民放キラーの番組紹介番組 さらに特定のお店の宣伝まで?

中高年に向けて、「水戸黄門」無き後、月曜夜の定番の番組になりつつある「鶴瓶の家族に乾杯」ですが、今回は再放送の深夜に見ました。番組のコンセプトとしては、ゲストが選んだ地域に、アポイントを取らないで直接カメラを回し、その地域の家族を訪ねるというコンセプトの番組ですが、当初は今のようなNHKのドラマや新番組に出るゲストがゆかりの場所を回ることでちゃっかりそのドラマの広報までやってしまおうというような番組ではなかったのですが、現在の番組のテーマ曲を作曲した「さだまさし」さんが出なくなって変わってしまいました。

さらに、現在の番組の放送時間はかなり計算されて変えられているという印象です。最初はさだまさしさんと笑福亭鶴瓶さんとの2人旅で、月一回の特集バラエティという扱いでしたが、2005年から月曜夜8時からの45分番組になり、前後編を2週に分けて放送するという形式で月曜夜の視聴率競争に殴り込みを掛けたかのようにすごい勢いで視聴者を増やしていきました。

当時の月曜の夜と言えば、TBSの一人勝ちといった状況で、午後7時からの「東京フレンドパーク2」からの同8時には「水戸黄門」、さらに9時からは一話完結のサスペンスで渡瀬恒彦さんの十津川警部シリーズなど個性の強いキャラクターが登場と、ゴールデンの勢いをそのまま深夜まで保つような勢いがあったのですが、その中に割って入ろうとしたのが他の民放でなくNHKだったのですから当時はNHKもえげつないことをするなあと思いながら見ていました。

その後、テレビ時代劇全般の視聴率低迷が言われ、「水戸黄門」でさえも苦戦する中、「鶴瓶の家族に乾杯」は支持を中高年層に広げていき、その圧力や他民放の月曜夜7時台の攻勢に押し出されるような形で2009年に「東京フレンドパーク」が月曜から木曜に時間を変更したあたりから雲行きがさらにおかしくなりました。その状況を察したのか、1年後にフレンドパークの放送は月曜に戻りましたが1年木曜日へ行っている間に視聴者は他の民放に取られ、そのおかげであの水戸黄門でさえも、2011年末に最終話を迎えることになってしまいます。

パナソニック提供のドラマ枠は残ったものの、現代劇を見慣れない中高年の方々は、裏番組の水戸黄門を気にせずに鶴瓶の家族に乾杯を見られるようになったことで、さらにTBSの状況はおかしくなってしまったのではないかと私自身は思っています。それでも、現在の放送時間である午後7時半からの放送に変わるまでは、「鶴瓶の家族に乾杯」→「月曜ミステリー劇場(番組名は当時のもの)」という形でまだTBSは見られていたのではないかと思うのですが、現在は一話完結のドラマ枠が午後8時からと一時間開始時間が早まってしまったので、恐らく中高年の視聴者は途中からミステリー・ドラマを見ることはせず、他のチャンネルかNHKを見続ける方の方が多くなっているのではないかと思います。

こういった経緯を見ると、鶴瓶の家族に乾杯はTBSが自分で転んだという面はあるにせよ、きっちりと視聴者の流出を防ぐ形で巧みに編成されているということをまずは感じます。
番組内容はゲストが誰かによって面白さが違ってくるということはあるものの、安心して見ていられ、さらに露骨なNHKの番組とのタイアップであるにも関わらず(話題のドラマで人気の俳優はほとんど出ますので(^^;))、そうした姑息さを感じさせない笑福亭鶴瓶さんの働きはさすがというしかありません。

ただ、現在の一回完結のパターンになって唯一問題がある点といいますか、こんなものを流していいのか? と思うのが女優の常盤貴子さんがナレーションをする「家族に一杯」というコーナーです。

本編の中でもその土地の有名なお店に鶴瓶さんやゲストが突撃するので、これはそのお店にとってはかなりいい宣伝になるなと思っていて、本来NHK自体が商標登録をされた言葉を出さないなど、特定の人や会社が潤うような宣伝については厳しいはずなのに大丈夫かと思いながら見ていたのですが、「家族に一杯」というコーナーは鶴瓶さんとゲストの旅とは全く関係ない独自のコーナーなので、きちんとロケハンをして撮っているのに、明らに見る人が見ればわかるお店の有名なメニューを紹介したと思えば、番組を見た人が放送された土地に行ってあの一杯を食べてみたいと思っても、土地の人達の集まりのようなところでカメラを回し、土地の人が食べる家庭料理の紹介で終わってしまう場合もあるなど、首尾一貫していない中途半端なものになっている気がするのです。

そもそも、番組内でのあからさまなNHKで放送する番組宣伝以外の宣伝もどきの行動について、この番組だから許されるのか、NHKも変わってきたのかということもちょっとわかりかねます。番宣という行為すら、NHKの公共放送という理念とはちょっと違うのではないかと思う方もいるかも知れませんし、その辺を全てなあなあで済ましてしまっている感じがある、その象徴的なコーナーとして私はあの「家族に一杯」というコーナーを見ています。

ちなみに、今回のゲスト、リオデジャネイロオリンピック重量挙げ銅メダリストの三宅宏実さんをゲストで出したのも、政府が推進しNHKが主になって放送する2020年の東京オリンピックについて、多くの人に知ってもらうための告知という目的があってのものです。個人的にはNHKにはどこの部分が番宣だなんて野暮なことを民放を見ている時のように考えなくていいバラエティを放送して欲しいと思っているのですが、今のところそういった希望を叶えるためには、ネット放送の方に逃げるしかないのかなという感じになっているのが残念です。

(番組データ)

鶴瓶の家族に乾杯[再] NHK総合
11/3 (金) 0:10 ~ 1:25
【ゲスト】三宅宏実
【司会】笑福亭鶴瓶,小野文惠
【語り】久米明,常盤貴子

(番組内容)

「東京2020SP メダリスト三宅宏実とぶっつけ本番旅」
素敵な家族を求めて笑福亭鶴瓶とゲストのウエイトリフティングの三宅宏実が青森県黒石市でぶっつけ本番旅。二人は次々と素敵な出会いを繰り広げていく。

 

 


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