月別アーカイブ: 2018年12月

2018年の記憶に残るテレビ番組

2018年の最後の日ということで、まだ紅白歌合戦もダウンタウンの年またぎも、格闘技など色々な特番が目白押しな中、ここまでで私の印象に残った番組や場面について書かせていただきたいと思います。

まず、テレビを見ていて興奮するのはやはり録画放送ではなく生中継にこそあると思っていて、それはスポーツ中継を除き限られた放送時間内にいかにして決定的な瞬間を捉えるかという運も左右するところがあるにしても、2018年に放送された衝撃中継の中でも私が一押ししたいのは読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」で福岡県の貯水のための谷にイノシシ2匹が入り込んでしまい、その救出活動として遠隔操作で閉めることのできる檻を設置して、今2匹のイノシシが檻の中に入ろうとした時に少し檻の扉を閉めるタイミングが遅れたことで、1匹は入ったものの2匹目はその気配を際して逃げてしまったという痛恨の瞬間を生中継で見たことです。

来年がいのしし年ということもありますが、その時の状況は殺処分ではなくその場から山に逃してほしいという電話が地元の役所には殺到したそうで、そうした人たちも固唾をのんで見つめていたに違いありません。

たまたまその時は、奇跡的にも番組放送中に檻を遠隔操作で閉める瞬間が生中継できたのですが、その操作で1匹を取り逃がしたことで「もしもう少し早く閉ていたら……」という感想戦のようなやり取りまであったのがバカバカしいと言われればそれまでですが、くだらないかも知れない題材をそこまで突き詰めて報道し、それに関してどうでもいい話を続けるというのは実にテレビ的であり、これぞテレビと思った一場面でありました(ちなみに、取り逃がした残りのイノシシも無事に捕獲した上で山に帰されました)。

そして、具体的な番組ということで言えば、今までの旅番組の枠を超えてドキュメンタリーの要素も含んだ連続物の番組として評価したいのが、TwellV(BS12)という民放としては最後発の局が送り出した「小島よしお&狩野英孝のチャリお遍路」を挙げないわけにはいきません。

4月8日から始まった番組は、単に芸人の二人が自転車に乗って四国八十八か所を巡るというだけの番組なのですが、回るお寺紹介と沿線の風景と名物・お店などを紹介するような通り一遍の番組とは違い、自転車で回るには過酷なロードを、テレビ上ではかなりいい加減な人間性が垣間見えてしまう狩野英孝さんが途中ギブアップせずに全うできるのか? というのが春から夏にかけての番組を見ていての関心事になりました。

私は車で回ったことがあるので、どのお寺がどこにあるかわかっている部分があります。したがって自転車で回るにはどこが大変かといういわゆる種明かしを知った上で見ているのでまた違った印象を持っているかも知れませんが、案の上一番札所から十一番札所までは問題なかったのですが、十二番札所の焼山寺への「遍路ころがし」と呼ばれる急坂を登れるか、もし登れたとしてもその後の行程を続けるだけの精神力が残っているのか、この辺は本当にドキュメンタリーという感じで狩野英孝さんの様子に注目しながら見ていました。

一方の小島よしおさんは、一見して真面目な人柄であることがわかるので、ストイックに体作りをし、番組のロケに万全の体制で参加しているのはわかるので、彼一人だけだったら最後まで回れるでしょうが、それではこの番組の面白さというものが半減してしまいます。この番組の面白さは、スキを見てサボったりやめようとする狩野英孝さんを、どのように小島よしおさんが説得しつつ旅を続けるかというところにこそあり、それが年内最後の放送であるこれも遍路ころがしの二十七番札所「神峯寺」では、番組を見てくれるファンの存在がロケを続けさせてくれるということを狩野英孝さん自身が明かし、ここまで12日間の区切り打ち(一度に回らずに出直したりして回ること)だけで8ヶ月も放送を続けています。

日曜7時のレギュラー放送でも再放送が連続し、さらに年明け第一回の放送はこれまでの内容の総集編になるという地上波では考えられない進展の遅さなのですが、それも何かとテレビ番組のスタジオ収録で忙しいお2人ということもあり、さらに適度に間隔を開けることで何とか狩野英孝さんのモチベーションを保っていることもあると思うので、多分放送的には来年中にも全てのお寺を回れず、全て回り終えるのは3年後になるだろうと思いながら穏やかな目で見るのがいいと思います。

ただ、この旅を無事に終えたとして、その後にまた狩野英孝さんが何らかの不祥事を起こして多くの人に謝罪をしなければならないような状況になった時には、TwellVでは「チャリお遍路2」として狩野英孝さんが八十八番から「逆打ち」でもう一周という番組企画を実行に移せると思いますので、番組外の狩野英孝さんの行動についてもこの番組のおかげで注目することができる「一番組で2度おいしい」番組になる可能性も持っています。狩野さんとしては決してそんな事はしたくないでしょうが(^^;)、来年も一年間この番組が続くかどうかということにも注目しながら、まずは結願目指してお二人はロケを頑張って欲しいと願いつつ、2018年最後の更新とさせていただきます。


ポイントは「無料」「深夜」「休み期間中」

TBSテレビの「水曜日のダウンタウン」で事前告知された安田大サーカスのクロちゃんが檻の中に収監されている様子を見に行こうと遊園地の「としまえん」に押しかけた人があまりに多く、テレビ局が用意した警備の範疇を超えていたのか、渋谷のハロウィン並みの馬鹿騒ぎを画策した人物がいたからなのかわかりませんが、深夜の大騒ぎに警察が出動しイベントは中止され、TBSは警察から厳重注意を受ける羽目になりました。

今回の事件は、今年立教大学の学園祭でアイドルの橋本環奈さんが来るというデマが流れて人が殺到するような事はありましたが、そこまで熱狂的なファンがいるとは思えない、お笑い芸人のクロちゃんを見るためだけになぜそれだけの人が集まったのかという点を見ていかないと、今後も同じようなトラブルが起こる可能性があります。

今回の騒動は、何かとインターネットがあればテレビは要らないと言われることも多い中、さらにデータ上の視聴率もそれほど上がらない中でも見ている人は人気番組をリアルタイムで見ているし、さらにそこから自分の意志で動いてイベントにも向かうという能動性を合わせ持つ、テレビに扇動されやすい人がこれでもかというほどいることを関係者にも認識させてくれる結果となりました。

私は直接現地に行ったわけではないので直接はわかりませんが、現地へ行ったり近くに住んでいる人がTwitterに上げたコメントを見ていると、きちんと警備員をTBSでは配置していたようですが改めて日本人は「無料」という言葉に弱いなということを感じてしまいました。

東京近郊に住んでいても深夜には公共交通機関は止まってしまうので、車を使ってガソリン代をかけてまでお笑い芸人一人を見に行こうと思うというのはちょっと普通では考えられません。しかし、時期は小中高生の冬休みの時期でもあるし、深夜にお出掛けしてテレビの続きの光景が見られるとすればある種の「一大イベント」になります。さらに、今回も多くの人が現場の檻に入ったクロちゃんの写真を投稿しているように、とにかくSNS映えのするネタの原場に行きたいというニーズも持っていました。

さらに、あまりの人の多さに開催元がイベントの中止を発表しましたが、こうした情報が拡散する中で、現地にやってきた人の中には、もしかしたら「もうワンチャン」があるかもと期待したり、この騒動自体を楽しんだり、あえて中止しているとしまえんの中に入ろうと強引に押し入る人がいたりと、まさにこの年に渋谷で起きたハロウィンの騒動を連想させるような状況になってしまいました。

今回の批判の矢面には当然TBSおよび、「水曜日のダウンタウン」制作スタッフが立つことになるかとは思うのですが、今回のようなケースだけでなく深夜に人が集まって騒ぐようなイベントに掛けつけて、騒ぐことを目的にする日本のフーリガンとおぼしき限られた人がきっかけになっている面も拭えません。この点については今後日本の警察やイベントを開く主催者で情報を共有してそうした人物を見付けたら排除するというまさに海外のフーリガン対策が必要になると思いますが、もしこのイベントは深夜はライブカメラからのネット配信にとどめ、翌朝からスタートし有料での入場がクロちゃんを見る条件にしたら、いわゆる騒動狙いや面白そうだからと思うだけで来る人は減り、ここまでの騒動にはならなかったでしょう。

また、場所をとしまえんにしたのも失敗だったと思います。無料で深夜の開催になるにしても、ちょっとやそっとでは行けないような場所にするとか、まともに視聴者がすぐに行こうかと思わせるような条件から外すという配慮も必要になってくるでしょう。改めて地上波のゴールデンタイムに小中学生も見ている中で、視聴者との距離をどのように広げたり縮めたりできるか、そのバランスを取るのが難しいことは十分にわかります。

逆にそう思えばこそ、今回のようなトラブルで番組が打ち切りになるようなことにはなって欲しくないですし、こうしたテレビ局の仕掛けたイベントを利用して人暴れしようと企む人達をイベント参加に躊躇させつつも、番組のファンに思恵を与えられるような方法を来年は考えていただきたいところです。


これは立派な「最終回詐欺」ではないか?

すっかり日曜夜9時からのドラマ枠の中では人気を上げきた「下町ロケット」のシリーズですが、途中のコマーシャルでドラマそのまんまの「無人トラクター」の製品を紹介していることから、先にこうした製品ありきの脚本なのではないか(いわゆるタイアップ)と思えてきてしまうところです。ただそうした事はテレビの民放にはスポンサーがつきもので、そのスポンサーの思惑が番組の内容に影響を与えることが当り前だと思えば、そこまで問題にすることなくドラマの筋書きである「大逆転」のシナリオを素直に楽しめばいいと思い、今回の最終回で今まで溜まった鬱憤が全て晴れるだろうと思っていたのですが、最後まで律儀に見終わって、大いに裏切られたという感じです。

今回の内容は、最終回前の導入部のような感じで、決定的な問題解決ではなく、中途半端な最終回で、「帝国重工VSダーウィン」の争いも決着しませんし、新潟県燕市で米農家になった経理の殿村家対農業法人との決着については、その兆しすら見えないままドラマが終わってしまいました。

実は、年明けの1月2日に新春スペシャルとして今回の続きのドラマスペシャルが放送されるということなのですが、実質もなにも、最終回の内容は年明けにならないとわからないという事だけはわかりました(^^;)。よくある人気ドラマのスペシャル版というのは、本編とは関係ない脇役にスポットをあてたエピソードだったり、外伝的なものにすることで、それまで本編を楽しんだ人を違う側面から楽しませるために作るのが本筋だと思うのですが、これと同じことが大河ドラマで起こったとしたらどうなるでしょう。そんな事も考えてみたくなるのです。

今回のドラマ「下町ロケット」は、「最終回」であるとテレビ番組表や予告でも出されていただけに、実質的な最終回ではなかったということを考えた場合、立派な最終回詐欺であるのではないかと思えます。今回で全てのエピソードが解決すると信じてテレビを見ていた視聴者を莫迦にする行為であるということは認識しているのかと問いたくなりますが、もし1月2日のドラマが終わっても解決しない問題が出てきたりなんかしたら、今以上に気合いを入れてドラマを見ようと少なくとも自分は思わなくなるかも知れません。

テレビが人々の興味を引き付ける方法として、情報を小出しにして次回に期待させるという手法というのは当然あるわけですが、基本的なお約束として「最終回」なら「最終回」らしく、一応はそれまでの設定をきちんと処理して物語を終わらせるという事が大事だろうと思うのです。今回のような物語の進め方をするなら、今回を最終回とはせず、「新年最終回スペシャル」とでもして年またぎのキャンペーンを張ればいいだけの話で、今回のような事をすると逆に今回の話を見逃した人は、まさか新年スペシャルが実質的な最終回だとは知らずに見逃す人も出てくるかも知れません。

たとえどんな人気ドラマでも、ワンクールで一応物語の幕を閉じることが前提になるようにしないと、例えばドラマを二次利用する場合にもおかしなことになりかねません。もし今後、今回の「下町ロケット」を映像ソフト化する場合、純粋に第一回から最終回までという風に区切ると、その物語は今回で終わってしまうことになります。もちろんボーナストラックとして新春特別版も実際にソフト化する際には付けるのでしょうが、ソフトの方でも表記は今回の回が最終回となるわけですし、かなりややこしいことになるかも知れません。見るのは本編だけでいいとボーナストラックは外して見る人もいるかも知れません。

こういう手法は、見せ物小屋の呼びこみだけが達者で、中に入れた後の事まで考えていないようなものです。それは見に来る人の事を考えないで、自分の番組を見てくれさえすればそれを見て怒り出す人がいたとしても、口上に騙されて入場(テレビを見る)する方が悪いと居直るようなものでしょう。このドラマで言えば日本の農家の実情を全く見ないで大型トラクターを自分だけの力で早く出すことに固執した帝国重工の神田正輝扮する重役の的場の考えに近いのではないかと思うのですが。ドラマの内容が内容なだけに、今回の最終回詐欺とおぼしき番組の作り方には心底がっかりしました。

(番組データ)

日曜劇場「下町ロケット」最終回!佃VS帝国重工全面対決…下町プライド最後の大逆転 TBS
12/23 (日) 21:00 ~ 22:09 (69分)

・出演者
阿部寛、土屋太鳳、竹内涼真、安田顕、徳重聡、和田聰宏、今野浩喜、中本賢、谷田歩、馬場徹、立石涼子、朝倉あき、宮尾俊太郎、山田悠介、松川尚瑠輝、菅谷哲也、菅野莉央、原アンナ◇イモトアヤコ、真矢ミキ、森崎博之、福澤朗、品川徹、森次晃嗣、岡田浩暉、高橋努、古川雄大、モロ師岡◇古舘伊知郎、甲本雅裕、木下ほうか、工藤夕貴、山本學、倍賞美津子、尾上菊之助、立川談春、神田正輝、吉川晃司、杉良太郎

・原作
池井戸潤「下町ロケット ヤタガラス」(小学館刊)

・脚本
丑尾健太郎

・音楽
服部隆之 ※隆は生の上に一

・ナレーション
松平定知

・プロデューサー
伊與田英徳 峠田 浩

・演出
福澤克雄 田中健太

(番組内容)
[終]ライバルに先手を打たれ、苦戦する帝国重工…打ち出したのは、またもや突然の内製化!?帝国重工と最後のスペック対決…下町プライドで最後の大逆転を見せろ!

懸命にモノづくりに挑む佃(阿部寛)率いる佃製作所。彼らの想いに共鳴した島津(イモトアヤコ)も佃製作所に加わったのだった。そして迎えた首相視察。観客からも首相からも全く相手にされず、トラブルで立ち往生してしまうアルファ1。さらには帝国重工から湧き上がる内製化の声に佃達は頭を悩ませる。そしてついに佃製作所と帝国重工の最後の戦いが始まる。日本の農業を救うために前に進み続ける男たちの姿を見逃すな!!


テレビ番組を踏み台に利用しようとする人の戦略に乗るな

過去にはレギュラー番組だった「しくじり先生」ですが、それなりにインパクトのある人選を続けることは難しいため、レギュラー番組としてではなくスペシャル番組として続いているのですが、今回の人選はちょっとインパクトに欠けたばかりか、出演者の中で宮崎謙介・金子恵美夫妻が出演したことに、何やらきなくさい思いを感じた人は少なからずいたのではないでしょうか。というのも、「しくじり先生」の2日前(2018/12/11)にBSテレ東の午後7時から放送された「4Kでオジサンを撮ったらこうなった おしゃべりオジサンと怒れる日本人」という番組の中で、ちょっと興味深い指摘があったこともそんな風に考えることになった一因でした。

肩書が「選挙戦略家」と言う鈴鹿久美子氏がゲストとしてBSテレ東の番組に出演し、2018年下半期の色んな謝罪会見を解説していたのですが、正しい謝罪会見の仕方を話している中で、番組放送当時に話題になっていた相撲の親方を引退した元・貴乃花親方がもし翌年の国政選挙に出るためにプロデュースをお願いされるとしたらどうするか? という質問に鈴鹿氏が答えていたのですが、その中で、相撲界で迷惑を掛けた人達にきちんとお詫びをした上でテレビのコメンテーターになって顔を売り、来たる国政選挙に備えるように指導すると述べていました。さらに、今来年の選挙を見据えて鈴鹿氏のような選挙戦略家にお願いしている人(タレントや有名人)はいるのかということは番組MCの古舘伊知郎さんや千原ジュニアさんも気になるようでしたが、まさに今回の「しくじり先生」に出演して誰に対してというより国民に向かって謝罪し、夫婦仲の良さをアピールした宮崎謙介・金子恵美夫妻こそそんな感じではないかと、正直今回の出演シーンを見て思ってしまったのです。

実際、ここで書くことは予言者の書ではないので、番組に出たご夫妻の意図は別にあり、選挙には出ないでタレントとして食べていく気なのかも知れません。それならそれでことさら問題とする気もありません。ただ、来年になって夫妻の両方が選挙に出たり、それとも金子氏が出て宮崎氏が番組内容をなぞるような応援行脚をするのか、まさかのその逆なのかはわかりませんが、本当に選挙にどこかの政党から出馬したとしたら、今回の番組出演がマスコミに顔の効く、有名な選挙プランナーが付いて番組の出演時に何を言ってどういう態度で望むべきかということまでレクチャーしているのではと疑うことも出てきてしまいます。

それにつけても思うのは、日本のテレビというのは一方で人を完膚なきまでに叩いておきながら、その人のパーソナリティーがテレビ向きだとわかると、過去に何をやった人かということとは関係なくテレビにウェルカムで迎える関係者がいるという事実です。宮崎氏についても、自分の子供が生まれる直前、配偶者である金子氏の出産前後に浮気相手とホテルに行っていたわけですから、金子氏がいくらテレビとは言え、番組で穏やかに「全て許す」と話すこと自体がおかしいことですし、普通に考えて何らかの裏があると考える方が人間として健全だろうと思います。それが、生徒役のタレントの中には涙を見せながら話を聞いている人もいましたので、そんなに簡単に人は人を許せるものなのかと思えてきてしまいました。

また最近のテレビでは、あえて悪者としてバッシングされた日本アマチュアボクシング連盟対会長の山根明氏のタレント化が一部で良く見られるようになり、その後の報道の中では復活を狙っているのではないかというものもあるようです。その動きに恐怖を感じた今の日本アマチュアボクシング界は山根氏を永久追放するような形を取ろうと動いています。それもこれも、一時は関係者や選手を恫喝するだけでなく、公式戦の判定も変えさせてしまった疑惑があり、東京オリンピックのボクシング競技の開催すら危ぶまれている中でのテレビで山根氏を面白おかしく紹介するテレビの能天気さというのは、「世界の果てまでイッテQ!」のヤラセ祭り疑惑などよりも大きな問題として語られるべきだと思うのです。

今後、「しくじり先生」がかつて権力を持っていた芸能人や有名人の禊の場として、ここできちんと報告して謝ったから復活できるんだと思うような人ばかり出演させるようになったら、テレビ朝日が報道番組で盛んに行なっている反権力のスタンスとは何なのか、改めて問われるのではないかと思います。少なくとも、この番組に出てくるような人は、自力で復活してきた人が改めて騒動の時に何があったのかを告白し、自分と同じような失敗をしないで欲しいという気がないと、出ては駄目だろうと思います。番組関係者の方々は、そうした事も考えながら出演者の選定をて欲しいです。

(番組データ)

しくじり先生 俺みたいになるな!! 2時間スペシャル
2018/12/14 20:00 ~ 2018/12/14 21:48 (108分)
【担任】若林正恭(オードリー)
【レギュラー生徒】吉村崇(平成ノブシコブシ)
【先生】南海キャンディーズ(山里亮太・山崎静代)・宮崎謙介・金子恵美
【生徒】あき竹城・安藤なつ(メイプル超合金)・伊集院光・ISSA・梅沢富美男・澤部佑(ハライチ)・杉浦太陽・高橋ユウ・高山一実(乃木坂46)・北斗晶・湯川玲菜(劇団4ドル50セント)

(番組内容)

過去に大きな失敗を体験した“しくじり先生”が生徒たちにしくじった経験を教える反面教師バラエティ番組「しくじり先生」!今回は2時間SPとして南海キャンディーズと宮崎謙介&金子恵美元議員夫妻による熱血授業を開講します!次々飛び出す驚愕エピソードに教室が震撼!そして授業の最後には先生たちによる熱いメッセージで教室は感動の嵐に!お楽しみに!

■南海キャンディーズ・・・「すぐ自分と人を比べて嫉妬してコンビもメンタルも崩壊しちゃった先生」 お笑い芸人の南海キャンディーズが登壇!コンビ結成してすぐにM-1で準優勝し大ブレイク。しかし注目されたのは“しずちゃん”だけ。すると山里亮太は嫉妬心からしずちゃんに対して嫌がらせ攻撃を開始。一時はコンビ解散の危機にまで陥ったと告白。そこで、自分と他人を比べて嫉妬し人間関係を崩壊させないための授業を展開!

■宮崎謙介&金子恵美・・・「不倫して妻と国民を裏切っちゃった元議員先生」 2016年に不倫で世間を騒がせた元国会議員の宮崎謙介が登壇。今回は宮崎謙介本人が不倫騒動の一部始終を語るだけでなく、今までどこにも話していない新事実を告白します!さらに、妻である金子恵美がその時どう思っていたのか?その心情を赤裸々に激白!不倫して人生を台無しにしないための授業をお届けします!


渡る世間も「橋田壽賀子」<「クィーン」なのか

今回の内容はたまたま番組宣伝で知り、実は昔からクィーンは聴き込んできたので、地上波でクィーンがどのような扱われ方をするのかということに興味があり、録画で見ました。なぜ録画で見たかというと、今の日本のテレビの世界を考えた時に番組MCの坂上忍さんが、直接脚本家の橋田壽賀子さんのお宅を訪れてインタビューするという方がインパクトがあると思い、クィーンの話は後回しにされると思ったからです。

もし日本の芸能界で橋田壽賀子さんに対抗するだけの人をクィーンに関わった人物の中で挙げるとすれば渡辺プロダクションの渡辺美佐氏以外には考えられず、もし番組で渡辺美佐氏のインタビューが取れたならクィーンを先に出すのかなと思っていたのですが、事前に確認した中でも、実際に見た中でも個別に渡辺プロも渡辺美佐氏の存在も紹介していなかったのに、クィーンを最初に持ってきたというのには、それだけ日本でも映画「ボヘミアン・ラプソディ」がヒットしていることで、視聴者の興味という点で勝った以外には考えられず、改めてクィーンの魅力とは何かということを考えさせられる番組の半分を使った特集になっていました。

ただ、この点というのは番組として見るといかにも放送されている今を切り取って流行りにおもねっているという感じが拭えないものがあります。その分、特集の内容も薄っぺらく感じてしまう方も少なからずいたかも知れませんが、あの映画がなかったらわざわざ地上波でクィーンの事が取り上げられなかったと思い、改めて今回のクィーンの特集に限っての内容の感想を書くことにしました。

今回の特集のポイントとしては、映画には描かれなかった日本でのクィーンのデビュー当時の人気ぶりと、日本の骨董や文化を愛したメンバーの姿を紹介したことと、フジテレビのライブラリの中から「夜のヒットスタジオ」にフレディを除くメンバーがライブ告知のために出演した映像と、当時のFNNのニュース報道でフレディのエイズ感染と訃報がどのように伝えられたかということを改めて紹介してくれたことがあると思います。

さらに、当時のボディーガードや、フレディが来日した際によく訪れたというバー(新宿二丁目か?)のマスター、栃木県足利市にある伊万里焼を集めた栗田美術館の館長さんへのインタビューなど、日本のテレビでなければ見られないオフのフレディの様子を知れたのもファンにとっては嬉しいことだったでしょう。でも個人的にはもう少しディープな話題も教えてくれた方が、特に今回の映画で初めてクィーンを知った人にとってはさらに興味が出るでしょうし、ナベプロがなぜ日本でのクィーンの売り出しに関わったのか? ということについてもしっかりと出してくれたらなお良かったという風に思います。

ただ、クィーンはデビュー当初こそスーパースター扱いであったかも知れませんが、ビートルズのように出す曲が全て1位になるわけでもなく、そこまで今のような勢いで売れ続けていたわけでもなく、当時のラジオチャートでもABBAの後塵を拝していたような印象もあります。ただそれは、表立ってはラジオにハガキを送ったりはしないけれど、気になって楽曲は聴いていて密かに支持していた層によって現在の日本での知名度が形作られていったように思います。

というのも、当時洋楽のチャートを聴いていた人が大人になり、それなりに現場で流す音楽やコマーシャルの後ろで流す音楽を決められる地位に付いたと思われる感じで、クィーンの過去のヒット曲がコマーシャルやドラマの中で使われるようになり、そこで新たなファンを獲得するような流れが出てきたのです。それが、番組でも言われている「楽曲の力」ということにあるのでしょうが、さらに言えるのが、緻密な音作りというものが密かに多くの男性にも支持を受けていたところもあり、そうした緻密な音の編集作業というのは、クィーンのメンバーが揃って高学歴のインテリバンドであったことにも由来するのではないかと思うのです。本来はそうした点こそ、テレビ界やCM界の関係者へのパイプを持っているテレビ局の得意とするところだと思うのですが、今回はそういう話も聞けなかったのは残念でした。

あと、これは番組には関係ない話ではありますが、クィーンの魅力一つと考えるところを最後に紹介させていただきます。私が過去に読んだメンバーへのインタビューの中で、確か「バイシクル・レース」や「ドント・ストップ・ミー・ナウ」の入ったアルバム「ジャズ」(1978)が出た後だったと思うのですが、ドラムスのロジャー・テイラーに日本の音楽(特にドラムス)の評価は? という質問に彼がツトム・ヤマシタ氏(当時グラミー賞にノミネートされた打楽器奏者)とともに挙げたのが山下洋輔トリオだったのにはびっくりしました。

今でこそ山下洋輔さんはジャズ界の重鎮ですが、ツトム・ヤマシタ氏のような海外での知名度という点では当時それほど高くなかったと思います。ただ、70年代には山下洋輔(pf)・坂田明(sax)・森山威男(ds)というトリオでのヨーロッパツアーの様子をライブ録音した「クレイ」というアルバムが出ており、ロジャー・テイラーはもしかしたらそのアルバムを取り寄せて聴いていたのかも知れません。その中での森山威男さんのドラミングは素晴しいもので、森山さんが日本が世界に誇ることができるドラマーの一人であると私自身信じて疑わないのですが、まさかロックバンドであるクィーンのロジャー・テイラーの口からその言葉が出るというのは、いかに広い範囲で音楽を聴きながら研究をしているかということの現われではないかと思ったものです。

番組ではそのロジャー・テイラーの作った「レディオ・ガガ」が対訳付きで長く紹介されていましたが、4人のメンバーが全てビックヒットを作ったメロディメーカーであったことも、バンドとしてその生命を全うした理由の一つであろうと思います。

今後、映画のヒットと共にさらに彼らに関するテレビ番組は作られるかも知れませんが、まだまだネタは多くの関係者が持っていると思うので、どこかのテレビ局が特集を組むとしたら、今回の内容とは違う内容で踏み込むか、それこそ渡辺美佐氏に直接話を聞きに行くとか、面白い趣向でやってくれることを期待しています。

(番組データ)

直撃!シンソウ坂上SP【クイーン特集!秘蔵映像&フレディの真相▽橋田壽賀子】
2018/12/13 19:57 ~ 2018/12/13 21:54 (117分)
【MC】 坂上忍
【VTR出演】 橋田壽賀子 他
【チーフプロデューサー】 小仲正重
【総合演出】 島本亮
【ゼネラルプロデューサー】 石塚大志
【プロデューサー】 挾間英行  大川友也
【演出】 山崎貴博
【制作】 フジテレビ 第二制作室

(番組内容)

クイーンはなぜ愛されるのか?日本との意外な絆&フレディ最後の5年に迫る!名曲に込めたメッセージ▽橋田壽賀子“安楽死宣言”の真相!夫の遺産3億に衝撃事実

今夜の『直撃!シンソウ坂上2時間SP』では、『おしん』『渡る世間は鬼ばかり』など数々のヒットドラマを生み出してきた脚本家・橋田壽賀子がたどりついた独自の人生観に、子役時代に橋田作品への出演経験もある坂上忍が迫る!彼女が「私の時代は終わった」と語った真意や、知られざる最愛の夫との出会いと別れ、『おしん』や『渡る世間は鬼ばかり』の驚きの誕生秘話、さらに社会に衝撃を与えた「安楽死宣言」の真相まで、橋田が語り尽くす。

また、公開中の映画『ボヘミアン・ラプソディ』のヒットによりブームになっている伝説のロックバンド「クイーン」。彼らがなぜ日本人に愛されたのか、そしてなぜ彼らが日本人を愛したのか、秘蔵映像を交えひもといていく。


テレビは携帯電話の通信障害をどう伝えたか

2018年12月6日の午後から夕方にわたり、全国のソフトバンクの携帯電話を利用している人は、いきなり電波の状態を示すアンテナマークが消えて「圏外」の表示になったことでびっくりするだけでなく、仕事や待ち合わせというような行動自体にも支障が出た方が少なくなかったでしょう。しかし、外出先でこの障害を受けた人は、自分のスマホの調子が悪いのか、それともソフトバンクのシステムの不調なのか判断が付かなかったのではないかと思います。

テレビは、すでに多くの携帯電話が復旧した夜のニュースからこのシステム障害のニュースについて報道し、翌日の朝のワイドショーではソフトバンクの対応を糾弾するがごとくの報道をしている局もありましたが、こうした報道姿勢にちょっとどころか大きな違和感を持ったのは私だけではないはずです。

ソフトバンクから回線を借りている格安SIMでも同様に通信および通話ができない状態になりましたが、本来はそうした事を含めて「現在、ソフトバンク系の通話・通話が何らかの原因でできない状態になっています」というようなアナウンスがなぜ早いうちにできなかったのか、疑問に思います。

すでに日本では携帯電話・スマホを一人一台が持ってかなりの依存をしている状況からすれば、同日起きた東京の地下鉄都営浅草線がストップしているニュースと比べても、トラブルが及ぼす範囲においてははるかに重大で、番組時間内に字幕のニュース速報を出してもおかしくないくらいの情報だと思います。

都営浅草線は東京近郊の方だけに向けられた情報ですが、ソフトバンクの回線不具合は北海道から沖縄にまで影響が及んでいるので、誰かがたまたまテレビでその情報を目にすれば、今回のケースはソフトバンクユーザーがショップに駆け込む前にそれなりに周知されていたのではないかとも思えます。テレビのニュース速報で流される経済関係や芸能・スポーツ関係のニュースを見ていても、内容によってはそこまで速報を出して知らせる意味があるのかと思うこともあります。そうしたニユースよりも生活に直接関わるライフライン切断のニュースの方が告知すべき価値はあると思いますので、もし通信関係を含むライフライン不通の事実があった場合に、今後はしっかりとニュース速報を出せるように、必要であれば規約の変更をお願いするなどして、多くの人に知らせる必要があると個人的には思います。

改めていろんなサイトを検索してテレビのニュース速報の基準について調べてみたところ、絶対的な基準というものはないという事が現実らしいことがわかってきました。今回のケースは、単にソフトバンクの携帯電話がつながらないといっても本家のソフトバンクから何の発表もない時点では発表できないとは思いますが、ソフトバンクをはじめとする携帯電話会社については、トラブルが発生したことを認識した時点で、速やかにテレビ・ラジオ・新聞社などに連絡をし、その状況について報告した上で早く契約者に不具合のある情報を流すように連携する必要があることももちろん大切になるでしょう。

ただ、そうして情報を流しても、双方がソフトバンクのスマホ持ちという中で連絡を取り合うのは無理です。そのための手段としては、各携帯電話会社が災害時にサービスを開始する「災害用伝言ダイヤル」の開設以外方法はないと思います。そして、テレビはその使い方を連絡が付かなくて困っている契約者に向けて、利用方法をレクチャーするにはうってつけのメディアであることも確かなのです。今後、単なる事故ではないサイバーテロでの通信網断絶というシナリオも予想される中、スマホ・携帯電話が使えなくなったら速やかに伝言ダイヤルを使っての連絡方法を多くの人がすぐに使えるようにすることは、今後のテレビに課された宿題であるという気がするのです。