05バラエティ」カテゴリーアーカイブ

「M-1グランプリ」には常に採点の進化を望みたい

私自身、お笑いの専門家ではなく、単にテレビを見て楽しんで、このブログでは単に感想を書いているだけなので、今回の題材である「M-1グランプリ」について何か書けるとしたらあくまで自分の好みの芸人さんの話とかになってしまうのですが、ここでは「お笑い」の話というよりも、その審査について改めて考えてみたいと思いました。

というのも、芸歴15年までという制限を付けて、優勝賞金が1,000万円で、優勝者には相当のテレビ番組出演や営業のオファーが来ると思うので、皆の総意でチャンピオンを決めなければならず、本来そこには「情」というものを入れてはいけないものであると考えます。

例えば、過去に坂本博之さんというボクシング選手がいまして、この方は児童養護施設の出身で努力の結果世界タイトルマッチにまでこぎつけたものの、残念ながら世界チャンピオンになることはできませんでした。世界戦の会場には彼の出た児童養護施設の児童が応援に来ている姿が大写しになる中、心情的にはどうしても彼にチャンピオンになってボクサーとしてのストーリーを完結させて欲しいと思っていたのですが、現実というのはある意味残酷です。勝負の世界というのはメロドラマとは全く異質のもので、結局はKOするか、ポイントで1ポイントでも勝っているかしなければダメなのです。ですから、そんな真剣勝負の場で審判の買収や不可解な判定があれば大きな問題になります。

私自身は「M-1グランプリ」という場は1,000万円の賞金を出した時点で、決して後から疑われるような判定を出してはならず、参加者が不正を働いてもいけないと思っています。今回の審査がダメだからということでは決してないことをまずはお断わりさせていただきます。その上でテレビを見ている側としては、常に公平なジャッジをしているという部分に揺らぎが出ることのないよう、大きな問題が今後も出ないように続けていって欲しいと思います。

私が「M-1グランプリ」を見るのは実は前々回からとかなり後になって見出したのですが、前々回は敗者復活で最後に出た「トレンディエンジェル」が優勝しました。彼らは敗者復活からの勝ち上がりの勢いのまま、最後にネタをやった評価が高く優勝までつっ走ったという印象でしたが、この時に思ったのは演技順によってかなり審査員や観客の印象が変わっているなと思いました。

これは採点競技全てに言われることですが、最初は点が出過ぎないようにセーブされ、一番最後の演技者はその後に出る人はいないので見たままの印象でそのまま採点されるという有利さがあります。トレンディエンジェルについては、そうした勢いをうまく利用したということになるわけですが、そもそも敗者復活から本選に出られるなんてことはその時には想像もしない中でほんの少しの可能性に賭けていたわけですし、単に敗者復活者はずるいとまでは思わないものの、冷静に見てやはり誰が来ても敗者復活から出場する方が有利だということになれば、そうした文句が出ないように審査方法も変えていく必要が出てきます。

今回の審査方法も、すでに順番を決めて待機するのではなく、その場でくじを引くまで誰がどの順番で出るかわからない方法にしていたというのは評価でき、これで一番バッターになってしまったら、それはそれで仕方ないと諦められる範囲の事だと思えました。人気者になるには運も必要だとは確か萩本欽一さんの言葉だと思いますが、もし今回優勝した「とろサーモン」さんが一番バッターだったら違った展開だったかも知れませんし、結果として「とろサーモン」さんには実力だけでなく「運」もあったという風にも言えると思います。

審査員は前回の5人から7人に戻り、一人の点数が100点満点で合計700点満点で審査されましたが、この「満点方式」についても今後は一考の余地はあるのではないかと思います。これについても先例があります。オリンピックにおける体操競技は以前は満点を10点としてそこから減点をしていく方式でした。そのため、それまでの判定基準を超えるようなとんでもない才能を持ったルーマニアのコマネチ選手が出てきた時には、その演技評価を10点にせざるを得ず、その後のロサンゼルスオリンピックでは10点満点が連発されてしまいました。

そうした事を考えた上で体操競技は今の審査方法になったのですが、このように、満点という制限の中で全てを決めるよりも、「演技者の勢い」のようなものは審査点の中でも別に分けた加点方式にするとか、逆に言葉が早すぎたり聞こえづらかったりして何を言っているかわからないとか、明らかにミスがあったというような場合の減点基準をはっきりさせたほうが更に多くの人が納得する審査になるかと思うのですが。もちろん、審査員個人の「好き嫌い」で決めてもいいのですが、審査員も出場者も同じ舞台やテレビでご一緒されることもあると思いますので、できるだけ客観的な部分も入れた評価で点数を出したほうが個人的には納得できます。もちろん、ここまで私が書いた事よりももっと公平さを演出できるような審査方法があればどんどん採用すべきですし、そうして常に審査方法や審査員を変えながら出演者にM-1グランプリ対策をさせないというのも大事だと思います。

それから、M-1グランプリを一日でスターを作る番組として考えた場合、いつもテレビで見ているコンビが多く出てくるので、その分プロでないアマチュアが残るという下克上がなかなか見られないというのは残念です。この点についてはこれまでの主張と比べるとかなり甘いと言われるかも知れませんが、テレビ東京の大食い決定戦のように新人戦を開催し、そこで優勝したコンビに本戦参加についての何らかの優遇策(一部予選を免除したシードのようなこと)を考えるというのもさらに競争を促して面白くなるような気がします。

駆け出しでもみっちり漫才の基本を仕込まれたプロのルーキーコンビと、単なる娯楽のために組んだ社会人や学生のコンビとの差は果たしてどのくらいあるのかとか気になりますし、何よりテレビを見ていて面白いのは「ジャイアント・キリング」がガチ勝負で実現することでもあるのです。サッカーの天皇杯で市立船橋高校がプロチームや大学チームを倒し、当時日本トップの実力があったと思われる横浜マリノスとの対戦でも2点のビハインドから追い付き、延長戦まで戦い抜いてPK戦までもつれこんだことでマリノスを敗戦の危機にまで追い込んだ事は今でも強烈に覚えています。

もし新人戦経由で本戦に出場したアマチュアコンビがグランプリを取ったら、その盛り上がりはどうなってしまうのか考えただけでもワクワクします。あくまでアマチュアやルーキーを優遇せず、これまで通り最初から実力で這い上がれなければダメだというなら、あえて提案したいのがコンビの名前だけで騒がれて有利になることの無いよう、敗者復活戦も含めて完全な無観客漫才にするという方法です。お客さんがいない中で漫才をするというのは劇場で漫才をしてきたコンビにとってはとてもできないと思われるかも知れませんが、それでこそ過去の名声やイメージを廃して評価することができるとも考えられます。少なくとも人気があったり知名度があるから有利にはなりないような配慮もしていただいた方が、今よりもずっとエンターテイメント系競技という感じで楽しめるものになると思うのですが。

(番組データ)

M-1グランプリ2017 テレビ朝日
12/3 (日) 18:57 ~22:10
【司会】今田耕司、上戸彩
【審査員】 オール巨人、上沼恵美子、春風亭小朝、中川家・礼二、博多大吉、松本人志、渡辺正行 ※50音順
【出場者】 かまいたち、カミナリ、さや香、ジャルジャル、とろサーモン、マヂカルラブリー、ミキ、ゆにばーす、和牛 ※50音順【敗者復活枠】スーパーマラドーナ

(番組内容)

4094組を勝ち抜いた最強の10組が最後の決戦へ!出番順はその都度、抽選で決められる新ルールも導入され、展開は予測不能!M-1第13代王者誕生の瞬間を目撃せよ!
【出番順】 ファーストラウンドの出番順は、その都度「笑神籤(えみくじ)」と呼ばれるクジを引き、呼ばれたコンビがそのままネタを披露するという新ルールを導入!手に汗握る予測不能の展開となるでしょう!!
【大会ルール】 ファーストラウンドは審査員1人につき100点、700点満点で採点。上位3組が最終決戦に進出し、再びネタを披露。審査員7人が最もおもしろかった組に1票を投じ、最多票が優勝となる。


番組は激レアさんが最初に行った歯医者を公表せよ(^^;)

世の中でテレビでエピソードトークをしてもらって面白い人というのは限られていると思うので、どうしても「どこか別のテレビで見た」という人の「かぶり」が発生することがあります。今回の「激レアさんを連れてきた。」で最初に出てきた方も、恐らくTBSの「がっちりマンデー!!」でその事業が紹介されていたのを見た気がしました。こういう時にインターネット検索というのは有難いもので、番組名と内容で検索したらがっちりヒットしました(^^;)。というわけで、最初の方は私にとっては激レアさんではなかったということになります。

ただ、続いて出てきた激レアさんについては初見で、この方は確かに「激レア」さんでした。「消しゴム差し歯」を4年間はめ続けている(へたってきたら新しいものに替えることを繰り返しているそうです)という方で、突っ込みどころ満載でしたが、なぜ4年間も消しゴムを加工した前歯(仮)を付け続けなければならなかったというと、治療のために訪れた歯医者さんで、前歯を一本作るのに30万円かかると言われたので、それは無理だと諦めて消しゴムで代用することになったとのことでした。

普通の社会人ならある程度お金はためてあるのではないか? と思ったのですが、この方は芸人として身を立てようと努力していて、毎月の生活費に7万円を捻出するのが精一杯で、とても30万というお金を用立てることはできなかったということです。

ここで、賢明な方は気付いた方もおられると思いますが、前歯が一本30万円というのには実はカラクリがあるのです。お茶やコーヒーをよく飲む方だとその色が人工の歯では付いてしまうので、そうした汚れが付きにくく落としやすいセラミック製の歯を付けると30万だということで、これには健康保険が効かないため高値になってしまっているのです。

番組では健康保険を使って入れられるプラスチック製の差し歯についてもその価格を調べていて、保険使用の歯なら1万5千円で入れられたとのことです。激レアさんが出掛けた歯医者さんでどんな風に聞いたかはわからないものの、普通の歯医者さんなら、保険使用と不使用の場合の料金を教えてくれ、どちらにするかを患者の意志で決めさせてくれると思うのですが。

もし、そうした保険不使用の金額を提示しないまま高額な治療代がかかるとしかその歯医者さんが言ったとしたら、これはバラエティ番組ではありますが大きな社会的な問題になってくるのではないでしょうか。

というのも、番組内で専門医に差し歯の代わりに消しゴムを使うことについての安全性について尋ねたところ、雑菌が混入する危険やかみ合わせが悪くなるので歯だけでなく姿勢が悪くなるのだそうで、今後腰などにも悪い影響が出る可能性があるということを話していました。

さらに、この激レアさんは前歯だけでなく奥歯も5本ないのだそうで(^^;)、だったら歯医者へ行って保険の適用内で直せよと思うのですが、おそらく前歯一本で30万と言われたら、差し歯と奥歯で6本を直すお金がないと思ったのでしょうね。もし良心的な歯医者さんに当たっていれば、安い費用でとりあえず仮歯を入れてもらう中で治療の計画を立て、差し歯と奥歯を全て保険で直す場合の費用と期間を示し、治療開始時からいつ1万円以上の負担がかかるのかというところまで打ち合わせをしてくれていたはずでしょう。

ロケで激レアさんのお宅に訪れていたのは、朝のワイドショーにも出ていた山本アナウンサーだったので、今回の内容について同じようにどんな人にも保険を使わない場合の治療費しか教えず、高額の治療代でないと診察をしないような歯医者が現実に存在するならその実態をあぶり出して欲しいと最後には思ってしまいました。

最初は消しゴムを差し歯にし続けるエビソードトークを笑って見ていたのですが、さすがに彼女と別れる原因になったりするという、激レアさんにとっては人生を左右するような事態にこの歯医者さんの言葉が影響を及ぼしているというなら、「貧乏人は歯も入れられないのか」ということになってしまいます。もし本当にこんな医者がいるのだとしたら、ぜひ朝のワイドショーの独自取材で明らかにして欲しいと思います。

(番組データ)

激レアさんを連れてきた。 テレビ朝日
11/27 (月) 23:15 ~ 0:15
【研究員】若林正恭(オードリー)
【研究助手】弘中綾香 山本雪乃(テレビ朝日アナウンサー)
【客員研究員】志尊淳

(番組内容)

とんでもなく珍しい体験をした“激レアさん”を研究室に連れ込んで、体験談を聞きまくる!驚きと笑いにリアルに役立つ知識も交えて激レア体験をトコトン研究します!!

本日の激レア研究はこちら・・・

【激レアさん(1)】 派手に漏らしてしまった苦い経験をバネにトイレのタイミングを予知してくれるマシーンを発明した人。

【激レアさん(2)】 差し歯が取れてしまったが貧乏なので自作の“消しゴム差し歯”を発明し、それをハメて4年間粘っている人。


バラエティ番組では大変珍しい「自局批判」の顛末

テレビをよく見ている人なら気付くことだと思うのですが、もしとあるテレビ局の人が何か新聞種になるような事件を起こしたりしても、自局でその事件を詳しく報道する前に他局の方が集中的に報道することがほとんどで、あまり自局にとって都合の悪い事を、しかもニュースではなくバラエティで発表することはあまりないでしょうし、今回私自身初めて見たと思うのです。

というのも、この文章の一番下の「番組内容」にも説明がありますが、「博多駅前道路陥没事故」の起こった瞬間の動画を撮影した一般人の方が番組に投稿されていて、その裏側について紹介していたのです。投稿者はその現場で多くのテレビ局から撮影した動画や写真の二次利用をさせてほしいとお願いされ、その時に承諾したことで事故直後に多くの人が道路が陥没していく瞬間の動画を見られることになったのでした。

それはそれでいいとして、番組MCの二人が進行の久保田アナウンサーやテレビ朝日社員であるだろうスタッフに文句を言ったのは、テレビ局各社はスマホなどで撮影したスクープ動画の投稿を奨励しているものの、その動画使用について一切謝礼金の発生がないという事実がわかったからです。

テレビ局のバラエティでは海外の動画を利用する場合、その動画を撮った人と交渉して動画をテレビで流すために使用料を払うという話を聞いたことがあります。海外ではそうしておもしろ動画やスクープ映像を売り込んで生活をしている人もいるということで、日本のテレビで放送されるものの中にもそうして買ってきた動画があると思います。しかし、日本国内から動画を提供してもらう場合にはあくまで撮影者の善意にすがるような形で一切謝礼を出さないというのは、ちょっとけち臭いのではないかと私も思うのですが。

投稿された博多の陥没事故を撮った方も、その動画や写真が賞を取ったことで入ってきた賞金が150万円くらいある(複数のテレビ局から同じもので表彰を受けたそうです)とは紹介したものの、ちょっとしたスクープ映像ではそんな賞にかからなければ、テレビのトップニュースで紹介されても全くの無償で動画や写真を提供させれられる事になってしまいます。

この種の話はネット上でも以前から問題視する方がいて、さすがに大スクープの決定的瞬間だと誰もが認める動画には、一定の謝礼を出すというのも仕方ないのではないかと思っていたのですが、はからずもテレビの内側の世界で、有吉さんとマツコさんがテレビ朝日の「みんなが報道カメラマン」というサイトからの投稿について一切謝礼を出さないという事にかみついていたのは、多くの人が共感したのではないでしょうか。

こうしたテレビ局のスクープ映像の無償提供強要のような事実が明らかになっていけば、例えば週刊誌や、個人でもYouTuberのやっているサイトでスクープ映像には一定の謝礼金を出すとやれば、スクープはテレビで放送されずに、ネットにのみ出現するようになるケースも十分に考えられます。今までのような個人対テレビ局ではなく、きちんとテレビ局との対応もするスタッフを揃えたネット業者が契約を代行する形でテレビには出るかも知れませんが、当然ながらすぐテレビに出すということにはならず、スクープ映像はまずネットからというような状況に変わっていく可能性もあります。

現状でテレビ局の制作についてなかなか予算が下りないということもあるのでしょうが、だからといって多くの人が注目する動画を無償提供させようとするのは、さすがに図々しいにも程があるわけで、私の予想通りにテレビではすぐにスクープ映像は流せなくなるような状況はすぐにでもやってきかねないと思います。せっかく自局の番組内でタレントの口から出た話にしても自局の批判を出したのですから、まずテレビ朝日からトップニュースで使えるような素材を提供してくれた人には一定の謝礼を出す方向で検討してみてはいかがかと思います。

(番組データ)

マツコ&有吉 かりそめ天国 テレビ朝日
11/22 (水) 23:15 ~ 0:15
【MC】マツコ・デラックス、有吉弘行
【進行】久保田直子(テレビ朝日アナウンサー)
【出演】ガンバレルーヤ、大自然、西村瑞樹(バイきんぐ)

(番組内容)

◇今夜は温泉の欲望スペシャル!(1)箱根超高級旅館の室内風呂だけ入りまくり!(2)混浴風呂にどんな人が来る!? 1日密着!(3)1杯5万円!? 風呂あがりに超高級フルーツを使って最高のフルーツ牛乳◇「博多駅前道路陥没事故」ニュースで流れたアノ映像の撮影者が語る裏話!「みんなが報道カメラマン」時代の弊害とは?◇仕事のことを聞かれたら…子どもにはどこまで夢のある話をするべき? あなたなら現実的な悪い面も伝える?


「今夜、誕生!音楽チャンプ」は「THEカラオケ★バトル」と何が違うか

審査員4名に判断されるとは言え、審査員1人の持ち点は25点で合計100点、残りの100点はカラオケマシンの入ったロボットによって決定され、得点の高い人が勝ち抜けるというトーナメント戦を制して優勝するとプロデビューのチャンスが与えられるというのが「今夜、誕生!音楽チャンプ」という番組の基本的なシステムです。あえて書くとすでにカラオケマシンを使った歌のうまい人のNo1決定戦といえば、テレビ東京の「THEカラオケ★バトル」があり、さらにそこで優勝しなくても目立った女子高生はすでにコマーシャルでデビューするなどの実績もあります。そんなわけで2つの番組の違いについて考えながら番組を見てみました。

この「今夜、誕生!音楽チャンプ」という番組は今回で2回目ですが、前回はどんな番組であるのかというお披露目の感じが強く、審査員のコメントも前回はわざときつめに出場者に発していたようでもありました。今回もきつめに行くのかなと思ったら辛辣にではあるもののかなり優しく、さらに別の進路のおすすめまでアドバイスをするという感じに変わっていて、審査員の技術的な意見についてはご丁寧にVTRで後追いの解説まで付くという感じで、本気で歌がうまくなりたいと思う同年代の視聴者にとってはそうした審査員の意見がそのまま歌をうまく歌うための汎用的なアドバイスとしても機能しているようにも思いました。その点は「THEカラオケ★バトル」とは違いましたが、その分審査員の本気の言葉の強さが薄まってしまい、出演者と審査員のやり取りを楽しみたいという視聴者にとっては何か物足りないという感じがしたのも確かでした。これならシビアにカラオケマシンの採点だけで決めた方がすっきりするのではないかとも思いましたし。

せっかく人間の審査員を出すわけですし、今回の予選でも2名しか準決勝には行けず、6人の予選出場者のうち4人落ちるわけですから、あえて審査員は出演者からいい人だと思われなくてもいいというような形での厳しい言葉があった方がオーディション番組としては盛り上がると思いますし、生半可な気持ちで応募してくる人を減らす効果もあると思います。

恐らく、前回の放送を見た方々がインターネット上でかなり審査員についての批判を繰り広げていましたので、そうしたネットの反応にも配慮したのかと思われますが、過去のオーディション番組では「スター誕生!」の阿久悠さんや、「全日本歌謡選手権」の淡谷のり子さんや竹中労さんのように、時には出場者に厳しい事を言ってあげないと、中途半端な希望を持ったまま人生の大切な時間を無駄に過ごしてしまう人も出てきてしまうかも知れません。厳しい物言いだけをとらえて、何様だ! と怒る人達がいるのは十分わかりますが、あなたくらいの才能では、とても歌手としてやってはいけないと、いかに厳しい言葉であってもはっきり言ってあげることがその人にとっての優しさであるかも知れないのです。そうした厳しい言葉を言われたからと諦めるようならすでに見込みはなく、それでも何回もチャレンジする中で出てくる才能も(歌手以外の才能も含めて)あるかも知れません。

そういった意味で、やはり審査員はいい人と思われなくてもいいから、真剣に厳しい物言いをされる方にもきちんと依頼すべきだと思いましたし、個人的には前回かなり厳しい発言をしていた方がその方針を変えてしまったのが何よりも残念でした。

そして、もう一つ番組を見ていて残念に思ったことがあります。今回見事予選を勝ち抜いた2人は、準決勝で歌う歌が勝ち抜いた時点ですでに決まっていたのです。Mr.Childrenの「イノセントワールド」というアップテンポの曲が課題曲として与えられたのですが、アイドルに楽曲を提供する審査員の方によると、バラードだけでは歌手としての活躍の場が限られるので、ポップスが歌えてコマーシャルでも活躍できるように用意した課題曲の歌い方を見たいとのことです。つまり、この番組をステップにして歌手デビューするにしても、純粋に歌で勝負できるような形で売り出してもらえるかどうかはわからず、場合によってはいいように所属事務所に使われてしまうリスクもあるというわけです。

もし、本当に歌だけを純粋に多くの人に聴いてもらいたいと思っている人がいるなら、YouTubeで自分の歌っている姿をアップすることでも番組出場のチャンスを得られる可能性のある「THEカラオケ★バトル」で存在感を示しつつ、並行してYouTubeで自分のチャンネルを作るなどして自分自身の歌う姿を売り込んでゆくという手もあります。極端な例を出すようで恐縮ですが、もし日本にスーザン・ボイルさんのような美声を出すことのできる才能があったとしたら、その人にあえて「イノセントワールド」を歌わせることもないと思うのです(別にMr.Childrenをディスっているわけではありません。それくらい両者の音楽的な立場が違うということです)。その辺は個人の感じ方として、歌えるなら何でもいいと思えはあえて止めはしませんが、そもそもジャニーズ事務所所属タレントが司会をしている時点で、彼らの引き立て役としての立場を抜け出すには、相当の才能を番組で見せないとならない点でも大変だと正直なところ思ってしまいます。

(2017.11.27追記)

とりあえず、トーナメントの優勝者が決まるまでは継続して見続けようと思って、リアルタイム視聴ができなかったので録画視聴をしましたが、前回は60分で予選ブロックの全員の歌唱を聞くことができたのですが、なんと今回は同じ60分で残りのBブロック予選と準決勝と決勝をやるというのはまさかと思ったのですが、やはり出場者の歌唱をカットしていました。

しかも、予選ブロックで出場した人全員です。Bブロックで運良く準決勝に出られた人は良かったですが、そうでない人は出たのか出なかったのか、視聴者にとってどうでもいい人になっていましたので、真剣に歌手を目指してこの番組に出場した人に失礼です。事前にこの番組に出ると伝えていた出場者の気持ちなど全く考えないスタッフの番組の作り方はびっくりするほどですが、先週出場者の歌を全員聞くことができたAブロックはシードだったのかの説明もなくBブロックの人たちをカットするような番組に、将来を託すのはどうかと本気で思います。

カラオケマシンを導入して歌唱を判断する前に、番組を見ている人にも同じ土俵で争っている様を流してくれないと、本当に才能があるかもしれない人たちを見逃してしまいます。例えば、TBSの「いかすバンド天国」では審査員の判断で完奏できないバンドもありましたが、スタッフによって勝手に編集されることはありませんでした。視聴者は出演する全てのバンドを見て自分なりのランキングを付けられたことでバンドブームが起き、今でも活躍するBEGINのようなバンドも生まれたのですがはっきり言ってあくまでこの番組は「THE カラオケ★バトル」から派生した番組として認知されるだけのものだと思えてきました。

今回決勝まで見てBブロックから出てきた人が優勝しましたが、まずは視聴者はその優勝した人が予選を勝ち抜けるだけの力量を持っていたのかというところについては予選の様子がわからないので(他の出場者との比較も含めて)判断ができず、さらに一部の審査員の中には空気を読まずにその方に満点を付けた方もいて、今後もし今回の優勝者よりも素晴らしいとその審査員の方が考えるような人が出てきたらどうするつもりだろうと番組の根本的な審査方法にすら疑念が出てきてしまいました。

あくまでこの文章は番組全体を見た感想ということで書かせていただきましたが、出演者の一人ひとりに思い入れができないオーディション番組の形式を今後も続けるのであれば、勝手にやって盛り上がっていてくれとしか見ている方としては思えないということを最後に加えさせていただきたいと思います。

(番組データ)

今夜、誕生!音楽チャンプ テレビ朝日
11/19 (日) 22:18 ~ 23:35
【MC】村上信五、黒木瞳
【審査員(五十音順)】小柳ルミ子、菅井秀憲、杉山勝彦、森公美子
【ゲスト】ホラン千秋
【挑戦者(五十音順)】織田智朗、柿原穂乃佳、柏野昌俊、菜摘、fumika、三木真里亜

(番組内容)

■いよいよ本格スタート!「本気で歌手を目指す」歌の実力者が全国から集結!1回戦・準決勝・決勝、3つのステージで「第1回歌唱チャンプ」が決定する! ■本当に歌の上手いアマチュアvsプロ審査員!本気と本気のぶつかり合いで、オーディションは白熱! ■「未来のスターを発掘したい!」という審査員の熱い思い。中には「こんなに愛のあるコメントがもらえるとは思わなかった」と涙する挑戦者も!

■今回は1回戦Aブロックの6人が挑戦。得点上位2名が準決勝ステージに進出できる。「信用金庫マンから脱サラして歌手を目指す」30歳の男性や、「広島出身!15歳の歌うま女子高生」など実力者ぞろい。 ■審査員には、声楽家・ヴォーカルディレクターの菅井秀憲、作詞家・作曲家の杉山勝彦のほか、歌手・女優の小柳ルミ子や、オペラ・ミュージカルでも活躍する森公美子が参戦! ■前代未聞のオーディションが開幕する!


「スポーツ大将」レギュラー化は成功するのか

テレビ朝日が27ぶりの放送と気合いを入れている「ビートたけしのスポーツ大将」ですが、すでにTBSには「炎の体育会」がありますし、同じテレビ朝日には改編期や正月のスペシャル番組として続いているとんねるずの番組もあります。さらにオリンピック後の特番などでメダリストをもてなすような番組まで含めると、特段の目新しさはすでになくなりつつあると言えるでしょう。今から新しく番組を作るにしてもそこまでのワクワク感はないのではと思ってしまいます。

なぜなら、世界を相手にして戦うだけのポテンシャルを持ったスポーツ選手のうち、テレビのバラエティに出てくれる現役選手の数は限られるので、出てくれるような選手達は当然他局のスポーツバラエティにも出ますし、その一流アスリートと対決するキッズについても、すでに今回見た「スポーツ大将」の初回放送分から先日放送された「炎の体育会」に出たばかりの子が「スポーツ大将」にも出てきました。つまり優れた人材を出そうとすればするほど、人選によるサプライズが演出しにくいのです。

ただそんな中でも、27年前から始まった同じ番組から生まれたレールの上を走って一般ランナーと競う当時のテレビ朝日の美術スタッフが精魂込めて作った「カール君人形」から派生した「北野暴流闘(きたの・ぼると)君」がどのように仕上がっているかが今回の番組の見どころだと思って見ていました。この点については過去の特番でも使っていたからなのか動作が安定しているようで、多少の誤差はありますが、100メートルをおおよそ10秒以内でコンスタントに走る能力を身に付けていたのはさすがでした。昔のカール君人形は人が押すことでスタートさせていたためか、レールを外れて出走不能になるような事もたまにはありましたが、今度はそうした事故も最小限に抑えることができれば、全国のアマチュアスポーツを楽しむ人たちの目標とすることも可能だと思います。

しかしながら、今回の内容や公式ページで紹介されている次回予告を見た範囲では、オリンピックを目指す子供を一流アスリートと対決させる事を主にやるようなので、こうした企画だけではどうしても種目や出場者のインフレが起こって回数を重ねるごとに番組としての魅力が薄れるかも知れません。さらに悪いことに前日の土曜に放送される「炎の体育会」があるので、同番組との企画や出演者のダブリが目立つようになったら、わざわざ見なくてもいいやとなってしましまいかねません。こうした状況を逆転するためには放送日を金曜日にできれば良かったですが、それができない以上、現状では過去の番組を見たことのない人からすると、炎の体育会の劣化版だと見られてしまう可能性があります。

その点、昔の「スポーツ大将」にはビートたけしさん本人が参加する草野球企画もあったりして、当時のたけし軍団をテレビに出す場としても機能していて、一般参加者との交流が面白い部分もありました。今回の番組の出演者について見ていくと、2015年に放送された特番も今回からの新番組も、アシスタント的なMCにはナインティナインを起用することで、なかなかたけし軍団が入ってくる余地もなさそうです。

後から様々な番組紹介のサイトを見ていくと、この番組自体1年間の期間限定で放送されるという記述があるサイトがありました。公式ページにはそうした記載はありませんので、何らかのインタビューや取材記事から引いているとは思うのですが、それだとさらに2020東京オリンピックを盛り上げるという理由で作られるものでもなさそうですし、一体何の目的で作られたのかという疑問の方が大きくなってしまうという変な番組ですね。もちろん、この「1年間限定」という事がガセネタではなく本当だったらという前提はありますが。

それとも、「スポーツ大将」というブランドをビートたけしさんからナインティナインに譲り渡すための1年限定の番組なのか? という風に考えてしまうと、もはや番組でどんなスポーツが行なわれるかということは関係なく、一年後にこの番組はそのままひっそりと終わるのか、それとも全く何の説明もなく「ナインティナインのスポーツ大将」という風に来年の今頃には名前が変わっているのか、そちらの方に興味が出てきてしまうということになってしまいます。

それはまさにお笑いの世代交代と言ってもいいのかも知れませんし、ビートたけしさんは優先順位的にはやはりご自身の監督される映画の方に集中したいということもあるでしょう。ただし、日曜夜8時というのはNHK大河ドラマでさえ苦しいと言われる「世界の果てまでイッテQ!」という高視聴率番組がありますので、そもそも1年間の放送が無事に持つかということも言えてくると思います。

そんな事を考えてみると、改めてその地力が試されるのがナインティナインのお2人で、視聴率的イッテQ!に惨敗ということにでもなれば、新たな冠番組どころか他の仕事にも影響が出てくるのではないでしょうか。となると、岡村さん矢部さんはかなり体を張ってロケを頑張らなければいけなくなり、裏番組の宮川大輔さんとのガチな勝負が展開される可能性があります。そんな形でこの番組が化けていくのか、短い期間でいつの間にか終了してしまうのか、まさにナインティナインにとっては正念場ということで、今後の状況を継続して観察していこうかなと思っています。

(番組データ)

ビートたけしのスポーツ大将 初回2時間スペシャル 27年ぶりにレギュラー復活! テレビ朝日
11/12 (日) 18:57 ~ 21:00
出演 ビートたけし・ナインティナイン

(番組内容)

伝説のスポーツバラエティーが27年ぶりにレギュラー復活!初回はたけし&ナインティナインが卓球対決に参戦! アスリートVS天才キッズ、水泳・卓球・暴流闘陸上対決!