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番組で無視された長寿番組について

もはやこの番組は「芸能史」と歌っておきながら全く芸能史ではないジャンルをやるようになり、末期的症状に陥っていると見ます。それは、テレビの「長寿番組」を紹介するはずが、NHKの「のど自慢」や出演者(ビートたけし・所ジョージ・草野仁など)に忖度して、自局や出演者の冠番組を紹介するだけでなく、短命に終わった番組のVTRまで放送するようになってくると、もはやNHKでやる意味も、さらには「芸能史」と銘打って放送する意味も今回の場合はないような気がしますので、番組の名前を変えて続けた方がすっきりするのではないかと思うのですが。

そう私が思ったのはとある一つの長寿番組の存在がありました。番組ではテロップで番組名だけが紹介されたものの、具体的な内容については意図的に無視されたかに思えるのが、1977年から始まって40年以上経った現在まで続いている「テレビ寺子屋」(フジテレビ系列)という番組があります。全国ネットではあるものの、深夜や早朝というかなり番組的には見にくい時間に放送されているので、同じ長寿番組の中でもその存在をご存知の方はあまりいないのではないかと思いますが、それは様々な要因が重なって続いているのではないかと思われます。

この番組はフジテレビ系列で放送されたものの、フジテレビ制作の番組ではありません。静岡県がサービスエリアの「テレビ静岡」が制作した地方制作番組で、番組のスタイルも子どもの教育論について様々な講師の方を呼んで話してもらう収録を行ない、その内容をそのまま(当然番組の枠に収まるようにカットはあるのでしょうが)放送するという「教育論の講演会」そのもので、それ以上でもそれ以下でもないという番組なのです。

番組の収録はほとんど静岡県内を巡回するのみなのでシンプルと言えばシンプルですが、番組制作のスキルも技術もいらず、いるのは会場確保と講師の依頼ということだけで、同じ事を全国どのテレビ局(地方局を含む)でもできるわけですが、だからこそ、わざわざテレビ番組にしてまで自局で作るよりも、全国の中の一地方局に過ぎないテレビ静岡が作ったものをネットすることで、なかなか自局で制作して出すことの難しい「教育番組」を流すという大義を達成できるというメリットがあります。

つまり、これだけ「テレビ寺子屋」が全国ネットで続いている背景には、早朝でも深夜でも、とにかく「ドキュメンタリー」以外に、こういった真面目な番組を放送していきたいというテレビ局のニーズがあると考えられるわけです。
この番組が始まった当初は、いわゆる教育評論家と呼ばれる方が連続して講義をするというスタイルであったのですが、現在ではいわゆる旬の人に子どもの教育論についてという題でお話をお願いすることも多く、出演者によってはどんな話をするのかという興味があるので、事前のチェックはしていますが、逆に考えると様々な演出がうざいと考えた場合、講演者の人となりが出る喋りのみの番組というのは内容によってはかなり面白いものになる可能性もある気もします。

このブログでは度々、地方局の未来についてその現状を憂いた事について書いていますが、ある意味講演会にテレビカメラを持ち込んだだけの企画でも長寿番組として続く可能性があるわけですから、良いと思えるテーマを見付けたらそのテーマを追い続け、それを継続することで良い番組が作れるというケースも十分に有り得るという実例を示したことにもなると思います。興味がある方は以下に番組ページへのリンクを貼っておきますのでご覧になって下さい。

・テレビ寺子屋 番組ページ
http://www.sut-tv.com/show/terakoya/

(番組データ)

たけしのこれがホントのニッポン芸能史▽愛され続けて○年?長寿番組のヒミツに迫る NHK BSプレミアム
2019/03/20 21:00 ~ 2019/03/20 22:30 (90分)
【出演】ビートたけし,所ジョージ,草野仁,久本雅美,メイプル超合金,
【アナウンサー】久保田祐佳

(番組内容)

さすが長寿!思わず「へぇ~」なエピソード満載!「題名のない音楽会」はテレビ東京だった!?「3分クッキング」は全国5バージョンだった!?「のど自慢」は鐘ではなく…

「のど自慢」鐘ではなく「もう結構」だった!?「世界の車窓から」同じ語り出しで1万回!?「新婚さんいらっしゃい」椅子コケギネス!?大発見!長寿番組暗黒時代=テレビ最盛期だった!?たけし・所の短命番組が一周回って面白すぎる件!?「世界ふしぎ発見」第1回の草野仁が若すぎる件!スーパーヒトシくんは最初いなかった!?久本雅美の野望は「徹子の部屋」を…!?最長寿のど自慢の舞台裏に迫ったら爽やかな感動が…

ラジオ番組の魅力は人柄が伝わる声にあり

テレビの中でラジオの事を1時間半も語った番組というのはなかなかありません。この番組はNHKの放送なのに、NHKの番組として出てきたのはラジオ放送開始時のJOAKのくだりと、「ラジオ深夜便」に「ラジオ体操」「紅白歌合戦」くらいで、残りの時間のほとんどはニッポン放送「オールナイトニッポン」、文化放送「セイヤング」TBS「パックインミュージック」というかつて隆盛を際めた深夜放送のコーナーが多く、出演者の赤江珠緒さんの現在放送しているTBSのスタジオにお邪魔して、NHKからその日のお題についてのメールを送ってその投稿が番組内で読まれるかどうかを検証したりと、かなり民放のレベルに落とし込んだつくりの番組になっていました。

さらに、メインのビートたけしさんや所ジョージさん自体がオールナイトニッポンのメインパーソナリティだったこともあり、当時の話などをおりまぜてお話をされたりして、かつてリスナーだった方は大変面白く見ることができた内容になっていました。

しかし、最後の最後になって番組ゲストの漫才コンビ「ナイツ」の塙宣之さんが自分のリスナーになっていた番組について半ば恥ずかしそうに告白したことが、実は「ラジオ」の魅力を考える際には大変重要なポイントを示してくれたように思います。番組関係者は、この塙さんのコメントをカットすることなく放送してくれたことにまずは感謝します。

彼がまだお笑いを本気で目指していない頃、とにかく面白いながらパーソナリティが何をやっている人達なのかわからず(^^;)、番組を聞きながらいろいろ勉強したことで今の自分があると言っていたのが伝説の「電気グルーヴのオールナイトニッポン」なのです。この番組については、まだインターネットでググることもできない当時では、「電気グルーヴとは何者か?」という事を知ることが難しいほど世間に知られていない人達でしたが、このラジオによって世に出て(すでにメジャーデビューをしている音楽ユニットではありましたが)、今のピエール瀧さんが音楽活動以外の俳優やバラエティ番組で活躍される礎を築かれた番組でもあります。

現在はネットで何でも検索でき、さらにマニアックなファン層を持つ声優の方々やアイドルの方、お笑い芸人の方も自分のラジオ番組を持ち、それぞれに安定した人気を獲得していると思いますが、ラジオから流れてくる声で初めてその人物を認識し、ラジオの中で話題になっているパーソナリティの周辺の人や今まで全く聞くことのなかった音楽にも興味が向くなんて体験ができた塙宣之は実に幸せなリスナー生活を送っていたと思います。

ラジオでは顔は必ずしも武器にはなりませんし、いわゆる一発芸はラジオでは成立し得ないでしょう。あくまでそのトークと人間性がリスナーの興味を引くかどうかという点がきっかけとなってラジオからブレイクした人というのは、所ジョージさんも電気グルーヴもそうですが芸能界できちんと自分の居場所を作って生き残っています。そしてそれを判断するのが必ずしも最初からファンではない一般のリスナーであるというところもテレビとは違って人気になるのにはそれなりの実力がある人達であると言えるのではないでしょうか。

これからのラジオという事を考えると、今回わずかアプリがあることしか伝えられなかったネットラジオについての可能性もあると思います。というのも、今では必ずしも生でラジオの前で聞かなくても「聞きのがし配信」の機能がアプリには付いています。何か話題になったり友人などから面白いと言われた放送があった場合には、今ではリアルタイムにこだわらなければ、アプリ経由で改めてその面白さを確かめることもできるようになっています。

今後のラジオに望むことは、世の中にはとにかく探せば今テレビに出ていない人でも面白い人はたくさんいると思うので、そうした人材を発掘してきて、まずはラジオからブレイクする人を作って欲しいと思うのです。その人達は当然その後テレビの世界に進出してくると思うのですが、その時にすでにその人のことを知っているというのはなかなか気分がいいものです。ラジオとテレビは表裏一体というところもありますが、お互いに影響し合ってマスメディアの一つとして今後ともよりよく発展して欲しいなと切に願っています。

(番組データ)

たけしのこれがホントのニッポン芸能史(15)「ラジオの魅力を徹底解剖!」 NHK BSプレミアム
2018/10/24 21:00 ~ 2018/10/24 22:30 (90分)
【出演】ビートたけし,所ジョージ,亀渕昭信,赤江珠緒,ナイツ,
【アナウンサー】久保田祐佳

(番組内容)

ビートたけしが日本の芸能史を語り尽くすシリーズ第15弾。今回は深夜ラジオを研究!オールナイトニッポン、セイ!ヤング、パックインミュージック…懐かしい番組が続々!

月曜・みゆき、火曜・所、水曜・タモリ、木曜・たけし、金曜・拓郎、土曜・鶴光!80年代オールナイトニッポンの貴重音源発掘!
▽たけし&高田文夫のやりたい放題伝説!
▽セイ!ヤングのレモンちゃんこと落合恵子がかわいすぎる件
▽パックイン終了抗議デモに警察官も思わず…?
▽鶴光の下ネタ誕生秘話
▽ガチ実験!ハガキ職人を目指せ!
▽ガチ実験!ラジオ体操で友達できるかな?
▽紅白ラジオ放送!幸子の巨大衣装をどう実況?

NHKは喜劇そのものを作るより「喜劇講座」を放送した方が良い理由

「たけしのこれがホントのニッポン芸能史」というシリーズも今回12回目になりました。中には、あんまり知識のない内容についても無理にビートたけしさんに語らせているような回もあり、あえて「たけしの」と番組名を付けてしまったスタッフの苦心する様が垣間見えた事もありましたが、今回の題材は「喜劇」という事で、ビートたけしさんやゲスト出演した伊東四朗さんの言葉はすっと入ってきました。

ただ、当のNHKの流すテレビの喜劇というのは最後の最後にビートたけしさんが語ったように、NHKの流す現代の喜劇はつまらないという言葉の通りなのではないかと思います。

民放では「吉本新喜劇」を除けば、もはやお芝居として喜劇役者を出すなんてことは、民放のドラマ自体でお金を掛けたキャスティングが予算の都合で出来ず、さらにセットや道具などで現代劇よりお金のかかる時代劇をなくし、ついには2時間サスペンスも消そうとしているのではないかと思われる番組編成を一部でしていることからもわかるように、まずそんな事はできないでしょう。テレビ放送のためにセットを一回の芝居のために作るお金も勿体無いと思っているのかどうか知りませんが、昔のドリフターズのような番組というのも今は作れなくなっているのではないかと思われます。

ただ、その点NHKには潤沢な受信料による資金があるので、民放では一時とだえてしまった時代劇も大河ドラマだけでなく「金曜時代劇」という枠もあり、最近になってBSジャパンの時代小説のドラマ化やBSTBSで水戸黄門が始まるまでは唯一時代劇をレギュラーで作り続けていて、その余波で最近はコント番組にも手を付けていて、現代のテレビコント消滅の危機を時代劇と同じように巣食っているようにも見えます。しかしビートたけしさんがNHKの喜劇がつまらないとおっしゃる意味を考えてみると、出ている人がみんな民放に出ている時とは違い優等生になってしまったり、出る人が優等生らしくふるまうように場の雰囲気を作ってしまうからなのではないかと思ったりします。

この事を考える時に、かなりはっきりと覚えている事をここで披露したいと思うのですが、当時大人気の間寛平さんが十二単を着て顔は白塗りにして登場する「引きずり女」というキャラクターがあって民放では大ウケだったということで、その年のNHK紅白歌合戦の幕間で登場したのです。しかし、それまでの厳かな雰囲気の中で登場したためなのか、とにかくその場の雰囲気に馴染めなかったというか登場した時点でお客さんが引いてしまい「引きずり女は……客が引く」と小さい声を絞り出して舞台から去っていったのです(^^;)。やはり何の説明もなく引きずり女の格好をして紅白の舞台に出るというのはやってはいけなかったのでは? とその当時は思うとともに、こういうギャグが受けないから当時のNHKではコント番組で大爆笑できないんだと思ったことを思い出します。それが私自身の今にまで続くNHKとコント番組のイメージとなってしまっています。

そういう意味では、NHKがバラエティというよりも真面目に「喜劇」の事を勉強するというようなスタンスで紹介するこの番組の事については、逆に違和感なくさまざまな喜劇についての人物や歴史を教えてくれたのでためになったように思います(^^)。優等生には優等生らしくきちんとした講座でさまざまな芸能史をひもとく企画というものにも個人的には期待しているのですが。

あと、もう一つ番組を見ていて気になったのが、伊東四朗さんが最後に言っていた「今の若手は(ネタ元を知らないので)パロディができない」という事でした。これについて、実は逆にフジテレビの人気番組「さんまのお笑い向上委員会」に謹慎明けの漫才コンビの片方であるアンタッチャブルの柴田英嗣さんが出ていじられた時、その事を強く感じました。

というのも、最初に何とか横山やすしさんの「メガネメガネ」と落としたメガネを探すギャグを振られて何とか受けたものの、その次に彼のメガネ姿をいじろうとFUJIWARAの藤本敏史さんから出た「三木のり平」さんの名を出されても柴田さんはその事がわからず、

・「ねぼすけに、はじめ優しい、ママの声」
・「午前様、角と一緒に、茶漬け出し」
・「長電話、聞こえるように、邪魔をする」

と藤本さんに振られても「ごはんですよ」と、長年三木のり平さんのアニメで、のり平さん亡き後も息子の小林のり一さんが声の出演をしていた桃屋のテレビCMの返しをすることができなかったのです。

柴田英嗣さんは1975年生まれで、藤本敏史さんは1970年生まれということで5年の開きがあります。ちなみに上記の川柳がちりばめられた桃屋の「ごはんですよ」のコマーシャルはネット調べでは1981年放送ということなので、柴田さん6才、藤本さん11才ということで、それなら柴田さんはのり平さんの出た久世光彦さん演出のホームドラマ「あとは寝るだけ」(テレビ朝日 1983年)なんかも知らないんだなあとしみじみと時代の流れを感じてしまいました。

現在20代から30代くらいの若手のお笑い芸人とのジェネレーションギャップはあるかも知れませんが、すでに40を越えている中堅どころのお笑い芸人さんにも三木のり平さんの事を全く知らない人がいるというのは、別に柴田さんを個人的に突っかかっているというわけでなく、単純に伊東四朗さんの嘆きは相当深刻なものであることを今回改めて確認してしまいました。

これからテレビに出てくるお笑い芸人の予備軍の方は、自分から言う必要はないにしても、一通りは芸人の先輩や長老の方から急に昔の事を振られても、振られた「元ネタ」に関して何とか自分の知識の中で返せるだけのスキルを付けていかないと、テレビの笑いというのは瞬発力こそが大事なので、立ち往生になってしまえば次からは呼ばれなくなるかも知れません。また、色んな事を知った上でテレビを見ている人から「あの人はこんな事も知らないんだ」という色メガネを付けて見られてしまう可能性があることを理解しておいた方がいいのではないかとも思います。

(番組データ)

たけしのこれがホントのニッポン芸能史(12)「喜劇」NHK BSプレミアム
12/2 (土) 19:30 ~ 21:00
【出演】ビートたけし,所ジョージ,伊東四朗,ムロツヨシ,遼河はるひ,荒俣宏,
【アナウンサー】黒崎めぐみ

(番組内容)

芸歴60年喜劇界のレジェンド伊東四朗がたけしと語り合う名優たちの伝説!▽初共演、ムロツヨシがたけし・所に体当たり!▽動くエノケン・ロッパ?貴重な映像を大公開!▽希代の喜劇王・三木のり平の魅力を中村メイコが語る▽驚異のリハーサル日数!?吉本新喜劇の舞台裏に密着!不動の人気を誇る関西の笑いの秘密をすっちーと池乃めだかが語った!▽実験!80年前の喜劇を東京03が現代に再現!?▽たけしが語る喜劇とは?