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計算された「ヘンなもの」を見抜けなかった?「ナニコレ珍百景」

今回紹介する2019年11月3日に放送された「ナニコレ珍百景」において、個人的な感想ではありますが、珍百景でも何でもないと思った投稿が珍百景として認定されました。この番組は過去にも書きましたが、街の中で埋もれた生活の面白さをあぶり出すものとして、極めて学術的であるという風に思っていたのですが、それもきちんとしたものを放送しないと、極めて悪質で不確かな情報の無責任な発信にもつながりかねません。ここでは、なぜ私が「珍百景でも何でもない」と思ったのかということをしっかりと説明させていただこうかと思います。

まず、番組を見ていない人のために、何の投稿について書いているかということを明らかにするため、テレビ朝日の放送内容の個別紹介のページから、今回話題にしたい一件についての説明を紹介します(一部、デリケートな部分についてはこちらの判断で伏せ字にしています)

(引用ここから)

■入りづらいセクシーなパン屋さん(埼玉県さいたま市北区)
★珍百景登録★
投稿:T.R.さん
ピンク色の外観に「○○」「△△」(注・この部分だけでも店舗を特定する材料になり有るので伏せ字化させていただきました)などセクシーなことばが書かれた、店頭販売のみの高級食パン専門店「○○○○○」(注・この部分には実際の店舗名が書かれていました)。
販売しているのはプレーンな食パン「△△」と、1日限定20個のレーズン食パン「□□」の2種類。(注・同様に商品名についても伏せ字にしました)
少しでもお店に興味を持ってもらえるようにパン屋さんらしくない店構えにしたそう。

(引用ここまで)

この文章を書いている2019年の時点ではいわゆる「高級食パン」がブームであり、テレビ東京系で放送されている「ガイアの夜明け」の2019年5月7日放送分でも「膨らむ!”食パン”戦国時代」と題して、全国で増殖する食パン専門店の裏側を取材していました。そこで出てきたのが、全国で素人でもノウハウを覚えれば開業して人気店になることも夢ではないと、素人も参入する様々な食パン専門店をプロデュースする「ジャパン ベーカリー マーケティング(JBM)」の岸本拓也社長という方です。

この方のプロデュースするお店は奇抜な外装と紙袋の装飾、そして思わず二度見してしまうような店名で人をひきつけ、高級食パンのみを持ち帰り用のみで売るというところで共通しています。私が住んでいる地域にも岸本氏がプロデュースしたお店があり、連日行列ができているそうですが、今回「ナニコレ珍百景」で紹介されたお店も岸本氏がプロデュースしたお店なのでは? と思って調べてみたらまさにそうで、2019年10月にオープンした、番組放送時の氏のプロデュースしたお店としては一番新しいお店ではないか(「ジャパン ベーカリー マーケティング(JBM)」のホームページの一番新しい開店情報としてお店の名前が紹介されていたことから)と思えました。

個人的には停滞した地域経済を活性化するため、こうしたお店が全国でオープンすることに不快感をもらすなんて想いは全くなく、おいしい食パンとしていただけるならいい事だと思っていますが、それはあくまで口コミやSNSでの反響を意図してプロデュースされた仕組みの中での「ヘンな店名」であり、そこがプロデュースする際の肝になっています。その点においては他の岸本氏のプロデュースした全国にあまたあるお店と何ら違うことはなく、なぜこのお店だけがテレビに出て「珍百景に登録」されなければならないのか、理解に苦しみます。

ここで、改めて引用されたネット情報に注目してみると、この情報を番組に投稿したのはT.R.さんという匿名の人物で、果たしてこの人がお店の関係者であるのかないのかは視聴者レベルではわからず、番組内は岸本氏の存在も明らかにしなかったため、テレビ局もグルになってお店の宣伝をしたのではないか? という疑念が生まれたというわけです。

もしこの番組が「ナニコレ珍百景」でなく、かの上岡龍太郎氏が出演していた当時の「探偵ナイトスクープ」だったらどうなっていたでしょうか。上岡氏はきちんとスタッフや担当の探偵に厳しい発言をしたはずです。少なくとも「ナニコレ?」と思ったものについてその理由も紹介するのが「ナニコレ珍百景」という番組の命だと思うのですが、このネタに限ってはそうした調査をした感じは画面から感じることはできず、そこにテレビ局と業者との癒着があったのではないのかなどという、実際にはそうした事が行なわれていなかったとしても、ある種の「疑惑」が生まれてしまうのです。

というか、私自身も今回の事例がテレビで出る中で、岸本氏のプロデュースしたお店ではないかと思ったのは単に「ガイアの夜明け」で見たことがあったからという理由だけで、特別に勉強したわけでも何でもありません。同様にこの事を知っていて今回のVTRを作ったスタッフがいたのか? という事については、テレビ製作を生業にしている人がこうした事実を知らないでいたことはないと考える方が普通だろうと思うのですが、私の考え方がおかしいのでしょうか。

話はポンポン飛んで申し訳ないのですが、こんな時代だからこそ、「探偵ナイトスクープ」の局長にダウンタウンの松本人志さんが就任されるというニュースを聞き、少なくとも、局長に就任後、なあなあの姿勢でいい加減なVTRを作ったスタッフと出演者に対しては、それこそかつての上岡龍太郎局長のように、ビシッとした一言を決めて視聴者に納得させて欲しいと期待します。それが今回のような適当な番組作りをしている人にも響いてくるのではないかと思うからです。

(番組データ)

ナニコレ珍百景 近所の人が風呂に入りにくる家&怪獣が鳴き叫ぶ住宅街SP テレビ朝日
2019/11/03 18:30 ~ 2019/11/03 19:58 (88分)
【MC】名倉潤・堀内健(ネプチューン)
【珍定委員長】原田泰造(ネプチューン)
【進行】森葉子(テレビ朝日アナウンサー)
【珍定ゲスト】ビビる大木・川島海荷
【ナレーター】奥田民義・広居バン

(番組内容)

★長崎・雲仙…130年前から他人が風呂に入りにくる民家
▼名古屋…小さな象が踊るように歩く商店街
▼岐阜・瑞穂…超巨大スーパー
▼神奈川・川崎…夕方になると怪獣が鳴き叫ぶ住宅街
▼さいたま市…ピンクの外装&セクシー看板…入りづらいエッチな○○店に大行列
▼長野・大町…ラブレターを売る自動販売機
▼青森・十和田…個人特定の交通安全看板「中野渡さんスピード落として」の謎
▼名古屋…住宅街の家具店に売値35億円の置物の謎
▼岐阜・美濃加茂…道端に「タバコ」と書かれた謎の石碑【家族じまん珍百景】カワイイ動物&おもしろ家族が大集合
★広島・大竹…散歩中に決まった場所で高速回転する犬
▼三重・津…犬の足に現れるタモリさん?
▼兵庫・明石…お医者さんもビックリ!カエルの顔の動きを忠実にマネする25歳の美人姉vs川島海荷も挑戦
▼三重・松阪…20年前から建物の屋上にずっといる黒ネコ?その正体は?
▼名古屋…木の精?人の顔に見える木を発見


政治家の「モノマネ」が芸人にできない時代

今回の内容は、「アメトーーク!」としたらかなりゆるい内容で、出演した皆さんが全員サンドウィッチマンについては骨抜きになったような悪い事は一切言わない状況だったのであまり評価としては高くないかも知れませんが、そんな内容だからこそ垣間見えた点がありました。

ゲストが全員サンドウィッチマンの「イエスマン」だからこそ、サンドウィッチマンのお二人がなかなかテレビでは見ることのないいわゆる「楽屋裏」の写真やモノマネが出てきたのですが、今回は伊達みきおさんがそんな自身に甘い状況の中で披露した「安倍晋三(安倍首相)氏のモノマネ」について思うところを書いていきたいと思います。

まず、伊達みきおさんの安倍首相のモノマネはそれほどクオリティが高くなく(^^;)、さらに内容も「どんな事を聞かれてもアメリカ大統領のトランプ氏に電話して一致した」という事を話すというワンパターンのもので、テレビで何度も披露するものではないのではないかと思えます。しかし、この時の首相のモノマネというものをテレビで見る機会がほとんどなくなった今見ていると、そんなモノマネでも結構面白く、「全部トランプ氏に相談して決める」という行動を揶揄しているわけではないにしても、それ以外ネタがないので同じ事を何回も何回も繰り返しているうちに微妙な面白さというのが生まれてくるから不思議です。

過去には政治家を揶揄して笑いを取るというのは、古くは三木鶏郎氏のラジオ「冗談音楽」がありまして、NHKが政治ネタを笑いにすることを禁止されるようなこともあったのですが、その後は時の権力をやり込めるというよりも、単にものすごい個性のある政治家の姿を真似することで、そのデフォルメされた姿がより一層広まることもあり、政治に全く関心のない人でも加藤茶さんが真似をする田中角栄氏とは本当にそんな喋り方をする人なのかとつい国会中継を見てしまうというような事もあったと思います。寄席ではモノマネではなく「声態模写」の芸と言われた桜井長一郎さんが様々な声色を使って「一人国会中継」をやるのが演芸番組で放送されたりされたことで、日本の当時の政治家の方々を身近に感じられるようになったということもありました。そして、今から考えると田中角栄・大平正芳・三木武夫・福田赳夫といった元首相の面々が文句をテレビに言うこともなく「声帯模写」の芸を殺さないで放置していてくれた事も重要な点であったような気がします。

現在の政治家については、小泉純一郎さんや麻生太郎さんがモノマネをされていたことがありましたが、これはそれだけ個性の強い声をしている政治家であったことの裏返しで、かえってその人物の大きさを感じる事ができると思う方もいらっしゃるでしょう。その後、小堺一機さんと清水ミチコさんの鈴木宗男氏と田中真紀子氏との対決なんてネタもありましたが、You Tubeで検索しても消されているのか出て来ないのが悲しいところです。

恐らく、今後真面目に安倍首相の国会答弁をデフォルメして笑いに使おうと思った人がいたとしてもテレビ局側からNGが出るような気もしますし、すでに時の首相でお笑いなんてことがご法度になっているのかも知れませんが、だからこそこの番組で安倍首相のモノマネを何回も何回も強要させる姿というのは何とも言えない面白さがあったのだと思えます。恐らくあれだけ東北の復興に力を尽くしているサンドウィッチマンのお二人にテレビ局も政治家方面も、今回は特別だと思わせることができれば、改めて文句も出ないと思われます。

ただ、同じ事をテレビでやるというのはなかなか難しいでしょうね(^^)。それでも、私なども半は忘れ掛けていた芸人による政治家のモノマネで笑いを取る行為というものがまだテレビの裏側では生きていたということを確認できたということだけでも今回の番組は貴重なものを見たという感じにさせられて、見る機会があって良かったと心から思えるものでした。実際に伊達みきおさんの安倍晋三氏のモノマネが見たい方は、テレビには出ない劇場でリクエストされると、もうお腹いっぱいと思えるくらいやってくれるのではないでしょうか。

(番組データ)

アメトーーク! サンドウィッチマン大好き芸人
2019/05/16 23:20 ~ 2019/05/17 00:20 (60分)テレビ朝日
【MC】雨上がり決死隊
【ゲスト】サンドウィッチマン/中川家&ナイツ&狩野英孝&トミドコロ&口笛なるお

(番組内容)

▽サンドを知り尽くしたメンバー
▽中川家&ナイツ&狩野
▽大ファン剛の盗撮写真
▽塙&伊達…即興漫才
▽礼二がダメ出し
▽後輩が暴露
▽テレビでは見せないウラの顔&モノマネ


思った事を包み隠さず言葉にする子どもの恐さと凄さ

まず、最初に苦言を呈しておきますが、この番組をなぜ今になって紹介するかと言いますと、私の住む静岡県では2月2日に放送されず4月30日午後の放送になったからです。改めて番組の内容を詳しく知りたいと思って番組のホームページにアクセスしたところMCのサンドウィッチマンと芦田愛菜さんの名前は出てきたものの、番組に出演した「博士ちゃん」の子どもたちの名前については一切紹介されていなかったというのはどういう事なのでしょうか。

今回出演したお子さんたちの中で、このブログで取り上げたいのは番組データにある(1)の美空ひばりをこよなく愛する超歌うま11歳少女だったのですが、この子がどういう方なのかということが、公式ページからでは調べられないというのでは、この番組をきっかけにして何か興味を持ったテレビを見ていたお子さんの可能性まで潰してしまうといったら言い過ぎでしょうか。テレビに出て顔と名前を出しているならば、せめて番組を紹介したページについてはきちんとしたデータを出すべきではないかと思うのです。

ただ、番組名とキーワードでさらに検索を掛けると、やはりテレビに出たり多くのコンテストに出て歌っている子だけに、他の子と比べると比較的簡単にその名前を見付けることができました。梅谷心愛さんというのが11才の少女の名前でした。テレビの「歌唱王」「カラオケバトル」といった素人の歌唱力を競う番組にも出演している、将来の歌手を目指している子です。ひいおばあちゃん(だったと思います)の影響で美空ひばりさんの歌に惚れ込み、当時の流行歌を聞き自分でも歌い、その歌唱力もかなりのものなのだそうです。

ちなみに私自身の美空ひばり体験というのは、もはや大御所としての存在だった時期からしか知らないため、身内の不祥事によって紅白歌合戦を辞退した時のイメージが長いこと強く、当時ニューミュージックと呼ばれるジャンルに勢力を縮小しつつあった「古くさい演歌歌手」という感じで考えていたので、その歌手としての凄さというのは大人になるまでわかりませんでした。ひばりさんの魅力というのは、心愛さんと同じくらいの小さな頃から歌手だけでなく女優としてもデビューし、その子どもに思えないほどの歌唱力をもって歌った様々な歌の魅力があります。

それこそ昔は「悲しい酒」のような曲調のものしか知らなかったのですが、それは大きなる認識不足で、それこそ素人がおいそれとカラオケで歌えない曲の数々に驚愕し、改めていろんな時代の曲を聞き直した私からすると、心愛さんが番組で紹介した「美空ひばりのすごい曲」として取り上げるのは何かのかちょっと興味が湧いたのでした。

結果として紹介されたのは「お祭りマンボ」「ひばりの佐渡情話」「人生一路」という、11才の少女から出てくるにはちょっと考えられないような曲の数々でした。さらに、美空ひばりの代表曲とされる「川の流れのように」に一切触れなかったというのも本当に美空ひばりの歌について良くわかっていると思われる事でした。

ただ誤解してほしくないのですがここで私は「川の流れのように」をディスっているわけではありません。この曲は、素人がカラオケでもそれなりに歌える曲で、ひばりさんが演歌に興味を持ちにくい若い人にも興味を持ってもらえるようにと、ひばりさんの最晩年に作られた曲であり、ひばりさんの代表曲の一つには違いありません。こちらで想像するに、すでに美空ひばりさんの多面性のある歌の魅力を知ってしまっている心愛さんにとって、ひばりさんが若者の側に寄せた曲である「川の流れのように」とは別の方向の「本当にすごいと思う曲」を出してきたのではないかと思われます。

ちなみに、著書に「美空ひばり」があり、生前には「ひばりウォッチャー」とも言われたルポライターの竹中労さんが選ぶ美空ひばりの曲のベストの中の一つとして挙げた曲こそ「ひばりの佐渡情話」だったのでした。さすがに心愛さんが竹中労さんの書いたものを詳しく読んだことを根拠に番組内で挙げたとは思えず、自分で美空ひばりさんの曲を歌うことによってその凄さを感じたからこそ「ひばりの佐渡情話」が出たのだと思いますし、相当美空ひばりさんの曲を聴き込んでいることが想像できました。

今の世の中はYou Tubeで過去の映像を簡単に見ることができるようになりましたし、昔の人・今の人に関係なく、子供の心で本当にすごいと思ったものが評価されるような事にこれからはなっていく可能性をこの番組を見て感じるとともに、とってつけたような知識では、感性の強い子には単にバカにされるだけだということも感じた次第なので(^^;)、私自身ももう少ししっかりとTV番組について書いて行こうと思い直しているところです。

(番組データ)

サンドウィッチマン&芦田愛菜のぶっつけ教室 博士ちゃん テレビ朝日
2019/02/02 14:55 ~ 2019/02/02 16:25 (90分)
【出演者】サンドウィッチマン 芦田愛菜

(番組内容)

大人顔負けの知識を持つ子ども博士こと“博士ちゃん”が サンドウィッチマン&芦田愛菜の質問に答えまくる 黒板も教科書も使わない“ぶっつけ本番”の即興授業! 単独ライブで客席の子どもをステージに上げて 即興トークを繰り広げているサンドウィッチマンが “博士ちゃん”をイジリながら教えを請う爆笑教室!
登場する博士ちゃんは…

(1)美空ひばりをこよなく愛する超歌うま11歳少女
(2)最年少で取得!世界遺産マイスター中学生
(3)マイナー野菜激アツプレゼン10歳男子
(4)日本一の金魚すくい兄弟


江頭2:50を天然記念物にしてはいけない

今回の「アメトーーク!」で江頭2:50さんが取り上げられたのは、もはや江頭さんのような芸人さんが絶滅の危機に見舞われていることの表われだということが言えるでしょう。同じテレビ朝日のバラエティで、一定の需要のもと呼ばれていた「ぷっスマ」や、フジテレビの「めちゃイケ」が終了し、今後江頭さんを生かすようなバラエティが消えていく中、業界関係者の視聴が多いと言われるアメトーーク!で江頭さんを取り上げることで、何とか地上波のテレビバラエティにその居場所を残してあげたい(自番組に出すだけでなく、他局の番組にオファーをお願いしたいなど)という番組スタッフの願いが込められているように見えます。

私自身が江頭さんの存在を知ったのはテレビではなく、彼が所属する大川興業総裁の大川豊さんが書いた「金なら返せん!」という本の中で、当時から今も借金が減っていないその大川さんからもその借金グセを問題視されていたのが江頭さんでした。当時住んでいた住まいで家賃を払うことができず、大家さんが催促に来た時に逃げられるように、木を使った骨組みまで付け地下に脱出用のトンネルを掘った話などは、それだけの労力を使って脱出用のトンネルを掘るならバイトをやってお金を返せばいいのにと思うところですが、これら様々なエピソードは「芸人・江頭2:50」の伝説となり、存在感を高めているところもあります。ただ、このような人が今後出てきたとしてもテレビで良く見る芸人としてデビューできるのかという疑問が出てきます。

というのも、今回の番組に出演した江頭さんを敬愛するお笑い芸人たちは、そのほとんどがお笑い養成所やスクールの主身です。今後もお笑い芸人になろうとする人は、いかにして面白くするかということ以上にいかにしてテレビの中で生きていくかというような、芸人にとっての限界を最初から決めるようなことを養成所内でレクチャーされ、そうした指示を守る人が合格になってテレビに出られる方向になってしまう可能性があります。番組内でもそうしてデビューしたと思われる「お笑い芸人」の面々は、次に何をするかわからない江頭さんの行動を諌めたり苦笑いするといったようなテレビ内での「常識」を強要するようなところが見えてしまい、テレビを見ている方は安心して見られる半面、そんな芸人だけだと視聴者が想像する以上の笑いはなかなか生まれないという状況になっていってしまう恐れも出てきます。

江頭さんとテレビとの関係は本当に特別で、多くの番組で問題を起こしながらも深夜とはいえ地上波で特別に放送してもらっているのですが、普通に芸人道を突き詰めて信念を曲げないと思えばまずはテレビという場から離れ、舞台のような自由にやれる所を選ぶのが普通です。事務所社長の大川豊さんはまさにそうした方法論を現在は取っているわけですが、江頭さんは今でもテレビに出ることにこだわった活動をしているように見えます。それは、本人がそこまで言わないかも知れませんが、同業者である今回共演した人を含むお笑い芸人に対するもどかしさについて、何とか状況を変えたいという想いからなのではないかと思えます。

ただ、こうした「江頭2:50」という人を前面に立ててその面白さを伝承しようとする番組は、今まさに消えようとする技術や芸能を後世に残すための記録としての意味しか見出せないような気もします。しかしそれではテレビは今以上に面白くなっていかないのではないでしょうか。今のお笑い界はほぼ吉本興業のコントロールの中にあり、それ以外のチャンネルから出て行けないような方向になることがないように、テレビ業界の方々も考えるきっかけにこの番組がなって欲しいという感じがするのです。

お笑いとは違う部分もありますが、今まで男性アイドルの世界を牛耳ってきた「ジャニーズ事務所」も、かつては事業所や所属タレントについて批判すら許されず、不祥事やスキャンダルがあってもテレビでは全く放送されなかった時代もありました。しかし数年前から所属タレントが自らの意志で事務所を離れたり、所属タレントが事件を起こして世間を騒がせたりした時には社長自らお詫びのコメントを出すなどかつての勢いは感じられず、事務所としても曲がり角に来ているように思います。そんな時代だからこそ、テレビの枠からはみ出るようなパフォーマンスを追求する江頭さんがあえて地上波のテレビの中で存在感を示そうとする中で、大手事務所の保護の下になく、「お笑い学校」に通わないでもテレビに居場所を持てる芸人さんが出現してきてくれることも期待したいところです。

(番組データ)

アメトーーク! 緊急!江頭2:50SP テレビ朝日
2018/05/03 23:15 ~ 2018/05/04 00:15 (60分)
【MC】雨上がり決死隊
【ゲスト】江頭2:50/出川哲朗&品川庄司・品川&原口あきまさ&FUJIWARA藤本&ロッチ中岡&アンガールズ田中

(番組内容)

▽江頭2:50で1時間▽数々の凄まじい伝説を振り返る▽どんな少年時代?▽食レポ&コメンテーターに挑戦▽江頭に聞きたい事▽熱湯風呂にも挑戦▽最後は伝説を残すぞ!


テレビに出てくる人の言葉遣いは大丈夫か

この番組は、東日本大震災の特別番組の直後に放送されたのですが、それまでの雰囲気とはかけ離れたバラエティーで、これはこれで考えさせられました。表現を抑えると「かかあ天下なご家庭」、かつて流行った言葉に置き換えると「鬼嫁のいるご家庭」に訪問し、女性の元で耐えるような生活を送っている男性の意見をテレビカメラが入ることによって聞いてもらおうという企画で、基本的には強い女性の姿を見て驚いたり男性に同情したり、パネリストの男女が様々な意見を面白おかしくまとめるという番組になるでしょうか。

この手の番組は過去にも他局で放送されていましたが、男性が暴力的で女性がその暴力に耐えているような場合は番組にならないのか、今回の2家族も女性の方が強いという設定でより強烈なご家庭にはプレゼントを持って再度訪問という形で女性のごきげんを取って番組は終了していました。

実際にテレビカメラを前にしたら普段の行動なり態度はそこまで出ないものですが、この番組に出てきた最初の「元ヤンキー」の女性は、もしカメラが入らずに男性とその中をとりもとうとして知らない人がいきなり入ってきたらどうなってしまうのか、心配してしまうほど「テレビ向き」のリアクションをされていました。元来、こうした状況を画に収めたかったのでしょうし、女性にやりこめられる男性という姿というのはそこまでテレビ局に抗議の電話やメールが来ないということなのかも知れませんが、この家庭での父親たる男性の訴えは、最初こそ「仕事で遅くなる時には洗濯物を取り込んで欲しい」とか、「食べ終わった食器を洗うのに、水に浸けておいて欲しい」というような当たり障りのないものでしたが、その後男性の口から出て来た言葉に、かなり深刻なものを感じました。

どういう事かというと、自分達の子供に女性の荒くて厳しい言葉遣いが移ってきたので、できれば普段使いの言葉については子供の前では気を付けて欲しいというのが最終的に男性の想いだったという事だったのです。子どもにとってはお父さんお母さんという形で見るとどうしてもお母さんの方とより多く接し(このご家庭の場合は男性が営業職で帰りが遅いのでなおさら)、母親である女性とのコミュニケーションが多くなる傾向にあります。就学前ならなおさら、さらに学校へ行く段階になってもこうした家庭内での言葉遣いが当り前のように育ってしまった場合、特に女のお子さんだったらこのケースでは男女の力関係的には女性の方がかなり荒い言葉遣いをしてしまっても許されると誤解する可能性が多くなります。

個人的にはご家庭によって父親と母親の間で力関係に差が出ることは当り前だと思いますが、ここまで極端になってしまうとそのお子さんが集団生活を送るようになって友人や先生、近所の人達とトラブルになった場合に解決をするための手段というのは当然自分の家族の中で見本とする人に求めるようになると思いますので、あくまでそのご家庭独自のものに過ぎない価値感の行使が、どこまで社会に受け入れられるのか心配になります。恐らくテレビで男性が主張したかったことは、特に営業職として自分で正しいと思っていることが通らずに、その想いを押し殺しても家族のために仕事を続けなければならないような事を自分の子が迫られた場合、今のまま大人になってしまって大丈夫なのかと思ったからテレビにまで出て伝えようとしたのではないかと思ってしまいました。

ただ、そのテレビではここまで紹介したような事に類する乱暴な言葉遣いをする番組があったりします。今回紹介した番組を含め、これはあくまでバラエティ番組で、番組を盛り上げるためのエッセンスが入っているかも知れないので、その点についてはお子さんと一緒に見ている場合にはその都度のフォローをしていけば、かえって番組の内容が反面教師のようになる可能性もあります。しかし、そう考えると同じバラエティとは言え、イデオロギーの対立で自説を訴えたいあまりに相手の人格まで攻撃するような論客の出演するニュース番組やニュース系バラエティというのは、その内容によっては大人が子どもに配慮して見せないということも必要になってくるのかなと思います。普通に考えて社会的地位の高い方が罵り合う姿というのは、大人への尊敬を失いかねないかも知れませんし。

よく夏休みの時期に小学生を国会に招いて子ども国会というイベントが開かれることがありますが、国会中継および地上波の政治バラエティの内容を小学生に授業の一環として見せても大丈夫なのか? という風にテレビを作る側の方が考えることが今後は必要になりのではないでしょうか。テレビに出演されたり国会に出たりする方々も、罵り合いでなく皮肉を効かせた「ディベート」で視聴者を唸らせていただきたいものです。

(番組データ)

夫はつらいよ ~鬼嫁直談判バラエティ 願い事を一つだけ聞いてください!~ テレビ朝日
2018/03/11 15:20 ~ 2018/03/11 16:30 (70分)
【スタジオ出演者】 ヒロミ 榊原郁恵 小峠英二(バイきんぐ) 平井理央
【ロケ出演者】
1組目 ~タレント応援団~ 飯尾和樹(ずん)、りゅうちぇる ~ご夫婦~ 河原夫婦(元ヤン鬼嫁)
2組目 ~タレント応援団~ 流れ星(瀧上・ちゅうえい) ~ご夫婦~ 尾崎夫婦(犬好き鬼嫁)

(番組内容)

鬼嫁に歯向かえない気弱な夫が、タレント応援団の後押しを受けて勇気を振り絞って願い事を妻に直談判するバラエティ「夫はつらいよ」。今回、世の気弱夫の背中を押すのは、先日おめでた発表をしたばかりのりゅうちぇる、愛妻家の飯尾和樹(ずん)の2人と、コンビ共に既婚者の流れ星。また鬼嫁お宅ロケの様子を既婚者であるヒロミ&榊原郁恵&平井理央、そして独身者のバイきんぐ小峠がスタジオから見守り鬼嫁度を判定!!

最初の依頼は、元ヤン鬼嫁を持つ32歳の夫から。つらいと思っているのは、「嫁が怖すぎて家族全員がビビってしまっている」こと。元ヤン鬼嫁の口撃にノックアウト寸前の夫をりゅうちぇるとずん飯尾は助けながらも願い事を直談判させることができるのか!?2組目の依頼者は「嫁が勝手に飼い始めた犬によって家庭崩壊の危機を迎えている」26歳の夫から。果たして犬より愛されていない夫から溢れ出る直談判したい切なる願いとは!?


時代は「サバイバル」を欲しているか

☆例年テレビ朝日の恒例になりつつある「無人島0円生活」ですが、今年は何といっても火曜日の報道ステーション終わりのバラエティ枠としてゴールデンに昇格した「中居正広のミになる図書館」の代わりの新番組「陸海空 地球征服するなんて」の中の「部族アース」のテレ朝社員のナスDこと友寄隆英氏をメインにしたコーナーが大ブレークしたことで、今回のよゐこさんを含めたタレントの存在感が全て食われてしまった印象があります。

そもそもは無人島0円生活という企画をスタートさせるにあたり、タレントに危険がないのかシミュレーションする必要があり(番組以外にもお仕事のあるタレントに無茶をさせて怪我をさせたら責任問題になるので)、担当の友寄隆英氏が無人島生活でカメラが回っていない中で無人島生活し、モリを使って素潜りで漁をすることもよゐこの濱口優さんと一緒に行ないつつ、ぎりぎりのところで臨場感が出るロケをサポートする裏方であり前面に出てくることはありませんでした。

その後、タレントにU字工事を起用してアマゾンに潜入するロケではタレントのU字工事さんと分かれて多くの部族を取材しようと潜入いしていく中で、本来は入れ墨用に使う果実の液を顔を含む体にすり込んでしまい(現地の人に騙されたという事ですが、今のブレイクを考えると、もしかしたら確信犯かとも疑ってしまいます)現地の人も驚くぐらい人間離れした黒い人になってしまった友寄氏は「ナスD(ディレクター)」と番組内で呼ばれることで人気が爆発しました。テレビ朝日の社員ということで広くは有名にはなりませんでしたが、個人的には十分2017年に印象に残った方の一人だと思っています。

今回改めて黒の染料が落ちた友寄氏の無人島での生活を見ましたが、中味を確かめもせず飲んだり食べたりする行動は相変わらずでしたが、2泊3日の生活を行なう中でよゐこさんが自分達に何が求められているかを感じた上で、まずは魚獲り優先で寝床は持って行ったブルーシートで簡易的に作っただけなのに対し、友寄氏はかなり本格的な住居を建てるための下草刈りから始めました。

何しろ、持って行くものに制限を設けたものの中で、ナタ・ノコギリ・麻紐・乾いた竹(火付け用)のような工具を優先し、よゐこさんのように調味料などは全く持っていかないのもすごいと思いましたが、竹や流木を利用して、さらに極力自然のものを使おうとせっかく持って来た麻紐を使わずにツルを利用して木材を苦戦しながら固定し、アマゾンの部族が作るような床がありベッドもある屋根付きの(屋根は草を束ねて使用)家を自作してしまったのには驚きました。

実は友寄氏の2泊3日の生活は最初の一日を紹介したのみで対決も勝ちになってしまったため、残りの2日間は年明けに改めて放送することになったので、無人島から帰る時に自然に還すためにまた壊したのかどうかはわかりませんが、少なくとも壊すのが惜しくなるほどの出来ばえでした。

私自身、一人でこんな家を作る人を見たこともありませんし、私自身が小学生の頃に無中になって読んだ「冒険手帳」の中でしか見たことがない気もしました(写真の本は後日古本屋さんで見付けたオリジナルの「冒険手帳」です)。

この本の中には山や海での狩りの仕方や調理の仕方、食べられる昆虫など当時もネタとしか思えないサバイバル術が載っていたのですが、今回の無人島での友寄氏のウンチクを伴った家作りや漁について考えてみると、この「冒険手帳」の面白さとの共通性を感じるのです。この本の初版は昭和47年と今から45年前のものですが、すでにこの頃からこんな本が必要だと思われるほど、当時の子供たちには冒険心が欠けていると言われていたのだろうと思います。
今の世の中は、スマホを一日手離すだけでも生きていけないような人が多い中で、ライターも使わずに木の摩擦で火を起こしたり、生活に必要な道具を全て作ってしまうという友寄氏のバイタリティは、単に面白いというだけでなく自分達ができないことでも簡単にやれてしまう憧れでもあるような気がします。

今年はまだそうした友寄氏の片鱗は全て出たわけではないと思うので、今後テレビ朝日の社員という立場でどのくらいテレビに出るのかはわかりませんが、こうなったら1ヶ月単位でのサバイバル生活を追う様子を追いかけるような事をやれば、さらに見る人は増えるのではないかと思います。

最後に、途中友寄氏はテレビ朝日のコンプライアンス部門から生き物を生で食べることについてクレームが付いたと言いつつ食べていましたが、今回の番組では無人島で承諾を得ているといっても一つだけ見過ごせない事がありました。それが、調理をする際に火を起こすかまどを作る時に、直に薪を置いて火を起こしていた事です。昔の飯盒炊爨では川原に番組のような石をかためてかまどを作ってごはんを炊いてカレーを作って食べたりしたものですが、今ではキャンプOKなところでも直火で焚き火をすることは、片付けをしないで帰ってしまう人がいることで問題になり、多くのキャンプ場では芝生養生のためでもあるので直火が禁止されている所がほんんどになっています。

今では焚き火台を利用して地面に焚き火の跡が残らないように片付けて帰ることが当り前になっていると思うので、今回のような野外調理の様子をテレビのゴールデンで流してしまうと、テレビと同じことをやろうと思って実行した人が、テレビに映らない片付けの様子までは真似ずに焚き火の後をそのままにして帰ったり、ゴミを残して帰ってしまうなどするケースも出てくるかも知れず、それこそコンプライアンス的にはまずいのではないかと思います。そういう観点からすると、遊びに行って家を建てても、帰りにはきちんと壊して自然のままの状態に戻すかどうかという興味もあるので、来年の友寄氏の無人島生活の続きを紹介する番組も見てその点も確かめたいなと思っています。

(番組データ)

よゐこの無人島0円生活2017 元祖無人島芸人・よゐこvs破天荒のナスD テレビ朝日
2017/12/29 18:30 ~ 2017/12/29 23:10 (280分)
よゐこ ナスD(テレビ朝日ディレクター)

(番組内容)

よゐこと破天荒のナスDが、真冬の無人島で2泊3日生活。「どちらが無人島で生き残れるか」スペシャリストと審査員の判定で決定します。奇跡のハプニング続々…。

風に吹かれ、雨に濡れる無人島生活も15年目。よゐこ濱口が“最近ナスDは調子に乗っている”と、対戦相手に指名した宿命の対決!よゐこと10年以上一緒に番組をやってきたナスD。たった1人で挑むナスDだが、限界までやってやると上陸から衝撃行動に…。よゐこはスタートからハプニング、上陸から大混乱へ…。いったいどうなる真冬の無人島対決。


「ナニコレ珍百景」は単に面白いバラエティでなく「教養番組」でもある

唐突な話ですが、この文章を読んでいる方の中で「トマソン」という言葉の意味(語源は人名ですがここで語る内容は違うもの)をご存知の方はいらっしゃるでしょうか。この言葉は、ちくま文庫で「超芸術トマソン」という題名で1980年代に赤瀬川原平氏の雑誌「写真時代」で連載された時の内容がまとまっているので、手に取った方もいるかと思います。

恐らく同時代を生きていた人でなければ、よほどサブカルチャーに詳しい人でなければ知らないと思いますが、この「トマソン」とは、折しもビートルズのジョン・レノンが暗殺された日のスポーツ紙に事件と同時に掲載されたことのある、日本のプロ野球の中でも当時から球界の盟主と言われた読売巨人軍にロサンゼルス・ドジャースから現役大リーガーがやって来ると大いに期待されたゲーリー・トマソン(Gary Thomasson)氏の事です。トマソン氏はメジャーリーグでのキャリアが11シーズンあり、当時の年齢は30才と日本のプロ野球での活躍が大いに期待できる偉大な経歴を引っさげて読売巨人軍の門を叩いたのです。

その年の読売巨人軍は王貞治さんが引退した後だったので、その代わりとなる活躍をも期待されて読売が大金を払って日本に呼んだのですが、81年の来日一年目のシーズンには年間132の三振を喫し、「舶来扇風機」とテレビ中継でも揶揄されたメジャーリーグから日本プロ野球への移籍の失敗例として記憶されている方も少しはいるかと思います。ただ、三振数としては日本記録を持つのはシーズン204も三振した93年の近鉄(当時)・ブライアントで、数としてはそこまで多くありません。来日初年度のトマソンの他の打撃成績としては打率.261、ホームランは20本とそこまで悪くないとデータだけを見れば思います(120試合出場)。

しかし、当時のテレビのイメージを固定させる威力というのはものすごいもので、多くの人のイメージではトマソンが豪快に三振して「トマソン三振!」と連呼するアナウンサーの声を覚えている方も少なくないでしょう。これは、当時のプロ野球のテレビ中継は読売巨人軍の試合を全試合、NHKを含む民放が持ち回りでゴールデンタイムに中継していたので、特に鳴り物入りでやってきたメジャーリーガーのトマソンがより注目されることになり、多くの人の目が集中したところに肝心な所で全くタイミングの合わない三振を操り返す姿を試合だけでなくスボーツニュースでも多くの人が見ていたことにより、「トマソン=役立たず」という意識が多くの日本人の中に宿ってしまったというところが実際のところあったのです。そう考えると当時のテレビとプロ野球の甘い関係がなければ、今でも「トマソン」という言葉が独り歩きしていることもなかったわけで、改めてテレビで取り上げられることの多かった人気球団を選んでしまったトマソン氏が可哀想だと思わざるを得ません。

話を「超芸術」の「トマソン」の話に戻しますが、こうした「トマソン」の役立たず感を赤瀬川さんも知っている中で、彼が路上を観察し、面白いものを写真に収めている中で、道路や家が変更や改築を繰り返す中で、まるで芸術のオブジェのように何の役に立っているかわからないものに変化してしまった現象に「トマソン」と赤瀬川さんが命名したのでした。以降、「路上観察学会」なる団体もできたりして、ふと日常生活の中では見逃してしまう町の風景に埋没しているような「変な」ものを見付ける事が流行となりました。そしてこうした超芸術というものは、常に芸術を理解しない人から見れば、早く壊して更地にしたり建て直したりした方がいいと思われる存在として危ういものであることも確かだったのです。

そうした「超芸術トマソン」を許容し楽しむ人たちの中では、別の取り組みで「ヘンなもの」を世に出した方々もいました。この時期に多くの「街のヘンなもの」や「雜誌・新聞の誤植」などを写真に撮って送ると、雑誌に掲載してくれる雑誌「宝島」の中のコーナー「VOW」です。その単行本は今でもブックオフに行けば、そうした街のヘンなものが満載の、雑誌の面白い投稿をまとめた単行本を見付けることができるはずです。

このVOWの単行本に添えられた文章で印象的だったものがあります。こういった「街のヘンなもの」として集められたものこそ教科書に載る歴史とは違いますが、その時代の空気がわかる「物証」になり得ると書かれていて、当時はそんなものかと思いながら見ていたのですが、今でいう「昭和」の遺構というものは現在取り壊されたり撤去されてしまってないものを含め、「VOW」に収められているものの中にも沢山あると思うようになりました。

同じような現在までに残る時代に打ち捨てられた遺物の中には、今になってその作者とともに再評価されつつある「狛犬」や、最近はカードにもプレミアが付くと言われている「マンホールの蓋」のようなものもありますが、これらはテレビ番組に取り上げられる場合はNHKあたりが「教養番組」として取り上げることでそれらしい「文化遺産」だと多くの人が納得するようなところもありますが、そうでない「時代のしょうもない遺構」や「ヘンな人の話」を民放がお笑い系の番組を作る中で紹介したところでなかなかアーカイブされるべき番組だという風には思われないところに、私たちが少し前の時代の「空気」を将来に残す難しさがあると言えます。

レギュラー放送としては終わってしまったものの、番組改編期にスペシャル版として放送されることの多いこの「ナニコレ珍百景」は、「超芸術トマソン」や「VOW」の流れを継承する街のしょうもないものを多くの人が見ているテレビで紹介してくれる、ある意味大変に稀有な番組で、笑いながら見る中でもその内容をかみしめて見ると新たな発見になるかも知れません。今の時代は雑誌や単行本で発信しても多くの人の目に触れるものでもありませんし、VOWは現在ウェブサイトで細々と運営されているものの、昔の事を知っている人以外にはなかなか輪が広がらないというのが正直なところです。それを、テレビのゴールデンタイムで放送してくれるのですから、こうした仕事の意義をテレビ朝日や制作会社が忘れないで続けようと思ってくれている証だと思うので、素直に嬉しいです。

ちなみに、今回の放送で見た「トマソン」らしき物体として人工物が変化して「珍百景」となったものに、とある喫茶店の看板として作られた大きなコアラのオブジェがありました。このオブジェは先代の店主が約250万円を出して作ったのだそうですが、時間の経過とともに世にも奇妙で恐いコアラの姿になってしまっていました。今の店主の方はこのオブジェを撤去する予定はないようですが、そもそも今の店主がお店をたたんだら地域においてはこのコアラのオブジェは存在することができなくなるでしょう。その時点でコアラの「超芸術」としての生命は途切れるということになります。

その時がいつ来るのかはわからないながら、今回の放送で全国的に不気味なコアラのオブジェが流れたことで、物としては残らなくても映像としては残すことができたということも言えるわけです。今までの番組では個人の努力で作ったもの系の珍百景も多くありましたが、すでに番組のアーカイブスを見て訪れてもその場からなくなってしまっている事もかなりあるのではないかと思います。しかし、その時にそこにあり、さらにその珍百景があるところにどんな人がいたのかということを番組を見て思い出すことはできます。

実は珍百景は有料のCSチャンネルの「テレ朝チャンネル」で「激レア 珍百景」として放送されているのですが、やはり見る人が限られるCSと地上波は違うわけですから、今後もスペシャルでの番組は続けて欲しいですし、見ている方々も単に珍百景を見て笑うだけでなく、その周辺に思いをめぐらしたり、近くだったら実際に行ってみて改めてテレビで誇張された部分を感じてみるのも研究みたいで面白くなると思います。

(番組データ)

ナニコレ珍百景 2時間スペシャル テレビ朝日
12/6 (水) 19:00 ~ 20:54
【MC】名倉潤・堀内健(ネプチューン)
【珍定委員長】原田泰造(ネプチューン)
【進行】森葉子(テレビ朝日アナウンサー)
【珍定ゲスト】石坂浩二、岡江久美子、サンドウィッチマン(伊達みきお・富澤たけし)、高橋みなみ
【ロケ出演】杉村太蔵(珍百景党は岐阜へ…地獄うどん&怪しすぎる森の通学路)、もえのあずき(青森で巨大すぎるパンにチャレンジ)

(番組内容)

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