月別アーカイブ: 2018年8月

体操協会バッシング報道の前に過去の報道姿勢を見直すべきでは?

前日の選手と体操協会の記者会見を受けて、8月30日のワイドショーは女子体操選手と朝日生命体操クラブ、体操協会との関係について、朝日生命体操クラブに入らなかった女子選手・コーチが嫌がらせを受けて、パワハラで活動できなくなっているというトーンで報道がされています。

そもそも、この問題の発端は第三者の方が女子選手に対して専属コーチが暴力をふるったという告発があり、それを受ける形でコーチが資格を剥奪され、そのため女子選手が満足な指導を受けられなくなり、それを受けて女子選手が記者会見を開いたことで騒動になっているのですが、この番組を含め多くのマスコミ報道がまさに鬼の首でも取ったように元オリンピック選手であり体操界の重鎮である塚原光男・塚原千恵子夫妻の事を日大アメフト部監督やアマチュアボクシング協会理事のようにバッシングをしています。

それはそれでアスリートファーストということで、選手の活動を阻害する要因についてはできるだけ取り除いてあげる事はいいと思います。しかし、塚原夫妻の行動というのは、直接体操界に関わっていない人であってもそのパワハラ満載なクラブのあり方について過去にも批判されることはあったと思うのに、当時は塚原夫妻に反対するコーチや選手を養護するような報道をしていないから、今回のような事につながっていることを理解すべきでしょう。今回いきなり塚原夫妻をバッシングしているのは、日大やボクシング協会の報道で視聴者の支持が得られるからやっているというようなイヤラシサを感じるのです。もし、当時者が今回のように出てこない状況であったら、大会での選手取材に支障が出るという理由から、ここまでバッシングはしなかったのではないでしょうか。

さらに、今回あえてこの番組に対してこの話題を書く気になったのは、以下のリンクにある過去の体操にまつわる事件報道についてツイッターからの引用に「ゴゴスマ」の文字を発見したからであります。

https://breaking-news.jp/2016/01/18/022443

この事件は、ニュース内に逮捕された体操コーチの実名が出てしまっているのでリンクを貼ることに心苦しさはあるのですが、最後のコメント欄まで読むと、ちょっと違った印象を読む人に与えると思いますので、あえてリンクを貼らせていただきました。

ニュース自体を覚えている方もいるかも知れませんが、当初はこのサイトのようにコーチが生徒に体罰だけでなく重症を与えるような暴力を働き、警察に逮捕され勾留されたことで多くの方に、このコーチ批判のコメントが殺到したのでした。そんなツイッターのコメントの中に「#ゴゴスマ」という文字があったということは、恐らく同じような論調で報道したと思われます(当時のテレビは見ていたのですが、ゴゴスマでどのような報道があったかは細かく指摘できない点はどうかご了承下さい)。

しかし、この事件は結論から言うと告発者の出した資料の一部が虚偽だった事が判明したことで不起訴になり、問題となった体操教室も現在は全く問題なく営業されていますし、逮捕されたコーチも市内の幼稚園などで体操指導をしているなど、リンク先でのバッシングというのは、今となっては実は見当外れの部分も多くあるのではないかと思います。

私個人としては、件の体操コーチの汚名は晴らされたと思っていますが、当時この事件についてリンクさせていただいたネットメディアを含む報道したマスコミはどうなのでしょうか。もし、自らの取材なしに警察の発表する情報だけを受けて、その裏も取らずに新聞やネットに書いたりテレビで放送したりしてしまったら、この事件が不起訴になったことを受けて何らかの対応を取るべきですし、今後同じような事件が発生した場合、まずは関係者に取材して裏を取って報道するというのがテレビとしての義務ではないかと思います。

話は最初に戻りますが、女子体操選手に対して暴力を奮ったと告発した人に取材をしたのかということについてゴゴスマでは明らかにせず、単に協会幹部がコーチを陥れるために誰かが暴力事件で告発することを促したのだろうなどと憶測に基づくコメントを森末慎二氏から引き出すだけでした。その事についてゴゴスマの記者が動いた形跡はありません。今回の放送で見た唯一の記者の行動というのが、塚原光男氏にいきなりマイクを向けてコメントを取ったことだけで、それこそ鬼の首を取ったかのように塚原氏の漏らしてしまった言葉について番組で噛み付いていました。

誤解して欲しくないのですが、私自身も塚原夫妻の支配する女子の体操界というのは男子に比べると選手のやる気を削ぐ部分があり、それが女子が男子に比べると国際大会の成績に違いがある原因だと思っていて、民主的な協会運営を求めたいと思ってテレビを見ています。しかし、過去に行なった報道を棚に上げて、弱った犬をみんなで打ち据えるような見苦しい事をする前に、しっかりとした取材をしてきっちりと本丸を追い詰めるのがジャーナリズムとしてのやり方なのではないでしょうか。

(番組データ)

ゴゴスマ【会見バトル…被害選手VS体操協会▽男子リレー今夜決戦!】中部日本放送
8/30 (木) 13:55 ~ 15:50 (115分)
【MC】石井亮次(CBCアナウンサー)
【アシスタント】古川枝里子(CBCアナウンサー)
【出演】博多華丸(博多華丸・大吉),田中ウルヴェ京,JOY
【中継出演】森末慎二

(番組内容)

会見バトル…被害選手VS体操協会「権力を使った暴力」本部長を名指しで批判▼男子リレー今夜決戦!▼台風21号最新進路は? ほか(※予定)


全国放送の首都圏偏向と「ちびまる子ちゃん」

2018年8月28日の朝のワイドショーで報じられた大きなニュースは2本ありました。一つは漫画・アニメで人気の「ちびまる子ちゃん」などの作品で大いに知名度があったさくらももこさんが同年8月15日でお亡くなりになっていたことが前日発表されたことによる追悼報道と、もう一つか首都圏を襲ったゲリラ豪雨についての長いレポートでした。

まさにこの内容というのは、過去から現代まで続くテレビの現状とその根底にある精神を表わすような状況だったので、その内容を記録しておきたくあえてこれらの2つの事象を見ていきたいと思います。

日本のテレビは、主に東京にあるNHK・民放の制作した番組を全国に放送していて、中には大阪や名古屋の放送局が作る帯番組やドラマもあるものの、基本的には東京が日本の中心であるという意識に基づいているのか、東京中心の情報番組やニュースも全国放送されるということが普通になっています。

逆に、地方で起こった同じクラスのゲリラ豪雨くらいでは、情報番組ではわずかしか取り上げてくれないような事も起こります。東京というのは全国から人が集まるということもあり、地方在住の人にも誰か知り合いが首都圏にいるからという理屈は立ちますが、本来は首都圏のローカルニュースで扱うべきというクラスのソースでも、取材に行きやすかったり多くの視聴者からのスクープ映像が取りやすいということもあるので、今回もまた同じように長時間の放送になってしまっているということはあるでしょう。

こうした事がわかっていて見ているならいいのですが、まだそうした事がわからない年代の人たちが、テレビの情報番組を見るなどしてただただ東京へのあこがれだけが募り、自分の故郷をないがしろにして東京へ行ってしまうと、ではその人は東京で何をよりどころにして生きていくのか? と心配になります。ここで改めて紹介したいのが漫画「ちびまる子ちゃん」の世界であるのです。

元々さくらももこさんは高校を出て短大まで自宅のある静岡県清水市(現在は平成の大合併によって静岡県静岡市清水区となっています)で生活していました。短大時代にデビューが決まったので出版社のある東京に出ることになりましたが、その作風は多くの人がご存知の通り、生まれてからずっと過ごしていた小学校の学区を中心にした物語になっています。

今回の訃報報道で改めてびっくりしたのは、アニメが放送されているという中国や台湾からのその早すぎる死を悼む声が聞こえてくることです。作品の内容については普遍的な内容がほとんどではあるのですが、先日お亡くなりになった西城秀樹さんと登場人物の「まる子」との関係は極めて地域的なもので、なぜ西城秀樹なの? という疑問を持つ方も少なくないでしょう。しかし、そうした細かいディテールを詳細に漫画に描くことで、たとえそれが自分の知らない地方都市での物語であっても、まるで自分の事のようなリアリティを感じることができるのが、「ちびまる子ちゃん」の魅力であると思います。

こうした「自分の根付いた土地に自分の個性を求める」創作活動というのは、一見すると「楽屋オチ」で「ひとりよがり」のようなものになってしまうような気もするのですが、実はそうではないどころか日本を飛び込えて世界からも認められるオリジナリティーを持つということもあるのです。

同じアニメで言えば、「ドラえもん」がそうですし、クラシックの世界で言うと、ヨーロッパの音楽に近づこうとした勢力の一方で、生まれ故郷の北海道のアイヌの自然をそのまま曲にしたことが海外で評価され、その後「ゴジラ」シリーズの作曲を担当した伊福部昭さんの例もあります。ポピュラー音楽でも、かつては何を言っているかわからないと日本ではあまり評価されなかった沖縄周辺の音楽は、今では日本の世界に誇ることができる音楽として認識されているように思います。

話は戻りますが、そんな中であくまで首都圏中心で地方のニュースを軽んじる今の東京のキー局というのは、日本の全てを代表するものではないということは、ここではっきりと明言しておきたいと思います。最近になって地方発の人気番組が首都圏で放送されたりネット配信の形で多くの人に見られるようになってきましたが、まだまだ認知度は足りないような気もします。

ですから、特に地方出身の若年層の方々については、東京にあこがれ故郷から東京に出ていくこと自体は全く問題ないと思うものの、故郷を出るまでには自分がそれまで暮らしてきた土地が自分の考えのいくらかを作っているということも認識して欲しいと切に願うのです。多くの地方出身者が集まる首都圏では、やはり自分の出身である場所で何をやってきたかということが、自分をアピールするポイントになり得るということを、ぜひ「ちびまる子ちゃん」から学んでいただきたいなと思います。

さくらももこさんの作品は、単に自分の地元に根ざした物語ということだけでなく、ほぼ自在の人物を「キャラクター化」し、その人たちを怒らせることなく「笑える」物語として成立させることのできる「客観性」および「バランス感覚」を持った現代の語り部のような存在ではなかったかと思います。ご冥福を心からお祈りいたします。


微妙に中途半端な気がする「芸能生活35周年」記念番組

番組放送前から、金曜日のお昼の「バイキング」に告知名目でこの番組出演の船越英一郎さんが出演し、すぐNHKの自らが司会を務める番組にそれこそ「レコード大賞→紅白歌合戦」ばりの移動をしたことが話題になりました。恐らく、本人役で出演する船越英一郎さんが冤罪疑惑を掛けられるというストーリーだけに、世の中で一番船越英一郎さんに対しての屈折した感情を持つと思われる松居一代さんが何らかの形で出てくるのではないかと期待を持たせたことは確かでしょう。

しかし、ドラマの内容というのはいわゆる「2時間サスペンスあるある」を散りばめ、ついでに船越英一郎さんの離婚というところでお相手の名前は出さずにストーリーは進行していきます。正直言って、犯人が木下ほうかさんだったことは意外ではありませんでしたが、なぜそこまで船越英一郎さんを殺人者としてハメる必要があったのか、その動機についてはかなりの説明不足だったと思います。

結局の所、今回の制作を担当したホリプロは、最近の船越英一郎さんに対するかなりなスキャンダラスな報道を利用して、内容的には通常の2時間サスペンスとしては相当内容のないドラマを見せようとしたと考えることもできると思います。

しかし、こうした手法は今の世の中ではあまり通用しません。江戸時代には「珍獣イタチ」の興業と称して「普通の板っぺらに朱をぬったもの」を「板血」だとする看板と内容の違いが甚だしい見世物小屋でも、全国を渡り歩く中でそのカラクリを知っている者というのはそれほどいません。都市部でなく地方の村だけを回るような興業なら、かなり稼げたのではないかと思いますが、今はネットでそのカラクリは簡単に全国に伝わります。

そして、もう一つ思う事には、もしこの番組が船越英一郎さんではなく渡瀬恒彦さんの芸能生活○○周年の特別企画という風な形だったら、もし渡瀬さんにスキャンダルが発生していたとしても、このような半分ふざけたような内容にできるのかということも問いたいです。それほど番組の内容に文句を言わないで粛々とその仕事を遂行する船越さんだからこそこの企画が成り立ったのだとしたら、逆に船越さんが可愛そうにも思えてきます。

それこそ、後日ドキュメンタリーで今回のプロデューサーと船越さん本人が2時間サスペンスについて真面目に激論するような番組が出てくればそれはそれで、討論の土台としての作品として価値は出てくるとは思いますが、そんな風にサスペンスドラマについて考えていない人たちが多いからこそ、あのような番組が成り立ったのでしょう。

しかし、ドラマとしては時代劇がほぼ終了し、2時間サスペンスも昔のように制作できないとなると、今後のテレビドラマはどうなってしまうのか、本気で心配になってしまいます。バラエティや若年層を主なターゲットにしたドラマで十分というならそれでもいいでしょうが、そうなると他の民放とは毛色が違ってきて、ドラマ視聴者の棲み分けが起こるような感じもあります。今後、船越英一郎さんが主演のきちんとしたサスペンスドラマがフジテレビで作られるのかどうか、それにも今後注目したいと思います。

(番組データ)

金曜プレミアム・芸能生活35周年特別企画 船越英一郎殺人事件 フジテレビ
2018/08/24 19:57 ~ 2018/08/24 21:55 (118分)
【配役】
船越英一郎…船越英一郎(本人役)
桜庭彩乃…夏菜
柳万奈美…内山理名
源田孝介…木下ほうか
花巻裕也…桐山漣
山村紅葉…山村紅葉(本人役)
萬田久子…萬田久子(本人役)
吉田鋼太郎…吉田鋼太郎(本人役)
内藤剛志…内藤剛志(本人役)
北大路欣也…北大路欣也(ナビゲーター)
【脚本】 波多野都
【編成企画】 加藤達也(フジテレビ編成部)
【プロデューサー】 平部隆明、大健裕介、白石裕菜、鈴木俊明(ホリプロ)
【監督】 猪原達三
【制作】 フジテレビ
【制作著作】 ホリプロ

(番組内容)

これまでの2時間サスペンス主演作は100本以上!“サスペンスの帝王”船越英一郎が芸能生活35周年を記念し、初めて本人役で主演に挑みます! 殺人事件に巻き込まれた俳優・船越英一郎は、2時間サスペンスで得た知識と経験を駆使して推理に挑みますが、次々と予想もできない危機に襲われ、船越自身が殺人事件の容疑者に!?本当に船越が犯人なのか!?事件の真相は!?フィクションの中にリアルが織り込まれる2時間サスペンス。船越英一郎芸能生活35周年を記念し、豪華俳優陣も本人役で集結です!

〈あらすじ〉

船越英一郎(船越英一郎)芸能生活35周年記念企画の2時間サスペンス『独身貴族探偵・桜小路優』の撮影が世田谷撮影所で行われていた。撮影現場セットでは、桜小路役の船越が事件のあったカラクリ屋敷について推理をしている。すると開かないはずの扉が開き、そこからテレビプロデューサーの遺体が倒れ込んできた。

悲鳴が飛び交う撮影現場。スタジオは一般人が出入りできない密室であることから、容疑者は撮影関係者・スタッフ・出演者と考えられ、船越自身も容疑者の一人となっていく。ドラマの撮影は中止に、ネットには殺人事件のあらましが詳細に報じられ、船越が殺人犯なのではという憶測が広まっていく。まさしく崖っぷちに立たされた船越は、長年経験した2時間サスペンスで得た膨大な知識を総動員し、難事件に立ち向かう。


高校野球についての新たな流れ

今回の夏の甲子園は100回の記念大会で、さらに秋田県代表の金足農業高校が秋田県勢としては第1回大会以来、103年振りに決勝へ進出したということで、もはや優勝した大阪代表の大阪桐蔭高校の存在が霞んでしまうほどテレビニュースでの後追い報道がテレビでされましたが、改めて思うことは高校野球に限らずアマチュアのスポーツは人のためではなくあくまでプレーする本人達のものであるということです。確かに甲子園大会は他のあらゆるスポーツに先んじて日本国民の娯楽としても扱われてきて、ここまで存在が大きくなるにあたってはテレビの影響を考えないわけにはいきません。ここでは、今大会を通じてマスコミやネットで出てきている様々な批判や意見について、考えることを残しておきたいと思います。

まず、なぜ優勝した大阪桐蔭高校の存在が薄くなったかというと、決勝で対戦した金足農業高校の存在があまりにも試合を見ている人の心象に訴えるところがあったからでしょう。100回目となる夏の大会で、まだ優勝していない県というのは多くありますが、地域的に見ると、青森・岩手・秋田・山形・宮城・福島という東北地方の代表がまだ春夏通じて一回も優勝していません。かつては雪深い地域性がその原因と言われ、実際に新潟・富山・石川・福井(春優勝有)・鳥取・島根のように、冬に雪が降るような所では確かに優勝していない県が多いのですが、かつては東北以上に優勝とは縁遠かった北海道が駒大苫小牧高校の出現によって2連覇し、決して雪国のチームであっても優勝できないということはなくなったと思います。

さらに今回の金足農業高校は、ピッチャーの吉田選手を中心に、全て秋田県出身の3年生9人で地方予選から全国大会決勝まで戦い続けてきた「絆」というものもあり、試合で勝ち進むごとに、もしかしたらこのまま東北地方最初の優勝にまで行ってしまうのではないかという期待を多くの人が持つに至りました。決勝こそ大差で敗退となりましたが、かつての福島・磐城高校や青森・三沢高校のように優勝した高校よりも今なお語られるような伝説的な足跡を甲子園に残したと言えるのではないでしょうか。ここでのポイントは、優勝した大阪桐蔭高校とは違う金足農業高校のチームコンセプトです。

・スカウティングなしのオール地元(大阪桐蔭は全国規模で選手を見ている)

・投手一人体制(大阪桐蔭は複数投手でローテーション回し)

・公立の農業高校(大阪桐蔭はスポーツも文化系クラブも大学進学もトップクラス)

まだあるかも知れませんが、これだけ状況が違う高校が決勝で相まみえるということになると、日本の高校野球ファンの中にはあえて劣勢の方を応援したくなるという海外の基準から見ると理解しがたい状況になり、それに新聞やテレビなどのマスコミが味付けをして大きなうねりになってしまったということになります。

個人的にはスカウトをするのも、県外から越境入学をさせるのも、公立でなく私立であっても全く問題ないと思っているのですが、今回の報道の中にはそれらのことが悪とは言わないものの、高校野球の理念とは合わないというような事で批判する声もあったように思います。

個人的には大阪桐蔭高校の考え方というのは大変良く理解でき、有望な中学生が集まるのも当然なことだと思っています。それは、越境入学でも中学オールスターをかき集めることでもなく、徹底した相手チームの研究とその対応を考える「データ班」の存在にあると思っています。これは、例えばオリンピックで金メダルを取るために戦うようなもので、万が一の失敗も許されない地方大会からのトーナメントで一度も負けずに戦い抜くためには、どんな力の差のある高校との対戦でもきっちりデータを取って、何が起こっても慌てずにデータを確認して対策を取ることができる情報網にあると思います。

よく、甲子園に出場するチームの目標が「全国制覇」と宣言する所は多いと思いますが、全国の高校チームの中で一番その目標に向かって努力し、常に全国制覇を見据えている高校こそが大阪桐蔭高校だと思うのです。その目標のために努力をするわけなので、どんなに大変な練習でも我慢するわけなのですが、そのためには相当力のある選手であってもレギュラーになることは難しく、状況によっては単なるデータ班に振り分けられグラウンドで活躍できなくなることがわかっていても入学したいという生徒もいることでしょう。それだけ、「全国制覇」ということに特化した高校野球を大阪桐蔭高校がしているということで、それはそれで立派なことだと思います。

しかし、全ての高校生は全国制覇を目的に野球をしているわけではないと思います。金足農業高校のように、地元の仲間と甲子園に出ることが目的の高校もあるでしょうし(今回はそんな状況で確変を起こしてしまったと考えることもできます)、たとえ地元でなくても甲子園の土を踏みたいと思って越境入学するような生徒もいます。

今までは、そのような高校球児がほとんどだろうと思っていたのですが、今回、朝日新聞の講評を見ていたら、ちょっと面白い記事を見付けました。それは静岡県代表の常葉大菊川高校について書かれていた記事でした。大会中から「フルスイング打線」とか「ノーサイン野球」というような言われ方をしていたのですが、チームを取材していた記者の眼には今までの高校野球と違う流れを常葉大菊川というチームに見出しているような印象を受けました。

それは、練習では恐らくきめ細やかな指導があるからこそ堅い守備や見事な走塁があると思うのですが、試合の段階では監督はただ置物のように見ているだけで、攻撃も守備も全て出場している選手が考えて行なうという形にしているそうです。それこそ勝利をするためには高校生の判断では足りないと思う指導者がいたら、試合のポイントでサインを出して監督の判断で選手が動くことが普通ですが、過去には投手の投球内容についてもキャッチャーからではなくベンチの監督が球種のサインまで出すというチームもあるほどです。しかし、それで勝てればいいですが、監督の判断で高校生活最後の試合で負けてしまったとしたら、選手の中にはその事がトラウマとして残ってしまう事もあるでしょう。

常葉大菊川高校の高橋監督がまさにそのような経験を選手時代にしていたそうで、常に送りバンドでなく、打てそうな予感があった時にもし自由に打てていたらという後悔があったそうで、教え子にそのような経験をして欲しくないということで、ノーサインで好きにやらせるという戦い方をするようになったとのことです。

さらに大会中でびっくりしたのは、対戦相手が決まっても十分にデータ分析をするわけでもなく、あくまで自分達がやりたいような形での試合を進めることを優先させるような事が現地のレポートの中にあったので、このチームはそこまで「勝利至上主義」ではなく、とにかく野球を楽しんでやる事を優先的に考えているような感じなのです。小さい頃に野球を始める理由というのは様々だと思いますが、単純にボールを投げて空振りを取ったり、逆に大きな当たりをかっとばす事自体が楽しいからというのがほとんどではないかと思います。好きで楽しいから上達しようと思って一生懸命練習し、その結果が試合で出ると、さらに熱中するというような形で野球がうまくなれるのなら、その方がいいという風に考えるのが常葉大菊川の野球であるというような感じでした。

今回の菊川のメンバーは大阪出身のレギュラーが一人いたものの、全国選抜に選ばれた二人はどちらも高校の近くで幼少期から過ごした地元の子で、他のメンバーもほぼ地元といったような選手構成になっていました。別に全国からうまい子を集めなくても、練習を辛く苦しいとは思わずに楽しんでやることによってここまで伸びるなら、人によっては常に勝つことを意識せざるを得ない大阪桐蔭コースでなく、たとえ甲子園に出られなくても常葉大菊川コースを選んだ方が自分の実力を伸ばして行けるのではないかと思う子が出てきても不思議ではありません。

今回の大阪桐蔭高校の盤石の春夏連覇に、高校野球は面白くなくなるのでは? と考える方もいるかと思いますが、今回紹介した大阪桐蔭高校とは違うアプローチで野球がうまくなりたいと考える球児も少なくないと思われますので、個人的にはそこまで心配はしていません。ただ、常葉大菊川のやり方ではなかなか全国制覇は難しいと思いますが、優勝するのも全国で一校だけなので、自分の思い通りにならずに悔いを残すなら、自由にできるところで思い切りやってみたいと思う生徒も今後増えるような気もします。今回はそうした新しい高校野球の流れを感じられたという意味でも面白い大会になったのではないかという気がします。


あまりにも安易な企画のパクリは恥ずかしいだけ

先日、全国ネットでない地方の夕方のニュースを見ていたら、ニュースの中の企画物という感じで、地方で使われている鉄道路線を取材するものがありました。鉄道会社の協力を受け、路線を走る電車の中を撮影することのできる許可をいただいた上で、撮影クルーは何をしていたかというと、車内で旅行をしたり移動をするために電車に乗っている人にインタビューをして、

「この後、テレビカメラが付いて行っていいですか?」

とひたすら聞きまくっていたのでした。それでも、地方の民放局が地元で良く知られたタレントや、全国ネットでもお馴染みのタレントさんを入れることで、多少はうまく行くかも知れないと思うのですが、今回私が見たのは地方のNHK制作の企画だったので、撮影ディレクターも誰だかわからない若い男性でした。

一般に「NHKは田舎に強い」とは言いますが、取材の1日目には密着取材を一件も行なうことができませんで、翌日ようやく密着できた方2人の様子を放送はしていましたが、かなりスケールの小さな「YOUは何しに日本へ?」(テレビ東京の人気番組)という感じで、本当に地元民として見ていて恥ずかしいような内容になっていました。

そもそも、NHKは皆さまの受信料によって運営されているので、全く密着できないまま1日を無駄に過ごす可能性のある企画を通すこと自体あまりいい気はしませんし、何よりみ放の人気バラエティの内容を丸パクリのような事をやってスタジオのキャスターも何も感じないのか? と思ってしまうのです。

もはや「NHKらしさ」などという言葉は死語であって、面白そうなら何をしてもいいとこんな企画を通してしまったのだとしたら、日本のテレビの未来はどうなってしまうのか心配になります。全国放送でないローカルにしか流れないから良いと考えているようだったら、NHKの職員は全国を異動して東京や大阪など全国で放送される番組を作るような部門になる可能性もあるのですから、今後ますますNHKの番組の質が落ちる可能性まで見えてしまったというのが正直なところです。

NHKの、しかもローカルニュース内で流すコーナーというのは民放と違ってあまりふざけたりできませんし、露骨な宣伝に繋がるようなことはできないなどハンデはありますが、その中でできることを探してきちんと見せるのが制作者の知恵の出しどころであり、それはローカル番組であってもないがしろにしてはいけないものだろうと思うのです。


単発人気クイズをレギュラー化することによって変わるもの

番組放送前に、この「99人の壁」という視聴者参加型のクイズ番組が2018年10月からゴールデンタイムでのレギュラー化が決定したという報道がありました。前回紹介したように、テレビマンとしての実績のないところから出てきた企画であり、司会となった俳優の佐藤二朗氏もこの展開にはびっくりしているのではないでしょうか。ただ今回の放送は、そうしたレギュラー化を睨んだ内容の手直しが随所に見られるものとなりました。

まずは、2回ほど番組で用意したマニアックなクイズについて、回答者の側からクレームが入るというケースが2件紹介されました。テレビ的には進行について、クイズ作者の作った問題こそが絶対で、それと違う回答をした場合は即座に失格という方向に行くべきなのですが、答えた内容が問題作成者の出した答え以上に詳しかったので不正解になったケースや、問題自体がクイズの問題としては不適切のいうケースが収録中に判明したのです。

このケースはそのまま放送され、番組側は「審議」の上、回答者が納得するような形での対応をして再開しましたが、100万円というお金を掛けてのチャレンジであるということもあり、あらゆる可能性を想定してクイズ問題を作り、少なくともクイズ問題自体の不備を現場で指摘される中で特定のチャレンジャーに対して明らかにえこひいきをしたり、逆に自らの間違いを棚に上げて正当な抗議を却下するような失態があると、レギュラー化した場合にはさらにネットで叩かれるような事も起こるでしょう。週一のレギュラー化を実現することになると、常に100名のマニアに100万円を獲らせないための高度な問題作りのクオリティが必要になります。その点をクリアにできたからこそのレギュラー化の発表なのでしょうが、今回の番組についてはその番組内容を垣間見せるようなクイズも放送されました。

番組前半はガチな一般視聴者に、番組データにあるToshlさんと能町みね子さんだけが入ってクイズを行なっていましたが、後半に出てきた多くの芸能人は私が入手したテレビ番組表の内容でもクレジットされていません。それぞれの人物に思い入れがある100人を集めたということなのですが、実際には勝俣州和さん(萩本欽一)、やくみつるさん(千代の富士)のように、テレビのクイズ番組で見ることの多い人が普通に出てきていて、さらにいわゆる物マネ芸人の方々が多数まじっていましたが、さすがにその方々は芸能人とは言ってもご本人ではないので実際にクイズに関係しなければ司会の佐藤二朗さんが話題にすることもなく、知らないで見ていた人は、「なぜ明石家さんまさんと大竹しのぶさんの娘であるIMALUさんが空気のように番組で触れられないのか?」と思っていた人もいるかも知れませんが、残念ながらその方はご本人ではなくIMALUさんの物マネをされるタレントの方だったのでした。

レギュラー化することになると、番組の認知度にもよりますが、当初は参加希望者が集まらない可能性もあります。そのために考えられた一策とも思えます。しかし、基本的にはギャラが発生しているかも知れない芸能人が100万円を獲っても、参加したいと思っている一般視聴者は萎えるだけなので、今後解答者として普通に予選を勝ち抜いた一般応募者の中にタレントを入れ込むのか、そんなところにも注目をしたいと思います。

個人的には毎週、出場者に賞金のチャンスが有るクイズ番組というのは、存在するだけ貴重なものだと思っているので視聴率が良くなって参加者が増えるようになって欲しいですが、マニアックなジャンルをどこまで許すのかというのもちょっと気になります。

というのも、今回の放送の中で「路線図」に特化したクイズに挑戦された方が見事100万円を獲得されたのですが、さすがに残りの99人の中に海外の路線図について少しなりとも知っている人がいなければ、今後は「いかに人がわかりそうもないマニアックなジャンルを設定するか」というキワモノクイズに終わってしまう可能性もあります。この点は十分に制作側でも考えるとは思いますが、視聴者が付いて行けないようなジャンルの場合、見ている人のためになるウンチクが紹介できるとか、あくまでテレビ的に面白いような形にしないと、見ている方でもわけがわからなくなります。

そうしたマニアックな点とのバランスをいかに取るかというのが、この番組が多くの人に支持されるかどうかにもかかってくると思います。今回はテレビ朝日の家族みんなで楽しめる「ミラクル5」の裏にぶつけてきましたが、できれば貴重なクイズ番組同士、お互いをつぶさないような編成で放送して欲しいということも合わせてお願いしたいですね。

(番組データ)

超逆境クイズバトル!! 99人の壁 夏の大花火【全員が敵!勝てば100万円】フジテレビ
2018/08/15 19:00 ~ 2018/08/15 21:00 (120分)
【MC】 佐藤二朗
【解説】 長嶋一茂  YOU  立本信吾(フジテレビアナウンサー)
【“無差別級”芸能人出場者】 Toshl(X JAPAN)  能町みね子  (※五十音順)
【チーフプロデューサー】 濱野貴敏
【プロデューサー】 木月洋介
【演出】 千葉悠矢
【制作】 フジテレビ第二制作室

(番組内容)

昨年の大みそか、今年の4月に特別番組として放送され、一部のテレビマニアやクイズフリークたちの話題をさらった早押しクイズ番組『99人の壁』。2018年夏、満を持して3回目のスペシャル放送が決定!MCは前回・前々回に引き続き俳優の佐藤二朗が務める。 早押しクイズ番組『99人の壁』は、100人の一般公募の参加者の中から選ばれた1名のチャレンジャーが、ブロッカーとなった残り99人の参加者を相手に早押しクイズで対決するというもの。チャレンジャーが5問連続で正解すれば賞金100万円をゲットできるが、1問目は25人のブロッカー、2問目は50人と増えていき、最終的には99人がブロッカーとなった“99人の壁”を乗り越えなければならない。 当然人数で圧倒的に不利なチャレンジャーに与えられた唯一のアドバンテージは、自分の「得意ジャンル」を指定してクイズに挑戦できること。“刀”“イントロ”“カーリング”などジャンルは何でもOK!自分のためだけに作られたクイズで100万円獲得を狙うことができるのだ。 2時間放送の今回は2部構成でお届け。参加者100人の個性あふれるジャンルで対決する〈無差別級〉に加え、平成最後の年にちなんで“安室奈美恵”や“イチロー”など“平成時代に活躍した日本人”に詳しい100人を集めた早押しクイズバトル〈平成の日本人編〉も開催する。


時代劇のターゲット層を考えた放送を

最近、時代劇とジャニーズ事務所との関係が良好らしく、TBSの人気番組だった「大岡越前」を当時のシナリオ通り再現したNHK BSプレミアムでは少年隊の東山紀之氏が大岡越前役を演じたり、今回紹介するTOKIOの松岡昌宏氏が彼自身も大好きという遠山左衛門尉の役を熱演しています。

今回のドラマは絵師歌川国芳役の吹越満氏など、松岡氏を支える脇役もしっかりしていて筋書きも安定していてじっくり見ることのできる作品に仕上がっていたと思っています。しかし、見る側にとってはこのドラマをスタートから終了まで見続けることはかなりの荒行だったということもここで明らかにしておきます。

テレビの場合は映画と違ってコマーシャルが入るとはいえ、夜の8時から11時まで3時間を超える長さというのは見る方も体力が必要になります。通常、夜8時からの単発ドラマ枠というのは2時間で、かく言う私もその当日の徳島市の阿波踊りの「総踊り」が夜の10時から開始という話が入っていたので、その中継はテレビ朝日の「報道ステーション」でやるだろうと目論み、ドラマを見た後に見ようと思っていたら10時を過ぎても一向に終わる気配がないので、ここでザッピングを繰り返して徳島市からの中継が始まってからはテレビ朝日の方を見ていました。

もしストーリーをコンパクトにまとめ、通常の2時間で収めていたら個人的な評価は上がったと思いますし、ドラマのテンポも良くなって、主演の松岡昌宏氏の印象もさらに良くなったのではないかと思うのですが。

現代の時代劇は新作が作られることが少なくなったものの、中高年の方々に対して過去の時代劇が人気を博し、CSの「時代劇専門チャンネル」もあります。そうした状況を捉えれば、お盆の時期に久し振りに三世代が茶の間に集まり、そこでおじいちゃんやおばあちゃんが好きな時代劇を見る中で、出演キャストに渡辺麻友さんのような、お子さんだけでなくお孫さんも知っている人が出演している中で、幅広い世代に時代劇の面白さを知ってもらおうとする努力はわかります。しかし、あまりにドラマが長すぎると見ている側がだれてきて、そんな中でつい時代劇を見たいはずのおじいちゃんがコックリと寝てしまったらお孫さんはこれ幸いと自分の見たい番組に変えられてしまうという状況が私には見えます。そういう意味では、かつての「ナショナルアワー」の時代劇「水戸黄門」「大岡越前」は一話完結の1時間番組だったので、小さいお子さんでも飽きることなく見ることができ、それで時代劇が好きになった人も少なからずいるでしょう。

確かに良質なシナリオと良質な芝居があれば評価されるドラマは作ることができるとは思いますが、だからといって関係者が見るにも長いというくらいの3時間を超えるものにする意味というのが個人的には見出せません。この点についてはそれこそ「次はない」くらいの意気込みで、本気で時代劇を多くの人に見てもらって好きになってもらうにはどうするのかという話し合いを行なった上でさらなる作品を企画して欲しいと切に思います。

(番組データ)

ドラマ特別企画 名奉行!遠山の金四郎 TBSテレビ
2018/08/13 20:00 ~ 2018/08/13 23:07 (187分)
(出演)
松岡昌宏 稲森いずみ 中原丈雄 神山智洋 加藤雅也 渡辺麻友 不破万作 生島勇輝 伊藤洋三郎 山崎裕太 村上新悟 中西良太 黒木真二 冨樫真 河合雪之丞 菅原大吉 吹越満 平田満 里見浩太朗 原田美枝子
吉川清之
(脚本)いずみ玲
(監督)下山天
(プロデューサー)金丸哲也 小柳憲子

(番組内容)

去年好評を博した松岡昌宏の遠山の金さんが帰ってくる!水野忠邦の天保の改革が吹き荒れ、江戸の庶民の鬱屈が溜まっている中、謎の連続失火と禁止されたはずの隅田川の花火大会での大爆破、江戸庶民の味方遠山金四郎が女鼠の助太刀、おたねの出生の秘密を明かしつつ見事に解決します!事件の鍵を握る謎の絵師歌川国芳に吹越満、花火師の棟梁役に里見浩太朗が友情出演!


たかをくくってマスコミ対応を誤ると大変なことになる

2018年8月、日本大学に関する様々な話題がテレビのワイドショーで伝えられる中、日本大学に関わるタレントのスキャンダルまでも週刊誌で報道されてしまいました。日本大学に裏口入学したのではないかという疑惑を持たれたのが漫才師「爆笑問題」の太田光さんで、この騒動も大きくなるのかも知れませんが、どのようにテレビで喋るかによって今後のタレントとしての仕事にも影響してきてしまう可能性も出てきます。

この問題はまだどうなるかはこの文章を書いている時点ではわかりませんが、タレントと不正入学という事で思い出すのは、タレントのなべおさみさんのご子息のなべやかんさんの明治大学替え玉入学の事件でした。この時に、何をやっても何を発言してもバッシングを受けたのは、それまでのなべおさみさんの芸能活動についてのスタンスと、替え玉受験をした事実が発覚した後の態度がいちいちテレビを見ている人たちから突っ込みを入れたくなるような発言や行動をしてしまったからだと思われます。同じことを立川談志さんが行なったり発言したりすれば世間は許すのに、なべおさみさんが同じことをしたら何が何でもバッシングの方向に向かってしまうなど、後年騒動の主役であったなべやかんさんがテレビ朝日系列の「しくじり先生」でその顛末について説明しましたが、細かいところでたかをくくっているように見られる行動があり、それを正さなかったことでどんどんテレビ視聴者との感覚がずれ、バッシングが強まっていったというところがあったようです。

現代の芸能界でそのように何をやってもバッシングを受けがちになっている方の一人としてやり玉に挙がりやすいのが、ぱっと見てあまり苦労をしているようには見えないのに、普通に努力してもなかなか出演するのが難しいと思われる「笑点」のレギュラーとして抜擢された二代目の林家三平さんだというのは多くの人の意見が一致するところだと思います。

「笑点」のレギュラー出演者になることができれば、数多くいる日本の落語家の中でも一番顔が売れ、様々な営業のお誘いも掛かります。たまたま今回の放送の中で、放送日が8月12日ということがあったのか、二代目林家三平さんの挨拶の中で、徳島市で行なわれる「阿波おどり」についての告知をしていたのです。

この件についてちょっと気になって調べてみたら、ネットで地元の徳島新聞の記事がひっかかり、何と当日の12日に笑点のスポンサーであるサントリーが出している「サントリー ザ・プレミアム・モルツ連」に配偶者の国分佐智子さんといっしょに踊りに参加するということがわかりました。

これは別に悪いことではないのですが、2018年の徳島市で行なわれる阿波おどりについては、何かときな臭い話が持ち上がっています。表面上は、長年にわたって赤字を垂れ流していたとされた観光協会が破産宣告され、今年の阿波おどりは市と徳島新聞の方で取り仕切っている印象なのですが、有名な「総踊り」や街の路地に入って踊ることが禁止されてしまったことによって、一部の人たちが反発しているなんて、祭りの盛り上がりに水を差すような、なまぐさい話が週刊誌やネット上で話題に挙がっているのです。

これが単なる地元だけの話題で済んでいれば問題はないのですが、今後の祭りの状況によってや、関係者の暴露によって日本大学やボクシング協会のような形で全国放送のテレビ上で問題化された場合、当然祭りに参加することによって出演料や経費などが支払われているわけですから、週刊誌やテレビが面白おかしく、関連付けてバッシングされる可能性はないわけでもありません。当然、まだ大きな問題になっていない段階ですので、別に二代目林家三平さんの方では危機感も何もないでしょうが、いくらご実家の力が強くても、笑点のデータ放送による視聴者参加の座布団を上げたり取ったりするコーナーではほとんどの回で出演者では最低枚数で、多くの回で「0枚」というご本人にとっては屈辱的な仕打ちを受け続けているということを忘れてはいけません。何かきっかけがあれば一斉バッシングを受ける可能性を考え、自分のイメージが良くなるような芸能活動を心掛けないと、なべおさみさんの二の舞になる可能性もあります。

私自身は二代目林家三平さんとは何の関係もありませんが、もし阿波おどりについての話題が沸騰するような事があれば、三平さんには自分のところにやってくるマスコミに対して真摯な対応をすることが、かえってピンチをチャンスに変えられる事になるかも知れないので、この時点で個人的にエールを送っておきます。

(番組データ)
笑点 円楽が見えた!?昇太の横に緑の爺さん 日本テレビ
8/12 (日) 17:30 ~ 18:00 (30分)
【司会】春風亭昇太
【大喜利】三遊亭小遊三、三遊亭好楽、林家木久扇、林家三平、三遊亭円楽、林家たい平、山田隆夫
【演芸】笑福亭鶴笑
【チーフプロデューサー】東井文太(NTV)
【統轄プロデューサー】倉田忠明(NTV)
【プロデューサー】福田一寛(NTV)、飯田達哉(ユニオン映画)、大畑仁(ユニオン映画) 【ディレクター】高木裕司(ユニオン映画)、加藤健太(日テレアックスオン)

(番組内容)
老舗のお笑い演芸バラエティー。大喜利では、笑点クロスワード遊び。真ん中に「中」の付く言葉を考えてショートストーリーを発表▽笑福亭鶴笑のパペット落語
【演芸コーナー】笑福亭鶴笑のパペット落語 【大喜利】▽笑点クロスワード遊び。真ん中に「中」の付く言葉を考えてショートストーリーを発表▽風鈴をもって鳴らすなどして一言。「どうしたの?」に対してもう一言。


「たかがテレビ」で何が悪いのか

毎日新聞8月8日の夕刊に載った放送作家でテレビ製作会社「ベイビー・プラネット」代表取締役社長のたむらようこ氏のコラム「窓辺から」で『「テレビ」とひとくくりにしないで』というコラムの題名が目に留まりました。

内容については、たむら氏が自分の母親と電話している中で「新しい話題に飛びついては、すぐに放り捨てるような番組の姿勢が嫌だ」と愚痴っていたときに「えっ? テレビってそんなもんやろ?」と言われたことがショックで、テレビを作っている人には様々な考えがある中で番組ができているという事を主張し、ひとくくりに「テレビなんて」と言ってくれるなと結んでいるのですが、これはテレビを見ている立場からするとそんな事を言われても……という気になってしまうのが正直なところです。

政治家や役人がが不祥事を起こせばテレビでその事を大きく伝えれば伝えるほど「今の政治家(役人)は」というひとくくりに考える人を増やすことにもつながり、テレビはいままでさんざんそんなことを繰り返してきています。そうしたテレビの特質をわきまえていながら自分たちだけはひとくくりにしないでというのは、ちょっと身内に甘すぎるのではないのかなと正直思ってしまいます。

さらに、テレビがひとくくりのイメージで見られがちな原因として考えられるのが、民放の場合はスポンサーや広告代理店、さらにNHKを含めてあるのが特定の大手芸能プロダクションに忖度し、出演者のキャスティングや内容に影響するのではないかと思われていることも原因のように思います。ただこれは、テレビが大きなショーウィンドーとして莫大な広告費が投入されてきたことの一つの結果であって、いくら高潔に自分はそうではないと言うテレビマンがいたとしても、その事実にはあらがえないのではないかと思います。

さらに調べていて幻滅したのが、たむら氏は単に企業が出す広告について明らかに一線を越えたと思われる、過去に大企業との露骨なタイアップで視聴者の消費行動をあおったことで問題になったフジテレビの「発掘!あるある大事典」の構成をしていた人物であることがわかったことでした。おそらくたむら氏のご母堂は、過去に娘がそんな番組の構成をやっていたことを知っていたので電話で正直にテレビについての感想を話しただけだと私は思うのです。

こういったことはテレビマンに限りません。様々な職種にはそれにつきまとうイメージが有るものの、中にはその誤解を解き、信頼されるように努力されるような人もいるでしょう。テレビ番組を作っているとつい簡単にメディアを使って自分のご意見を出張したくなるところだと思いますが、他の業種では自分の仕事をお客様に見せながら変わっていくしかないところもあります。そうしたやり方に習うなら、むしろ「たかがテレビ」と思われている中で、ちょっと違う切り口や内容の番組を作り、その番組が評価されることで十分ご自身の主張できるのではないかと思います。

テレビの番組を見せるだけでは心配だというなら、一ヶ月に一回でもいいですからテレビ番組のプロデューサーなどをテレビに出し、自分たちの作った番組について「この番組は失敗した」というような反省を糧にして新たな進歩を目指す自己批判番組でも放送すれば、もっとストレートに「テレビというだけでひとくくりにはできないテレビマンの真摯な気持ち」というものを伝えられるのではと思います。

さらに、今の時代なら会社のホームページでもテレビ番組を送り出す人間の想いというものは伝えられます。単に「今度こんな番組を作ったから見てね」ではなく、「この間放送された番組は自分の思いがほとんど伝えられなかったが、今回は期待して!」というような作り手の叫びとともに紹介される番組については、どのように反省点を生かした構成になっているのかということが興味が出てきますし、見たくもなると思います。「たかがテレビ」と言われても、その中にキラッと光るような場面、制作者の想いのようなものをこのブログで伝えていきたいと思っているので、魅力的だと作り手が思う番組を沢山放送してくれるよう願っています。


高校野球の注目度を下げるためには相当な覚悟が必要

高校野球の全国選手権が甲子園球場で行なわれていますが、今年の大会は第一回から数えて百回目ということで、事前にNHKだけでなくテレビ朝日でも様々な特別番組が放送され、かなり多くの方か見られたと思います。改めてテレビソフトとして高校野球には魅力があるということを示したわけですが、元大阪府知事の橋下徹さんをはじめとして、その裏側は必ずしも清く正しいわけでもないのにテレビ的な演出でその内幕を隠し、実際にはレスリングや日大アメフト、アマチュアボクシングのような体質を生む一番の根源であるとして、いわゆる「高校野球否定論」を言う人達がいます。

確かに未成年の高校生が一夜にして注目され、芸能人のようにもてはやされる人気になるくらいテレビを始めとしたメディアが取り上げるものですから、そうしたマスコミの行為によって浮かれてしまい、選手や監督だけでなく地域自体が盛り上がってしまっているので、指導方法が間違った方向に向かってしまったり、大きな不祥事の温床になってしまう恐れが出てきても、なかなかその勢いを止めることができないということは過去にも現在にもあると思います。

そもそも、過去には旧制中学の中等野球と言いましたが10代の学生の部活動の全国大会をするのは、他のスポーツと比べると極めて早く、さらに全国の都道府県から予選を勝ち上がったチームが出てくるため郷土愛を刺激するのか(戦前は台湾や中国、朝鮮半島の代表も出場しています)、戦前のうちから人気がうなぎのぼりになり、ラジオ放送による中継が始まった時点で恐らく現在と同じような盛り上がりであったことは過去の資料などを読むと明らかです。

このラジオ放送による甲子園からの中継が始まった顛末というのも、人気の試合になるとあの大きな甲子園球場にも人が入り切れず、大会の試合の様子を知りたいという人があまりにも多かったからそうした大会人気を狙って当時の唯一のラジオ放送だったNHKが始めたものだと思います。そんな感じで恐らくラジオ中継もあらゆるスポーツの中で最も早い時期から行なわれたので、テレビで大会を中継するのも自然な流れで行なわれたことと思われます。

テレビ中継は当初総合テレビでのみ行なわれ、NHKでは午後7時を過ぎた場合、ニュースと他の番組との関係から最大6時54分で放送が打ち切りになる決まりでした(その後、天気予報→ニュース→通常番組)。しかし、1974年(第56回大会)の夏の甲子園で、延長戦に持ち込まれた神奈川代表の東海大相模と、鹿児島代表の鹿児島実業との死闘がそれまでのテレビの常識を変えることになります。ちなみに、当時の東海大相模には後に読売巨人で活躍する原辰徳選手、鹿児島実業には同じく読売に入団した定岡正二投手がいて、その対決も注目されました。

さすがに神奈川県の属する関東地方ではテレビ放送終了後はラジオで熱戦の行方を聞くしかなかったのですが(当時のVTRではアナウンサーはラジオへの切り替えを促していました)、鹿児島県の高校野球ファンはラジオでは我慢ができず、猛烈な抗議電話をNHKに集中させることで、当時のNHK鹿児島局の放送部長が野球中継を再開することを決定し、おかげでその試合で鹿児島県及び一部の九州地方の人たちには鹿児島実業の勝利の瞬間を届けることができたのでした。

こうした熱狂的な高校野球ファンが全国に存在するという「事実」もあり、翌年からNHKでは総合テレビだけでなく教育テレビを使ってリレー中継をする現在の方式を開始します。ちなみに、それから5年後の第61回大会ではあの延長18回の熱戦である星稜対箕島の試合が行なわれたのですが、もしあの試合が途中でテレビ中継が打ち切られてしまったらどうなったかと考えると、結果的にNHKが高校野球の完全中継をしたことで人気と注目がさらに集まり、今に至る高校野球の人気を後押ししているように思います。

高校スポーツの中でもなぜ野球だけ特別なのか? という点については100回を数える大会の歴史の中で、またお盆休みには人々が故郷に帰りそこで地元愛に溢れた人達と試合を見るようなこともあるので、紹介したようにどうしても地元のチームの試合を中心に見たいという人が相当多くおり、実際にプロ野球より高い注目度と視聴率を叩き出すからだとしか言えないので、いきなり「高校野球をテレビ中継すること自体がおかしい」と言われる方は、それも日本のスポーツ中継の歴史であることを考えた上で強権的ではなく高校野球を魅力的なコンテンツから追い落とすことをまずは考えるべきでしょう。

サッカーの場合、Jリーグの発足とともに各地方にできたプロチームの下部組織としてユース年代のチームを作り、現在はそちらの方が高校のチームより力が上がっていていることから、以前は甲子園並みに注目されていた冬の全国選手権の注目度が下がってきました。橋下徹氏の言う軍隊式の訓練から始まったのが高校野球ということなら、まずプロ野球を今のような地域性についてあまり考えられていないセ・パリーグを一から再編し、サッカーのように地域密着型のチームにしてチームの数も増やし、軍隊訓練のような練習をしなくてもうまくなってプロ野局からアメリカのメジャーリーグにステップアップできる環境について真剣に考えてみてもいいのではないでしょうか。

そこまで実現できれば、ユースのクラブチームのリーグ戦をテレビ中継したり、サッカーのように高校選手権とは別にユースチームと高校チームの両方が参加するリーグを作って活性化していけば、甲子園をあくまで目標としない人はクラブチームの方にも集まってくるのではないでしょうか。

ただそうして有望選手を分散させることになると、よほどクラブチームに行く場合のメリットを揃えないとなかなかまだ甲子園というブランドに勝てるかはわかりません。テレビ中継をしても甲子園ほど注目されず視聴率も上がらないことも考えられます。このように個人の発言だけではなかなか状況をひっくり返せないのが伝統の重みだとも言えます。ただ、もしも全国一の規模と実力を誇る大阪の高校生世代の有力選手があの有名校の監督ごと引き抜いて、クラブチームに行くというのなら話は別でしょう。真の実力日本一のチームがが甲子園にいないとなると、プロを目指す意識の高い高校生が甲子園とは違う形での野球をする可能性も出てきます。本気で高校野球をつぶしたいならそこまで考えて実行しないと、それこそ野球ファンの応援は得られないのではないでしょうか。