迷走した番組からデビューする人へのフォローはどうなる

すでにネットニュースで広く知られていると思いますが、「今夜、誕生!音楽チャンプ」は2018年3月でいわゆる「打ち切り」になるそうです。そんな状況がわかっているためなのかどんどん変な事をやり出していて、まさにテレビ番組はこうやって終わるんだよという事例を目の当たりにさせてくれている感じがするので改めてまた番組をネタに書いてしまいました(^^;)。

まず「ダンス企画」って何なの? と思ってはいけないのかなと思わせるほど当り前に「音楽チャンプ」なのに「ダンス」を競う企画を入れてしまうディレクターの厚顔無恥さはすごいですね。昨年から女子高校生による集団ダンスについては多くのバラエティーが取り上げて映画やドラマも作られましたが、このまま3月終了せずに番組が続いたら、いつの間にかお笑いのネタを競う番組にもなりかねないのではないのかと正直思ってしまいました。

放送時間が60分しかないのにこんな企画を入れるということは必然的にこの番組の本筋であるチャンプに挑戦者が挑む部分をカットしなければならなくなります。番組後半に、番組終了までに何とかこの番組からデビューさせるという命題を達成させるためのコーナーもあるので、さらに時間が取られるということになります。こうなると、もはや新たな才能の発掘ということではなく、他の番組で人気のある部分を切り取って流すという形でのなりふり構わなさを感じ、残りの放送日までを何とかしなければというスタッフの苦労がしのばれる部分でもあります。

たまたま前日、NHKのど自慢チャンピオン大会の放送があったのですが、こちらの方は毎週全国を回って続く長寿番組のチャンピオンの中から厳選された人達が出演し、2017年のチャンピオンを決めるというもので、審査員は音楽チャンプと違ってぬるい人選のような気がしたものの、まず出演者の年齢に幅があり、優勝者も男性でかわいい女性を優遇しているような感じはしなかった点はさすがNHKだと思いました。しかしNHKのど自慢はまだ素人時代の美空ひばりさんを落としたという致命的な判断ミスをしています。それは強烈な個性よりも大人しくまとまった才能を選ぶ傾向を感じ、その点はNHKだからこその壁であるという気もします。

本来はそうした点を突いて、決してNHKでは出てこなそうな人を選ぶ新たな歌のオーディション番組を作ろうと考えてできた番組ではなかったのかという風に思うのですが、やはり真面目にオーディション番組を作ろうと考えたら、大手芸能事務所所属タレントを司会に起用し、最初から視聴率や視聴者の評判を気にしたということが良くなかったのではないかと番組打ち切りという結果がわかってしまった今感じるところです。スターは狙って作るということはあるにしても、この番組はオーディション番組なのですから、やはり普通に応募してくる人の中からきらりと光る原石を見付け育てるようでなければならず、新たなスターが出るまでは視聴率が上がらなくても番組自体の人気が上がらなくても、放送する曜日や時間を変えてでも(早朝や深夜に移動しても)我慢して続けるべきでした。さらにその際に、ネットの評判によって番組での態度を変えるような審査員はやめさせるくらいでないと、結果の公平性は担保できないでしょう。

さらに、今回のような結果になってしまっても、番組スタッフの中で番組で育てた人材をどこまで世に出すための手助けをするつもりなのかという点も今後に向けては試される部分だと思います。せめて今、番組で推している丸山純奈さんと琴音さんをテレビ朝日がどのように育てていくのか、その結果きちんとした形でデビューさせるのが一つのケツのまくり方だと思うのですが、丸山さんをCDでなくあえてネット配信でデビューさせて多くの人が聴いてくれるのかというのが個人的には疑問が残ります。もちろん、今後フォローしながら本格的に歌手への道を進ませて行くのがこの番組を作って彼女らを送り出した責任として、今後のフォローを期待していますが、今後の状況によっては本気の音楽オーディション番組の企画はなかなか実現されないようになっていくのではないかと危惧をするところもあります。

(追記)
番組打ち切りの後で新たな情報が入り、どこまで続くのかは未知数なものの、今後は特番という形で番組の名前は残すような事も言われています。特番になれば私が心配していた合格者へのフォローも行なわれるでしょうし、今回のようなダンス勝負だったり、ピアノなどの演奏、バンド対抗の企画なども入れられるでしょう。しかし出演者の傾向は毎週続けていなければその分見ている人も限られるので、その中である程度の出演者のクオリティを保とうとすれば、テレビ関係者の目に止まったような人が主に集まるような気もします。テレビを見ていて、全く今まで表舞台に円のなかった人が「自分もテレビに出られるかも」と思って応募するような、いわゆる「スーザン・ボイル」さんのような方が出て来るような番組になるのは今後難しいと思われます。

どちらにしても、こうしたオーディション番組はできるだけ選考過程をガラス張りにして、見ている人たちも巻き込んだ形で作っていかないと、事務所とか関係ない才能を発掘する場にはならないような気がします。オリンピックになぜ多くの人の目が釘付けになるのかを考えてみれば、それは確かでしょう。ダンス企画でもいきなり「関東対関西」という形でやるのではなく、大々的に応募を募り、学校のクラブ活動から離れた草の根レベルで活動している才能を拾い上げ、決してクラブ活動で賞を取っているところだけが素晴らしいのではないということを提示するのもテレビの一つの役割ではないかと思います。歌にしても、カラオケバトルやのど自慢では集まらない異種の才能と番組常連の歌うま軍団を競わせるとか、そんなストーリーを探して欲しかったなと今となっては思います。

(番組データ)

今夜、誕生!音楽チャンプ テレビ朝日
3/4 (日) 21:58 ~ 23:05 (67分)
【MC】村上信五、黒木瞳
【審査員】
<カラオケ企画> 大本京、小柳ルミ子、菅井秀憲、田中隼人、森公美子
<ダンス企画> 蛯名健一、CRE8BOY秋元類、夏まゆみ、振付稼業air:man杉谷一隆
【ゲスト】 川田裕美、剛力彩芽
【挑戦者】
<カラオケ企画> 荒金理香、武田優一、濱住夏海 琴音(現チャンプ) 丸山純奈(デビューへの道)
<ダンス企画> 同志社香里高等学校ダンス部、山村国際高等学校ダンス部

(番組内容)

■徳島の合唱ガール・丸山純奈(中2)が5つの課題をクリアし、ついに配信デビュー!デビュー曲をスタジオで初披露する!作詩・作曲は昨年の日本レコード大賞で作曲賞を受賞した、番組審査員でもある杉山勝彦!スタジオ感動の熱唱を披露する!
■新潟県の女子高生、チャンプ・琴音(高1)が3度目の防衛戦に挑戦!今回も3人の強敵がその道を阻む!果たして、3連覇出来るのか!?
■さらに特別企画!高校生ダンスチャンプを開催!関東と関西の強豪校が激突!
■関東は…山村国際高等学校ダンス部!エンターテインメントを重視したダンスで近年、躍進中の実力校!今回、「ある昭和歌謡曲」を選曲し、「見ていて楽しく、元気になる」ダンスを披露!果たしてどんなダンスなのか!?
■関西は…同志社香里高等学校ダンス部!昨年の日本高校ダンス部選手権であの登美丘高校を抑えて優勝!その実力とは!?

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