01NHK総合」カテゴリーアーカイブ

傷の付いた怖い顔が人生を変えた伊東四朗さんについて伝えられなかったこと

81才という年齢を感じさせず、今なお舞台やテレビで活躍する伊東四朗さんが今回の出演でした。最近のテレビでは数少ない主演作(羽田美智子さんとのダブル主演ですが)の「おかしな刑事」(テレビ朝日系列)が最近放送されましたが、ひょうひょうとした演技で年齢を感じさせないという感じがします。

また、TBS系列の「十津川警部シリーズ」では、十津川警部の相棒の亀井刑事を演じ、すっかり喜劇役者というイメージとは違っているような感じです。
そんな中、この番組ではやはりNHKということで、朝ドラの「おしん」や大河ドラマの映像を流していたのですが、喜劇ができれば何でもできるというようなニュアンスでVTR出演の小松政夫さんが伊東さんの演技を評価していたものの、個人的には大変残念ですが、もう一つ役者として大きな役を掴みきれなかった不運さというものも感じてしまいます。

というのも、番組内の伊東さんの芸能界に入るきっかけとなった、高校を卒業する際に受けた就職試験が全て駄目で、仕方なく兄の世話をしたアルバイトをしながら劇場に通ったことが紹介されていたのですが、なぜ就職できなかったのかということが番組では明らかにされます。それは、学生の時にトロッコが倒れて顔に骨まで達する大きな傷の残る怪我をしたことから、相当人相が悪くなり、そのために企業は伊東さんをことごとく採用しなかったということだったのでした。私たちはまず「てんぷくトリオ」での伊東さんを先に見たり、最近の柔和な表情の刑事役で見ていることから、そこまでの人相の悪さは感じないと思いますが、ちゃんとその顔を見ると迫力があり、いわゆる悪人顔であったことが伊東さんの人生を切り開いたと言えるわけです。

そんな、迫力ある顔を全面に押し出すことで伊東さんが主演に抜擢された映画がありました。本来はこの番組で伊東四朗さんを語る際に出てくるべき代表作になるはずでしたが、これが伊東さんの顔とは全く関係ない理由で映画が上映されない、いわゆるお蔵入りになってしまった不運があったのです。その映画の題名は「スパルタの海」という作品で、あの戸塚ヨットスクールが大きな問題を起こす前、不登校の生徒を更生させる施設だというような、スクール側の視点から描かれたもので、伊東さんは戸塚校長役としてすごい迫力で主演を全うしています。

現在はソフト化されて見ることができますが、暴力事件で戸塚校長が逮捕される中、さすがに一般の映画館での公開は不可能で、もしこの映画が普通に公開されて、伊東さんの迫真の縁起が広く紹介されていたとしたら、役者としての評価ももう一つ進んだのではないか? と思えます。

さすがにこうした事は「ファミリーヒストリー」という番組とは関係のない話なのですが、これほど自分の顔によって人生が変わった人を知りませんし、テレビと違って映画は現在のビデオオンデマンドでもネット配信で見られるようになるなど、時代を越えて生きのびる永続性を持っています。

最初に紹介した伊東さん主演・助演のTVシリーズは確かに人気ではあるのですが、例えば渡瀬恒彦主演の十津川警部シリーズは内藤剛志さんが引き継いだことによって、十津川警部と言えば渡瀬恒彦というイメージも今後はどうなるかわかりません。常に今が大切なテレビでは過去の人になってしまうととたんに忘れられる宿命を持っているとも言えるわけで、その点を伊東さんがどう考えているのか、そしてやはりビートたけしさんのように、舞台はライフワークとして続けるにしても、テレビより映画の方向に進みたいと思っているのかどうかということも、ちょっと気になります。

こうしたことは、あまり御本人は気に掛けないのかも知れませんが、この番組で紹介されていた「てなもんや三度笠」などは見たいと思っても全編を見ることはかないませんし、逆に映画なら古いものでもフィルムが残っている可能性があり、お蔵入りした「スパルタの海」もネットで今後配信されるようなことがあれば、そこから新たな伊東四朗さんの再評価が起こってくるかも知れません。もっと言うと、テレビ番組のアーカイブもいつでも見たい時に簡単に多くの人が見ることができるようになれば、また状況は変わってくるのではないかと思います。

現在のテレビのアーカイブは、一部YouTubeに違法アップロードされるものが担っている部分があり、そこからどのように誰でも見られるようにしていくかということが大切になってくると思います。時代はすでに一度収録したビデオテープを再利用しなくても保存できるわけですから、テレビの番組であってもいいものは残すことで、本当にいいものを未来に渡っての共有財産として活用することも不可能ではありません。ちょっと大風呂敷を広げすぎたかとも思いますが、テレビ業界に関わる人達には、テレビ番組のアーカイブをどう保存していくかということについても考えて欲しいものです。

(番組データ)

ファミリーヒストリー「伊東四朗~思いがけず平氏と源氏 たどりついた喜劇の道」NHK総合
1/28 (月) 19:30 ~ 20:43 (73分)
【ゲスト】伊東四朗,
【司会】今田耕司,池田伸子,
【語り】余貴美子

(番組内容)

81歳になった今もドラマやバラエティ、舞台で活躍する伊東四朗さん。父は洋服の仕立て職人だった。しかし、仕事をせず極貧生活の中で、一家は夜逃げ同然で転々とする。家族を支えたのは明るく朗らかな母。そんな両親のルーツに、驚きの事実が浮かび上がる。父方は平氏、母方は源氏との関わりを示す証拠が見つかる。さらに、伊東さんの知られざる半生が、数々の証言で明らかになる。激動の歳月に、伊東さんは驚いてばかりだった。


いつから「ゆるキャラグランプリ」が国民の関心事になったのか

この文章の最後にまとめてある「番組内容」の中には出てきませんが、当日のニュースの中に「ゆるキャラグランプリで特定の市が組織票を大量に投票している」ということがニュース種になっていました。この「ゆるキャラグランプリ」というのは、一年に一回ネットからの投票によってエントリーしたご当地のキャラクターの一番を決めるイベントなのですが、今年の投票についてのみクレームを付けるような形で報道することにまずは違和感を覚えてしまいます。

この「ゆるキャラグランプリ」は2010年から開始されましたが、投票がインターネットに一本化された2011年から組織票についてのニュースはちゃんと出ていました。もっとも、当時は組織票といってもあまりに自治体がゴリ押しして一位を取ってしまいそうなキャラへの組織票ではなく、どう見ても一位は取れなさそうな変なキャラクターをネット民の力で一位にして、お金を掛けてキャラクターを作って「町おこし」のために活躍してもらおうという自治体や広告代理店の考えを粉砕するために、東京・西国分寺の有志が作ったキャラ「にしこくん」に大量に投票し、その時に二位だった「くまモン」がいくら組織票を入れても届かないほどのネット投票をしたことで話題になったのです。

今回、2018年の四日市市のゆるキャラ「こにゅうどうくん」への組織票については、他の自治体などが今までさんざん行なってきた事なのでさすがに手は加えないようですが、2011年の「にしこくん」に対しては得票の8割を無効にするという、まさに第一位は「くまモン」に決まっている出来レースだったかのような処置が取られ、結局「にしこくん」は第三位に留まりました。当然、当時の熊本県庁や関連の団体による多くの投票はあり、くまモンへの投票を呼び掛けるためにそれなりのお金が使われたはずですが、その事は問題にもされませんでした。

さらに、2015年のグランプリを取った静岡県浜松市のキャラ「出世大名家康くん」についても、その一昨年の2013年に栃木県佐野市の「さのまる」に逆転され第二位になった恨みを晴らすかのように、大手広告代理店とのタイアップで市民に「毎日投票」と呼び掛け、さらに開催地を誘致してまでも組織票による投票や現地での一大キャンペーンを繰り広げ、念願のグランプリを取ったのですが、そのために3年もかけて税金をいくら使ったのかということを考えると、今回の四日市市の事など比較にならない組織とお金が動いていたものと思われます。この辺をきちんと取材して報道していれば良いレポートとして評価もできるのですが、今回のようなニュアンスで当時NHKが伝えたようには全く記憶していません。

さらに今回のNHKによるニュースが姑息だと思ったのは、ニュース番組なのに面白おかしく伝えようとしたのか、記者が電話で「くまモン」にこの件についてのインタビューを取ろうとして熊本県町に電話して、担当者が「くまモンは小さい子で喋れないので私が代理で……」と語せるようなくだりがあったことです。現在のくまモンの人気がどうということではなく、最初の取り決めで言えば2011年のゆるキャラグランプリは「にしこくん」に譲らねばならなかったはずの「くまモン」を引き合いに出す事自体がきちんと問題の本質に向き合おうとしないNHKの立場を表していると言えるでしょう。

そもそも「ゆるキャラ」というのは漫画家のみうらじゅん氏が付けた名称で、決してお金を掛けてデザインや宣伝を外部に委託してクオリティを上げたキャラクターを作るものではなく、お金のない自治体や団体が担当者の考えたとてもクオリティが低いデザインを形にすることで、何とも言えずほのぼのとした残念感があるキャラクターの事だったと思います。ですから、本当は投票による優劣でグランプリをそもそも決めるべきではないものなのです。もしそうしたやり方がいやなら、みうら氏が付けた「ゆるキャラ」という名称を返上して「ご当地キャラグランプリ」とでもして開催すればいいのにと思います。

もし「ゆるキャラ」という名前で続けたいのなら、そもそも投票制はやめにしないと、今後ももすます中に入った広告代理店やデザイナーの益になるだけであり、住民の払った税金を無駄に使われるだけでしょう。もし今年までのような大がかりなグランプリを取るための行動が全く役に立たなくなるような選考が行なわれることになったら(流行語大賞がその方式でグランプリを決めています)、改めてそこで「ゆるキャラ」としての面白さが出てくるようになり、全国的な人気者も生まれてくるように思えるのですが。

とにかく、今回のNHKをはじめとして、今までの「ゆるキャラグランプリ」の歴史を何も勉強せずに「組織票」だと煽るテレビの姿には絶望を禁じえません。

(番組データ)

ニュースウオッチ9 NHK総合
2018/11/09 21:00 ~ 2018/11/09 22:00 (60分)
【キャスター】有馬嘉男,桑子真帆,
【スポーツキャスター】一橋忠之,
【リポーター】栗原望,高橋篤史,今井翔馬,上原光紀,
【気象キャスター】斉田季実治

(番組内容)

▽平成を彩った招待者 両陛下・最後の園遊会
▽ダンパー不正発覚・まもなく1か月 現場は
▽再登板!巨人 原監督


「白米離れ」で心配になること

番組の題名にもなっていない、後半でちょっと触れられた内容がかなり重大なことなのにサラッと流されたのが気になりました。というのも、現代の学生の中には味の付いている主食を好むあまり、パンや麺類を好む食生活になっていて、学校の給食ではあえて「パン」と「ごはん」を選べるようにしているところがあるというレポートを報じていました。さらに状況の変化に個人的にびっくりしたのが、濃い味が付いていない白米が「嫌い」だと公言する児童や生徒がいるという事実です。

別にここで、日本の農業の将来を憂うとかそういう事ではないのですが、いつもパンを中心の食生活をしていても、白米が嫌いだから食べないというような人が増えているということになると、それで本当にいいの? という気持ちになってしまいました。番組は時間が30分と短かく、さらにVTR中心の番組であるので、いまいち白米そのものが嫌いな日本人が増えつつあることについての話はないまま番組は終了しました。

この文章を書いている2018年9月から10月にかけて、北海道で大きな地震があり、さらに台風24号と25号の接近により長期の停電に見舞われたケースが立て続けに起きました。何もない日常でなら菓子パンも買え、冷凍食品を電子レンジで温めて食べることもできます。しかし、北海道の地震では停電の影響で現金を引き出すためのATMすら動かなかったところもありました。番組ではおじいちゃんに送ってもらったお米が余ってしまって困っているという小さい子供のいる主婦に取材していましたが、もしそんな家で長期間の停電に襲われた場合にどうなるのかを考えてみてください。

家庭内で小麦からパンを焼くのは大変ですが、お米があれば多少の知識と経験は必要なものの鍋と水とカセットコンロがあれば炊きたてのご飯をいただくことができます。そして常温で保存でき、一食単位のコストも安くて済むお米というのは、ある意味究極の非常食とも言えます。パン食が中心の家庭であっても、お米の品質が低下する前に食べきるくらいの量を備えておけば、少なくともひもじい思いはしなくて済むと思うのですが、その時に白米が死ぬほど嫌いな人が多くなっていたら、災害中の楽しみであるはずの食事がストレスになる可能性もあるわけです。

もちろん、日々の生活の中で何を主食にするかというのは個人の自由ではあるのですが、今回紹介したような災害時の非常食としてだけでなく、日々の生活のためのコストを下げるためにもお米を炊いて食べるという習慣を捨てるのはあまりにも勿体無いという気がして仕方ないのです。できればそこまで番組では突っ込んで欲しかったなと思いますが、問題提起をしてもらい、現在の日本では何が起きているかということを知らせてくれたことには素直に感謝したいですね。

(番組データ)

所さん!大変ですよ「なぜか大人気!?超高級マヨネーズの謎」NHK総合
10/4 (木) 20:15 ~ 20:45 (30分)
【司会】所ジョージ,木村佳乃,久保田祐佳,
【出演】澤口俊之,牛窪恵,モーリー・ロバートソン,マヨネーズコレクター…スー
【リポーター】井上裕貴,
【語り】吉田鋼太郎

(番組内容)

1個百円の卵を使った超高級マヨネーズが売れに売れているという。実は今は空前のマヨネーズブーム。背景にあるのはカット野菜人気だった!激変する日本の食卓の実態とは?

鹿児島の山間部で作られる超高級マヨネーズが、生産が追いつかないほど売れている!?実はマヨネーズの消費量は過去最高を更新中。空前のブームの背景にあるのは、料理の手間いらずの「カット野菜」人気だった。一方子育て世帯の食卓からはコメが姿を消している!?ピザやパスタなど味のついた主食を好む子どもたち「好き嫌いをなくすより楽しい食卓が優先」という保護者…激変する現代日本の食卓、その衝撃の実態をリポート。


番組構成の力を垣間見た「ふたりのビッグショー」

基本的にはこの年に惜しまれつつお亡くなりになった歌手の西城秀樹さんを偲んで、過去に番組でご一緒した野口五郎さんをゲストに招き、当時の話を聞きながら番組は進行するのですが、今回はまるまる番組を再放送した野口五郎さんと西城秀樹さん出演の「ふたりのビッグショー」が圧巻でした。

こんな事を思ってしまうのは、最近のテレビではなかなかしっかりとした構成のショーを見ることがないということがあります。バラエティでも完全に台本があるようなものより、その場での瞬発力を試すようなアドリブが要求される番組というのはそれはそれで面白くで気に入って見ているものもあります。一例としてはフジテレビの「さんまのお笑い向上委員会」などは収録番組ではあるものの、予定されたエピソードからずれる所が面白く、その面白さのためなら用意された台本も飛ばすということもありそうな番組です。

今回の「ふたりのビッグショー」は、アイドルとして「カックラキン大放送!!」(日本テレビ)や「8時だョ!全員集合」(TBSテレビ)あたりの構成のしっかりした歌ありコントありの当時の人気番組に出演することが多かったお二人にとっては真面目に用意された歌を歌うだけではファンが納得しないこともあったのか、コントの要素も取り入れたお互いのノリとツッコミがお二人の仲の良さを印象付ける結果になりました。

ただ、ああしたやり取りはいくらお二人が仲が良くてもすんなりと時間に合わせてできることではなく、そのための演出であったり台本が必要になります。そんな掛け合いの言葉も単に台本の内容を喋っているというのではなく自然にこなされていましたし、スムーズに歌や演奏(野口さんはギター、西城さんはドラムとギター)につなげることもできるのも、きちんとした構成台本があるからで、見る方もハラハラすることなく安心して見ていられました。

こうした番組作りは古いと言われればそれまでかも知れませんが、この番組も収録で行なわれ、ディナーショーのようにその場でのやり直しのきかないものでもあります。ただディナーショーと違うことは、テレビの向こうにはもちろん出演したお二人の大ファンもいるでしょうが、そうでもないと思う人や、たまたまテレビを付けたらこの番組が流れていたという人もいるはずです。そんな中でテレビの向こう側に注目して見続けてもらうだめの番組というよりショーの作り方というのは大変に素晴らしく、単に西城秀樹さんの追悼という意味あいだけではないものが感じられました。

翻って、今の日本の音楽シーンについて考えてみると、当然このようなショーとしての番組を十分に楽しむものにできる方というのは当然いると思います。ただテレビというのはライブと違って時間の制約があるので、嫌う人がいることも事実です。しかしながら、自らの意見と構成担当のスタッフとの連携を取るようにしてこうした番組という形で素晴らしい歌や演奏、そしてその人となりを表わすトークパートをうまくまとめて番組を作ることは決して不可能ではないのではないかと思うのです。紅白歌合戦に頼まれて出場して、自分の好みの演出を押しつけるのは嫌われると思いますが(^^;)、自分のパフォーマンスをテレビ番組の中でどのように伝えるか、そんなことも考えてくれるアーティストが沢山出てくれると、テレビの場合は全国どこでも見ることができますので地方にいてなかなか生のステージを見られないファンにとっては嬉しい話なのですが。

(番組データ)

あの日 あのとき あの番組・選▽西城秀樹歌声熱く 野口五郎語る人生のデュエット NHK総合
9/16 (日) 13:50 ~ 15:00 (70分)
【ゲスト】歌手、俳優…野口五郎,
【司会】森田美由紀

(番組内容)

7月に放送した「西城秀樹 歌声は熱く 野口五郎が語る“人生のデュエット”」をアンコール放送します。西城さんの歌声と、親友・野口五郎さんのお話をご覧いただきます。

「もう一度見たい」というリクエストを数多くいただいた「西城秀樹 歌声は熱く 野口五郎が語る“人生のデュエット”」(7月1日放送)をアンコール放送します。多くのヒット曲で人気を集めた、歌手の西城秀樹さんが5月、63歳で亡くなりました。西城さんのパワフルな歌声と、親友・野口五郎さんのお話をたっぷりとお伝えします。野口さんと西城さんが出演した「ふたりのビッグショー」(1993年放送)もご覧いただきます。


広告がないNHKがあぶり出すネット不正広告の問題

今回紹介する「クローズアップ現代+」の再放送枠というのは、その週に放送された内容で反響が大きかったものが放送されるということですが、この内容についてはNHKの報道に感じることがある「しがらみ」がないせいなのか相当取材している感じがあり、テレビを見ている人が少しわかりずらいようなテーマの問題点を明確にしてくれたように感じます。

このサイトでも導入している「ネット広告」について、不正を行ない広告主から支払われるお金のうちの一部を手に入れている個人や組織を突き止めるための取材を軸に番組は進んでいきます。番組で紹介されているネット広告というのは、かなり具体的な話になりますが、事業者の「ヤフージャパン」が企画したネット広告について広告代理店の「電通」が「広告主」をとりまとめた上で契約を行ない、主にネットを見る人にピッタリと当てはまる種類の広告をウェブサイトに「ヤフージャパン」が表示することで、その広告が見られている回数に応じて掲載サイトの所有者に広告料の一部を支払うという流れになっています。取材したところ、広告主の多くは自らの広告が見られないまま広告料だけが「中抜き」されていること自体を全く知らないケースがほとんどでした。

実際、このサイトでも多くの人が見てくれればそれなりの広告料が入るはずですが、広く知られているサイトでは全くなく、個人的に努力する事にも限りがあります。その結果あまりにもサイトを見てくれる人が少なければ一切そうした広告料は入ってきませんし、サイトに広告を載せても利益など出せないサイトが大多数であるということ普通に言われています。しかし、不正をするような人は、ある巧妙な仕組みを使って多くの人のパソコンやスマホに自分のサイトを表示させるような仕組みを実行しているのです。

番組の説明によると、ターゲットは成人男性がほとんどだと思うのですが、その筋の人なら知っているアダルトコンテンツを扱う人気サイトにアクセスすると、表面上はそのアダルトサイトが表示されるのですが、実はその裏でブラウザが複数開くプログラムが実行されるように仕組まれていて、主サイトの後ろに回り込むような形で多くの広告が掲載されたサイトが利用者には見えないまま表示されるということなのです(番組では具体的には言っていませんでしたが、不正グループの本丸として「アダルトサイト」と「広告掲載サイト」、さらに「不正サイトを巧妙に隠すプログラムを開発する業者」を結ぶ業者の存在が示されていました)。

そして番組が取材した広告掲載サイトについて月のアクセスが3,000万ページビューにもなるところもあったそうで、単純に計算するとそのくらいのアクセスが有れば、サイトに支払われる広告料は条件によっては月に450万円くらいにもなる場合もあるという話です。実際にはそうしたアダルトコンテンツを隠れ蓑にした仕組みを提案し、連携する作業を行なっている元締めの業者にいくらかのフィードバックを行なう契約が行なわれていると思いますので、実際にどのくらいの利益を広告掲載サイトが得ているのかは不明ですが、サイト構築と維持にかかる費用はそこまで高くないので、一連の不正に参加している人たちは、かなりの金額を荒稼ぎしているだろうということが想像できます。

しかしここで考えていただきたいのは、普通の利用者はアダルトコンテンツを目的にサイトを訪れ、実際は自分が見ているサイトの裏で表示されているにも関わらず、その広告は一切見ないでコンテンツを見終ったらブラウザを閉じてしまいます。そうなると、広告主は本来ターゲットとすべき人に自社の広告を見てもらいたいためお金を払うのに、全体からすると9.1%もの広告費が不正な業者を通じて「多くのユーザーが広告を見たことにして」不正サイト管理者らに支払われてしまうという事実です。

ヤフージャパンの広告を利用している広告主の中には多くの人に知られた大企業や、さらに国や地方公共団体もいるということで、余分な広告費の支払いというのは企業が発売する商品の代金に跳ね返ってくるだけでなく、特に公の行政を行なっている団体の予算から広告費が出ていれば、回り回って国民が払う税金の中から不正業者にお金が流れてしまうことにもなります。

番組取材班は更にこうした広告料の不正取得を提案し、契約したユーザーとともに広告費を横取りするような不正の本丸にいる人達について、追加取材の予定も報告しています。今後こうした不正に対策をすることなくネット広告費を横取りする人たちを野放しにしておくようだと、ネットを見ても面白くなさそうなコンテンツが増えることで、今のようなネットへの興味が失せてしまう可能性があります。現代の子どもにとっての一番の人気職業と言われている「YouTuber」としてネットで生活しようといくら努力したとしても、中抜きされる広告費が多すぎて、広告主がネット広告を止めたり規模を縮小したりすると、これから初めたばかりの拙い内容のサイトまではお金は回って来ず、せっかく盛り上がったサイト構築への意欲をそいでしまうことにもなりかねません。

それはブログについてもまさにそうで、ドメインの維持手数料(年間数千円程度)ぐらいも年間に稼げないということになると、今まで有益な情報を提供してくれていた良サイトがいきなり閉鎖なんてことも起こってくるかも知れません。正直なところ、自分のサイトが多くの人に読まれるだけでなく、いくらかの収入を見込めるということになれば、自然と更新の意欲も高くなる方もいるでしょう。しかし多少の努力をしたとしても、不正にアクセスを稼ぐ不正サイトの陰に隠れてしまい、さらに広告料の儲けを持っていかれるということになると、今後面白いコンテンツを作る才能を持っている人がブログを書かなくなることも考えなければいけないでしょう。そうなるとインターネットの一つの魅力が無くなってしまうような感じにもなります。

せめてインターネット広告に関わる方々には、不正に多くのアクセス数を稼いで広告料をかすめとる中味のないサイトなのか、オリジナルのコンテンツで勝負しているサイトを分け、悪質なサイトへの広告配信を中止するなどネット自体の信頼性の構築にも協力していただきたいところです。不正利用者とは技術革新のたびにいたちごっこになるかも知れませんが、そこをきちんと分けないとネット広告にお金を出そうと思う人が減る可能性もあります。少なくとも今回の番組が本放送で評判になり、深夜ではありますが再放送されたことに希望を感じます。今後の取材でさらなる真実が明らかになるような続編が放送されることを期待したいですね。

(番組データ)

クローズアップ現代+選「追跡! ネット広告の”闇”」NHK総合
2018/09/08 01:40 ~ 2018/09/08 02:05 (25分)
出演者
中川淳一郎さん (ネットニュース編集者・元博報堂社員)
NHK記者
武田真一・田中泉 (キャスター)

(番組内容)

2018年9月4日の再放送。
急成長を遂げ、年間1兆5千億円を突破したネット広告市場。この巨大市場に不正の闇が広がっていることが分かってきた。4月に取り上げた海賊版サイト「漫画村」では、広告が実際には見られていないにも関わらず、大企業が広告費をだまし取られる“裏広告”の実態が明らかに。その後も取材を続けると、次から次へと新たな手法が浮き彫りになってきた。 被害は企業だけでなく、国や自治体にも広がり、税金がだまし取られていた可能性も浮上してきた。番組では、サイトに残された手がかりから、不正に関わると見られる業者を複数特定。個人か?それとも組織的な行為か?謎に包まれたネット広告の「闇」に迫る。


幕末初心者への配慮なのか単なる現場の「手抜き」なのか

まず、番組データの中に出演者や司会として紹介されている人たちの顔ぶれを見ていただければおわかりかと思いますが、NHKの大河ドラマについての紹介番組なのにNHKアナウンサーを一切絡ませていないというのがこの番組のコンセプトを象徴しているように思えます。

番組の最初に司会の後藤輝基さんが台本通りのセリフなのか自身の想いなのか、幕末には詳しくないというようなことを言ってしまっていることからもわかる通り、今回番組で紹介することになる「坂本龍馬」「勝海舟」「岩倉具視」「桂小五郎」という、番組後半にキーとなる4人の歴史上の人物を細かく、知らない人に対して解説し、どうか後半のドラマの急展開に付いてきてね(^^;)。という番組であることは明らかです。

しかしながら、NHKが一番見て欲しいと思っている若年層の視聴者層はテレビそのものを見ないか「世界の果てまでイッテQ!」を見ていることでしょう。個人的にはこの種のPR番組を通常のドラマ枠でやるよりも、裏にそれほど強力な人気番組のない時に流すもので、ドラマ自体は複雑な幕末を扱うものだけにしっかりと今回も話を進めて欲しいと思っていたのですが、ドラマがあることを信じてテレビの前で待っていた人たちを大いにがっかりさせた番組であったと思います。

特に今回の番組のタイトルに「西郷どんスペシャル(2)」とあるように、通常のドラマを中断してまでドラマに関する別番組を流したのは今回が2回目であるということも見逃せません。ちなみに第一回目は4月1日に「鈴木亮平×渡辺謙の120日」 という題で撮影裏のお二人の姿を中心に放送されたのですが、この時もなぜ通常ドラマ枠を潰して放送に挟んだのかという疑問は出ていたと思います。

NHKの方では大河ドラマを4章に分け、場面が変わるところで通常放送枠でこのようなスペシャル版を入れる予定で本数を減らすということのようです。NHKでは否定していますが、いわゆる「働き方改革」にのっとってドラマ製作の仕事量を軽減させたという説まで出てきました。もちろんそのような説をNHKは肯定するわけはないでしょうが、貴重なドラマ一回分を民放のバラエティーのような形にして、さらにスタジオでのトークの内容も45分という時間の関係からかなり編集で切っていたのもわかったので、スタジオ出演者の話もあまり深く入ってこなかったことも事実です。

個人的には、このようにスタッフが結果的にでも楽をするような番組を入れるようになった現場はかなり疲弊していることが推測されるのですが、このまま行くと日本のテレビ時代劇にとってさらなる展開になるのではないかと危惧することもあります。

というのも、民放の時代劇であの水戸黄門さえ「大岡越前」「江戸を斬る」のような出演者が休めるような別の企画物が放送されなくなり、現代劇とワンクールごとの放送になったと思ったら長くスポンサーを務めてきた松下電器(現パナソニック)が撤退し、ついに連続ドラマとしての水戸黄門の放送は終了してしまいました。このような、最初は小さな変化だったものが最終的に大きくなってしまう事が大河ドラマでも起こるのではないかという危惧は笑い話で済ますことはできないでしょう。ドラマスタッフとしても多くのドラマの中でも時代考証の大変さや小道具や衣装の準備が大変な時代劇を今まで作った人の経験をいかに後世に伝えていくかというところで問題をかかえています。

いつになるかわかりませんが、大河ドラマの枠で時代劇が放送されなくなり、大河ドラマそのものが終焉を迎える未来というものも十分有り得ると思っています。そのきっかけとなるのが今年から始まった「西郷どんスペシャル」だと言われかねないような番組だなとここでは指摘するだけに留めますが、ドラマの番宣を本放送にもってくるということはそれだけ見る側にとっては重大なことだということをもっと多くの人に理解して欲しいと思います。今まで毎週楽しみに見ている大河ドラマファンをがっかりさせない番組作りを望みたいということです。

(番組データ)

西郷どんスペシャル(2)「いざ革命へ!西郷と4人の男たち」NHK総合
7/8 (日) 20:00 ~ 20:45 (45分)
【出演】鈴木亮平,近藤春菜(ハリセンボン),山崎怜奈(乃木坂46),厚切りジェイソン,江川達也,
【司会】後藤輝基(フットボールアワー),横山裕(関ジャニ∞),磯田道史

(番組内容)

いよいよ西郷どんは革命の表舞台へ。島流しで命さえ危うい“どん底状態”だった西郷が、なぜわずか3年で“日本一の大物”になれたのか?その鍵は4人の男たちとの出会いにあった。勝海舟(遠藤憲一)坂本龍馬(小栗旬)岩倉具視(笑福亭鶴瓶)、そして桂小五郎(玉山鉄二)。歴史家・磯田道史さんを中心に多彩なゲストが、西郷と出会う英傑たちの魅力とその「金言」を探る歴史バラエティー特番。出演:後藤輝基、横山裕ほか


山下洋輔の出てこない赤塚不二夫物語になるのか?

今回、第一回目の本放送を見逃したので再放送を録画で見たのですが、ドラマのスタッフ欄には音楽に大友良英氏の名前があり、赤塚氏が夜な夜なクラブで飲んでいる時にちょっと流れかけたジャズっぽい音楽が大友氏の手によるものなのかと思いながら、このドラマの「家族」というテーマにはちょっと違う観点から見ていました。

残念ながら赤塚氏が第一回目の中で遊んでいるのは主にフジオ・プロダクション内のアシスタントや漫画製作のためのブレーン、そして編集者に限られているようでした。実際私は直接赤塚氏とお会いしたことがないので本当のところはわからないものの、あらゆるジャンルで自身の表現を模索している人たちが赤塚氏と飲み、交流をし、その中から新たな展開が生まれてきたという側面もあり、私は赤塚氏の漫画とともにそうした赤塚氏のエッセンスを得て大きくなったクリエーターの方々も大好きです。

そんな中でも感謝しているのが、少年時代にリアルタイムで赤塚氏の漫画を読み、そろそろ自分も漫画からは卒業かと思った時に出会ったのが山下洋輔トリオ(ビアノ山下洋輔、アルトサックス坂田明、ドラムス森山威男)のフリージャズだったのですが、何とこのお三人は国内ツアーの時に移動手段がないので、懇意にしている赤塚氏のベンツを借りて全国を回っていたというお話を山下氏のエッセイで読み、改めて赤塚氏の懐の広さを感じられたことです。

ちなみに、赤塚氏のお葬式で「私もあなたの作品でした」と言ったタレントのタモリさんも、もともと赤塚氏と知り合いだったわけではなく、山下トリオが博多でライブを行なった時にその打ち上げで絶妙な密室芸を披露したことで山下さんらが赤塚氏にタモリさんを紹介し、タモリさんが赤塚氏のお宅に居候をしながらテレビに出してもらい、それがタレントとしてのタモリさんの活動の始まりということがあるのです。ネット上にはタモリさんはなぜ出てこないのか? という書き込みを多く見付けましたが、私としては山下洋輔さんをはじめとする多くの「非漫画家集団」がドラマで出てこないところが、今一つ赤塚氏の魅力を伝え切れないのではないかと不安に思うところです。

ドラマの中での赤塚氏のセリフの一つだったと思うのですが、「常識人でなければ面白い漫画を描くことができない」というのはドラマの中では実に皮肉に聞こえますが、それこそが漫画家の赤塚不二夫氏が抱えていた葛藤だったのではないかと思います。デビューまでは線の細い内気な美少年として仲間うちから描かれることが多い赤塚氏ですが、いわゆるギャグ漫画を心の中に秘めたように構想しており、それがギャグ漫画としてのデビュー作「ナマちゃん」に凝縮されています。

その後、赤塚氏は自分のギャグ漫画の原点としてその面白さを当時の子供たちにも伝えようと、彼が愛してやまなかった杉浦茂氏の漫画の登場人物の決めセリフ「レレッ?」をいつも使う「レレレのおじさん」というキャラクターを作ります。当時は杉浦茂氏の盗作ではないか? という話も聞かれたそうですが、私はあくまで杉浦氏の漫画をリスペクトする中での行動だと思いますし、杉浦氏自身が漫画一筋の真面目な方だったという話を聞き、ギャグ漫画家の理想として話に出したのではないかと思われます。

現代でも多くの漫画家は真面目でマスコミにはほとんど登場せず、かろうじて赤塚イズムを継承しているのはみうらじゅん氏が目立つくらいなのではないでしょうか。ただ、赤塚氏と比べてしまうと、時代のせいもあるとは思うのですがスケールが大きく、今後このドラマがどこまでそんな赤塚氏の事を描いていけるのか楽しみではあります。

ただ、最初に書いたように、できれば山下洋輔氏のような人もドラマでは出てきてほしいですし、漫画だけでなくあらゆるメディアやジャンルを巻き込みながら自身の表現もしてきた赤塚氏の全貌を特に当時の事を知らない人にもわかるように伝えて欲しいと切に思います。

(番組データ)

土曜ドラマ バカボンのパパよりバカなパパ(1)全5回「わしは天才なのだ」NHK総合
2018/07/02 02:35 ~ 2018/07/02 03:50 (75分)
【出演】玉山鉄二,比嘉愛未,長谷川京子,森川葵,馬場徹,駿河太郎,マギー,浅香航大,井藤瞬,千代將太,駒木根隆介,押元奈緒子,草笛光子,住田萌乃,
【語り】松尾スズキ
【原作】赤塚りえ子,
【脚本】小松江里子
【音楽】大友良英,Sachiko M,江藤直子

(番組内容)

破天荒な日々を送っていた不二夫(玉山鉄二)を元嫁の登茂子(長谷川京子)と、娘・りえ子(森川葵)は心配し、眞知子(比嘉愛未)を気に入り、結婚させようと画策する。

天才ギャグ漫画家・赤塚不二夫(玉山鉄二)は、アシスタントや編集者と遊ぶように漫画を描き、奥さんである登茂子(長谷川京子)、娘・りえ子と別れ、夜は飲み屋でバカ騒ぎするという破天荒な日々を送っていた。時は流れて、成長したりえ子(森川葵)は不二夫に再会する。そして、登茂子とりえ子は、大きな愛情で不二夫を包む眞知子(比嘉愛未)を気に入る。二人は、眞知子と不二夫を結婚させようと作戦を立てるが…。


今のNHKは人を見て「忖度」する?

後からこの文章を読む方もいるとは思うので、この番組が放送された当時の世の中の動きについて紹介しておきますと、ちょうど前日に国会では元官僚の方が証人喚問で呼ばれ、首相や首相夫人、官邸や官房長官など政府の要人に良かれと思って証言をしたのではないかと野党が攻め立て、今年の流行言大賞は「忖度」ではないかと言われていて、NHKを含めて多くのテレビ局で批判的に「忖度」という言葉を扱っているように感じています。

そんな時に放送されたこのプログラムは、向田邦子さんとのコンビで数々のドラマを作り今なお多くのファンのいる演出家の久世光彦氏を敬愛する小泉今日子さんがホストとなり、「マイ・ラスト・ソング」という久世氏の同名エッセーを基にして数々のテーマとともにそれぞれの人生の最期に聴きたい歌を紹介していくという形の番組でした。

久世光彦氏の話をもっとしてくれるのかと期待していたものの、樹木希林さんが登場した割には大した話もしないで終わってしまったのは個人的には残念でしたが、実は樹木希林さんがスタジオに入ってNHKの紹介する「女子会トーク」を収録している時に、変な動きをする樹木希林さんに気付いたのでした。
見ていた方ならわかると思いますが、希林さんはバッグを本番のスタジオに持ち込んでおり、他の人が話したり自分で喋りながらそのバッグを自分の隣の席に置き、中に手を突っ込んで何かを探しているのを見てしまいました。恐らく、トークの内容に関係あるグッズでも出てくるのだろうと思いながら見ていたら、次のカットではバッグを足元に置いたままその後は手を付けず、結局何のためにバッグを本番の収録に持ち込んだのかはわからずに番組は終了しました。

正直、私はテレビに出ている人がその番組の中で私物の入ったバッグを持ち込むような人というのは、さんま御殿で司会の明石家さんまさんに私物のバッグを見付けられてかなり大きな声でマジ注意された蛭子能収さん以外にはこんな事例を知りません。蛭子能収さんの場合はお笑い中心のバラエティーのためある意味結果オーライで、蛭子さんのテレビからはみ出すような行動をうまく笑いに変えていたなとその時は思ったのですが、もしバッグの中に電話など音を出すものが入っていて収録中に急に鳴り出してしまったらと考えると、普通はスタッフが出演者に私物は持ち込まないで下さいと諌められて終わりなのですが今回はそうはならなかったようです。

特に今回の場合はバッグを自分の隣に置いてゴソゴソやっているところまで番組で見せているのですから、少なくとも共演者はその行動に触れて笑いに変えるとか何とか処理をするようでないと、わざわざ希林さんが私物のバッグをスタジオに持ち込んだ甲斐がありません(^^;)。もっともそれは私が民放を見過ぎているせいかも知れませんが、もしNHKのスタッフが樹木希林さんの勢いに押されて私物のバッグのスタジオ持ち込みを結果的に許してしまっただけだったら、それこそNHKスタッフは樹木希林さんに「忖度」した結果だけが残り、見ているこちら側は違和感だけが残ったというのが正直なところです。

今回は、トークの中で今はもうあれだけ人に対して怒る演出家はいないという久世光彦さんに対しての好意的な評価をしてから番組に入ったのに、NHKのスタッフには困る時でも大女優なら決して怒らずに忖度してしまうという事になったという、本当に残念な番組になってしまったように思います。樹木希林さんの自由な行動を番組で触れないことは、実は当の希林さんが残念に思っていたのかも知れません。

(番組データ)

マイ・ラスト・ソング~人生の最後に聴きたい歌は~ NHK総合
3/28 (水) 22:00 ~ 22:50 (50分)
【出演】小泉今日子,樹木希林,満島ひかり,又吉直樹,浜田真理子,奇妙礼太郎,
【語り】窪田等

(番組内容)

小泉今日子のライフワークがついに番組化!人生の最後に聴きたい日本の名曲を、小泉今日子自身の朗読とともに届ける。樹木希林・満島ひかりとの「いい女」トークも!

小泉今日子の人生において忘れることができない恩師、それがドラマ演出家の久世光彦だ。小泉は、久世が残した「マイラストソング」というエッセイをもとに、朗読と歌の舞台を10年にわたって上演してきた。今回、この小泉のライフワークがテレビ番組になった。小泉の朗読と、聴く人の人生に寄り添う、日本の「いい歌」を届ける。さらに樹木希林、満島ひかりを迎え、「女子会」さながらに人生についてディープなトークを展開する。


NHKのバラエティは民放ゴールデンタイムバラエティともはや遜色なしか

このブログでは最後に、番組のデータと内容を紹介しているのですが、この番組で注目すべきことがあります。それは、番組に出演している人達は司会を含めて全てタレントで固められているということです。NHKのバラエティというのは必ずどこかにNHKのアナウンサーや解説委員などの局の関係者が入り、それがいいという人もいれば、局の人間の出すオーラによってバラエティとしての面白さが台無しになるという人もいます。

今回は民放でバラエティ番組の司会を多く行なっている有吉弘行さんにしたことで、収録中であっても暴走してしまい、その雰囲気が番組に出てしまうのを心配するなら、隣りにいてしっかりと有吉さんの暴走を止めるようなアナウンサーを置いても良かったと思うのですが、実はそれでは今まで私達が見てきたNHKのバラエティーと同じ結果になってしまうことは明白でしょう。たとえそれが有働由美子アナウンサーや桑子真帆アナウンサーであってもです。

恐らく、NHKの中の人の間でもドラマやドキュメンタリー、教養番組では民放よりいいものを作る自信はあっても、バラエティについては民放には敵わないということを感じていたことはあったのではないでしょうか。今後NHK発のバラエティを進化させ、より多くの人に見てもらうためには、あえてNHK側の出演者を出さないバラエティを作ることでよりNHKへの視聴者への注目が集まるのではないか、そうなれば受信料もしっかりいただけるのではないか(この部分については個人的な邪推の域を出ませんが)という風に考えてのキャスティングなのではないかと思ったりもしました。

今回、NHKの局の人間を出さずに有吉さんに暴走させないための方法として、司会を有吉さん一人にしないで、下ネタやえげつない話はNGの鈴木福くんを起用したのは今後のNHKのバラエティを考えた時、ものすごいアイデアだと思いました。鈴木福くん自体は大したことも言えず、有吉さんの隣にいるだけで、下世話な話を振られても愛想笑いをしているだけでしたが、NHK的にはそれで良く、恐らくNHKのスタッフが作ったカンペを指定された時に読むだけで十分でした。キャラの立つアナウンサーが余分な事を言わないことで、有吉さんが自分で考えてしゃべる余地を作ったのが鈴木福くんの存在だったと言えるのではないでしょうか。

有吉さんはメチャクチャな事をやっているようでいて、場の雰囲気を読んでうまく立ち回ることができるスキルを、ピン芸人として復活していく中で身に付けていった苦労人です。だからこそ、あらゆるジャンルのタレントにフィットさせることができます。さらに、ゲストも民放のバラエティの司会とゲストという立場で何回もやり取りしている人ばかりです。こうなるともう、NHKスタッフのもくろみ通り、少し失礼にも苔を取ってお金設けをしている人のパーマの頭をアップにするようなVTR素材も入れながら、スタジオでのトーク回しは民放バラエティとほとんど同じで、その中でもあまり過激な話はしないなどNHKの方としても安心できる内容でNHKの新たなバラエティ番組の方向性を打ち出したように思えます。

となると、こうしたNHKの動きを受けて民放のバラエティ班がどのような番組作りを目指すのかということが気になります。VTRを見ながらゲストと司会者がやり取りするような番組においては、もはやNHKは今回の番組を成功させたことで、そのノウハウを十分に持ったと言っていいと思います。まだ深夜のクセがすごいバラエティは安泰かと思いますが、少なくともゴールデンタイムに放送されているバラエティのいくらかは、NHKとの競争に負けてしまう恐れが出てきたように思います。

過去の例としてフジテレビで放送され、人気抜群だった「ほこ×たて」にやらせが発覚して打ち切りになった後、NHKがしれっと「超絶 凄ワザ!」という一切やらせなしという類似番組を始めたということもあります。受信料収入をバックに資金をかければやらせなしでバラエティ番組だって民放より多くの視聴者を楽しませる番組を作れるということなのかも知れませんが、工夫すればテレビ東京のようにお金を掛けずに人気番組を作ることもできるのも確かです。今回の番組はまだそれほど民放の脅威にはなっていないと思っている方も多いと思いますが、私は民放のバラエティ班もNHKに対しての危機感を持った方がいいのではないかと思ってしまいました。

(番組データ)

有吉・福くんのお金発見 突撃!カネオくん NHK総合
3/24 (土) 20:15 ~ 20:45 (30分)
【司会】有吉弘行,鈴木福,
【ゲスト】高橋英樹,田中美佐子,岡田結実,
【カネオくんの声】ノブ(千鳥)

(番組内容)

日頃、気になるけどなかなか聞けないお金のヒミツに“おカネ大好きキャラクター・カネオくん”が突撃取材!家族で楽しめる生活マネーバラエティー!ぶっちゃけみんなのお給料っていくら?街で景気調査!1年で1000万貯めた主婦のスゴ技とは?知ってるようで知らない、世の中のお金事情&仕組みをわかりやすくお届け!MCはテレビ初のコンビとなる有吉弘行&鈴木福くん。彼らと一緒に世の中のおカネのヒミツを解き明かします!


NHKのトーク番組は生放送でないと本音が出ない

NHKが民放のプロデューサーやAbemaTVの仕掛人、タレントさんを集めて2017年のテレビについて語るトーク番組ですが、まず疑問に思ったのはNHKへの表立った批判が出てこなかったことです。これは、過去に聞いた話ですが全国放送でない地方局のトーク番組に知り合いで身体障害のある方が出演した際に、事前にあれやこれやの制約が多すぎて、自分が喋りたかったことについてはほとんど喋ることができなかったと憤懣やるかたない感じで話を聞いたことを思い出します。

地方でしか放送されないトーク番組でさえこれですから、今回の番組についても事前にきついお達しがあった事が想像されます。本気でテレビの行く末を心配するのなら、まずは1月2日の夜からやるなら生放送にして自局のテレビ離れの象徴とも言える「紅白歌合戦」についてのパネラーの意見を伺うようなことができないなら、少なくともNHK自体が何も変わらないということになってしまいます。また、生放送ならもしNHKからきついお達しが出ていたとしても、後で怒られることを覚悟した人がいれば、かなりの本音を吐ける訳で、それだけでも番組は数倍面白くなったと思います。というわけで、今回の番組にある程度の制約があると仮定した中で、番組で話された内容について、気付いたことを書いていこうと思います。

まず出てきたのは「視聴率以外に番組を評価する別の指標はないのか?」という話です。私の家にはもちろん視聴率を計る機械が付けられたことはありませんが、もしそうしたお宅があったらテレビを付けてさえいれば、その前で居眠りしていようとネコがリモコンのスイッチを押してしまっても視聴率の数字としてカウントされてしまいます。

最近ではリアルタイムで見ないで録画したものを見る人や、ネットの見逃し配信で見るようなケースも有るのですが、一般的に若い人ほどリアルタイムでの視聴にこだわらないような感じになっているそうです。ただ、録画された回数についてそれを番組の評価の指標にしたとしたら、番組を提供しているスポンサーの広告は飛ばされてしまうようになるだけです。ビデオデッキによる視聴の習慣が一般的になってもリアルタイムでテレビを見ることにこだわった背景は、こうしたこともあると思います。

さらに悪いことに、昔なら一社提供の番組という番組の内容を意気に感じてスポンサーが援助してくれるような番組もあったわけですが、今ではそんな番組は数えるほどしかないというのも問題でしょう。松下・東芝など一社提供のドラマをなくしてしまった頃からテレビの凋落は激しくなり、番組でも出ていましたが視聴者のクレームに及び腰になりやすい体質が生まれてきてしまったようにも思えます。

実際、テレビを見ている視聴者はテレビ局のスポンサーはどのような経緯で付くのか、さらにスポンサーの意向がどの程度番組に反映されるのかということについては知ることができないため、はっきりとした事は言えないながらも、テレビの制作だけに日が当たり、営業部については紹介されることがない今の状況が変わらない限り、視聴率至上主義が払拭されることはないのではないかと思うのです。営業の手法で、視聴率以外の一定の条件さえクリアできればあとは自由な番組作りが一定の期間できる(つまりスポンサーが付く)という形でスポンサー契約をし、その経緯が公開されるようなら、営業職にも日が当たることになるだけでなく、視聴者もスポンサーの想いを感じることにもなり、結果としてもっと面白いものができる可能性があります。

では視聴率以外の評価点とは何かということで言うと、今ならSNSでつぶやかれる回数であったり、見逃し配信で見られた回数であったりするかも知れません。コマーシャルを流さない代わりに、スポンサーの製品を番組内で使い、それをわかるように映すことにも注意して番組を作っても(昔の西部警察でよくあったタイアップ手法)、ドラマならストーリーに影響がなければコマーシャルで切らずに民放でもノンストップで番組が作れるかも知れません。この点については視聴率に関係ないNHKでそんな話をしている事自体は面白かったです。

後、気になったのは、今の日本のテレビではテレビ東京の伊藤プロデューサーの言う「企画の保険」が必要で、それが安定した人気のあるキャストの出演だったりする場合、その時点で他のテレビ番組と似たものになってしまって詰まらなくなるというお話は、具体的な芸能事務所には触れなくてもかなりテレビが詰まらなくなる原因の核心を付いていたのではないかと思えました。

また、出演者の方々の発言の中で気付いた点として、フジテレビが「とんねるずのみなさんのおかげでした」と「めちゃイケ」を終了させる点について話が及んだ時、フジテレビは高齢者向けのバラエティでも始めたらどうかと言っているパネラーの方がいらっしゃいましたが「クイズ脳べるShow」はBSフジの番組で、このブログでも特番を11月に11時間ぶっ続けでやったことについて書かせていただきました。今回の番組ではBSの番組について語られる事はありませんでしたが、地上波とネット配信(ネットテレビも含む)の間にはBS放送があるという根本的なことを理解しなければ地上波はさらにおかしな方向に行ってしまうのではないかという危惧も持ったことをお知らせしておきます。

また、文春と新潮という週刊誌が芸能人の不倫現場や事故などの動画を撮影してその動画をテレビ局に売り込むことで利益を上げているという指摘をされているパネラーの方がいましたが、そうなると一般の視聴者には無料で動画を流す権利をもらおうとスクープ映像を募集する各テレビ局の所業とは何だと改めて問いたくなります。もし個人で撮影したスクープ映像があれば、自分でYouTubeに流す方が良いということに視聴者が気付いたら、そちらの方面でも地上波テレビ局は困ることになります。ただそれは本当に自業自得でしかないでしょう。

もしNHKが今回の内容で、深夜から早朝まで生放送の枠で自局への批判も受けて立つという形で番組を作ったとしたら、他の民放も焦るだろうと思いますが、この程度で毎回終わってしまうトーク番組であれば、来年も紅白歌合戦ではその年のヒット局や視聴者が見たい人の歌が聞かれない「国民的番組」というおかしな方向性のまま迷走していくだけだと思います。さらにAbemaTVの藤田氏を出すなら、亀田興毅氏でなく朝青龍のあの番組(朝青竜に勝ったら1,000万円)とNHKとの相撲中継をからめての話をしなければ、相撲協会もNHKも変わらないまま問題はさらに根深くなっていくだけだと思います。他の民放でもいいので、そんな題材の生トーク番組をぜひ実現させて欲しいものだと思いますね。

(番組データ)

新春TV放談2018 NHK総合
1/2 (火) 22:55 ~ 0:15 (80分)
【パネリスト】テリー伊藤,ヒャダイン,カンニング竹山,藤田晋(サイバーエージェント),高橋真麻,品田英雄,伊藤隆行(テレビ東京プロデューサー),小田玲奈(日本テレビプロデューサー),
【司会】千原ジュニア,首藤奈知子(NHKアナウンサー),
【語り】サンシャイン池崎

(番組内容)

放送局の垣根を越え、今のテレビをぶった斬る討論番組。今年も熱く語ります。2017年の人気番組ランキングを発表!あの感動ドラマは何位に?池が舞台の民放バラエティーはどのように生まれたのか?第一線の制作者たちが秘密を明かす。ネット業界からは72時間番組の仕掛け人が登場。過激な企画の狙いとは?テレビ離れ、長寿番組終了、課題いっぱいのテレビ界はどうなる?テレビのこれからがわかる78分。