過去の事は問題にしないテレビに痛烈な皮肉も

2019年3月から4月にかけて、フジテレビのお昼のワイドショー「バイキング」においてコカインを吸っていたことで逮捕された電気グルーヴとしての音楽活動だけでなく、タレント・俳優として毎日テレビでは見ない日はないくらい活躍していたピエール瀧容疑者についての音楽上のパートナー石野卓球氏についてのバッシングが話題になっています。

番組MCの俳優・坂上忍氏や、元宮崎県知事の東国原英夫氏が石野氏が発するピエール瀧容疑者へのツイートが不謹慎で、社会人として大丈夫なのか? というような批判をしているのですが、そういった表面的な正義感あふれる主張というのは果たして見ていて面白いのかと思うのと同時に、先日亡くなったばかりの萩原健一さんや内田裕也さんについて彼らが語る内容と、時期の違いで(現在起こっている事件と過去に決着した事件との違いは当然あるわけですが)そこまで直接逮捕されていない人間を批判する正義感は何なのか? と考えるきっかけになったことは確かです。

今回紹介する「オールスター後夜祭」が、こうした一連の事件をどこまで受けた上で放送したのかはわかりませんが、今回の問題の中にとんでもないVTRを元にした問題があり、その内容は最高に面白かったものの、同時にテレビの中でたびたび主張される表面的な正義感を木っ端微塵に破壊するようなものであったので、ぜひここで紹介させていただきたいと思います。

そのVTRは2019年から数えて28年前(1991年・平成3年)と言いますから、平成の時代にはなっていたものの、今のような社会の雰囲気とはかなりかけ離れていて、今のテレビなら放送できないような内容でも普通に放送されていました。この番組はプロレスや格闘技の世界から問題が出題されることが普通に行なわれますが、その問題もシューティングという元タイガーマスクの佐山サトル氏が主催する合宿に密着したVTRで、佐山氏が合宿参加者に大いなる愛情を持って接しているのか、単に虫の居所が悪いだけなのかわからないのですが、竹刀で思い切り気合いが入っていない参加者をぶっ叩いたり、全力での力が感じられない参加者を大声で威嚇しつつ鼓膜が破れ大怪我をするのではないかと思うくらいの力でビンタする様子がそのまま流れたのです。

番組では、「ビンタをした後、佐山氏は何と言ったでしょう?」という問題と、あまりの佐山氏の行動にあっけに取られている解答者へ向けて、「VTRで佐山氏が着ていたトレーナーの柄は何でしょう?」という二問の問題が出されたのです。当時は戸塚ヨットスクール事件から10年くらい経った後で、決して暴力指導礼賛ということではない状況だと思えるのに、これくらいの事なら問題なく放送していたテレビのおおらかさというのが逆に面白いというのが正直なところなのですが、このVTRを2019年の地上波で流すということは、単に番組を面白くするということだけでなく、その裏に何らかの意図を感じるべきではないか? とも思えるわけです。

この書き込みはいつまで残るのかはわかりませんが、これから十数年度にピエール瀧容疑者が保釈された映像を見て石野卓球さんは何とツイートしたでしょう? というような問題を出す番組があっても何もおかしくないのが現代のテレビでもあります。今後の捜査の展開や裁判の結果、そしてそもそもピエール瀧容疑者が再犯をするかどうかによっても変わってくるとは思いますが、逮捕されてから時間が経たず、ここまでの報道だけでも他の大きなニュースを押しのけるように、当初のコカイン中毒の方々への理解や社会にはびこる覚醒剤に対する意識の変化というところからかけ離れてしまっているのも実にテレビらしくて面白いと思えます。

今回の件に限らず、過去の痛い行動というのは常にネタにされ、笑われてしまう宿命を帯びていることを示しているとも言えるのではないでしょうか。とにかく「不謹慎」と言われても面白ければいいと思っている人がいる限り、同じような番組は無くならないと思いますし、昔そうした番組をやっていた人が正論で糾弾をくりひろげるのも「それが面白いから」という理由があるものと思われ、それはそれでテレビ的な騒動であると思えます。そうした騒動を見ている側としては、あまり本気で怒らないで騒動自体を面白がって見るのがいいのではないかと思います。

ちなみに前回の時に書いた「優勝者に何も賞品・賞金がない」という点について、苦情が殺到したようで今回は5万円の優勝賞金が出ることになりました。そして、今回の最下位(今後「オールスター後夜祭」出入禁止)の栄冠は、マジカルラブリーの野田さんに決まりました。同率で途中退場した流れ星・ちゅうえいさんと同じく一問を正解がないというクイズに答える気のない人物を切ったということになるのでしょうが、残念ながら今回の番組では全て「佐山サトル」さんと流れ星・瀧上伸一郎さんの奥さん(番組最初からずっと白のビキニを着てアシスタントガールを行なっていた)に持って行かれて他の事はあまり印象に残らなかったというのが正直なところです。その点では今後のクイズへの取り組み方にも影響が出てくるのではないかと思います。出入禁止になっても一問も答えずに目立とうとしても、今回のような強烈な問題や人物が出てきたら一瞬のうちに埋もれて単に出入禁止になるだけということがわかってしまったわけですから。

今回の番組を通しで見てみて、「獣神サンダー・ライガー」(マスクのみの出演でしたが)「ザ・グレート・カブキ」「佐山サトル」(VTR出演)「前田日明」といった今ではなく昔のプロレス界で活躍した人が出演したりクイズになったりクイズに協力したりと大活躍でしたが、これは純粋にMCの有吉弘行さんの好みに合わせたに過ぎないでしょう。これは過去に紹介した「クイズ脳ベルSHOW」の特番でもあったように、出演者やスタッフの一部の方が好きで面白いと思った「プロレスに熱中した時代」の事をやっているに過ぎないと思います。それがこれだけ面白く、恐らく今回出たVTRの「佐山サトル」氏と「シューティング」だけでなくさっそうとデビューした「初代・タイガーマスク」との関係を何も知らない人でも楽しめてしまうのは、テレビの「笑い」というのは、時代に関係なく面白いものは十分面白いということでもあります。まだまだ当時のプロレス界には面白い逸話は豊富にあるので、ネタが尽きるという事はないでしょうが、今回のようなネタがあればプロレス・格闘技に関わらずどんどん放出して視聴者を楽しませて欲しいなと思っています。

(番組データ)

オールスター後夜祭’19春 TBS
2019/04/07 00:58 ~ 2019/04/07 02:58 (120分)
【MC】有吉弘行、高山一実(乃木坂46)
【解答者】あぁ~しらき、あかつ、アキラ100%、あばれる君、アマレス兄弟、AMEMIYA、荒ぶる神々、アルコ&ピース、アンガールズ、イジリー岡田、イワイガワ、インスタントジョンソン、ウエスP、エルシャラカーニ、おいでやす小田、岡野陽一、おばたのお兄さん、お宮の松、ガリットチュウ、河邑ミク、ガンバレルーヤ、キンタロー。、グレート義太夫、
クロちゃん(安田大サーカス)、小石田純一、コウメ太夫、小坂なおみ、紺野ぶるま、サイクロンZ、ザ・ギース、ザ・たっち、サツマカワRPG、ザブングル、沙羅、サンシャイン池崎、Gたかし、シオマリアッチ、ジグザグジギー、ジャッキーちゃん、ジャングルポケット、じゅんいちダビッドソン、しゅんしゅんクリニックP、ジョイマン、新宿カウボーイ、スーパー・ササダンゴ・マシン、ずん、だーりんず、ダーリンハニー、
TAIGA、タイムマシーン3号、田島直弥(アイデンティティ)、たんぽぽ、チョコレートプラネット、テル、東京ホテイソン、どきどきキャンプ、トム・ブラウン、トンツカタン、流れ星、ニッチロー’、にゃんこスター、脳みそ夫、ノッチ(デンジャラス)、パーパー、バイク川崎バイク、Hi-Hi、X-GUN、バッドナイス常田、花香よしあき、ハナコ、ハマカーン、浜ロン、原口あきまさ、ハリウッドザコシショウ、
ビックスモールン、平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)、フォーリンラブ、ブリリアン、HEY!たくちゃん、ぺこぱ、ペンギンズ、槙尾ユウスケ(かもめんたる)、マシンガンズ、マヂカルラブリー、三浦マイルド、Mr.シャチホコ、宮下草薙、むらせ、もう中学生、もりせいじゅ、やさしい雨、ゆってぃ、ゆりやんレトリィバァ、ゆんぼだんぷ、四千頭身、ラバーガール、ラブレターズ、ルシファー吉岡、ロッチ、ロビンフット、
和賀勇介、わらふぢなるお、他
【プロデューサー】金原将公、福田健太郎
【演出】藤井健太郎

(番組内容)

有吉弘行&高山一実(乃木坂46)司会で「感謝祭」深夜の延長戦!芸人156人が深夜ならではのクイズ&企画に生放送で挑戦!最下位になって番組を永久追放となるのは誰?

オールスター感謝祭の延長戦生放送「後夜祭」では、感謝祭からの居残り組に追加メンバーを加えた、合計156人の芸人たちが深夜ならではの笑いに振ったクイズや企画に挑戦!恒例の毒霧にロード地獄に特殊競走に…超強力罰ゲームで3人目の永久追放となるのは?


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