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テレビは携帯電話の通信障害をどう伝えたか

2018年12月6日の午後から夕方にわたり、全国のソフトバンクの携帯電話を利用している人は、いきなり電波の状態を示すアンテナマークが消えて「圏外」の表示になったことでびっくりするだけでなく、仕事や待ち合わせというような行動自体にも支障が出た方が少なくなかったでしょう。しかし、外出先でこの障害を受けた人は、自分のスマホの調子が悪いのか、それともソフトバンクのシステムの不調なのか判断が付かなかったのではないかと思います。

テレビは、すでに多くの携帯電話が復旧した夜のニュースからこのシステム障害のニュースについて報道し、翌日の朝のワイドショーではソフトバンクの対応を糾弾するがごとくの報道をしている局もありましたが、こうした報道姿勢にちょっとどころか大きな違和感を持ったのは私だけではないはずです。

ソフトバンクから回線を借りている格安SIMでも同様に通信および通話ができない状態になりましたが、本来はそうした事を含めて「現在、ソフトバンク系の通話・通話が何らかの原因でできない状態になっています」というようなアナウンスがなぜ早いうちにできなかったのか、疑問に思います。

すでに日本では携帯電話・スマホを一人一台が持ってかなりの依存をしている状況からすれば、同日起きた東京の地下鉄都営浅草線がストップしているニュースと比べても、トラブルが及ぼす範囲においてははるかに重大で、番組時間内に字幕のニュース速報を出してもおかしくないくらいの情報だと思います。

都営浅草線は東京近郊の方だけに向けられた情報ですが、ソフトバンクの回線不具合は北海道から沖縄にまで影響が及んでいるので、誰かがたまたまテレビでその情報を目にすれば、今回のケースはソフトバンクユーザーがショップに駆け込む前にそれなりに周知されていたのではないかとも思えます。テレビのニュース速報で流される経済関係や芸能・スポーツ関係のニュースを見ていても、内容によってはそこまで速報を出して知らせる意味があるのかと思うこともあります。そうしたニユースよりも生活に直接関わるライフライン切断のニュースの方が告知すべき価値はあると思いますので、もし通信関係を含むライフライン不通の事実があった場合に、今後はしっかりとニュース速報を出せるように、必要であれば規約の変更をお願いするなどして、多くの人に知らせる必要があると個人的には思います。

改めていろんなサイトを検索してテレビのニュース速報の基準について調べてみたところ、絶対的な基準というものはないという事が現実らしいことがわかってきました。今回のケースは、単にソフトバンクの携帯電話がつながらないといっても本家のソフトバンクから何の発表もない時点では発表できないとは思いますが、ソフトバンクをはじめとする携帯電話会社については、トラブルが発生したことを認識した時点で、速やかにテレビ・ラジオ・新聞社などに連絡をし、その状況について報告した上で早く契約者に不具合のある情報を流すように連携する必要があることももちろん大切になるでしょう。

ただ、そうして情報を流しても、双方がソフトバンクのスマホ持ちという中で連絡を取り合うのは無理です。そのための手段としては、各携帯電話会社が災害時にサービスを開始する「災害用伝言ダイヤル」の開設以外方法はないと思います。そして、テレビはその使い方を連絡が付かなくて困っている契約者に向けて、利用方法をレクチャーするにはうってつけのメディアであることも確かなのです。今後、単なる事故ではないサイバーテロでの通信網断絶というシナリオも予想される中、スマホ・携帯電話が使えなくなったら速やかに伝言ダイヤルを使っての連絡方法を多くの人がすぐに使えるようにすることは、今後のテレビに課された宿題であるという気がするのです。


地方で起こる災害で被害報道の「ズレ」が出る問題

2018年6月18日の午前7時58分に大阪を震源とするマグニチュード6.1、最大震度6弱を記録した地震について、通常番組を中断して放送する手法が取られたもののしばらくは大きな被害のないライブカメラの映像が流れたこともあり、報道の最初のうちには震度は大きかったものの大丈夫だったのでは? というような誤解を生みやすい報道になってしまっていたように私には思えました。

というのも、朝8時というのは朝ドラのNHKは除いて全て朝のワイドショーを東京のキー局から放送していたため、最初には被害の状況を把握することすらできないような感じでした。さらに、現地から送られてくるヘリからの映像を見てもその場所はどこなのか司会者やコメンテーターにはわからず、「どこで何が起こっているか」ということが使わらないようなケースもありました。この場合はすぐにでも番組進行の主導権を今回なら大阪の放送局に渡してしばらくは伝えた方がいいように思えたのですが、なかなかそうもいかず、結果NHKから情報を得ようとした人が出るということになってしまいがちです。

しかしながらNHKも東京がイニシアチブを取って発信する状況には変わりないので、現地からの生の情報を得たいと思った場合は、もはやテレビ放送からは難しいのではないかと思えてしまいます。

今回、私自身は早いうちからウェザーニュース社の提供するYouTubeの専用チャンネルから流されている生のストリーミング配信による地震情報を見ていたのですが、こちらの方ではウェザーニュース会員が普段から天気の内容について写真付きで投稿することが当り前になっており、今回の地震の被害について知ったのは主にネットのウェザーニュースからの情報によるところが大きいです。

ネット上での報告というのは単に写真や動画の内容を紹介するだけのものになりがちで、総合的に被害がどうなっているのか知るためには、やはりそうして上がってきたネット上からの情報を瞬時に分析し、紹介したり現地からの報告を届けたりするため、やはりテレビ的な報道が必要です。今回の地震の場合でも早いうちからtwitterなどのSNSを分析し、直接情報発信者と連絡を取り、もし可能ならば電話(もしくはメッセージアプリの電話機能)で生の声を伝えてもらうような体制を取らなければ、日本のテレビ局はウェザーニュースにも劣るメディアと思われかねないようなことも今後には出てくるように思えます。

ネット局の仕組みを利用して早くから地震の被害のあった地方局に進行を進められたらどうなるかというのは、6月18日に大阪よみうりテレビの制作で放送された「情報ライブミヤネ屋」を見た方ならおわかりになると思います。地の利に明かるく、コメントもすぐに出るのはやはり地元に密着した情報発信を常に行なっているからこそで、例えばグルメ関連の取材などで多く訪れていて、テレビ局とお店が密に繋がっている地方局であればいざという時にも現地での生の声を直接伝えることも容易になるでしょう。

ですから、今後のテレビには主導権争いにこだわらず、現地からの報道をストレートに伝えられる局が優先して災害報道を行なった方がいいのではないかと思います。もしくは、アベマTVなどネット配信のニュースを配信しているところが地方局と独自に協定を結び、現地から衛星携帯電話を使ってでも配信できるような形が取れれば、地上波の情報よりも早く正確な情報を伝えられるのはネット放送の方だという認識に変わってくる可能性すら感じます。ですから改めて、災害報道についてはあくまで東京中心という仕組みから自由になり、状況に応じて地方局に任せるような方針を作ることもテレビにとっては大切なものになっていくのではないでしょうか。


テレビ局が関連するニュース報道について

テレビを含むマスコミは事件について取材をする側でありますが、場合によっては自社の社員が事件を起こすようなケースがあります。今回紹介する状況というのは少し毛色は違いますが、社員の行動が注目を浴びるような事が起こってしまった場合、どのように報道すべきなのか、改めて考えることになってしまいました。

簡単に今回の事についてその内容を紹介すると、まず財務次官がマスコミの女性記者にセクハラと思われる言動を行なっているという週刊誌報道があり、財務次官および財務省がその指摘について真っ向から否定をしたことで、真実はどこにあるのかという話になりました。さらに財務省は、調査のために被害を受けたという女性がいたら名乗り出て欲しいと文書で示し、これは女性の人権をないがしろにする行為ではないか? という疑問も出る中、当事者の財務次官は職を辞す事を決めたものの、事実関係については週刊誌を訴えて裁判で争うことを名言しました。

こうした決着の付け方には当の女性記者が憤りを感じたようで、彼女の属する会社であるテレビ朝日に相談の上で出した結論が、4月18日テレビ朝日の看板番組である「報道ステーション」終了前のタイミングで、この件について午前0時から記者会見を行なうことを告知しました。

私はたまたま報道ステーションを見ていたので、テレビ朝日・BS朝日・AbemaTVという関連の会社を含む媒体で記者会見を生中継すると思っていたのですが、普段重要な記者会見があると通常番組を潰してでも生中継することの多いAbemaTVでも通常通り、先立って放送された「報道ステーション」の再放送を行なっていただけでした。

他のテレビ局ではこの記者会見をニュースの中で報じた局もありまして、個人的にはまたいつものパターンかと思いました。自社の社員が関係する事件報道について、今回のテレビ朝日に限らず、自社の報道ではそこまでは深く掘り下げないのに対し、他のテレビ局ではその失態(社員が起こした事件報道の場合)をあげつらうかのように細かく報道することが多いと思います。ただ今回の場合は加害者ではなくセクハラの被害者という立場で、女性記者の話を聞いて一番知っているのがテレビ朝日なだけに、なぜ自分のテレビ局で生中継しないのか不思議に思いました。

もっとも、世間の一部において反体制的だというようなテレビ朝日ではあるものの、自由に誰でも番組が持ててバラエティに豊んだ内容があるAbemaTV自体「体制にまっこうから反発する」というようなポリシーを持って運用されているわけでもないという事実があります。例えば、幻冬舎の見城徹さんがホストをしている「徹の部屋」という番組が放送されており、その番組には安倍晋三首相が出演して自説を述べたりしているということもあるので、テレビ朝日の関係だから全て反体制的な体質であるということは決して言えないでしょう。むしろ体制側に近い勢力も大勢いるという風に考えるのが普通です。

恐らく、テレビ朝日社内においても、この問題について無視を決め込みたいと思っていた勢力が強かったのですぐに声を挙げられず、女性記者が意を決して会社に訴え、会社が記者会見で発表するに至った段階でも自局および系列局での生中継をしなかったのだと思われます。ただ翌日の「モーニングショー」で詳細に報告しているのは反対勢力の揺り戻しのように感じるものの、やはりこの件で問題になった財務省と財務次官と同じようにすぐに対応できなかったことは多くの事が明らかになった時点で考えると隠さずに早く自社の媒体で報道すべきだったように思います。

一般人がマスコミに対する不信感を抱く理由の一つとして、人を追求するときには強気の取材をするものの、自分の身内で何か起きると、身内をかばったり隠そうとしたりして、そんな態度を見せることがしばしばあることです。これはテレビ朝日に限った話ではなく、他の報道機関でも不祥事や事件の主役に自社がなってしまった時にどのような伝え方をするのかというところに、今後のテレビ報道がまともに見られるようになるかどうかがかかっているように思えるのです。