月別アーカイブ: 2017年12月

昔の企画をそのままやれない現代のテレビ

現在、多くのテレビにはBSだけでなくCSチューナーが付いていて、有料でCSチャンネルを見ることができます。有料チャンネルを契約していなくても、テレビ局の方でスクランブルを解除することで、全てのBSアンテナを付けている人に放送を見せることができ、一年の中で数は少ないものの無料で番組が見られるキャンペーンを行なっていることがあります。

そんな中で、地上波を持つテレビ局が主導するCSチャンネルの中には、過去に地上波で放送された「伝説の番組」を再放送しているチャンネルがあります。そんな中で私が久しぶりに見ることができた懐かしくさらに面白かった番組として「天才たけしの元気が出るテレビ」(日本テレビ系)があります。

この番組の面白さはとにかくロケでのVTR作りにあり、今では大御所として腫れ物に触るようにテレビバラエティに出ることの多い「X JAPAN」も若かりし頃に出演して莫迦みたいな姿を晒していました。特に、「ヘビメタ」のコーナーの一環として、お客の減少で苦しんでいると番組に連絡した「やしろ食堂」の売り上げを立て直すために、「X JAPAN」のメンバーが自作の曲をひっさげてゲリラ的にその食堂でライブを行なった時には本当に腹が痛くなるほど笑ってしまいました。ネットで調べるとHIDEが加入して初めての仕事だったそうですが、店を壊したり火を吹いたり、食事をしているお客さんに目掛けて大声で「食えー!」と叫ぶライブは、まだ残っていればYouTubeで見られるかも知れませんので、当時のX JAPANが見たい方は探してみるといいでしょう。

番組ではオープニングトークの後に、ビートたけしさんの唯一の番組内ネタコーナーとして行なわれていたのが、「こんな○○はイヤだ!」という、かつてのツービートでの漫才ネタを彷彿とさせるかなり不謹慎な言葉も飛び出すコーナーでした。今回の「こんな世の中はイヤだ!」はそのコーナーを継承したものだと思われますが、様々な番組のエッセンスが入っていまして、長時間のスペシャル番組を作るのは大変だなあとしみじみ感じてしまいました。

というのも、番組名の「こんな世の中はイヤだ!」とし、視聴者からの投稿(少なくともテレビで募集しているのを見た記憶が無いので、インターネット経由で募集したものかも知れません)で「こんな医者はイヤだ!」という事で作った再現VTRはほぼ「さんま御殿」のノリで、最初のVTRには漫才コンビの「馬鹿よ貴方は」の平井ファラオ光さんがお医者さんに扮して出ていたのを確認したのですが(オフィス北野・俳優部のツイッターで「馬鹿よ貴方は」が出るという告知から裏取り済)、VTR出演者にはお笑い系の人達もいたのにその事については触れることもなく淡々と番組が進行していったのは、ちょっと悲しかったです。せめてたけしさんには、再現VTRで面白い事も言わず、淡々と演技をしているお笑い芸人さん達に突っ込んで欲しかったですが。

また、ネットのトラブルや日本にやってくる海外旅行客の旅行マナーについて、鈴木宗男さんまで出して主に中国をターゲットにして語るのは局の違う、そのまんま「TVタックル」のノリでしたし、車の事故のVTRにいたっては、海外のニュース映像としてすでにどこかで見たものばかりで、個人的にはそれほど新鮮さはありませんでした。とにかくそうしたごっちゃ煮的なエッセンスで番組を進行させようとしている中、コーナーとコーナーの間に入ってきたのが、懐かしの「こんな○○はイヤだ!」ネタで、実はこの番組のメインコーナーと言っても良かったのではないでしょうか。

最終的にはたけしさんの育った「足立区」を題材に「こんな足立区はイヤだ!」というネタをやりましたが、面白かったのは「災害義援金に30円しか集まらない」というネタがあり、そんな事はないだろうと視聴者を含む出演者が突っ込みを入れたところ、実は実際にスタッフが足立区を回り、恐らくコンビニのレジ前に置かれていた募金箱の写真を撮った上でしっかりと裏取りをしてネタをしていたことがわかり、本当に30円しか義援金が足立区では集まっていなかったのかと爆笑すると同時に、昔のように勝手な思い込みで面白い事を言ったら必ず苦情が入るから、ここまで裏を取った上でネタにするような方法しか今はできないのだろうなとも思えてきて、ちょっと笑えなくなりました。

元々、たけしさんは不謹慎な毒を吐くことで人気が出、見ている視聴者もそれを喜んで見ていたはずなのに、いつの間にか適当に毒を吐くような方法はテレビではやりにくくなってしまったということがあります。個人的には、このような番組もそれなりに楽しむことはできたのですが、今の若手芸人が大挙して出演する「お笑いウルトラクイズ」をぜひ見たいのですが、過去のものを放送する事はできても、昔やっていたことを現在に置き替えてそのままやるということができなくなってしまったのかなとも思えます。

テレビ自体は若者を中心にテレビ離れが言われ、それこそ有料のCS放送に加入して過去の伝説のバラエティ番組が見たいと思っている人もいるというのに、昔からテレビを見てきた者としても、「天才たけしの元気が出るテレビ」や「お笑いウルトラクイズ」のような番組を現代で復活させることのできないテレビというよりも社会的な状況というものに危機感を感じてしまいます。地上波がだめならBS日テレの深夜にテレビショッピングの間あたりにでも忍ばせて告知もなしにすれば新作を放送できるのではないかとも思うのですが。

(番組データ)

たけし&東野が叫ぶ「こんな世の中はイヤだ!」衝撃の病院&迷惑運転&(秘)飲食店潜入 日本テレビ
12/13 (水) 21:00 ~ 22:54 (114分)
【MC】ビートたけし、東野幸治、桝太一(日テレアナウンサー)
【ゲスト】石原良純、柴田理恵、滝沢カレン、竹森現紗(弁護士)、夏木マリ、ブルゾンちえみ、山崎弘也 五十音順
【ロケ】児嶋一哉(アンジャッシュ)、小峠英二(バイきんぐ)、中岡創一(ロッチ) 五十音順

(番組内容)

ビートたけしと東野幸治の強烈タッグ!国民の不満を一刀両断!▼全国から告発されたトンデモ病院&飲食店に小峠、中岡、児嶋が潜入取材!▼鈴木宗男緊急参戦!マナーの悪い外国人をアメ横で徹底取締&スタジオで柴田理恵が中国人に大激怒!▼ネット通販トラブル&石原良純エロ動画での大失態が明らかに!▼驚愕足立区の真実!たけしがアノ伝説のコーナーで大暴れ!▼味見しない居酒屋のマル秘酒をザキヤマ&ブルゾンが決死の試食


バラエティと高校講座の垣根を取り払う「滝沢カレン砲」

まずは番組データの出演者の顔ぶれを見てもらうと、授業形式の国語講座とは言ってもかなりくだけていることがわかるでしょう。何と言ってもコンセプトが、民放のバラエティ番組に登場してどこまでが真面目なのかふざけているのかがわかりかねる日本語のよくわからない生徒役の滝沢カレンさんを中心にして、教えるのはこむずかしい学者の先生ではなく、クイズ番組にも気軽に出演するくだけた印象のある金田一秀穂先生(滝沢カレンさんの第一印象は「悪い人ではない」とのこと)。そして、本人をそのまま出すと学級感が薄れるかも知れないのでオウムの声だけの出演となったのか、滝沢カレンさんのボケに突っ込む力と、滝沢カレンさんが何を言っているかわからない状況でもその意を拾って伝える力は十分で、番組内でいい味を出しているナイツの土屋伸行さんという鉄壁の布陣で番組は進行していきます。

同じようなタレントが出演するNHK高校講座と比べてこの番組はとにかく対象を低く、しかも深いところまでという(滝沢カレンさんのリアクションが高度に切り返してくる場合もあるため)なかなか莫迦にしたものではない番組に仕上がっているように感じます。

私自身、たまたま時間が空いている時にツイッターを見ていたら番組開始直前にこの番組のツイートを見てあわてて見たのですが、継続して見ることによってあたかも民放のバラエティ番組のノリを持ちながらも、きちんと日本語の使い方の基本が理解できるような構成になっています。このへんはさすがNHK教育の番組といったところです。

もっとも、番組自体に台本というものがあり、滝沢カレンさんもその台本をないがしろにせず、そのまま台本通りにやっているということが予想されるので、民放のバラエティと比べると滝沢さんの発言がやけに優等生らしくスラスラ話されることに違和感を感じることもありますが、バラエティの滝沢カレンさんを見て、この子は国語ができなそうと小馬鹿にするようなお子さんがいらした場合、改めてこの番組を録画しておいたものを見せながら、お子さんに金日一先生が教えた内容をフォローしていくだけでも無意識のうちにお子さんの国語の力が付いていくのではないかと思えます。

また、それこそ番組名の「あらためまして ベーシック国語」という題名の通り、大人や海外から日本人来て住んでいる人が改めて自己流で学習したことの確認に使うというのもいいでしょう。特にテレビのバラエティ好きの人だったら楽しく見ているだけでも、今さら大人が聞けない事がわかる番組になっていると思います。

ただ、一つ気がかりなのは、この番組を通じて滝沢カレンさんの国語力が上がっていくと、この番組自体の面白さも薄れてしまうかも知れず、フジテレビの「全力!脱力タイムズ」でのナレーションがすらすら読めてしまって面白味がなくなってしまうのではないかという事がありますね。ただ、無知そのものを売りにして「笑われる」タレントとして生きながらえるよりも、国語の正しい使い方を十分わかった上で本当にボケられる技を身に付けてくれればその方が面白いですし、もしかしたら土屋さんと二人でナイツの漫才をそのままできるくらいになるかも知れません。

個人的にはナイツの2人と滝沢カレンさんの3人で営業に出られるくらい天然でないボケを連発できるしゃべりの力をこの番組を通じて身に付けてくれれば、テレビはさらに面白くなりそうな感じがします。

(番組データ)

NHK高校講座 あらためまして ベーシック国語「印象を深める表現」NHKEテレ1
12/12 (火) 14:00 ~ 14:10 (10分)
【出演】杏林大学教授…金田一秀穂,滝沢カレン,
【声】土屋伸之/ナイツ(オウム)
【語り】小林ゆう

(番組内容)

国語の基本をあらためて学ぶ、講座バラエティー。滝沢カレン(生徒役)と金田一秀穂(先生役)、そして謎のオウム(声:ナイツ土屋伸之)が教室で国語の授業を行う。今回のテーマは「印象を深める表現」。倒置法、対句法、などを使うと、どのような効果があるのか、を学ぶ。最後に金田一先生が紹介したのが「一語文」だが、果たして一語文とは?


女芸人のネタより「人の不幸」の方が見る側にとっては面白い

この日の裏番組には女芸人のナンバーワンを決定する「THE W」(日テレ系で放送)があったのですが、正直ネタ番組でないコンペというのは笑いという要素以外の出場者の人生を凝縮したVTRを見せられるなど、普通にお笑い好きでないとなかなか通しで見るにはきついものがあるというのが正直なところです。

そんなわけで、今回は「THE W」は少しCMの間に変えてどんな様子か見たくらいで、人の余命を勝手に付けてランキング化する「名医のTHE太鼓判!余命宣告3時間SP」の方をメインに見ていました。

何が面白いかって、やはり他人の不幸ほど面白いことはないということで、今回の出演者では(敬称は略させていただきました)、

・河中あい(元亭主がアパホテル不倫の袴田吉彦さん)
・高橋ジョージ(泥沼不倫騒動から今は豪邸での単身生活)
・とにかく明るい安村(不倫騒動の後で仕事激減)
・若狭勝(小池百合子さんに怒られて無念の選挙落選)

など、ツッコミどころ満載で、番組内では実際の生活の様子をあの「サンデー・ジャポン」ばりの演出を加えて見ている人を笑わかしにかかるので、この番組が健康な生活を目指す医療番組であることを忘れてしまいます。

なお、今回の出演者のうち余命の短いとされたランキングの一位と二位は若狭勝さん(一位で7年)と高橋ジョージ(二位で9年)さんで、このままの生活を続けないで生活習慣の改善を促すという番組構成になっています。この二人とも生活改善前のVTRは演出でかなり面白く作られていて、すでにもう自分の人生を笑われるのを覚悟でこうした番組に出て、テレビを見ている「人の不幸を見るのが好き」という視聴者に向かって、自ら不幸を背負い込んだような演技らしい表情を作っていたのが高橋ジョージさんでした。

今回の番組で余命の短かさを改善するためのメニューを実践し、余命が12年に伸びましたが、このバラエティ的に出した余命以上に高橋ジョージさんはこれからもテレビに出演し、それなりにテレビをうまく使って芸能界でしぶとく生き残っていこうとする気合というものを感じます。もちろん、スタジオでの返しも抜群で、ロックミュージシャンと言うよりも常に話題を提供し、笑いを届けてくれる突き抜けた存在として大変面白く見させていただきました。VTRの最後に歌っていた元奥様との思い出を題材に作られたという、新しい「ロード」が元奥様の代理人から文句を付けられないといいのですが(^^;)。

それに反して、どうにもぱっとしない表情のまま単に余命の短さと、その余命の短さを改善するためにバランスボールに乗って体を鍛える事を実践していた若狭勝さんの方は、何か表情も番組スタートから終わりまでとにかく中途半端な感じで、果たして今後バラエティ番組で「笑われる存在」になることを許容されたのかがどうもはっきり伝わってこなかったのは残念でした。

あえて「笑われる」存在になってしまったとしても、最初に紹介した「THE W」に出ていた人達よりよっぽど面白く、さらに小池百合子さんが東京都知事なり国会議員なり、政治の世界にいる間はテレビ的にも需要は続くと思うので、あえて今回自らのかっこ悪いところをさらけ出したわけですから、進んでも下がっても今回の番組で固定された「選挙落選ストレスで余命7年」というイメージを逆手に取ってもっと突き抜けた精神で活動するのも、実際健康にもいいのではないかと思うのですが。

(番組データ)

名医のTHE太鼓判!余命宣告3時間SP★ストレスで寿命縮む!?由美かおる健康法 TBS
12/11 (月) 19:00 ~ 22:00 (180分)
★MC 渡部建(アンジャッシュ) 山瀬まみ
★進行 高畑百合子(TBSアナウンサー)
★レギュラー 児嶋一哉(アンジャッシュ) 原西孝幸(FUJIWARA) 藤本敏史(FUJIWARA)
★ゲスト アキラ100% 麻丘めぐみ 河中あい 須藤凜々花 高橋ジョージ とにかく明るい安村 野村宏伸 はるな愛 若狭勝
★特別ゲスト 由美かおる
★医師 大竹真一郎 大谷義夫 川村優希 菅原道仁 高橋通 丸田佳奈 森田豊

(番組内容)

ストレスで寿命は縮むのか!?落選でストレス…離婚でストレス…2017年精神的に大変だった芸能人が人間ドックを受診!さらに67歳由美かおる若さ保つ呼吸法&食事


日本卓球躍進の影に「テレビ東京」あり

日本のスポーツ中継というものは最近特に地上波ではスポンサーの理解と視聴者が見たいと思わせる競技でないとなかなか難しいものがあります。過去にうまく行っていたのはプロ野球で、シーズンのゴールデンタイムに常にメインを占めていたのはセントラルリーグの黄金カード「読売巨人 対 ○○」の試合を中継することが、スポンサー収入および視聴率が取れる優良プログラムでありました。その後、読売巨人軍が常勝ではなくなり、他のプロスポーツも一般化することによって、見事に地上波でのプロ野球中継は衰退しました。スポーツ中継の場合は予定時間内に終わらない可能性があるので、視聴率が上がらないスポーツからBS波・ネット中継へと見る方法が移りつつあります。

それでもサッカーの代表戦やオリンピックのような大きなイベントの時には通常の放送を中止してでも魅力的な世界の技を地上波で見せるだけのテレビの度量はあると思っていたのですが、個人的に何を考えているんだろうと思ったのは、2006年に日本で行なわれたバスケットボールの世界選手権について、地上波で放送されたのは決勝戦のみで、しかも生中継ではなく深夜の中継録画だったというTBSの仕打ちです。

普通に考えれば、早めに放映権を確保した上で事前の広報番組だけでなく、漫画の「SLAM DUNK」のように今でも人気のあるバスケットボールを題材にした物語を当時の人気絶頂の若手俳優らにより実写ドラマ化して、バスケ人気を盛り上げるような事もできたのではないかと思えます。しかし、地上波が生中継をせず、当時のCS放送(スカパー)のみで全試合生放送という状況では、相当バスケに思い入れのある人しかリアルタイムで見られなかったでしょうし、当時は日本でそんな大会が行なわれていたことすらも知らない人も多かったでしょう。そうなると、そもそもなぜ日本が世界選手権を誘致したのかすらよくわからないわけで、大会が大赤字だったと言われても、それは勝手に誘致して何の宣伝もしなからだとしか言いようがありません。

こんな事がもし2019年にあるラグビーのワールドカップでも起こらないか心配になるのですが、まず気になるのがテレビ中継は局を挙げてワールドカップをサポートし、ちゃんと地上波のゴールデン帯で注目の試合をやってくれるのかということです。ラグビーの場合はバスケとは違い、日本がそれなりに世界に対して戦えるなら地上波で見る人も多いでしょうが、その他の試合について、地上波での放送がなくスカパーかDAZNのみで全試合放送なんて形で放送されてしまうのか、改めて日本のスポーツイベントに対する力の入れ方が、今後どの局が試合の放送を行なうか発表された時点で問われると言えるでしょう。せめて予選リーグから全試合を無料で見られるBSで放送することのできる系列局に放映権を獲得して欲しいものです。

特にラグビーのワールドカップについては、国土交通省を巻き込んで、すでに自動車の記念ナンバープレートを発行するほどの力の入れようではあるのですが、サッカーのワールドカップのようにあそこまで盛り上がることは難しいだろうという話もあります。これはテレビとは関係のない話になってしまいますが、少なくともその開催について赤字が出たらその赤字を税金で補填なんてことは止めてほしいと思っています。

さて、今回紹介する卓球については、政府や協会だけの主導で盛り上がったのではないということは十分言えると思います。そもそもは中国どころか韓国・北朝鮮などアジアの国々にも簡単には勝てないくらいの実力に、かつての「卓球日本」とまで呼ばれたナショナルチームが落ち込んでいたこともあり実力だけでなく人気もていめいしていました。しかし、あの「福原愛」という一人の選手がたった一人で卓球のマスコミ人気を牽引して5才のころから民放のテレビバラエティに出演することで、変化が起きました。

元々福原愛さんがテレビに出た頃には、まだ「卓球=暗い」というイメージがタモリさんの発言に多くの人が同意するような形であった頃で、逆にそうしたタモリさんのネガティブイメージが浸透していたからこそ、卓球協会は福原愛さんをはじめとする小学生以下の子でもテレビに出したということもあるかも知れません。

卓球というスポーツは実はテレビのバラエティ番組と大変相性が良く、お金を掛けてコートを作らなくても、スタジオ内に卓球台を一台運んでくるだけで試合ができるので、番組の予算もほとんどかかりません。さらに、ちょっと運動神経の有りそうなタレントさんが卓球の試合を行なったとしても、恐らく今も当時も小学生の全国レベルにはとても歯が立たないだけの技術が必要なスポーツでもあります。つまりは体力的にはとてもかなわない大人と小学生が試合をしても、少しだけ卓球をかじってそうした技術を会得しさえすれば、子供が大人をこてんぱんに負かすことのできるスポーツで、視聴者はラケットを握ったタレントが「こんな子供には負けない」と大きな口を叩けば叩くほど、その負けっぷりがバラエティの絵となり、盛り上がるというわけです。

ただ、当時の福原愛さんは背が小さすぎて台上で2バウンドするようなサーブを出すことができれば(打ち返すことができないので)簡単に素人が対戦しても得点できました。しかしそんな大人のずるさを発揮して勝とうとするような事をする人はいないだろうと思われたのですが、あえてテレビの中でそんな大人気ない事を本番でやることによって当時5才の福原愛さんを泣かせるお笑い芸人がいたのです。そのため、全国の視聴者にその負けず嫌いで泣き虫の「愛ちゃん」の姿がより強く印象付けられることになりました。

その後、愛ちゃんの成長に合わせてその芸人さんとリベンジ・マッチを行なうなどシリーズ化することによって、テレビを見たお子さんの中には「愛ちゃんみたいになりたい」ということで、卓球を始めた子も少なくなかったと思います。その中の一人こそリオデジャネイロオリンピック男子シングルスで銅メダルを獲得した水谷隼選手であったりしたのです。同じようにテレビを見ながら卓球選手を志した現在日本の卓球界を背負っている多くの選手がいたであろうことを考えると、福原愛さんとえげつない勝負を繰り広げた明石家さんまさんお得意の素人いじりが日本の卓球界をも変えてしまったとも言えるかも知れません。日本卓球協会はタモリさんやとんねるずだけではなく、ぜひ明石家さんまさんにも何らかの謝意を示すことをお勧めする所以です。

しかし、愛ちゃんが人気でもなかなか卓球という競技について、本格的に試合の中継をする民放局というものはありませんでした。毎年1月に行なわれる全日本卓球選手権はNHKが地上波とBSで生中継していますが、オリンピックはともかく、隔年で行なわれる世界選手権というのはかつて日本選手が強かった頃にはNHKが放送したことはあったものの、民放が行なうことはありませんでした。しかしそんな中、地道に中継を始めたのがテレビ東京だったのです。

ちなみに、テレビ東京が見られない地域に住んでいる私としては、肝心な生中継が見られないという現実に、過去何度も煮え湯を飲まされました。仕方がないので中国のテレビが見られるサイトを探しだして日本選手が決勝に行ければ中国選手との試合は見られましたが、当然日本選手中心のプログラムにはならないわけで、テレビ東京の卓球中継における熱意には感服しながらも、どうせならBSでも同時にやってくれと思っていたのですが、今回は世界ジュニア選手権の様子について、リアルタイムでないのは残念ですが、何とかBSで放送してくれました。以前このブログで書いた池上彰さんの選挙番組もテレビ東京の地上波とBSジャパンの同時放送が実現していますので、この調子で次回の世界選手権も地上波との同時中継を行なってほしいです。

今回の放送では女子シングルス準決勝での加藤美優選手の活躍と、男子の団体決勝の様子を見ましたが、どちらも中国に敗れてしまい、改めて中国との力の差を感じることになりました。特に男子団体を見てびっくりしたのが、団体シングルスに出てきた中国人選手3人のうち2人が、日本には一人もいない中国式ではありますがペンホルダーのグリップを使っている選手だったということです。

今や世界の卓球界は超攻撃的な戦術になっていまして、昔にはちらほらいて世界選手権で活躍した選手も出た守備型の「カットマン」とともに絶滅危惧種な戦型がペンを握るようにラケットを持つ「ペンホルダーラケット」を使う選手です。

中国の卓球は日本の影響からか昔からペンホルダーが主流でしたが、そんな中でヨーロッパの進化したシェイクハンド(テニスのように持つグリップ)の攻撃型選手に対抗するために、中国ではそれまでの片側のラバーだけで左右のボールを打つ(右利きの場合左側に来たボールはブロックが主で、当時の日本でも同じように片側だけにラバーを貼って試合していました)というやり方を改め、ペンホルダーでも両面にラバーを貼って両面打ちをする技術に進化させたことにより、常にナショナルチームでもペンホルダーの選手はいますが、今は日本を含む他のアジア地域でもほとんどがシェイクハンドグリップが幅を利かせています。

かつてはアジアの選手が多く採用していたペンホルダーが、かつてヨーロッパで主流のシェイクハンドグリップにとって変わられたというのは、合理的な理由はあるものの、今後を考えると日本のチームがどう中国に対抗していくかということで、改めてペンホルダーを使った選手の育成についても考えて欲しいのです。

というのも、両面を使って打つシェイクグリップが今の日本の卓球では主流で、トップ選手にペンホルダーグリップを採用している選手がいないので、もし今回男子団体で優勝したメンバーがそのまま世界のシニア大会でも活躍するようになったら、彼らへの対策ができなくなるということです。日本でペンホルダーがすたれたのは、昔には右利きの場合体の右側で打つ「フォア」の威力は素晴らしいもの、反対の「バック」側が弱いということで集中して狙われると、特にシェイクハンドのバック対バックの打ち合いになった場合どうしても劣勢になってしまうということがあります。

しかし、今回見た中国のペンホルダーの選手は裏面にもラバーを貼って台上のボールをこすり上げるようにして回転を掛け強烈に打ち込む「チキータ」をシェイクと同じように自分のものにしています。そうなると、バックでもそこそこの対応が可能で、「フォア」対「フォア」での打ち合いならペンホルダーの方がボールに力を乗せやすく、打ち合いの中で圧倒できます。さらに台上でのボールの扱い方はペンの方がやりやすいということから、今回の日本との試合でも常に先手を取って攻撃をしているという印象がありました。

現代の卓球が超攻撃的卓球であることは紹介しましたが、昔は台上のボールをこすり上げて打つチキータの技術だけで相手を打ち抜くことができましたが、今はあえて相手にチキータで打たせて返ってきたボールをさらに強打するような戦法も見られるようになりました。それと同時に増々重要になるのがボールを台上で短く簡単に打てないような場所に返す技術であり、チキータで強打する事が難しいほどの短いボールを叩くように強打したり、払うようにして打つフリックという技術になるでしょう。これらの台上での技術について、ペンホルダーとシェイクハンドのどちらが上手にできるかという事で、現在の中国のナショナルチームが出した答えが中国式ペンホルダーを使いこなす選手もシェイク選手とともに育成し、その結果として主戦の2人がペンホルダーということになったと思われます。

となると、中国のペンホルダー選手に勝つためには、日本でもそうした戦術を使いこなせるペンホルダーの選手養成が必要になるのではないかと思うのですが。現実的には近づいた東京オリンピックに備え、中国式のペンホルダーを使いこなす仮想中国のコピー選手としてペンホルダー選手を育成するということも必要になるのではないでしょうか。すでに中国では日本人の選手を自国リーグに参加させないなど、日本選手に中国対策をさせずに中国が金メダルを取るための道筋を作りつつあります。

今回の男子団体戦でも中国のペンホルダー選手に手も足も出ずに負けてしまったことを考えると、日本としても中国のコピー選手を育成する中で世界で戦えるペンホルダーの強豪を作って欲しいですし、日本のペンホルダーの強さというのを改めて世界に向けて発信していってくれれば見ている卓球ファンの多くは溜飲が下がるのではないかと思えるのですが。

(番組データ)

卓球世界ジュニア選手権 BSジャパン
2017/12/10 13:30 ~ 2017/12/10 16:00 (150分)
MC 中川聡(テレビ東京アナウンサー)
解説 福澤朗 三原孝博(日本ペイントホールディングス女子卓球部監督/元日本代表コーチ)

(番組内容)

18歳以下の世界一を決める戦い!世界ジュニア選手権!昨年、団体戦で男女W優勝を飾るなど歴史的な活躍を見せた卓球NIPPON!果たして連覇なるか!?
【大会日程】 2017年11月26日(日)~12月3日(日)
【開催場所】 イタリア リヴァ・デル・ガルダ
【種目】 男女団体戦、男女シングルス、男女ダブルス、ミックスダブルス
昨年大会で日本は団体戦男女W優勝、さらに張本智和が史上最年少で男子シングルスを制するなど、若い世代でも世界で戦える強さを存分に見せつけた。特に張本はこの後、世界卓球やワールドツアーなどシニアの戦いで大活躍。世界ジュニアが飛躍への足掛かりとなった。いわばこの大会は世界的スターへの登竜門。若き新星が続々と誕生している卓球ニッポン、果たしてこの大会から次なるスター候補は現れるのか!?


テレビは「ミッチー・サッチー論争」にどう決着を付けたのか

野村沙知代さんが急に亡くなったことで、ヤフーニュースのプッシュ通知を利用している人のところには10回ぐらい連続で野村沙知代さんの訃報が届いたそうで(ヤフーニュースのシステムのバグだとその後判明しました)、その通知を受けた方の多くは一体何事だということで騒ぎになったというニュースが報じられたりした今日この頃です。

日本ではお亡くなりになった人は「仏様」となるので、どんな人の訃報であっても生前にどんな事があったのか、特に悪い事がある場合は直接書いたり出したりしない風潮があります。個人攻撃はしなくとも、彼女がマスコミに登場して名前を売った当時、テレビは何をしてきたかということを素直に報じて、自らも至らない点があれば詫びることで、今後同じような人が出現したりしても同じような醜態を晒さなくて済むと思うのですが、今回はそんな事を考えながら書いていこうと思います。

今後、多くのワイドショーが過去の出来事のほとんどを美談にして、彼女の出した曲(というか普通に喋る声をそのまま一部ラップのようにして使っているある意味希少な楽曲)「SACH A BEAUTIFUL LADY」を流しながら紹介するだろうことも考えられますが、テレビというのはその実体がないということで、過去にさかのぼってまで、自己批判をするところまではさすがにできないかも知れません。まずは、改めてこの騒動について紹介しながらテレビによって作られた野村沙知代という人物についても調べてみることにしました。

まず、彼女の経歴について紹介していこうと思います。1932年(昭和7年)生まれということで、東京で育ちながらも戦争の影響で生まれ故郷の福島県白河市に疎開し、地元のミスコンで優勝したことをきっかけに東京へと戻りました。そこでの生活というのは自分の美しさというものを武器にして何とかしてビッグになろうとした野心の塊ではなかったかと、その後の人生をあくまで報道による内容だけでみても類推できますし、実際、必死になって浮上するチャンスを狙っていたのではないかと考えることができます。

後に「経歴詐称だ」と言われた件についても、何とかして自分を大きく見せようとする世渡りの方法の一つとして言っていたものが、いつの間にか独り歩きして固まってしまったものかも知れません。ただし、そうして作った「経歴」が後の人生の足かせともなり、それが元でテレビを通じてバッシングを受けることになるとは、当時の彼女にとっては想像もできないことだったでしょう。

彼女は結婚し、二人の息子を持った後で大きなチャンスに恵まれます。それが当時プロ野球パ・リーグの南海ホークスの選手兼監督だった野村克也氏との出会いでした。ここで書いておきたいことは、彼女はその時には野球の知識はなく、「野村克也」という名前を子供達に尋ね、有名な選手とわかるまでは全く知らなかったということです。このエピソードはご本人が生前テレビで語っていたことで、恐らくその「知らない」ということを武器にして当時奥さんがいた(もちろん彼女にも夫がいました)野村氏との関係を結ぶためにあれやこれやのアタックを仕掛けたろうというのは想像に難くありません。

いわばW不倫の略奪婚を仕掛けたということになるわけですが、男女の関係というのはいくら彼女が言い寄ったとしても野村氏の方が拒否すれば成り立つことはありません。しかし野村氏は彼女を受け入れたことで、誕生したのが「野村沙知代」という存在であったと言えるでしょう。後で南海ホークスの選手たちが反旗を翻し、野村氏が南海ホークスを追われる原因ともなった彼女のプロ野球の現場への介入というのは、それまで野球の事など全く知らない人間が何をとも言われる事になるのですが、縁を結んだ人との関係を利用して自分の事を大きく見せることというのが、彼女が東京に出てきてからの人生の目標であったとしたなら、ある意味当然の流れであるのかなと思える部分もあります。

あの三冠王でプロ野球を代表する選手であり監督である野村克也氏を意のままに操ることで周りの反応とそれに伴う彼女への対応も変わるところを感じたことが彼女自身の成功体験になり、その後の人生における行動様式(それが後にバッシングを受ける原因にもなっていくわけですが)が形作られていったように思います。

その後、今回紹介する「ミッチー・サッチー論争」に繋がるタレントとしての肩書を持つくらいにテレビに進出していくわけですが、そのきっかけは、野村克也氏との間に生まれた息子・野村克則氏(現在時代の登録名は「カツノリ」)さんのプロ野球入団が関わってきていると思います。先述の通り夫の監督する南海ホークスでは人事や戦術に口を出し、息子をプロ野球のドラフトにかかるだけの実力(当時入団したヤクルトの監督が野村克也さんでした)だったこともあり、どのように夫や息子に教育をほどこしたのか、世間の注目を集めたことで、彼女の夫に対する物言いや教育論についての考えに注目が集まったこともあったのでしょう。

フジテレビ「笑っていいとも!」のレギュラーからTBS「快傑熟女!心配ご無用」と、それまでの人生経験を基に視聴者の悩み相談に答え、気に入らない事があればそれをそのまま口に出してしまうところは過去に南海ホークスの選手や会社から非難された時と同じような感じもしますが、これは本当に何にでも使われる便利な言葉ですが「歯に衣着せぬ物言いが素晴しい」としてさらにテレビに進出するようになります。

ただ、このような人物がテレビに出始めるにあたって、注意しなければならなかった点があることを、この騒動に至る内容を時系列で見て行くと良くわかってきます。まず、自分をちやほやしてくれる人におもねって、逆に苦言を呈してくれる人や好意で芸能界のしきたりを教えてくれる人をないがしろにしてしまったことが、そのまま後になって災いとして返ってきてしまったということ。そして、常に攻撃的で相手との妥協なり形だけでも謝罪なりをテレビに向かってしなかったことも、想定外の状況を作り出した原因だと思われます。

まず、私が一番の失敗だと思ったのが、彼女が当時の新進党から誘われるままに1996年の衆議院選挙に出てしまったことです。日本の一部をのぞく政党は、自分の党に票を入れてもらうために、テレビで目立っている「タレント的な文化人」に立候補のお願いを立てることは今も変わらず行なっています。もし野村沙知代さんが選挙に出なければ、いわゆる「経歴詐称」と言われる問題は起こりませんでした。タレントの経歴ということなら、日頃から自分の事を大きく見せようとしてホラを吹いているくらいにしか思われなかったところ、選挙自体は落選したものの、政治状況の変化によって彼女が繰上げ当選して国会議員になってしまうと可能性が出てきたことで、女優の浅香光代さんがたまたま自分のラジオ出演時に、出演が最後になるからということで彼女の実名を挙げて批判したことがこの騒動の始まりでした。ラジオでの浅香さんの発言はそこまで騒動を起こそうとしたのではなく、ご自身がストレス発散をしたくらいの認識であり、そこまで覚悟を持って告発したのではなかったのではないかと思われます。

しかしそうした「騒動」を目を皿のようにして探し回っているのもまたテレビなのです。すぐさま浅香さんの元にワイドショーが取材に訪れ、視聴率を上げるために野村沙知代さんに関するバッシングをする先鋒になってくれとお願いいするような形で報道されたことで引くに引けなくなり、さらに多くの芸能人がこの騒動に参加し、毎日新しい事実(基本どうでもいいような事も多かったが、そこはテレビなのでそれらしく問題提起します)および新しい人物が登場し、この騒動はエスカレートしていきました。

この騒動に入り込もうとして「私も沙知代さんにはひどい目に遭った」と訴える人や、沙知代さんと浅香さんとの仲を取り持とうとして失敗してひどい目に遭った神田川俊郎さんのような方もいて、一時期は下手な連続ドラマより面白い側面もあったことも確かですが、いつ終わるともわからない騒動に参加すること自体、後の芸能活動をそれぞれの方が行なう点においては、あまり後にいい影響は出なかったのではないかと思えます。結局のところ、世間が注目して視聴率を上げたテレビの一人勝ちとも言えるような騒動だったのではないかと今となっては思えてきます。

どんなにお金持ちでも権力があったとしても、テレビに正面切って喧嘩をふっかけてもあまり意味がないのです。2017年には首相である安倍晋三氏の夫人である安倍昭恵氏へのバッシングが週刊誌やテレビを含めたマスコミ、そしてネットでも行なわれましたが、さすがの権力者であってもそうした声をさまざまな形で圧力を掛けて黙らせることは難しく、結局のところ昭恵夫人が公の場で釈明すら出来ない程でした。ちょっと有名になり一時期に注目されたくらいでは、正面切ってテレビとの闘いを挑むには弱すぎるわけで、もし自分がテレビに出て仕事をしたいと考えるなら、常に自分はテレビでどのように視聴者に見えているのかを気に掛けるようでないと、何かの拍子に自分のプライベートの件でバッシングされてタレントの座から転げ落ち、忘れ去られてしまうのがオチです。

ただ、こうした騒動を仕掛けて時間を空けてまた同じように、今度は別の人物をターゲットにして騒動を仕掛けるテレビについて、果たして当時の騒動についてのオトシマエを付けているのかと言われると、個人的に見ると過去の問題を解決しないまま来ているように感じてならないので、この機会を使ってテレビの問題についても指摘させていただきたいと思います。

これも2017年の今起こっていることですが、大相撲で横綱の日馬富士関(後日引退を発表)が同じモンゴル出身の貴ノ岩関に暴行をして怪我をさせた事件についてワイドショーは連日報道を繰り返し、テレビのコメンテーターは加害者側の非難よりも、全くマスコミの質問に答えない貴ノ岩関や師匠である貴乃花親方について苦言を呈する向きもあります。しかし、当時の「サッチー・ミッチー騒動」を見ていた人であれば、まともにテレビ局の突き出すマイクに何を答えてもテレビは視聴率を上げるためなら自分の意志とは違う方向に状況を持っていかれる可能性もあるということはわかり切っています。私は貴乃花親方や貴ノ岩関が当時者であるのに全くテレビに向かって口を開かない裏には、こうしたテレビの小ずるさから逃れようとするあまりの行動ではないかと見ています。

口から泡を吹きながら貴乃花親方や貴ノ岩関を攻撃する人たちは、特にそれがテレビの報道に関わっている人であればあるほど、あなた方は「サッチー・ミッチー論争」から何も学んでいないのではないかと言わざるを得ませんし、今後同じような「渦中の人」が生まれたとしても、全くテレビからは身を隠し、ブログでしか発信しないような人が増える事になるかも知れません。つまり、テレビが変わらなければこうした流れも変わらないわけです。今後テレビが野村沙知代さんについて報道する中で、過去に様々な騒動を煽った責任について言及する局があるかどうかを、個人的には注目して見ることにします。


見ながら身につまされる番組もたまには良い

実のところ片付けが苦手な私なのですが、一時期には部屋がゴミ屋敷まっしぐらだった状態を何とか脱して今ではやみくもに物を買ったり、しばらくすると確実にごみになるパンフレット類をもらってこなくなったことで、一応小康状態を保っています。しかし、今まで溜め込んだ物について、多少は処分したもののまだ無駄に物をかかえている状況に変わりはありません。

そんな私にとって、物を溜め込んでとんでもない事になっている3家族が、いかにして断捨離を実行し、物を捨てていくのかという番組のコンセプトには興味がありました。多くの人達がそうだと思いますが、片付けの重要性をわかっていても、日々の忙しさにかまけて十分に片付ける時間があるにも関わらず、私の場合はテレビを見ながらその内容をパソコン上でメモしながらブログネタを書いているうちに時間はあっという間に経ってしまうのです。

そもそも、物が捨てられないと悩んで、この番組に連絡した人たちが番組に登場しているわけで、まず大事なのは、今の生活を変えなければという意識をどう変えるかということが大切だとしみじみ思いました。そうして番組に登場した三家族は自らの問題点を挙げることができた時点で、問題の多くは解決に向かって動き出していたとも言えるでしょう。

ただし、家族の中に問題意識を持つ人がいても、全ての家族の意志が統一されているわけではありません。2番目に出てきたひたすらふなっしーとリラックマを二人の娘に買い与え、さらに自分の服や趣味の物をひたすら買い込んで溜め込むご主人は本当にいい味を出していました。番組に出て断捨離をしたいと考えた奥さんはご主人の行動が悩みのタネで、当初あまりにご主人の理解がなく、遂には本気の夫婦喧嘩をカメラを前にしてやってしまう始末でした。

ただ、本当に離婚の危機まで行かなかった理由というものが断捨離を提唱するやましたひでこ氏のアドバイスの中にあって、ご家族と生活している中で断捨離を実行しようと思っている方には参考になるのではと思います。というのも、親が子供の物を勝手に捨てたり、奥さんがご主人のものを捨てたり(逆も当然あります)するというのは断捨離のルール違反で、あくまで自分の持ち物だけを出したり捨てたりして、他人の物には手を付けず、自分の物は自分で考えた上で捨てるか残すかの判断をさせるのが基本なのだそうです。

このままでこの家族はどうなるのかと心配しながら見ていたのですが、時間を掛けながらも最初は全く言う事を聞かなかったご主人も、自分以外の家族の物がどんどん片付くのを見ている中で、ペースは遅いものの徐々に物が少なくなっていきました。

もうひとつ、断捨離を行なう場合のルールとして、ある程度空間に余裕ができるまでは、いらないものは全て捨てるようにし、時間も手間もかかる「売る」という行為に走らないというこのをやましたさんはおっしゃっていました。

いわゆるコレクションをする方の中には自分が高いお金を出して買ったものだからと、衣類を含めて今は中古ショップで買い取ってくれるものなら売りたいという気持ちはわかります。しかし、自分が中古品を買う時の事を考えた場合、やはりホコリの付いたまま売りに行くなんてのはできないので売る前の多少のメンテナンスをする時間が必要になり、それが空間をすぐに空けたい時間を阻害することになるのだそうです。

そして、よほどのブランド品や人気の品であればわかりませんが、普通の中古品はメンテナンスをしたところで「一山いくら」の世界である可能性が強く、お店まで行くための車のガソリン代にもならないかも知れません。そう考えると、そのままゴミとして何のメンテナンスもせずに出してしまった方が家計的にもお得になると考え方の転換をした方がいいのではとも思えてきます。

確かに家にある「いつかは使うだろう」と思って買ったものの中には、一度も使わないでホコリを被っていたり、ダブって存在するものもたくさんあるので、自宅でも使わないものは処分するということと、新しく気に入ったものについても何か買ったら何か処分するとかを考えて買わないと駄目だろうと思います。

そうした考えを突き詰めすぎるとまた問題が出るかも知れませんが、そもそも人間はそんなに広くない所であっても雨風をしのいで寝られる場所さえあれば生活はできますので、例えばキャンピングカーの中に収納できるものだけを残して、いざとなれば移動しながら生活することもできるくらいになれれば、それはそれなりに人生は楽しく過ごせるのではないかとすら思えるようになってしまいました。この番組はそう考えると実に深く「断捨離」という事について考えさせてくれる番組であり、次回の放送がもしあるようなら、その時には多少でも自分の部屋についてもいらないものは捨てるようにしておきたいなと思わせてくれた大変いい番組だったと思います。マンネリ気味の地上波のバラエティを避けてこちらを見て得るものは大きかったと感じています。

(番組データ)

ウチ、“断捨離”しました!第2弾~捨てられない3家族 片づけ密着ドキュメント~ BS朝日
12/7 (木) 21:00 ~ 22:54 (114分)
【出演】やましたひでこ(断捨離 代表/クラター・コンサルタント)
【ナレーター】平泉成

(番組内容)

今年6月に放送して大好評だった「ウチ、断捨離しました!」第2弾!不要なモノを減らし、生活に調和をもたらすことを目指す「断捨離」を提唱するクラター・コンサルタントのやましたひでこのアドバイスのもと、片付けに悩む3家族が整理整頓に挑む様子を追ったドキュメンタリー。年齢を重ねるに連れて増えていく、「思い出の品」や「捨てられないモノ」を片付けることで、自分が本当に望むものを見つめなおす。

今回挑戦するのは…「あわや離婚!?もったいない!収集癖の夫で占領される家」「共働き・子供4人・祖父母同居 時間とモノがカオスな家」「女三世代受け継がれた婚礼布団に悩む家」の3家族。片付けることを通じて、家族の悩みと向き合う。


「ナニコレ珍百景」は単に面白いバラエティでなく「教養番組」でもある

唐突な話ですが、この文章を読んでいる方の中で「トマソン」という言葉の意味(語源は人名ですがここで語る内容は違うもの)をご存知の方はいらっしゃるでしょうか。この言葉は、ちくま文庫で「超芸術トマソン」という題名で1980年代に赤瀬川原平氏の雑誌「写真時代」で連載された時の内容がまとまっているので、手に取った方もいるかと思います。

恐らく同時代を生きていた人でなければ、よほどサブカルチャーに詳しい人でなければ知らないと思いますが、この「トマソン」とは、折しもビートルズのジョン・レノンが暗殺された日のスポーツ紙に事件と同時に掲載されたことのある、日本のプロ野球の中でも当時から球界の盟主と言われた読売巨人軍にロサンゼルス・ドジャースから現役大リーガーがやって来ると大いに期待されたゲーリー・トマソン(Gary Thomasson)氏の事です。トマソン氏はメジャーリーグでのキャリアが11シーズンあり、当時の年齢は30才と日本のプロ野球での活躍が大いに期待できる偉大な経歴を引っさげて読売巨人軍の門を叩いたのです。

その年の読売巨人軍は王貞治さんが引退した後だったので、その代わりとなる活躍をも期待されて読売が大金を払って日本に呼んだのですが、81年の来日一年目のシーズンには年間132の三振を喫し、「舶来扇風機」とテレビ中継でも揶揄されたメジャーリーグから日本プロ野球への移籍の失敗例として記憶されている方も少しはいるかと思います。ただ、三振数としては日本記録を持つのはシーズン204も三振した93年の近鉄(当時)・ブライアントで、数としてはそこまで多くありません。来日初年度のトマソンの他の打撃成績としては打率.261、ホームランは20本とそこまで悪くないとデータだけを見れば思います(120試合出場)。

しかし、当時のテレビのイメージを固定させる威力というのはものすごいもので、多くの人のイメージではトマソンが豪快に三振して「トマソン三振!」と連呼するアナウンサーの声を覚えている方も少なくないでしょう。これは、当時のプロ野球のテレビ中継は読売巨人軍の試合を全試合、NHKを含む民放が持ち回りでゴールデンタイムに中継していたので、特に鳴り物入りでやってきたメジャーリーガーのトマソンがより注目されることになり、多くの人の目が集中したところに肝心な所で全くタイミングの合わない三振を操り返す姿を試合だけでなくスボーツニュースでも多くの人が見ていたことにより、「トマソン=役立たず」という意識が多くの日本人の中に宿ってしまったというところが実際のところあったのです。そう考えると当時のテレビとプロ野球の甘い関係がなければ、今でも「トマソン」という言葉が独り歩きしていることもなかったわけで、改めてテレビで取り上げられることの多かった人気球団を選んでしまったトマソン氏が可哀想だと思わざるを得ません。

話を「超芸術」の「トマソン」の話に戻しますが、こうした「トマソン」の役立たず感を赤瀬川さんも知っている中で、彼が路上を観察し、面白いものを写真に収めている中で、道路や家が変更や改築を繰り返す中で、まるで芸術のオブジェのように何の役に立っているかわからないものに変化してしまった現象に「トマソン」と赤瀬川さんが命名したのでした。以降、「路上観察学会」なる団体もできたりして、ふと日常生活の中では見逃してしまう町の風景に埋没しているような「変な」ものを見付ける事が流行となりました。そしてこうした超芸術というものは、常に芸術を理解しない人から見れば、早く壊して更地にしたり建て直したりした方がいいと思われる存在として危ういものであることも確かだったのです。

そうした「超芸術トマソン」を許容し楽しむ人たちの中では、別の取り組みで「ヘンなもの」を世に出した方々もいました。この時期に多くの「街のヘンなもの」や「雜誌・新聞の誤植」などを写真に撮って送ると、雑誌に掲載してくれる雑誌「宝島」の中のコーナー「VOW」です。その単行本は今でもブックオフに行けば、そうした街のヘンなものが満載の、雑誌の面白い投稿をまとめた単行本を見付けることができるはずです。

このVOWの単行本に添えられた文章で印象的だったものがあります。こういった「街のヘンなもの」として集められたものこそ教科書に載る歴史とは違いますが、その時代の空気がわかる「物証」になり得ると書かれていて、当時はそんなものかと思いながら見ていたのですが、今でいう「昭和」の遺構というものは現在取り壊されたり撤去されてしまってないものを含め、「VOW」に収められているものの中にも沢山あると思うようになりました。

同じような現在までに残る時代に打ち捨てられた遺物の中には、今になってその作者とともに再評価されつつある「狛犬」や、最近はカードにもプレミアが付くと言われている「マンホールの蓋」のようなものもありますが、これらはテレビ番組に取り上げられる場合はNHKあたりが「教養番組」として取り上げることでそれらしい「文化遺産」だと多くの人が納得するようなところもありますが、そうでない「時代のしょうもない遺構」や「ヘンな人の話」を民放がお笑い系の番組を作る中で紹介したところでなかなかアーカイブされるべき番組だという風には思われないところに、私たちが少し前の時代の「空気」を将来に残す難しさがあると言えます。

レギュラー放送としては終わってしまったものの、番組改編期にスペシャル版として放送されることの多いこの「ナニコレ珍百景」は、「超芸術トマソン」や「VOW」の流れを継承する街のしょうもないものを多くの人が見ているテレビで紹介してくれる、ある意味大変に稀有な番組で、笑いながら見る中でもその内容をかみしめて見ると新たな発見になるかも知れません。今の時代は雑誌や単行本で発信しても多くの人の目に触れるものでもありませんし、VOWは現在ウェブサイトで細々と運営されているものの、昔の事を知っている人以外にはなかなか輪が広がらないというのが正直なところです。それを、テレビのゴールデンタイムで放送してくれるのですから、こうした仕事の意義をテレビ朝日や制作会社が忘れないで続けようと思ってくれている証だと思うので、素直に嬉しいです。

ちなみに、今回の放送で見た「トマソン」らしき物体として人工物が変化して「珍百景」となったものに、とある喫茶店の看板として作られた大きなコアラのオブジェがありました。このオブジェは先代の店主が約250万円を出して作ったのだそうですが、時間の経過とともに世にも奇妙で恐いコアラの姿になってしまっていました。今の店主の方はこのオブジェを撤去する予定はないようですが、そもそも今の店主がお店をたたんだら地域においてはこのコアラのオブジェは存在することができなくなるでしょう。その時点でコアラの「超芸術」としての生命は途切れるということになります。

その時がいつ来るのかはわからないながら、今回の放送で全国的に不気味なコアラのオブジェが流れたことで、物としては残らなくても映像としては残すことができたということも言えるわけです。今までの番組では個人の努力で作ったもの系の珍百景も多くありましたが、すでに番組のアーカイブスを見て訪れてもその場からなくなってしまっている事もかなりあるのではないかと思います。しかし、その時にそこにあり、さらにその珍百景があるところにどんな人がいたのかということを番組を見て思い出すことはできます。

実は珍百景は有料のCSチャンネルの「テレ朝チャンネル」で「激レア 珍百景」として放送されているのですが、やはり見る人が限られるCSと地上波は違うわけですから、今後もスペシャルでの番組は続けて欲しいですし、見ている方々も単に珍百景を見て笑うだけでなく、その周辺に思いをめぐらしたり、近くだったら実際に行ってみて改めてテレビで誇張された部分を感じてみるのも研究みたいで面白くなると思います。

(番組データ)

ナニコレ珍百景 2時間スペシャル テレビ朝日
12/6 (水) 19:00 ~ 20:54
【MC】名倉潤・堀内健(ネプチューン)
【珍定委員長】原田泰造(ネプチューン)
【進行】森葉子(テレビ朝日アナウンサー)
【珍定ゲスト】石坂浩二、岡江久美子、サンドウィッチマン(伊達みきお・富澤たけし)、高橋みなみ
【ロケ出演】杉村太蔵(珍百景党は岐阜へ…地獄うどん&怪しすぎる森の通学路)、もえのあずき(青森で巨大すぎるパンにチャレンジ)

(番組内容)

日本全国から驚きの光景が続々!人面崖!?…自然が生んだ奇跡の光景、カワイイ動物、ご当地あるある、超人ご長寿から崖っぷち駐車場、爆笑店主まで衝撃風景の新作一挙公開


NHK受信料の徴収が「合憲」との判断 その時テレビは?

全てのテレビニュースを見てはいないのですが夕方のニュースで今回紹介する裁判のニュースを項目として取り上げた民放局はまだ確認していません。実は私はネットや新聞で2017年12月6日に最高裁判所で行なわれたNHKの受信料制度が憲法が保障する「契約の自由」に反するかどうかが争われた上告審判決を注目していました。

今まではテレビを持っていても「NHKを見ないから」、「受信料を払うだけの価値をNHKの番組には見出せない」、「受信料を払っていても教育番組テキストを有料で買わせるのはおかしい」、「4K8Kの費用をなぜ受信機を持っていない世帯に負担させるのか」、など様々な理由を付けて受信料の支払いを行なわない人が全国にいます。そんな中で、一人の男性の起こした裁判で、テレビがあれば義務的に受信料を支払わなければならないのかという判断を初めて最高裁がするということで注目されていたのです。

結論から言いますと、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は受信料制度を「合憲」と判断しました。今後はこの判例を根拠に、同じようにテレビが有るのに受信料を払わない人たちに対して徴収を積極的に行なってくることが予想されます。

ただ、現状では意地でもNHKの受信料を払いたくない場合には、テレビとアンテナを捨てるなり人にあげるなりして部屋から撤去し、常に持っているガラケーやスマホにはワンセグ受信のできるものを使わないようにすれば、とりあえずは受信料の契約を解約することは可能だと思います。しかし、そうした行動についてもしっかり対応するようにNHKは受信料を使って着々と準備を進めているのです。

それは、インターネット回線を使った地上波の番組の常時同時配信と言われるものです。今でも生中継でスポーツなどを中継するサービスはありましたが、何か大きなイベントやニュースが入ったりしてより多くの人が同じサイトから動画を見ようとすると、回線がパンクするようになって動画が止まってしまうということは今でも起こっていますが、恐らくNHKは相当のアクセスが集中しても回線が落ちないくらいの回線設備の増強を行なった上で、満を持してたとえテレビが家にない家庭であってもインターネットが使える環境が整っていれば同時配信のネット経由放送を見られるから受信料の支払義務があると言ってくるだろうと思われます。

すでにテレビがあって現在受信料を普通に払っている場合は関係ありませんが、今の世の中にはテレビも持たないでスマホだけで生活をしている単身の世帯もあったりするので、そうした人からも受信料を取ろうとするNHKの活動は、今回の「受信料は憲法で保障された契約の自由には抵触しない」という最高裁からのお墨付きを得たことで、今後何も対策をしていないと積極的に受信料を払うことになってしまうだろうと思います。

しかし、テレビもなくネットから情報を主に得ている人が見られるからと言ってNHKの配信を長時間見るわけもありませんし、今回の最高裁の判断というのは将来に集金人と特定の世帯主との間に問題を引き起こす可能性があります。

今後NHKは強権的に力で受信料を取ろうとし、NHKから訴訟を起こすような傾向が出てくるかも知れませんが、そのような大きな力が働くと、日本人というのはほとんどが大人しく従って受信料を払うとは思いますが、違う作用を引き起こす可能性もあります。

というのも、インターネットを提供する会社というのはテレビ放送のように免許制ではなく、小さなところは大手キャリアから帯域を借りる中でユーザーにどのような形で回線を提供するかは業者の判断に任されているところがあります。例えばNHKが常時同時地上波放送配信を開始したとして、もしどこか勇気ある業者がNHKの動画配信サイトにのみ国内からの接続ができなくなるような「機能」を付けたSIMカード(eSIMを含む)を出したとしたら、そこに生まれるのが「NHKの受信料が単体のネット利用では発生しないインターネット回線」になるわけです。

恐らくそうした動きはNHKから圧力を掛けて防ぐようにするのかも知れませんが、放送と違ってインターネットは少なくともNHKを見るためにできたものでも使われるべきものでもありませんので、将来民放の同時配信や見逃し配信は見られるが、NHKだけは見られないというプランを出すと宣言するMVNO業者があれば、今後の注目になると思いますが、やはり気になるのが、今回のこのニュースを民放も報道しないことなのですね。触れたら都合の悪い何かがあるのでしょうか?

もし一切の抜け道を作ることが許されず、大手キャリアがMVNOの弱少業者に圧力をかけてNHKだけが見られないSIMカードを出すことができなくなったとしたら、その時も国民は粛々と文句も言わずに受信料を全ての人が払うようになるのでしょうか。まだインターネット回線を引いているだけで受信料が請求されない今、こうした将来を見越したインターネットサービスの提供について多くの人を巻き込んで考えるべきだと思います。そして現在のNHKの地上波常時同時配信の方向性に反対を打ち出している民放の方々の意見も聞きたいところです。

(追記)
夜のニュースの時間となって、ようやくテレビ朝日の「報道ステーション」では2番目のニュースとして取り上げられました。そこで報道されていたことで、「NHKは裁判に勝ったらいつの時点にさかのぼって受信料を請求できるのか?」という裁判官の判断で、テレビを設置した日からなのだそうです。

つまり、もめて裁判の期間が長くなればなるほど、請求される金額が高くなるわけです。報道ステーションでは、そうして取る受信料が公共放送として適切なものかが問われるなどともっともらしい批評をしていましたが、すでに自局のドラマの宣伝のために番組を使ったり、朝ドラで特定の営利企業を利するような内容のものを過去に何度も放送しています。このブログではしっかりとNHKの番組についてはいい所も悪い所もしっかりと見た上で感想という形で紹介し、公共放送としてNHKがふさわしいのかどうかという観点からも今後は問題提起をしていきたいなと思っています。


「M-1グランプリ」には常に採点の進化を望みたい

私自身、お笑いの専門家ではなく、単にテレビを見て楽しんで、このブログでは単に感想を書いているだけなので、今回の題材である「M-1グランプリ」について何か書けるとしたらあくまで自分の好みの芸人さんの話とかになってしまうのですが、ここでは「お笑い」の話というよりも、その審査について改めて考えてみたいと思いました。

というのも、芸歴15年までという制限を付けて、優勝賞金が1,000万円で、優勝者には相当のテレビ番組出演や営業のオファーが来ると思うので、皆の総意でチャンピオンを決めなければならず、本来そこには「情」というものを入れてはいけないものであると考えます。

例えば、過去に坂本博之さんというボクシング選手がいまして、この方は児童養護施設の出身で努力の結果世界タイトルマッチにまでこぎつけたものの、残念ながら世界チャンピオンになることはできませんでした。世界戦の会場には彼の出た児童養護施設の児童が応援に来ている姿が大写しになる中、心情的にはどうしても彼にチャンピオンになってボクサーとしてのストーリーを完結させて欲しいと思っていたのですが、現実というのはある意味残酷です。勝負の世界というのはメロドラマとは全く異質のもので、結局はKOするか、ポイントで1ポイントでも勝っているかしなければダメなのです。ですから、そんな真剣勝負の場で審判の買収や不可解な判定があれば大きな問題になります。

私自身は「M-1グランプリ」という場は1,000万円の賞金を出した時点で、決して後から疑われるような判定を出してはならず、参加者が不正を働いてもいけないと思っています。今回の審査がダメだからということでは決してないことをまずはお断わりさせていただきます。その上でテレビを見ている側としては、常に公平なジャッジをしているという部分に揺らぎが出ることのないよう、大きな問題が今後も出ないように続けていって欲しいと思います。

私が「M-1グランプリ」を見るのは実は前々回からとかなり後になって見出したのですが、前々回は敗者復活で最後に出た「トレンディエンジェル」が優勝しました。彼らは敗者復活からの勝ち上がりの勢いのまま、最後にネタをやった評価が高く優勝までつっ走ったという印象でしたが、この時に思ったのは演技順によってかなり審査員や観客の印象が変わっているなと思いました。

これは採点競技全てに言われることですが、最初は点が出過ぎないようにセーブされ、一番最後の演技者はその後に出る人はいないので見たままの印象でそのまま採点されるという有利さがあります。トレンディエンジェルについては、そうした勢いをうまく利用したということになるわけですが、そもそも敗者復活から本選に出られるなんてことはその時には想像もしない中でほんの少しの可能性に賭けていたわけですし、単に敗者復活者はずるいとまでは思わないものの、冷静に見てやはり誰が来ても敗者復活から出場する方が有利だということになれば、そうした文句が出ないように審査方法も変えていく必要が出てきます。

今回の審査方法も、すでに順番を決めて待機するのではなく、その場でくじを引くまで誰がどの順番で出るかわからない方法にしていたというのは評価でき、これで一番バッターになってしまったら、それはそれで仕方ないと諦められる範囲の事だと思えました。人気者になるには運も必要だとは確か萩本欽一さんの言葉だと思いますが、もし今回優勝した「とろサーモン」さんが一番バッターだったら違った展開だったかも知れませんし、結果として「とろサーモン」さんには実力だけでなく「運」もあったという風にも言えると思います。

審査員は前回の5人から7人に戻り、一人の点数が100点満点で合計700点満点で審査されましたが、この「満点方式」についても今後は一考の余地はあるのではないかと思います。これについても先例があります。オリンピックにおける体操競技は以前は満点を10点としてそこから減点をしていく方式でした。そのため、それまでの判定基準を超えるようなとんでもない才能を持ったルーマニアのコマネチ選手が出てきた時には、その演技評価を10点にせざるを得ず、その後のロサンゼルスオリンピックでは10点満点が連発されてしまいました。

そうした事を考えた上で体操競技は今の審査方法になったのですが、このように、満点という制限の中で全てを決めるよりも、「演技者の勢い」のようなものは審査点の中でも別に分けた加点方式にするとか、逆に言葉が早すぎたり聞こえづらかったりして何を言っているかわからないとか、明らかにミスがあったというような場合の減点基準をはっきりさせたほうが更に多くの人が納得する審査になるかと思うのですが。もちろん、審査員個人の「好き嫌い」で決めてもいいのですが、審査員も出場者も同じ舞台やテレビでご一緒されることもあると思いますので、できるだけ客観的な部分も入れた評価で点数を出したほうが個人的には納得できます。もちろん、ここまで私が書いた事よりももっと公平さを演出できるような審査方法があればどんどん採用すべきですし、そうして常に審査方法や審査員を変えながら出演者にM-1グランプリ対策をさせないというのも大事だと思います。

それから、M-1グランプリを一日でスターを作る番組として考えた場合、いつもテレビで見ているコンビが多く出てくるので、その分プロでないアマチュアが残るという下克上がなかなか見られないというのは残念です。この点についてはこれまでの主張と比べるとかなり甘いと言われるかも知れませんが、テレビ東京の大食い決定戦のように新人戦を開催し、そこで優勝したコンビに本戦参加についての何らかの優遇策(一部予選を免除したシードのようなこと)を考えるというのもさらに競争を促して面白くなるような気がします。

駆け出しでもみっちり漫才の基本を仕込まれたプロのルーキーコンビと、単なる娯楽のために組んだ社会人や学生のコンビとの差は果たしてどのくらいあるのかとか気になりますし、何よりテレビを見ていて面白いのは「ジャイアント・キリング」がガチ勝負で実現することでもあるのです。サッカーの天皇杯で市立船橋高校がプロチームや大学チームを倒し、当時日本トップの実力があったと思われる横浜マリノスとの対戦でも2点のビハインドから追い付き、延長戦まで戦い抜いてPK戦までもつれこんだことでマリノスを敗戦の危機にまで追い込んだ事は今でも強烈に覚えています。

もし新人戦経由で本戦に出場したアマチュアコンビがグランプリを取ったら、その盛り上がりはどうなってしまうのか考えただけでもワクワクします。あくまでアマチュアやルーキーを優遇せず、これまで通り最初から実力で這い上がれなければダメだというなら、あえて提案したいのがコンビの名前だけで騒がれて有利になることの無いよう、敗者復活戦も含めて完全な無観客漫才にするという方法です。お客さんがいない中で漫才をするというのは劇場で漫才をしてきたコンビにとってはとてもできないと思われるかも知れませんが、それでこそ過去の名声やイメージを廃して評価することができるとも考えられます。少なくとも人気があったり知名度があるから有利にはなりないような配慮もしていただいた方が、今よりもずっとエンターテイメント系競技という感じで楽しめるものになると思うのですが。

(番組データ)

M-1グランプリ2017 テレビ朝日
12/3 (日) 18:57 ~22:10
【司会】今田耕司、上戸彩
【審査員】 オール巨人、上沼恵美子、春風亭小朝、中川家・礼二、博多大吉、松本人志、渡辺正行 ※50音順
【出場者】 かまいたち、カミナリ、さや香、ジャルジャル、とろサーモン、マヂカルラブリー、ミキ、ゆにばーす、和牛 ※50音順【敗者復活枠】スーパーマラドーナ

(番組内容)

4094組を勝ち抜いた最強の10組が最後の決戦へ!出番順はその都度、抽選で決められる新ルールも導入され、展開は予測不能!M-1第13代王者誕生の瞬間を目撃せよ!
【出番順】 ファーストラウンドの出番順は、その都度「笑神籤(えみくじ)」と呼ばれるクジを引き、呼ばれたコンビがそのままネタを披露するという新ルールを導入!手に汗握る予測不能の展開となるでしょう!!
【大会ルール】 ファーストラウンドは審査員1人につき100点、700点満点で採点。上位3組が最終決戦に進出し、再びネタを披露。審査員7人が最もおもしろかった組に1票を投じ、最多票が優勝となる。


NHKは喜劇そのものを作るより「喜劇講座」を放送した方が良い理由

「たけしのこれがホントのニッポン芸能史」というシリーズも今回12回目になりました。中には、あんまり知識のない内容についても無理にビートたけしさんに語らせているような回もあり、あえて「たけしの」と番組名を付けてしまったスタッフの苦心する様が垣間見えた事もありましたが、今回の題材は「喜劇」という事で、ビートたけしさんやゲスト出演した伊東四朗さんの言葉はすっと入ってきました。

ただ、当のNHKの流すテレビの喜劇というのは最後の最後にビートたけしさんが語ったように、NHKの流す現代の喜劇はつまらないという言葉の通りなのではないかと思います。

民放では「吉本新喜劇」を除けば、もはやお芝居として喜劇役者を出すなんてことは、民放のドラマ自体でお金を掛けたキャスティングが予算の都合で出来ず、さらにセットや道具などで現代劇よりお金のかかる時代劇をなくし、ついには2時間サスペンスも消そうとしているのではないかと思われる番組編成を一部でしていることからもわかるように、まずそんな事はできないでしょう。テレビ放送のためにセットを一回の芝居のために作るお金も勿体無いと思っているのかどうか知りませんが、昔のドリフターズのような番組というのも今は作れなくなっているのではないかと思われます。

ただ、その点NHKには潤沢な受信料による資金があるので、民放では一時とだえてしまった時代劇も大河ドラマだけでなく「金曜時代劇」という枠もあり、最近になってBSジャパンの時代小説のドラマ化やBSTBSで水戸黄門が始まるまでは唯一時代劇をレギュラーで作り続けていて、その余波で最近はコント番組にも手を付けていて、現代のテレビコント消滅の危機を時代劇と同じように巣食っているようにも見えます。しかしビートたけしさんがNHKの喜劇がつまらないとおっしゃる意味を考えてみると、出ている人がみんな民放に出ている時とは違い優等生になってしまったり、出る人が優等生らしくふるまうように場の雰囲気を作ってしまうからなのではないかと思ったりします。

この事を考える時に、かなりはっきりと覚えている事をここで披露したいと思うのですが、当時大人気の間寛平さんが十二単を着て顔は白塗りにして登場する「引きずり女」というキャラクターがあって民放では大ウケだったということで、その年のNHK紅白歌合戦の幕間で登場したのです。しかし、それまでの厳かな雰囲気の中で登場したためなのか、とにかくその場の雰囲気に馴染めなかったというか登場した時点でお客さんが引いてしまい「引きずり女は……客が引く」と小さい声を絞り出して舞台から去っていったのです(^^;)。やはり何の説明もなく引きずり女の格好をして紅白の舞台に出るというのはやってはいけなかったのでは? とその当時は思うとともに、こういうギャグが受けないから当時のNHKではコント番組で大爆笑できないんだと思ったことを思い出します。それが私自身の今にまで続くNHKとコント番組のイメージとなってしまっています。

そういう意味では、NHKがバラエティというよりも真面目に「喜劇」の事を勉強するというようなスタンスで紹介するこの番組の事については、逆に違和感なくさまざまな喜劇についての人物や歴史を教えてくれたのでためになったように思います(^^)。優等生には優等生らしくきちんとした講座でさまざまな芸能史をひもとく企画というものにも個人的には期待しているのですが。

あと、もう一つ番組を見ていて気になったのが、伊東四朗さんが最後に言っていた「今の若手は(ネタ元を知らないので)パロディができない」という事でした。これについて、実は逆にフジテレビの人気番組「さんまのお笑い向上委員会」に謹慎明けの漫才コンビの片方であるアンタッチャブルの柴田英嗣さんが出ていじられた時、その事を強く感じました。

というのも、最初に何とか横山やすしさんの「メガネメガネ」と落としたメガネを探すギャグを振られて何とか受けたものの、その次に彼のメガネ姿をいじろうとFUJIWARAの藤本敏史さんから出た「三木のり平」さんの名を出されても柴田さんはその事がわからず、

・「ねぼすけに、はじめ優しい、ママの声」
・「午前様、角と一緒に、茶漬け出し」
・「長電話、聞こえるように、邪魔をする」

と藤本さんに振られても「ごはんですよ」と、長年三木のり平さんのアニメで、のり平さん亡き後も息子の小林のり一さんが声の出演をしていた桃屋のテレビCMの返しをすることができなかったのです。

柴田英嗣さんは1975年生まれで、藤本敏史さんは1970年生まれということで5年の開きがあります。ちなみに上記の川柳がちりばめられた桃屋の「ごはんですよ」のコマーシャルはネット調べでは1981年放送ということなので、柴田さん6才、藤本さん11才ということで、それなら柴田さんはのり平さんの出た久世光彦さん演出のホームドラマ「あとは寝るだけ」(テレビ朝日 1983年)なんかも知らないんだなあとしみじみと時代の流れを感じてしまいました。

現在20代から30代くらいの若手のお笑い芸人とのジェネレーションギャップはあるかも知れませんが、すでに40を越えている中堅どころのお笑い芸人さんにも三木のり平さんの事を全く知らない人がいるというのは、別に柴田さんを個人的に突っかかっているというわけでなく、単純に伊東四朗さんの嘆きは相当深刻なものであることを今回改めて確認してしまいました。

これからテレビに出てくるお笑い芸人の予備軍の方は、自分から言う必要はないにしても、一通りは芸人の先輩や長老の方から急に昔の事を振られても、振られた「元ネタ」に関して何とか自分の知識の中で返せるだけのスキルを付けていかないと、テレビの笑いというのは瞬発力こそが大事なので、立ち往生になってしまえば次からは呼ばれなくなるかも知れません。また、色んな事を知った上でテレビを見ている人から「あの人はこんな事も知らないんだ」という色メガネを付けて見られてしまう可能性があることを理解しておいた方がいいのではないかとも思います。

(番組データ)

たけしのこれがホントのニッポン芸能史(12)「喜劇」NHK BSプレミアム
12/2 (土) 19:30 ~ 21:00
【出演】ビートたけし,所ジョージ,伊東四朗,ムロツヨシ,遼河はるひ,荒俣宏,
【アナウンサー】黒崎めぐみ

(番組内容)

芸歴60年喜劇界のレジェンド伊東四朗がたけしと語り合う名優たちの伝説!▽初共演、ムロツヨシがたけし・所に体当たり!▽動くエノケン・ロッパ?貴重な映像を大公開!▽希代の喜劇王・三木のり平の魅力を中村メイコが語る▽驚異のリハーサル日数!?吉本新喜劇の舞台裏に密着!不動の人気を誇る関西の笑いの秘密をすっちーと池乃めだかが語った!▽実験!80年前の喜劇を東京03が現代に再現!?▽たけしが語る喜劇とは?