「M-1グランプリ」には常に採点の進化を望みたい

私自身、お笑いの専門家ではなく、単にテレビを見て楽しんで、このブログでは単に感想を書いているだけなので、今回の題材である「M-1グランプリ」について何か書けるとしたらあくまで自分の好みの芸人さんの話とかになってしまうのですが、ここでは「お笑い」の話というよりも、その審査について改めて考えてみたいと思いました。

というのも、芸歴15年までという制限を付けて、優勝賞金が1,000万円で、優勝者には相当のテレビ番組出演や営業のオファーが来ると思うので、皆の総意でチャンピオンを決めなければならず、本来そこには「情」というものを入れてはいけないものであると考えます。

例えば、過去に坂本博之さんというボクシング選手がいまして、この方は児童養護施設の出身で努力の結果世界タイトルマッチにまでこぎつけたものの、残念ながら世界チャンピオンになることはできませんでした。世界戦の会場には彼の出た児童養護施設の児童が応援に来ている姿が大写しになる中、心情的にはどうしても彼にチャンピオンになってボクサーとしてのストーリーを完結させて欲しいと思っていたのですが、現実というのはある意味残酷です。勝負の世界というのはメロドラマとは全く異質のもので、結局はKOするか、ポイントで1ポイントでも勝っているかしなければダメなのです。ですから、そんな真剣勝負の場で審判の買収や不可解な判定があれば大きな問題になります。

私自身は「M-1グランプリ」という場は1,000万円の賞金を出した時点で、決して後から疑われるような判定を出してはならず、参加者が不正を働いてもいけないと思っています。今回の審査がダメだからということでは決してないことをまずはお断わりさせていただきます。その上でテレビを見ている側としては、常に公平なジャッジをしているという部分に揺らぎが出ることのないよう、大きな問題が今後も出ないように続けていって欲しいと思います。

私が「M-1グランプリ」を見るのは実は前々回からとかなり後になって見出したのですが、前々回は敗者復活で最後に出た「トレンディエンジェル」が優勝しました。彼らは敗者復活からの勝ち上がりの勢いのまま、最後にネタをやった評価が高く優勝までつっ走ったという印象でしたが、この時に思ったのは演技順によってかなり審査員や観客の印象が変わっているなと思いました。

これは採点競技全てに言われることですが、最初は点が出過ぎないようにセーブされ、一番最後の演技者はその後に出る人はいないので見たままの印象でそのまま採点されるという有利さがあります。トレンディエンジェルについては、そうした勢いをうまく利用したということになるわけですが、そもそも敗者復活から本選に出られるなんてことはその時には想像もしない中でほんの少しの可能性に賭けていたわけですし、単に敗者復活者はずるいとまでは思わないものの、冷静に見てやはり誰が来ても敗者復活から出場する方が有利だということになれば、そうした文句が出ないように審査方法も変えていく必要が出てきます。

今回の審査方法も、すでに順番を決めて待機するのではなく、その場でくじを引くまで誰がどの順番で出るかわからない方法にしていたというのは評価でき、これで一番バッターになってしまったら、それはそれで仕方ないと諦められる範囲の事だと思えました。人気者になるには運も必要だとは確か萩本欽一さんの言葉だと思いますが、もし今回優勝した「とろサーモン」さんが一番バッターだったら違った展開だったかも知れませんし、結果として「とろサーモン」さんには実力だけでなく「運」もあったという風にも言えると思います。

審査員は前回の5人から7人に戻り、一人の点数が100点満点で合計700点満点で審査されましたが、この「満点方式」についても今後は一考の余地はあるのではないかと思います。これについても先例があります。オリンピックにおける体操競技は以前は満点を10点としてそこから減点をしていく方式でした。そのため、それまでの判定基準を超えるようなとんでもない才能を持ったルーマニアのコマネチ選手が出てきた時には、その演技評価を10点にせざるを得ず、その後のロサンゼルスオリンピックでは10点満点が連発されてしまいました。

そうした事を考えた上で体操競技は今の審査方法になったのですが、このように、満点という制限の中で全てを決めるよりも、「演技者の勢い」のようなものは審査点の中でも別に分けた加点方式にするとか、逆に言葉が早すぎたり聞こえづらかったりして何を言っているかわからないとか、明らかにミスがあったというような場合の減点基準をはっきりさせたほうが更に多くの人が納得する審査になるかと思うのですが。もちろん、審査員個人の「好き嫌い」で決めてもいいのですが、審査員も出場者も同じ舞台やテレビでご一緒されることもあると思いますので、できるだけ客観的な部分も入れた評価で点数を出したほうが個人的には納得できます。もちろん、ここまで私が書いた事よりももっと公平さを演出できるような審査方法があればどんどん採用すべきですし、そうして常に審査方法や審査員を変えながら出演者にM-1グランプリ対策をさせないというのも大事だと思います。

それから、M-1グランプリを一日でスターを作る番組として考えた場合、いつもテレビで見ているコンビが多く出てくるので、その分プロでないアマチュアが残るという下克上がなかなか見られないというのは残念です。この点についてはこれまでの主張と比べるとかなり甘いと言われるかも知れませんが、テレビ東京の大食い決定戦のように新人戦を開催し、そこで優勝したコンビに本戦参加についての何らかの優遇策(一部予選を免除したシードのようなこと)を考えるというのもさらに競争を促して面白くなるような気がします。

駆け出しでもみっちり漫才の基本を仕込まれたプロのルーキーコンビと、単なる娯楽のために組んだ社会人や学生のコンビとの差は果たしてどのくらいあるのかとか気になりますし、何よりテレビを見ていて面白いのは「ジャイアント・キリング」がガチ勝負で実現することでもあるのです。サッカーの天皇杯で市立船橋高校がプロチームや大学チームを倒し、当時日本トップの実力があったと思われる横浜マリノスとの対戦でも2点のビハインドから追い付き、延長戦まで戦い抜いてPK戦までもつれこんだことでマリノスを敗戦の危機にまで追い込んだ事は今でも強烈に覚えています。

もし新人戦経由で本戦に出場したアマチュアコンビがグランプリを取ったら、その盛り上がりはどうなってしまうのか考えただけでもワクワクします。あくまでアマチュアやルーキーを優遇せず、これまで通り最初から実力で這い上がれなければダメだというなら、あえて提案したいのがコンビの名前だけで騒がれて有利になることの無いよう、敗者復活戦も含めて完全な無観客漫才にするという方法です。お客さんがいない中で漫才をするというのは劇場で漫才をしてきたコンビにとってはとてもできないと思われるかも知れませんが、それでこそ過去の名声やイメージを廃して評価することができるとも考えられます。少なくとも人気があったり知名度があるから有利にはなりないような配慮もしていただいた方が、今よりもずっとエンターテイメント系競技という感じで楽しめるものになると思うのですが。

(番組データ)

M-1グランプリ2017 テレビ朝日
12/3 (日) 18:57 ~22:10
【司会】今田耕司、上戸彩
【審査員】 オール巨人、上沼恵美子、春風亭小朝、中川家・礼二、博多大吉、松本人志、渡辺正行 ※50音順
【出場者】 かまいたち、カミナリ、さや香、ジャルジャル、とろサーモン、マヂカルラブリー、ミキ、ゆにばーす、和牛 ※50音順【敗者復活枠】スーパーマラドーナ

(番組内容)

4094組を勝ち抜いた最強の10組が最後の決戦へ!出番順はその都度、抽選で決められる新ルールも導入され、展開は予測不能!M-1第13代王者誕生の瞬間を目撃せよ!
【出番順】 ファーストラウンドの出番順は、その都度「笑神籤(えみくじ)」と呼ばれるクジを引き、呼ばれたコンビがそのままネタを披露するという新ルールを導入!手に汗握る予測不能の展開となるでしょう!!
【大会ルール】 ファーストラウンドは審査員1人につき100点、700点満点で採点。上位3組が最終決戦に進出し、再びネタを披露。審査員7人が最もおもしろかった組に1票を投じ、最多票が優勝となる。


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