「今夜、誕生!音楽チャンプ」は「THEカラオケ★バトル」と何が違うか

審査員4名に判断されるとは言え、審査員1人の持ち点は25点で合計100点、残りの100点はカラオケマシンの入ったロボットによって決定され、得点の高い人が勝ち抜けるというトーナメント戦を制して優勝するとプロデビューのチャンスが与えられるというのが「今夜、誕生!音楽チャンプ」という番組の基本的なシステムです。あえて書くとすでにカラオケマシンを使った歌のうまい人のNo1決定戦といえば、テレビ東京の「THEカラオケ★バトル」があり、さらにそこで優勝しなくても目立った女子高生はすでにコマーシャルでデビューするなどの実績もあります。そんなわけで2つの番組の違いについて考えながら番組を見てみました。

この「今夜、誕生!音楽チャンプ」という番組は今回で2回目ですが、前回はどんな番組であるのかというお披露目の感じが強く、審査員のコメントも前回はわざときつめに出場者に発していたようでもありました。今回もきつめに行くのかなと思ったら辛辣にではあるもののかなり優しく、さらに別の進路のおすすめまでアドバイスをするという感じに変わっていて、審査員の技術的な意見についてはご丁寧にVTRで後追いの解説まで付くという感じで、本気で歌がうまくなりたいと思う同年代の視聴者にとってはそうした審査員の意見がそのまま歌をうまく歌うための汎用的なアドバイスとしても機能しているようにも思いました。その点は「THEカラオケ★バトル」とは違いましたが、その分審査員の本気の言葉の強さが薄まってしまい、出演者と審査員のやり取りを楽しみたいという視聴者にとっては何か物足りないという感じがしたのも確かでした。これならシビアにカラオケマシンの採点だけで決めた方がすっきりするのではないかとも思いましたし。

せっかく人間の審査員を出すわけですし、今回の予選でも2名しか準決勝には行けず、6人の予選出場者のうち4人落ちるわけですから、あえて審査員は出演者からいい人だと思われなくてもいいというような形での厳しい言葉があった方がオーディション番組としては盛り上がると思いますし、生半可な気持ちで応募してくる人を減らす効果もあると思います。

恐らく、前回の放送を見た方々がインターネット上でかなり審査員についての批判を繰り広げていましたので、そうしたネットの反応にも配慮したのかと思われますが、過去のオーディション番組では「スター誕生!」の阿久悠さんや、「全日本歌謡選手権」の淡谷のり子さんや竹中労さんのように、時には出場者に厳しい事を言ってあげないと、中途半端な希望を持ったまま人生の大切な時間を無駄に過ごしてしまう人も出てきてしまうかも知れません。厳しい物言いだけをとらえて、何様だ! と怒る人達がいるのは十分わかりますが、あなたくらいの才能では、とても歌手としてやってはいけないと、いかに厳しい言葉であってもはっきり言ってあげることがその人にとっての優しさであるかも知れないのです。そうした厳しい言葉を言われたからと諦めるようならすでに見込みはなく、それでも何回もチャレンジする中で出てくる才能も(歌手以外の才能も含めて)あるかも知れません。

そういった意味で、やはり審査員はいい人と思われなくてもいいから、真剣に厳しい物言いをされる方にもきちんと依頼すべきだと思いましたし、個人的には前回かなり厳しい発言をしていた方がその方針を変えてしまったのが何よりも残念でした。

そして、もう一つ番組を見ていて残念に思ったことがあります。今回見事予選を勝ち抜いた2人は、準決勝で歌う歌が勝ち抜いた時点ですでに決まっていたのです。Mr.Childrenの「イノセントワールド」というアップテンポの曲が課題曲として与えられたのですが、アイドルに楽曲を提供する審査員の方によると、バラードだけでは歌手としての活躍の場が限られるので、ポップスが歌えてコマーシャルでも活躍できるように用意した課題曲の歌い方を見たいとのことです。つまり、この番組をステップにして歌手デビューするにしても、純粋に歌で勝負できるような形で売り出してもらえるかどうかはわからず、場合によってはいいように所属事務所に使われてしまうリスクもあるというわけです。

もし、本当に歌だけを純粋に多くの人に聴いてもらいたいと思っている人がいるなら、YouTubeで自分の歌っている姿をアップすることでも番組出場のチャンスを得られる可能性のある「THEカラオケ★バトル」で存在感を示しつつ、並行してYouTubeで自分のチャンネルを作るなどして自分自身の歌う姿を売り込んでゆくという手もあります。極端な例を出すようで恐縮ですが、もし日本にスーザン・ボイルさんのような美声を出すことのできる才能があったとしたら、その人にあえて「イノセントワールド」を歌わせることもないと思うのです(別にMr.Childrenをディスっているわけではありません。それくらい両者の音楽的な立場が違うということです)。その辺は個人の感じ方として、歌えるなら何でもいいと思えはあえて止めはしませんが、そもそもジャニーズ事務所所属タレントが司会をしている時点で、彼らの引き立て役としての立場を抜け出すには、相当の才能を番組で見せないとならない点でも大変だと正直なところ思ってしまいます。

(2017.11.27追記)

とりあえず、トーナメントの優勝者が決まるまでは継続して見続けようと思って、リアルタイム視聴ができなかったので録画視聴をしましたが、前回は60分で予選ブロックの全員の歌唱を聞くことができたのですが、なんと今回は同じ60分で残りのBブロック予選と準決勝と決勝をやるというのはまさかと思ったのですが、やはり出場者の歌唱をカットしていました。

しかも、予選ブロックで出場した人全員です。Bブロックで運良く準決勝に出られた人は良かったですが、そうでない人は出たのか出なかったのか、視聴者にとってどうでもいい人になっていましたので、真剣に歌手を目指してこの番組に出場した人に失礼です。事前にこの番組に出ると伝えていた出場者の気持ちなど全く考えないスタッフの番組の作り方はびっくりするほどですが、先週出場者の歌を全員聞くことができたAブロックはシードだったのかの説明もなくBブロックの人たちをカットするような番組に、将来を託すのはどうかと本気で思います。

カラオケマシンを導入して歌唱を判断する前に、番組を見ている人にも同じ土俵で争っている様を流してくれないと、本当に才能があるかもしれない人たちを見逃してしまいます。例えば、TBSの「いかすバンド天国」では審査員の判断で完奏できないバンドもありましたが、スタッフによって勝手に編集されることはありませんでした。視聴者は出演する全てのバンドを見て自分なりのランキングを付けられたことでバンドブームが起き、今でも活躍するBEGINのようなバンドも生まれたのですがはっきり言ってあくまでこの番組は「THE カラオケ★バトル」から派生した番組として認知されるだけのものだと思えてきました。

今回決勝まで見てBブロックから出てきた人が優勝しましたが、まずは視聴者はその優勝した人が予選を勝ち抜けるだけの力量を持っていたのかというところについては予選の様子がわからないので(他の出場者との比較も含めて)判断ができず、さらに一部の審査員の中には空気を読まずにその方に満点を付けた方もいて、今後もし今回の優勝者よりも素晴らしいとその審査員の方が考えるような人が出てきたらどうするつもりだろうと番組の根本的な審査方法にすら疑念が出てきてしまいました。

あくまでこの文章は番組全体を見た感想ということで書かせていただきましたが、出演者の一人ひとりに思い入れができないオーディション番組の形式を今後も続けるのであれば、勝手にやって盛り上がっていてくれとしか見ている方としては思えないということを最後に加えさせていただきたいと思います。

(番組データ)

今夜、誕生!音楽チャンプ テレビ朝日
11/19 (日) 22:18 ~ 23:35
【MC】村上信五、黒木瞳
【審査員(五十音順)】小柳ルミ子、菅井秀憲、杉山勝彦、森公美子
【ゲスト】ホラン千秋
【挑戦者(五十音順)】織田智朗、柿原穂乃佳、柏野昌俊、菜摘、fumika、三木真里亜

(番組内容)

■いよいよ本格スタート!「本気で歌手を目指す」歌の実力者が全国から集結!1回戦・準決勝・決勝、3つのステージで「第1回歌唱チャンプ」が決定する! ■本当に歌の上手いアマチュアvsプロ審査員!本気と本気のぶつかり合いで、オーディションは白熱! ■「未来のスターを発掘したい!」という審査員の熱い思い。中には「こんなに愛のあるコメントがもらえるとは思わなかった」と涙する挑戦者も!

■今回は1回戦Aブロックの6人が挑戦。得点上位2名が準決勝ステージに進出できる。「信用金庫マンから脱サラして歌手を目指す」30歳の男性や、「広島出身!15歳の歌うま女子高生」など実力者ぞろい。 ■審査員には、声楽家・ヴォーカルディレクターの菅井秀憲、作詞家・作曲家の杉山勝彦のほか、歌手・女優の小柳ルミ子や、オペラ・ミュージカルでも活躍する森公美子が参戦! ■前代未聞のオーディションが開幕する!


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