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世は変わっても人の心の葛藤は変わらない?

ここ数日インフルエンザで休んでいたのですが(^^;)、基本的にやることがないのでテレビばかり見ていました。なかなかここで紹介するような番組は見ていなかったのですが、そんな中でつい面白くて見てしまったのがNHKEテレで1月12日に放送された「平成ネット史」の2回シリーズでした。

この番組はネットについて番組の呼んだパネリストがその時代のネットの状況をVTRや実際に当時のハードを見ながら語り合うというかなりゆるい番組ではありましたが、特にインターネット以前からウィンドウズ95発売、インターネットの普及というところが前半で、後半は主にモバイルインターネットの歴史についてやったのですが、各々60分ではさすがにあまりにも時間が足らずに終了という感じでした。

ネットのスタートから「パソコン通信」→「インターネット」と利用者の流れが変わる中で、まずやってきたのがテキスト中心の「個人ホームページ」→「ブログ」→「動画・SNS」と人々の嗜好も変わってくるわけですが、これを進化と呼ぶべきなのかどうかということも、現在の状況を考えるとちょっと考えてしまうところがあります。

パソコン通信時代からインターネット黎明期というのはパソコンを購入し、電話回線を使って通信サービスを利用できるまでのスキルとコスト支払いの能力がないと参加できないところがあり、今から思うとそこまで社会的な影響というものはなく、限られた人の中で盛り上がっているに過ぎない部分も多分にありました。そうなると、バトル・炎上のような事が起こってもそれがニュースで報道されるようなところまで行くことは少なく、ネット上での「事件」を扱った書物が販売されていたりしたものです。

当時のネット上の人間関係というのはなかなか面白いものでしたが、基本的には実際に会うことができる人でないとわからないものの、年代的には大学生から30代くらいというのが私が実際にお会いした中ではメインユーザーで、たまに高齢な方や小学生がネット上のコミュニケーションに参加していたという話もありますが、そうした年齢層から外れた人たちは輪の中に入るのには勇気が必要だったのではないかと思います。

今では考えられませんが、相手を見たこともないのに一対一で会うということもあった一方、きちんとしたネット上の集まりの中で幹事さんを決めてオフ会をするというのが通例でした。私が参加していたのは当然後者の方で(^^;)、そちらの方は基本的に参加しているのが大人同士なため、あくまで会うことについてのリスクについては自己責任でオフ会も開かれていたということなのですが、今では大人を騙って若年層がやってきてしまったらその管理に責任が持てないというのが正直なところでしょう。そういう意味では、あまり難しいことを考えなくてもネットの向こう側にいる人との交流をネット上でも現実の社会でもできた時代があったということになります。

その際思ったことは、いわゆる人物の評価として「ネット上の性格」と「現実社会での性格」というものがとんでもなく違う人というのが存在するということです。文字の書き込みだけを見るとやけに挑戦的でこっちに喧嘩でも売っているのかと思うようなネット上の人格でも、実際に会ってみると全く持って穏やかで話もはずまないような性格をしているような人に会った時、カルチャーショックを受けるとともに、これが文字だけの議論における限界だと思いました。

さらに様々な経験をした中で、実際に会ってみてその人のネットと現実社会でのコミュニティの取り方を計った上でないと、親密なネット上での意見交換というのは難しいと思いましたし、顔も名前も性別も年齢もわからない人からいきなり議論をふっかけられたとしても、なかなか本質的な議論まで進むことは難しいことも実感しました。もちろん、ネットの利便性や影響力について批判するものではありませんが、最近のツールで言えばTwitterの制限された文字数で自分の考えを全て伝えることも大変なので、私自身は積極的にTwitterで呟かず、「平成ネット史」では一昔前のコミュニケーションツールであるブログで発信しているようなところもあるのかも知れません。

番組では、ネットの速度についても少し話題になりました。パソコン通信時には文字だけのやり取りのため一般の電話回線での最高が56kbpsで、当時一ヶ月38,000円もしたネット専用線でも128kbpsに過ぎませんでした。ちなみにこの「128kbps」というのは現在の大手携帯キャリアの低速規制時の最大スピードです。

それが、現在固定回線ではなく日本国内どこでも通える移動回線で最大200kbpsが使える最低金額はMVNOの「ロケットモバイル」の「神プラン」で、月額税抜298円です(^^;)。この回線は実は今契約していて、インターネットラジオや音楽のストリーミング配信を聞き流すにはこの速度で現代でも十分なので、いかに短期間でインターネットが手の中に入り、さらに安く高速で使えるようになったことがわかると思います。

ただし、こうした「ネット史」を見ながら今という時代を見ていくと、いかに技術革新が行なわれ5Gの時代になったとしても、根本的な人間同士の葛藤や妬み、争いというところは減るどころかどんどんエスカレートする状況になっているのは残念なことです。それは、インターネットがすでに一部の特権階級の人のものではなく、子供のお小遣い程度の料金でも利用できてしまうことから利用者が一般化したことで、実生活では何も言えなくても、ネットで匿名による発信をすることにより「ネット上での性格」というものが膨らんでしまい、ネットと現実との境目が見えなくなってしまっている人が増えてきているのではないかと思えるところでもあります。

自分自身でも気を付けてはいますが、短文で言い切るような形での発信というのは、言い方がきつく感じられますし、受け手に誤解を与える可能性も高くなります。時間を掛けて話し合えばわかり合えるような人との間でも、そんなネット上での発言についてツッコミを入れられれば場合によってはトラブルが発生し、簡単に炎上しやすくなる傾向はあるでしょう。テレビで報じられているあんなこともこんなことも、深夜一人で思い付いたようなことを推敲しないで出してしまうとトラブルの種になることはパソコン通信の昔から変わらない事だと思っています。テレビでも、ぜひ現実社会のそれとは乖離することのある「ネット上の人格」の傾向について、広くネットユーザーについて知ってもらえる機会を設けていただければと思うところです。

(番組データ)

平成ネット史(仮)▽懐かしい映像と貴重なインタビューでひもとく!歴史秘話
2019/01/12 14:00 ~ 2019/01/12 15:00 (60分)NHKEテレ
【司会】恵俊彰,是永千恵,
【出演】池田美優,宇野常寛,落合陽一,堀江貴文,ヒャダイン,眞鍋かをり,森永真弓,【VTR出演】戀塚昭彦,健,川上量生,佐々木渉,
【語り】緒方恵美,梶裕貴

平成ネット史(仮)後編▽貴重な映像と驚きの秘話でひもとくモバイル&SNS歴史
2019/01/12 15:00 ~ 2019/01/12 16:00 (60分)NHKEテレ
【司会】恵俊彰,是永千恵ほか
【出演】池田美優,宇野常寛,落合陽一,堀江貴文,ヒャダイン,眞鍋かをり,森永真弓,【VTR出演】夏野剛,栗田穣崇,笠原健治,津田大介,石森大貴,及川卓也,舛田淳,

(番組内容)

【前編】

平成は、インターネットの普及により私たちの暮らしが大きく変化した時代だった。その変遷をパソコン通信、ウィンドウズ95、2ちゃんねる、フラッシュアニメやニコニコ動画まで、パソコンで起こった変化を中心に多彩なスタジオゲストとともに語りつくす!2ちゃんねる閉鎖を食い止めた伝説のプログラマーや、当時大人気だったテキストサイト侍魂の作者・健さんのインタビューなど、当時の貴重な映像とともに紹介する!

【後編】

後編は、モバイルを中心に日本のネット史を振り返る。さまざまな世界初を生み出してきた日本のモバイルネットの歴史を、インタビューと懐かしい映像や端末でひもとく。またiPhone上陸の裏にある秘話や、その革新性を堀江さんらゲストが語りつくす。さらに日本のSNSの変遷に隠された背景を、数々の関係者の証言でたどるとともに、炎上やフェイクニュースなど現在の問題もスタジオの論客たちが語りつくす!


Eテレ60年の歴史の重さは視聴率と関係なし

各局のお正月番組を全て見たわけではないのですが、民放ではあえてお正月でなくても改編期に見られるような番組も多いなか、独自の存在感を出していたのがNHKEテレです。この番組もそうですが、同日には過去このブログで紹介させていただいた「香川照之の昆虫すごいぜ!」の新エピソードが放送されたりして、独自の世界観を醸し出しているように思います。

この番組について簡単に説明すると、ドラマパートと演奏パートに分かれ、NHKEテレで放送された懐かしい歌の数々を豪華なミュージシャンがカバーして披露し、子供もその親の世代も楽しめる番組になっていると思います。ただ、時間が70分しかないのに色んなものを詰め込みすぎたので、NHKEテレの番組に思い入れを持っている人にしては物足りなかった人もいたのではないでしょうか。例えば、「ハッチポッチステーション」になぜグッチ裕三さんが出て来ないかとか、「できるかな」ののっぽさんは写真が出てもゴン太くんが出ないのはなぜかとか、なぜストレッチマンを無視するのか? というような事です。

しかし、今回のプログラムは寺田心くんを中心としたドラマから派生するストーリーの中で、歌のない世界から歌を解放するために封印された歌を見付けるという中で歌われるものなので、歌番組というより歌がちりばめられたドラマという感じで見れば楽しく見られたのではないかと思います。

恐らく、学校の授業の中でNHKEテレの番組を見たり、風邪を引いて学校を休んだ時にNHKEテレを見て楽しんだりした方も少なくないと思いますが、さすがに60年も教育番組を放送していれば多くの人に浸透することになり、唯一の例外として楽曲自体が爆発的に売れてしまった「だんご3兄弟」のような歌はあるものの、その多くは「セールスには結び付いていないが同世代ならみんな知っている歌」です。恐らく今年のうちにEテレの様々な60周年関連番組が作られるようになると思いますが、各世代が見た番組はそれぞれ違うと思いますし、今回の番組でも全く触れられなかった番組や歌も多くありましたので、今回の番組の存在が起爆剤になって様々な展開が起こってくると更に人々を懐かしい気分にさせてくれるのではないかなと思います。

ただ、今回の放送はお子さんに合わせたのか午前9時からということで、リアルタイムで見ていた人は少なかったのではないでしょうか。番組の途中にインターネット接続をしたテレビで遊べるコーナーがあったものの、これはちょっと録画民にとってはいらなかったかなと思います。双方向で遊べるというのが今のテレビではあるものの、それに固執しすぎるとリアルタイムで見られない人や、ワンセグ民も排除するように思われてしまいますので、その点も考えた上での番組作りを期待しています。

(番組データ)

「Eうた♪ココロの大冒険」キンプリ登場!豪華アーティストがEテレ名曲カバー
2019/01/01 09:00 ~ 2019/01/01 10:10 NHKEテレ
【出演】
寺田心,清野菜名,藤井隆,片桐はいり,加藤諒,佐藤二朗,染谷将太,YOU,いつもここから,Perfume,King&Prince,三浦大知,上白石萌歌,高橋優,クリープハイプほか

(番組内容)

「Eうた♪ココロの大冒険」キンプリ登場!豪華アーティストがEテレ名曲カバー
豪華!キンプリ、Perfume、ミセス、リトグリ、三浦大知がEテレの名曲をカバー!寺田心君主演の冒険ドラマに人形劇、データ放送も。Eテレの人気キャラが夢の共演!


本を肴にメディア論

この番組は2018年3月17日に放送されていたものの再放送で、どこかでこの番組の感想を見て再放送があるということを知ったことで今回見ることができました。今の世の中に絶望など微塵もなく、バラ色の未来しか見えないという方にとってはあまりピンと来ないかも知れませんが、特に世の中の様子を一斉に伝えることができるテレビ・ラジオ・新聞、そしてインターネットをも含むマスメディアの動向に危機感を覚えている方には、面白く見られたと思います。

そもそも、自らマスメディアの一つであるテレビがこの問題について、単なるメディア論を戦わせるのではなく、昔の本を題材にして現代の社会やメディアについての問題がかなり昔からあったとともに、その状況について的確に憂いていた先人がいることを明らかにしていくというのは、テレビの自己批判とも言えるかも知れません。そうした行為をともなった番組は正当に評価したいというのが私の考えでもあったので興味深く番組を見ることができました。

討論の中で言われていたことに「歴史をひもとく」ことの大切さというものがありました。権力批判やマスコミ批判というのは現代になって発生したものではなく、日本では新聞というマスメディアが登場した西南戦争の起こった明治時代から時の政府によって大衆の心理をコントロールするために官軍を「善」とし、西郷軍を「悪」の権化と新聞を抱き込みつつ巧みに論じ続けることで、一定の政府寄りの世論を作ることができるという成功体験が今も続いているという指摘もありました。そんな悪の権化だったはずの西郷隆盛さんが現代は大河ドラマの主役なわけですから、当時の新聞報道は正直どうだったのか? というように歴史を冷静に考えることができるわけです。

そんな形で大きくなっていった日本のマスメディアにおいて、さらにテレビというのは番組の時間が今回の放送でも100分という風に限られるメディアであるので、全ての参加者が言いたいことを全て言えたわけではないですし、本当はもっと言いたかった話を編集する段階でカットされてしまったかも知れません。どこまで今回の番組を作ったNHKEテレを信じるかということもあるのですが、今はテレビを見るのにも、今回出演されている方々はインターネット上に独自にブログなりツイッターで発信をされている方もいるので、番組で言い足りなかったことを補足したり、そもそも番組自体の評価を後から確認することも可能です。さらに運が良ければ質問をすれば答えてくれる可能性すらあるわけですから、こういう番組をきっかけにしてメディアに対する考えを深めていくというような活用の仕方もあるでしょうし、さらに進めてテレビを単に見る側の人であっても必要に応じて自分でも動くという反応の仕方ももちろんあります。

番組の進行は、各講師の方々が持ち寄った本をヒントにして昔と今のメディアについて討論をしていくというものですが、基本的にはどの時代であっても為政者は自らの行なう政策について最高のものだと思って行なっているわけで、そうした政策に反対する人たちを何とかして抑え込みたいと思うのが普通です。その対処法としてマスコミを使って大衆にわかりやすいようなレッテルを貼り、いかに自らが正しいことを行なっているかを明らかにしたいというのは、もはや人間の性とでも言うべきことなので、昔でも今でも程度の違いこそあれ事実を捻じ曲げてでも発信されるものの中にはそんな情報が混ざっているということを前提にして考えることも必要になるかも知れません。

もちろんそうした傾向が強くなるに従って揺り戻しのように権力を批判するような勢力も現われてはきます。ただ過去の歴史をひもとくと、そうした勢力の多くは権力側の勢力に力で弾圧されてきたということもあり、いわゆる「反権力」と呼ばれる側は自ら武力を持って革命を起こしでもしなければ自分達の主張を広く世間に認めさせることは難しいというのも同時にわかってきます。私自身は暴力的なものに支配されるような世界というのはそれこそ「北斗の拳」の世界に陥ってしまう可能性もあるので、できれば権力を持つ側の勢力が批判に対してもっともだという点があるなら、態度を改めるなど大人の対応を期待したくもなるわけですが。

ただ、現実の社会で何をしでかすかわからない人間というものは、とんでもない事をしでかしてそれが拡散して炎上してしまうのも確かです。インターネットでツイッターなどのSNSを連日追い掛けている人にとっては、例えば今の日本の与党と野党の支持者の間で、かなりエキサイトした印象操作がお互いに行なわれており、いわゆる議論とはかけ離れた過激な言葉のやり合いを行なっている中でお互いにかなり消耗しているように私には思えます。それは、当時者として自分の作り出した「空気」の押し付け合いに参加していないからで、まさに「岡目八目」という言葉のように、いっとき議論から離れて論争を見ながら考えることで、こうした噛みつき合いのような言葉の応酬や、そもそも根本的な問題はどこにあるのかという議論についての整理ができるようになるのではないかと思います。

例えば、「NHKは悪だ」という命題こそが絶対だと思っている人にとっては、NHKの中でこのような番組が作られることこそが権力側か反権力側かはわかりませんが(^^;)誰かの陰謀に思え、「どんなに良さそうな番組を作っていてもNHKの番組は見るべきではない」というような極端な思考につながっていってしまい、その後の議論には転化していきません。確かにそこで思考をストップした方が楽ではあるのですが、個人的には対立するだけでなくお互いの理解を深めるというところまで行ってもらいたいというのが、この番組を作っている人も考えているところだろうと思います。

インターネットと違ってテレビの場合は、そもそもが政府から電波を飛ばすための免許を受けて放送をしていることもあり、あからさまな嘘を流すような事をしないような仕組みもあるので、それなりの取材をしてから報道をしているという事は言えるでしょう。もちろん、取材者の予断が多くのチェックをかいくぐって必ずしも正しくないかも知れない情報をマスコミが出してしまうことはあります。それはマスコミ側の人達も十分承知しているところだと思いますので、単に鬼の首を取ったような感じでその間違いだけを指摘して喜ぶのではなく、なぜ報道が間違ってしまったのかを冷静に指摘するような事がインターネットでの情報発信をしている側にとっては必要になってくるのではないでしょうか。それがこの番組を見た人間がテレビに対してできるフィードバックだと思うのですが。

(番組データ)

100分deメディア論 NHKEテレ
2018/04/22 00:30 ~ 2018/04/22 02:10 (100分)再放送
【講師】
ジャーナリスト…堤未果,「世論」リップマン
東京工業大学リベラルアーツ研究教育…中島岳志,「イスラム報道」サイード
社会学者…大澤真幸,「『空気』の研究」山本七平
作家/明治学院大学教授…高橋源一郎,「一九八四年」オーウェル
【司会】伊集院光,島津有理子,
【朗読】滝藤賢一,
【語り】小口貴子

(番組内容)

激変するメディア状況。作家、ジャーナリスト、社会学者、政治学者などさまざまな視点から「メディアとどう向き合うか」を探りながら、難解な名著を易しく読み解いていく。

時代は私たちのテレビ視聴習慣や紙メディアへの接し方を大きく変えつつある。こんな状況にあって私たちはメディアとどう向き合っていけばよいのか。古今東西の名著では、すでにこうした現状を予言していたような洞察が数多くなされている。作家、ジャーナリスト、社会学者、政治学者などさまざまな視点から「激変するメディアとどう向き合うか」を探りながら、難解な名著を易しく読み解いていく。


「和牛」と「とろサーモン」の評価に一石を投じる番組

昨年のM-1グランプリの優勝を審査員の評価の微妙な違いにより逃してしまった「和牛」がテレビに引っぱりだこという印象がこれを書いている2018年4月現在します。器用でどんなところでも笑いが取れるという点が、今回から始まった「新型教養番組」でも生かされています。

この番組は一流企業で営業の現場にいる社員を前にして、漫才という芸を極めた芸人が講師という立場で登場し、ロールプレイングをしたり、お笑いの手法が営業にも流用できるように説明したりしながらNHK的に演芸の素晴らしさを伝えるという面もある番組だろうと思います。これは、教育テレビでの「教養番組」として考えれば全く非の打ちどころのない構成と「和牛」の二人のこなし方に唸るばかりで、企業や商業高校が研修や授業に使う教材として大変優れていると思います。改めてそんな講師のような事を当り前にこなす「和牛」のお二人の器用さも随所に感じました。

恐らく「和牛」さんは今後もどのような形が自分に求められているのかということを今後もしっかり感じて営業をこなすことで、生涯お仕事には困らないでしょうが、この方向性で大ブレイクしたり大きな賞を取れるのかと言えばそれは別の問題になります。

個人的には、今回番組のために明かしてくれた「笑い」を引き出すテクニックを公開すればするほどネタ番組では「あの時ああ言った事をそのまま使っているのだな」という風に感心はしますが、その分「笑い」というものは感じなくなっていくということも事実です。もしこの世に「お笑い評論家」なる商売があり、テレビのネタ番組で実況するアナウンサーの横でテレビを見ている人にわかりやすいようにギャグの解説をするというような仕事があれば、まさにぴったりな感じなのですが、テレビを舞台にしたお笑いとは違う感じで、このまま「和牛」のお二人がしゃべくり漫才の真髄を極めて行くのなら、あえてテレビはNHKの演芸番組やこうした教養番組のみにして、お笑いの教科書に載るような笑いを目指して行って欲しいと思います。

そう考えるとM-1グランプリで優勝した「とろサーモン」は「和牛」と比べると優勝したのにその扱いが「和牛」よりも下という感じもしますが、そこは「優等生」と「クズ」の対比ということで、個人的にはとても講師としてキリンビールの社員を前に自分達の漫才をネタに営業教育なんて離れ業はできないと思いますが、その分テレビの枠の中で弾けることのできる可能性は感じます。

ここまで読んで勘違いして欲しくないのですが、今回比較している「和牛」と「とろサーモン」は、審査員の好みの問題で優勝と準優勝に分かれただけで、どちらが面白いかということについては個人個人の好みが分かれるところだろうと思います。ただ、こういう番組を見ていると、安心して見ていられるきっちりと計算された笑いを作る度合いがより強いのが「和牛」の方ではないかなという気がします。今後彼らがテレビ界をうまく立ち回ることができれば、さらに飛躍する可能性は大だと思いますが、逆にテレビの枠からはみ出すような笑いを実践するのは難しいのではないかと私には思われます。

あと、もう一つ番組内容以外に気になった点を挙げます。番組では「一飲料メーカー」として紹介されている企業がテレビに出るのに、「一番搾り」「FIRE」のジャンパーをわざわざ着て仕事をし、NHKの方もロゴを消すこともせず放送するというのは教養番組だからなのかも知れませんが、ますますNHKの大手企業とのタイアップ疑惑を感じざるを得ません。

(番組データ)

芸人先生 #1「和牛×飲料メーカー」(前編)NHKEテレ
2018/04/02 23:00 ~ 2018/04/02 23:30 (30分)
【出演】和牛,
【解説】営業コンサルティング・童話作家…和田裕美,
【語り】桜井玲香

(番組内容)

第1回の芸人先生は2年連続M1準優勝の和牛。漫才でいう「ツカミ」の大切さをビジネスにも生かす方法を教える。訪問先は某ビール会社。笑えてためになる授業をご覧あれ!

漫才、コントは「究極のコミュニケーション術」である!!この番組は、現役で活躍する一流漫才師、コント師たちが己の笑いの技術を“コミュニケーション術”に置き換え、日々ビジネスの世界で戦っている社会人たちに伝える「新型教養番組」である。第1回は2年連続M1準優勝の和牛。訪問先は、ビール会社。現役の営業マンたちに、最初の30秒間の大切さ「ビジネス基礎ファーストコンタクト講座」を教える。


年に一回年の初めはクラシックで楽しもう

毎年、年末は外に出ることが多くなったので紅白歌合戦もダウンタウンも、ベートーベン第九も縁のない年越しになっているのですが、その分1月1日くらいはバラエティー番組を見てだらだら過ごすよりもクラシックの演奏を聴こうということで、1日の夜のテレビはウィーンフィルのニューイヤーコンサートを見るようになりました。

今年は指揮者がリッカルド・ムーティ氏で、さらにNHKの中継に力を注ぐ状況が半端ではなく、本放送開始の1時間前から高橋克典さんが登場するウィーン紹介の事前番組を流し、さらに本編に入っても、例年は毎年東京のスタジオからアナウンサーが細かな内容を伝えるのですが、今年は現地ウィーンに鎌倉千秋アナウンサーが出向き、さらに今回出演者の欄に記載のあるヘーデンボルク直樹氏のお兄さんが当日ニューイヤーコンサートで演奏する直前にテレビ出演したり、第一部と第二部の休憩の最中に、どうしても日本の視聴者にお話ししたいとウィーンフィルの楽団長さんまで出てきました。

何がウィーンフィルをそうさせるのかとも思いますが、日本でのウィーンフィルのニューイヤーコンサートの注目度は毎年生中継していることもあってかなり高く、私もそうなのですが、アンコールの「美しき青きドナウ」と「ラデツキー行進曲」の二曲を聴き、ラデツキー行進曲を聴きながら手拍子を取らないと年が明けた気がしないという方も少なくないと思うので、そんな国内での盛り上がりが伝わっていたのだとしたら本当に有難いことです。

今年の放送ではおよそ2時間半の第一部・第二部を通しで見ることができました。過去には第一部を地上波で放送しない年もあったような気がしましたが、今では普通に全ての内容を見ることができるのは有難いものです。今年は第一部の最後に「ウィリアムテル序曲」も流れたりして、クラシック好きという人だけでなく会場の雰囲気や華やかなバレエが曲に合わせて流れるなど、見出してしまえば飽きずに最後まで行けるのではないかと思われます。

そして、新年の挨拶の後にはアンコールで「美しき青きドナウ」と「ラデツキー行進曲」となります。今年のラデツキー行進曲は、見ている方がついつい先走りがちになりそうなところ、聴いている人達を落ちつかせるようなゆったりしたテンポでのラデツキーになりました。この辺は、まさにリッカルド・ムーティ氏だからこそのものでしょうし、あまり日頃クラシックを聴く機会のない素人のような私にも、指揮者の違いによってこれだけ曲の印象も変わってくるということを気付かせてくれました。

このウィーンフィルのニューイヤーコンサートは、今後も何回も再放送されるので、見逃したという方は機会があればご覧になってほしいです。あと、番組を見終っての感想として、改めて感じたのは日本とオーストリアの文化・芸術に関する援助の違いでした。番組で紹介されたウィーン市内の様子で、広場に大きなスクリーンが置かれて劇場で行なわれているオペラを同時中継(当然無料です)していたのですが、入手困難だったり高価なためなかなかチケットを買えない人でも、スクリーンの前で年末の恒例のオペラ「こうもり」を楽しんでいる姿は、機会があれば野外で見るのにいい時期になったらウィーンに行ってみたいと多くの人が思うだけの魅力がある企画ですし、日本でも歌舞伎で同じようなパブリックビューイングをやれば、海外からの観光客だけでなく、国内の地方在住の人たちも東京まで行ったついでに有名な歌舞伎の演目に触れられるようになるのにとかなり羨ましく思いました。

来年の今頃も、多くの人とともに笑いながらラデツキー行進曲を手拍子を取りながら聴くことのできる環境であることを祈りたいですね。

(番組データ)

ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート2018 NHKEテレ
1/1 (月) 19:00 ~ 22:00 (180分)
【出演】
管弦楽…ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,
指揮…リッカルド・ムーティ,
ウィーン・フィルチェロ奏者…ヘーデンボルク直樹,
バレエダンサー…橋本清香,
【司会】鎌倉千秋

(番組内容)

世界中が熱狂!新年クラシックの祭典を現地から生中継!巨匠ムーティ円熟のタクト。ウィーン・フィル日系団員ヘーデンボルク直樹が明かす舞台裏。あの大物団員も生出演?

ワルツなくては年も明けぬ?現地スタジオからお伝えする2018年のウィーンの年明けの瞬間▽華やかなバレエは苦労の結晶だった…ウィーン国立バレエ団トップダンサー橋本清香が明かす秘話。▽今年の舞台にはイタリアの風が!ナポリ出身巨匠ムーティえりすぐり・初登場の名曲▽100年前の街に思いをはせて…ウィーン激動の1918年にちなんだ名曲や歴史的建築が登場。現代のウィーン・フィルの姿の源は100年前にあった?


元旦に「昆虫特番」をもってきたNHK教育の思惑

役者としての香川照之さんしか知らない人にとって、昨年いきなり「キンチョール」のコマーシャルに小学生らしき扮装で出演したのを見てびっくりしたと思いますが、実はあのコマーシャルは今問紹介するNHK教育テレビの「昆虫すごいぜ!」という番組のテンションそのままなのです。

昨年末に、過去3回放送された番組を一気に放送していたので、復習の意味でつい見てしまいましたが、コマーシャルのように途中でテンションのおかしな部分がありつつも昆虫の凄さを生徒役である子役の寺田心くんに伝えようと必死でやっている印象があります。

今回はお正月の特別プログラムでスタジオでの収録はなく、前編マレーシアにロケに行くという豪華な内容なのですが、そこまでして行ってもなかなか珍しい昆虫をご自身で捕まえることができず、恐らくスタッフが用意したであろう専門家のところに集まった虫を見せたり、現地の虫取り名人に獲ってもらうなどして一応お正月番組を成立させるだけの珍しい虫の「撮れ高」は何とかキープしていました。

この辺は人気俳優のキャラクターを前面に押し出して番組を進行させるところの功罪であると思うのですが、どうしても長期ロケをマレーシアで敢行し本人が珍しい虫を獲る瞬間の画像を抑えるようなことができれば、見ている方としてはさらにテンションが上がったと思うのですが、今のテレビでは露骨な演出も「やらせ」と非難される場合があるので、何とか力技で昆虫を調達したものの、ちょっと中途半端で消化不良な感じがしたことも事実です。

番組を見た正直な感想として、せっかくNHK教育の教育番組なのですから、もう少し現地マレーシアでの滞在時間を増やし、お正月番組どうしてもしなくてもいいので、お正月にタレントさんの予定を抑えてロケ期間を確保し、マレーシア現地で教室を開くような形で寺田心くんにもマレーシアで虫獲り網を振ってもらって視聴者にもその成果がわかるような形のものにして欲しかったというところはあります。

もちろん、香川さん寺田くんのスケジュールを一定期間抑えるというのはそれほど難しいということなのでしょうが、次回には国内で十分なので、ぜひロケをするのが香川さん一人ではなく、出演者全員でロケをするような形での内容も見たいです。たまたまこの番組をお正月に見たことで虫の事に対する興味がわいた子供たちのためにも、スケジュール調整は大変かと思いますが、続編も期待しています。

(番組データ)

香川照之の昆虫すごいぜ!特別編「カマキリ先生☆マレーシアへ行く」NHKEテレ1
1/1 (月) 9:00 ~ 9:45 (45分)
【出演】香川照之,寺田心,伊藤優衣,
【語り】石澤典夫

(番組内容)

カマキリ先生が冬の日本を離れ、マレーシアの熱帯雨林で特別授業。ねらうは美しき国蝶、三本角のカブトムシ、そして多様なカマキリたち。どんな授業をしてくれるのか。

あけまして、昆虫すごいぜ!カマキリ先生が虫の少ない冬の日本を離れ、マレーシアで出張授業を開く。初の海外、熱帯雨林で探すのは美しき国蝶アカエリトリバネアゲハに三本角のアトラスオオカブト、そして、日本ではお目にかかれない多種多様のカマキリたち。異国の地でカマキリ先生はどんな昆虫を見つけ、どんな授業をしてくれるのか。放送枠も拡大、44分の特別編でお伝えする。


天皇陛下にご進講したアマチュア研究者・南方熊楠について

私が南方熊楠という人物の存在を知ったのは教科書からではありませんでした。植物学者として有名な日本人として教科書に載っていたのは南方熊楠でなく牧野富太郎の方でしたし、民俗学の大家として有名なのも柳田国男の方でした。たまたま小中学生用の伝記を読む機会があって南方熊楠の人生を垣間見る機会に恵まれたのですが、明治時代の日本の偉人として夏目漱石や正岡子規という文学の方面で名を成した方や、秋山真之のように海軍軍人として司馬遼太郎の「坂の上の雲」の登場人物としても有名な「大学予備門(東京帝国大学に入学する前段階の教育機関)」と同級生ということですから全国から集まった秀才と肩を並べる存在であったと言えます。

ただし、彼は天才ではありましたが、数学などの計算事がひどく苦手で、そのため全教科をしっかりやらないと東京帝国大学に進学できない大学予備門では数学のテストを白紙で出すなどしたため落第し、以降は学位も取らずに海外渡航をする決心をし、在野の研究者としての生き方を選びました。しかし、そんな中でも戦前の昭和4年に昭和天皇が和歌山県に行幸された時にご進講の栄光にあずかり(昭和天皇の研究内容が熊楠の研究している生物学・植物学で共通していたため熊楠本人が指定された)、熊楠の人生にとっての最大の栄誉となったのです。

その後、この事が人々の記憶から忘れられた中、南方熊楠の事が広く知られるようになったのが、またも昭和天皇の行動がきっかけとなりました。昭和38年の歌会始で披露した「雨にけふる神島を見て紀伊の国の生みし南方熊楠を思ふ」という人名を読み込んだお歌が出たことで広く全国に南方熊楠という名が認知され、昭和40年になって田辺市に「南方熊楠記念館」がオープン。決してメジャーではないもののその名前は広がっていくことになるのです。恐らく私が最初に読んだ伝記も、こうした流れの中で出版されたものだろうと思います。

さらに時間が経ち、没後50年で著作権フリーとなった平成3年あたりから、再び南方熊楠に光が当たることになります。そんな中で漫画における南方熊楠を取り上げる動きが一斉に起こったことがあり「てんぎゃん」(岸大武郎・少年ジャンプ)、「猫楠 南方熊楠の生涯」(水木しげる ミスターマガジン)、「クマグス」(内田春菊・山村基毅・潮出版社)、「南方熊楠 永遠なるエコロジー」(長谷邦夫・ダイヤモンド社)というように未完を含むさまざまな漫画が出た時がありました。

たまたまそんな時に和歌山県田辺市の天神崎を訪れる機会があり、そこで地元の人たちと夕食中に南方熊楠目当てで田辺に来たという話をしたところ、もし熊楠の生家が見たいなら、一人娘の文枝さんが起きていたら、中に入れてもらって話を聞くといいと思わぬことを言われて、午後8時頃に急いで熊楠の家まで連れて行ってもらったのですが、その時には残念ながら文枝さんは寝てしまっていて、家の中はともかく、直接南方熊楠と言葉を交わした実の娘さんとお会いする機会を永久に失ってしまったことが人生の痛恨事として今でも思い出されます。

今回の知恵泉で紹介された南方熊楠について、田辺市に住んでいる熊楠ゆかりの人の中には、当時4才くらいのお子さんだった方がインタビューに応じていて、一般的に言われた人見知りや感情の浮き沈みが激しく、大人からするとずいぶん気難しいと思われていたという印象ではなく、とにかく小さい子供に対してはおじいさんのように優しかったという話が聞けたのは、直接その人に会ったことのある人に話を聞いたからこその話でしょう。

番組での南方熊楠の人物像というのは、研究で飯を食うプロの研究者ではなく、実家からの援助のみで生活し、研究は自分の好きに膨大な標本や文章を残した「アマチュアの研究者」として語られ、それをゲストで魚の知識と絵の才能が飛び抜けている「さかなクン」の活動になぞらえたり、日本のブログ創世記からブログを始めて、今では大変多くの読者を誇る中川翔子さんのブログによる日々の何気ない記録の中に、もしかしたらダイヤモンドの原石のようなお宝が隠れているかも知れないという「南方曼荼羅」と言われる南方熊楠の世界観の話へとつなげていて、これはこれで、良い南方熊楠入門の番組ではないかと思えました。

ただ、番組ではテレビ初公開となる熊楠に対する観察日記を亡くなるまで付け続けた奥さんの松枝さんと、私がすんでのところでお会いできなかった娘さんの文枝さんを中心に紹介するにとどまっていたので、田辺市での様々な人々との交流や悲痛な息子さんとのお話についてかなり踏み込んで描いている水木しげるさんの「猫楠」が次のテキストとしておすすめだと思いますし、もっと細かい事を知りたい場合には、講談社現代新書の「南方熊楠を知る事典」があるのですがネット上では版元では絶版なので以下のページで一部限定ながら公開されていますので、興味のある方はご覧になってみて下さい。

http://www.aikis.or.jp/~kumagusu/books/jiten.html

私が南方熊楠に憧憬する理由としては、この方は自然破壊を進める神社合祀の動きや、新しく森を切り開いた開発を嫌うのに、当時の日本はおろか、過去に滞在していたロンドンとの通信で雑誌「Nature」に寄稿するなど、当時の通信の窓口であった郵便局が新しく作られる事には決して反対しなかったというような、権威におもねらずえらく人間的な欲望の赴くままに研究をされていた姿勢に惹かれているという事があります。

熊楠は植物や粘菌の標本を作るのに、実物を観察してそのままの姿を絵として書き残していたのですが、今の時代ならデジカメで写真を撮り文章はキーボードから書けば手書きよりも早く正確に書け、インターネットが引かれていれば即時に全世界に公開したりメールでのやり取りが可能になるということで、熊楠は研究に要する時間を相当節約できたのではないか指摘する方もいます。しかし、明治以前に熊楠が生まれていたら鎖国の中でその才能は埋没していた可能性が高いでしょうし、今も熊楠のお宅に眠っている膨大な標本はまだ分類されていないものもあると言われます。ネットがあったらあったで、さらにその研究の内容は広がりを見せることになって後に残った人たちにとってはさらに研究がしずらい中味が何だかわからない膨大な資料を残してしまった可能性もあります。今のところは、熊楠の残した資料をどう分類して今の研究に活用するかということが、それこそ今を生きる人間にとって熊楠が突きつけている課題ではないかと思います。

しかしながら毎日を生きるのに精一杯でテレビを見るしか取り柄のない私などは何をやっているかと言われそうではありますが、このように一体誰が読んでいるかわからない駄文を綴っていてもその場限りにはしないで、ブログとしてアップしておくことの大切さを熊楠は教えてくれているように思います。テレビの事についてブログで書こうと思った時にまず考えたのは、どちらにしても何時どこのテレビ局でどんな番組が放送されたかという記録はインターネット上で入手することができるだろうと思い、それを見てどのように考え、当時はどんな社会の状況だったかとか、今も思い付くままに長ったらしく書いていったものの中には、未来の人が当時のテレビや社会を分析するに当たってのヒントぐらいは残せるのではないかと思ったからです。

今回の番組は単に「南方熊楠」というキーワードで見付けて自分の好きな人物だったので見ただけで、当初はここで報告するような事は何もないのではないかと思っていたのですが、ブログを同じように書いている人がいたとしたら、たとえそれが毎日数人しか見に来ないブログであっても、途中で止めないで記録として続けることの大切さはどんなブログでも必ずあることを申し添えておきます。インターネット上にはたとえ自分がブログをやめて内容を消しても、過去に遡ってその内容を記録しているサイトもあります。どんなブログでも記録として残り、その内容がもしかしたらとんでもない未来になって必要となる情報になる可能性もあると考えつつ、ブログを書いていくのも面白いのではないでしょうか。

(番組データ)

先人たちの底力 知恵泉「この世のすべてが知りたい!南方熊楠 超人の作り方」NHKEテレ
12/19 (火) 22:00 ~ 22:45 (45分)
【司会】二宮直輝
【ゲスト】中川翔子,東京海洋大学客員准教授…さかなクン,南方熊楠顕彰会学術部長…田村義也,

(番組内容)

「知の巨人」「日本人の可能性の極限」そんな称賛の言葉が並ぶ、明治~昭和の天才学者、“超人”南方熊楠。ところが弱点もたくさんあったため、大学や研究機関で大活躍!とはいかなかった。学問の専門を絞れない、極端な人見知り、常識外れの行動…。そんな熊楠が思う存分、実力を発揮できた環境とは、いったい?これまで未公開だった熊楠の妻の日記が、今回初公開!知られざる熊楠の素顔と、天才性発揮の秘密を明らかにする。


バラエティと高校講座の垣根を取り払う「滝沢カレン砲」

まずは番組データの出演者の顔ぶれを見てもらうと、授業形式の国語講座とは言ってもかなりくだけていることがわかるでしょう。何と言ってもコンセプトが、民放のバラエティ番組に登場してどこまでが真面目なのかふざけているのかがわかりかねる日本語のよくわからない生徒役の滝沢カレンさんを中心にして、教えるのはこむずかしい学者の先生ではなく、クイズ番組にも気軽に出演するくだけた印象のある金田一秀穂先生(滝沢カレンさんの第一印象は「悪い人ではない」とのこと)。そして、本人をそのまま出すと学級感が薄れるかも知れないのでオウムの声だけの出演となったのか、滝沢カレンさんのボケに突っ込む力と、滝沢カレンさんが何を言っているかわからない状況でもその意を拾って伝える力は十分で、番組内でいい味を出しているナイツの土屋伸行さんという鉄壁の布陣で番組は進行していきます。

同じようなタレントが出演するNHK高校講座と比べてこの番組はとにかく対象を低く、しかも深いところまでという(滝沢カレンさんのリアクションが高度に切り返してくる場合もあるため)なかなか莫迦にしたものではない番組に仕上がっているように感じます。

私自身、たまたま時間が空いている時にツイッターを見ていたら番組開始直前にこの番組のツイートを見てあわてて見たのですが、継続して見ることによってあたかも民放のバラエティ番組のノリを持ちながらも、きちんと日本語の使い方の基本が理解できるような構成になっています。このへんはさすがNHK教育の番組といったところです。

もっとも、番組自体に台本というものがあり、滝沢カレンさんもその台本をないがしろにせず、そのまま台本通りにやっているということが予想されるので、民放のバラエティと比べると滝沢さんの発言がやけに優等生らしくスラスラ話されることに違和感を感じることもありますが、バラエティの滝沢カレンさんを見て、この子は国語ができなそうと小馬鹿にするようなお子さんがいらした場合、改めてこの番組を録画しておいたものを見せながら、お子さんに金日一先生が教えた内容をフォローしていくだけでも無意識のうちにお子さんの国語の力が付いていくのではないかと思えます。

また、それこそ番組名の「あらためまして ベーシック国語」という題名の通り、大人や海外から日本人来て住んでいる人が改めて自己流で学習したことの確認に使うというのもいいでしょう。特にテレビのバラエティ好きの人だったら楽しく見ているだけでも、今さら大人が聞けない事がわかる番組になっていると思います。

ただ、一つ気がかりなのは、この番組を通じて滝沢カレンさんの国語力が上がっていくと、この番組自体の面白さも薄れてしまうかも知れず、フジテレビの「全力!脱力タイムズ」でのナレーションがすらすら読めてしまって面白味がなくなってしまうのではないかという事がありますね。ただ、無知そのものを売りにして「笑われる」タレントとして生きながらえるよりも、国語の正しい使い方を十分わかった上で本当にボケられる技を身に付けてくれればその方が面白いですし、もしかしたら土屋さんと二人でナイツの漫才をそのままできるくらいになるかも知れません。

個人的にはナイツの2人と滝沢カレンさんの3人で営業に出られるくらい天然でないボケを連発できるしゃべりの力をこの番組を通じて身に付けてくれれば、テレビはさらに面白くなりそうな感じがします。

(番組データ)

NHK高校講座 あらためまして ベーシック国語「印象を深める表現」NHKEテレ1
12/12 (火) 14:00 ~ 14:10 (10分)
【出演】杏林大学教授…金田一秀穂,滝沢カレン,
【声】土屋伸之/ナイツ(オウム)
【語り】小林ゆう

(番組内容)

国語の基本をあらためて学ぶ、講座バラエティー。滝沢カレン(生徒役)と金田一秀穂(先生役)、そして謎のオウム(声:ナイツ土屋伸之)が教室で国語の授業を行う。今回のテーマは「印象を深める表現」。倒置法、対句法、などを使うと、どのような効果があるのか、を学ぶ。最後に金田一先生が紹介したのが「一語文」だが、果たして一語文とは?


タレント頼みのトークバラエティの危うさ

現在のテレビ番組の中で、魅力的なトークバラエティは数多くあります。私が今、一番に思い付くのは明石家さんまさんが司会をする「踊るさんま御殿」ですが、この番組から幅広くテレビに出てくるようになったタレントさんは列挙に暇がありませんが、さんまさんのこの番組の場合は、現在「尾木ママ」として有名になった教育評論家の尾木直樹氏のキャラクターを立てる役割をするなど、芸能界以外の人が醸し出す面白さをも引き出している点が正直に凄いと思えます。そうした文化人の面白さを引き出した番組としてテレビ局の枠を飛び越えて「ホンマでっかTV」に派生したりしているという点でも、明石家さんまさんという存在が単なるお笑い芸人としてすごいというだけではなく、新たなテレビ映えする才能を開花させることを笑いを取りながら行なっている点でも素晴しいと言わざるを得ません。

ただ、こうしたトークバラエティについての問題は、司会の人間の能力に頼り過ぎているという点です。話しをうまく回す司会者がいてこそ、特に素人の出演者の面白いトークを引き出すことができるわけですが、その司会を特定の個人に頼り切っていると、いざその本人がテレビから退場したりしたら番組自体が終了してしまうでしょう。これでは、せっかく一つのパターンを作ったトークバラエティが今後出てきても、相変わらず人の能力に任せきりということになってしまうかも知れません。

今回話題に挙げる「ねほりんぱほりん」は知らない人は全く知らないと思いますが、テレビ好きの方の中でならかなり注目されているトークバラエティではないかと思います。地上波のテレビ番組でこんな際どい事を言ってしまってもいいのかと思えるようなテーマに沿って、顔出しNGの素人出演者でもうまく豚のキャラクター人形化することによってかなり突っ込んだところまで業界の内幕を話してくれる内容になっています。ちなみに解説ということで出てくるNHKアナウンサーも牛の姿をした人形です。

司会として出演している山里亮太さんとYOUさんについても、本人がそのまま出演するのではなく、あくまでモグラのキャラクターの人形ねほりん(山里)ぱほりん(You)というように存在を変換した上で出てきますし、お二人ともうまく会話を回していくというタイプの方々で、せっかく出演をしているのにこんな事を書くと角が立つのかも知れませんが、特別な事情で出演者が代わってしまったとしても何とかさんまさんの番組とは違って中の人の声だけを変えても続けられるのではないかというところがあります。

もちろん、あらゆるクセがひどい出演者とのトークをうまくまとめていく山里さんYouさんの魅力がこの番組の肝であることは違いないと思いますが、あえて司会者を含めた出演者全てをキャラクター化して隠すことで、かなり番組としては汎用性のあるトークバラエティになっている感じがします。

ただし、これはこちらで気にすることではないかも知れませんが、もし近い将来Eテレから総合に移動して視聴率獲得を目指したり、番宣のために顔出しゲストを登場させるなんてことを始めるなんてことにでもなれば、民放での深夜番組がゴールデンに進出して大コケしてしまうような状況と同じように一気に番組そのものが終了なんと事もありえますので、そういった方向には進んで行って欲しくないと思いますが。

さて、今回のゲスト出演者は一日20時間以上ネットゲームにはまった廃人寸前の30代の男性タイチさんです。タイチさんはRPGゲームを時間の許す限り行なっていたところ、午前3時から6時まで寝るだけで本当に20時間以上ゲームをやり続けることで、ランキングの全国1位を目指しているのだとか。寝るのを我慢したりトイレを我慢するくだりについては、本当にこの人にとっては全国ランキングの1位を取ることというのは大事で、本当に「二位じゃ駄目」なんだなあと思います。

ちなみにタイチさんはゲームをやりながらアイテムやガチャで掛ける課金については月5万くらいで抑え、その分時間を長くやることで、全国一位になるためのポイントを稼いでいる方だったのですが、番組ではお金を掛けて成績を上げたりカードを入手するゲームに大金を投じている方にもインタビューをしていましたが、1枚のカードを出すために99万円も掛けてしまうなんていう若い女性の話を聞くと、個人的には引いてしまいますが、ホストに貢ぐよりは後々の人間関係でさらに痛めつけられることはないのでまだましかなんてことも考えましたが、それにしても金銭感覚が崩壊した後で振り返ると、本当に後悔しますので(^^;)、現在ゲームにはまりそうな感じのある方は、課金には特に注意して欲しいと正直思います。

実際、今回出演したタイチさんは仕事をしていないそうなのですが、何で生計を立てているのかというと、YouTubeに動画を上げることや、ゲームの攻略サイトに集客することでの広告収入が月数十万とけっこうあるんだそうです。ちなみに動画をアップしたりサイトを更新することはゲームをやりながらやっているとのことです。それなら「何故ゲームをやり続けるのか?」という番組内でも出ていた質問は、生活の糧という点もあるわけで、ゲームをやり続けてもその生活が回っているうちは決して破綻することはないので、あながち廃人ということでもないのではないかと個人的には思いました。

ゲームをやり続けることで人生が楽しいなら、借金をして人に多大な迷惑を与えない程度のはまり方ならそんなに問題ないとすら思ってしまう私の方が変なのでしょうか(^^;)。

また、番組ではゲームをやりながら会話している中で出合って結婚した20代の夫婦にもインタビューしていましたが、これは廃人以前の普通の方という感じでした。こうしたネット上での出会いは古くはパソコン通信の時代から相手の顔も見ないうちから付き合って結婚なんて話はありましたし、ゲームしながらチャットしつつ、他のどんな人間よりも長い時間同じゲームを通じてお互いの事を知っているわけですから、私なんかはむしろ、ネットで出会って結婚すること自体をおかしいと思われているような雰囲気がちょっと違和感感じまくりでした。

全体的に今回のテーマにはもう一つの盛り上がりの要素である下ネタ系が少なかったということもあるのかも知れませんが、他のテーマと比べるとかなり普通に面白い自分が体験できない世界の話が聞けて良かったというごく普通の感想になってしまいました(^^;)。

それにしても、普通なら司会が2名とゲスト1名を同じ画面に出して顔にモザイクをかければ手間もかからないものを、出演者に合わせた人形を作るところから始めるくらい全体の作りには凝っている番組なので、新作については翌月の12月に入ってからになるそうです。

そうした番組スタッフの努力が報われ、番組としての寿命が今後も伸びて行くことを個人的には希望したいですし、安易にタレントの力に頼らなくても、モグラと豚、牛やカエル(番組スタッフの変換後の姿)という設定だけでも十分見せられるトークバラエティに仕上がっている強さを今後も生かして、多くの人が普段関わる事のない人たちをどんどんテレビの場に出していろんな事を聞いて欲しいと思います。

(番組データ)

ねほりんぱほりん「ネトゲ廃人」登場!1日20時間以上、衝撃の実態を掘れ! NHK Eテレ1
11/8 (水) 23:00 ~ 23:30
【司会】山里亮太,YOU,
【語り】石澤典夫

(番組内容)

「ネトゲ廃人」とはネットゲームにのめり込み過ぎて正常な社会生活ができない状態の人。ゲストは全国1位を目指して廃人生活を10年以上送る30代男性。「時間は強さなり」と1日20時間以上プレイ。睡眠や食事時間を極限まで削り、トイレに行くにも猛ダッシュしてコンマ1秒を創出。数秒間ずつ目を閉じれば2週間寝なくても平気になった。今や楽しいを通り越して苦痛だと語る。なぜそこまでやるのか?末期症状の廃人を掘る。


伝説の「牛肉のトマト煮」「塩むすび」を再びテレビで

先日、「テレビ体操」が放送開始から60周年という事を紹介しましたが、「きょうの料理」も今年が放送開始から60年ということで、今回の生放送での特番が実現したようです。個人的には「テレビ体操」の特番というものも見てみたい気もするのですが、興味が本来の体操でないところに行ってしまうことを恐れたNHKの対応が、「テレビ体操」は広報番組内の1コーナーでの紹介ということで落ち着かせたのだなあと思われます。

さて、「きょうの料理」特番の内容ですが、前半に平野レミさん、後半に土井善晴さんという料理講師を迎え、それぞれ生放送で料理を披露したのですが、まず前半の平野レミさんは、事前のアンケートで一番リクエストが多かったという彼女が初回に登場し、相当な物議を醸したといういわくつきのレシピ「レミ風トマト炒め」を再現したのでした。

平野レミさんの事を単にがさつでうるさいおばさんとしか思っていない人にとっては、受け入れがたい所もあるのかも知れませんが、お父さんがフランス文学者の平野威馬雄氏だということを考えつつこの料理を見ると、全く違った感情が出てくる方がいるかも知れません。平野威馬雄氏アメリカ人の父と日本人の母の子から生まれたハーフと言えば現代ではイケメンでということになるかも知れませんが、生まれが西歴1900年(明治33)ということで、かなりいじめられて孤独の中で育ったのだそうです。そんな中で、アメリカ人の父(平野レミさんから見ると祖父)が好んでよく食べていたのがこの「トマトと牛肉の炒め物」だと番組内で紹介し、100年の味だと言っていたのが個人的にはとても印象的でした。

つまり、トマトを茹でてから氷水に浸けた後、そこから包丁などを使わずにそのまま手で握りつぶすようにして(トマトの皮は握りつぶすときにうまく剥ける)使うことが「汚い」とか「がさつすぎる」と出演当時には非難の嵐になったわけですが、これは彼女のおじいさんの時代から同じ方法で作られており、なぜそんな作り方をするかと言うと、包丁で切るよりも手で潰した方が表面積が増え、味が良くしみるようになるというそれこそ100年の経験に基づいた正式な調理方法だったわけです。

また、今回の料理については全く関係ない話ですが、平野レミという名前(現在はイラストレーターの和田誠さんと結婚しているので本名は和田レミです)は本名で、お父さんが付けたと思われますが、お父さんの平野威馬雄さんはハーフということで孤独の中で育ったということで、父から『家なき子』の登場人物に因み、レミと呼ばれて育ったという話があります。その後、平野威馬雄氏が混血児の救済のために立ち上げた会の名前を「レミの会」としていることからも、この「レミ」という名に対する愛着というか執着が感じられます。そんな想いを持って付けられた名前が「レミ」で、後年平野威馬雄氏はおばけの研究などでも本を出されるほどの変わった人だったことを考えると、そんな遺伝子を受け継ぎ、親子ともその才能を認められて社会に広く認知された点で稀有な存在といえるでしょう。

親子とも世に出たという点で言えば、後半に出演した料理石研究家の土井善晴さんも、父親が「きょうの料理」に数多く出演した土井勝さんで、その遺伝子をしっかり受け継いでいるように感じます。番組では、小学校低学年の頃から土井善晴さんはお父さんに連れられてNHKのスタジオで見学をしていたという話を披露していて、料理で身を立てて有名になる道というものは「きょうの料理」があったからとも言えるかも知れません。

土井勝さんについても、番組では報道されませんでしたが、興味深い話があります。というのも、料理研究家としての土井勝さんというのはいわゆる「第二の人生」の努力によって料理の道に進まれた方であるのです。土井勝さんは陸上選手として18才の時に100メートル走で10秒8という記録を出し、1940年の東京オリンピックを本気で目指したものの、オリンピックそのものが太平洋戦争の拡大により中止に追い込まれたことで挫折をした経験を持っています。

その後、料理にはそれほど明るくない私でも「土井式」と呼ばれる画期的な黒豆の煮かたを開発するなど、家庭料理についての心使いに満ちあふれた、陸上という競技を極めた方ならではのきめ細やかな配慮に満ちたレシピの数々は土井善晴さんにも受け継がれています。

番組では限られた時間を使って、2014年に放送された土井善晴さんの「塩むすび」の作り方を生放送で再度解説してくれました。私自身は話には聞いていた「塩むすび」の作りかたを実際に見ることができたといううれしさと、出演者の方々が塩むすびを食べているのを見て、そのおいしさは画面を通しても十分伝わってきました。この「きょうの料理」における「塩むすび」の回というのは、他の民放でもこの回の様子が取り上げられるなど伝説の域に達しているのですが、今回の放送でも特に強調された点があります。

それは、手を丁寧に洗うことであったり、作った塩むすびはラップでくるまないというような事ですが、2014年の放送ではお米を炊く場合でも水に浸けたまま長時間放置しないようにザルに上げておくことの大切さなど、とにかく雑菌が繁殖する要素を極力減らることを考えた上でおいしくごはんを炊き、塩むすびを握ることについて説明されているのです。

料理の材料の中には最初から傷が付いているものがあり、多少ではありますがそこから雑菌が入ってしまうものもあります。大切なのは、いかに雑菌を繁殖させずに調理するかということで、「塩むすび」を作る回というのは、お米の炊き方から解説するということで単なる時間合わせだろうと思う方もいたかも知れませんが決してそうではありません。

料理に大切な基本を教えてくれるということでもあり、それが土井家に代々伝わっているものであったということで、親子2代でそうした事をテレビを通して教えていただけるというのは本当にありがたい事であると思います。

と、ここまで熱く書いてきた土井善晴さんの「塩むすび」ですが、残念ながらNHKの公式ページ(「みんなのきょうの料理」というサイトです)から検索できる塩むすびのレシピは、野崎洋光さんと小林カツ代さんのレシピのみしか「塩むすび」で検索しても出てきません。あれだけ反響があったのに、なぜちゃんと載せていないのか? と思って改めて調べてみたところ、番組では塩むすびを最終的に焼いていたということで「焼きみそおむすび」という名前で掲載していました。

お米をザルに上げる事についてもレシピの最後に説明があるので、放送を見ていない方でも十分納得の上で土井善晴さんの味を再現できるのではないかと思います。ただ、ネットと料理ということで言うと、クックパッドを始めとする公式アプリを利用して、スマホやタブレットをキッチンに持ち込んで料理をする方も少なくないこともあるので、テキストを売る商売として今までやってきたことではあるとは思いますが、60年を機にもう少しネットユーザーに寄せた形での展開も希望したいところです。

(番組データ)

祝60歳 きょうの料理伝説60
11/4 (土) 14:00 ~ 15:00 NHKEテレ
【出演】藤井隆,小倉優子,料理研究家…土井善晴,料理愛好家…平野レミ,
【司会】柘植恵水,後藤繁榮,
【語り】江原正士

(番組内容)

「きょうの料理」は今年で放送60周年!これまで紹介してきた神回レシピや講師などにまつわる60の伝説を生放送で紹介する。平野レミ&土井善晴があの料理を披露!