毎年、年末は外に出ることが多くなったので紅白歌合戦もダウンタウンも、ベートーベン第九も縁のない年越しになっているのですが、その分1月1日くらいはバラエティー番組を見てだらだら過ごすよりもクラシックの演奏を聴こうということで、1日の夜のテレビはウィーンフィルのニューイヤーコンサートを見るようになりました。
今年は指揮者がリッカルド・ムーティ氏で、さらにNHKの中継に力を注ぐ状況が半端ではなく、本放送開始の1時間前から高橋克典さんが登場するウィーン紹介の事前番組を流し、さらに本編に入っても、例年は毎年東京のスタジオからアナウンサーが細かな内容を伝えるのですが、今年は現地ウィーンに鎌倉千秋アナウンサーが出向き、さらに今回出演者の欄に記載のあるヘーデンボルク直樹氏のお兄さんが当日ニューイヤーコンサートで演奏する直前にテレビ出演したり、第一部と第二部の休憩の最中に、どうしても日本の視聴者にお話ししたいとウィーンフィルの楽団長さんまで出てきました。
何がウィーンフィルをそうさせるのかとも思いますが、日本でのウィーンフィルのニューイヤーコンサートの注目度は毎年生中継していることもあってかなり高く、私もそうなのですが、アンコールの「美しき青きドナウ」と「ラデツキー行進曲」の二曲を聴き、ラデツキー行進曲を聴きながら手拍子を取らないと年が明けた気がしないという方も少なくないと思うので、そんな国内での盛り上がりが伝わっていたのだとしたら本当に有難いことです。
今年の放送ではおよそ2時間半の第一部・第二部を通しで見ることができました。過去には第一部を地上波で放送しない年もあったような気がしましたが、今では普通に全ての内容を見ることができるのは有難いものです。今年は第一部の最後に「ウィリアムテル序曲」も流れたりして、クラシック好きという人だけでなく会場の雰囲気や華やかなバレエが曲に合わせて流れるなど、見出してしまえば飽きずに最後まで行けるのではないかと思われます。
そして、新年の挨拶の後にはアンコールで「美しき青きドナウ」と「ラデツキー行進曲」となります。今年のラデツキー行進曲は、見ている方がついつい先走りがちになりそうなところ、聴いている人達を落ちつかせるようなゆったりしたテンポでのラデツキーになりました。この辺は、まさにリッカルド・ムーティ氏だからこそのものでしょうし、あまり日頃クラシックを聴く機会のない素人のような私にも、指揮者の違いによってこれだけ曲の印象も変わってくるということを気付かせてくれました。
このウィーンフィルのニューイヤーコンサートは、今後も何回も再放送されるので、見逃したという方は機会があればご覧になってほしいです。あと、番組を見終っての感想として、改めて感じたのは日本とオーストリアの文化・芸術に関する援助の違いでした。番組で紹介されたウィーン市内の様子で、広場に大きなスクリーンが置かれて劇場で行なわれているオペラを同時中継(当然無料です)していたのですが、入手困難だったり高価なためなかなかチケットを買えない人でも、スクリーンの前で年末の恒例のオペラ「こうもり」を楽しんでいる姿は、機会があれば野外で見るのにいい時期になったらウィーンに行ってみたいと多くの人が思うだけの魅力がある企画ですし、日本でも歌舞伎で同じようなパブリックビューイングをやれば、海外からの観光客だけでなく、国内の地方在住の人たちも東京まで行ったついでに有名な歌舞伎の演目に触れられるようになるのにとかなり羨ましく思いました。
来年の今頃も、多くの人とともに笑いながらラデツキー行進曲を手拍子を取りながら聴くことのできる環境であることを祈りたいですね。
(番組データ)
ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート2018 NHKEテレ
1/1 (月) 19:00 ~ 22:00 (180分)
【出演】
管弦楽…ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,
指揮…リッカルド・ムーティ,
ウィーン・フィルチェロ奏者…ヘーデンボルク直樹,
バレエダンサー…橋本清香,
【司会】鎌倉千秋
(番組内容)
世界中が熱狂!新年クラシックの祭典を現地から生中継!巨匠ムーティ円熟のタクト。ウィーン・フィル日系団員ヘーデンボルク直樹が明かす舞台裏。あの大物団員も生出演?
ワルツなくては年も明けぬ?現地スタジオからお伝えする2018年のウィーンの年明けの瞬間▽華やかなバレエは苦労の結晶だった…ウィーン国立バレエ団トップダンサー橋本清香が明かす秘話。▽今年の舞台にはイタリアの風が!ナポリ出身巨匠ムーティえりすぐり・初登場の名曲▽100年前の街に思いをはせて…ウィーン激動の1918年にちなんだ名曲や歴史的建築が登場。現代のウィーン・フィルの姿の源は100年前にあった?