傷の付いた怖い顔が人生を変えた伊東四朗さんについて伝えられなかったこと

81才という年齢を感じさせず、今なお舞台やテレビで活躍する伊東四朗さんが今回の出演でした。最近のテレビでは数少ない主演作(羽田美智子さんとのダブル主演ですが)の「おかしな刑事」(テレビ朝日系列)が最近放送されましたが、ひょうひょうとした演技で年齢を感じさせないという感じがします。

また、TBS系列の「十津川警部シリーズ」では、十津川警部の相棒の亀井刑事を演じ、すっかり喜劇役者というイメージとは違っているような感じです。
そんな中、この番組ではやはりNHKということで、朝ドラの「おしん」や大河ドラマの映像を流していたのですが、喜劇ができれば何でもできるというようなニュアンスでVTR出演の小松政夫さんが伊東さんの演技を評価していたものの、個人的には大変残念ですが、もう一つ役者として大きな役を掴みきれなかった不運さというものも感じてしまいます。

というのも、番組内の伊東さんの芸能界に入るきっかけとなった、高校を卒業する際に受けた就職試験が全て駄目で、仕方なく兄の世話をしたアルバイトをしながら劇場に通ったことが紹介されていたのですが、なぜ就職できなかったのかということが番組では明らかにされます。それは、学生の時にトロッコが倒れて顔に骨まで達する大きな傷の残る怪我をしたことから、相当人相が悪くなり、そのために企業は伊東さんをことごとく採用しなかったということだったのでした。私たちはまず「てんぷくトリオ」での伊東さんを先に見たり、最近の柔和な表情の刑事役で見ていることから、そこまでの人相の悪さは感じないと思いますが、ちゃんとその顔を見ると迫力があり、いわゆる悪人顔であったことが伊東さんの人生を切り開いたと言えるわけです。

そんな、迫力ある顔を全面に押し出すことで伊東さんが主演に抜擢された映画がありました。本来はこの番組で伊東四朗さんを語る際に出てくるべき代表作になるはずでしたが、これが伊東さんの顔とは全く関係ない理由で映画が上映されない、いわゆるお蔵入りになってしまった不運があったのです。その映画の題名は「スパルタの海」という作品で、あの戸塚ヨットスクールが大きな問題を起こす前、不登校の生徒を更生させる施設だというような、スクール側の視点から描かれたもので、伊東さんは戸塚校長役としてすごい迫力で主演を全うしています。

現在はソフト化されて見ることができますが、暴力事件で戸塚校長が逮捕される中、さすがに一般の映画館での公開は不可能で、もしこの映画が普通に公開されて、伊東さんの迫真の縁起が広く紹介されていたとしたら、役者としての評価ももう一つ進んだのではないか? と思えます。

さすがにこうした事は「ファミリーヒストリー」という番組とは関係のない話なのですが、これほど自分の顔によって人生が変わった人を知りませんし、テレビと違って映画は現在のビデオオンデマンドでもネット配信で見られるようになるなど、時代を越えて生きのびる永続性を持っています。

最初に紹介した伊東さん主演・助演のTVシリーズは確かに人気ではあるのですが、例えば渡瀬恒彦主演の十津川警部シリーズは内藤剛志さんが引き継いだことによって、十津川警部と言えば渡瀬恒彦というイメージも今後はどうなるかわかりません。常に今が大切なテレビでは過去の人になってしまうととたんに忘れられる宿命を持っているとも言えるわけで、その点を伊東さんがどう考えているのか、そしてやはりビートたけしさんのように、舞台はライフワークとして続けるにしても、テレビより映画の方向に進みたいと思っているのかどうかということも、ちょっと気になります。

こうしたことは、あまり御本人は気に掛けないのかも知れませんが、この番組で紹介されていた「てなもんや三度笠」などは見たいと思っても全編を見ることはかないませんし、逆に映画なら古いものでもフィルムが残っている可能性があり、お蔵入りした「スパルタの海」もネットで今後配信されるようなことがあれば、そこから新たな伊東四朗さんの再評価が起こってくるかも知れません。もっと言うと、テレビ番組のアーカイブもいつでも見たい時に簡単に多くの人が見ることができるようになれば、また状況は変わってくるのではないかと思います。

現在のテレビのアーカイブは、一部YouTubeに違法アップロードされるものが担っている部分があり、そこからどのように誰でも見られるようにしていくかということが大切になってくると思います。時代はすでに一度収録したビデオテープを再利用しなくても保存できるわけですから、テレビの番組であってもいいものは残すことで、本当にいいものを未来に渡っての共有財産として活用することも不可能ではありません。ちょっと大風呂敷を広げすぎたかとも思いますが、テレビ業界に関わる人達には、テレビ番組のアーカイブをどう保存していくかということについても考えて欲しいものです。

(番組データ)

ファミリーヒストリー「伊東四朗~思いがけず平氏と源氏 たどりついた喜劇の道」NHK総合
1/28 (月) 19:30 ~ 20:43 (73分)
【ゲスト】伊東四朗,
【司会】今田耕司,池田伸子,
【語り】余貴美子

(番組内容)

81歳になった今もドラマやバラエティ、舞台で活躍する伊東四朗さん。父は洋服の仕立て職人だった。しかし、仕事をせず極貧生活の中で、一家は夜逃げ同然で転々とする。家族を支えたのは明るく朗らかな母。そんな両親のルーツに、驚きの事実が浮かび上がる。父方は平氏、母方は源氏との関わりを示す証拠が見つかる。さらに、伊東さんの知られざる半生が、数々の証言で明らかになる。激動の歳月に、伊東さんは驚いてばかりだった。


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