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「和牛」と「とろサーモン」の評価に一石を投じる番組

昨年のM-1グランプリの優勝を審査員の評価の微妙な違いにより逃してしまった「和牛」がテレビに引っぱりだこという印象がこれを書いている2018年4月現在します。器用でどんなところでも笑いが取れるという点が、今回から始まった「新型教養番組」でも生かされています。

この番組は一流企業で営業の現場にいる社員を前にして、漫才という芸を極めた芸人が講師という立場で登場し、ロールプレイングをしたり、お笑いの手法が営業にも流用できるように説明したりしながらNHK的に演芸の素晴らしさを伝えるという面もある番組だろうと思います。これは、教育テレビでの「教養番組」として考えれば全く非の打ちどころのない構成と「和牛」の二人のこなし方に唸るばかりで、企業や商業高校が研修や授業に使う教材として大変優れていると思います。改めてそんな講師のような事を当り前にこなす「和牛」のお二人の器用さも随所に感じました。

恐らく「和牛」さんは今後もどのような形が自分に求められているのかということを今後もしっかり感じて営業をこなすことで、生涯お仕事には困らないでしょうが、この方向性で大ブレイクしたり大きな賞を取れるのかと言えばそれは別の問題になります。

個人的には、今回番組のために明かしてくれた「笑い」を引き出すテクニックを公開すればするほどネタ番組では「あの時ああ言った事をそのまま使っているのだな」という風に感心はしますが、その分「笑い」というものは感じなくなっていくということも事実です。もしこの世に「お笑い評論家」なる商売があり、テレビのネタ番組で実況するアナウンサーの横でテレビを見ている人にわかりやすいようにギャグの解説をするというような仕事があれば、まさにぴったりな感じなのですが、テレビを舞台にしたお笑いとは違う感じで、このまま「和牛」のお二人がしゃべくり漫才の真髄を極めて行くのなら、あえてテレビはNHKの演芸番組やこうした教養番組のみにして、お笑いの教科書に載るような笑いを目指して行って欲しいと思います。

そう考えるとM-1グランプリで優勝した「とろサーモン」は「和牛」と比べると優勝したのにその扱いが「和牛」よりも下という感じもしますが、そこは「優等生」と「クズ」の対比ということで、個人的にはとても講師としてキリンビールの社員を前に自分達の漫才をネタに営業教育なんて離れ業はできないと思いますが、その分テレビの枠の中で弾けることのできる可能性は感じます。

ここまで読んで勘違いして欲しくないのですが、今回比較している「和牛」と「とろサーモン」は、審査員の好みの問題で優勝と準優勝に分かれただけで、どちらが面白いかということについては個人個人の好みが分かれるところだろうと思います。ただ、こういう番組を見ていると、安心して見ていられるきっちりと計算された笑いを作る度合いがより強いのが「和牛」の方ではないかなという気がします。今後彼らがテレビ界をうまく立ち回ることができれば、さらに飛躍する可能性は大だと思いますが、逆にテレビの枠からはみ出すような笑いを実践するのは難しいのではないかと私には思われます。

あと、もう一つ番組内容以外に気になった点を挙げます。番組では「一飲料メーカー」として紹介されている企業がテレビに出るのに、「一番搾り」「FIRE」のジャンパーをわざわざ着て仕事をし、NHKの方もロゴを消すこともせず放送するというのは教養番組だからなのかも知れませんが、ますますNHKの大手企業とのタイアップ疑惑を感じざるを得ません。

(番組データ)

芸人先生 #1「和牛×飲料メーカー」(前編)NHKEテレ
2018/04/02 23:00 ~ 2018/04/02 23:30 (30分)
【出演】和牛,
【解説】営業コンサルティング・童話作家…和田裕美,
【語り】桜井玲香

(番組内容)

第1回の芸人先生は2年連続M1準優勝の和牛。漫才でいう「ツカミ」の大切さをビジネスにも生かす方法を教える。訪問先は某ビール会社。笑えてためになる授業をご覧あれ!

漫才、コントは「究極のコミュニケーション術」である!!この番組は、現役で活躍する一流漫才師、コント師たちが己の笑いの技術を“コミュニケーション術”に置き換え、日々ビジネスの世界で戦っている社会人たちに伝える「新型教養番組」である。第1回は2年連続M1準優勝の和牛。訪問先は、ビール会社。現役の営業マンたちに、最初の30秒間の大切さ「ビジネス基礎ファーストコンタクト講座」を教える。