番組感想」カテゴリーアーカイブ

ナーバスな題材でも事実隠蔽は反発を招くだけ

このカテゴリーで前回書かせていただいた「ベルリンオリンピック陸上競技」の内容がドラマについにのってきました。前回のロサンゼルスオリンピックと比べるとベルリンオリンピックでは公式の記録映画が作られたこともあり、選手は吹き替えではなく一部本当の競技の内容を記録した映画のシーンを使っていました。

一部というのは実は、当時の機材では日没後に競技が延長されて続いた棒高跳びについては記録できなかったためで、映画や当番組で使われた日本の大江季雄、西田修平の跳躍については、翌日改めて競技の様子を映画用に録り直したものでありました。

ただ、前回の内容でちょっと触れましたが、やはりというかこの大河ドラマでは、メダル獲得者以外は興味がないようで、三段跳びの田島直人選手は出てきましたが、5千メートルと1万メートルでともに4位に入り、現地でも大人気だった村社講平選手の存在は全く出てきませんでした。

そして、ドラマのコンセプトであるマラソンについては、これも記録映画に残っているものをそのまま流し、金メダル孫基禎選手、銅メダル南昇龍選手のメダル獲得と、それまで日本マラソン界がなしえなかったオリンピックの金メダルと複数メダル獲得の快挙を伝えました。

番組の中では日本の放送席の隣に陣取っていた優勝候補のザバラ選手の母国であるアルゼンチンのクルーが、ザバラ選手の途中棄権がわかると、そのまま放送を終了して帰ってしまったことが出てきましたが、これは当時のNHKアナウンサーの証言そのものです。また、オリンピックのマラソン中継は、スタートの部分を実況したもののそこで放送は中断し、レースが終わってから改めて放送されたということも事実に即しています。当時の取材では全コースの模様をつぶさに実況できるような事はできなかったということで、恐らくドラマで表現されたような怒号のあとの歓喜というものは日本のあちこちで起こったものだと思われます。

マラソン金と銅の孫・南選手は当時は日韓併合の渦中にあった朝鮮半島出身のランナーで、いわゆる「金栗足袋」を履いての快挙であることも間違いありませんが、前回の放送から播磨屋の店頭に両選手が金栗足袋を履いていてオリンピック代表に決まったというくだりが実は正確ではありません。この点は日韓両国にとって実にナイーブな内容を含むのですが、今回の放送でメダルを取ったことがわかった後、一瞬「今回のメダル獲得は朝鮮半島出身ランナーの快挙で日本人選手ではない」ことに残念がる気分が広がったのですが、そうした当時の日本人の気分を忖度したのか、実は日本選手団が出発する時にもマラソン日本代表は決まっていない状態だったのです。

話はマラソン代表の選考会の時にまで遡るのですが、当時孫基禎選手は、以前から他の競技で活躍していた同じ朝鮮半島出身の先輩から、とんでもない情報を入手します。当時、選考会前に孫基禎選手は当時の世界新記録を出しており、マラソン代表は間違いなしと言われていました。朝鮮半島出身のランナーとしては今回紹介された南選手は実力的に孫選手に次ぐ力があっても、出場枠の3には入らず、当時の日本陸連は日本人選手2名を選ぶというのです。その話を逆手に取るような結果に選考会レースはなってしまうのですが、その結果は南選手が一位、孫選手が二位ということになってしまったのです。

普通に考えると世界記録を持っている孫選手を落とすことができず、さらに日本陸連のメンツにかけても朝鮮半島出身のランナーが代表で2名入ることは避けたいと思ったのかどうかはわかりませんが、ベルリンに派遣する選手は朝鮮半島の選手2名、日本選手2名とし、大会出場の3名はベルリン現地で行なう30キロの現地予選で決定するとしました。

こうした当時の日本陸連の選手選考における不可解さはそれこそ最近の日本のマラソン代表選考にも影響を及ぼしていたようにも思います。しかしドラマでは孫・南選手が大会に派遣される前から日本代表になっているかのような流れになっています。

この辺は2019年現在の日本と韓国との主に政府同士の関係の悪さもあり、史実をそのままドラマ化するよりもある程度フィクションを入れながら描いた方がいいという考えあってのことかも知れませんが、日本人が朝鮮半島出身のランナーに勝てないという状況の中で、露骨な日本人贔屓をした事実は事実として、それら多くの忖度による代表選考が続いたことの反省のもとで2020年東京オリンピック代表選考の一発選考「マラソン・グランド・チャンピオンシップ」が生まれたということもあるので、そうした背景とともに過去の歴史を学習する機会になれば良かったのではという気がしてしまうのです。

個人的には今回の内容自体がニュース配信され、さらなる日韓両国の関係悪化につながるような事にはなって欲しくないですね。まさか放送のあるタイミングで日本と韓国に関する騒動が加熱しているとは制作者側にとっては想定外だったかも知れませんが、この問題はシナリオを書く前から問題としては続いていたと思うので、今後に遺恨の種を残す可能性もある一連の放送ではなく、せめてドラマ終了後のミニコーナーの中ででも、きちんと日本側から見た当時の国内の状況をきちんと説明して欲しかったと思っています。

(番組データ)

いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~(35)「民族の祭典」NHK総合
2019/09/15 20:00 ~ 2019/09/15 20:45 (45分)
【出演】阿部サダヲ,中村勘九郎,上白石萌歌,柄本佑,杉咲花,仲野太賀,森山未來,神木隆之介,荒川良々,川栄李奈,トータス松本,リリー・フランキー,三宅弘城,皆川猿時,塚本晋也,薬師丸ひろ子ほか
【作】宮藤官九郎

(番組内容)

ベルリンオリンピックはナチスが総力をあげ運営する大規模な大会となり、田畑(阿部サダヲ)を圧倒し当惑させる。IOC総会では治五郎(役所広司)が日本開催を訴える。

1936年夏。ベルリンで4年後の次回大会の開催地を決めるIOC総会が始まり、嘉納治五郎(役所広司)は「日本で平和の祭典を!」と熱く訴える。その直後に開幕したベルリンオリンピックは政権を握るナチスが総力をあげて運営する大規模な大会となり、田畑政治(阿部サダヲ)を圧倒し当惑させる。マラソンでは金栗四三(中村勘九郎)と同じハリマヤ足袋を履くランナーが出場。水泳では前畑秀子(上白石萌歌)のレースが迫る。


アスリートとメディアの関係を掘り下げないと何も変わらない

2019年9月15日に行なわれる、2020年東京オリンピックマラソン代表を決める一発勝負、マラソングランドチャンピオンシップについて生放送する中で、かつて一発選考とされていた日本陸連の選考基準が変えられたソウルオリンピック男子代表の選考についてのVTRによる解説がされたのですが、その内容に気にかかることがありました。

当時、代表有力だったダイエー所属の中山竹道選手がインタビューに答えた週刊誌の記事が画面に大写しなり、選考レースである福岡国際に怪我のため出場が不可能となった瀬古利彦選手に向かって「這ってでも出てこい」と中山選手が発言したかのような当時と同じ内容を報じていましたが、あれから相当の時間が経ち、当時の状況を当時者が説明した本も出版される中、この内容についてそのままVTRにしてしまうのはいかがなものなのかという気がしたのです。

というのも、私自身はその後の中山竹道氏へのインタビューを読んだのですが、その中で言った言葉は「這ってでも出てこい」ではなく「自分なら這ってでも出ますけどね」というニュアンスの違いが今となっては明らかな事実として認識されています。その発言には瀬古利彦選手への敵意はなく、あくまで自分の心情を述べているだけなのですが、当時のマスコミはこの週刊誌の内容に沿って中山選手のイメージを作ってしまったのです。

当時のマスコミは、いわゆる「空白の一日」事件で悪役となったプロ野球読売ジャイアンツの江川卓選手のように、それまでの経緯や直接発言した内容を捻じ曲げたり肝心な事を紹介しなかったりしてまで、テレビの視聴率を上げたり、雑誌の売り上げを伸ばそうとしたり、そんな時代背景の中マラソンに関する話題もヒートアップしていったのだろうと思います。しかし、あらゆる報道の裏側が明らかになった2019年の今、まだ中山竹道氏の発言についての裏取りをしないで週刊誌報道をそのままVTRにして出してしまうのか、本当に理解に苦しむとともに、この番組に関わった人の中には本気で陸上競技を愛している人がいないのではないかと思ってしまいました。

ただ、番組が生放送で、VTRの最中に抗議の電話が局に入ったのか入らなかったのか、その真偽はわかりませんが、VTRが終わった後にスタジオでの話になった際、MCの安住紳一郎アナウンサーが有森裕子さんに振るような形でその話を出し、「自分なら這ってでも……」という内容を紹介したにとどまりました。本当ならソウルオリンピックに出場した瀬古利彦選手と不可解な選考基準によって落選した工藤一彦氏とのVTR対面を間接的に演出するよりも、当時の記事を湾曲して週刊誌に掲載した責任者が中山竹道氏のところに行って直接謝罪させるくらいの方が良かったのではないかと思います。ちなみに、スタジオの後ろに設置されている過去の内容を写真とともに紹介したパネルには「瀬古、這ってでも福岡へ来い!」という文字が刻まれていました。これはあくまで個人的な印象ですが、上記のコメントは用意されたものでなく、前半の内容についての批判の声が入ったから急遽行なわれたものではないかと思えて仕方ありません。

いつの世も、売らんがなのために実際の取材内容と微妙にニュアンスを変えて報道するマスコミはいるものですが、今回のマラソングランドチャンピオンシップについても、事前・事後に何らかのマスコミが起因する問題が起こった場合、TBSはどのように報道するのかということまで考えてしまった今回の放送でした。

(番組データ)

マラソン・グランド・チャンピオンシップ 東京五輪代表を懸けた運命の決戦へ TBS
2019年9月11日(水) 20時00分~22時00分(120分)
MC:安住紳一郎、江藤愛 ゲスト:有森裕子、高橋尚子、原晋、土田晃之
ドラマ:徳重聡、三浦理恵子、武井壮、佐藤真弓、手塚とおる、嶋大輔

(番組内容)

順位なのか、タイムなのか、はたまた実績なのか…。選手も国民もスッキリしない、あいまいな選考システム。その裏には、誰も踏み込めないマラソン界のタブーが存在していた…。ソウル五輪代表選考で、あいまいな選考基準によって、代表の座を逃した悲運の男が生まれたた。この騒動は、日本マラソン界最大の事件として、これまで誰も触れることができなかったのだ。あれから32年、悲劇のランナーが、封印してきた禁断の選考問題を初告白。そして今回、瀬古が長年心にしまっていた思いを初めて彼に伝える。「人生を変えてしまって申し訳なかった…」その思いを聞いた男は…。


後からの言い訳は傷口を広げるだけか?

私のいる静岡県内では、東京で7月5日深夜(実際の放送時間は7月6日未明)に放送された今回紹介する「2019年上半期のTBS」という番組が8月4日の午後という変則的な時間に放送されたので、今さらという感じもする方もいるかも知れませんが、このブログでも触れさせていただいた「世界リレー」中継に関するTBSの見解について司会の安住紳一郎氏がコメントしましたので、今回はその内容についてのみになりますがコメントの内容を検証していきたいと思います。

この「世界リレー」についての中継におけるドタバタ劇については、以前にこのブログで紹介させていただきました。

スポーツのライブ中継では何を伝えるべきなのか

上のリンクの中で3つの問題だと思った点を指摘させていただきました。それは以下のような事です。

・その1
世界リレー初日の地上波の放送前にBSで競技内容が中継されていたものの放送時間が終わってしまって中継できなかったレースについて、地上波内ではキャスターを含め全く伝えなかったこと。

・その2
地上波の中継でも全レースを中継する事ができず、直後にある通常の生放送番組「新・情報7DAYS ニュースキャスター」でも、番組が始まってレースの内容を中継するのに10分くらい時間がかかり、結果が気になる視聴者は、安住紳一郎氏とビートたけし氏の雑談にしばし付き合わされたこと。

・その3
翌日の第二日の中継におけるレース結果について、字幕では正しい結果が発表されているのに、本来はその事をきちんと伝えるべきキャスター(織田裕二氏・中井美穂氏)の元には伝わっておらず、しばし推測と憶測を元にしてのコメントが続いたこと。

このうち、番組で安住紳一郎氏が弁解した点はご自身が携わった「その2」の部分のみで、会社として陸上についてはかなり長いこと「TBSの顔」となっているお二人の事については最後まで全く触れませんでした。この点については、番組の最後に安住氏は「責任は全て私にある」と言っていましたのでここで会社やメインキャスターの事を書いても仕方がないと思いますので、今回は直接ご自身の問題として弁解した「その2」についてその内容とそれに対するコメントをしていきたいと思います。

まず、安住氏はスタッフから、世界リレーについてはタイムテーブル通りに進まないという事が想定外で、さらに中継できなかった競技についても「結果のみを伝えれば良い」と言われていたことを明かしました。しかし、この状況でレースの内容を伝えることは大事だということもあり、急遽録画したレース内容を「新・情報7DAYS ニュースキャスター」で放送するためには、元々構想になかった事なので、すでにスポーツ中継のスタッフが保存していた動画データから問題となったレースのスタートからゴールまでの部分を切り出し、さらに放送できるように編集するために7分から8分の時間がかかってしまうので、それまでの時間をビートたけしさんとのおしゃべりでつないでいたという説明でした。

ただ、そうした言い訳をするなら、番組開始冒頭にそういう話をした方が印象が良かったのではないかと普通に思えるのですが。安住氏からすると、自分の番組にも予定があり、放送すべき内容を削ってまでレースの録画放送をすることでこれ以上自分ら番組に責任はないと放送時には思っていた感じもあります。

もちろん、元々はタイムテーブルを発表し、さらにテレビ中継のある中でどんどん予定時間を過ぎてしまう世界リレーの運営サイドの問題であるのに、たまたまスポーツ中継後の生放送を担当していたキャスターが責任を問われるというのは厳しい話です。しかしアナウンサーがテレビ局の顔である以上、局に対する批判を和らげるためにも、番組開始直後のコメントをもう少し考えて行なった方がここまでのTBSに対する非難は大きくならなかったのではないかという点を考えると、全く安住氏やビートたけし氏に責任はないのかというと、少し考えてしまいます。

そして、今回の放送を見て改めて、TBSアナウンサーのレベルでは「世界陸上」のような大きなイベントの動向について文句も言えないのではないかと番組を見た側としては考えざるを得ません。この番組のホームページでは「TBSへのご意見を募集中」という投稿リンクがありましたが、どちらにしてもメインキャスターにご退場いただいたり、番組における発言内容を考えてくれと意見しても聞く耳を持たないんでしょと思わざるを得ません。やはり、こうした何が起こるかわからないスポーツ中継はインターネットによるキャスター無しの同時中継を責任を持ってやってもらう方が、同じような弁解を何回も安住紳一郎氏にさせるよりも楽に責任逃れができるのではないかと個人的には思います。

(番組データ)

安住紳一郎と2019年上半期のTBS★安住紳一郎と「水ダウ」藤井健太郎初タッグ! TBS
2019/07/06 00:20 ~ 2019/07/06 01:20 (60分)

(番組内容)

TBSで今年の上半期に起きた様々な出来事を振り返り、ハードTVウォッチャーとしても知られる安住紳一郎が出演者として…またTBS社員として…独自の目線で徹底解説!

日曜早朝に放送している『TBSレビュー』(TBSおよび放送全般が抱える問題について幅広く取上げ検証していく番組)を思いっきり柔らかくした感じの自己批評風バラエティ。アナウンサー安住紳一郎が独自の目線でこの1月~6月のTBSを振り返り、ときに現場の舞台裏を語りつつ、後輩アナウンサーからの疑問や悩みにも向き合いながら、上半期を締めくくります。

【MC】安住紳一郎(TBSアナウンサー)
【出演】日比麻音子(TBSアナウンサー)、山形純菜(TBSアナウンサー)、宇賀神メグ(TBSアナウンサー)


東京オリンピックでも「メダル至上主義」放送は続くのか

今回のNHK大河ドラマは途中で主人公が変わり、注目される種目も変わるというなじみのない展開になり、今回が阿部サダヲ演じる田畑政治氏がメインになって2回目の放送になりますが、まだ金栗四三氏の出番もあります。

ちなみに金栗四三氏はオリンピックのマラソンでは全くメダルには手が届かなかった選手で、そういう選手にスポットライトを当てたことで、いわゆる「勝利至上主義」をストレートに押してこないこれまでのドラマ展開をそのつもりで見ていたのですが、けたたましい調子でまくしたてる田畑氏の勢いそのまま、第二部は一気に「オリンピックは参加することに意義がある」ではなく、「オリンピックはメダルを獲ってこそ」という「メダル至上主義」の匂いを感じてしまった今回の放送でした。

今回のメインキャストははからずもアムステルダムオリンピックに日本女子選手として初めて参加し、金メダルを狙っていた100m走の準決勝で敗れたことで、一度も走ったことのない800m出場を役員に直訴し、何とか銀メダルを獲得して面目を施した(当時の期待された状況からするとドラマのようにそこまで手離しで喜べなかったと思うのですが)人見絹枝選手でした。

もちろん、女性の陸上競技の歴史の中では人見絹枝という存在は注目に値するでしょうが、あれほど日本のマラソンのために尽力した金栗四三氏が人見絹枝氏の結果だけを見て喜ぶシーンだけしか出さず、マラソン競技について全く触れなかったのはどう考えてもおかしな事です。落語のシーンをカットしても40キロ付近までトップで通過し、結果四位入賞した山田兼松選手の名前とそのレースの再現は入れないと、何でいままで金栗四三氏をメインで出してきたのか? もしかしてドラマ制作側の意図としては金栗四三氏は「マラソンの先駆者」ではなく「女子陸上普及の立役者」として出したかったのか? という風にも思えてきてしまいます。

それにひきかえ、前回まで全くドラマ的には出てこなかった陸上の三段飛び金メダリストの織田幹雄氏、そして水泳でも唐突に「新人」として出現し、前回出た東大地下の温水プールでは全く練習していないような(前回の筋ではこのプールを作って練習したことで日本の水泳チームが力を付けたように描かれていました)200m平泳ぎの金メダリスト鶴田義行氏はちゃっかりと出番がありました。

まさに、「メダリストはこれまでのストーリーとは無関係でもしっかり役者を付け名前を出すがメダルを取れなければストーリーに関係があっても名前すら出さない」という感じになってくるのです。

その予感が増大するのが、当時まだ小学生だったと思われるベルリン・オリンピックの平泳ぎで金メダリストになる前畑秀子選手が人見絹枝選手に続く日本人女子アスリートの象徴として出てきたことです。前畑選手を出した以上、戦前のベルリン・オリンピックについて触れないわけにはいかないでしょうが、果たしてそこで、当時の日本陸上界にとって悲願であったマラソン金メダルと銅メダルを獲得した朝鮮半島半身のランナー孫基禎・南昇龍の両選手の事はどう扱うのか。また、後のオリンピックチャンピオンになるザトペック選手が陸上を始めるきっかけになったという5000mと10000mでフィンランドの3選手と互角に渡り合うも両方のレースで無念の四位となった村社講平選手は出てくるのか、次回に向けて大変に楽しみになってきました(^^;)。

個人的にはメダルだけに執着し、メダリストばかり注目する状況というのは良いとは思わず、逆に四位入賞者にシンパシーを感じてしまうことがあります。マラソンでは2大会連続四位に入った中山竹通選手の凄さが印象に残っていますし、同じく2大会連続四位ということでは冬季五輪スキーモーグルの上村愛子選手の頑張りはメダリストに全く引けを取りません。しかも上村選手の夫はトリノオリンピックスラロームで四位入賞を果たした皆川賢太郎選手であるというところにもぐっとくるものがあります。

今回の大河ドラマは多くの視聴者を東京オリンピックに向けて盛り上げるために企画されたものだということはわかって見ていますが、今回の内容はあまりにもメダル至上主義が過ぎているという印象でした。次回に向けていくらかの軌道修正があるのか、とにかく次回を楽しみにしておきます。

(番組データ)

いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~(26)NHK総合
7/7 (日) 20:00 ~ 20:45 (45分)
【出演】
阿部サダヲ,中村勘九郎,桐谷健太,斎藤工,三浦貴大,大東駿介,上白石萌歌,柄本佑,森山未來,神木隆之介,荒川良々,川栄李奈,じろう,永山絢斗,菅原小春,根岸季衣,萩原健一ほか
【作】
宮藤官九郎

(番組内容)

アムステルダム五輪が迫り、体協が相変わらず資金難に苦しむ中、田畑政治(阿部サダヲ)は記者人脈を活かし、政界の大物、大蔵大臣の高橋是清(萩原健一)に選手派遣のための資金援助を直談判。本大会では女子陸上が正式種目に。国内予選を席巻した人見絹枝(菅原小春)はプレッシャーに押しつぶされ、期待された100mで惨敗。このままでは日本の女子スポーツの未来が閉ざされるー。絹枝は未経験の800mへの挑戦を決意する。


「山谷」をバラエティで簡単に扱う人の根底にあるもの

現代の日本のテレビは様々な「コンプライアンス」にがんじがらめになっていて、昔のテレビと比べると明らかにテレビ制作者がやりたいことができないようになってきているということは当然あります。だからこそ、そんな制約の中で面白い番組を作っている人や番組は応援したいという風に思っているのですが、流石に今回の「山谷」に行くというのは反則ではないかと、見ていて違和感を覚えました。

ただ、このような「地域の有名人」に取材しその人の様子を笑うという番組はあり、最近は複数の番組でそうした事を毎回やっているような番組も存在します。昔の「天才たけしの元気が出るテレビ」(日本テレビ)や「さんまのからくりテレビ」(TBS系)では番組の方からの演出もあったのかも知れませんが、最近の番組ではそうした強烈なキャラクターをそのままカメラの前に出し、強烈な個性を持つ人を取り合っているような感じもあります。「月曜から夜ふかし」(日本テレビ)で注目されたキャラクターがなぜか「町のご意見番」として「バイキング」(フジテレビ)に出ていたりしているのも、そこまでテレビはキャラクター不足でなさそうなのにとも思ったりします。

今回、山谷にいる人の「あだ名」について調査するということで山谷の町や飲み屋に取材カメラが入ったわけですが、当然ながらまともにカメラの前に顔を出せるような人は少なく、露天市である「ドロボウ市」にいたってはそこに集まる人の顔を出すことはもちろん、場所の特定すらもコンプライアンスの関係でしませんでした。山谷に生きる人の事を楽しく番組出演者は見ていたような感じではあるのですが、そもそも山谷とはどんな街で、そこで生きる人はなぜ集まってきたのか? というような予備知識なしに単にその人個人のキャラクターを面白がるというのは、それこそ山谷地域に住んでいる小学生と同じレベルの興味の持ち方ではないかと思えます。

現在の山谷はもはや単なる日雇い労働者の街ではなく、生活保護を受けて生きる人の方が多くなっている「貧困」「高齢化」という正に未来の日本の一部はこうなってしまうのではないかと思われる様々な問題が渦巻いている街です。そうした街の歴史や内情を知っている人がテレビ視聴者に多くいるなら説明不要で一気に現場報告でもいいとは思うのですが、「山谷」という場所で取材するなら今回は「銀座のあだ名」は別の回に回して一回分濃密に山谷を紹介するような形でも良かったのかなと思いますね。

今後、単なる興味本位なだけで今後山谷や釜ヶ崎、寿町のようなところでロケをするような企画があったとして、番組を見た人にとっては残るのは大きな違和感と偏見だけで、それがまた街のイメージを悪くし、ひいてはそこに住む人の居住環境を悪くすることにテレビが一役買ってしまう事も十分に有りえます。全く山谷を知らない人にとっては、単に面白がって作ってしまったテレビの企画によってその人の考えが形作られてしまうわけで、その辺は十分考えてこうした対象と向き合っていただければと思います。

(番組データ)

親愛なる、あだな様【噂のあだ名を大調査~銀座高級クラブの世界~】テレビ東京
2019/06/18 00:12 ~ 2019/06/18 01:00 (48分)
【出演者】
山崎弘也(アンタッチャブル)
大久保佳代子(オアシズ)
向井康二(Snow Man/ジャニーズJr.)
福田典子(テレビ東京アナウンサー)
あだな調査隊

(番組内容)

【銀座の高級クラブ】 座っただけで3万5000円以上もかかる銀座の高級クラブ。それを支えるのが「ドンペリママ」「銀座の女王蜂」など強烈なあだなを持つママ達!さらに、そんな高級な場所に来るお客さんにもあだな調査をすると…「イヤホンマン」「銀座の先生」などクセが強すぎるキャラが続々!さらに伝説のスカウトマン「銀座の黒服王」にも密着調査。
【日本3大ドヤ街 山谷】 日雇い労働者の街として知られる山谷には、「キャッチボールおじさん」「お上手さん」「ニタリ」など、不可思議でワケありのあだな様だらけ!さらに「ドロボウ市」と呼ばれるディープスポットにも潜入。


震災<人災という現実を垣間見せてくれた2つの番組

テレビ局の編成が力を持つのは、まさに今回のNHKの夜の番組の並びを実現できるような選択ができるからだとしみじみ思いました。昨日、2019年6月3日の午後10時から放送された「逆転人生」から「事件の涙」という2つのドキュメンタリーをノンストップで続けられたことで、チャンネルを変えるタイミングを逸してそのまま見てしまったのですが、こういった意見の伝え方があるのかと感じることになったので、ここで改めてその内容について紹介させていただきたいと思います。

まず、「事件の涙」という番組は再放送で、本放送は2018年の5月に初回放送があったもので、初回放送を見た方からすると、単体で見た番組について消化不良な所もあったのではないかと考えられるような番組の構成だったように思います。

最初に「事件の涙」の方の番組内容を紹介すると、この番組自体は大きな事件のその後の関係者の「涙」に焦点を当てて取材する切ないドキュメンタリーなのですが、今回は雪印の食肉偽装(オーストラリア産の肉を和肉として出荷しようとした)を告発した「西宮冷蔵」の社長とその家族のその後にカメラを向けています。

この番組で改めて知った事に、社長の娘さんは衝動的にマンションの14階から飛び降りて命は取り留めたものの下半身不随になってしまっていたということがあります。正義の告発のはずが利用客には契約を打ち切られ、さらに当時の政府には告発をしたのに不正をしばらく黙認していたのではというイジメのような難癖を付けられ、倉庫への強制捜査を入れられるなど、内部告発について告発した側を守るどころか、何の配慮もない行政の理不尽さなどを前にして家族の事までケアできなかったと社長は自分を責め、取材当時には生活のほとんどを娘さんの介護にあてています。

会社を切りもりしていたのは父の想いを受けた息子さんで、必死の努力で何とか売上を最盛期の7割くらいまで回復させたものの、再び当時の大口の顧客から商品の偽装を持ちかけられ、その申し出を断ったところ他の得意先も契約を止めるという、正に日本の企業の底意地の悪さというのか、事無かれ主義というものの犠牲になり、倒産寸前のところまで追い込まれていることが紹介され、まさに倒産寸前の状況を紹介して番組は幕となりました。西宮冷蔵の今後には全く展望が見えないところまで追いこまれているわけですが、これが世の中の現実であることも確かです。

最近のドラマでは「半沢直樹」の大ヒットによる影響もあるのかも知れませんが、中小企業が大企業に対して真っ向から戦いを挑んで勝利する「下町ロケット」や、銀行員が会社の内部で行なわれる理不尽な動きに対して、その妨害にもめげずに自らの行動で状況を変えていくという「集団左遷!」などのドラマが人気になっています。そうしたスカッとするドラマを現実の世界でも行なわれているような形で紹介する番組が、直前に放送された「逆転人生」のようにも思うのですが、今回もやはり最後にはスカッとした結論を導き出すようないわゆるベタな展開になっていました。

別にこの番組で取り上げた岩手県陸前高田市の醤油を作る「株式会社八木澤商店」に罪があるわけではありません。むしろ、東日本大震災の影響で工場にあったもろみと微生物を全て津波で流されてしまったことで会社としてもう二度と震災前と同じ製品を作ることができないということを感じつつも会社を再建しようとする中で奇跡的に4kgだけ残ったもろみから過去と同じクオリティを持つ製品を作ることができた過程は十分感動的でした。

今回、なぜこの番組の後に西宮冷蔵の現在をレポートしたドキュメンタリーを直後にもってきたかということを考えると、あまりにも大きな二つの企業の襲われた災難の「差」というものが浮かび上がってくるのです。

八木澤商店が受けた試練である大きな地震と、それにともなった津波の被害というのは今さら言うまでもなく悲惨な結果を生み出し、多くの人命を奪っただけでなく原子力発電所を壊滅させ、今なおその影響で苦しんでいる人を生み出しています。その被害については大なり小なり違いはあれ、被害を受けた地域では全ての人や企業が同じように受けた災難でありました。それに対して西宮冷蔵が受けた災難というのは自然的な災害では全くなく、西宮冷蔵だけがピンポイントに受けてしまったその全てが「人災」とでも呼ぶべきものでした。顧客の大企業にとって都合の悪いことをしたものの、そのおかげで一般消費者が受ける影響を考えると、誰かがこうした告発者を守ってあげないといけない事例だったのではないでしょうか。

現在西宮冷蔵と同じように営業している同業他社がなぜ問題も起こさず営業を続けているのかということを考えると「決して内部告発などをせず、大人しく産地偽装を黙認していればいい」と考えて社会悪をそのままにしているところが生き残っているという風に少々いじわるに考えてしまうこともできると思います。もしかしたら現在日本の産業全体が低迷しているのは、こうした「正直者が馬鹿を見る」ような状況にあるのではないかという風にも考えられるので、この件についてはまずは西宮冷蔵を貶めた本当の悪はどこにあったかという検証をテレビは行なうべきでしょう。

あの悲惨な東日本大震災よりもひどく、長きにわたって絶望しか生み出さないものが「人災」だというのは本当に悲しいことですし、日本を再生するというのならこの象徴的な事件について、事件の被害者親族を執拗に追い詰めたり、芸能人の不倫事件で関係者のところにしつこく取材するよりも力を注いでいただきたいと思うのですが。

(番組データ その1)

逆転人生「復活!奇跡のしょうゆ 被災地の逆転劇」NHK総合
2019/06/03 22:00 ~ 2019/06/03 22:50 (50分)
【司会】山里亮太,杉浦友紀,
【ゲスト】しょうゆ会社社長…河野通洋,
【出演】村上弘明,秋元才加,しょうゆに詳しい専門家…高橋万太郎

(番組内容 その1)

東日本大震災で壊滅的被害を受けた陸前高田の老舗しょうゆ工場。200年受け継がれてきた“もろみ”を使って醸すしょうゆは全国のファンに愛されていたが、その“もろみ”が津波で全て流され、元の味のしょうゆの製造は絶望的状況となる。しかしたった4キロ、研究用に保管されていた“もろみ”が発見された。しょうゆ会社社長の河野通洋さん(45)は、4億円を借金して工場再建を決意。元の味のしょうゆ復活に挑む。

(番組データ その2)

事件の涙 Human Crossroads選▽正義の告発 雪印食品牛肉偽装事件 NHK総合
2019/06/03 22:50 ~ 2019/06/03 23:16 (26分)
【語り】吉田羊

(番組内容 その2)

2002年、大手食品会社の背信として、社会に衝撃を与えた「雪印食品牛肉偽装事件」。発覚のきっかけは「輸入牛肉を国内産と偽っている」と暴露した、「西宮冷蔵」社長・水谷洋一さんの内部告発だった。しかし、取り引き先は次々と去り、国からも処分を受け、経営危機に。経済的理由で高校進学をあきらめた娘は、心を病み、重い障害を負う。それでも水谷さんは、息子とともに会社を死守、「正義」を社会に問う。


地上波では流せないタイアップもネットでなら

2019年5月になり、NHKの朝ドラが新しいシリーズに変わったと思ったら、それまで鳴りを潜めていた日清食品が、前作の朝ドラ「まんぷく」を彷彿とさせ、さらにドラマに出演していた松坂慶子さんを出演させた、ドラマの中で流れてきそうだったコマーシャルを流しまくっています。それも「ビジネスチャンス」なのかも知れませんが、全国どこへ行っても映り、さらに多くの人が見ていることで注目される朝の連続テレビ小説を宣伝のために使った企業として、ドラマのアンチを中心にあまり良い気分でコマーシャルを見ている人は少ないのではないかと思うのですが、今回のケースは全く逆です。

テレビ朝日は、もはやタイアップの番組であることを隠しもしないで企業の宣伝をし、さらにそれなりに面白さも追求した「シルシルミシル」を放送していましたが、今回の「アメトーーク!」のセットを使って、番組のテイストを保ちながらしっかりとスポンサーの製品の宣伝をしてしまう今回の企画は十分に有りだと思うのは私だけではないでしょう。

今回の企画は、「アメトーーク!」の人気企画である「芸人ドラフト会議」のフォーマットを使い、缶酎ハイの種類を指名し合うのではなく、あくまで主役は「ストロングゼロ」で、その商品に何の「おつまみ」が合うのか? という事でどうでもいい議論をし、指名が競合したら本物のドラフト会議のように抽せんまでしていました。

今回の企画を「おつまみドラフト会議」にしたのは、ビールと比べて缶酎ハイに合うおつまみという風に考える人が少ないことで、居酒屋などでは「とりあえずビール」という風になってしまって缶酎ハイが売れない事も考えられます。スポンサーとしてはここで出てきた様々なおつまみを営業時に提案するなどして、ネットの動画を宣伝しながら相乗効果を出そうとしているようで、その動画を見てしまったのはそれこそスポンサーの思う壺であるとも言えるかも知れませんが、逆に決まったフォーマットさえあれば出演者にうまく宣伝をさせることでそれなりの効果を生み出すことができる好例になったのではないかと思えます。

改めて今回出演したパネラーの方々は、そつなく宣伝することのできる人を揃えたと思いますが、このような露骨な宣伝番組に出ることを良く思わない人もいるのかも知れません。しかしながら、売れてお金持ちになるという道には、しっかりとスポンサーを得て適切にその内容を紹介できるスキルが無いとだめという考え方もあります。できればスポンサー側としてはこの「芸人ドラフト会議」の企画を番組内でプレゼンした有吉弘行氏をオファーしたいところだったでしょうが、それが大人の事情なのかどうかはわかりませんが、今回の出演はありませんでした。

今後こうしたネット専門のPR番組は増えていくのではないと思うのですが、テレビショッピングで良く見る芸人のような形でPR番組中心に活躍するような系統の芸人も生まれてくるのかも知れません。どちらにしても無料放送のテレビというものは、様々な人や物が値踏みされる「ショーケース」であるということは変わりはなく、特に民放はスポンサーからの広告料で運営されているのですから、大なり小なりスポンサーに配慮した行動をすることが活躍するための条件になる事は変わりません。

しかし、最初に書いたことの繰り返しになりますが、公共放送として特定の企業を利するような放送をしているNHKと企業がタイアップして認知度を上げ、販売戦略を繰り広げるのは大きなルール違反ではないかと思います。今回の番組を制作するにあたり、スポンサーのサントリーはそれなりの費用を掛けているわけですし、出演者もそのギャラに見合った商品の宣伝をすることを目的に番組内で踊っています。視聴者側は最初から宣伝番組だとわかっていても、よくあるテレビショッピングの番組とは違う「番組を見る楽しさ」というものを求めるところもあるでしょう。

今回は人気番組のコラボとして企画されたものなので、安心して面白く見ることができましたが、他の企業がこうした宣伝方法について力を入れるようになると、競争も激しくなるでしょう。しかし、企業にとっては商品が売れ、視聴者にとっては面白く動画を見られるこうした企画は面白いですし、もし今後このようなPR動画には高速クーポンを消費しないような仕組みができれば、今までYou Tubeだけを見ていた人も、面白い動画なら買う買わないは別にして多くの人が見てくれるようになる可能性はあります。高速クーポン云々を実現するには問題もあるでしょうが、こうした動画が増えること自体はいい事なのではないでしょうか。

(番組データ)

「ストロングゼロおつまみドラフト会議」テレ朝動画
配信期間:2019/5/24~
配信時間:28分
【MC】雨上がり決死隊/
【パネラー】ケンドーコバヤシ アンタッチャブル山崎 陣内智則 狩野英孝

(番組内容)

アメトーーク!ネットだけのスペシャル番組。
「芸人ドラフト会議」の特別版!
ストロングゼロと一緒に食べたい白熱の「おつまみ争奪戦」!!
唐揚げ?餃子?どうしても食べたいドラフト1位は何を指名?
競合したら激アツの抽選会!
狩野がなぜか爆笑のサプライズ指名も!


政治家の「モノマネ」が芸人にできない時代

今回の内容は、「アメトーーク!」としたらかなりゆるい内容で、出演した皆さんが全員サンドウィッチマンについては骨抜きになったような悪い事は一切言わない状況だったのであまり評価としては高くないかも知れませんが、そんな内容だからこそ垣間見えた点がありました。

ゲストが全員サンドウィッチマンの「イエスマン」だからこそ、サンドウィッチマンのお二人がなかなかテレビでは見ることのないいわゆる「楽屋裏」の写真やモノマネが出てきたのですが、今回は伊達みきおさんがそんな自身に甘い状況の中で披露した「安倍晋三(安倍首相)氏のモノマネ」について思うところを書いていきたいと思います。

まず、伊達みきおさんの安倍首相のモノマネはそれほどクオリティが高くなく(^^;)、さらに内容も「どんな事を聞かれてもアメリカ大統領のトランプ氏に電話して一致した」という事を話すというワンパターンのもので、テレビで何度も披露するものではないのではないかと思えます。しかし、この時の首相のモノマネというものをテレビで見る機会がほとんどなくなった今見ていると、そんなモノマネでも結構面白く、「全部トランプ氏に相談して決める」という行動を揶揄しているわけではないにしても、それ以外ネタがないので同じ事を何回も何回も繰り返しているうちに微妙な面白さというのが生まれてくるから不思議です。

過去には政治家を揶揄して笑いを取るというのは、古くは三木鶏郎氏のラジオ「冗談音楽」がありまして、NHKが政治ネタを笑いにすることを禁止されるようなこともあったのですが、その後は時の権力をやり込めるというよりも、単にものすごい個性のある政治家の姿を真似することで、そのデフォルメされた姿がより一層広まることもあり、政治に全く関心のない人でも加藤茶さんが真似をする田中角栄氏とは本当にそんな喋り方をする人なのかとつい国会中継を見てしまうというような事もあったと思います。寄席ではモノマネではなく「声態模写」の芸と言われた桜井長一郎さんが様々な声色を使って「一人国会中継」をやるのが演芸番組で放送されたりされたことで、日本の当時の政治家の方々を身近に感じられるようになったということもありました。そして、今から考えると田中角栄・大平正芳・三木武夫・福田赳夫といった元首相の面々が文句をテレビに言うこともなく「声帯模写」の芸を殺さないで放置していてくれた事も重要な点であったような気がします。

現在の政治家については、小泉純一郎さんや麻生太郎さんがモノマネをされていたことがありましたが、これはそれだけ個性の強い声をしている政治家であったことの裏返しで、かえってその人物の大きさを感じる事ができると思う方もいらっしゃるでしょう。その後、小堺一機さんと清水ミチコさんの鈴木宗男氏と田中真紀子氏との対決なんてネタもありましたが、You Tubeで検索しても消されているのか出て来ないのが悲しいところです。

恐らく、今後真面目に安倍首相の国会答弁をデフォルメして笑いに使おうと思った人がいたとしてもテレビ局側からNGが出るような気もしますし、すでに時の首相でお笑いなんてことがご法度になっているのかも知れませんが、だからこそこの番組で安倍首相のモノマネを何回も何回も強要させる姿というのは何とも言えない面白さがあったのだと思えます。恐らくあれだけ東北の復興に力を尽くしているサンドウィッチマンのお二人にテレビ局も政治家方面も、今回は特別だと思わせることができれば、改めて文句も出ないと思われます。

ただ、同じ事をテレビでやるというのはなかなか難しいでしょうね(^^)。それでも、私なども半は忘れ掛けていた芸人による政治家のモノマネで笑いを取る行為というものがまだテレビの裏側では生きていたということを確認できたということだけでも今回の番組は貴重なものを見たという感じにさせられて、見る機会があって良かったと心から思えるものでした。実際に伊達みきおさんの安倍晋三氏のモノマネが見たい方は、テレビには出ない劇場でリクエストされると、もうお腹いっぱいと思えるくらいやってくれるのではないでしょうか。

(番組データ)

アメトーーク! サンドウィッチマン大好き芸人
2019/05/16 23:20 ~ 2019/05/17 00:20 (60分)テレビ朝日
【MC】雨上がり決死隊
【ゲスト】サンドウィッチマン/中川家&ナイツ&狩野英孝&トミドコロ&口笛なるお

(番組内容)

▽サンドを知り尽くしたメンバー
▽中川家&ナイツ&狩野
▽大ファン剛の盗撮写真
▽塙&伊達…即興漫才
▽礼二がダメ出し
▽後輩が暴露
▽テレビでは見せないウラの顔&モノマネ


テレビが作る「実績」は本当の実力なのか?

NBC長崎放送が制作した番組に地域情報バラエティ「げなパネ!」がありますが、この番組は静岡県出身の漫才コンビ「トータルテンボス」の冠番組で、現在はネット配信の「TVer」で見ることができます。私が見た回は同じ漫才コンビで茨城県出身の「カミナリ」がゲストで出演していて、現在のお笑いについての興味深いお話をしていたのを見させていただきました。

「カミナリ」は今回紹介する「ものまねグランプリ」にも出場した漫才コンビ「霜降り明星」とは事務所は違うものの活動年数も近く意識するのだそうで、そんな霜降り明星の事を「吉本の宝」という風に表現していました。当然ライバル心もあるでしょうし、露骨に贔屓されることについての不満もあるでしょうが、「げなパネ!」の中ではそんな感じは一切出さず、実に立派な態度だったと見ていて思いました。

番組の感想に先立って直接は関係ない「げなパネ!」の話題を出したのは、お笑い界だけでなくテレビの世界でも番組制作に大きな影響を与える大手芸能事務所の「吉本興業」の意向を考えずして人気バラエティの制作が難しいのではないかという疑念があります。

そこで改めて漫才コンビの「霜降り明星」の活動実績について見ていくと、今回の「ものまねグランプリ」では見事チャンピオンに輝いたわけですが、これで漫才の「M-1グランプリ」、ピン芸のコンテスト「R-1ぐらんぷり」でメンバーの粗品さんがグランプリ受賞と、今回のものまね芸でのグランプリと合わせて「三冠」を取ったというまさに「吉本の宝」とカミナリやトータルテンボスに言わしめたことがお世辞ではない活躍ぶりです。

しかし、番組を直接見た方ならおわかりでしょうが、生放送でなく録画番組で、決勝の際に審査員全員が「霜降り明星」に一位の点を付けてのぶっちぎりのグランプリ獲得に、他の決勝進出者との比較で、審査結果に疑念を持った方も少なくないのではないかと思います。

「ものまねグランプリ」に限らず、新たなスターが出現した場合、いかにその人気を上げるように忖度するかということは別に番組がオリンピックなどの見ばえとは関係ない真剣勝負でなければ、十分演出の範囲であるように思えます。人気を上げたいと思っている人をドラマの主演にキャスティングすることは「やらせ」でも何でもありませんし、見たい人だけが見ればいいわけなので、今回のグランプリ受賞もそうした考えの延長線上にあったものなのかも知れません。

結果としてこうしてできた「実績」は後々まで残り、最初に紹介したように「霜降り明星」は「漫才」でも「ピン芸」でも「ものまね」でも面白いという大きなイメージが形成されます。そうしたイメージを利用して「霜降り明星」のお二人が今以上の実力を発揮することで名実ともに「吉本の宝」となっていくのか、そのイメージに押し潰されてしまうのか大変気になります。

もし私が「霜降り明星」のファンだったら、そこまで色々な事に手を出して受賞歴を増やす事よりも、地に足をしっかり着けて漫才の面白さとテレビでのフリートークの面白さ、さらにロケ回しのうまさを身に付けてずっとテレビで活躍することができるように頑張って欲しいと思うのですが。今後彼ら二人が、「何でもできる芸人」として無茶振りされて滑ってしまった場合、相当お二人にとってのダメージが増えてしまうのではないかと心配になったりします。大きなお世話と言われればそれまでですが、霜降り明星のお二人には、くれぐれもテレビに潰されることのないように、苦言を言ってくれる方を大切にして活動していって欲しいと思います。そして番組に出演したものまね芸人の方についても、今回の結果については悲観せず、次回こそグランプリを取れるように芸道に精進していって欲しいと思っています。

(番組データ)

ものまねグランプリ特別編 ものまねレジェンドが選ぶ次世代ものまね芸人No.1決定戦
2019/05/07 19:56 ~ 2019/05/07 22:54 (178分)日本テレビ
【MC】ネプチューン
【進行】郡司恭子アナ、笹崎里菜アナ
【出演者(審査員含む)】コロッケ、神奈月、ホリ、福田彩乃、荒牧陽子、山寺宏一、アンガールズ、横澤夏子、椿鬼奴、古賀シュウ、イジリー岡田、やしろ優、Mr.シャチホコ、平野ノラ、沙羅、メルヘン須長、山田七海、チョコレートプラネット、朝日奈央、霜降り明星、祭nine.、関根勤、井森美幸、ビビる大木、上白石萌音、池田美優、加藤ナナ、廣瀬智紀

(番組内容)

ものまねレジェンドが感嘆!進化した芸を見逃すな

▽霜降り明星ものまね連射漫才
▽チョコプラ大坂なおみVS和泉元彌
▽歴代朝ドラ主題歌を山田七海が激似熱唱…上白石萌音絶賛
▽CD店QUEENがすべて神奈月になったらバレる?バレない?
▽3年A組菅田将暉が蘇る?▽祭nine.のTT兄弟とは?
▽平成30年名曲45組で20分ノンストップメドレー!ものまねを止めるな
▽広瀬すず、佐藤健、山崎賢人…見た目そっくりさん


思った事を包み隠さず言葉にする子どもの恐さと凄さ

まず、最初に苦言を呈しておきますが、この番組をなぜ今になって紹介するかと言いますと、私の住む静岡県では2月2日に放送されず4月30日午後の放送になったからです。改めて番組の内容を詳しく知りたいと思って番組のホームページにアクセスしたところMCのサンドウィッチマンと芦田愛菜さんの名前は出てきたものの、番組に出演した「博士ちゃん」の子どもたちの名前については一切紹介されていなかったというのはどういう事なのでしょうか。

今回出演したお子さんたちの中で、このブログで取り上げたいのは番組データにある(1)の美空ひばりをこよなく愛する超歌うま11歳少女だったのですが、この子がどういう方なのかということが、公式ページからでは調べられないというのでは、この番組をきっかけにして何か興味を持ったテレビを見ていたお子さんの可能性まで潰してしまうといったら言い過ぎでしょうか。テレビに出て顔と名前を出しているならば、せめて番組を紹介したページについてはきちんとしたデータを出すべきではないかと思うのです。

ただ、番組名とキーワードでさらに検索を掛けると、やはりテレビに出たり多くのコンテストに出て歌っている子だけに、他の子と比べると比較的簡単にその名前を見付けることができました。梅谷心愛さんというのが11才の少女の名前でした。テレビの「歌唱王」「カラオケバトル」といった素人の歌唱力を競う番組にも出演している、将来の歌手を目指している子です。ひいおばあちゃん(だったと思います)の影響で美空ひばりさんの歌に惚れ込み、当時の流行歌を聞き自分でも歌い、その歌唱力もかなりのものなのだそうです。

ちなみに私自身の美空ひばり体験というのは、もはや大御所としての存在だった時期からしか知らないため、身内の不祥事によって紅白歌合戦を辞退した時のイメージが長いこと強く、当時ニューミュージックと呼ばれるジャンルに勢力を縮小しつつあった「古くさい演歌歌手」という感じで考えていたので、その歌手としての凄さというのは大人になるまでわかりませんでした。ひばりさんの魅力というのは、心愛さんと同じくらいの小さな頃から歌手だけでなく女優としてもデビューし、その子どもに思えないほどの歌唱力をもって歌った様々な歌の魅力があります。

それこそ昔は「悲しい酒」のような曲調のものしか知らなかったのですが、それは大きなる認識不足で、それこそ素人がおいそれとカラオケで歌えない曲の数々に驚愕し、改めていろんな時代の曲を聞き直した私からすると、心愛さんが番組で紹介した「美空ひばりのすごい曲」として取り上げるのは何かのかちょっと興味が湧いたのでした。

結果として紹介されたのは「お祭りマンボ」「ひばりの佐渡情話」「人生一路」という、11才の少女から出てくるにはちょっと考えられないような曲の数々でした。さらに、美空ひばりの代表曲とされる「川の流れのように」に一切触れなかったというのも本当に美空ひばりの歌について良くわかっていると思われる事でした。

ただ誤解してほしくないのですがここで私は「川の流れのように」をディスっているわけではありません。この曲は、素人がカラオケでもそれなりに歌える曲で、ひばりさんが演歌に興味を持ちにくい若い人にも興味を持ってもらえるようにと、ひばりさんの最晩年に作られた曲であり、ひばりさんの代表曲の一つには違いありません。こちらで想像するに、すでに美空ひばりさんの多面性のある歌の魅力を知ってしまっている心愛さんにとって、ひばりさんが若者の側に寄せた曲である「川の流れのように」とは別の方向の「本当にすごいと思う曲」を出してきたのではないかと思われます。

ちなみに、著書に「美空ひばり」があり、生前には「ひばりウォッチャー」とも言われたルポライターの竹中労さんが選ぶ美空ひばりの曲のベストの中の一つとして挙げた曲こそ「ひばりの佐渡情話」だったのでした。さすがに心愛さんが竹中労さんの書いたものを詳しく読んだことを根拠に番組内で挙げたとは思えず、自分で美空ひばりさんの曲を歌うことによってその凄さを感じたからこそ「ひばりの佐渡情話」が出たのだと思いますし、相当美空ひばりさんの曲を聴き込んでいることが想像できました。

今の世の中はYou Tubeで過去の映像を簡単に見ることができるようになりましたし、昔の人・今の人に関係なく、子供の心で本当にすごいと思ったものが評価されるような事にこれからはなっていく可能性をこの番組を見て感じるとともに、とってつけたような知識では、感性の強い子には単にバカにされるだけだということも感じた次第なので(^^;)、私自身ももう少ししっかりとTV番組について書いて行こうと思い直しているところです。

(番組データ)

サンドウィッチマン&芦田愛菜のぶっつけ教室 博士ちゃん テレビ朝日
2019/02/02 14:55 ~ 2019/02/02 16:25 (90分)
【出演者】サンドウィッチマン 芦田愛菜

(番組内容)

大人顔負けの知識を持つ子ども博士こと“博士ちゃん”が サンドウィッチマン&芦田愛菜の質問に答えまくる 黒板も教科書も使わない“ぶっつけ本番”の即興授業! 単独ライブで客席の子どもをステージに上げて 即興トークを繰り広げているサンドウィッチマンが “博士ちゃん”をイジリながら教えを請う爆笑教室!
登場する博士ちゃんは…

(1)美空ひばりをこよなく愛する超歌うま11歳少女
(2)最年少で取得!世界遺産マイスター中学生
(3)マイナー野菜激アツプレゼン10歳男子
(4)日本一の金魚すくい兄弟