バラエティ番組で笑われるタレントにも立派な理由がある

久しぶりに復活した「しくじり先生」ですが、今回2人目として登場したにしきのあきらさんは、今ではすっかり「スター」という言葉が似合うバラエティタレントだと思っている方が多いと思います。私の印象というと、今回の番組の中でも出てきましたがフジテレビのスター大運動会や水泳大会では必ず目立った活躍をする身体能力の高い歌い手さんというイメージが強いのですが、今回その芸能界での浮き沈みの様子を聞く中で、一般の人が憧れる芸能界で活躍したからこそ陥る苦悩というものを改めて感じました。

というのも、ある程度顔と名前が売れてしまった場合、活動が停滞したり仕事がなくなったりして本格的にお金に困った場合、普通の人なら外からの目を気にせずにアルバイトでも肉体労働でもやってお金を稼ぐことができますが、過去の栄光にとらわれてプライドがあるような場合や、お子さんが学校に通っているような場合、どこでそうした姿が見られるかわからないということがあります。本人だけならまだしも、子供さんがそうした行動を見咎められた人から口コミで話が広がり、いじめのネタとされない保証はありません。

そんな状況の中だから事業をやろうとか言われて騙されたり、お金のやり取りについてそちらでも騙される可能性があるわけですが、信頼していた知人にだまされて借金が増えたり横領されたりして、遂には家が差し押さえを食らうという最悪な状況の中で声がかかったのが日本テレビ「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」だったのです。

私自身もこの番組でのにしきのあきらさんのバラエティ番組にフィットした姿に大笑いした一人ですが、その裏にどういうことがあったのかというのが今回の番組を見てわかりました。一時期には芸能界のトップと呼ばれた人が、なぜ毎回ドッキリを仕掛けられ、ものの見事にどっきりに引っかかってもめげずにテレビに出てくるのかというのは、今回の番組で語られたような金銭面での苦労があり、自分を呼んでくれて仕事をくれる日本テレビのスタッフにいやな気持ちを持つどころか最悪の状態から救ってくれたことに感謝しているような感じでした。

実はこの「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」は今のロンドンブーツの番組のように親が子どもに見せたくない番組の常に上位をキープしていました。今思えば、かつての大スターであったにしきのあきらさんを笑いものにしているという事もその理由の一つだったのかも知れませんが、現実はまるで違うということが今回の番組を見た人には理解できるでしょう。

確かに無様に落とし穴に落ちたり、くだらないことで体を貼っているタレントを見て眉をしかめる方もいるかも知れませんが、そんなことは十分承知の上でもらった仕事をこなすことでしか生きていけない人もいるということを、多少はテレビを見る側の人も理解して、例えばそこから差別的な感情がお子さんに生まれるかも知れないと思ったら、番組を見終わった後に「タレントさんはああして人を笑わせることが仕事なんだよ」とフォローしてあげることが必要なように思います。

このような、テレビに出ることでしか稼げない事情のある人にとっては、たとえ多くの人から下品だと思われようが気持ち悪いと罵られようが、出演するしかないと腹をくくっていたり、自分がテレビに出ることで多くの人が笑ってくれることに仕事としてのやりがいを感じている場合があるのです。しかし残酷にも、にしきのさんのようにテレビに出て人気をもりかえすことができるケースとは違い、テレビ視聴者の訴えからテレビ出演そのものを降ろされてしまう人たちもいます。

それはドリフターズの「8時だョ!全員集合」(TBS)のコントの中で一瞬出てきて笑いを誘い、子どもたちにも人気があったものの大人の事情で番組を降ろされてしまった「Mr.ポン」や、全日本女子プロレスと一緒に興行をしていながら決してテレビでの放送がされなかった「小人プロレス(後にミゼットプロレスと改名)」の例があります。今でこそNHK Eテレの「バリバラ」で体に障がいを持つお笑い芸人という人が登場したり、番組の中の企画として本格的なバラエティが放送されていますが、この場合は障がい者に関する問題を継続して放送してきたEテレだからこそ許される部分があり、他の地上波チャンネルでは昔も今も誰かが声を挙げたら即テレビに出られなくなる状況は終わっていないと思われます。

今後も地上波では無理かも知れませんが、CSやネット配信の番組でなら地上波では放送が難しいようなケースでも番組として成立する可能性は残ります。今の日本には潜在的にたくさんのテレビに出たい人がいて、たとえそれがいじられて笑われるような立場であってもそれで自分の存在が知られるならテレビに出たいと思う人もいるでしょう。そんな人の中で、とにかく面白ければスターへの道が開ける、かつての「全日本歌謡選手権」のような番組を作ったらどうでしょうか。

今回のにしきのさんのような芸能界を干されて困窮極まった元人気者と、今までは人前に出ることさえ不謹慎だと言われてきたような体に障がいを持つ人などが同じ舞台で明日のスターを夢見て「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」のような、誰がどれだけ笑わせるかをチャレンジする番組が実現できれば、人によっては不謹慎と写っても、全てが平等に審査されるなら、決して一部の人から糾弾されるような番組にはならないように思えるのですが。

(番組データ)

しくじり先生 俺みたいになるな!! 2時間スペシャル テレビ朝日
1/28 (日) 18:57 ~ 20:54 (117分)
【しくじり先生】村主章枝・錦野旦
【担任】若林正恭(オードリー)
【レギュラー生徒】吉村崇(平成ノブシコブシ)
【生徒】あき竹城・伊集院光・岡田結実・澤部佑(ハライチ)・杉山愛・関根勤・高山一実(乃木坂46)・辺見マリ・真野恵里菜・横山だいすけ・遼河はるひ

(番組内容)

過去に大きな失敗を体験した“しくじり先生”が生徒たちにしくじった経験を教える反面教師バラエティ番組「しくじり先生」!今回はスター錦野旦先生と元フィギュアスケート選手の村主章枝先生による熱血授業を開講します!次々飛び出す驚愕エピソードに教室が震撼!そして授業の最後には先生たちによる熱いメッセージで教室は感動の嵐に!お楽しみに!

・村主章枝…「引き際を誤って家族に迷惑をかけないための授業」 オリンピックに2度出場し、その卓越した表現力から“氷上のアクトレス”と評された元フィギュアスケート選手の村主章枝が緊急帰国!“トリノ五輪後に引退しなかった本当の理由”を激白!誰もが冷静な判断を下すことが難しい“引き際”について真摯に向き合い、長く現役を続けた村主先生だからこそ悟ることのできた人生の教訓を伝えます!

・錦野旦…「安易に人を信用して地位も名誉も財産も失わないための授業」 “スター”の愛称で世代を超えて愛され続ける錦野旦が登壇!デビュー1年目にして日本レコード大賞「最優秀新人賞」受賞、さらに紅白歌合戦にも出場。スター街道を歩んできた錦野先生は自身のある性格が原因で、大きなしくじりを犯し、地位も名誉も財産も失うことに。「本当にしくじった!」と反省するスター錦野先生が転落人生を赤裸々に激白します!


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