前回の放送の後で、第一回目の放送が地上波深夜で放送されたり、BSフジでも再放送がありながら、「珍盤アワー 関根勤の聴くメンタリー」もついに2回目の放送となりました。2回目ということもあり、ある程度は手探り状態を脱してより多くのレコードを聞くことができましたし、前回はあまり感じなかったのですが、改めて落ち着いて見てみたら、一つ感心した演出方法がありました。
テレビとは見るもので、聴くものではないのですがラジオだとずっと聴いていないと大事な音源を流す場合に聴きどころを外してしまう場合があります。これは情報が音だけでしか入って来ないのですから仕方のない部分ではあるのですが、今回特に思ったのが、レコードを掛け、その音源が聴こえている時間には共通の「よく聞いてください」というマークが画面に出ることによって、このマークが出ている時には画面を注視するよりも耳をそばだててテレビから出てくる音に集中しようというテレビを見ている人達への共通認識を促す効果を出しています。今回のネタの中では、赤ちゃんの鳴き声の聞き分け方のレコードというのが個人的には秀逸でした。
今回は特に出てきたネタが多かったこともあって、こうした共通マークの出現によってかなり自分自身の視聴にメリハリを付けられたのではないかと思います。そして、番組中盤に行なわれた「未来の聴くメンタリー」とでも言うべき音を、出演者の井川さんが録ってきてそれが何の音なのか当てるというコーナーが有り、現在において失なわれつつある音があるという事を感じるとともに(フルサービスのガソリンスタンドや幼稚園の子供の遊ぶ声など)、もしこの番組が毎週でなくてもいいのでレギュラー放送がなったとしたら、ぜひ視聴者からの「音の投稿コーナー」を作っていただいて、その中から未来に残していきたい音を紹介できるくらいの事ができれば面白いなとも思います。
この番組で紹介している「聴くメンタリー」の要素の詰まったレコードというのは、いわゆる生録ブームで街にカセットデンスケとマイクを持って生活音や環境音、SLの走行音などを録りに行く「生録マニア」の存在が支えていたのではないかと思います。当時はアナログのカセットテープに録音するので大変だったと思いますが、そのようにしてマイクと録音機を持って外に出た人が日本中に出現したことによって、多くの珍しい音源が後世に伝わるというところもあったでしょう。恐らく素人の録った音というものは、そのほとんどは既にきちんとしたものが録られていたり、あまりに普通のものだったりして後世に残せるというところまで行なかいことが多いとは思いますが、多くの音を聞き込んだ専門家に判定してもらうことによって、道端にダイヤモンドが落ちているくらいのとんでもないお宝が混ざっているかも知れません。
さらに動画と違って、録音機の進化というのは現在でもある程度落ち着きを見せているということも、野外録音をしてみようという人にとってはいい環境であると言えるでしょう。というのも、私の手元にあるTASCAMのDR-05というICレコーダーは2011年に購入して今年で6年目というものですが、メーカーの製品ページを見るとまだ現行製品で、本体のファームアップ用のプログラムが2017年11月にも最新のものが出たりしているのです。
ですから、ステレオでの録音ができないスマホでは難しいですが、評価の安定した1万円前後のレコーダーとバイノーラル録音のできるマイクとイヤホンが一緒になったローランドのCS-10EMあたりをを合わせて使えば、だいたい2万円くらいの予算でも十分に使える機材が手に入ります。これらの機材を組み合わせると生録に興味がない人から見れば、単にミュージックプレイヤーを歩きながら聞いているようにしか見えないのが、常に自分の両耳のところにセットしたステレオマイクから入って来た音をイヤホンでモニターしながら録音することができます。しかもまさか録音しているように見られることはないはずなので、特別な機材も必要とせず、どんな所へ行ってもそこでの生活音や自然音を録ることが怪しまれずにできるということになるのです。
このように気軽に音を録ることができるようになれば、自分で自分の興味あるものの音のライブラリーが作れます。私自身も今回の放送を見させていただいて、暮れからお正月に掛けて、録音機とバイノーラルマイクをセットにして初詣にでも行ってみようかなと思いました。それだけでなく、旅行へ行った時にはスマホで撮った写真とセットになるように、音の記録を取るというのも面白そうです。興味がある方はネット上には様々なエキスパートの方々が残した情報がつまっていますので、ぜひご自身で調べてみて下さい。
(番組データ)
珍盤アワー 関根勤の聴くメンタリー BSフジ
12/15 (金) 23:00 ~ 23:55 (55分)
出演者:関根勤 清水ミチコ 井川修司(イガイガワ)
ナレーター:よしいけいこ
編成:大森慎司
企画構成:若木康輔
演出:粂田剛
プロデューサー:河野孝則
(番組内容)
「レコードといえば音楽」と思っていませんか?しかし、ビデオがまだなかった時代、音楽以外の音、効果音や肉声、ドキュメンタリーなどが録音されたレコードが存在しました。 「聴くメンタリー」とは、耳で聴くドキュメンタリー。これはテレビ史上初、音楽じゃないレコードを「聴く」番組です。 出演者にモノマネ芸人として「音」を繰り出すプロである関根勤と清水ミチコを迎え、ひたすらマニアックな迷盤・珍盤を数々のモノマネを交えいじり倒す贅沢な1時間です。 第2回目のラインナップは、赤ちゃんの泣き声やイタコの口寄せ、音の出る雑誌、砂漠を歩く音の現地録音など、1回目に輪をかけてマニアックなレコードが登場します。 また、1980年代に大旋風を巻き起こした女子プロレスタッグ「クラッシュギャルズ」の試合実況やインタビューを収めたレコードを、現在の長与千種に聞かせに行く感動のVTRも必見です! さらにベトナム戦争をテーマにした珠玉のドキュメンタリー盤では普段見ることのできない社会派の関根さんも見所です。