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ランキングに忖度がなくても説明のない番組

後から読む方もいると思うので、今回の放送が生放送だったこともあり、テレビなどマスコミがこぞって政府批判を放送された当時にしていた事について書いておきます。内閣総理大臣が任命する日本学術会議の会員のうち、推薦のあった人の中から6名だけ任命されなかった事について、「任命しない理由」を説明するべきだという事が言われています。基本的には説明責任がないとは言え、行政への不満を抑えるためにも、多くの人を納得させるためにもきちんと任命しない理由を説明してから任命拒否すれば良かったのにと思います。今回の番組は、最後の最後に同じような問題を起こしたまま終わってしまったように思います。

番組の内容は、女性歌手限定でプロの声楽家131人が忖度なしでランキングを選んだものですが、ランキング番組の宿命として「この人がランキングに入らないのはなぜか」とか「この人がランキング上位なのは納得できない」という個人の主観による不満があります。さらに、ランキングを決めるための「ルール」を細かく設定することも大事ではないかと思います。

例えば番組に呼ばれたらその場でランキング入りを納得できる生歌を披露できる現役の歌手に限定するのか、さらに無名の歌手まで含めるのか、過去の伝説の歌手まで含めるのか、その際動画が残っていなくてもいいのか、それによって今回のランキングも変わってくると思うのですが、個人的には過去の素晴らしい歌唱能力を持っていた歌手も含めてのランキングになっていたものの、いわゆる皆が知っていて現在も活躍している人が多く選ばれ、いわゆる「サプライズ」的なものは少ないのは残念でした。

ただ、そんな中で第六位にノミネートされた演歌歌手の島津亜矢さんは、視聴者の中には誰? と思った人も多いサプライズ選出だと思いますが、製作側が島津さんにあえて持ち歌を歌わせず、声楽家にアンケートを取ったJPOPの楽曲の中で一番歌うのが難しいというランキング一位の 「白日」(King Gnu)を生披露させ、その歌唱力とともに演歌歌手の枠を超えた歌手としての魅力を感じさせることに成功しています。作り手側の狙いというのがあるとしたら、JPOPの歌手以外にもこんな人がいるんだぞという事を紹介することもあったと思うのですが(今後の島津亜矢さんの歌手としての売り出し方を考えての企画であったとしても)、それにしては2時間という枠は短すぎて、ランキング以外の見どころは少なかったのではないかと思います。

そして時間が足りなかったこととも関係あるのですが、ランキング自体の問題として最後のところでのネットコメントが象徴していたのですが第一位の発表があった後に「忖度がないと言っておきながら最後に忖度した」というように言われっぱなしになってしまったことがあります。個人的には第一位は現役歌手だけでないランキングで、動く映像が残っている歌手の中ということでは第一位は美空ひばりさん以外にはないと思っていたのですが、ネットで美空ひばりさんが一位を取ったことに不満を述べている方は、恐らく晩年のひばりさんの動画を見ただけで幼少期から多岐にわたった歌手としての活動について無知であるという可能性が高いと思います。個人的にこうした感情が残って、何も聞かないで美空ひばりさんの歌手としての能力を否定するような事になってしまわないかと心配になります。

そうした批判は恐らくランキング決定後からあったと思うので、番組の構成としては、さわりで流れた「川の流れのように」と、第一位の理由付けとして紹介された「愛燦燦」だけでなく昔の映像も活用して、その凄さをちゃんと説明すべきだったと思います。

恐らく同じランキングをラジオで一日かけて紹介する番組を作っていたら、ランキング外で知名度はないが素晴らしい歌唱力を持っている現役歌手をリスナーに紹介することもできたでしょうし、ランキング上位の歌手のどこが素晴しいかをきちんとリスナーが納得するように説明でき、聞いている人も満足するような番組が作れたのではないでしょうか。

今回のランキングがあくまで「人気ランキング」なら2時間で収めてもそんなもんかと思ったでしょうが、なまじ忖度なしのランキングと銘打っただけに消化不良が残った番組に終わってしまったと思います。どうせならこの番組で作ったランキングを基にして審査した方に再取材して、皆が納得する内容の番組をどこかでやって欲しいものですが。

(番組データ)

本当のとこ教えてランキング TBS
2020/10/04 21:00 ~ 2020/10/04 22:54 (114分)
【MC】 坂上忍
【ゲスト】 朝日奈央・小芝風花・ヒロミ・吉村崇 (50音順)
【進行】 良原安美(TBSアナウンサー)
【総合演出】 竹永典弘
【プロデューサー】 谷沢美和 井上整 高宮望

(番組内容)

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時間が足りなくても伝えて欲しいこと

テレビというものは限られた時間の中で収録を行ない、さらにその内容を編集して放送時間の枠に当てはめる関係から、どうしても伝えたいことがなかなか伝わらなかったり、本当は大事な事が出演者のどうでもいい話の中に隠れてしまって出せなくなったのかもと思えることもあります。

今回の「1番だけが知っているSP」は、まさにそんな感じが極まった内容で、カードマジック対決にMLB元ニューヨークヤンキーズの松井秀喜選手へのロングインタビューという大きな企画がたて続けに流され、その中で放送された見に覚えがないのにコンビニ強盗の犯人にされて300日という長期勾留された冤罪事件については、内容自体を伝える時間および番組内でのコメンテーターがどのように考えたのかという事を伝える時間が足りなかったという印象を受けました。

もっとも、この事件についてのテレビの特集というのはすでにNHK総合が十分満足な内容のものを放送していました。2018年5月26日(土)午後9時から放送された「逆・転・人・生「えん罪・奇跡の逆転無罪判決」」がその番組で、NHKが作った再現ドラマなどのVTRを見ながら、実際に逮捕されて長い勾留を受け、結果的には無罪を勝ち取った土井佑輔さんが実際に出演されて、無罪判決が出たその後についてまで報告をされていました。

そうした予備知識があったから不満に感じたということがあったのかも知れませんが、事件のあらましから無罪を勝ち取るに至った経緯までは短い時間の中で十分に伝えていたと思います。ここでごく簡単に事件と裁判のあらましを紹介しておきますと、土井さんの自宅から徒歩3分のところにあるコンビニで強盗事件が起き、いきなり土井さん宅に警察が逮捕状を持ってやってきて、何の弁解もできないまま拘束されたことが事件の始まりでした。

なぜ警察はそこまで強硬に逮捕に至ったかと言うと、現場検証をした際に、過去に一度だけ警察に指紋を取られたことのある土井さんの「左手」の指紋がコンビニの自動ドアの店舗外側に付いていたことから、本人の犯行を証明する重要な証拠だとされたのでした。

ただ、後から母親が思い出したコンビニ強盗が起こったその日の行動は、とても土井さんが強盗を実行したのかと疑問のあるものでした。その日は深夜にテレビでサッカーの生中継があり、友人一人を土井さんは自宅に呼んでテレビ観戦していました。観戦中には土井さんは当時の彼女に電話したり(通話記録もあり)、事件が起きる15分前には友人のスマホカメラで土井さんが自分の部屋ではしゃぐ様子を撮影した写真が撮影時刻とともに残っていることを根拠に無罪を求めました。

しかし公判で検察は、歩いて3分でコンビニまで行けるので十分犯行は可能で、写真の撮影時間の偽装や、アリバイ作りのために写真を撮影した可能性もあるという、友人のアリバイ証言を取り上げない態度に終始しました。それ以上に土井さんがコンビニに残した指紋の存在が決定的だと思っていたとしか考えられません。

しかし、その指紋についても普通に考えるとおかしな点が見付かります。というのも、今回のコンビニ強盗事件の犯人がお店の自動ドアに指紋を残したとされる根拠の店内の防犯カメラに映った映像は、犯人が中から自動ドアをこじ開けるようにして右手をお店の外側のドアに出しながらドアの外側を「右手」で触っているように見えます。しかし、すでに紹介したように、犯人が触ったと言われているコンビニの外側にある自動ドアから出た土井さんの指紋は、彼の「左手」の指紋だったのです。同じ防犯ビデオで犯人の左手はだらっと下に下がっているように見えるので、その下がった手であえて左手で指紋を付けて走り去ることは考えにくいわけです。

しかし、このしごくまっとうな意見についても、「左手で触った可能性は0ではない」とし、あくまで現場に残された指紋という証拠が絶対で、それ以外の捜査は必要ないとすら言えるような反論を公判で行なったのでした(実際、ビデオを注意深く見ると犯人は逃走時に左手にはコンビニのレジから強奪した一万円札を握りしめていたので左手の指紋が自動ドアに付きようがないことがわかります)。

そんな中で、無罪への道を導く希望となったのが、公判でない時に検察官から言われたある言葉だったのです。何を言われたかと言うと、具体的な期間を示し、その期間中にコンビニの自動ドアを素手で触ったことはないか? という質問だったのです。この話を土井さんは弁護士にしたことで公判は動きました。すぐに弁護士は検察官が言ったというコンビニの防犯カメラの映像(裁判の証拠として提出されたもの)を証拠開示請求して認められ、その内容を土井さんの母親が確認したところ、事件の5日前に土井さんが確かにコンビニに入る際に「左手」でコンビニの自動ドアを触りながら入店する姿を発見したのでした。

この事実については、土井さんに質問した検察官か他の検察の職員か誰かが、実際に母親が発見したのと同じ映像を確認していて本人にした質問であると思えなくもありません。もし事件に疑問を持つ検察官が事件を担当していたら、そのビデオを発見した時点で起訴することは難しいとして釈放してもおかしくなかったでしょう。しかし実際は土井さんがかたくなに黙秘を貫いたため、300日も無実の罪で拘束され続けたのです。

無罪判決が出た後、驚くべきことに取り調べた警察官や担当検察官からの謝罪の言葉もなかったのですが、この事についてこの番組で言及されることはなく、その点については大いに不満を覚えました。さらにNHKの番組では土井さんがすぐに国と大阪府を相手取り国家賠償請求を提訴したものの、一審二審で敗訴し、2018年5月時点で更に上告していることを紹介していたのですが、本来今回の番組では、2019年3月現在はどうなっているのかということを報告するくらいはしてもいいだろうと思ったのですがその事にも触れませんでした。いかに企画が多く時間がないと言ってもあんまりなやり方です。NHKに遅れて同じ事をそのまま出すなら、実際に逮捕・尋問した警察署や担当の警察官に取材を申し込んで、NHK番組の後に何かあったのかというところまで他の内容を削ってでも出すべきだったのではないでしょうか。

ここまでの事件報道で一番気にかかるのは、警察の捜査は杜撰で冤罪の匂いを十分感じ取っていたにも関わらず、あえて裁判官の判断が出るまで自分からその事を言い出さなかった検察や担当検察官についても取材を申し込んでも良かったのではないでしょうか。どうせ「本件は裁判中のためコメントは差し控えます」という定番のコメントを出されることになると思うのですが、本人を直撃しテロップでその人の名前を出すくらいのことは公人であるのでしてもいいのではないか? と思えるのですが。もしかしたら警察や検察の報復を恐れているのという風にこんなやり方が続くなら考えてしまいそうです。

NHKの番組では、警察の違法捜査を訴える裁判を起こしても、9割が敗訴になる傾向にあるのだそうです。少なくともTBSでは紹介した土井さんが国家賠償について争っている裁判についてはきちんと取材して後追い報道して欲しいですし、他の局を含むマスコミ全体がもう少しきちんと後追い報道して欲しいというのが正直な気持ちです。

(番組データ)

1番だけが知っているSP全盲の世界No.1マジシャンが25歳天才日本人と対決! TBS
2019/03/18 21:00 ~ 2019/03/18 23:07 (127分)
【MC】 坂上忍/森泉
【ゲスト】 長嶋一茂、カンニング竹山
【パネラー】 北村晴男、黒沢かずこ(森三中)、吉村崇(平成ノブシコブシ)、ヨンア、小芝風花
【進行】 伊東楓(TBSアナウンサー)
【プロデューサー】谷沢美和・井上整・高宮望
【総合演出】竹永典弘

(番組内容)

▽世界NO.1マジシャンが再来日!衝撃の全盲マジシャン、リチャード・ターナー!
▽Mr.マリックが抜擢した日本人トップマジシャンと日米マジック頂上決戦!
▽目の前でカードが消える…25歳の天才日本人マジシャンテレビ初登場!
▽松井秀喜に禁断の質問…イチローのこと…唯一勝てなかったアノ男のこと
▽コンビニに行っただけで逮捕!?明日は我が身…北村弁護士激怒の衝撃冤罪事件!母の驚くべき行動が起こした大逆転裁判!


小学生が主人公なのに深夜放送では

今回紹介する「はじめまして諭吉くん」が何かほっこりしていていい雰囲気を出していただけに、あえてTBSの編成に文句を言いたくなりました。その日のゴールデンタイムの番組は「この差って何?」の拡大版で19時から22時までの180分でした。いつも番組改編期には長時間の特別番組が増えるのは仕方がないとは思うのですが、あえて「この差って何?」を半分の90分放送にすれば、8時半から10時までこの番組が流せたわけで、番組に出演した小学生達もリアルタイムで家族と一緒に番組を楽しめたと思うのですが、そんな願いを叶えてあげることはできなかったのか? と本気で思います。

この番組は、「はじめてのおつかい」(日本テレビ系)の発展版という感じで、小学生ならほとんどの子が触ったことも使ったこともない「1万円札」を番組でプレゼントされたら? という題名で作文を書いてもらい、採用された子にカメラが密着してその様子を伝えるというものです。この種の番組を中学生以上の子でやると、1万円では足りなかったり、番組自体が嘘くさくなる気もします。また、大人が10万円や100万円という単位を変えて行なっても、借金を返すために使ったりされると面白味は全くないので、小学生に1万円という選択は絶妙だと思います。だからこそ、小学生のお子さんが起きている時間に、家族団らんの中で見せてあげたかったと思うのです。

ただ、番組のコンセプトと内容は十分面白くて、今でも小学生にしては大金の1万円を全国の小学生がどのように使いたいと思うのかというのは見ていて興味が湧くとともに、自分のお金の使い方をも見直す契機になったような気がします。

傑作だったのが最初に出てきた、相撲を頑張る男子で1万円で家族で回転寿司を食べに行った際、会計を自分で払って家族におごりたいというものでした。ただ、家族がその子の想いを知ってか知らずかものすごく注文をするので、会計が1万円以内で収まるのか微妙な状況になり、普段の外食なら会計の事など全く気にせず食べるのに、とにかく他の家族が何をどのくらい食べるのかが気になり、自分はあまり食べずに家族の食べる姿を不安を感じながら見守るようになります。

小学生にとっては1万円というまだ持ったこともないお金であるものの、みんなでご飯を食べに行けばあっという間になくなってしまう、だから大切に使わないといけないということがわかってくれたのではないかと思いたいです。

基本的には自分のためというよりも家や両親のために何かしてあげたいという願いの採用率が高いように感じましたが、もし次回があるとしたらもっと破天荒な小学生に使われてみて、自分のした愚かな行動について本気で反省するような状況も見たい気もします。それと、継続して見てみたい子として、最後に出てきたユーチューバーを将来目指したいと思っている男の子が、1万円で「Go Pro」を買って隠し撮りをしたいというのですが、何を録りたいかというと、毎年クリスマスにプレゼントをもらうものの、本当にサンタクロースがやってきてプレゼントを持ってきてくれるのか、その一部始終を録って本当にサンタがいるかどうか確かめたいという、何とも現代的ながらかわいい願いでした。

最近の動画撮影ブームで、Go Proもどきのカメラが4千円くらいであり、アダプタとSDカードを一緒に買っても1万円でおつりが来るのにもびっくりしましたが、残念ながらカメラをセットした角度が悪くて誰が部屋に入ってきたのかも残った映像からは確認することはできませんでした(^^)。この辺のツメの甘さというのは番組のコンセプト通りで、思わず見ていて笑ってしまいました。

個人的には来年、購入したカメラで面白い動画を沢山撮る様子とともに、来年の年末に自分のところにプレゼントを持って来てくれるのは誰なのか、決定的瞬間をカメラに収める様子を継続して取材していただきたいです。もし地上波でできないならBSTBSに振り替えてもいいですが、その時には今回のように終了が午前1時40分などというど・深夜の番組でなく、少なくとも冬休みの小学生が起きていられる時間での放送をお願いしたいですね。

(番組データ)

はじめまして諭吉くん 【ぼくらが選んだ1万円の使い道】 TBS
12/27 (水) 0:10 ~ 1:40 (90分)
【ゲスト】 宇梶剛士 小倉優子 照英 陣内智則 内藤大助 藤本美貴
【進行】 江藤愛(TBSアナウンサー)

(番組内容)

電子マネーの普及で、子ども達はお金の価値が分からなくなっている!?番組では全国の小学生たちに、普段めったに手にすることのない1万円を託し、その使い方に密着する!

◎父ちゃんからもらった1万円を無くしてしまった母にこっそりあげたい ◎ご飯に行って「今日は僕が」と絶妙なタイミングで言いたい ◎お父さんとお母さんに結婚指輪を買ってあげたい ◎野球の試合をしてみたい ◎電子レンジがショートしたので新しいのを買いたい ◎家を買いたい ◎隠しカメラを買ってサンタクロースを撮りたい ◎かけっこがいつもビリの弟に1位の喜びを教えたい ◎船釣りをしてみたい