伝え方によって印象の違う事故から見る「逆転人生」

事前に今回の番組「逆転人生」の紹介を見て、栃木県の有名な温泉旅館である「加仁湯」の一家が遭遇した雪崩事故についてNHKが放送するのを知り、まず思い出したのは今回の番組で紹介した一連の雪崩からの救出劇のあらましを語ったテレビ朝日制作の「激レアさんを連れてきた」で今回出演した加仁湯の女将さんが出演した回でした。

激レアさんの方では、58時間の雪中遭難の様子については面白おかしく(それがこの番組のクオリティです(^^))、手作りの工作で紹介し、全員助かったからこそのバラエティ番組の出演だったと思います。実は今回の「逆転人生」のナレーションで、今回の主役の女将さんは加仁湯に入る前に芸能界を目指していたもののうまく行かずに、紹介された加仁湯でバイトすることになったことで今のご主人とご縁ができたという話が出てきました。

なぜわざわざ宣伝する必要がないほど有名な温泉旅館の女将がバラエティ番組に? と思ったのですが、その話を聞けば納得できる部分があったのですが、もしかしたら女将さんとご主人が今回のオファーを受けて、あえて同じ話題で2回目のテレビ出演をしたのには、さすがに今回の番組で紹介したような深刻な状況もあり、その中での葛藤があったということを示すことで、「激レアさんを連れてきた」とは違う事実があることを示したかったのではないかと番組を見始める中で思ったのですが、さらにもう一つの理由があったようにも思いました。

番組では丹念に遭難した58時間の様子を再現ドラマで紹介していて、雪崩に車がすっぽり埋まった状態でエンジンを掛けて暖房を付けるという行為は、もしマフラーが雪でふさがってしまったら排気ガスが車内に逆流して全員が一酸化炭素中毒で死亡という最悪の結果も考えられました。再現ドラマでは女将の「頭痛」「吐き気」について言及が有りましたが、結局それが多少でも排気ガスが車内に入ってきたためのものなのか、車を閉め切ったための酸欠のためだったのか、明らかにされることはありませんでした。今回の番組では「危機管理アドバイザー」という肩書の人も番組に参加していたので、少なくともその辺の事は明らかにし、実際に同じように雪崩で埋まった中でどのようにするのが正解なのかという事も伝えて欲しかったと思ったのは私だけではないはずです。

まあその点は気になったものの、子供4人を乗せた状態で58時間も子供をパニックにさせることなく過ごすことができたことは立派で、NHKの番組だからこそ伝えられた点があったことは確かです。しかし、番組のテーマである「逆転人生」という事で言うと、この事故の前と後で女将さんには以前のように自分から動くことのない、受け身で温泉旅館の仕事をするのではなく、温泉旅館の仕事を前向きに行なうような意識の変化があったということがあったそうです。番組としてはその事こそが大事で、番組ではそれを伝えるために事故の内容を詳しく紹介したということも言えます。

この番組自体は過去に「コンビニに入店しただけで逮捕され長期勾留された男性」が裁判で無罪を勝ち取るまでの事を詳細な取材で紹介し、「大きな困難に負けずにそこから逆転する人生の達人」を紹介するドキュメントであることはわかっていました。そういう意味では、今回の加仁湯の家族の物語というのはなかなか継続して営業することの難しさもある山の中の一軒温泉がまだまだ続いていく希望を感じさせてくれた点(ご夫婦の長男が旅館を継ごうかと考えていることがテレビで紹介された)については、実に見ていて嬉しかったです。
こうした番組の命は、いかに多くの視聴者の共感を得られる「人生の逆転」をした人を連れて来られるかという事になるかと思いますが、NHKには毎週放送にこだわらず、しっかりとした取材を行なって番組作りをしてほしいものです。

(番組データ)

逆転人生「母は強し!連続雪崩から奇跡の生還」NHK総合
2019/04/08 22:00 ~ 2019/04/08 22:50 (50分)
【司会】山里亮太,杉浦友紀,
【ゲスト】旅館経営者…小松輝久,旅館女将…小松志保,
【出演】北斗晶,松本伊代,危機管理アドバイザー…サニーカミヤ,
【語り】吉川未来

(番組内容)

栃木県の山あいを走っていた車を連続雪崩が襲った。乗っていたのは母親と子供たち。天上の上2mまで雪に覆われ、酸欠や低体温の危険が。八方塞がりの状況から奇跡の生還。

2014年冬。栃木県の山あいを走っていた車を大きな雪崩が襲った。乗っていたのは母親と子供たち。雪崩は連続しておし寄せ、天井の上2mまで雪に覆われる事態となった。低体温を防ぐため、エンジンをかけて暖房をつけると、排気ガス中毒の危険が。密閉されたため酸欠の恐れもあり、まさに八方ふさがりの状況に陥った。しかし母子は58時間後に、奇跡の生還を果たす。生死を分けたのは、母親が土壇場で固めた“決意”だった。


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