月別アーカイブ: 2020年10月

優しくユーチューバーに手を差しのべたテレビスタッフの今後が心配

2020年は新型コロナウィルスの脅威もあって、人の集まるところへの観光から、人が少ないと思われるキャンプを、しかもソロで行なうソロキャンプが芸人のヒロシさんのYou Tube動画あたりから注目が集まり、ヒロシさん自体も仕事でBSや地方局制作のテレビ番組でそのキャンプの様子を紹介する番組に人気が出てきています。

旅番組を多く放送するテレビ東京系列のBSテレ東でも、こうしたブームを当て込んでと言ったらいやな言い方になるかも知れませんが、そこから少しひねった形で出してきたのが、番組での移動手段として前面に出してきた「自転車キャンピングカー」です。

まずこの番組について言いたいのは、ユーチューバーである「ちょもか」さんにその利用をお願いした(彼女の普段のキャンプは軽自動車を利用した車中泊もありのソロキャンプで、自転車を使ってのツーリングは初めてのようなコメントあり)自転車で引くキャンピングカーについて、内部の構造の紹介はあったものの、最後までこのキャンピングカーの内容や価格など、もしかしたら「自転車で引くキャンピングカー」に興味を持って最後まで見ていたかも知れない視聴者に対しての裏切りでしかないでしょう。

自転車キャンピングカーについては、走行時には縮んでいた本体が就寝時には伸びて内部の長さが190センチとなるということくらいしか番組を見てわかった点はありませんでした。さらに、電動アシスト自転車を使っていながら、テレ東の「出川哲朗の充電させてもらえませんか」のように、どこでアシスト自転車の充電をしたのか、さらに番組を見ていてわかったものの、前編で煮沸すれば飲用になる滝の水でコーヒーを沸かして飲んでいる所でも、後で出てきた湯わかしのためのキャンプ用シングルバーナーが出てくる場面はなく、「新しいひとり旅のスタイル」と紹介するには(どこかで同行スタッフの助けがあったから回れたのでは?)無理があるなど、ひどく雑な番組としての作りが目立ちました。

今回出演した「ちょもか」さんについては、女性のユーチューバーでソロキャンプの経験も豊かで、番組で紹介していたキャンプ道具についても、細かな工夫をして使うだけのノウハウを持っているなと番組を見ていて感じましたし、収録時の動画による生配信をそのまま登録ユーザーのコメントと一緒に紹介している時にも、自分のチャンネルの人気を上げるために自分はどうすべきなのかということを心得てやっている感じで、今回の番組をきっかけにしてユーチューバーとしても大きな飛躍のきっかけになるでしょうし、今後の活躍が期待できる方ではないかと思っています。

逆にだからこそ、テレビでこうしたユーチューバーの方と一緒に番組をやるなら、例えば今回VTR出演だけだった石丸謙二郎さんと直接絡ませるとか、テレビでできてYou Tubeでできないことをなぜやらなかったのかという風に感じてしまうのですね。

私がこうしたブログをやっているのも、年代によってはテレビを見る時間よりもスマホから動画配信のコンテンツを見る時間の方が多くなることを危惧し、テレビだって面白いことを多くの人に知ってもらいたいというところもあります。今回の番組について言うと、テレビで見たことをきっかけにして「ちょもか」さんのチャンネルに登録し、そちらの配信動画で満足することでテレビから離れてしまうような事が起こるような番組の作り方をわざわざしているのではないのかと危惧されて仕方がないのですね。

別にYou Tubeをからめてテレビ番組を作ることには異論はありませんが(ある意味、海外や国内のおもしろビデオを見てワイワイ言う番組のようなものなので)、ネット動画やユーチューバーと絡めるなら、個人ないし少数のスタッフではできない、テレビ独自の内容も入れていかないと、本当に今後はテレビ離れをして今回出演したようなユーチューバーの方も、あえてテレビで自分の名前を売らなくても十分だと思われるような「ネット>テレビ」という関係が当り前になるような未来も見えてきてしまいます。

もしかしたら、この番組を作った方々はそうした未来を見すえていて、とっとと自分たちもユーチューバーとしてデビューするために「ちょもか」さんからそのノウハウを得るためにこの番組を企画したのかと思えてしまうような番組でした。こんな想像が現実のものになった時に備え、今回こうして記録しておきます。

(番組データ)

金曜アドバンス ソロキャン女子が行く!自転車キャンピングカー旅 BSテレ東
2020/10/16 21:00 ~ 2020/10/16 21:54 (54分)前編
2020/10/23 21:00 ~ 2020/10/23 21:54 (54分)後編
【出演者】
<旅人> ちょもか (チャンネル登録数2.1万人/最多再生回数36万回 ユーチューバー)
<ネーチャーナビゲーター> 石丸謙二郎

(番組内容)

・2020/10/16放送分
ソロキャンプ系女子ユーチューバーが自転車用キャンピングカーを引っぱって富士山の裾野をゆったり旅します。キャンパーならではの技や美味しいキャンプごはんも大公開。
ソロキャンプ系女子ユーチューバーが自転車用キャンピングカーを引っぱって富士山の裾野を旅します。電動アシスト自転車でマイペースに。朝な夕なに顔を出す霊峰富士や白糸の滝など絶景を仰ぎ見て、出会う人々と交流。キャンパーならではの技を繰り出して地元の食材でつくる美味しいキャンプごはんも大公開。絶品!富士宮やきそばや高原のソフトクリームも寄り道していただきます。新しいひとり旅のスタイルをお楽しみください。
・2020/10/23放送分
ソロキャンプ系女子ユーチューバーが自転車用キャンピングカーで富士山の裾野を旅します。キャンパーならではの技やキャンプごはんも大公開。前編に続き河口湖・山中湖へ!
ソロキャンプ系女子ユーチューバーが自転車用キャンピングカーを引っ張りながら富士山の裾野を旅します。電動アシスト自転車でマイペースに。絶景に出会い地元の人々と交流。もちろんソロキャンパーならではのキャンプ技や美味しいキャンプごはんも大公開。気ままに&ゆったり、新しい“ひとり旅”のスタイルをお楽しみください。前編で宿泊した富士五湖・本栖湖のキャンプ場を出発したちょもかは、西湖、河口湖を経て山中湖へ!


「フェイクニュース」全盛の時代に地上波でも「フェイク番組」が

何の予備知識もなく深夜にこの番組を見た方は、ひどく消化不良を起こしたのだろうと思います。よくBSでありそうな一つのテーマ(この番組では「パン屋探訪」?)を基本に街歩きをし、出演タレントの魅力とともにテーマを視聴者に伝えるような番組であることを期待して見ていた人は裏切られ、恐らく今後も裏切られ続けるだろうと思います。

このブログの最後に紹介している「番組内容」はこちらが独自に書いたものではなく、テレビ局経由の紹介に基づいているものをそのまま紹介しているのですが、そこで書かれている「お店にお邪魔」ではなく「お店をお邪魔」して、秋山さん自身が「クリエーターズファイル」で行なっているように、自論(もちろん事前の設定がある「フェイク」満載の)を延々と述べることで、予定調和を崩しつつ絶妙な笑いの世界を作り出しています。

同時にYou Tubeで公開されているナレーションの斎藤ちはるアナウンサーの番組収録後のインタビューも実に確信犯的で(スタッフが番組内容をナレータに伝えないまま収録させたのではないかと感じさせる雰囲気を出していました)、かなり秋山さんとスタッフが綿密に打合せをして作っているという印象を受けました。

逆に言うと、街ぶら番組を期待してこの番組を見て、あまりにも目論見が外れてテレビ局に抗議してくるような人がいたら、それは番組にとっては目論見通りであると言えるわけです。一応、番組上の設定で事実と違うことについては、番組最後にテロップで流しているのでその点では問題がないと思います。

さらに、この番組を「フィクション」と呼ぶのも違うような気がします。訪れたパン屋さんは実在し、秋山さんは食べてまともなコメントは言わないながらも画面からおいしそうなパンを紹介していますし、全てが「フィクション」ではありません。

つまり、この番組は最初に書いたような「街歩き的食べ物ガイド」(番組のコンセプトからはNHK BSでシリーズ化されている「パン旅」を意識している?)を茶化し、あえて今はやりの「フェイク」を入れながらゆるーく笑ってもらいたいというコンセプトの番組であって、フェイク情報を出しているからと言って怒り出すのは間違いだということです。

そうしたコンセプトを理解した、秋山さんの話の中から出てきたキーワードをスタッフが事後取材するのも面白く、「御殿場アウトレット」あたりの広報の人が今回実際に出演してフェイク拡散に貢献し、番組の面白さを引き出すことに貢献した椎名林檎さんのように、茶目っ気ある回答をしてくるようになると(スタッフの入れ知恵も含めて)、さらに番組の可能性が広がって面白くなるような気がします。今後の番組の成長に期待したい、そんな番組ですね。

(番組データ)

秋山とパン テレビ朝日
2020/10/08 01:56 ~ 2020/10/08 02:16 (20分)
【出演】秋山竜次(ロバート)
【ナレーション】斎藤ちはる(テレビ朝日アナウンサー)
【VTR出演】椎名林檎

(番組内容)

ロバートの秋山竜次が、街で愛されるパンの名店を訪れ、お店ご自慢のパンに舌鼓を打ちます。美味しいパンと小粋なおしゃべり。真夜中にあなたのお腹を鳴らします。

どの国の、どんな街にもパンはある。 人生のいかなる瞬間にも優しく寄り添ってくれる存在、それがパン。 初回の本日は、六本木にあるクロワッサンが絶品と噂のお店にお邪魔します。さてどんな小粋なおしゃべりがとびだすのでしょうか。 真夜中にあなたのお腹を鳴らします。


ランキングに忖度がなくても説明のない番組

後から読む方もいると思うので、今回の放送が生放送だったこともあり、テレビなどマスコミがこぞって政府批判を放送された当時にしていた事について書いておきます。内閣総理大臣が任命する日本学術会議の会員のうち、推薦のあった人の中から6名だけ任命されなかった事について、「任命しない理由」を説明するべきだという事が言われています。基本的には説明責任がないとは言え、行政への不満を抑えるためにも、多くの人を納得させるためにもきちんと任命しない理由を説明してから任命拒否すれば良かったのにと思います。今回の番組は、最後の最後に同じような問題を起こしたまま終わってしまったように思います。

番組の内容は、女性歌手限定でプロの声楽家131人が忖度なしでランキングを選んだものですが、ランキング番組の宿命として「この人がランキングに入らないのはなぜか」とか「この人がランキング上位なのは納得できない」という個人の主観による不満があります。さらに、ランキングを決めるための「ルール」を細かく設定することも大事ではないかと思います。

例えば番組に呼ばれたらその場でランキング入りを納得できる生歌を披露できる現役の歌手に限定するのか、さらに無名の歌手まで含めるのか、過去の伝説の歌手まで含めるのか、その際動画が残っていなくてもいいのか、それによって今回のランキングも変わってくると思うのですが、個人的には過去の素晴らしい歌唱能力を持っていた歌手も含めてのランキングになっていたものの、いわゆる皆が知っていて現在も活躍している人が多く選ばれ、いわゆる「サプライズ」的なものは少ないのは残念でした。

ただ、そんな中で第六位にノミネートされた演歌歌手の島津亜矢さんは、視聴者の中には誰? と思った人も多いサプライズ選出だと思いますが、製作側が島津さんにあえて持ち歌を歌わせず、声楽家にアンケートを取ったJPOPの楽曲の中で一番歌うのが難しいというランキング一位の 「白日」(King Gnu)を生披露させ、その歌唱力とともに演歌歌手の枠を超えた歌手としての魅力を感じさせることに成功しています。作り手側の狙いというのがあるとしたら、JPOPの歌手以外にもこんな人がいるんだぞという事を紹介することもあったと思うのですが(今後の島津亜矢さんの歌手としての売り出し方を考えての企画であったとしても)、それにしては2時間という枠は短すぎて、ランキング以外の見どころは少なかったのではないかと思います。

そして時間が足りなかったこととも関係あるのですが、ランキング自体の問題として最後のところでのネットコメントが象徴していたのですが第一位の発表があった後に「忖度がないと言っておきながら最後に忖度した」というように言われっぱなしになってしまったことがあります。個人的には第一位は現役歌手だけでないランキングで、動く映像が残っている歌手の中ということでは第一位は美空ひばりさん以外にはないと思っていたのですが、ネットで美空ひばりさんが一位を取ったことに不満を述べている方は、恐らく晩年のひばりさんの動画を見ただけで幼少期から多岐にわたった歌手としての活動について無知であるという可能性が高いと思います。個人的にこうした感情が残って、何も聞かないで美空ひばりさんの歌手としての能力を否定するような事になってしまわないかと心配になります。

そうした批判は恐らくランキング決定後からあったと思うので、番組の構成としては、さわりで流れた「川の流れのように」と、第一位の理由付けとして紹介された「愛燦燦」だけでなく昔の映像も活用して、その凄さをちゃんと説明すべきだったと思います。

恐らく同じランキングをラジオで一日かけて紹介する番組を作っていたら、ランキング外で知名度はないが素晴らしい歌唱力を持っている現役歌手をリスナーに紹介することもできたでしょうし、ランキング上位の歌手のどこが素晴しいかをきちんとリスナーが納得するように説明でき、聞いている人も満足するような番組が作れたのではないでしょうか。

今回のランキングがあくまで「人気ランキング」なら2時間で収めてもそんなもんかと思ったでしょうが、なまじ忖度なしのランキングと銘打っただけに消化不良が残った番組に終わってしまったと思います。どうせならこの番組で作ったランキングを基にして審査した方に再取材して、皆が納得する内容の番組をどこかでやって欲しいものですが。

(番組データ)

本当のとこ教えてランキング TBS
2020/10/04 21:00 ~ 2020/10/04 22:54 (114分)
【MC】 坂上忍
【ゲスト】 朝日奈央・小芝風花・ヒロミ・吉村崇 (50音順)
【進行】 良原安美(TBSアナウンサー)
【総合演出】 竹永典弘
【プロデューサー】 谷沢美和 井上整 高宮望

(番組内容)

様々な「禁断のランキング」だけに特化した生放送ランキング番組!今回は【プロの声楽家が選ぶ、本当に歌がうまい女性歌手ベスト30】を紹介

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