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バラエティと高校講座の垣根を取り払う「滝沢カレン砲」

まずは番組データの出演者の顔ぶれを見てもらうと、授業形式の国語講座とは言ってもかなりくだけていることがわかるでしょう。何と言ってもコンセプトが、民放のバラエティ番組に登場してどこまでが真面目なのかふざけているのかがわかりかねる日本語のよくわからない生徒役の滝沢カレンさんを中心にして、教えるのはこむずかしい学者の先生ではなく、クイズ番組にも気軽に出演するくだけた印象のある金田一秀穂先生(滝沢カレンさんの第一印象は「悪い人ではない」とのこと)。そして、本人をそのまま出すと学級感が薄れるかも知れないのでオウムの声だけの出演となったのか、滝沢カレンさんのボケに突っ込む力と、滝沢カレンさんが何を言っているかわからない状況でもその意を拾って伝える力は十分で、番組内でいい味を出しているナイツの土屋伸行さんという鉄壁の布陣で番組は進行していきます。

同じようなタレントが出演するNHK高校講座と比べてこの番組はとにかく対象を低く、しかも深いところまでという(滝沢カレンさんのリアクションが高度に切り返してくる場合もあるため)なかなか莫迦にしたものではない番組に仕上がっているように感じます。

私自身、たまたま時間が空いている時にツイッターを見ていたら番組開始直前にこの番組のツイートを見てあわてて見たのですが、継続して見ることによってあたかも民放のバラエティ番組のノリを持ちながらも、きちんと日本語の使い方の基本が理解できるような構成になっています。このへんはさすがNHK教育の番組といったところです。

もっとも、番組自体に台本というものがあり、滝沢カレンさんもその台本をないがしろにせず、そのまま台本通りにやっているということが予想されるので、民放のバラエティと比べると滝沢さんの発言がやけに優等生らしくスラスラ話されることに違和感を感じることもありますが、バラエティの滝沢カレンさんを見て、この子は国語ができなそうと小馬鹿にするようなお子さんがいらした場合、改めてこの番組を録画しておいたものを見せながら、お子さんに金日一先生が教えた内容をフォローしていくだけでも無意識のうちにお子さんの国語の力が付いていくのではないかと思えます。

また、それこそ番組名の「あらためまして ベーシック国語」という題名の通り、大人や海外から日本人来て住んでいる人が改めて自己流で学習したことの確認に使うというのもいいでしょう。特にテレビのバラエティ好きの人だったら楽しく見ているだけでも、今さら大人が聞けない事がわかる番組になっていると思います。

ただ、一つ気がかりなのは、この番組を通じて滝沢カレンさんの国語力が上がっていくと、この番組自体の面白さも薄れてしまうかも知れず、フジテレビの「全力!脱力タイムズ」でのナレーションがすらすら読めてしまって面白味がなくなってしまうのではないかという事がありますね。ただ、無知そのものを売りにして「笑われる」タレントとして生きながらえるよりも、国語の正しい使い方を十分わかった上で本当にボケられる技を身に付けてくれればその方が面白いですし、もしかしたら土屋さんと二人でナイツの漫才をそのままできるくらいになるかも知れません。

個人的にはナイツの2人と滝沢カレンさんの3人で営業に出られるくらい天然でないボケを連発できるしゃべりの力をこの番組を通じて身に付けてくれれば、テレビはさらに面白くなりそうな感じがします。

(番組データ)

NHK高校講座 あらためまして ベーシック国語「印象を深める表現」NHKEテレ1
12/12 (火) 14:00 ~ 14:10 (10分)
【出演】杏林大学教授…金田一秀穂,滝沢カレン,
【声】土屋伸之/ナイツ(オウム)
【語り】小林ゆう

(番組内容)

国語の基本をあらためて学ぶ、講座バラエティー。滝沢カレン(生徒役)と金田一秀穂(先生役)、そして謎のオウム(声:ナイツ土屋伸之)が教室で国語の授業を行う。今回のテーマは「印象を深める表現」。倒置法、対句法、などを使うと、どのような効果があるのか、を学ぶ。最後に金田一先生が紹介したのが「一語文」だが、果たして一語文とは?