」となっているお二人の事については最後まで全く触れませんでした。この点については、番組の最後に安住氏は「責任は全て私にある」と言っていましたのでここで会社やメインキャスターの事を書いても仕方がないと思いますので、今回は直接ご自身の問題として弁解した「その2」についてその内容とそれに対するコメントをしていきたいと思います。

まず、安住氏はスタッフから、世界リレーについてはタイムテーブル通りに進まないという事が想定外で、さらに中継できなかった競技についても「結果のみを伝えれば良い」と言われていたことを明かしました。しかし、この状況でレースの内容を伝えることは大事だということもあり、急遽録画したレース内容を「新・情報7DAYS ニュースキャスター」で放送するためには、元々構想になかった事なので、すでにスポーツ中継のスタッフが保存していた動画データから問題となったレースのスタートからゴールまでの部分を切り出し、さらに放送できるように編集するために7分から8分の時間がかかってしまうので、それまでの時間をビートたけしさんとのおしゃべりでつないでいたという説明でした。

ただ、そうした言い訳をするなら、番組開始冒頭にそういう話をした方が印象が良かったのではないかと普通に思えるのですが。安住氏からすると、自分の番組にも予定があり、放送すべき内容を削ってまでレースの録画放送をすることでこれ以上自分ら番組に責任はないと放送時には思っていた感じもあります。

もちろん、元々はタイムテーブルを発表し、さらにテレビ中継のある中でどんどん予定時間を過ぎてしまう世界リレーの運営サイドの問題であるのに、たまたまスポーツ中継後の生放送を担当していたキャスターが責任を問われるというのは厳しい話です。しかしアナウンサーがテレビ局の顔である以上、局に対する批判を和らげるためにも、番組開始直後のコメントをもう少し考えて行なった方がここまでのTBSに対する非難は大きくならなかったのではないかという点を考えると、全く安住氏やビートたけし氏に責任はないのかというと、少し考えてしまいます。

そして、今回の放送を見て改めて、TBSアナウンサーのレベルでは「世界陸上」のような大きなイベントの動向について文句も言えないのではないかと番組を見た側としては考えざるを得ません。この番組のホームページでは「TBSへのご意見を募集中」という投稿リンクがありましたが、どちらにしてもメインキャスターにご退場いただいたり、番組における発言内容を考えてくれと意見しても聞く耳を持たないんでしょと思わざるを得ません。やはり、こうした何が起こるかわからないスポーツ中継はインターネットによるキャスター無しの同時中継を責任を持ってやってもらう方が、同じような弁解を何回も安住紳一郎氏にさせるよりも楽に責任逃れができるのではないかと個人的には思います。

(番組データ)

安住紳一郎と2019年上半期のTBS★安住紳一郎と「水ダウ」藤井健太郎初タッグ! TBS
2019/07/06 00:20 ~ 2019/07/06 01:20 (60分)

(番組内容)

TBSで今年の上半期に起きた様々な出来事を振り返り、ハードTVウォッチャーとしても知られる安住紳一郎が出演者として…またTBS社員として…独自の目線で徹底解説!

日曜早朝に放送している『TBSレビュー』(TBSおよび放送全般が抱える問題について幅広く取上げ検証していく番組)を思いっきり柔らかくした感じの自己批評風バラエティ。アナウンサー安住紳一郎が独自の目線でこの1月~6月のTBSを振り返り、ときに現場の舞台裏を語りつつ、後輩アナウンサーからの疑問や悩みにも向き合いながら、上半期を締めくくります。

【MC】安住紳一郎(TBSアナウンサー)
【出演】日比麻音子(TBSアナウンサー)、山形純菜(TBSアナウンサー)、宇賀神メグ(TBSアナウンサー)


芸能人・タレントの「あるべき姿」を具現化したオードリー春日企画

まず、このブログで番組内容を紹介する場合には事前にインターネットで公表されるデータを利用することがほとんどなので、今回のように番組側がその内容をひたすら隠したいようなドッキリ企画の場合には、データとして残りにくいということがあります。すでにこの文章を書いている段階で番組は放送を終了していますのでネタバレしますが、重大発表とはオードリー春日さんがM-1グランプリで世に出る10年以上前から付き合いのあった一般女性にプロポーズするという事で、どこまでが既定路線なのかはわかりませんが、とにかくプロポーズは受諾され結婚という形へとなるようです。

こうした特定の番組内でのプロポーズ、結婚の発表というやつは、もし今後二人の人生に何かがあった場合、必ず引き合いに出される可能性があるので、特に顔出しまでした春日さんのお相手の一般女性および親族に話を通し、事前のテレビ出演のオファーがなかったわけはないでしょう。そうしたテレビ上の「お約束」を見ている側も理解した上で3時間通しで見てしまったわけですが(^^;)、ここまで個人のプライベートに踏み込んでドキュメンタリーの手法も使いつつ流すということには裏があるのではないか? という風に考えることもできてしまいます。

タレントの好感度調査というものがありますが、男女別年令別という全方位的に印象が良くなければなかなかランキングの上位には出てきません。そのために、こうした番組によって、春日さんの一途な相手とのお付き合いの仕方を印象付けるようなテレビ番組の取材を受けることによってしだいにお茶の間の好感度が上がるようになっていくという流れになっていくのだと思うのですが、ここで改めて言いたい事は「テレビはその枠にはまった所しか映し出さない」ということです。

テレビの、特にワイドショーでは人を叩く場合、その人の中にある批判されるべき場所を見付け出し、VTRで切り取られた箇所をこれでもかとしつこいぐらいに流されていると、最初はどうでもいいと思っていた人までも、この人は絶対許せないとテレビコメンテーターとともに怒り、その流れは特定の人物に対するバッシングにも繋がりかねません。きっかけになる行動というのは何でもいいので、それこそオリンピックのメダリストになった、それまでは国民の殆どが知らなかったいわゆる「今どきの若者」がするようなぶっきらぼうなインタビューでの受け応えが問題になったりします。しかし、現場の当事者にとっては、そこまで他人に気を遣うような人間であれば、ちょっとした事で心が動き、大きなプレッシャーが掛かるオリンピックや大きな試合でのメンタルをコントロールすることは難しいと考えることもできます。

テレビ番組に出演して好感度が起きるタレントを目指し、さらには大企業から大きなコマーシャルの契約を得たいと思っている人や事務所なら、あえて言えばテレビカメラが回っていない時でも、スタッフや一般のファンへのいわゆる「神対応」をするような完全無欠な「いい人」であることが好感度を持たれテレビに出続けるためには必要だと思うでしょう。

さらにそれこそ今回の春日さんのようにテレビ番組の提案に乗る形で、真面目で真剣に取り組む姿をテレビで出そうと必死になり、今まで良く思っていなかった人をも取り込むということもあるでしょう。反対に同時期にSNSでのつぶやきの内容が問題になり、さらに公の場に出てきてファンやマスコミに対して取った態度が最悪だと一部の人々がかみついている電気グルーヴの石野卓球さんのような場合はどうでしょうか。相方のピエール瀧容疑者はテレビの影響力とともに知名度を伸ばしてきたところがあるので、テレビ視聴者が納得するような謝罪なり態度を取っていないと、今後のテレビ復帰は難しいと思います。しかし、基本的にテレビに出なくてもいいと考えていて、石野氏のように今回の騒動で事務所を辞めたいとまで考えている人までテレビは「いい人」であれと強要するところがあるのです。これはテレビに出ることを目的としない人であれば、無視してもいい点ではないと思いますし、それをいくら批判したとしても批判の対象にはダメージにはならず、逆に新たな「伝説」になるところもあるので、あまりテレビが糾弾を繰り返すとテレビ自体のメディアとしての信頼感が損なわれるようなところも今後は出てくると思います。その点は十分に考えた上でテレビは批判の対象を考えるべきです。

改めてこれまでの春日さんとテレビとの関係ということで考えていくと、まだ現在住んでいる自宅アパートの「むつみ荘」はもはやネット検索を掛ければその場所は割れており、自宅でくつろいでいてもテレビで面白おかしくその様子を放送したがために(当然春日さんサイドも了解の上ではあるのですが)、数々の「自称ファン」という方とのトラブル話には事欠きません。一般的に考えて全くメリットがないばかりか、最悪の場合には犯罪被害を受ける可能性すらある今の状態を維持しているのには、とにかくどんな取り上げ方をされてもテレビに出続けたいという意志があったのだろうと想像はするものの、これからは一人で生活するわけではないので、さすがに結婚後は居を移さないとまずいでしょう。

少し前に福山雅治・吹石一恵夫妻の自宅に無断侵入したファンがいたことが大きなニュースになりましたが、福山雅治なら駄目で春日(敬称略)なら大丈夫という風にもし今のオードリーの担当番組を作っている人の中にいて、今後もむつみ荘で夫婦生活の様子をバラエティ番組で流そうと思っているとしたら、それは大きな間違いです。

2019年4月から「働き方改革」が大企業では実践されていますが、今のままテレビ局が一人の芸人のプライバシーを赤裸々に流すことで、春日夫妻の仕事というのはテレビ・ラジオ出演や営業の仕事が終わり、自宅に帰っても「残業」が続くことになります。どうしてもそうした画が録りたいなら、別に新居での生活を持った上で、むつみ荘は全てテレビ局が家賃などの面倒を見て「疑似生活用の仕事場」として提供するくらいの気概が欲しいところです。そうすれば私たち視聴者は、普通では考えられないむつみ荘での生活をテレビ演出上のフィクションと思って気楽に楽しむことができるようになるでしょう。それがきっかけになって、テレビとは「テレビという枠」の中にうまく収まるように演出をし、それらしく見てもらい視聴者を楽しませるものだということも、今よりももっと多くの人に理解してもらえるようになるのではないかと思うのです。

(番組データ)

ニンゲン観察モニタリング★福山雅治&緊急生放送で重大発表3時間SP!! TBS
4/18 (木) 20:00 ~ 23:07 (187分)
【MC】ブラックマヨネーズ(小杉竜一・吉田敬)
【レギュラー】小泉孝太郎  笹野高史  NAOTO ハリセンボン(箕輪はるか・近藤春菜)(50音順)
【プロデューサー】 田村恵里 畠山渉
【ディレクター】 木村大介 後藤美和 ほか

(番組内容)

【ニンゲン観察1】福山雅治が放送ギリギリ暴露トークに香川照之&中村アン総ツッコミ「貪欲だから」 レミ直伝の15分でできる超簡単「ケーキリゾット」を神木隆之介が手作り差し入れ!平野レミの超ムチャ振りにDAIGO困惑!

【ニンゲン観察2】運動音痴だと思っていた少女が実は小学生日本チャンピオンだったら?まるでCG!?実力完全開放で超高速スーパーラリーに驚愕!神技スマッシュに大人タジタジ…


過去の事は問題にしないテレビに痛烈な皮肉も

2019年3月から4月にかけて、フジテレビのお昼のワイドショー「バイキング」においてコカインを吸っていたことで逮捕された電気グルーヴとしての音楽活動だけでなく、タレント・俳優として毎日テレビでは見ない日はないくらい活躍していたピエール瀧容疑者についての音楽上のパートナー石野卓球氏についてのバッシングが話題になっています。

番組MCの俳優・坂上忍氏や、元宮崎県知事の東国原英夫氏が石野氏が発するピエール瀧容疑者へのツイートが不謹慎で、社会人として大丈夫なのか? というような批判をしているのですが、そういった表面的な正義感あふれる主張というのは果たして見ていて面白いのかと思うのと同時に、先日亡くなったばかりの萩原健一さんや内田裕也さんについて彼らが語る内容と、時期の違いで(現在起こっている事件と過去に決着した事件との違いは当然あるわけですが)そこまで直接逮捕されていない人間を批判する正義感は何なのか? と考えるきっかけになったことは確かです。

今回紹介する「オールスター後夜祭」が、こうした一連の事件をどこまで受けた上で放送したのかはわかりませんが、今回の問題の中にとんでもないVTRを元にした問題があり、その内容は最高に面白かったものの、同時にテレビの中でたびたび主張される表面的な正義感を木っ端微塵に破壊するようなものであったので、ぜひここで紹介させていただきたいと思います。

そのVTRは2019年から数えて28年前(1991年・平成3年)と言いますから、平成の時代にはなっていたものの、今のような社会の雰囲気とはかなりかけ離れていて、今のテレビなら放送できないような内容でも普通に放送されていました。この番組はプロレスや格闘技の世界から問題が出題されることが普通に行なわれますが、その問題もシューティングという元タイガーマスクの佐山サトル氏が主催する合宿に密着したVTRで、佐山氏が合宿参加者に大いなる愛情を持って接しているのか、単に虫の居所が悪いだけなのかわからないのですが、竹刀で思い切り気合いが入っていない参加者をぶっ叩いたり、全力での力が感じられない参加者を大声で威嚇しつつ鼓膜が破れ大怪我をするのではないかと思うくらいの力でビンタする様子がそのまま流れたのです。

番組では、「ビンタをした後、佐山氏は何と言ったでしょう?」という問題と、あまりの佐山氏の行動にあっけに取られている解答者へ向けて、「VTRで佐山氏が着ていたトレーナーの柄は何でしょう?」という二問の問題が出されたのです。当時は戸塚ヨットスクール事件から10年くらい経った後で、決して暴力指導礼賛ということではない状況だと思えるのに、これくらいの事なら問題なく放送していたテレビのおおらかさというのが逆に面白いというのが正直なところなのですが、このVTRを2019年の地上波で流すということは、単に番組を面白くするということだけでなく、その裏に何らかの意図を感じるべきではないか? とも思えるわけです。

この書き込みはいつまで残るのかはわかりませんが、これから十数年度にピエール瀧容疑者が保釈された映像を見て石野卓球さんは何とツイートしたでしょう? というような問題を出す番組があっても何もおかしくないのが現代のテレビでもあります。今後の捜査の展開や裁判の結果、そしてそもそもピエール瀧容疑者が再犯をするかどうかによっても変わってくるとは思いますが、逮捕されてから時間が経たず、ここまでの報道だけでも他の大きなニュースを押しのけるように、当初のコカイン中毒の方々への理解や社会にはびこる覚醒剤に対する意識の変化というところからかけ離れてしまっているのも実にテレビらしくて面白いと思えます。

今回の件に限らず、過去の痛い行動というのは常にネタにされ、笑われてしまう宿命を帯びていることを示しているとも言えるのではないでしょうか。とにかく「不謹慎」と言われても面白ければいいと思っている人がいる限り、同じような番組は無くならないと思いますし、昔そうした番組をやっていた人が正論で糾弾をくりひろげるのも「それが面白いから」という理由があるものと思われ、それはそれでテレビ的な騒動であると思えます。そうした騒動を見ている側としては、あまり本気で怒らないで騒動自体を面白がって見るのがいいのではないかと思います。

ちなみに前回の時に書いた「優勝者に何も賞品・賞金がない」という点について、苦情が殺到したようで今回は5万円の優勝賞金が出ることになりました。そして、今回の最下位(今後「オールスター後夜祭」出入禁止)の栄冠は、マジカルラブリーの野田さんに決まりました。同率で途中退場した流れ星・ちゅうえいさんと同じく一問を正解がないというクイズに答える気のない人物を切ったということになるのでしょうが、残念ながら今回の番組では全て「佐山サトル」さんと流れ星・瀧上伸一郎さんの奥さん(番組最初からずっと白のビキニを着てアシスタントガールを行なっていた)に持って行かれて他の事はあまり印象に残らなかったというのが正直なところです。その点では今後のクイズへの取り組み方にも影響が出てくるのではないかと思います。出入禁止になっても一問も答えずに目立とうとしても、今回のような強烈な問題や人物が出てきたら一瞬のうちに埋もれて単に出入禁止になるだけということがわかってしまったわけですから。

今回の番組を通しで見てみて、「獣神サンダー・ライガー」(マスクのみの出演でしたが)「ザ・グレート・カブキ」「佐山サトル」(VTR出演)「前田日明」といった今ではなく昔のプロレス界で活躍した人が出演したりクイズになったりクイズに協力したりと大活躍でしたが、これは純粋にMCの有吉弘行さんの好みに合わせたに過ぎないでしょう。これは過去に紹介した「クイズ脳ベルSHOW」の特番でもあったように、出演者やスタッフの一部の方が好きで面白いと思った「プロレスに熱中した時代」の事をやっているに過ぎないと思います。それがこれだけ面白く、恐らく今回出たVTRの「佐山サトル」氏と「シューティング」だけでなくさっそうとデビューした「初代・タイガーマスク」との関係を何も知らない人でも楽しめてしまうのは、テレビの「笑い」というのは、時代に関係なく面白いものは十分面白いということでもあります。まだまだ当時のプロレス界には面白い逸話は豊富にあるので、ネタが尽きるという事はないでしょうが、今回のようなネタがあればプロレス・格闘技に関わらずどんどん放出して視聴者を楽しませて欲しいなと思っています。

(番組データ)

オールスター後夜祭’19春 TBS
2019/04/07 00:58 ~ 2019/04/07 02:58 (120分)
【MC】有吉弘行、高山一実(乃木坂46)
【解答者】あぁ~しらき、あかつ、アキラ100%、あばれる君、アマレス兄弟、AMEMIYA、荒ぶる神々、アルコ&ピース、アンガールズ、イジリー岡田、イワイガワ、インスタントジョンソン、ウエスP、エルシャラカーニ、おいでやす小田、岡野陽一、おばたのお兄さん、お宮の松、ガリットチュウ、河邑ミク、ガンバレルーヤ、キンタロー。、グレート義太夫、
クロちゃん(安田大サーカス)、小石田純一、コウメ太夫、小坂なおみ、紺野ぶるま、サイクロンZ、ザ・ギース、ザ・たっち、サツマカワRPG、ザブングル、沙羅、サンシャイン池崎、Gたかし、シオマリアッチ、ジグザグジギー、ジャッキーちゃん、ジャングルポケット、じゅんいちダビッドソン、しゅんしゅんクリニックP、ジョイマン、新宿カウボーイ、スーパー・ササダンゴ・マシン、ずん、だーりんず、ダーリンハニー、
TAIGA、タイムマシーン3号、田島直弥(アイデンティティ)、たんぽぽ、チョコレートプラネット、テル、東京ホテイソン、どきどきキャンプ、トム・ブラウン、トンツカタン、流れ星、ニッチロー’、にゃんこスター、脳みそ夫、ノッチ(デンジャラス)、パーパー、バイク川崎バイク、Hi-Hi、X-GUN、バッドナイス常田、花香よしあき、ハナコ、ハマカーン、浜ロン、原口あきまさ、ハリウッドザコシショウ、
ビックスモールン、平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)、フォーリンラブ、ブリリアン、HEY!たくちゃん、ぺこぱ、ペンギンズ、槙尾ユウスケ(かもめんたる)、マシンガンズ、マヂカルラブリー、三浦マイルド、Mr.シャチホコ、宮下草薙、むらせ、もう中学生、もりせいじゅ、やさしい雨、ゆってぃ、ゆりやんレトリィバァ、ゆんぼだんぷ、四千頭身、ラバーガール、ラブレターズ、ルシファー吉岡、ロッチ、ロビンフット、
和賀勇介、わらふぢなるお、他
【プロデューサー】金原将公、福田健太郎
【演出】藤井健太郎

(番組内容)

有吉弘行&高山一実(乃木坂46)司会で「感謝祭」深夜の延長戦!芸人156人が深夜ならではのクイズ&企画に生放送で挑戦!最下位になって番組を永久追放となるのは誰?

オールスター感謝祭の延長戦生放送「後夜祭」では、感謝祭からの居残り組に追加メンバーを加えた、合計156人の芸人たちが深夜ならではの笑いに振ったクイズや企画に挑戦!恒例の毒霧にロード地獄に特殊競走に…超強力罰ゲームで3人目の永久追放となるのは?


時間が足りなくても伝えて欲しいこと

テレビというものは限られた時間の中で収録を行ない、さらにその内容を編集して放送時間の枠に当てはめる関係から、どうしても伝えたいことがなかなか伝わらなかったり、本当は大事な事が出演者のどうでもいい話の中に隠れてしまって出せなくなったのかもと思えることもあります。

今回の「1番だけが知っているSP」は、まさにそんな感じが極まった内容で、カードマジック対決にMLB元ニューヨークヤンキーズの松井秀喜選手へのロングインタビューという大きな企画がたて続けに流され、その中で放送された見に覚えがないのにコンビニ強盗の犯人にされて300日という長期勾留された冤罪事件については、内容自体を伝える時間および番組内でのコメンテーターがどのように考えたのかという事を伝える時間が足りなかったという印象を受けました。

もっとも、この事件についてのテレビの特集というのはすでにNHK総合が十分満足な内容のものを放送していました。2018年5月26日(土)午後9時から放送された「逆・転・人・生「えん罪・奇跡の逆転無罪判決」」がその番組で、NHKが作った再現ドラマなどのVTRを見ながら、実際に逮捕されて長い勾留を受け、結果的には無罪を勝ち取った土井佑輔さんが実際に出演されて、無罪判決が出たその後についてまで報告をされていました。

そうした予備知識があったから不満に感じたということがあったのかも知れませんが、事件のあらましから無罪を勝ち取るに至った経緯までは短い時間の中で十分に伝えていたと思います。ここでごく簡単に事件と裁判のあらましを紹介しておきますと、土井さんの自宅から徒歩3分のところにあるコンビニで強盗事件が起き、いきなり土井さん宅に警察が逮捕状を持ってやってきて、何の弁解もできないまま拘束されたことが事件の始まりでした。

なぜ警察はそこまで強硬に逮捕に至ったかと言うと、現場検証をした際に、過去に一度だけ警察に指紋を取られたことのある土井さんの「左手」の指紋がコンビニの自動ドアの店舗外側に付いていたことから、本人の犯行を証明する重要な証拠だとされたのでした。

ただ、後から母親が思い出したコンビニ強盗が起こったその日の行動は、とても土井さんが強盗を実行したのかと疑問のあるものでした。その日は深夜にテレビでサッカーの生中継があり、友人一人を土井さんは自宅に呼んでテレビ観戦していました。観戦中には土井さんは当時の彼女に電話したり(通話記録もあり)、事件が起きる15分前には友人のスマホカメラで土井さんが自分の部屋ではしゃぐ様子を撮影した写真が撮影時刻とともに残っていることを根拠に無罪を求めました。

しかし公判で検察は、歩いて3分でコンビニまで行けるので十分犯行は可能で、写真の撮影時間の偽装や、アリバイ作りのために写真を撮影した可能性もあるという、友人のアリバイ証言を取り上げない態度に終始しました。それ以上に土井さんがコンビニに残した指紋の存在が決定的だと思っていたとしか考えられません。

しかし、その指紋についても普通に考えるとおかしな点が見付かります。というのも、今回のコンビニ強盗事件の犯人がお店の自動ドアに指紋を残したとされる根拠の店内の防犯カメラに映った映像は、犯人が中から自動ドアをこじ開けるようにして右手をお店の外側のドアに出しながらドアの外側を「右手」で触っているように見えます。しかし、すでに紹介したように、犯人が触ったと言われているコンビニの外側にある自動ドアから出た土井さんの指紋は、彼の「左手」の指紋だったのです。同じ防犯ビデオで犯人の左手はだらっと下に下がっているように見えるので、その下がった手であえて左手で指紋を付けて走り去ることは考えにくいわけです。

しかし、このしごくまっとうな意見についても、「左手で触った可能性は0ではない」とし、あくまで現場に残された指紋という証拠が絶対で、それ以外の捜査は必要ないとすら言えるような反論を公判で行なったのでした(実際、ビデオを注意深く見ると犯人は逃走時に左手にはコンビニのレジから強奪した一万円札を握りしめていたので左手の指紋が自動ドアに付きようがないことがわかります)。

そんな中で、無罪への道を導く希望となったのが、公判でない時に検察官から言われたある言葉だったのです。何を言われたかと言うと、具体的な期間を示し、その期間中にコンビニの自動ドアを素手で触ったことはないか? という質問だったのです。この話を土井さんは弁護士にしたことで公判は動きました。すぐに弁護士は検察官が言ったというコンビニの防犯カメラの映像(裁判の証拠として提出されたもの)を証拠開示請求して認められ、その内容を土井さんの母親が確認したところ、事件の5日前に土井さんが確かにコンビニに入る際に「左手」でコンビニの自動ドアを触りながら入店する姿を発見したのでした。

この事実については、土井さんに質問した検察官か他の検察の職員か誰かが、実際に母親が発見したのと同じ映像を確認していて本人にした質問であると思えなくもありません。もし事件に疑問を持つ検察官が事件を担当していたら、そのビデオを発見した時点で起訴することは難しいとして釈放してもおかしくなかったでしょう。しかし実際は土井さんがかたくなに黙秘を貫いたため、300日も無実の罪で拘束され続けたのです。

無罪判決が出た後、驚くべきことに取り調べた警察官や担当検察官からの謝罪の言葉もなかったのですが、この事についてこの番組で言及されることはなく、その点については大いに不満を覚えました。さらにNHKの番組では土井さんがすぐに国と大阪府を相手取り国家賠償請求を提訴したものの、一審二審で敗訴し、2018年5月時点で更に上告していることを紹介していたのですが、本来今回の番組では、2019年3月現在はどうなっているのかということを報告するくらいはしてもいいだろうと思ったのですがその事にも触れませんでした。いかに企画が多く時間がないと言ってもあんまりなやり方です。NHKに遅れて同じ事をそのまま出すなら、実際に逮捕・尋問した警察署や担当の警察官に取材を申し込んで、NHK番組の後に何かあったのかというところまで他の内容を削ってでも出すべきだったのではないでしょうか。

ここまでの事件報道で一番気にかかるのは、警察の捜査は杜撰で冤罪の匂いを十分感じ取っていたにも関わらず、あえて裁判官の判断が出るまで自分からその事を言い出さなかった検察や担当検察官についても取材を申し込んでも良かったのではないでしょうか。どうせ「本件は裁判中のためコメントは差し控えます」という定番のコメントを出されることになると思うのですが、本人を直撃しテロップでその人の名前を出すくらいのことは公人であるのでしてもいいのではないか? と思えるのですが。もしかしたら警察や検察の報復を恐れているのという風にこんなやり方が続くなら考えてしまいそうです。

NHKの番組では、警察の違法捜査を訴える裁判を起こしても、9割が敗訴になる傾向にあるのだそうです。少なくともTBSでは紹介した土井さんが国家賠償について争っている裁判についてはきちんと取材して後追い報道して欲しいですし、他の局を含むマスコミ全体がもう少しきちんと後追い報道して欲しいというのが正直な気持ちです。

(番組データ)

1番だけが知っているSP全盲の世界No.1マジシャンが25歳天才日本人と対決! TBS
2019/03/18 21:00 ~ 2019/03/18 23:07 (127分)
【MC】 坂上忍/森泉
【ゲスト】 長嶋一茂、カンニング竹山
【パネラー】 北村晴男、黒沢かずこ(森三中)、吉村崇(平成ノブシコブシ)、ヨンア、小芝風花
【進行】 伊東楓(TBSアナウンサー)
【プロデューサー】谷沢美和・井上整・高宮望
【総合演出】竹永典弘

(番組内容)

▽世界NO.1マジシャンが再来日!衝撃の全盲マジシャン、リチャード・ターナー!
▽Mr.マリックが抜擢した日本人トップマジシャンと日米マジック頂上決戦!
▽目の前でカードが消える…25歳の天才日本人マジシャンテレビ初登場!
▽松井秀喜に禁断の質問…イチローのこと…唯一勝てなかったアノ男のこと
▽コンビニに行っただけで逮捕!?明日は我が身…北村弁護士激怒の衝撃冤罪事件!母の驚くべき行動が起こした大逆転裁判!