バトミントンとともに最近相当世界トップレベルに達していると感じられるのが卓球ですが、バトミントンは群雄割拠の中に日本が割り込んできたような印象があるのですが、卓球の場合はここのところは中国が男女ともあまりにも強すぎて、ルール上でも他の国が勝てるような改正を行なっても全く中国選手に歯が立たなかった、まさしく王者「中国」の牙城をどうやって崩すかというところがずっと続いていました。
個人的には中国選手の壁を超えるのが日本選手でなくヨーロッパや他のアジア選手であってもいいと思っていたのですが、今回BSテレ東が特別番組を編成してまでスウェーデンオープンの女子シングルスの試合を放送したのには実に大きな意義があります。
というのも、大会自体は大きくはないものの、日本の伊藤美誠選手が中国女子では今のところ最強で団体戦の主力メンバーである劉詩ブン、丁寧、朱雨玲という3選手を破って優勝まで駆け上がってしまったのですが、試合の結果だけでなく試合内容も、伊藤選手の世界一の強さを中国チームに見せつけた試合になったからです。
同じような事を過去に東アジア選手権で平野美宇選手が行ないましたが、当時の平野選手のピッチの早い打ち込みというのは中国選手に対策される範囲の技術であり、平野選手は中国に対策されてしまったためでしょうか、現在の平野選手はなかなか中国選手に勝てなくなってしまっていますが、今回出場して優勝した伊藤美誠選手は、先だっての世界卓球の団体戦でも中国選手に勝ち、さらに今回の三連勝で対策の上を行って粉砕したとでも言えるほどの素晴らしい卓球を見せてくれました。
彼女の卓球は、決して下がらずに相手を下がらせるようにして先手を取り、どんなボールが来ても叩けるものなら思い切り叩くという、中国ではなかなかそうした攻撃を行なう人がいないような試合をしていました。これは、今までの常識にとらわれず、練習ではない遊びの中から新しい技術を考案するようなところが彼女にはあって、それが実を結んだ形です。そうした技術がことごとく今回の試合では決まっていました。強打もすごかったですが、野球のチェンジアップのような遅くて回転のかかっていないナックルボールをも織り交ぜてくるので、相手も伊藤美誠選手のボールを強く打つことができず、タイミングが合わずにチャンスボールを供給してしまうという様を見て、改めて彼女の凄さを感じざるを得ませんでした。
男子ではかつて、今回の試合が行なわれたスウェーデン出身のワルドナーという選手がいて、この選手も超人的な身体能力で個人で中国選手を粉砕し、逆に中国卓球界はいかにしてワルドナー選手を倒すかという事を考えて名勝負を繰り広げたのですが、現在の伊藤美誠選手の試合はこのワルドナー選手の活躍を彷彿とさせる凄さです。恐らく、このまま伊藤選手が伸びて行けば、オリンピックの金メダルも現実のものとして視野に入ってくるでしょう。
実のところ、男子の張本智和選手でもユースオリンピックで中国の若手に苦杯をなめたことで、まだまだ中国の第一線の卓球に追い付くのは難しいのではないかと思っていたのですが、今回の伊藤選手の活躍によって、さらに日本選手のレベルを上げて行けば、団体でも中国に勝つという空想が現実になる可能性があるのではないかと感じました。今回の試合の凄さを読む人に感じていただきたいとともに、今後の伊藤美誠選手に注目していただきたいと切に思います。
(番組データ)
緊急特番!伊藤美誠スウェーデンオープン優勝SP BSテレ東
11/5 (月) 17:58 ~ 18:55 (57分)
大会名称:ITTFワールドツアー・スウェーデンオープン
開催日:10月29日(月)~11月4日(日) 開催都市:ストックホルム
【解説】平野早矢香
【実況】植草朋樹(テレビ東京アナウンサー)
(番組内容)
スウェーデンオープンで見事今季ワールドツアー2勝目を挙げた伊藤美誠。その戦いの軌跡は、最強中国3選手・劉詩ブン、丁寧、朱雨玲を撃破しての快挙だった。
【伊藤美誠 激闘の軌跡】
<女子シングルス決勝> 伊藤美誠4-0朱雨玲(中国)世界ランク1位 11-3/11-3/11-5/11-8
<女子シングルス準決勝> 伊藤美誠4-2丁寧(中国)世界ランク2位 3-11/7-11/12-10/11-6/11-9/11-8
<女子シングルス準々決勝> 伊藤美誠4-3劉詩ブン(中国)世界ランク6位 12-10/7-11/7-11/5-11/13-11/11-4/11-8
<女子シングルス2回戦> 伊藤美誠4-3フォン・ティエンウェイ(シンガポール) 2-11/9-11/12-10/11-6/5-11/11-5/11-9
<女子シングルス1回戦> 伊藤美誠4-1張薔(中国) 11-9/11-4/6-11/11-3/11-8