03ドラマ」カテゴリーアーカイブ

ドラマのリアリズムは現実にどこまで歩み寄るべきか

NHKの朝の連続テレビ小説の99作目「まんぷく」が終わりました。ここのところNHKでは大手企業やその関連する人物を主人公にした作品を多く作っていますが、この作品も日清食品グループの創始者夫婦と思しき人物を主人公にしたもので、今回の番組終了を機に日清食品グループがどのようなアプローチをするのか、そもそも一切ドラマ便乗の商法を行なわないのか、これを書いているうちはわからないので興味があります。

かつての朝ドラ「マッサン」の時は、日本全国でウィスキーブームが起き、そのためずっとウィスキーを好んで飲んできたような人にとっては特定の銘柄のウィスキーが入手が難しくなり、オークションで価格が上がるなど個人レベルでまでNHKがドラマで「ニッカウヰスキー」を取り上げたことによる影響が出ましたが、そういう状況が生まれるからこそ、どのような「事実に基いたフィクション」を作るかということが大事になってくるような気がするのです。

今回の「まんぷく」は日清食品が「カップヌードル」を作り、さらにそれが大成功して大団円ということになるのですが、ドラマのように歩行者天国での試食イベントだけで全国に広まったわけではありません。それこそ当時でも東京の歩行者天国というのは遠い存在で、一大プロモーションで「カップヌードル」という製品があり、自動販売機で売られているというところまでは知られたとしても、全国津々浦々のスーパーマーケットで売られるようになるには、歩行者天国でのキャンペーン後に起こったもう一つの大きな「事件」の産物で、結果的にカップヌードルには幸いしました。

実はこれにはドラマを制作したNHKも十分関わっているところなので、なぜ今回の脚本にその場面が出て来ないまま終わってしまったのか、かなり消化不良の印象があります。おばあちゃんの生前葬をやる時間があるなら、歩行者天国のくだりは前半に行なってしまい、最終回の一つ手前に「あの事件」を持ってきても良かったのではないかと思います。

ちなみに、歩行者天国でのキャンペーンは1971年11月で、その事件「あさま山荘事件」が起こったのが1972年の2月です。過激派が立てこもった「浅間山荘」の周辺は2月の気温がマイナス15度というとんでもない寒さで、差し入れのあらゆる食品がカチンコチンに凍ってしまい、作りおきしたおにぎりやお弁当という携帯食料では、酷寒の中ではまともに食べられないということが事件を生中継し続けたNHKのテレビを食い入るように見ていた全国の人々が知ることになったのでした。

そこで登場したのが「カップヌードル」でした。これなら犯人と対峙する機動隊も交代時間に食べられました。沸騰したお湯を注いで3分待ってすぐ食べるという、自分で調理し、自分で食べるタイミングを決定できる食品の有効性がきちんと伝わったことになります。本来コマーシャルは流せないはずのNHKで、カップヌードルを食べる姿が大写しになって流れたことで国民は商品の存在とセールスポイントを知り、大きな購入動機が生まれました。当時のテレビにとっては民放・NHKを合わせると現場中継を9割の人が見ていたというデータも残る中、広告費を出していない日清食品の一人勝ちで、実にNHKや他の食品メーカーからすると皮肉な結果になったという、テレビの歴史からするとかなり稀有な事件の主役がカップヌードルだったわけです。

実は最終週は、ナレーションだけでも事実として紹介されるのかなと思って見ていたものの、全く触れられずに、「チキンラーメン」や「カップヌードル」が売れるようになったのは今回の朝ドラヒロインのおかげですというような何か変な結論で終わらせるというのは、いくらフィクションとは言え無理がありすぎです。本当に日本の中でもわずかな地域で行なったキャンペーンだけで大ヒットになった? なんてことが本当なのかはちょっと考えればわかることでしょう。

たかがドラマにそこまでのリアリズムは必要ないと思う方もいると思いますが、それなら実在の人物で、さらに現在もテレビコマーシャルを民放局で放送している企業について利益を誘導するようなドラマ制作自体について、もう少し考えるべきでしょう。

(番組データ)

連続テレビ小説 まんぷく(151)[終]「いきましょう!二人で!」NHK総合
3/30 (土) 8:00 ~ 8:15 (15分)
【出演】安藤サクラ,長谷川博己,内田有紀,松下奈緒,要潤,大谷亮平,桐谷健太,瀬戸康史,岸井ゆきの,松井玲奈,呉城久美,中尾明慶,深川麻衣,牧瀬里穂,加藤雅也,松坂慶子,
【語り】芦田愛菜
【作】福田靖

(番組内容)

「まんぷくヌードルの価値が理解できるのは頭の柔らかい若者たちではないか」という福ちゃんの気づきをきっかけに、大勢の若者が集まる「歩行者天国」で、社運をかけてヌードルの大試食販売会をすることになりました。いよいよ勝負の日。誰もが成功を願う中、行き交う人々の反応は…。そして福ちゃんと萬平さんは、ある大きな決断をするのです。


幕末初心者への配慮なのか単なる現場の「手抜き」なのか

まず、番組データの中に出演者や司会として紹介されている人たちの顔ぶれを見ていただければおわかりかと思いますが、NHKの大河ドラマについての紹介番組なのにNHKアナウンサーを一切絡ませていないというのがこの番組のコンセプトを象徴しているように思えます。

番組の最初に司会の後藤輝基さんが台本通りのセリフなのか自身の想いなのか、幕末には詳しくないというようなことを言ってしまっていることからもわかる通り、今回番組で紹介することになる「坂本龍馬」「勝海舟」「岩倉具視」「桂小五郎」という、番組後半にキーとなる4人の歴史上の人物を細かく、知らない人に対して解説し、どうか後半のドラマの急展開に付いてきてね(^^;)。という番組であることは明らかです。

しかしながら、NHKが一番見て欲しいと思っている若年層の視聴者層はテレビそのものを見ないか「世界の果てまでイッテQ!」を見ていることでしょう。個人的にはこの種のPR番組を通常のドラマ枠でやるよりも、裏にそれほど強力な人気番組のない時に流すもので、ドラマ自体は複雑な幕末を扱うものだけにしっかりと今回も話を進めて欲しいと思っていたのですが、ドラマがあることを信じてテレビの前で待っていた人たちを大いにがっかりさせた番組であったと思います。

特に今回の番組のタイトルに「西郷どんスペシャル(2)」とあるように、通常のドラマを中断してまでドラマに関する別番組を流したのは今回が2回目であるということも見逃せません。ちなみに第一回目は4月1日に「鈴木亮平×渡辺謙の120日」 という題で撮影裏のお二人の姿を中心に放送されたのですが、この時もなぜ通常ドラマ枠を潰して放送に挟んだのかという疑問は出ていたと思います。

NHKの方では大河ドラマを4章に分け、場面が変わるところで通常放送枠でこのようなスペシャル版を入れる予定で本数を減らすということのようです。NHKでは否定していますが、いわゆる「働き方改革」にのっとってドラマ製作の仕事量を軽減させたという説まで出てきました。もちろんそのような説をNHKは肯定するわけはないでしょうが、貴重なドラマ一回分を民放のバラエティーのような形にして、さらにスタジオでのトークの内容も45分という時間の関係からかなり編集で切っていたのもわかったので、スタジオ出演者の話もあまり深く入ってこなかったことも事実です。

個人的には、このようにスタッフが結果的にでも楽をするような番組を入れるようになった現場はかなり疲弊していることが推測されるのですが、このまま行くと日本のテレビ時代劇にとってさらなる展開になるのではないかと危惧することもあります。

というのも、民放の時代劇であの水戸黄門さえ「大岡越前」「江戸を斬る」のような出演者が休めるような別の企画物が放送されなくなり、現代劇とワンクールごとの放送になったと思ったら長くスポンサーを務めてきた松下電器(現パナソニック)が撤退し、ついに連続ドラマとしての水戸黄門の放送は終了してしまいました。このような、最初は小さな変化だったものが最終的に大きくなってしまう事が大河ドラマでも起こるのではないかという危惧は笑い話で済ますことはできないでしょう。ドラマスタッフとしても多くのドラマの中でも時代考証の大変さや小道具や衣装の準備が大変な時代劇を今まで作った人の経験をいかに後世に伝えていくかというところで問題をかかえています。

いつになるかわかりませんが、大河ドラマの枠で時代劇が放送されなくなり、大河ドラマそのものが終焉を迎える未来というものも十分有り得ると思っています。そのきっかけとなるのが今年から始まった「西郷どんスペシャル」だと言われかねないような番組だなとここでは指摘するだけに留めますが、ドラマの番宣を本放送にもってくるということはそれだけ見る側にとっては重大なことだということをもっと多くの人に理解して欲しいと思います。今まで毎週楽しみに見ている大河ドラマファンをがっかりさせない番組作りを望みたいということです。

(番組データ)

西郷どんスペシャル(2)「いざ革命へ!西郷と4人の男たち」NHK総合
7/8 (日) 20:00 ~ 20:45 (45分)
【出演】鈴木亮平,近藤春菜(ハリセンボン),山崎怜奈(乃木坂46),厚切りジェイソン,江川達也,
【司会】後藤輝基(フットボールアワー),横山裕(関ジャニ∞),磯田道史

(番組内容)

いよいよ西郷どんは革命の表舞台へ。島流しで命さえ危うい“どん底状態”だった西郷が、なぜわずか3年で“日本一の大物”になれたのか?その鍵は4人の男たちとの出会いにあった。勝海舟(遠藤憲一)坂本龍馬(小栗旬)岩倉具視(笑福亭鶴瓶)、そして桂小五郎(玉山鉄二)。歴史家・磯田道史さんを中心に多彩なゲストが、西郷と出会う英傑たちの魅力とその「金言」を探る歴史バラエティー特番。出演:後藤輝基、横山裕ほか


山下洋輔の出てこない赤塚不二夫物語になるのか?

今回、第一回目の本放送を見逃したので再放送を録画で見たのですが、ドラマのスタッフ欄には音楽に大友良英氏の名前があり、赤塚氏が夜な夜なクラブで飲んでいる時にちょっと流れかけたジャズっぽい音楽が大友氏の手によるものなのかと思いながら、このドラマの「家族」というテーマにはちょっと違う観点から見ていました。

残念ながら赤塚氏が第一回目の中で遊んでいるのは主にフジオ・プロダクション内のアシスタントや漫画製作のためのブレーン、そして編集者に限られているようでした。実際私は直接赤塚氏とお会いしたことがないので本当のところはわからないものの、あらゆるジャンルで自身の表現を模索している人たちが赤塚氏と飲み、交流をし、その中から新たな展開が生まれてきたという側面もあり、私は赤塚氏の漫画とともにそうした赤塚氏のエッセンスを得て大きくなったクリエーターの方々も大好きです。

そんな中でも感謝しているのが、少年時代にリアルタイムで赤塚氏の漫画を読み、そろそろ自分も漫画からは卒業かと思った時に出会ったのが山下洋輔トリオ(ビアノ山下洋輔、アルトサックス坂田明、ドラムス森山威男)のフリージャズだったのですが、何とこのお三人は国内ツアーの時に移動手段がないので、懇意にしている赤塚氏のベンツを借りて全国を回っていたというお話を山下氏のエッセイで読み、改めて赤塚氏の懐の広さを感じられたことです。

ちなみに、赤塚氏のお葬式で「私もあなたの作品でした」と言ったタレントのタモリさんも、もともと赤塚氏と知り合いだったわけではなく、山下トリオが博多でライブを行なった時にその打ち上げで絶妙な密室芸を披露したことで山下さんらが赤塚氏にタモリさんを紹介し、タモリさんが赤塚氏のお宅に居候をしながらテレビに出してもらい、それがタレントとしてのタモリさんの活動の始まりということがあるのです。ネット上にはタモリさんはなぜ出てこないのか? という書き込みを多く見付けましたが、私としては山下洋輔さんをはじめとする多くの「非漫画家集団」がドラマで出てこないところが、今一つ赤塚氏の魅力を伝え切れないのではないかと不安に思うところです。

ドラマの中での赤塚氏のセリフの一つだったと思うのですが、「常識人でなければ面白い漫画を描くことができない」というのはドラマの中では実に皮肉に聞こえますが、それこそが漫画家の赤塚不二夫氏が抱えていた葛藤だったのではないかと思います。デビューまでは線の細い内気な美少年として仲間うちから描かれることが多い赤塚氏ですが、いわゆるギャグ漫画を心の中に秘めたように構想しており、それがギャグ漫画としてのデビュー作「ナマちゃん」に凝縮されています。

その後、赤塚氏は自分のギャグ漫画の原点としてその面白さを当時の子供たちにも伝えようと、彼が愛してやまなかった杉浦茂氏の漫画の登場人物の決めセリフ「レレッ?」をいつも使う「レレレのおじさん」というキャラクターを作ります。当時は杉浦茂氏の盗作ではないか? という話も聞かれたそうですが、私はあくまで杉浦氏の漫画をリスペクトする中での行動だと思いますし、杉浦氏自身が漫画一筋の真面目な方だったという話を聞き、ギャグ漫画家の理想として話に出したのではないかと思われます。

現代でも多くの漫画家は真面目でマスコミにはほとんど登場せず、かろうじて赤塚イズムを継承しているのはみうらじゅん氏が目立つくらいなのではないでしょうか。ただ、赤塚氏と比べてしまうと、時代のせいもあるとは思うのですがスケールが大きく、今後このドラマがどこまでそんな赤塚氏の事を描いていけるのか楽しみではあります。

ただ、最初に書いたように、できれば山下洋輔氏のような人もドラマでは出てきてほしいですし、漫画だけでなくあらゆるメディアやジャンルを巻き込みながら自身の表現もしてきた赤塚氏の全貌を特に当時の事を知らない人にもわかるように伝えて欲しいと切に思います。

(番組データ)

土曜ドラマ バカボンのパパよりバカなパパ(1)全5回「わしは天才なのだ」NHK総合
2018/07/02 02:35 ~ 2018/07/02 03:50 (75分)
【出演】玉山鉄二,比嘉愛未,長谷川京子,森川葵,馬場徹,駿河太郎,マギー,浅香航大,井藤瞬,千代將太,駒木根隆介,押元奈緒子,草笛光子,住田萌乃,
【語り】松尾スズキ
【原作】赤塚りえ子,
【脚本】小松江里子
【音楽】大友良英,Sachiko M,江藤直子

(番組内容)

破天荒な日々を送っていた不二夫(玉山鉄二)を元嫁の登茂子(長谷川京子)と、娘・りえ子(森川葵)は心配し、眞知子(比嘉愛未)を気に入り、結婚させようと画策する。

天才ギャグ漫画家・赤塚不二夫(玉山鉄二)は、アシスタントや編集者と遊ぶように漫画を描き、奥さんである登茂子(長谷川京子)、娘・りえ子と別れ、夜は飲み屋でバカ騒ぎするという破天荒な日々を送っていた。時は流れて、成長したりえ子(森川葵)は不二夫に再会する。そして、登茂子とりえ子は、大きな愛情で不二夫を包む眞知子(比嘉愛未)を気に入る。二人は、眞知子と不二夫を結婚させようと作戦を立てるが…。


無意識に地方軽視の姿勢を露呈させたJOBK

現在の日本では、本当に払う根拠があるのかという考えを持つ人もいますが、それほどの例外はなく、国内にテレビ受信機とアンテナを設置しただけでNHKの受信料を払っています。さらにその額というのは北海道から沖縄まで一律になっています。

この事について何の疑問も持たないのは生まれてからずっと全ての民放キー局を受信して見る事ができる地域に住んでいるからこそのものでしょう。しかし、例えばスポーツ中継などで、

「この後も、一部の地域をのぞいて中継をお送りします」

とアナウンスされることがあり、自分の地域がその「一部の地域」であることを自覚している人からすると、なぜ自分の地域だけがと思って悲しくなってしまうのではないでしょうか。NHKの受信料は民放も含めて払っているわけではないですが、場所の違いで見られるチャンネルが変わってくるなら、現在のペイチャンネルの考え方が当り前になってきている今であればなお、東京と青森が同じ受信料を取っているのはおかしいのではないかと思う人が出てきてもおかしくないでしょう。

ただ、こうしたTVチャンネルの地域差における大きな問題として、昔から今まで常に問題にされてきたものとして、「テレビ東京系列の番組がリアルタイムで見られない地域が多くある」というものがあります。かくいう私の住む静岡県内にもテレビ東京系の地方局はありませんので、このブログで取り上げたいテレビ東京の番組は多くあるのですが、リアルタイムで見られない事で、他のチャンネルのように取り上げづらいという問題が起こっています。

ちなみに、現在テレビ東京の番組がリアルタイムで見られるのは、北海道・関東・愛知・大阪・岡山・香川・福岡・佐賀(佐賀県と徳島県については地方局がなくても隣県で見られるなどの条件を考慮してあります)で、残りの地域では見られないわけですが、例えば静岡県であっても神奈川県に近い熱海や伊豆などではアンテナを向ければ映ってしまうような場所はあるものの、私の住む地域では全く見られないなど、同じ県でも差がある場合も出てきます。

こうした民放局の「地域格差」を無くすために衛星放送(BS)開始の時に期待されたのが、地上波アナログの難視聴地域対象に作られた東京地区で流れている地上波アナログ放送をBSのチャンネルで常時同時配信するチャンネルでした。ただ、このチャンネルを見るには地上波が見られない地域に住んでいることを証明して申請することが必要で、もしその申請が通ったとしても同時配信するチャンネルを全て見られるわけではありませんでした。もし申し込んだ人の住んでいる地域でテレビ東京が見られなかったとしたら、ご丁寧にテレビ東京のチャンネルだけスクランブルが掛けられて見られなくなってしまっていたのでした。

最初に書いたHNKの受信料が全国一律であるということから考えると、当時からBSのアンテナと専用テレビを持っている日本国内に住んでいる人に関してはこれら東京で見られるチャンネルを全て見られるようにするのが公平と言えそうな気もするのですが、そういう事を許すと地元の地方局の経営が圧迫されるからということで、護送船団方式で全国の地方局が守られてきたということですが、それでも常にリアルタイムで見られないチャンネルだけはスクランブルを掛けずに見せるべきでなかったかと私は思います。

そうした流れのせいもあり、テレビ東京が地上波でリアルタイムに見られないという状況は今のデジタルテレビの時代にも続いています。この件については、全く同じ時間に同じ番組を放送するわけではないので、地方局の営業阻害とは関係ないことです(静岡のテレビ局はテレビ東京の番組を買って週末などに一気に放送していますが、そんな事をしなくても済む分、むしろ地方局の経費削減にはいい影響も出るのではないかと思います)。このようなテレビに関するブログをやっていても、地方在住であれば見られる番組に制限がかかり、同じ事をやっている人がいたとしたら、それだけでハンデになってしまうからです。

ここまで前置きが長くなりました。しかし、こういった状況を知った上でこれから書くことを読んでいただけると、違った感想になってくるのではないかという考えの元で書かせていただきました。本日のドラマの内容は、落語「時うどん」を笹野高史さんが再現して素晴しかったのですが、ドラマが終了して次週案内のために出てきたのが、女義太夫の芸人リリコに扮した広瀬アリスさんと、主人公の親戚で、京都の薬種問屋に奉公している手代の風太に扮する濱田岳さんでした。

夫婦漫才のような感じで、濱田岳さんはご丁寧にびくと釣り竿を携えています。二人は来週のあらすじの紹介し終えると、濱田岳さんがいきなり「チヌ釣りに行こう」と急にごねだし、広瀬アリスさんがビンタを食らわすという知っている人にはおなじみのネタを披露して番組は終了したのですが、この時、ネットの実況を見ていると多くの人はそのネタ元をご存知だったものの、全くそのネタを知らない人にとっては、何故唐突にこの二人が仲良くなってるの? と疑問を持った方もいたようです。

普通にこのドラマだけ見ていれば風太と近い関係なのはむしろ同じ店で奉公しているトキに扮する徳永えりさんの方ですので、制作者の意図がわからないと思われても仕方のない面もあります。しかし、広瀬アリスさんと濱田岳さんが、テレビ東京のドラマ「釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助」で恋人関係から新婚の夫婦役になっているのを知っていれば、あのままの調子で演技されていたこともあり、ここに「テレビ東京とNHKとのコラボ」が実現していたということがわかり、余計に楽しめたというわけです。

しかし、ここで大きな問題になるのが最初に紹介した通り、テレビ東京の番組は全国一律で見られるものではないということです。私自身はテレビ東京のドラマは、地方局が購入したものを時間差で見たり、ネット配信されたものを見ているということはあるものの、リアルタイムには見ることはできません。ただ、視聴率とは関係なく地道にいいドラマを作るなという感じはあります。それは、出演料の関係で人気絶頂の俳優やアイドルを使えない分、地道なキャスティングをすることでカバーし、安心して見られるように作られているという風に思われるからです。ただ、それにしてもテレビ東京が全く見られない地域については「釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助」という、有名な同名映画をスーさん役を映画では浜ちゃんを演じた西田敏行さんが演じる形でリメイクしたドラマが放送されていたことすらも知らない人が今朝ドラを楽しみに見ている人の中にもいると思います。

個人的にNHKの大阪放送局に対して改めて問いたい事というのは、このような日本全国に届く放送を毎日行なっている中で、日本全国どこでもテレビ東京系列の放送がリアルタイムで見られる人ばかりだと思ってテレビ東京のドラマ内コラボを実現したとでも言うのかということです。

少なくとも今回の放送によって、私の中では半ば眠っていたテレビ視聴に関する地域格差の存在を思い出し、こんな形で爆発してしまいました。NHK大阪放送局は寝る子を起こしてしまったということになります。先日は来年の朝ドラでも企業のPRのような題材を扱うということで批判させていただいたばかりですが、この調子では来年の今頃にも何をしでかすかと考えると、ブログのネタを提供してくれる点ではありがたいですが、あまりつっ走り過ぎてもどうかと思います。

それこそ、将来的にNHKがネットで同時配信をするというなら、テレビ東京の見られない地域限定でも(もちろん、他の民放ネットが整っていない地域での民放も)NHKに加えて地上波で見られない同局の番組を常時同時ネット配信することが実現されなければ、今後も今回のように不平等な番組同士のコラボが生じる恐れも出てきます。そんな議論が出てくれば、改めてネットでの常時同時配信自体に影響が出るような騒動も起こりかねない今回のNHKの所業であったことは確かではないでしょうか。

(番組データ)

連続テレビ小説 わろてんか(42)「風鳥亭、羽ばたく」NHK総合
11/18 (土) 8:00 ~ 8:15
【出演】葵わかな,松坂桃李,大野拓朗,岡本玲,兵動大樹,藤井隆,内場勝則,笹野高史,高橋一生,鈴木京香
【作】吉田智子

(番組内容)

てん(葵わかな)と藤吉(松坂桃李)は風鳥亭の存続をかけ、文鳥(笹野高史)の特別興行を開催した。伊能(高橋一生)の助言で新聞にも取り上げてもらい、風鳥亭にはこれまでで一番大勢の客が押し寄せた。ところが高座に上がった文鳥が前座噺(ばなし)の『時うどん』をやると言うと、文鳥の十八番を期待していた客たちは驚いて騒ぎ出す。だが噺(はなし)が進むにつれ文鳥の巧みな芸に引き込まれ、寄席は爆笑に包まれてゆく。


映画は残りテレビは消えゆくものなのか……

初回放送から毎回楽しみにして、裏番組を見ている時も録画までして全回を通して見終えたのがNHKの土曜ドラマ、原作にボードビリアンの小松政夫さんの自伝的長編小説を使った「植木等とのぼせもん」でした。

ドラマの前説には小松政夫さん本人が出演し、当時の「ハナ肇とクレイジーキャッツ」のメンバーに扮した役者さん達は全て自前の演奏ができるという、かなりリアルな形での小松政夫さんと植木等さんの関係を中心に物語が進んでいきます。

恐らく、クレージーキャッツや植木等さんの事をよく知らない人は何だと思うかも知れませんが、当時の事については渡辺プロダクションの渡辺美佐氏が一切出て来ないことをのぞけば、良く作られていたと思います。

最終回に出てきた中では、勝村政信さんが演じるクレージーキャッツの映画「無責任シリーズ」の監督をされた古澤憲吾さんが植木さんの出したCD「スーダラ伝説」に関してのインタビューを受けている時に突然登場し、放った言葉が印象的でした。

「映画は、残るね」

というのがそのセリフですが、圧倒的なドリフターズ世代であった人たちも、年を経るにしたがってその記憶も薄れていきます。特にバラエティ番組において、テレビ番組のアーカイブス化ということについてはあまりにも権利者が多すぎるため、現代でもなかなか難しいところがあるのに比べ、映画というのはその辺はしっかりしており、ソフト化されたものをレンタルして見たり、最近ではビデオオンデマンドでも見ることができます。

私がこのブログをテレビをテーマにしてオープンさせたというのも、せっかくいいドラマを作ってもテレビドラマというものはなかなか後世に残らないというような、テレビの特性が前提にあります。人気ドラマもそれほど人気ではなかったドラマでも、映画のように番組終了後にDVD化されることが当り前になりつつも、全て見終わるまでは何シーズンもあると長いですし、2時間前後で一つの物語が終わる映画とはちょっと違って、よっぽど好きな人でなければ全巻揃えて見ないですし、それがお子さん世代や孫の世代まで受け継がれるかというと疑問な点があります。

そういう「映画」と「テレビ」の違いについていち早く気が付いたのが、北野武氏だと言えるかも知れません。今から50年後くらいに北野武氏の事は知っている人が多かったとしても、明石家さんまさんはどうかと考えてみてみましょう。いわゆる、伝説のコメディアンと呼ばれた人たちを活字では知っていても、一体どんなことをしていて、何が面白かったかというのは、実際にその映像を見なければわかりません。

特に戦前に活躍していた人などは役として出演している映画を見て当時の活躍を空想するしかなく、テレビ創成期に大活躍した芸人さんやコメディアンであっても、さすがにおじいちゃんがよく知っている人でお孫さんまでよく知っているという例というのは僅かなものです。テレビの出演というのは断片的なもので、そうした断片をつなげてまとめてもらえるような人でない限り、今大人気の人であっても将来的に名前が広く知られ続けるということはテレビに出ているだけでは難しいと思われます。

そうしたテレビの特徴に気づき、テレビはあくまで映画の宣伝として出て、メインの活動は映画にシフトするような北野武氏の生き方の方が名は残せるかなとも思います。しかし、放送しては消えゆくテレビの方が、世の中の今というものを直接的に映していることは確かなので、このような形で記録を残すことで、テレビ放送直後の想いというものをブログという場でキープしておきたいという気持ちがあるのだとご理解いただければ幸いです。

さて、ドラマの本編は満足いくものだったことは述べましたが、唯一残念だったのが番組のエンディングがひどくあっさり「スーダラ節」が流れただけで終わってしまったことです。せっかくなら紅白歌合戦のステージセットを作り、植木等さんの声色を作って必死に役作りしていた山本耕史さんに1990年の紅白のステージの再現をしてもらっても良かったですし、まだ植木等さんの物凄さを感じられていないかも知れない人に向けて、当時の紅白の資料映像を時間の許す限り流して欲しかったという想いもあります。

その年の紅白歌合戦はステージ裏での話題にも事欠くことなく、当の植木等さんも予定の時間よりもかなり巻きが入っている中でかなりストレスがたまっていた出演者もいたようなのですが、植木等さんがステージに登場するやいなやそんなステージ裏の雰囲気は一瞬で消えたように盛り上がって、まだ第2部が始まったばかりなのに大トリのようなステージで見ている人を十分に楽しませてくれたまさに「伝説となった紅白出演」だったと思っています。NHKのアーカイブスは有料ですのでなかなかその様子を見ようと思っても難しいので、せめてドラマのエンディングとしてあのステージの一部でも流してくれたら、クレージーキャッツの黄金期を知らない世代にも植木等さんの凄さを感じられたでしょう。

ただ、この文章を書いている現在では、Googleで「紅白歌合戦 スーダラ伝説」と検索をかけると、その時の様子がYouTubeでしっかり出てきます。リアルタイムでこの書き込みを見ていない方が同じように検索をしても動画は消されてしまっているかも知れませんが、このドラマを一通り見て、植木等さんの事に興味が出てきた方はぜひその動画を視聴してみることをおすすめします。

(番組データ)

土曜ドラマ 植木等とのぼせもん NHK制作
2017年10月21日(土) 20時15分~20時45分
山本耕史,志尊淳,山内圭哉,浜野謙太,武田玲奈,でんでん,高橋和也,優香,伊東四朗,中島歩,坂井真紀,富田靖子,勝村政信

(番組内容)

(8)「スーダラ伝説」