03ドラマ」カテゴリーアーカイブ

チャンバラ活劇ではない時代劇への期待

年末年始には一挙放送された、落語家の語る口に合わせて口パクで噺の内容を演じる「超入門!落語THE MOVIE」(NHK)が好評なようですが、昔からの時代劇ファンからしてみると、時代劇のおいしいところを全てNHKが持って行ってしまっているようでちょっと複雑な気持ちがしています。

このブログでは過去にBSTBSで新作が放送された武田鉄矢主演による「水戸黄門」について紹介させていただきましたが、時代劇は全て「水戸黄門」に代表されるようなチャンバラ劇ではありません。NHKが実現させた落語の人情噺のドラマ化が受けたのは、単に江戸時代の侍が豪快に斬り合うものだけが時代劇ではないということを示したと言えます。

民放でもBSジャパンが一話完結型のミステリータッチで山本周五郎さんなどの小説を題材にしたシリーズを放送していますが、今回紹介する「ぶらり信兵衛 道場破り」(フジテレビ)も原作は山本周五郎(「人情裏長屋」)さんですが、こちらはコミカルな人情噺で、さらに時代劇ファンとしては必須であり、決してNHKでは真似出来ない定番(一部には「マンネリ」と言う方もいますが(^^;))の「道場破りシーン」と主人公の信兵衛に想いを寄せる町娘・おぶんによる「妄想シーン」がからまってそれが番組にいい影響を与えてくれています。さらに、悪人が出てきて殺陣により人が斬られるシーンが全くないという意味でも安心して見ていられますし、今回改めて見ても十分面白いのです。

この「道場破り」という設定は、私がオリジナル放送を見ていた時には全く気付かないで楽しんでいたのですが、よくよく考えてみるとあの名監督である山中貞雄氏の今にも残る傑作時代劇「丹下左膳餘話 百万両の壺」を彷彿とさせる作りになっています。本来、丹下左膳と言えば伊藤大輔監督のシリーズですが、主演こそ大河内傳次郎であるものの、ストーリーは全くオリジナルの林不忘の原作とは関係のない作品で、映画の中の丹下左膳も今の言葉で言うと「ツンデレ」だったり、道場破りをしてわざと道場主に敗れて金を要求するような小遣い稼ぎをするなど、原作者の林不忘としては許せないものだったらしく製作の日活に猛抗議をしたことから題名が「丹下左膳餘話」となっているいわく付きの作品なのですが、その作品の面白さは今でも語り継がれ、さらにはこの作品にも影響を与えているわけで、つくづく山中貞雄という才能を奪った社会情勢が恨めしくなります。

話を「ぶらり信兵衛 道場破り」に戻しますが、現在では娘さんの影響もありバラエティ番組でしか見る機会のない高橋英樹さんの魅力が十分に詰まっているものになっています。すでに民放が時代劇から総撤退になっている(先述のBS JAPANの番組などかろうじてあることはあるのですが)中、NHKの「金曜時代劇」の枠の中で「慶次郎縁側日記」のような人情時代劇を演じてはいるものの、「ぶらり信兵衛 道場破り」のようなお笑い要素はありません。もちろん、NHKで無理に「おもしろ要素」を入れ込んだ時代劇を作ったとしたらかつての「お江戸でござる」のようなものになってしまう可能性がありますので、やはりこういった笑える時代劇というのは民放でしか作れないなと、月一回の無料放送の中で一挙放送という形でCSにお金も払っていない人にも魅力的なプログラムを見せてくれたホームドラマチャンネルには感謝です。

過去のドラマの再放送というのはお金を掛けずに放送できる放送手法であるのですが、最近ではBS日テレだけでなくTwellVでも中村梅之助主演の「伝七捕物帳」を再放送するなど、古き良き時代劇を好む人達というのは今もいます。それが冒頭に紹介した「超入門!落語THE MOVIE」の好評さにもつながっていると思うのです。

昨年新編が放送された「水戸黄門」に主演された武田鉄矢さんは、水戸黄門でなくむしろ人情味あふれる長屋に暮らす浪人の方がはまっている気がするのは私だけでしょうか。何しろ映画「刑事物語」で木製ハンガーをヌンチャクのように操ってアクションをされた方ですから、そんな風にして新たな民放の時代劇を再考していただくのも面白いと思うのですが。

(番組データ)

ぶらり信兵衛 道場破り 【一挙放送】ホームドラマチャンネル
1/7 (日) 7:30 ~11:30
演出:松尾正武
原作:山本周五郎
脚本:飛鳥ひろし
出演:高橋英樹 浜木綿子 武原英子
大宮敏充 柳沢真一 渡辺篤史

(番組内容)

≪時代劇一挙放送≫
高橋英樹が武士を捨てた浪人を好演した人情時代劇!(全50話)
1973-1974年 47分(一話分)