ネット検索で一番最初に出てくるという渋谷のスマホ修理店に72時間密着し、その店を訪れる人たちのスマホと、その中味を見せてもらうという企画なのですが、番組内で取材を受けた東大の学生という人でも全てを一台のスマホに集約してバックアップの方法を用意していなさそうという状況を見てなんだかなあと思ってしまったのが大きな感想というか疑問になりました。
さらに多くの人が修理に持ってくるスマホの画面がバキバキに割れていることが多いのですが、長くスマホを使っていればどこかにぶつけたり、落下の事故が多いことがわかっているにも関わらず、その対策になるであろうストラップや画面保護用のカバーを付けていない人がテレビに連続して出てくるという違和感も同時に感じていました。
これは、単にスマホをおもちゃの用途にも使えるような形で物心が付いた時から与えられている人が多いからなのでしょうか。さらに、最近の製品こそ防水機能が付いてきたiPhoneですが、防水機能が付いていないにも関わらず、水没の恐さを感じないで使っている人もいるのだろうなという事が、画面割れしたまま多くの人がスマホを修理しないで使っている状況からも推測でき、この番組で改めて確認できたような感じです。
さらに番組のコンセプトとして出ていたのが、修理しないと改めて見ることができないというスマホで撮影した写真や動画の数々でした。もちろん、単体で撮影した写真や動画、さらに本体で受けたメールは本体の画面が映らなくなったら確認すらできない事は確かです。しかし、きちんと対策をしておくことで、端末自体が修理不可能なほど壊れたとしても、データを復活させることは十分可能なのですが、世間というものは本当に無知だということが、テレビの向こう側では起こっていることを知り、ただただ愕然とするしかありませんでした。
例えば、カメラで撮影したものをまるまるバックアップする方法(例えばDropboxやOneDriveのようなクラウドに自動的に保存する設定とかGoogleフォトを使って同じように自動保存の設定をするとか)があることすら知らないの? とか、メールもキャリアメールにこだわらず、Gmailに一元化すれば端末がなくなっても古いメールを過去に遡ってパソコンや新しいスマホやタブレットを使えば見ることはできるのに(ネットカフェのパソコンを使ってクラウドにアクセスし、手持ちのUSBメモリ(千円前後で家電量販店で購入可能)にダウンロードするような事も可能)、ドキュメンタリー番組ということもあってかそんな情報を取材者には提供せずというのも何か切ないなあと感じてしまいます。
ただ、このドキュメンタリーに「やらせ」は無いという風に仮定すると、本当にパソコンを使わないでスマホのみを情報源にしている若年層(番組には年配の方はほとんど登場しませんでした)の方は、本当に何の対策もせず裸のままのスマホを使い、もしデータが見られなくなったらということを考えずにスマホに依存した生活を送っているということになってしまいます。
これは一般的な問いとしての「人はなぜスマホに依存するのか」という答えを考える上でも大事な観点になります。パソコンでのインターネットとスマホやタブレットという風に、用途によって使うものを分けている人なら、深刻なスマホ依存にならずに、インターネットを楽しむことができるかもしれませんが、全てをスマホ一台に集約することでたとえ一瞬でもスマホを使えない状態になった場合にパニックになることは十分ありえます。きちんとIDとパスワードを管理しておけば、メールだけでなくLINEをパソコンで使うことも可能ですし、スマホがなくても代替手段があることを知っていれば精神的にも安定するでしょう。
ただ、一日でもスマホを手放したくないと思う人々の存在によって取材先のようなスマホ修理専門店が流行るというオチまで付いてしまうのですが、買って2週間で画面が割れてしまい、手を切ってしまったと嘆くフリーターの子が修理に時間がかかったり、高額になった修理代に文句を言う場面があったので、あえて一つの提案をします。きちんとバックアップさえしていれば、修理金額よりも安くスマホを使い続けたいなら、とりあえずの連絡だけはSIM入れ替えでできるスペアの中古スマホでも購入した方が安く済むでしょう。そしてそもそも、どの通信業者もやっている「スマホの保証サービス」に入れば、買ってすぐ画面が割れてしまっても、買ったお店で少ない負担で修理してもらえるのに何で入らないの? という根本的な疑問もあります。
ただこれは、番組では直接明らかにしない裏の事情があることが考えられます。フリーターで毎月使えるお金が少ないために、つい契約の時に毎月の支払い額が多くならないように、補償サービスに掛けるお金も出し惜しみしてしまう人が少なからずいるのではないかという点です。実はこの部分が今回番組を最後まで見ていて強く違和感を感じた部分で、大手キャリアでスマホを買って使っている人がほとんどな中、なぜキャリアのショップではなく修理専門のショップへ人々は向かうのか。そこにあるのは、実はスマホを売ることによって利益を得るために、肝心な事を説明しないまま売っているお店の存在があるからではないかと勘ぐってしまうのです。無知な利用者を増やし、そこからお金を絞り取るような姑息な商売というのは止めて欲しいですし、スマホが再生不可な状態になったとしても、データを無料で取り戻す手段があるということを多くの人に知って欲しいと番組を見ていて思った次第です。
(番組データ)
ドキュメント72時間「渋谷 スマホ修理店」(再放送)
10/28 (土) 11:25 ~ 11:50 NHK
【語り】仲里依紗
(番組内容)
舞台は東京・渋谷にあるスマホ修理店。故障で動かなくなったスマホが次々と持ち込まれる。人々は何を守り、残したいのか。修理を終えたスマホの中身をのぞかせてもらう。