ネット実況までテレビが誘導する節操の無さ

まず、2018年の日本映画の話題作「カメラを止めるな!」をノーカットでこんなに早く放送してくれた日本テレビの英断には感謝します。製作費が少なくて宣伝もなかなかできない映画というのは人が見に来る可能性も少ないので、どうしても人の集まる首都圏や日本の主要都市でのロードショーに限られ、いわゆる田舎ではなかなか見ることができません。さらにインターネットでも映画を見ながら隠れて録画し、その内容をそのまま動画サイトにアップすれはたちまち「映画泥棒」で捕まってしまいますので、日本ではそんな危険をあえて犯す人はいないでしょうし、テレビで放送されるのを気長に待つしかない人達がいます。そんな中でこれだけ早いタイミングでテレビ放送したのは、これから説明するインターネットと連動した企画をからめたテレビ局の思惑があったからこその事でしょう。

マイナーながらその映画の名前は多くの人に知られている「カメラを止めるな!」ですが、今回の放送では劇場で見た人でも、今回が初見である人にも楽しめるように、副音声で出演者の方々がネタバレや撮影裏話をすることにより、主音声と副音声で見る人の層を分ける試みがされていました。仲間うちで見た人は、もう一回見る際にはいちいち解説を付けて見ることができるわけですから、多くの人が副音声で見たのではないかと思われます。

さらに、姑息だと思ったのは生放送と同時に様々なネットメディアで生配信もされたのです(細かい内容は「番組内容」の項を参照してください)。これは、ある程度ネットを楽しみながらテレビを見ている方にはおなじみだと思いますが、ネットメディアを使って多くの人とともに実況しながらテレビを見ることを楽しみにしている人への配慮ということになるでしょう。こうした「実況民」を増やすことは、テレビ局にとってはコマーシャルを含めて全ての内容を見てくれる人が増えるということになりますので、スポンサーに対しての大きなアピールになります。逆に録画で見る人が増えるとコマーシャルは飛ばされてしまう傾向になるので、スポンサーからの評価は低くなるでしょう。そういう事を避けるために、テレビ局が積極的にネットによる実況を煽る行為というのがここまで露骨に出た例というのは、今回がかなり顕著だったのではないでしょうか。

個人的にはこれはテレビ局の出した一つのネット対応の一つの方法だと思えますが、ネットと正面からぶつかることを避け、「ながら視聴」を推奨する方法というのは、ネットユーザーからすると当り前のことで、あえてテレビ局にとやかく誘導されるものではないと思う方もいるでしょう。逆に言うとそこまでテレビ局は追い詰められていて、本来、テレビ局とは何の関係もない(普通は広告会社やテレビ局などがその後のDVDリリース、さらにはテレビでの放映までを見越して実行委員会形式で作ることが多い)話題の映画を引っぱってくることで視聴率争いに勝ちたいのかと思ってしまいます。

その反面、4月からは2時間サスペンスのドラマ枠が消え、相変わらず残っているテレビドラマは今回の「カメラを止めるな!」とは正反対の大手事務所からのタレントを出演させることを目的にした(当然そうして起こった人気によって多くの企業とのタイアップを狙っているのでしょうが)ドラマ作りがメインになってしまっています。まさにテレビとそれを利用する芸能プロダクションにとって、そんな構造とは無縁の映画が放送され、自分達の今までやってきた矛盾が明らかになった放送でもあったよううな気がしてなりません。

ただ、そんなテレビの現状をあざ笑うかのように本作は大変面白く、無名の俳優にも思い入れ感が出てくるというのも面白いものです。現在の画像機器の進歩によって、一眼レフデジカメの動画機能でもそこそこの映像が録れ、さらに録音についても気軽に高音質のハンディタイプのレコーダーが入手できるので、今のテレビマンにも志さえあれば、人気俳優に依存せずアイデアだけでも話題作が作れる環境は整っています。今回の放送がそんな機運を盛り上げることに役立ってくれればこれからのテレビも面白くなると思うのですが。

(番組データ)

金曜ロードSHOW!「カメラを止めるな!」完全ノーカット早くもテレビ初放送 日本テレビ
2019/03/08 21:00 ~ 2019/03/08 23:04 (124分)
【監督・編集】上田慎一郎
【脚本】上田慎一郎
【音楽・作曲】鈴木伸宏&伊藤翔磨、永井カイル(ZIPANG ENTART)
【出演者】<日暮隆之>濱津隆之<日暮真央>真魚<日暮晴美>しゅはまはるみ<神谷和明>長屋和彰<細田学>細井学<山ノ内洋>市原洋<山越俊助>山崎俊太郎<古沢真一郎>大沢真一郎<笹原芳子>どんぐり(竹原芳子)<吉野美紀>吉田美紀<栗原綾奈>合田純奈<松浦早希>浅森咲希奈<松本逢花>秋山ゆずき<谷口智和>山口友和<藤丸拓哉>藤村拓矢<黒岡大吾>イワゴウサトシ ほか
【副音声解説進行】森圭介(日本テレビアナウンサー)

(番組内容)

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▼監督と出演者による生解説の様子は、番組公式Twitter、番組公式Facebook、日テレ公式youtube、ニコニコ生放送で生配信します!


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