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テレビドラマが全て再放送になるかも知れない話

2019年3月いっぱいでTBS系の2時間ドラマ枠である「月曜名作劇場」が終了するという事を発表しました。月曜の夜といえばかつては夜7時「東京フレンドパーク」、8時「水戸黄門」ときて、9時からのサスペンス2時間ドラマというのが定番の流れだった時もありました。

しかし「東京フレンドパーク」が月曜から移動したところから状況が変わりました。それまではフレンドパークからの勢いで見られていた8時台ドラマの視聴率まで低迷し、さらにはレギュラー時代劇の「水戸黄門」終了もあり、そうしたテレビ視聴の流れが崩れてきたことの影響がここに来て出てきたのかと思わせるような展開です。

そもそも、水戸黄門が終わった時には、時代劇にはお金がかかるので、現代劇中心にドラマをシフトすることで少ない制作費でもそれなりの番組を作れるようにということだったのですが、やはり今でも再放送が繰り返されて人気のある水戸黄門の力は絶大で、長いことスポンサーを務めていたパナソニック(昔の松下電器・ナショナル劇場)が月曜8時からのドラマ枠のスポンサーから撤退したことで現代劇にも影響が出てしまったのかとも思えます。

さらに、ここにきて思うのは、ドラマ班はとりあえず確実に視聴率が取れるベテラン俳優に依存して、若手の育成を怠ってきた感じもあります。TBSのドラマで言うと「西村京太郎トラベルミステリー 十津川警部シリーズ」では渡瀬恒彦さんあってのものでしたし、最近の「税務調査官・窓際太郎の事件簿」での小林稔侍さんも、さすがに最近のドラマでは晩年の寅さん映画のような状況になっており、早く終わらせるためにドラマ枠自体を撤廃するのかという風にも考えてみたくなるのです。

今の日本のテレビドラマは、多くが若い人に人気の俳優が主役を張るケースが多く、もしそうした人たちがサスペンスドラマに出たとしたら、一気に落ちぶれたのではないかと疑われてしまうかのような感じもあります。ただそんな状況では一人の俳優さんが年を経るにしたがって味が出るということは考えにくいわけです。最近でもありませんが、お金があり安定してドラマを作ることのできる環境にあるNHKのドラマでは、本職の俳優ではなくお笑い芸人やミュージシャンといったテレビで顔が売れている人物をキャスティングして人気を博していますが、本来はきちんと俳優としての修行をした人が出てくるようでないと、今後のテレビドラマは一定の世代にだけ特化し、そこから外れた人達はますますテレビを見なくなるか、古い再放送のドラマを見るようになることが考えられます。

現在、民放BSでは再放送ドラマであふれています。相変わらず中国・韓国のドラマを安く購入して流すケースが多いですが、今後の政治の流れもあり中国や韓国に対する国民感情に変化があった場合、その穴を何で埋めるかということになると、改めて新しくドラマを作るよりも過去の日本のドラマの再放送の方がはるかに楽なので、そのような番組が増えていくことも予想されます。

TBSの「月曜名作劇場」の後番組にはバラエティが予定されているようですが、もしその番組の視聴率が上がらなかった場合、もはやその後に何を持ってくるのか考えることは難しいでしょう。同時刻に民放BSで再放送ドラマをやっている場合、視聴者のいくらかが地上波から流れてくる可能性もあるのですが、再放送は決しておばけ番組にはなりません。やはり人気のある番組を作るためには新たなチャレンジが必要なのです。

テレビにはNHKを除いてスポンサーが付かなければ番組にはなりません。スポンサーの意向は大切ではありますが、昨年ヒットした映画「カメラを止めるな!」に見られるように、無名の俳優だけのドラマで、制作費を極力抑えたドラマであっても、知恵といい脚本があれば見る人は見ているのです。さらにドラマきっかけでバラエティに登場し、人気者になる人材を発掘することができれば、徐々にドラマ自体の価値も上がっていく可能性もあります。今回の「月曜名作劇場」の終了が決してテレビドラマの衰退を招くような事ではなく、心ある人たちが今までのマンネリ化を打破するようなドラマを作るための大ナタだったと後から言われるように、テレビドラマには頑張っていただきたいものです。


日本のドラマは「確信犯」で満ちあふれている

のっけからテレビドラマではありませんが、ネット配信のアマゾンプライムビデオのオリジナルドラマ「チェイス」について、清水潔著「殺人犯はそこにいる/隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件」との類似性が指摘され、清水氏や出版元の新潮社には何の相談もないまま「チェイス」というドラマが作られたことがニュースになっています。

このブログではアマゾンプライムビデオのオリジナル作品について、主に吉本興業制作のバラエティ番組について感想を書いていますが、もはやテレビや映画だけが映像作品鑑賞の場とは言えない中、一気に加入者を増やすためのテコ入れとして、ドラマ制作の現場では細かな検証をすっ飛ばしたとか思えない形で仕事が進んでいることが予想されます。今回問題になったのは実際の事件に取材したノンフィクションであったので、もし多少のクレームが来ても、同じ事件に題材を取った作品であるので似てくるのは当り前だという言い訳で何とかなるとも思ったのかも知れませんが、もはやアマゾンプライムビデオはテレビで放送されるドラマと同じくらいの認知度を持っているということの裏返しでもあるということも今回の騒動は表しているように思います。

そういう流れの中で、天下のNHK朝ドラ「わろてんか」の1月25日放送分でまたNHK大阪放送局がやらかしてしまいました(^^;)。漫才師の横山エンタツ・花菱アチャコのモデルとして描かれている「キース」と「アサリ」の新しい漫才を作る過程の中で、どんな格好で寄席へ出るのかという思案の中、様々な小道具が出てくるのですが、支配人役の濱田岳にその中から「金太郎の前かけ」を当て、セリフで「ピタッと」「どんどん」と言わせるところは、当然auの格安SIM対策として出した「ピタッとプラン」一連のシリーズCMを連想させます。さらに花菱アチャコのモデルであるアサリを演じているのは、今はCMに登場していませんが、auの昔話シリーズの途中で一寸法師として出演していた前野朋哉さんなのですから、まさに確信犯的な演出だと言わざるを得ません。

まさかNHK大阪放送局はauの展開を行なっているKDDIにおける筆頭株主である京セラと何か関係あるのかとか、主演の葵わかなさんも関西の通信の雄であるケイ・オプティコムの運営する格安SIM(しかもサービス開始当初はauの回線を使うSIMカードのみの提供でした)を提供するmineoのイメージキャラクターをやっていたから起用されたのかとか、全く荒唐無稽な私の頭の中で考えただけの説もそれらしい話になってしまう恐さがあり、単に面白いからコラボしようというのは違う気もします。

確かにテレビで見掛けるいろんなものがつながってドラマも面白くなるということはあるでしょう。現代のテレビは民放であってもNHKから資料映像として朝ドラや大河ドラマの映像を借り、そのドラマに出演した役者さんを自局のドラマに出す中で、朝ドラとからめて自局の番宣に使うことはどのネット局でもありますので、持ちつ持たれつということはあるのかも知れませんが、でも今回のNHKの悪ノリはいただけません。

そもそも、このドラマを録っている中だったり、編集してチェックしている時に、これはあからさまにauという特定企業を見ている人に連想させるからまずいのではないかと口を挟む人はいなかったのでしょうか? もしそういう人たちも了解の上で流れたものだとしたら、もし私がauの競合している他社の人間だとしたら何らかの抗議をするように働きかけると思います。

一つ言えることは、今回のような番組をNHKが放送したことで、「日本の公共放送とは何か?」という問題を考える場合、ある程度企業活動の宣伝をしたり、他の民放局とのコラボレーションを行なってもいいということになると、NHKにも企業から圧力を掛けることができるという可能性を持つことになってしまいます。具体的な会社名や商品名さえ出さないからいいというくらいの判断しか上層部がしていないのなら、今後はかなり高度なサブリミナルコントロールが日本国中多数が見ているNHKのドラマを使って実行され、特定の企業の利益に寄与する可能性があることを関係者は肝に銘じるべきではないでしょうか。