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テレビに出てくる人の言葉遣いは大丈夫か

この番組は、東日本大震災の特別番組の直後に放送されたのですが、それまでの雰囲気とはかけ離れたバラエティーで、これはこれで考えさせられました。表現を抑えると「かかあ天下なご家庭」、かつて流行った言葉に置き換えると「鬼嫁のいるご家庭」に訪問し、女性の元で耐えるような生活を送っている男性の意見をテレビカメラが入ることによって聞いてもらおうという企画で、基本的には強い女性の姿を見て驚いたり男性に同情したり、パネリストの男女が様々な意見を面白おかしくまとめるという番組になるでしょうか。

この手の番組は過去にも他局で放送されていましたが、男性が暴力的で女性がその暴力に耐えているような場合は番組にならないのか、今回の2家族も女性の方が強いという設定でより強烈なご家庭にはプレゼントを持って再度訪問という形で女性のごきげんを取って番組は終了していました。

実際にテレビカメラを前にしたら普段の行動なり態度はそこまで出ないものですが、この番組に出てきた最初の「元ヤンキー」の女性は、もしカメラが入らずに男性とその中をとりもとうとして知らない人がいきなり入ってきたらどうなってしまうのか、心配してしまうほど「テレビ向き」のリアクションをされていました。元来、こうした状況を画に収めたかったのでしょうし、女性にやりこめられる男性という姿というのはそこまでテレビ局に抗議の電話やメールが来ないということなのかも知れませんが、この家庭での父親たる男性の訴えは、最初こそ「仕事で遅くなる時には洗濯物を取り込んで欲しい」とか、「食べ終わった食器を洗うのに、水に浸けておいて欲しい」というような当たり障りのないものでしたが、その後男性の口から出て来た言葉に、かなり深刻なものを感じました。

どういう事かというと、自分達の子供に女性の荒くて厳しい言葉遣いが移ってきたので、できれば普段使いの言葉については子供の前では気を付けて欲しいというのが最終的に男性の想いだったという事だったのです。子どもにとってはお父さんお母さんという形で見るとどうしてもお母さんの方とより多く接し(このご家庭の場合は男性が営業職で帰りが遅いのでなおさら)、母親である女性とのコミュニケーションが多くなる傾向にあります。就学前ならなおさら、さらに学校へ行く段階になってもこうした家庭内での言葉遣いが当り前のように育ってしまった場合、特に女のお子さんだったらこのケースでは男女の力関係的には女性の方がかなり荒い言葉遣いをしてしまっても許されると誤解する可能性が多くなります。

個人的にはご家庭によって父親と母親の間で力関係に差が出ることは当り前だと思いますが、ここまで極端になってしまうとそのお子さんが集団生活を送るようになって友人や先生、近所の人達とトラブルになった場合に解決をするための手段というのは当然自分の家族の中で見本とする人に求めるようになると思いますので、あくまでそのご家庭独自のものに過ぎない価値感の行使が、どこまで社会に受け入れられるのか心配になります。恐らくテレビで男性が主張したかったことは、特に営業職として自分で正しいと思っていることが通らずに、その想いを押し殺しても家族のために仕事を続けなければならないような事を自分の子が迫られた場合、今のまま大人になってしまって大丈夫なのかと思ったからテレビにまで出て伝えようとしたのではないかと思ってしまいました。

ただ、そのテレビではここまで紹介したような事に類する乱暴な言葉遣いをする番組があったりします。今回紹介した番組を含め、これはあくまでバラエティ番組で、番組を盛り上げるためのエッセンスが入っているかも知れないので、その点についてはお子さんと一緒に見ている場合にはその都度のフォローをしていけば、かえって番組の内容が反面教師のようになる可能性もあります。しかし、そう考えると同じバラエティとは言え、イデオロギーの対立で自説を訴えたいあまりに相手の人格まで攻撃するような論客の出演するニュース番組やニュース系バラエティというのは、その内容によっては大人が子どもに配慮して見せないということも必要になってくるのかなと思います。普通に考えて社会的地位の高い方が罵り合う姿というのは、大人への尊敬を失いかねないかも知れませんし。

よく夏休みの時期に小学生を国会に招いて子ども国会というイベントが開かれることがありますが、国会中継および地上波の政治バラエティの内容を小学生に授業の一環として見せても大丈夫なのか? という風にテレビを作る側の方が考えることが今後は必要になりのではないでしょうか。テレビに出演されたり国会に出たりする方々も、罵り合いでなく皮肉を効かせた「ディベート」で視聴者を唸らせていただきたいものです。

(番組データ)

夫はつらいよ ~鬼嫁直談判バラエティ 願い事を一つだけ聞いてください!~ テレビ朝日
2018/03/11 15:20 ~ 2018/03/11 16:30 (70分)
【スタジオ出演者】 ヒロミ 榊原郁恵 小峠英二(バイきんぐ) 平井理央
【ロケ出演者】
1組目 ~タレント応援団~ 飯尾和樹(ずん)、りゅうちぇる ~ご夫婦~ 河原夫婦(元ヤン鬼嫁)
2組目 ~タレント応援団~ 流れ星(瀧上・ちゅうえい) ~ご夫婦~ 尾崎夫婦(犬好き鬼嫁)

(番組内容)

鬼嫁に歯向かえない気弱な夫が、タレント応援団の後押しを受けて勇気を振り絞って願い事を妻に直談判するバラエティ「夫はつらいよ」。今回、世の気弱夫の背中を押すのは、先日おめでた発表をしたばかりのりゅうちぇる、愛妻家の飯尾和樹(ずん)の2人と、コンビ共に既婚者の流れ星。また鬼嫁お宅ロケの様子を既婚者であるヒロミ&榊原郁恵&平井理央、そして独身者のバイきんぐ小峠がスタジオから見守り鬼嫁度を判定!!

最初の依頼は、元ヤン鬼嫁を持つ32歳の夫から。つらいと思っているのは、「嫁が怖すぎて家族全員がビビってしまっている」こと。元ヤン鬼嫁の口撃にノックアウト寸前の夫をりゅうちぇるとずん飯尾は助けながらも願い事を直談判させることができるのか!?2組目の依頼者は「嫁が勝手に飼い始めた犬によって家庭崩壊の危機を迎えている」26歳の夫から。果たして犬より愛されていない夫から溢れ出る直談判したい切なる願いとは!?


「テレビ・芸能プロデュースの歴史」を忖度するとナベプロの歴史になる?

今回の番組は納豆の食べ方に興味があって何となく見ていたのですが、納豆の話題が終わったと思ったらとんでもない展開になっていくのが自分でもわかりました。何故か脈絡もなく「テレビ・芸能プロデュースの歴史」としてその時だけ新たな【学友】が加わりました。「番組データ」の中にある出演者の中で、「/」の後に名前があるのが後半から番組に出演した人たちです。

個人的には後半の講師を努めていたマキタスポーツさんに同情を禁じえませんでした。番組内のパネルでは一応芸能の歴史ということもあり、今日まで続くアイドルの中には「スター誕生!」からデビューした「花の中3トリオ」とか、松田聖子さんなど「非ワタナベエンターテインメント」に所属しているタレントを主に解説があってしかるべきところもあったのですが、番組で流されたのは最後に渡辺晋氏がプロデュースした吉川晃司さんまでで終了し、途中マキタスポーツさん自らがバンド形式で昔のバラエティの音楽ネタをやったのが一瞬一ネタだけ放送に乗ったものの、まさかあの一瞬のためにバックバンドのメンバーがセッティングしたわけではないでしょう。

恐らくバンド形式による数々のネタ披露とともにそれなりの楽しい芸能の歴史についてのレクチャーがスタジオ内では行なわれたように思いますが、番組の方は主に昔の「ナベプロ」の「渡辺晋」さんはすごい(渡辺美佐さんは若い頃の写真だけ出ただけで何も番組では触れられていませんでした)というように現在のワタナベエンターテインメントは芸能界とテレビを結ぶプロデュース力はすごかったんだというそれだけの内容を番組後半には紹介しただけのものになってしまったのです。

ちなみに、加藤茶さんおよびドリフターズのメンバーは元はナベプロ所属でドリフターズ時代に円満独立。中尾ミエさんにもその事務所名からもわかるように円満にナベプロから独立したので今回の出演となったのでしょう。独立時にいろいろあった森進一さんや沢田研二さん(吉川晃司さんはなぜナベプロに入ったのかという問いに沢田研二さんがいる事務所だからと答えていました)は当然出てきませんでした。元々、メインMCの林修さんが現在所属しているのがワタナベエンターテインメントで、彼の出る番組は軒並み視聴率を取るということから、テレビ朝日は林先生の所属事務所に忖度して今回のような企画が実行し、放送した内容を編集したのではないかと私は推測します。個人的にはもう少し林さんには他の芸能界のプロデュースの歴史についても触れるだけの余裕は持っていて欲しかったと思いますが。

少なくとも、今後の林先生がテレビに出て時の政治に意見を言ったとしても、大きな芸能事務所にとって都合の悪い事については発言できなそうな事が今回の忖度たっぷりのワタナベエンターテインメント礼賛プログラムを許した事でわかってしまったことは今回テレビを見ていての収穫でした。もし、同業他社のタレントが事務所ともめた時に林先生が何かを言ったとしても、話半分に聞いておいた方がいいような気がします。

それにしても、この番組の後半からなぜマキタスポーツさんが講師として起用されたのか、もし今回のような内容になるとわかっていてもマキタスポーツさんは出演を受けたのかという疑問は残ります。あの内容なら講師は中山秀征さんか恵俊彰さん(どちらもワタナベエンターテインメント所属タレント)の方が見ている方もすっきりしたと思うのですが。

(番組データ)

林修の今でしょ!講座 3時間スペシャル テレビ朝日
2018/03/06 19:00 ~ 2018/03/06 21:48 (168分)
【MC】林修(ワタナベエンターテインメント)
【進行】松尾由美子(テレビ朝日アナウンサー)
【講師】赤石定典 市原淳弘 伊藤明子 白澤卓二 津川尚子/マキタスポーツ(オフィス北野)
【学友】秋元真夏(乃木坂46合同会社) ビビる大木(ワタナベエンターテインメント) 吉田栄作(ワタナベエンターテインメント) 高橋英樹(アイウエオ企画) メイプル超合金(サンミュージックプロダクション)/加藤茶(イザワオフィス) 中尾ミエ(アスレティック・ミエ・カンパニー) 平野ノラ(ワタナベエンターテインメント) ブルゾンちえみ(ワタナベエンターテインメント) ミッキー・カーチス(ワタナベエンターテインメント)
【VTR出演】(公式データには記載なし)
吉川晃司(アクセルミュージックエンターテイメント)

(番組内容)

『健康長寿がよく食べる発酵食品~老化STOP 納豆の力を徹底解明』と『テレビ&芸能のプロデュースの歴史』2本立て!!健康長寿の方々に大調査!納豆、味噌…普段食べてる発酵食品は?今回は「納豆」をフィーチャー!血管・骨を老けさせない驚くべきパワーとメカニズムを紹介。納豆の栄養を無駄なく摂取できる「医学的に正しい食べ方」は?Q食べる前に良く混ぜる?混ぜない方が良い?皆さんの食べ方は大事な栄養を損してる?

テレビ放送開始65周年!バラエティや音楽番組、アイドルやタレント、今では当たり前になった「テレビ」の歴史に迫る特別講座!今回は多くのヒットプロデューサーの中でも、その草分け的存在と言われる渡辺プロダクションの創始者「渡辺晋」の功績を見ながら、テレビと芸能の「プロデュース」の歴史を学ぶ!才能ある人を見つけスターにする。面白い番組を作る。そこには私たちの想像を超える、情熱と創意工夫の歴史があった!


迷走した番組からデビューする人へのフォローはどうなる

すでにネットニュースで広く知られていると思いますが、「今夜、誕生!音楽チャンプ」は2018年3月でいわゆる「打ち切り」になるそうです。そんな状況がわかっているためなのかどんどん変な事をやり出していて、まさにテレビ番組はこうやって終わるんだよという事例を目の当たりにさせてくれている感じがするので改めてまた番組をネタに書いてしまいました(^^;)。

まず「ダンス企画」って何なの? と思ってはいけないのかなと思わせるほど当り前に「音楽チャンプ」なのに「ダンス」を競う企画を入れてしまうディレクターの厚顔無恥さはすごいですね。昨年から女子高校生による集団ダンスについては多くのバラエティーが取り上げて映画やドラマも作られましたが、このまま3月終了せずに番組が続いたら、いつの間にかお笑いのネタを競う番組にもなりかねないのではないのかと正直思ってしまいました。

放送時間が60分しかないのにこんな企画を入れるということは必然的にこの番組の本筋であるチャンプに挑戦者が挑む部分をカットしなければならなくなります。番組後半に、番組終了までに何とかこの番組からデビューさせるという命題を達成させるためのコーナーもあるので、さらに時間が取られるということになります。こうなると、もはや新たな才能の発掘ということではなく、他の番組で人気のある部分を切り取って流すという形でのなりふり構わなさを感じ、残りの放送日までを何とかしなければというスタッフの苦労がしのばれる部分でもあります。

たまたま前日、NHKのど自慢チャンピオン大会の放送があったのですが、こちらの方は毎週全国を回って続く長寿番組のチャンピオンの中から厳選された人達が出演し、2017年のチャンピオンを決めるというもので、審査員は音楽チャンプと違ってぬるい人選のような気がしたものの、まず出演者の年齢に幅があり、優勝者も男性でかわいい女性を優遇しているような感じはしなかった点はさすがNHKだと思いました。しかしNHKのど自慢はまだ素人時代の美空ひばりさんを落としたという致命的な判断ミスをしています。それは強烈な個性よりも大人しくまとまった才能を選ぶ傾向を感じ、その点はNHKだからこその壁であるという気もします。

本来はそうした点を突いて、決してNHKでは出てこなそうな人を選ぶ新たな歌のオーディション番組を作ろうと考えてできた番組ではなかったのかという風に思うのですが、やはり真面目にオーディション番組を作ろうと考えたら、大手芸能事務所所属タレントを司会に起用し、最初から視聴率や視聴者の評判を気にしたということが良くなかったのではないかと番組打ち切りという結果がわかってしまった今感じるところです。スターは狙って作るということはあるにしても、この番組はオーディション番組なのですから、やはり普通に応募してくる人の中からきらりと光る原石を見付け育てるようでなければならず、新たなスターが出るまでは視聴率が上がらなくても番組自体の人気が上がらなくても、放送する曜日や時間を変えてでも(早朝や深夜に移動しても)我慢して続けるべきでした。さらにその際に、ネットの評判によって番組での態度を変えるような審査員はやめさせるくらいでないと、結果の公平性は担保できないでしょう。

さらに、今回のような結果になってしまっても、番組スタッフの中で番組で育てた人材をどこまで世に出すための手助けをするつもりなのかという点も今後に向けては試される部分だと思います。せめて今、番組で推している丸山純奈さんと琴音さんをテレビ朝日がどのように育てていくのか、その結果きちんとした形でデビューさせるのが一つのケツのまくり方だと思うのですが、丸山さんをCDでなくあえてネット配信でデビューさせて多くの人が聴いてくれるのかというのが個人的には疑問が残ります。もちろん、今後フォローしながら本格的に歌手への道を進ませて行くのがこの番組を作って彼女らを送り出した責任として、今後のフォローを期待していますが、今後の状況によっては本気の音楽オーディション番組の企画はなかなか実現されないようになっていくのではないかと危惧をするところもあります。

(追記)
番組打ち切りの後で新たな情報が入り、どこまで続くのかは未知数なものの、今後は特番という形で番組の名前は残すような事も言われています。特番になれば私が心配していた合格者へのフォローも行なわれるでしょうし、今回のようなダンス勝負だったり、ピアノなどの演奏、バンド対抗の企画なども入れられるでしょう。しかし出演者の傾向は毎週続けていなければその分見ている人も限られるので、その中である程度の出演者のクオリティを保とうとすれば、テレビ関係者の目に止まったような人が主に集まるような気もします。テレビを見ていて、全く今まで表舞台に円のなかった人が「自分もテレビに出られるかも」と思って応募するような、いわゆる「スーザン・ボイル」さんのような方が出て来るような番組になるのは今後難しいと思われます。

どちらにしても、こうしたオーディション番組はできるだけ選考過程をガラス張りにして、見ている人たちも巻き込んだ形で作っていかないと、事務所とか関係ない才能を発掘する場にはならないような気がします。オリンピックになぜ多くの人の目が釘付けになるのかを考えてみれば、それは確かでしょう。ダンス企画でもいきなり「関東対関西」という形でやるのではなく、大々的に応募を募り、学校のクラブ活動から離れた草の根レベルで活動している才能を拾い上げ、決してクラブ活動で賞を取っているところだけが素晴らしいのではないということを提示するのもテレビの一つの役割ではないかと思います。歌にしても、カラオケバトルやのど自慢では集まらない異種の才能と番組常連の歌うま軍団を競わせるとか、そんなストーリーを探して欲しかったなと今となっては思います。

(番組データ)

今夜、誕生!音楽チャンプ テレビ朝日
3/4 (日) 21:58 ~ 23:05 (67分)
【MC】村上信五、黒木瞳
【審査員】
<カラオケ企画> 大本京、小柳ルミ子、菅井秀憲、田中隼人、森公美子
<ダンス企画> 蛯名健一、CRE8BOY秋元類、夏まゆみ、振付稼業air:man杉谷一隆
【ゲスト】 川田裕美、剛力彩芽
【挑戦者】
<カラオケ企画> 荒金理香、武田優一、濱住夏海 琴音(現チャンプ) 丸山純奈(デビューへの道)
<ダンス企画> 同志社香里高等学校ダンス部、山村国際高等学校ダンス部

(番組内容)

■徳島の合唱ガール・丸山純奈(中2)が5つの課題をクリアし、ついに配信デビュー!デビュー曲をスタジオで初披露する!作詩・作曲は昨年の日本レコード大賞で作曲賞を受賞した、番組審査員でもある杉山勝彦!スタジオ感動の熱唱を披露する!
■新潟県の女子高生、チャンプ・琴音(高1)が3度目の防衛戦に挑戦!今回も3人の強敵がその道を阻む!果たして、3連覇出来るのか!?
■さらに特別企画!高校生ダンスチャンプを開催!関東と関西の強豪校が激突!
■関東は…山村国際高等学校ダンス部!エンターテインメントを重視したダンスで近年、躍進中の実力校!今回、「ある昭和歌謡曲」を選曲し、「見ていて楽しく、元気になる」ダンスを披露!果たしてどんなダンスなのか!?
■関西は…同志社香里高等学校ダンス部!昨年の日本高校ダンス部選手権であの登美丘高校を抑えて優勝!その実力とは!?


バラエティ番組で笑われるタレントにも立派な理由がある

久しぶりに復活した「しくじり先生」ですが、今回2人目として登場したにしきのあきらさんは、今ではすっかり「スター」という言葉が似合うバラエティタレントだと思っている方が多いと思います。私の印象というと、今回の番組の中でも出てきましたがフジテレビのスター大運動会や水泳大会では必ず目立った活躍をする身体能力の高い歌い手さんというイメージが強いのですが、今回その芸能界での浮き沈みの様子を聞く中で、一般の人が憧れる芸能界で活躍したからこそ陥る苦悩というものを改めて感じました。

というのも、ある程度顔と名前が売れてしまった場合、活動が停滞したり仕事がなくなったりして本格的にお金に困った場合、普通の人なら外からの目を気にせずにアルバイトでも肉体労働でもやってお金を稼ぐことができますが、過去の栄光にとらわれてプライドがあるような場合や、お子さんが学校に通っているような場合、どこでそうした姿が見られるかわからないということがあります。本人だけならまだしも、子供さんがそうした行動を見咎められた人から口コミで話が広がり、いじめのネタとされない保証はありません。

そんな状況の中だから事業をやろうとか言われて騙されたり、お金のやり取りについてそちらでも騙される可能性があるわけですが、信頼していた知人にだまされて借金が増えたり横領されたりして、遂には家が差し押さえを食らうという最悪な状況の中で声がかかったのが日本テレビ「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」だったのです。

私自身もこの番組でのにしきのあきらさんのバラエティ番組にフィットした姿に大笑いした一人ですが、その裏にどういうことがあったのかというのが今回の番組を見てわかりました。一時期には芸能界のトップと呼ばれた人が、なぜ毎回ドッキリを仕掛けられ、ものの見事にどっきりに引っかかってもめげずにテレビに出てくるのかというのは、今回の番組で語られたような金銭面での苦労があり、自分を呼んでくれて仕事をくれる日本テレビのスタッフにいやな気持ちを持つどころか最悪の状態から救ってくれたことに感謝しているような感じでした。

実はこの「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」は今のロンドンブーツの番組のように親が子どもに見せたくない番組の常に上位をキープしていました。今思えば、かつての大スターであったにしきのあきらさんを笑いものにしているという事もその理由の一つだったのかも知れませんが、現実はまるで違うということが今回の番組を見た人には理解できるでしょう。

確かに無様に落とし穴に落ちたり、くだらないことで体を貼っているタレントを見て眉をしかめる方もいるかも知れませんが、そんなことは十分承知の上でもらった仕事をこなすことでしか生きていけない人もいるということを、多少はテレビを見る側の人も理解して、例えばそこから差別的な感情がお子さんに生まれるかも知れないと思ったら、番組を見終わった後に「タレントさんはああして人を笑わせることが仕事なんだよ」とフォローしてあげることが必要なように思います。

このような、テレビに出ることでしか稼げない事情のある人にとっては、たとえ多くの人から下品だと思われようが気持ち悪いと罵られようが、出演するしかないと腹をくくっていたり、自分がテレビに出ることで多くの人が笑ってくれることに仕事としてのやりがいを感じている場合があるのです。しかし残酷にも、にしきのさんのようにテレビに出て人気をもりかえすことができるケースとは違い、テレビ視聴者の訴えからテレビ出演そのものを降ろされてしまう人たちもいます。

それはドリフターズの「8時だョ!全員集合」(TBS)のコントの中で一瞬出てきて笑いを誘い、子どもたちにも人気があったものの大人の事情で番組を降ろされてしまった「Mr.ポン」や、全日本女子プロレスと一緒に興行をしていながら決してテレビでの放送がされなかった「小人プロレス(後にミゼットプロレスと改名)」の例があります。今でこそNHK Eテレの「バリバラ」で体に障がいを持つお笑い芸人という人が登場したり、番組の中の企画として本格的なバラエティが放送されていますが、この場合は障がい者に関する問題を継続して放送してきたEテレだからこそ許される部分があり、他の地上波チャンネルでは昔も今も誰かが声を挙げたら即テレビに出られなくなる状況は終わっていないと思われます。

今後も地上波では無理かも知れませんが、CSやネット配信の番組でなら地上波では放送が難しいようなケースでも番組として成立する可能性は残ります。今の日本には潜在的にたくさんのテレビに出たい人がいて、たとえそれがいじられて笑われるような立場であってもそれで自分の存在が知られるならテレビに出たいと思う人もいるでしょう。そんな人の中で、とにかく面白ければスターへの道が開ける、かつての「全日本歌謡選手権」のような番組を作ったらどうでしょうか。

今回のにしきのさんのような芸能界を干されて困窮極まった元人気者と、今までは人前に出ることさえ不謹慎だと言われてきたような体に障がいを持つ人などが同じ舞台で明日のスターを夢見て「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」のような、誰がどれだけ笑わせるかをチャレンジする番組が実現できれば、人によっては不謹慎と写っても、全てが平等に審査されるなら、決して一部の人から糾弾されるような番組にはならないように思えるのですが。

(番組データ)

しくじり先生 俺みたいになるな!! 2時間スペシャル テレビ朝日
1/28 (日) 18:57 ~ 20:54 (117分)
【しくじり先生】村主章枝・錦野旦
【担任】若林正恭(オードリー)
【レギュラー生徒】吉村崇(平成ノブシコブシ)
【生徒】あき竹城・伊集院光・岡田結実・澤部佑(ハライチ)・杉山愛・関根勤・高山一実(乃木坂46)・辺見マリ・真野恵里菜・横山だいすけ・遼河はるひ

(番組内容)

過去に大きな失敗を体験した“しくじり先生”が生徒たちにしくじった経験を教える反面教師バラエティ番組「しくじり先生」!今回はスター錦野旦先生と元フィギュアスケート選手の村主章枝先生による熱血授業を開講します!次々飛び出す驚愕エピソードに教室が震撼!そして授業の最後には先生たちによる熱いメッセージで教室は感動の嵐に!お楽しみに!

・村主章枝…「引き際を誤って家族に迷惑をかけないための授業」 オリンピックに2度出場し、その卓越した表現力から“氷上のアクトレス”と評された元フィギュアスケート選手の村主章枝が緊急帰国!“トリノ五輪後に引退しなかった本当の理由”を激白!誰もが冷静な判断を下すことが難しい“引き際”について真摯に向き合い、長く現役を続けた村主先生だからこそ悟ることのできた人生の教訓を伝えます!

・錦野旦…「安易に人を信用して地位も名誉も財産も失わないための授業」 “スター”の愛称で世代を超えて愛され続ける錦野旦が登壇!デビュー1年目にして日本レコード大賞「最優秀新人賞」受賞、さらに紅白歌合戦にも出場。スター街道を歩んできた錦野先生は自身のある性格が原因で、大きなしくじりを犯し、地位も名誉も財産も失うことに。「本当にしくじった!」と反省するスター錦野先生が転落人生を赤裸々に激白します!


地上波TVバラエティへの文句を電波にのせる千原せいじのしたたかさ

漫才コンビ「千鳥」の二人の冠番組ということですが、千鳥はスタジオのみの出演で、VTRを好きな所で止める権限があるという「笑神様は突然に」(日本テレビ)のシステムをそのまま使っています。もっとも「笑神様は突然に」には島シリーズということで千鳥も出演しているのでネット局の垣根を超えて仁義は切ってあるのかなという気もしますが、ツッコミの鋭い千鳥なので、全く違和感を感じることはありません。

また、VTRの内容もロケで決まった場所を訪れたタレントさんがアポ無しで地元食堂に入り、相席をお願いした後でその人のお宅におじゃまするという、何やら「鶴瓶の家族に乾杯」(NHK総合)や「家、ついて行ってイイですか」(テレビ東京)の2番組を合わせたような作りになっています。ただ、この種の番組の面白さを決めるのは出演するタレントさんの技量や、VTRにツッコミを入れる側の力量があれば二番煎じでも十分面白い番組として成立するでしょう。今後、この組合せ以外にもこの種の番組が量産される予感がしなくもありません。

今回の「相席食堂」が面白かったのが、2ヶ所訪れたゲストがどちらもキャラが立っていて、菊池桃子さんは意外とロケに強いということがわかったということと、この種の田舎まわりに強い千原せいじさんの安定した面白さでした。
ちなみに、吉本興業が私の住む静岡県沼津市に専用の劇場を持っている関係もあって、ネットで言うと日本テレビ系の「静岡第一テレビ」の夕方のワイドショーに千原せいじさんが地元の名物キャスターとコンビを組んで静岡県内を回るコーナーを行なっているのですが、口は悪いわ下品だわ、おまけに企業訪問をして少しでもお金の匂いを嗅ぎ分けると、自分ならこうすると言い放ったり、自分のところで商売にしたいなどと言ったりと、その味を存分に発揮して笑いを誘っています。

今回千原せいじさんは長崎県五島列島を訪れようとして、飛行機が機材故障で飛ばず、高速船も高波で運休の中、8時間遅れで島に入り、そのまま飲み屋街をはしごするのですが、そこで出会ったお店の方とお客さんに教えられたのが五島列島の酒飲みの風習が、人にお酒をすすめる前に杯を空にして相手にも杯を空にしてもらい、延々と酒をすすめ続けるという大変恐ろしいものなのですが、せいじさんが入った居酒屋さんでは焼酎のロックでそれをやっていたのですから相当なものです。

ここで、その風習をせいじさんもやるのかと思って見ていたら、これが関西ローカルの強みなのか、せいじさんは自分がなぜそのお客さんやお店の方と一緒に杯を空にしないのかを説明し始めました。賢明な方ならもうおわかりでしょうが、テレビでタレントが「一気飲み」を奨励するような飲み方をするとテレビを見ている人が真似をする恐れがあるのでテレビ内での一気飲みというのは自粛されているということなのです。

もしこれがドラマで、登場人物を酔わせて何かするという設定であれば違うのかも知れませんが、あくまでタレントが飲むという点についてはローカル放送であってもダメなラインはしっかり線引きがされているということになるのでしょう。ただ、昔のテレビを知っている人なら、昨年LGBTに対する配慮に欠けるとフジテレビが謝罪するという騒ぎになったとんねるずの曲で、あの秋元康さんがプロデュースして作詞もした「一気!」という曲です。当時は若者の飲み会の熱気をそのまま伝える曲として数々の賞も受賞したのですが、さすがに今はこの曲を地上波で歌うことは難しいでしょう。

この一連の流れの中で千鳥はVTRを止めることもなくそのまま流していましたが、東京で出ないのならここでもう一笑い千鳥からもコメントが欲しかったと思います。というのも、現在アマゾンプライム会員限定でネット配信されている「ドキュメンタル シーズン4」において、地上波では絶対に放送できないくらいの醜態を晒してまで笑いを取っているのを先日見たばかりだったので(^^;)、ついそんな事も考えてしまいました。ただ、ネット配信の「醜態」については、見る人が見ると全く今の千鳥を許せなくなると思いますので、見るにも覚悟が必要だと思いますが。

今回、本放送からは遅れたものの、偶然深夜の静岡で私は見ることができました。番組ホームページを見たところ今回の番組の内容について記載はあったものの、次回への言及がなかったのでもしかしたら特番扱いなのかとも思いますが、次回があるとしたらぜひロケに出掛けるタレントさんを厳選していただき、ローカル番組の色として構成は有名な番組をなぞるような形であっても、その内容で千鳥の個性を出して欲しいと思います。

(番組データ)

相席食堂~ついて行ったらチョメチョメじゃった 朝日放送(関西ローカル)
2018/01/04 23:20 ~ 2018/01/04 00:15 (55分)
出演者
千鳥(大悟・ノブ)
VTR出演
菊池桃子
千原せいじ

(番組内容)

芸能人が田舎の食堂に突然現れ、地元の人にいきなり相席をお願いしたら、どんなドラマが生まれるのか?さらに、相席した人について行ったら、どんなチョメチョメが待っているのか!?そんな行き当たりばったりの展開を“田舎出身&ロケマスター芸人”の千鳥がツッコミながら見守る“芸能人と地元民のガチ交流バラエティー”!

「ウチの島にも食堂が一軒だけあったからわかるけど、田舎の食堂は、毎日、同じ人が同じ時間に来るだけで、何もハプニングは起きない」と、大悟が“田舎あるある”を披露。「そこに芸能人が行ったら、どうなるかじゃ」と、ノブは未知数の展開に期待を込める。そんな2人の目の前にあるのが、VTRをいったん止めることができる“待てぃボタン”。VTR中に気になる箇所があれば、どんどんボタンを押して止め、自由にツッコんでいく。

今回とある田舎の食堂に向かう芸能人は、何と菊池桃子、そして千原せいじ。まさかの菊池桃子登場にいきなり仰天の千鳥。早くも“待てぃボタン”を押す。菊池は食堂で相席した女性に、「20万人以上が訪れる」という地元の一大イベントがあるという話を聞く。果たしてそのイベントとは!?

一方、せいじは数々のトラブルによって行く手を阻まれる…「この人にブッキングするからこういうトラブルになるんよ!」と大悟が声を荒げるが、せいじは悪態をつきながらも持ち前の強運で何とか乗り切り、地元の漁師とふれあう。


「気」の世界を無いとするテレビの検証は正しいのか?

かつて、その名も「ガチンコ」というテレビ番組(TBS制作)がありましたが、あまりにあからさまな番組タイトルと違う「ヤラセ」で問題になったという、今となっては笑い話にもならない状況の中でテレビは視聴率を求めてゴールデンのバラエティ番組を作っていた時代もあったのですが、さすがにネットで自由に声を挙げることができるようになったこともあり、節目はさすがに変わっているのではないかと今までは思っていました。

そもそも、この「ガチンコ」という言葉は大相撲やプロレスの中で言われていた言葉で、「真剣勝負」の事を差し、テレビバラエティでは略されて「ガチ」という風にも使われることがあります。元々プロレスは作られたショーではないか? という疑問を持つ人もいたことは事実ですし、最初は週刊ポストだったと思いますが、大相撲の八百長疑惑を報じる際にその反対の行動を取る力士の事を「ガチンコ力士」という風に使っていたのを覚えています。

その後、大相撲では疑惑では済まない形で告発がなされ、多くの力士が処分されたのですが、またぞろ「八百長相撲」をやっているのではないか? というきな臭い話が週刊誌を中心に報じられるようになりました。テレビをずっと見ている立場として面白いと思うのが、いつも「週刊文春」「週刊新潮」のトップで芸能人の不倫についてのスクープが出た時には必ずといっていいほどその週刊誌提供の動画とともに同じスキャンダルを報道するのに、本日のワイドショーは週刊誌でトップ見立しになっていた大相撲の八百長報道について全く触れることなく、相撲に触れても八百長の「八」の字にも踏み込めない始末です。テレビとして大相撲の八百長疑惑に突っ込んでいけないなら、他のもはやどうでもいい個人攻撃をしている様は、テレビの無力さを現しているに過ぎないのではと思う今日このごろですが、今回は別の面から「ガチンコ」にチャレンジしたバラエティーについて報告します。

まず、何よりも素晴しいことは、「本当なのか?」と疑われた上での取材依頼にも関わらず、きちんと取材に応じて館長自らがテレビに出て演武を行なってくれた群馬県太田市の村松気功太田道場の村松館長のご英断です。テレビの裏側がどうなっているかということは見ている側なので私には全てわかるわけではありませんが、明らかに自分達のやっている事に疑いを向けた中での取材であるのに、最後まできちんとその内容を紹介しつつ出演したということは、他の道場や流派と違って信頼に足るべきものがあると思います。

幸いなことにその道場はホームページを持っていて、道場としての告知とともに様々なグッズを売っているのも目に付きます。意地の悪い方はそれが胡散臭く感じるかも知れませんが、何の実体もない「ビットコイン」を売る仲介をして大儲けしている人もいる中で、こうした「気」のためのグッズとしてはそこまで胡散臭くないのではないかと思うのですが、気になる方は以下のリンクからぜひその内容を確認してみて下さい。

http://www.muramatsuqigong.jp/

番組ではこの村松道場にドランクドラゴンの鈴木さんが乗り込み、体に触れないで吹っ飛ぶような体験がしたいということで、とにかく「ヤラセ」なく館長の「気」をあびたのですが、残念ながら全く鈴木さんは反応しませんでした。

恐らく番組MCである有吉さんとマツコさんがいるために番組スタッフも安易に「お約束」である道場のお弟子さんと同じように吹っ飛ぶような演技をせず、MCの二人も取材に応じてくれた館長さんをかばうような苦笑いを浮かべていたのですが、そもそもこうした大きなテーマをテレビで検証するような場合は、専門の番組を作って中国の気功から日本の合気道まで様々なものについて解説しながらやっていかないといけないくらいの複雑な題材であると私には思えます。

番組では実際に演武を行なう前に5分間の「気を送る時間」を設けていましたが、これは催眠術と同じで、いかに相手の精神力を乱すことができるかという事が鍵になっているような気がします。今回の場合は絶対に動かないことを信念とするかのごとく鈴木さんが道場に乗り込んでいるのですから、「気」というものが存在しないという結論になりましたが、実は「気」だけでふっ飛ぶような事はそもそもテレビのバラエティ番組がその瞬間を何回も捉えているのです。

具体的には本当に「ガチ」なドッキリ番組において、本当にターゲットの気が抜けていたり、別の事に意識が集中している中で思わぬ所から仕掛け人が出現するような場合、人によっては決して仕掛け人が体に触れていないのにびっくりしてふっ飛ぶという場面を私たちは年末年始の特番で色々見たのではないでしょうか。

例えば、毎年恒例の日本テレビのドッキリ番組で、ターゲットの自局アナウンサーを待たせておくデスクの中に仕掛け人である上司のアナウンサーを忍ばせて、デスクを壊しながら正面に大声を出しながら登場する場面は、本当にその声と音だけで、ターゲットの新人あるいは入局の浅いアナウンサーは座っていた椅子からころげ落ちるように崩れ去りました。さらに面白いのは、もう一つ後に出てくる仕掛け人です。

いつもはそうしてびっくりさせた後で仕掛け人がアナウンス原稿を読ませるだけなのですが、今年はテレビ朝日の「報道ステーション」を卒業して他局にも出られるようになった古舘伊知郎さんが登場したのです。

若手アナウンサーにとっては古舘アナは実際に目にすることも少ない存在ということで、本当に古舘氏がすぐ目の前にいるということを理解した後でヘナヘナとその場にうずくまってしまったアナウンサーもいたのですが、これこそその人物の持つ「オーラ」や「気」だけで相手にダメージを与えるということの一つの例です。

また、ロケでめったにテレビカメラが入って来ないような所に有名なタレントが出向き、それが本人であるとわかったとたんに一気にその場にしゃがみこんだりその場から無意識に遠のいたりすることがあることも、私たちはテレビバラエティを数多く見る中で出てくるお馴染みの場面であるとわかるでしょう。そうした頭がパニックになってしまった人に、例えば「私は気功の心得がある」とでも言ってその場に立たせた人に気合いとともに空の拳を勢いよく繰り出したら、恐らく演武で見たような触れずに吹っ飛ぶ様をヤラセ無しで見ることができるでしょう。ぜひ自分の事を見て正常でいられなくなるようなファンを持っているタレントさんには試して欲しいものです。

人間の精神世界というものはここまで語ってもなおわけのわからないものなので、ぜひこうした「気」の世界についてヤラセ無しでとことん検証する番組があればいいのにと思います。今回の番組内容について、やっぱりヤラセなんだと思う人も多くいるとは思いますが、個人的には今回の検証を機に、さらに深く掘り下げる別番組が出て来ないかなと期待しています。

(番組データ)

マツコ&有吉 かりそめ天国 テレビ朝日
2018/01/17 23:15 ~ 2018/01/18 00:15 (60分)
【MC】マツコ・デラックス、有吉弘行
【進行】久保田直子(テレビ朝日アナウンサー)
【出演】ガンバレルーヤ、白鳥久美子(たんぽぽ)、鈴木拓(ドランクドラゴン)、土屋圭市

(番組内容)

◇視聴者からのお耳に入れたい話は…(1)どんなワードを入れればいいかわからない!ネット検索が苦手です(2)甘納豆ブームはいつ来るのでしょうか?(3)回転寿司店のボックス席の上座下座ってどっち?◇欲望!!(1)ステーキ激戦区・六本木で最高のステーキを食べまくる!(2)気功の達人に思いっきり吹き飛ばされたい!(3)ドリフトキング土屋圭市のドライブテクを助手席で体感したい!
視聴者から寄せられた『二人のお耳に入れたい話』や、様々なジャンルの有識者たちから届けられた各業界の幸せニュース、視聴者の皆さんの「こんなことやってみたい、見てみたい!」という“欲望”を叶えるVTRをもとに、マツコ・デラックスと有吉弘行がトークするバラエティ番組!進行は久保田直子アナウンサー。今週は二人からどんな「お言葉」が生まれるのでしょう?お楽しみに!


時代は「サバイバル」を欲しているか

☆例年テレビ朝日の恒例になりつつある「無人島0円生活」ですが、今年は何といっても火曜日の報道ステーション終わりのバラエティ枠としてゴールデンに昇格した「中居正広のミになる図書館」の代わりの新番組「陸海空 地球征服するなんて」の中の「部族アース」のテレ朝社員のナスDこと友寄隆英氏をメインにしたコーナーが大ブレークしたことで、今回のよゐこさんを含めたタレントの存在感が全て食われてしまった印象があります。

そもそもは無人島0円生活という企画をスタートさせるにあたり、タレントに危険がないのかシミュレーションする必要があり(番組以外にもお仕事のあるタレントに無茶をさせて怪我をさせたら責任問題になるので)、担当の友寄隆英氏が無人島生活でカメラが回っていない中で無人島生活し、モリを使って素潜りで漁をすることもよゐこの濱口優さんと一緒に行ないつつ、ぎりぎりのところで臨場感が出るロケをサポートする裏方であり前面に出てくることはありませんでした。

その後、タレントにU字工事を起用してアマゾンに潜入するロケではタレントのU字工事さんと分かれて多くの部族を取材しようと潜入いしていく中で、本来は入れ墨用に使う果実の液を顔を含む体にすり込んでしまい(現地の人に騙されたという事ですが、今のブレイクを考えると、もしかしたら確信犯かとも疑ってしまいます)現地の人も驚くぐらい人間離れした黒い人になってしまった友寄氏は「ナスD(ディレクター)」と番組内で呼ばれることで人気が爆発しました。テレビ朝日の社員ということで広くは有名にはなりませんでしたが、個人的には十分2017年に印象に残った方の一人だと思っています。

今回改めて黒の染料が落ちた友寄氏の無人島での生活を見ましたが、中味を確かめもせず飲んだり食べたりする行動は相変わらずでしたが、2泊3日の生活を行なう中でよゐこさんが自分達に何が求められているかを感じた上で、まずは魚獲り優先で寝床は持って行ったブルーシートで簡易的に作っただけなのに対し、友寄氏はかなり本格的な住居を建てるための下草刈りから始めました。

何しろ、持って行くものに制限を設けたものの中で、ナタ・ノコギリ・麻紐・乾いた竹(火付け用)のような工具を優先し、よゐこさんのように調味料などは全く持っていかないのもすごいと思いましたが、竹や流木を利用して、さらに極力自然のものを使おうとせっかく持って来た麻紐を使わずにツルを利用して木材を苦戦しながら固定し、アマゾンの部族が作るような床がありベッドもある屋根付きの(屋根は草を束ねて使用)家を自作してしまったのには驚きました。

実は友寄氏の2泊3日の生活は最初の一日を紹介したのみで対決も勝ちになってしまったため、残りの2日間は年明けに改めて放送することになったので、無人島から帰る時に自然に還すためにまた壊したのかどうかはわかりませんが、少なくとも壊すのが惜しくなるほどの出来ばえでした。

私自身、一人でこんな家を作る人を見たこともありませんし、私自身が小学生の頃に無中になって読んだ「冒険手帳」の中でしか見たことがない気もしました(写真の本は後日古本屋さんで見付けたオリジナルの「冒険手帳」です)。

この本の中には山や海での狩りの仕方や調理の仕方、食べられる昆虫など当時もネタとしか思えないサバイバル術が載っていたのですが、今回の無人島での友寄氏のウンチクを伴った家作りや漁について考えてみると、この「冒険手帳」の面白さとの共通性を感じるのです。この本の初版は昭和47年と今から45年前のものですが、すでにこの頃からこんな本が必要だと思われるほど、当時の子供たちには冒険心が欠けていると言われていたのだろうと思います。
今の世の中は、スマホを一日手離すだけでも生きていけないような人が多い中で、ライターも使わずに木の摩擦で火を起こしたり、生活に必要な道具を全て作ってしまうという友寄氏のバイタリティは、単に面白いというだけでなく自分達ができないことでも簡単にやれてしまう憧れでもあるような気がします。

今年はまだそうした友寄氏の片鱗は全て出たわけではないと思うので、今後テレビ朝日の社員という立場でどのくらいテレビに出るのかはわかりませんが、こうなったら1ヶ月単位でのサバイバル生活を追う様子を追いかけるような事をやれば、さらに見る人は増えるのではないかと思います。

最後に、途中友寄氏はテレビ朝日のコンプライアンス部門から生き物を生で食べることについてクレームが付いたと言いつつ食べていましたが、今回の番組では無人島で承諾を得ているといっても一つだけ見過ごせない事がありました。それが、調理をする際に火を起こすかまどを作る時に、直に薪を置いて火を起こしていた事です。昔の飯盒炊爨では川原に番組のような石をかためてかまどを作ってごはんを炊いてカレーを作って食べたりしたものですが、今ではキャンプOKなところでも直火で焚き火をすることは、片付けをしないで帰ってしまう人がいることで問題になり、多くのキャンプ場では芝生養生のためでもあるので直火が禁止されている所がほんんどになっています。

今では焚き火台を利用して地面に焚き火の跡が残らないように片付けて帰ることが当り前になっていると思うので、今回のような野外調理の様子をテレビのゴールデンで流してしまうと、テレビと同じことをやろうと思って実行した人が、テレビに映らない片付けの様子までは真似ずに焚き火の後をそのままにして帰ったり、ゴミを残して帰ってしまうなどするケースも出てくるかも知れず、それこそコンプライアンス的にはまずいのではないかと思います。そういう観点からすると、遊びに行って家を建てても、帰りにはきちんと壊して自然のままの状態に戻すかどうかという興味もあるので、来年の友寄氏の無人島生活の続きを紹介する番組も見てその点も確かめたいなと思っています。

(番組データ)

よゐこの無人島0円生活2017 元祖無人島芸人・よゐこvs破天荒のナスD テレビ朝日
2017/12/29 18:30 ~ 2017/12/29 23:10 (280分)
よゐこ ナスD(テレビ朝日ディレクター)

(番組内容)

よゐこと破天荒のナスDが、真冬の無人島で2泊3日生活。「どちらが無人島で生き残れるか」スペシャリストと審査員の判定で決定します。奇跡のハプニング続々…。

風に吹かれ、雨に濡れる無人島生活も15年目。よゐこ濱口が“最近ナスDは調子に乗っている”と、対戦相手に指名した宿命の対決!よゐこと10年以上一緒に番組をやってきたナスD。たった1人で挑むナスDだが、限界までやってやると上陸から衝撃行動に…。よゐこはスタートからハプニング、上陸から大混乱へ…。いったいどうなる真冬の無人島対決。


地方局発の人気バラエティが一極集中を防ぐ

テレビ放送がネットで常時同時放送されるという話も出る中、全国にある地方テレビ局はどのように生き残っていくのか? という問題の一つの答えが、北海道のHTBが全国展開した「水曜どうでしょう」を始めとするTEAM NACSのメンバーを全面に押し出し、各北海道内の民放が独自番組を自前で作るというものです。

そうした全国区になる地方発の人気バラエティ番組が生まれるというのは、少し前なら考えもできなかったことで、当時は夕方の情報番組こそ地方各局が独自に作っていたものの、バラエティ番組を地方局が制作する場合、普通は東京で活躍する全国的にも認知度のあるタレントを呼んできて局の女性アナウンサーと組ませて地元の旅番組をするくらいがせいぜいだったのが、当時は全く東京へ進出するようなことも考えられなかった若手の舞台俳優を深夜番組の主役に抜擢し、出演者やスタッフも楽しんでいるような番組を作ったことで、それが他の地方にも受けたのです。

その番組を全国のテレビ局に買ってもらったり、さらに北海道で放送している内容とかなりずれて放送されている地域に向けて、かなり早いうちから有料のネット配信を行ない、その売上げは上々だったということです。さらに遅れて来た番組ファンのために、過去の番組をそのままDVDにしたものを、通常の流通で扱わず、コンビニ経由で事前予約をしてから売り出したりして、かなりの確実な儲けを出したのではないかと推測します。

少なくともこうした番組を地元民が見ているうちは、いくら東京の放送局がネットで見られることになったとしても、安易に視聴者はネットに流れないでしょう。改めて時代の変化の中、地域性ということだけでなく、東京の放送局とは違うアプローチで人気番組を作ることが地方局生き残りのためには大切ではないかと思います。

しかし、地方の他局が北海道の手法をそのまま真似ることはできませんし、番組を制作しても見て面白い番組でなければ意味がありません。ご当地だけで笑えるネタのみでは他の地域に番組を売ることはできません。そんな中、静岡朝日テレビ制作の「ピエール瀧のしょんないTV」も「水曜どうでしょう」までは行かないものの、今では全国のテレビで多少見られるようになるほど注目を集めています。ネット局は後追いになるため、リアルタイムに見られるのは静岡県のみというローカルな話題だということもあるので、まずは番組のメインである「ピエール瀧」さんとは一体何者か? というところから説明していきたいと思います。

今ではNHKの朝ドラやビートたけしさんの映画などでも主要な役で出演するなど、面白いだけでなくシリアスな芝居もできる役者というイメージが付いているピエール瀧さんですが、元々はメジャーデビューして様々な音楽番組にも出演している「電気グルーヴ」の結成当時からのメンバーとして、そのステージパフォーマンスには定評がありました。今では星野源さんや朝ドラで瀧さんと共演もしていた浜野謙太さんなど、ミュージシャンであり俳優という方がかなり活躍しているという事があるのですが、ピエール瀧さんの場合はそうした方とは決定的に違う部分があります。

というのも静岡県内で過ごした高校時代から付き合いがあり、一緒にバンド活動を行なっていた石野卓球さんがそれまでやっていた地元の友人を中心に集まったインディーズバンドの活動を止めて新たに「電気グルーヴ」を作る時に、唯一誘ったのが当時楽器ができなかった瀧さんであったのだそうです。電気グルーヴの音は基本的にコンピューターソフトによる打ち込み(自動演奏)であることもあり、とにかくステージではじけることのできるパワーを持った瀧さんに白羽の矢を立てたのでしょう。

電気グルーヴはあれよあれよという間に人気が出てメジャーデビューにこぎつけ、さらにその面白さをライブを見たことのない多くの人達に知らしめたのが、石野卓球さんとピエール瀧さんが二人でパーソナリティを務めたニッポン放送のオールナイトニッポンに起用されたことでした。当初はユーミンの後の土曜の2部だったものの当時のとんねるずから引き継ぐ形で火曜1部に昇格し、今でもその面白さについて語られる事も多くなっています。

ですから、ピエール瀧さんの面白さというのは、学生時代からのセンスももちろんあるとは思いますが、電気グルーヴとしてのライブやラジオでの喋りを通して鍛えられた一代限りの叩き上げの芸と言えないこともありません。さらに、彼らの活動が全国的に面白いと評価されたことについて、いわゆるお笑いの本場ということでもない単なる田舎の学校生活や友達同士のバカ話をラジオで喋っていても、受けるものは受けるのだという想いをラジオで人気があった頃から私は持っていました。つまり、日本全国どこで生まれて育ったとしても面白い人は面白いですし、そういう人材を地域で育てることができれば、静岡だろうと北海道だろうと全国区へ出しても十分通用するものが作れるのではないかということです。

しばらくは東京を中心にして電気グルーヴとして活動していたピエール瀧さんでしたが、オールナイトニッポン終了後には私的にはその動向は音楽番組での演奏くらいでしかその活動を確認できなかったのですが、唐突にオールナイトニッポンの時に構成をしていた静岡時代の仲間である椎名基樹さんをスタッフに加えて2010年10月から放送が開始されたのが「ピエール瀧のしょんないTV」だったというわけです。

オールナイトニッポンは収録でなく生でやられていましたし、ライブ自体は生ですので、そうした状況で鍛えられていることもあり、特にピエール瀧さんには共演者いじりのうまさを感じることが多いのですが、この番組を支えてきたもう一つの個性が静岡朝日テレビアナウンサーの広瀬麻知子さんです。

当時彼女は入社したての新人アナウンサーで、テレビ局としては同期入社で後に東京へ仕事の場を移した(セント・フォース)牧野結美アナウンサーとどちらをピエール瀧さんと番組をやるアシスタントとして起用するか二択の中、局側が広瀬さんを選んだというのが彼女らの人生の転機になったような感じが今ではします。彼女は千葉県の出身で静岡県とは何のつながりもありませんが、きっちりその場を仕切るような感じではなく、収録中もぼーっとしていて瀧さんにつっこまれるほどおっとりしている部分と、いざ何かをやらされるような状況になっても本気で取り組むような明るさと真面目さが同居していて、静岡県人的なパーソナリティを持っているのでは? と思える不思議なアナウンサーです。そんな広瀬さんはピエール瀧さんにとっては扱いやすく、番組のマスコット的な存在として二人のコンビがうまく回転していく中、番組自体の人気も出てきたように思います。

そうして「しょんないTV」が地方の放送局に売れて各地て見られるようになる中、広瀬アナウンサーは地元の期待を背負って単身でテレビ朝日の「アメトーーク!」に出演したこともありましたが、やはりというかその魅力をアメトーーク!の中では発揮することはできませんでした。あくまでピエール瀧さんと一緒に番組をやる中で欠くことのできない存在であるということ認識を新たにされることで、彼女自身もその後身の丈をわきまえて努力をし、番組自体がマンネリに陥ることにもならずにここまで続いてきています。

番組の内容はたまには静岡県外へ出ることもありますが、ほとんどが静岡県内でロケをして地元の人たちとからむという、あまり全国的な基準で見ても情報的には得られないのではないかとも思うのですが、ピエール瀧さん自体が全国区で顔が売れているということと、いいコンビの広瀬アナやゲスト、ロケ先で出会った人をいじって笑いを導くことがうまいということと、まだ知名度はないものの面白い出演者を選ぶスタッフの力もあるのではないかと思います。思い出したように出てくる元・電気グルーヴメンバーの砂原良徳さんや、元々は地元が静岡県ということで出場していたピン芸人のハリウッドザコシショウも何回か出場しているうちにすっかりその魅力が引き出され、今では準レギュラー扱いになるなど恐らく番組のファンなら彼がR-1グランプリで優勝する前からその面白さに気付いていたと思われます。

今回は年末特番ということでこの一年の放送を紹介しながら振り返るという内容なので、あえてこの内容に感想を語ることもないのですが(^^;)、番組が始まってから丸7年というのですからよく続いていると思いますし、今後ピエール瀧さんがテレビで露出度を増やせば、さらに面白い展開も出てくるように思います。番組の公式ページによると、静岡県を除く全国の14局でも見ることができているようです。元々全国進出の戦略を練って作られた番組ではないと思うので、「水曜どうでしょう」のように爆発的な人気になることはないとは思いますが、単に地元愛にあふれた一人よがりの番組ではなく、出演者やスタッフが面白がりながらやっている番組として、見る機会がありましたらとりあえず最後まで見ていただきたい番組であると思っています。

今回はあえて私の住む静岡県での事例を紹介させていただきましたが、全国の他の地方のテレビ局も、もっと地元の面白い人や、地元から巣立って全国で活躍している人を呼び戻す形で東京にはない新たな番組作りに挑戦していただきたいと思います。特に地方からテレビを見ていると、どうしても地方民にとってはわからない東京周辺の範囲の狭いネタで盛り上がっているだけのバラエティを購入して放送している地方局もあるので(実際行こうと思っても放送している地方によってはそのお店に簡単には行けませんし、放送時期がずれているとテレビに出ていた特典が終了していることもしょっちゅうです)、それならその空いた時間に自社制作の番組をぶつけてもっとテレビ局が主導して地元を盛り上げるような事があってもいいのではないかと思うのです。特に東京に行くのがなかなか難しいような地域の場合は、多くのチャンスに恵れていると思うのですが。

(番組データ)

ピエール瀧のしょんないTV 年末1時間SP今年のしょんない瞬間一挙大公開スペシャル 静岡朝日テレビ
12/22 (金) 0:20 ~ 1:15 (55分)
【出演】ピエール瀧、広瀬麻知子(あさひテレビアナウンサー)

(番組内容)

しょんないことに真実がある!「くだらないけどどこか許せる」「取るに足らないけど、どこか愛嬌があって憎めない」そんな“愛すべきくだらなさ”『しょんない』を追求する番組です。

なんだかんだ色々あった、この1年間を総ざらい!今年も大胆に「ピエール瀧のしょんないTV」1時間スペシャルを放送しちゃいます。気になる「瞬間最高占拠率ランキング」や「瀧さんの○○映像」、「広瀬アナの2017年」などなど、貴重な映像を一挙大公開!! 果たして、あなたが選ぶ”しょんない名場面”はノミネートされているのか…さぁ皆さん、これを見て、ゆる~く年の瀬を迎えちゃおう!


今年は「ブリリアン」が地獄を見た‥‥

2017年にはこの番組の後に黒柳徹子さんの自伝ドラマ「トットちゃん」が放送されている中、テレビ創成期から今までのテレビに関わっているテレビ界の伝説とも言えない事もない黒柳徹子さんの存在は誰もかなわないところがあります。そんな黒柳さんの司会をする「徹子の部屋」に、まだ自分たちの足元もおぼつかないと思われる、その年にブレイクした芸人を迎えて、その「芸」を披露するという触れ込みで紹介し話を聞くのが毎年のパターンなのですが、そこは芸人にとっては大変な試練の場としても多くの人から認識されるようになってきました。これは同じテレビ朝日系の深夜番組「アメトーーク!」によって黒柳徹子さんが「芸人殺し」だという禁断の事実を公表したことにはじまります。

元々、黒柳さんは自分のタレントとしての才能だけではなく、新たなお笑いの才能を見付け出すことにおいてもその才能を発揮してきました。有名な話として、タモリさんがまだ全くの素人だった頃、ジャズピアニストの山下洋輔さんのツアー先の打ち上げで面白芸を披露し、そのままメンバーと一緒に上京して山下さんの行き付けのバーでその芸を披露していたのを漫画家の赤塚不二夫さんが面白がり、自分の出る予定のテレビ番組にいきなり出してその宴会芸をさせたことがあったのだそうです。放送されたそのテレビを見ていた黒柳さんがすぐに関係者に電話で連絡を取ったという話があり、ある意味タモリさんの芸をテレビで見て一番早く評価した人間として一部では認知されているということもあります。

そんな過去があるからだと思うのですが、その年に売れた芸人を自分の番組に呼んでネタをしてもらうのですが、とにかくお笑いに関する勘が鋭いので、多少のノリで面白いことをやってもまるで笑わず、それまで受けたネタを一通りやり尽くした芸人たちに向かって、改めて「面白い事をやって」とお願いするという、地獄のネタ披露が番組内で毎年繰り広げられる状況が続いています。

そうした状況をネタにしたのが先に挙げた「アメトーーク!」で、小島よしおさんが徹子の部屋の収録をする直前に、どうすれば地獄から逃れられるかという風な相談からシミュレーションが繰り広げられたのです。そのシミュレーションの中で、小島よしおさんが、黒柳徹子さんがどのゲストに話を聞くために作った(恐らくスタッフが事前に調べた内容なのではないかと個人的には思います)メモがぞんざいにテーブルの上に何枚も広げられているので、自然な感じでテーブルの上の飲み物をこぼしてしまい、インタビューのためのメモを台無しにすれば黒柳さんはメモがないと番組は進行できないだろうからネタの無茶振りもなくなるのではないかと考えたものの、実際の出演時にはメモを台無しにはできませんでした(^^;)。

しかし、誰かがその後干されることを覚悟して黒柳さんのメモを破ったり食べてしまったりしたらどうなるのか? という期待は大変無責任な発言とはわかっていてもテレビを見ている側としてはそこでアタフタする黒柳さんが見たいという気持ちもあります。

さて、今年の生贄となったのは2017年の1月1日放送の「おもしろ荘」からブレイクした「ブルゾンちえみwithB」でした。そのネタは案外黒柳さんのお気に召したようだということと、意外とブルゾンちえみさんがしっかりとインタビューに答えていたのでそんなに波風も立たずに番組は進んだのですが、さすが芸人殺しと陰口を叩かれる黒柳さんだけあって、「withB」としてブルゾンちえみさんとセットで出ている男性二人が「ブリリアン」というお笑いコンビであることを知ると、テレビを見ている人のほとんどがネタをやらせない方がいいと思いながら見ているのに、「ネタをやって見せて」という禁断の一言を口にしてしまったのでした。

私自身はブリリアンが今回披露したネタは「しゃべくり007」(日本テレビ)の中のコーナーでやって思いっ切りすべっているネタと同じだと思いながら見ていましたから、冗談ではなく「ここからが地獄の始まりだ」と思いながら見ていましたが案の上でした。その半面、ブルゾンちえみさんはうまく地獄を免れたとも思えました。毎年の恒例とは言っても、来年ブレイクした芸人さんがまた無茶振りをされて地獄を見ることが既定路線になっている中ではありますが、あえて来年の今頃に地獄を見る芸人は誰なのかを考えながら、まずは年またぎの「おもしろ荘」を見るのもいいのではないでしょうか。

(番組データ)

徹子の部屋 ブルゾンちえみwithB テレビ朝日
12/21 (木) 12:00 ~ 12:30 (30分)
【司会】黒柳徹子
【出演】ブルゾンちえみwithB(ブリリアン)

(番組内容)

今年大ブレイクを果たしたブルゾンちえみwithBが満を持して登場!黒柳さんはブルゾンさんの独特なメイクに視線が釘付け。そして、ブルゾンさんの脇を固めるネクタイ姿の男性“ブリリアン”のダイキさんとコージさんにも興味津々の様子…。今日は、お茶の間の大反響を呼んだ「キャリアウーマン」のネタはもちろんのこと、特別に用意したという“黒柳徹子”のネタも披露する!


「ナニコレ珍百景」は単に面白いバラエティでなく「教養番組」でもある

唐突な話ですが、この文章を読んでいる方の中で「トマソン」という言葉の意味(語源は人名ですがここで語る内容は違うもの)をご存知の方はいらっしゃるでしょうか。この言葉は、ちくま文庫で「超芸術トマソン」という題名で1980年代に赤瀬川原平氏の雑誌「写真時代」で連載された時の内容がまとまっているので、手に取った方もいるかと思います。

恐らく同時代を生きていた人でなければ、よほどサブカルチャーに詳しい人でなければ知らないと思いますが、この「トマソン」とは、折しもビートルズのジョン・レノンが暗殺された日のスポーツ紙に事件と同時に掲載されたことのある、日本のプロ野球の中でも当時から球界の盟主と言われた読売巨人軍にロサンゼルス・ドジャースから現役大リーガーがやって来ると大いに期待されたゲーリー・トマソン(Gary Thomasson)氏の事です。トマソン氏はメジャーリーグでのキャリアが11シーズンあり、当時の年齢は30才と日本のプロ野球での活躍が大いに期待できる偉大な経歴を引っさげて読売巨人軍の門を叩いたのです。

その年の読売巨人軍は王貞治さんが引退した後だったので、その代わりとなる活躍をも期待されて読売が大金を払って日本に呼んだのですが、81年の来日一年目のシーズンには年間132の三振を喫し、「舶来扇風機」とテレビ中継でも揶揄されたメジャーリーグから日本プロ野球への移籍の失敗例として記憶されている方も少しはいるかと思います。ただ、三振数としては日本記録を持つのはシーズン204も三振した93年の近鉄(当時)・ブライアントで、数としてはそこまで多くありません。来日初年度のトマソンの他の打撃成績としては打率.261、ホームランは20本とそこまで悪くないとデータだけを見れば思います(120試合出場)。

しかし、当時のテレビのイメージを固定させる威力というのはものすごいもので、多くの人のイメージではトマソンが豪快に三振して「トマソン三振!」と連呼するアナウンサーの声を覚えている方も少なくないでしょう。これは、当時のプロ野球のテレビ中継は読売巨人軍の試合を全試合、NHKを含む民放が持ち回りでゴールデンタイムに中継していたので、特に鳴り物入りでやってきたメジャーリーガーのトマソンがより注目されることになり、多くの人の目が集中したところに肝心な所で全くタイミングの合わない三振を操り返す姿を試合だけでなくスボーツニュースでも多くの人が見ていたことにより、「トマソン=役立たず」という意識が多くの日本人の中に宿ってしまったというところが実際のところあったのです。そう考えると当時のテレビとプロ野球の甘い関係がなければ、今でも「トマソン」という言葉が独り歩きしていることもなかったわけで、改めてテレビで取り上げられることの多かった人気球団を選んでしまったトマソン氏が可哀想だと思わざるを得ません。

話を「超芸術」の「トマソン」の話に戻しますが、こうした「トマソン」の役立たず感を赤瀬川さんも知っている中で、彼が路上を観察し、面白いものを写真に収めている中で、道路や家が変更や改築を繰り返す中で、まるで芸術のオブジェのように何の役に立っているかわからないものに変化してしまった現象に「トマソン」と赤瀬川さんが命名したのでした。以降、「路上観察学会」なる団体もできたりして、ふと日常生活の中では見逃してしまう町の風景に埋没しているような「変な」ものを見付ける事が流行となりました。そしてこうした超芸術というものは、常に芸術を理解しない人から見れば、早く壊して更地にしたり建て直したりした方がいいと思われる存在として危ういものであることも確かだったのです。

そうした「超芸術トマソン」を許容し楽しむ人たちの中では、別の取り組みで「ヘンなもの」を世に出した方々もいました。この時期に多くの「街のヘンなもの」や「雜誌・新聞の誤植」などを写真に撮って送ると、雑誌に掲載してくれる雑誌「宝島」の中のコーナー「VOW」です。その単行本は今でもブックオフに行けば、そうした街のヘンなものが満載の、雑誌の面白い投稿をまとめた単行本を見付けることができるはずです。

このVOWの単行本に添えられた文章で印象的だったものがあります。こういった「街のヘンなもの」として集められたものこそ教科書に載る歴史とは違いますが、その時代の空気がわかる「物証」になり得ると書かれていて、当時はそんなものかと思いながら見ていたのですが、今でいう「昭和」の遺構というものは現在取り壊されたり撤去されてしまってないものを含め、「VOW」に収められているものの中にも沢山あると思うようになりました。

同じような現在までに残る時代に打ち捨てられた遺物の中には、今になってその作者とともに再評価されつつある「狛犬」や、最近はカードにもプレミアが付くと言われている「マンホールの蓋」のようなものもありますが、これらはテレビ番組に取り上げられる場合はNHKあたりが「教養番組」として取り上げることでそれらしい「文化遺産」だと多くの人が納得するようなところもありますが、そうでない「時代のしょうもない遺構」や「ヘンな人の話」を民放がお笑い系の番組を作る中で紹介したところでなかなかアーカイブされるべき番組だという風には思われないところに、私たちが少し前の時代の「空気」を将来に残す難しさがあると言えます。

レギュラー放送としては終わってしまったものの、番組改編期にスペシャル版として放送されることの多いこの「ナニコレ珍百景」は、「超芸術トマソン」や「VOW」の流れを継承する街のしょうもないものを多くの人が見ているテレビで紹介してくれる、ある意味大変に稀有な番組で、笑いながら見る中でもその内容をかみしめて見ると新たな発見になるかも知れません。今の時代は雑誌や単行本で発信しても多くの人の目に触れるものでもありませんし、VOWは現在ウェブサイトで細々と運営されているものの、昔の事を知っている人以外にはなかなか輪が広がらないというのが正直なところです。それを、テレビのゴールデンタイムで放送してくれるのですから、こうした仕事の意義をテレビ朝日や制作会社が忘れないで続けようと思ってくれている証だと思うので、素直に嬉しいです。

ちなみに、今回の放送で見た「トマソン」らしき物体として人工物が変化して「珍百景」となったものに、とある喫茶店の看板として作られた大きなコアラのオブジェがありました。このオブジェは先代の店主が約250万円を出して作ったのだそうですが、時間の経過とともに世にも奇妙で恐いコアラの姿になってしまっていました。今の店主の方はこのオブジェを撤去する予定はないようですが、そもそも今の店主がお店をたたんだら地域においてはこのコアラのオブジェは存在することができなくなるでしょう。その時点でコアラの「超芸術」としての生命は途切れるということになります。

その時がいつ来るのかはわからないながら、今回の放送で全国的に不気味なコアラのオブジェが流れたことで、物としては残らなくても映像としては残すことができたということも言えるわけです。今までの番組では個人の努力で作ったもの系の珍百景も多くありましたが、すでに番組のアーカイブスを見て訪れてもその場からなくなってしまっている事もかなりあるのではないかと思います。しかし、その時にそこにあり、さらにその珍百景があるところにどんな人がいたのかということを番組を見て思い出すことはできます。

実は珍百景は有料のCSチャンネルの「テレ朝チャンネル」で「激レア 珍百景」として放送されているのですが、やはり見る人が限られるCSと地上波は違うわけですから、今後もスペシャルでの番組は続けて欲しいですし、見ている方々も単に珍百景を見て笑うだけでなく、その周辺に思いをめぐらしたり、近くだったら実際に行ってみて改めてテレビで誇張された部分を感じてみるのも研究みたいで面白くなると思います。

(番組データ)

ナニコレ珍百景 2時間スペシャル テレビ朝日
12/6 (水) 19:00 ~ 20:54
【MC】名倉潤・堀内健(ネプチューン)
【珍定委員長】原田泰造(ネプチューン)
【進行】森葉子(テレビ朝日アナウンサー)
【珍定ゲスト】石坂浩二、岡江久美子、サンドウィッチマン(伊達みきお・富澤たけし)、高橋みなみ
【ロケ出演】杉村太蔵(珍百景党は岐阜へ…地獄うどん&怪しすぎる森の通学路)、もえのあずき(青森で巨大すぎるパンにチャレンジ)

(番組内容)

日本全国から驚きの光景が続々!人面崖!?…自然が生んだ奇跡の光景、カワイイ動物、ご当地あるある、超人ご長寿から崖っぷち駐車場、爆笑店主まで衝撃風景の新作一挙公開