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戦争の悲惨さを普段見ない視点で描いた珠玉のドキュメント

番組がお昼に放送されたこともあり、なかなか全ての人が見られない番組ではありましたが、一年に一回あるテレビ番組コンクールの賞を受けた番組をNHKと民放の垣根を超えてオンエアーするという珍しい番組になっています。ちなみに、これはテレビだけではなくラジオでもNHKが賞を受けた民放の番組を流したりしていましたので、特に民放では深夜早朝でしか見られない良質のドキュメンタリーを直接見ることができるチャンスです。

コンペで最高賞を受ける作品の題材について、どうしても戦争に偏ってしまうのは仕方のない気もしますが、今回の放送で見ることのできた作品は、ちょっと食傷気味な戦争の切り口ではない番組が目立ち、さすがに評価を受けた番組が集まっているなと感じるには十分なものばかりでした。

広島テレビ放送の「NNNドキュメント」の中で放送されたアメリカ人被爆者について取材した番組は、前アメリカ大統領のオバマ氏がまだ大統領だった頃に広島の慰霊祭にやってきて行なったスピーチを放送していましたが、広島でオバマ氏と抱擁した日本人の男性は誰なのかということが、このドキュメンタリーを見たことで私自身初めて知りました。森さんと呼ばれるその人は、自身が被爆者であり12人と少ない人数ながらその時に広島にいた米軍捕虜たちの被爆者の詳細について調べ上げた森重昭さんであったのです。

広島では在韓被爆者の扱いが違うということは知っていましたが、当時広島にアメリカ兵の捕虜がいたという事自体、知らない人が多かったと思うので、こうした番組が賞に選ばれることで見る機会が増え、今回私も見ることができたことは良かったと思っています。

さらにそういう意味で、全く知らない太平洋戦争に関わる事実を知ることができたNHKBS1の「BS1スペシャル 父を捜して 日系オランダ人 終わらない戦争」の衝撃は半端ないものになりました。

日本がオランダが当時占領していたインドネシアに侵攻し、その一帯を支配した時期がありました。日本では当時、日本軍が南洋の島々への実効支配を固めるとともに、異国情緒あふれた南洋の様子を歌った歌謡曲が流行るようになります。例えば灰田勝彦さんの「ジャワのマンゴ売り」や「バダビアの夜は更けて」のような歌は、軍国主義により戦意高揚の流行歌ばかりになりがちであった日本の歌謡曲の中で、あえて戦地の事を異国風のメロディに乗せて歌うことで、軍歌以外の曲を流行らせ、甘いメロディや歌詞を出しても検閲を逃れた面もあったように思いますが、この番組で紹介されるような悲劇をテレビからではありますが目にしてしまった今となっては、その認識を改めざるを得ないようなことにもなってきます。

というのも、今オランダでは母親がオランダ人やインドネシア人で父親が日本人という日系オランダ人の方々が今でも太平洋戦争の影響で苦しんでいるというのです。自分の父親である日本人が終戦とともに逮捕されたり日本に帰らなければならなくなったことで、自分の肉親が誰なのかわからずに、自らのルーツ探しをしている人がいるという現実が今もあるのです。

すでに当事者である日本人の父親はこの世にはいない場合も多く、その遺族からするといきなり私はその男性の子供ですと言われても、返答すらしない日本人も多いとのことなのです。番組に出演した方はオランダ人の母と日本人の父との間に生まれたことで、日本軍の捕虜になって強制労働や拷問を受けた事で日本に対する強い憎しみを持つ継父から執拗ないじめを受けた体験や、虐待の延長のような形で継父にレイプされて子供を生んだという衝撃の告白をするなど、今回の番組に出演した方々は赤裸々な生涯について告白されていました。

見ている方としてはなぜそこまでぶっちゃけて話すのかという疑問は当然出てくるようで、番組を見終えた森達也さんが番組プロデューサーにその件についての質問していたのは最もでした。なぜそこまでカメラに向かって話すかというと、自分の父親を知ることができた人というのは少ないらしく、先述のように日本に問い合わせをしても梨のつぶてという事がほとんどなので、他の父親を探している仲間についても自分の父親が誰かを知ることができるよう、日本のテレビクルーに自分達の抱える問題を見せることで、日本で番組を見ている日本人にそうした活動に協力して欲しいという願いを込めてのことのようです。

番組では当時者の日系オランダ人のお孫さんが自分の親のルーツを調べたために、異きょうだいと当事者の母親や継父とも絶縁するに至った事を紹介されていましたが、そんな事が、多くの人が太平洋戦争を忘れようとしている今に起こっているというのは、当時国の一つである日本に生きる身としては大変なショックを感じざるを得ませんでした。この番組を見るまでは、南国を舞台にした戦時中の歌謡曲というのは、戦時中でもほっとできる清涼剤のような存在なのではないかと思っていたのが、実はとんでもない人の営みを生みだした原因の一つだと、今までと変わった見方をするに至りました。

現在の日本ではなかなかテレビドキュメンタリーに日の目が当たる機会がなく、見る事自体も大変です。そんな中で良質のドキュメンタリーは何だったかを教えてくれ、さらに今まで全く知らなかったような事実を教えてくれる番組をまとめて見られる機会であるこの番組は毎年継続してチェックしておくべきだとしみじみ思いました。

(番組データ)

ザ・ベストテレビ2018「第二部」NHKBSプレミアム
10/15 (月) 12:30 ~ 16:40 (250分)
【ゲスト】森達也,梯久美子,小原一真,中村育子,金本麻里子,加藤紗千子,
【司会】三宅民夫,雨宮萌果

(番組内容)

この1年、国内の主要なテレビ番組コンクールで最高賞を受賞したドキュメンタリーをNHKと民放の垣根を越えて放送する。

「第二部」10月15日(月)午後0:30~4:39(4時間09分)
▽午後0:36ごろ~地方の時代・映像祭賞「かあちゃんのごはん」(信越放送)
▽午後1:36ごろ~放送文化基金賞・ATP賞「BS1スペシャル 父を捜して 日系オランダ人 終わらない戦争」(椿プロ/NHK)
▽午後3:37ごろ~民放連賞テレビ教養番組「知られざる被爆米兵 ヒロシマの墓標は語る」(広島テレビ放送)


改名記念番組は「テレ東」のユルさと企業紹介がキモ

今まではBS7チャンネルは「BSジャパン」という名称で放送をしてきましたが、このブログでも呼び方を改めて「BSテレ東」という新社名を付けて番組を紹介することとします。なぜこんな変更が行なわれたのかと言うと、業績好調な地上波の「テレビ東京(愛称として「テレ東」と呼ばれる)」の方がキー局のない地域であっても名前が浸透しているということがあるからでしょう。

一般的に「テレ東」と聞いてどんな番組を放送しているか? と訪ねられた時、好きな番組を知っている人なら他局と比べて予算はないものの、アイデアで勝負する番組が多かったり、進行自体も緩いということで、その「ユルさ」が好まれているということもあるのではないかと思います。

この番組では自社の社名変更にかこつけて、「改名で泣いた笑った」というテーマで様々な名前について緩い進行で番組が進んでいきます。それ自体が全国で見られるBSでも地上波の「テレ東」らしい番組が見られるのではという期待感が出てきますし、個人的には地上波スポーツの一押しである卓球について、地上波と同じように生中継の放送を増やして欲しいと思いますが、今回の番組の後半ではこれぞテレ東というようなコーナーもありました。

それは改名した企業の代表に登場してもらい、その会社の様子を取材した内容になっていたのですが、これこそ日本経済新聞と提携したテレ東の強みのように感じます。BSジャパンの時にも周回遅れで「ガイアの夜明け」のような良質な企業に取材した番組を放送していますが、こうした方面でも他の局にないような番組を送り出して行って欲しいと個人的には思います。

ただ、問題は果たして今回の社名変更が、肝心の「BSテレ東」にとって良かったのか悪かったのかという評価になってくると思います。BSで放送を始める時に「テレ東」という名前はあえて使わず、「BSジャパン」というまさに大海原に出向するような意欲のある名前にした事は気持ちの上では評価できたものの、現代では無理をせずに身の丈に合った番組を作る「テレ東」というローカル色丸出しのような名称の方が世間に浸透したというのは、大資本に向かっていく向かい方の違いではあるものの、決して後ろ向きな改名ではないと思えます。

こうした戦い方というのは、実は「BSテレ東」と名前を変更することで、普通に通販番組の多いBSというイメージを転換したり、全国のキー局として知名度がある他のチャンネルと本格的に争っていくという宣戦布告だというようにも取れるところがあります。まだその概要は見えてはきていないものの、今後の「BSテレ東」がどのような番組を全国にいる視聴者に届けてくれるのか楽しみにしたいと今は思っています。

(番組データ)

名前を変えて笑った人泣いた人 波瀾万丈伝<BSテレ東始動SP> BSテレ東
10/1 (月) 18:55 ~ 20:55 (120分)
【メインMC】高橋克典
【アシスタント】福田典子(テレビ東京アナウンサー)
【ゲスト】徳光和夫、柴田理恵、井森美幸、ナナナ&ハチ ほか
【プレゼンター】モンキッキー、AGC広報 ほか
【ナレーション】島田弘久(テレビ東京アナウンサー)

(番組内容)

10月1日からBSジャパンはBSテレ東に社名変更!ということで、緊急企画!“名前を変えた”ことで運命が変わった面白ストーリーを、テレ東っぽく、ご紹介!

BSジャパンはBSテレ東に社名変更。という事で、緊急企画!“名前を変えた”ことで運命が変わった面白ストーリーを紹介! 結婚、地名や歴史上の人物からビジネスまで、改名にまつわるバラエティー! さらに「BSテレ東」の社名変更について街頭インタビュー!その結果は??? 2時間たっぷり!「名前を変えて」起こった悲喜こもごもを掘り下げます!!

◆「運勢あがった」「画数増えて面倒になった」人にインタビュー
◆「魚」さん「牛」さんなど変わった苗字の家に嫁いだ人にインタビュー
◆実際にあった改名にまつわるエピソード
◆歴史上の人物も名前を変えた?
◆工場誘致後に名前を変更した市で、アウェイ感を感じている営業所の所長が登場!
◆最近、地名変更を発表した市とは? 【会社名や商品名では?】
◆最近社名変更した会社
◆長い名前の会社
◆名前を変えてブレイクした商品


NHKは「阿波おどり」を広く見てもらう気がないらしい?

ちょっとテレビの番組表を見ていて気になったのですが、2018年の徳島市で8月のお盆に行なわれた「阿波おどり」ですが、同じNHKBSでは生中継があったような気がしていたのですが、今年は何と月曜日の午後4時前に録画編集したものを放送しました。2018年は「総踊り」が中止になったり市長や徳島新聞が批判の矢面に立たされた報道によるところもあったのでしょうが、過去最低の人出と言われ、もし生中継をしたら何が起こるかわからないと思って録画中継にするのは理解できるにしても、放送する時間は一体どうなの? と思ったのは私だけではないはずです。

中継の演舞場の席は最初の連の時には埋まっていて、そうした事も編集された結果だということを感じていました。阿波おどり開催中の観覧席はかなり売れ残って空いていたという報道もあり、実際にガラガラの観客席の写真をこの夏に何枚も見ました。これは、テレビの画面というものがそこで起こっている状況を全て映しているというわけではなく、あくまでカメラで撮られた部分のみしか映らないということもあります。

自分も写真を撮る時にはそれほど盛り上がっていない状況でも画面を切り取ることで大盛況のような写真をあえて撮ることもありますが、恐らく今回の阿波おどりについてもそんな感じで人がいる時間帯や、人が集まっている場所を狙って撮影したのではないかという風にも思えます。例年なら多少席が埋まっていなくても全くその事には関心はなく、あくまで踊りのクオリティや迫力だけを見て楽しむだけなのですが、2018年という年は阿波おどりにとって難儀な年だったと思ってしまいます。

ただ、今年は逆に踊り以外にも、観客席の上にある看板にはどんな企業が入っているのだとか、どのお客が招待券を利用して、どのお客がお金を出してチケットを買って見ているのか、その踊りへの声援の掛け方でわからないかと思ったりとか(^^;)、そんな事も気になってしまいました。

しかし、番組を見続けていく中で、私はその瞬間を見てしまいました。番組の半ばに今回の騒動の概要は伝えたものの、あくまで徳島市が準備をしっかりやって開催にこぎつけたというニュアンスの説明だけで、市長が禁止した「総踊り」についての言及もありませんでした。ただ、その直後に踊りの様子が紹介された「阿呆連」の踊りの最初の部分では、多分踊りのスタート地点付近だと思うのですが、見事にガラガラの観客席が一瞬映し出されていました。さすがに、テレビで踊りの全てを流す中では、一部の客席がガラガラなのを隠すことはできなかったという印象です。

阿波おどりの魅力を伝える番組ということで、あくまで前向きに、騒動については極力伝えずに現場は盛り上がっているよ! という事を伝えたいというのが番組の目的なのかも知れませんが、だったら見る人の限られる(わざわざ録画して見る人を含めて)月曜のまだ夕方前の時間帯にぶつけて放送することの意味というものは何なのか? と改めて考えてしまいます。

結局、毎年阿波おどりについて番組を作ることは決まっていて、今年は騒動の影響で生中継できず、どんなに隠そうとしてもガラガラの客席を映さざるを得ない事がわかった時、これは放送時間をずらして放送してやれという風にしか私には感じられませんでした。

私はたまたまその前に見ていた深作欣二監督の忠臣蔵の映画を見た流れで見ることができましたが、これも月曜日の昼間に休みだったからという事があって、そうでなければ全く見ることのできない時間帯でした。毎年、この中継やVTRの取材を受けたちびっ子を含めた踊り手さんもさぞや残念だろうと思います。なぜ同じウィークデーでも多くの人が仕事終わりで見ることのできる夜に編成できなかったのか。それがテレビだと言われればそれまでですが、やはりこうした日本の祭りというのはそこで行なわれているものをリアルタイムで見たり、参加した人たちが家族そろって見られる時間に放送することに意義があるのではないかと思うのですが。

さらに言うと、今年だったらテレビ中継される演舞場でも当日券が余っていたのではないかと思われるので、本当に阿波おどりを間近で急に見たくなったら近くにいる人がテレビを見て現場に押しかけることもできます。これもテレビの即時性の一つです。

いつのころからかこうした日本の祭りや花火大会を生中継する番組がBSを中心に全国放送されることが多くなりました。私はもっぱらテレビで見てその魅力を感じるだけではありますが、テレビで見て大きな魅力を感じたものについてはいつか直接出掛けて見に行きたいものもあります。しかし、今年の阿波おどりの録画中継は、あらゆる意味で不満が残ることになったことだけは確かではないでしょうか。

ちなみに、再放送予定はすでにあるのですが、同じ9月ですが27日(木)深夜(28日(金)) 午前2時50分からというまたとんでもない時間でした(^^;)。再放送についてはこんなものかなという気もしますが、来年はきっちりと生中継にして、現場の良いところも悪いところもしっかりと伝えて欲しいものです。

(番組データ)

徳島 阿波おどり2018 NHKBSプレミアム
9/3 (月) 15:45 ~ 16:58 (73分)
【ゲスト】瀧本美織,
【解説】阿波おどり情報誌編集長…南和秀,
【アナウンサー】高山大吾

(番組内容)

徳島を代表する夏の祭り、阿波おどり。熱演の数々をたっぷりご紹介します。ゲストは、俳優の瀧本美織さん。なんと瀧本さんも、阿波おどりに初挑戦!見事、観客の前で踊りきれるのか?さらに、クイズ形式で阿波おどりのディープな世界をご紹介。これを見れば、あなたも阿波おどり通になれるかも。


指導者の堕落は競技をも弱くすることを解説した番組

番組の題名は、とにかく今の日本の卓球がなぜ急に強くなったのか? と思っている人に番組を見てもらいたい一心で付けた印象ですが、約二時間を通して真面目に日本の卓球の歴史と東京オリンピック後の状況にも触れていて、かなり作り手の熱意が感じられました。さらに、卓球に限らず他のスポーツに関わっている人にも大きな教訓を与えてくれる番組になっていました。

テレビ的にわかりやすくするため、国際卓球連盟の会長という要職まで務めた元世界チャンピオンの荻村伊智朗氏をキーパーソンに据え、ドラマパートに荻村氏を登場させ、そこで自身の卓球への考えを語らせたことで、この番組のテーマが単に「日本卓球が強くなりさえすればいい」ということにとどまっていないのは素晴らしい事だと思いました。

荻村氏が最初に世界の舞台で戦ったのは1954年のイングランドで行なわれたウェンブリー世界選手権でした。まだ第二次世界大戦から日が経っておらず、ウェンブリーの観衆は露骨な反日感情があったので(映画「戦場にかける橋」で描かれたような理不尽な対応をされた人もいたのでしょう)、試合の際中にボールを取りに行ったら目の前でボールを潰されたり、観客から足を鳴らしてブーイングを受けたり、判定にも不審な点があるなどかなり厳しいアウェイの空気の中行なわれました。それでも勝って世界一になったことで、荻村氏のチームメイトがカバンに大事にしまっていた大きな日の丸を掲げようとしたところ、荻村氏がその動きを止めさせたことが番組では紹介されています。

もはや戦後から70年以上経った今ではそんなことはないとは思いますが、大会の少し前には直接戦ったり捕虜としてイギリス人を労務に使用していたりして、その時に見た日本の国旗日の丸には反日の象徴のような想いを持つ人もいたと思われます。荻村氏は優勝が決まった直後に大々的に日の丸を掲げることで観客の反日感情が爆発してしまうことを想像し、同僚が嬉しさの余りカバンの中から取り出した日の丸を会場で掲げることを押し留めたのです。

結果、この行動があえて国家主義にあらず政治や宗教の違いのある地域からも代表を出すことができる卓球連盟の考えに合致するものとなり、日本チームは改めて優勝を称賛されたというのです。アウェイの雰囲気に飲まれ感情的に対処するのではなく、あくまで冷静に、自分達はあくまで卓球のチームであるということを貫いたこの体験は、後の荻村氏の国家や宗教に関わらずに大会運営を行ない、当時オリンピックに出られなかった中華人民共和国にアメリカとの対話の懸け橋となる「ピンポン外交」を仕掛けたり、自ら中国大陸に出向いて日本の当時の技術を指導したり、南北朝鮮の統一チーム「コリア」での出場を実現させたりすることにつながったのではないでしょうか。

番組ではこうした荻村伊智朗氏の考えを紹介するとともに、この荻村氏を擁しても国際的な舞台で活躍できなかった日本チームの陥った「弱体化」の原因をしっかりと指摘しています。日本の世界を席巻した卓球は、それまでの守備的な卓球から方向転換し、右利きなら自分の右側に回り込んで全てフォアで打ちぬくというフットワークを駆使した角型ペンホルダーでの戦い方でした。もしバックに早く打たれてどんな素早いフットワークを持ってしても回り込めない場合は、主に当てるだけで返すショートやツッツキで対応するだけで、練習はほばフォアによる強打のみで対応する選手が称賛された時代が長く続いたのです。

その間に世界では物理的に足を使って回り込むのではなく、利き手と反対方向に打たれた場合はあえて足を使わずにバックハンドで強打するように返す卓球が主流になっていきます。当然中国はそうした流れをいち早く察知しましたが、体の大きいヨーロッパの選手はその力を最大限に利用してフォアでもバックでも威力が変わらない強打を打てるようになり、日本がとてもかなわないだけの存在になるとともに、中国のトップ選手でも勝てないというワルドナーというスウェーデンの選手を生むなど成果を上げていました。

そんな状況になっても現在の日本のトップにいる水谷隼選手を指導する指導者も水谷選手がバックハンドの練習を行なおうとすると「楽をするな!」(足を使って回り込んで打つことがかつての日本の強さの象徴だったので、そこで思考が止まっていると思われる)と叱咤されたと言います。試合のアドバイスでも具体的な戦術の指示もしないで「強気だ!」と精神論しか言わないような人が日本のトップを教える指導者の中にもいたということが明らかになり、これでは日本の卓球は強くならないということが番組を見ている自分にもわかりました。

他の競技でも、とにかく精神論しか言わない指導者や、過去の栄光を事更に主張する言葉は悪いですが「老害」のような人がトップに立っていることで大きな問題になっている日大のアメフトやアマチュアボクシングのようなことが続いているところが他にもあるかも知れません。そうしたアスリート目線でないところから指導が行なわれる状況を変えるために日本の卓球連盟がどうしたかという事までこの番組は紹介しているのです。

日本の卓球が世間に注目されるきっかけになったのはまだ小学校に上がる前の福原愛選手の存在が大きいですが、彼女をはじめとする小学生以下の有望選手を強化していく中で、現在も日本チームの強化に取り組む宮崎義仁さんの証言によると、徹底的にバックハンドを強化した合宿を行なったというのです。「フォアでできることはバックでもやろう」が合言葉であったということですが、こうして日本ナショナルチームの指導を受けた子と受けない子との間で、露骨な実力の差ができてきたことが想像されます。

というのも、体力のない小学生が全てのボールを回り込んでフォアのみで打つというのは不可能です。しかしナショナルチームで指導を受けた子はいとも簡単にフォアとバックのコンビネーションを決め、実戦での技術の差を見せ付けることで「これは今までのようにバックをないがしろにしていては勝てない」という事実を試合の中で日本の多くの指導者に感じさせたのではないでしょうか。

現在の選手で言うと、伊藤美誠選手が試合でも使っている「美誠パンチ」や「逆チキータ」のような技術は、ちょっと昔の指導者なら「遊びで卓球をやるんじゃない!」と大目玉を食らうかもしれない行為から生まれたものだと思います。現在の世界の技術の主流である「チキータ」すら、日本の旧態依然とした指導体制では練習させてもらえなかったとすら思います。それを、とにかく試合に使えそうなものなら遊びの要素から出たものでもきちんとした技術に仕上げていくだけの柔軟性こそが日本の卓球を強くしたと言えるかも知れません。

番組ではタレントのタモリさんに「暗い」と揶揄された事についても紹介されていましたが、これも単にタモリさんに一喝を加えただけで「地味なユニフォームこそが日本の伝統だ」と突っぱねていたら今の日本チームの状況はなかったでしょう。柔道におけるカラー柔道着が出てきた時にも「白こそが柔の精神に合致するものである」とカラー柔道着に反発される方もいましたが、今ではカラー柔道着があればこそ、試合も見やすくなっている側面もあるわけですし、良いものはどんどん取り入れて世界の同志とともに競技としての向上を目指すということが大切だと思います。

実は卓球には「中国が強くなりすぎちゃった問題」というのがありまして、いつの大会でも全ての種目で中国が優勝して終わりというのでは見る側としても面白くなく、最悪のケースとしてオリンピック種目からの除外もあるのではないか? という観測もあるほどです。ですから日本が勝ってくれれば見ている私達にとって、それは嬉しい事ではあるものの、ヨーロッパの選手で中国を次々に打ち負かすような選手が出てきてもそれはそれで盛り上がるだろうと思います。ただ、個人的に中国の牙城を崩す可能性は日本の選手にも十分あると思いますので、今後も常識にとらわれず、何より指導者がアスリートファーストを貫いて今の若い選手達を順調に成長させてくれることを願わずにはいられません。

(番組データ)

Why?強くなった?卓球ニッポン NHK BS1
2018/07/29 22:00 ~ 2018/07/29 23:50 (110分)
【出演】
(ドラマ)でんでん,傳谷英里香,窪塚俊介,
(卓球選手)水谷隼,宮崎義仁,前原正浩,木村興治,長崎美柚,織部幸治,
【語り】ハリー杉山

(番組内容)

リオ五輪でのメダル獲得以降、若手の活躍で大人気の卓球。実は、日本はかつて世界最強を誇る時代もあった!?ドキュメンタリーとドラマを融合させ、強さの秘密をひも解く。

リオ五輪でのメダル獲得以降、若手の活躍で人気が高まる日本の卓球。しかし実は1950~60年代、日本は世界のトップを走る“卓球王国”で、それを築き上げたのが“ミスター卓球”と呼ばれた荻村伊智朗だ。日本はもちろん、中国やヨーロッパなども指導、強豪国を作り上げた。今の超攻撃卓球の原点も荻村さん?!日本の強さの秘密を時空を越えてたどる、ドラマとドキュメンタリーが融合した新感覚ハイブリッドスポーツ番組!!


あくせく売らない事が魅力的な「通販番組」

この番組は2015年から始まっているそうですが、個人的には今回が初見で、実に興味深く拝見しました。番組の最初にはすでに「ジャパネットたかた」の社長を引退し、現在は出身地である長崎に貢献するためということで、新たにサッカーJリーグのV・ファーレン長崎の社長に就任し、今季J1で戦えるチームを作っている高田明氏(「高」の字は実際は「はしご高」)が登場しました。

今回のポイントはワールドカップで中断しているサッカーJリーグのV・ファーレン長崎の後半最初の試合が新たにバルセロナからイニエスタ選手が加入する神戸だということで、スタジアム周辺から散歩を開始し、地元の人達とふれあっていきます。

改めて考えてみると、番組に出演している高田明氏はタレントではないものの、他の「お散歩系紀行番組」と比べてはるかに周辺の人々の食い付きが良く、高田明氏の方も事前の仕込みは十分にあるにしろ、旅で出会った人達やスタッフへの配慮をにじませつつ、神戸に出掛けたら行ってみたい場所をことごとく訪問していきます。

面白かったのが、一泊1500円という二畳のテレビ付きの「ドヤ」とかつては呼ばれた簡易宿泊所の中を見たいと言い出し、本当に部屋を見せてもらっていたことです。看板に書かれている内容は、実際部屋がどのくらいの状態になっているのかということは、特に安く神戸で宿を探している人にとってはいい情報になったと思います。このように、街をぶらぶらしながらも、どこにテレビを見ている視聴者の興味があり、何を知りたいかを瞬時に察知して飛び込んでいくだけの行動力というものを感じます。そうした行動力が会社を大きくし、さらにはV・ファーレン長崎をJ1リーグまで昇り詰めたという感じもするわけです。

番組の後半では同じ兵庫県の中でも、神戸からは遠い日本海側の豊岡まで行くことになりましたが、ここでも街を高田明氏が歩く中、豊岡以外ではあまり見たことがない地場産品の「カバンの自動販売機」と遭遇し、「一つ1,500円のカバンを買うのに二千円を入れても買えず、千円札と500円玉を入れなければ買えない」というかなり細かいカバン自動販売機についての情報を入れつつ、豊岡でも選りすぐりの鞄メーカーを訪ね、そこで一押しのカバンの数々を紹介してもらうことになります。

ここで終了するのが普通の番組であるというところなのですが、ここまでの中であえてその場で値段を聞かないということがまた、単なる視聴者をお客様に変える手法なのかも知れません。私などは通販番組の司会としてテレビからラジオまであらゆる商品を売ってきた高田明氏の事を知っていながら、「なぜ高田明氏は単なるお散歩番組を手掛けているのか?」と思いながらこの番組を見ていたのですが、最後に来てこれらのカバンを番組放送時に合わせて限定数ありのジャパネットたかたでのテレビショッピングの商品として出してきたときには、これこそ究極のテレビショッピングの番組ではないかと唸りました。

丁寧にカバンが作られている行程を紹介することで、当然きちんとした仕事で作られているカバンは安くはないだろうなあと思いながら見ていて、それでも海外ブランド品のカバンより安いのにきちんとした技術に裏打ちされた素晴らしいカバンであるということは番組を見ていた人には十分わかるはずです。特にあるメーカーでは実際にテレビでは言えない海外ブランドのカバンを手がけているということだったのですが、そのブランド名が明かされなくてもあくまでカバンとしての性能や細かい手作業の内容を見て、純粋に欲しいと思った方は少なくないだろうと思います。

もちろん、番組を見て豊岡のカバンに興味を持って実際にこの夏現地へ出掛け、そこで直接自分の好みのカバンを購入するつもりで出掛けてもいいのですが、この番組の魅力は高田明氏が出掛ける先で見たものや興味を持ったものを疑似体験できるところにもあります。テレビの取材ということではあるもののとにかく関係者のトップに直接お会いしてある程度まとめて購入することによる価格を実勢価格と見てこの金額は妥当か否かというのは、今ではネットで検索すればだいたいのところはわかりますので、買おうと思った人は素直に買ってしまうのではないかと思います。

ただこの番組は、いわゆるコマーシャルのない通販番組というジャンルのもので、今回ジャパネットたかたでは「BSフジ」「BS日テレ」「BS JAPAN」の3つのBS放送で違う日に放送されました。今回出てきた商品はホームページからでも購入することができます。ただしテレビで用意している個数を上回る注文が入った場合は、納期が伸びる可能性があるということも番組で語られていました。テレビを見ていてすぐ注文することによる「即納」というメリットを強調し、その土地の名産品を売りまくるというのは、単なるテレビショッピングの枠を超えた可能性というものを感じます。

もし番組の主役が元社長の高田明氏でなくタレントを使っての演出だったらここまでインパクトはないでしょうし、まさに、高田氏が元気でいるうちにだけ見られる貴重な番組ではないかと秘かに思っています。番組の再放送というのも番組自体で商品を売るということがあるのでなかなか再放送も難しいと思いますが、次のシリーズではどこへ行って何に興味を持って何を売ろうとするのか? という興味を持って見てみたいと本気で思っています。

(番組データ)

高田明のいいモノさんぽ 兵庫篇 BS日テレ
7/14 (土) 14:00 ~ 14:55 (55分)
出演 高田明

(番組内容)

高田明が全国の素晴らしいモノを探す旅「いいモノさんぽ」 舞台は兵庫県。港町で知られる神戸の「下町」を中心におさんぽ。 老舗居酒屋の名物女将や地下鉄にある意外な施設など知られざる神戸の魅力を発見! 最後はご当地の素敵な逸品にも出会います。


現場任せの企画は大ハマリもあるが面白かったヒッチハイク旅

今回紹介する番組はドキュメンタリーではないので、テレビで映っていない所で何が起こっているのかわかりませんが、見ているこちらで想像するに、できるだけ番組内容に書かれているような有難い車に常に拾ってもらってヒッチハイクができるわけではありません。

そもそも普通にヒッチハイクの旅をしようとして犯罪に巻き込まれたりする場合もあるわけで、視聴者がおいそれとヒッチハイクの旅に出ようとはなかなか思えませんが、テレビを通じて顔の知られたタレントやミュージシャン、文化人などが直接目の前に現われ、さらに運転する側に危害を加えるような危険な事はしないということでもなかなか止まってくれる車がないという現実についてはこの番組でも垣間見えます。もっとも地方の街頭に立ってどれくらいの人がはきはきとインタビューに応えてくれるかということを考えると、車を停めて乗せてくれるような人は、それなりにテレビカメラの前に立つことに躊躇しないだけの度胸を持っているということはわかります。

この「ヒッチハイク旅」の大きな特徴はうまくハマれば「三方一両得」になる可能性があるということでしょう。出演者は車に乗せてもらうことで企画の目的である場所へ向かって進むことができますし、車を運転して出演者を乗せる方の一般の人にとって、単にテレビ出演では大きな謝礼は期待できないところですが、この旅の仕組みというのは独特で、運転者と同乗者が食べたいという外食を、提供するお店が撮影を認めてくれれば、料金の心配をすることなく自分の好きなものを腹いっぱい食べられるということになっています。さらに、出演者もドライバーに奢る時しか食事ができないという決まりになっているので、必死に自分達を乗せてくれるドライバーを見付けて、好きな物を食べて下さいと促すことになります。

そして番組を企画するテレビ東京(この番組は前年にテレビ東京で放送された番組の再放送なので)のメリットとしては、単に出演者の周辺にカメラを用意しておくだけで、タレントの移動はしてもらえるわ、さらに乗せてくれるドライバーによっては、普段食べられないような高額な食事を奢らされるという不安要素もあるものの、いわゆる全国放送のバラエティではなかなか登場することがなさそうな地方にある個人営業の「知る人ぞ知るお店」や「地元の本当の名物を食べさせてくれるお店」をアポを取る努力もせずに取材・紹介できる可能性があるわけです。

ここが、他の番組とは違うところで、一般の方に自腹でなく奢ってくれるということになれば、いつも食べているようなものではなく、何かあったら食べたいグレードアップのできるお店や、一度は食べてみたかった名物を食べたいと思うことも多いはずです。さらに、ヒッチハイクしている出演者の事を考えて、できるだけ自分の町の名物を美味しく食べられる場所を紹介したいと思ってくれるケースが出てくることも考えられます。

もちろんそうした制作者の意図を全く理解せず、ファーストフードのチェーン店に行ってそれでいいという人もいるかも知れませんが、お店宣伝効果ということも考えると、今回出演された方々にとってはどなたもメリットがあったはずで「四方一両得」とも化けかねない番組だと見ていて思いました。特に「満州にらラーメン」のお店は、テレビの気配を際してか営業終了後に撮影及び食材の提供をこの番組のために行なったことで地元でもかなり株が上がったのではないでしょうか。

唯一残念だったことは7日目の日没までに東京出発から札幌でゴールという目標は達成できなかったことです(最終的にはいかめしで有名な森周辺で終了したようです)。テレビ東京で放送したものをBSジャパンで放送し直すということは私と同じように面白いと思った人が多かったからなのかと思いますが、様々なルートを取れるように途中によらなければならないスポットを設定すると、同じ東京から札幌までの旅でも新潟経由で秋田とか、そんな風に違った地域のドライバーや個人営業のお店が見られたりして視聴者も行って見ようと思う度合いは高くなると思われます。

あとは、ヒッチハイクをする人選をどうするかということになるでしょう。ただ今回の出演者の方々はよく考えられているように思えます。お笑い芸人だけのコンビでなく、多少おっとりとしていてもよくバラエティ番組にも出演するエブリリトルシングの伊藤一朗さんを出したことで、レッド吉田さんが苦手だと思ったドライバーにも好評だったように思います。それなら今回のペアと経路を異にしてゴールは同じにし、タイムリミットは設けて更に2チームでより早くゴールした方の勝ちというような形で企画しても面白くなるし紹介できるお店は倍増するのでテレビ的にはあまり面白くないお店ばかり紹介されて放送するのが微妙ということも避けられるかも知れませんし。

ただ、番組が化けるのは出演者自体が視聴者に「この人選でなければ」と思わせるくらいのインパクトがないと人気番組として継続していきにくいので、個人的には今回出演したお二人には、できるだけ未知のお店をドライバーが教えてくれるように話を持って行ったり、食事風景も楽しいものとなるように気を配るなど、次回の企画があるとしたらさらに番組に人気が出るように力を入れてロケを行なって欲しいというところもあります。そんなわけで、久し振りに番組の企画に唸った旅ロケ番組だったことをここで紹介させていただきました。

(番組データ)

ごちそうヒッチハイク旅~何かおごるから乗せてって!~ BSジャパン
2018/06/21 17:58 ~ 2018/06/21 19:55 (117分)
出演者
伊藤一朗(Every Little Thing)
レッド吉田(TIM)

(番組内容)

東京→北海道1300kmガチ乗り継ぎ旅!!ELTいっくん&レッド吉田の7日間ふれあい珍道中…車乗せてくれた御礼に何でもゴチ!地元民しか知らない穴場ご当地グルメを続々発掘

東京駅から北海道・札幌までの1300kmを7日間のヒッチハイクで目指すガチンコ旅企画。 ルールは1つ「車に乗せてもらうお礼として、“ドライバーさんが今1番食べたい物”を何でもごちそうする」こと。 2人は無事にゴールの札幌までたどり着くことができるのか?最後は衝撃の結末が…!?

旅の見どころは、偶然出会ったドライバーさんが知っている“地元のウマい店”に行ってごちそうすること。 普通のリサーチでは出てこない、知られざる ご当地グルメ店が続出!例えば… ・行列必至!“満州にらラーメン” ・地元で60年愛される“あんかけカツ丼” ・炭鉱の男たちがハマった“ホルモン鍋” 旅先で出会う“人情&グルメ”をお楽しみに!


一つのお寺に3回かける番組の「心意気」

今まで数多くの四国八十八か所巡礼を扱ったテレビ番組を見てきましたが、例えば「記録」をメインに作られたものであれば、一寺を一回の放送でカバーすることで、お寺の様子やそこで修行する人達の事を細かく見られるものの、順番にお寺を巡ることがいかに難しいことかということまではわかりません。

そんな中、過去に放送されたテレビ番組の中で、私自身にとって少しだけ回ったままその後のお遍路を回っていなかった四国お遍路を再度やろうと決意させてくれた番組がかの北海道ローカルのバラエティ「水曜どうでしょう」の企画として行なわれた四国八十八か所巡りでした。ただし、今回紹介する「チャリお遍路」と決定的に違うことは、車で回っていることもありますが、お参りもせず納経帳に御朱印もいただかず、単にお寺に来たことがわかるところで記念撮影をしたことで一寺を回ったとしたかなりの時間短縮のためのルールでした。しかしながらお遍路を回るという点については、この「チャリお遍路」の方が遍路の作法をしっかりこなしている分、これからお遍路をしようという方には参考になると思います。

私の場合は「水曜どうでしょう」を見て、車ですらも「遍路ころがし」と言われるいくつかのお寺へ行く道というのはハンドル操作を誤ったら崖下に転落して命も危ないと思われるところが数々番組では紹介されており、それまで11番の藤井寺まで簡単に車で回ってお遍路旅など大したことはないと思っていた私としては、たまたま11番まで回って長い間中断していたことを悔み、再スタートとして車で四国に渡って結願を目指し、無事に車で回り切ることができました。ちなみに再スタートして初めてのお寺は今回の番組でもチャレンジしている第十二番の焼山寺への参拝でした。

今回は焼山寺を目指して2回目の放送になりますが、やはりというか1時間番組であっても焼山寺にはたどり着けず、予告の内容からすると次回の7回目の放送でようやく焼山寺に到着するようです。

特に今回の行程については、さすがにロードレーサーに乗り慣れている小島よしおさんはそこまで体のダメージは少なそうでしたが、本格的なロードレーサーに乗るのが始めてで、日々にトレーニングもやってなさそうな狩野英孝さんのグロッキー振りというのは普段体力作りをしていない一般の視聴者が単なる思い付きでチャリお遍路をやろうと思ったら同じような事になるよという反面教師的な姿として見ることができます。まだ焼山寺まで全然来ていない「はちみつ」ののぼりが立っている所で狩野英孝さんはひどい転び方をし、養蜂場の方のご好意で休憩を取らせてもらえる所になっても何も喋ることができませんでした。でも、これが本気で決してやらせの番組ではないということを示しているように思いました。

普通、いくら「遍路ころがし」の道であるとしても、一つのお寺を回るために一時間番組で3週間もかける(実際は再放送をからめているので見る人によっては下手をしたら2ヶ月くらいかかっているかも知れません)のは、大変な場面はカットでなくしっかりその行程を紹介し、本気でお遍路を回るよという番組スタッフの決意というものではないかと私は取りました。

今回テレビでは上りを終えて多少は楽になっているお二人の姿も紹介していましたが、実は私が車で行ってシャレにならないと思ったのは下りに入ってから道幅が狭くなりさらにガードレールもない大変に車を運転する者にとっては恐ろしい道路の連続を思い出してしまいました。ただ、自転車だからすれ違いは大丈夫なものの、道の段差や枯葉にタイヤが引っかかって転倒をした拍子に道の下に落ちてしまう危険性は0ではありません。生半可な気持ちで自転車をこいでいたら一瞬にして派手にコケてしまう可能性もあるので、とりあえずお二人がここまで無事に進み、温泉のあるホテルで英気を養う事ができたのは見ていてほっとしました。

まだまだお遍路には難所が多く、今回のような山道の峠だけでなく寺と寺との距離が果てしなく長い高知県も控えています。しかし、今回の焼山寺までの道のりにじっくりと時間を掛けて紹介するということは、これから起こってくるさらなる困難においてもカメラと共にじっくりお二人の修行に付き添って行かれるであろうと今回の放送を見ていて確信しました。

今後特に狩野英孝さんが最後までお遍路を続けられるのかが番組を見る側としての最大の楽しみになりそうですし、これから何となくお遍路に行きたいと思っている人にとってはこの番組を見て止めようと思う人もいるかも知れません。しかし事前に「お遍路に普通の人が行ったらどうなるか?」ということを身を持ってお二人が示してくれる番組であるとも言えるわけです。トゥエルビというチャンネルにとっても過去にどのテレヒ局もやったことのないお遍路を扱った番組として未来に残していける番組に化けると思いますので、出演者がこれ以上ロケに行きたくないと言っても、何とかなだめて結願まで番組を続けていって欲しいと思います。

(2018.7.2追記)

この文章の題名で「3回」と書きましたが、焼山寺を目指して3回目でやっとお寺に到着したものの、そこからの参拝をする前に時間切れになってしまい、何と遍路ころがしの焼山寺だけで4週をかけるという地上波のテレビ番組ではありえない状況になっています(^^;)。ただそれがこの番組の魅力でもあるので、何回も再放送がされても怒らず騒がず、番組の雰囲気を大切に見ていくのがいいのではないかと思います。

(番組データ)

小島よしお&狩野英孝のチャリお遍路 #6 BS12 トゥエルビ
6/17 (日) 19:00 ~ 19:55 (55分)
出演:小島よしお、狩野英孝

(番組内容)

本日もお遍路珍道中がスタート!目指すは徳島最大難所12番札所「焼山寺」。標高938mの山の中腹に立つ寺は古来より修験者の聖地としても知られており、お遍路88か所の中で2番目に高い山岳に位置する札所である。スタートしたものの目の前は山に向かう長く続く坂道・・・。衝撃!ぶっ倒れる狩野英孝!?まさかのここでのギブアップ宣言!?どうなるチャリお遍路!はたして12番札所まで到着できるのか!


レギュラー番組から派生した歌番組には付加価値がある

「クイズ脳ベルSHOW」は通常放送が実に安定して一定のシニア層を捉えているようで、昨年に引き続いて特番を行なってくれたのが嬉しく、サッカーのワールドカップを見ないでこちらの方を見てしまいました。今回の番組に出演する資格があるのは、過去にこの番組でクイズに参加したり出題側として出た方に限定されるものの、どなたもそこそこの健在ぶりを示してくれ、懐かしく聞けた方も多かったのではないかと思います。

しかし、ご本人が歌うのに多くのケースでは演奏はDAMのカラオケで、さらに優勝賞品も米30キロという相変わらず予算のない中で頑張っている感が満載の番組は、地上波とは一味も二味も違うなという事を改めて思ったりしました。

基本的にはこの番組は歌番組であり、見ている人も出演者が歌う曲を気にするとは思うのですが、そこはクイズ番組なので番組内でのクイズもあります。今回は歌手の方々の出演だったためか音楽に関する問題(イントロクイズ・歌詞から曲名当てなど)で3つのチームが競ったものの、最後の二問が超難問で、さらに最後の問題の点数が200ノーベルという(それまでの正解では10ノーベル程度)、今までやってきて最高得点だったチームの持ち点より高いというお約束の展開になり、優勝もそれまでリードしていたチームが逆転するというテレビ的には大変面白い展開になったのですが、それは最後の最後までクイズとしての「隠し玉」と言える企画を取っておいた番組スタッフの勝利でしょう。何を隠していたかというと、プロレスラー天龍源一郎氏の「鼻歌イントロクイズ」などという鼻歌では全く何の曲を鼻歌で歌っているのか誰もわからない実にふざけた問題で、天龍源一郎氏が具体的に出すヒントがないと正解への筋道すら出てこないという、テレビの音楽系クイズの中では正真正銘の「超難問」だと思います。

こうした計画された誰もわからない問題をしれっと出すというのは、TBSでかつて放送されていた「クイズスター名鑑」のノリに近いと言えましょう。この番組は残念ながら今後復活するかどうかはわからないので、以前このブログでも紹介したTBSの改編期に必ず放送される「オールスター感謝祭」の後の深夜に突然放送された「オールスター後夜祭」あたりで採用してくれれば、地上波で一気に盛り上がるとともに、最初にこのクイズを企画したBSフジのスタッフの力量が改めて示されると思ったのですが。

そして、この番組が単なる懐かしい曲をご本人が歌う歌番組とは違うと思ったことがあります。大木凡人さんを除く出演者は全て歌手という肩書があったのですが、そんな全てプロの歌手の前でシークレットゲストとして登場し、ご自身の代表曲である「だまってJAGUARについて来い」(何と一部カラオケにも収録されている曲です)を歌ったJAGARさんがこれもしれっと出演して歌ったのは、さすがに他の番組ではできない芸当でしょう。さらにテロップで出演者の年齢を名前とともに紹介するのに、この方だけJAGER(0)となっていたのには笑いました。

このように、あえてこの番組はそこまで全方向に向けて番組を発信するというよりも、いつも番組を見てくれているシニア世代の人が見て面白く思えるように当時のヒット曲を歌う歌手を中心に、さらにクイズコーナーでアクセントを付けるという若者は置いてけぼり上等といった作りになっていて、それがまた新たな視聴者を引きつけているような感じがあります。面白い事というのは時代によって変わってくるところはあるものの、先に紹介した天龍源一郎氏の「イントロ鼻歌クイズ」などは、それこそプロレスラーとしての天龍源一郎氏を知らなくても十分楽しめます。それは天龍源一郎氏自体が地上波のバラエティやコマーシャルでも活躍しているのを見てもわかる通り、プロレスを通りこすような存在感を放ち続けているからでしょう。

今後、レギュラーのクイズでは40代の人から様々な方がクイズに参加されると思いますので、今回は歌に特化した番組ではありましたが、次には別のジャンルの人達を集めての企画という風に回していけば、番組の改編期にお馴染みの企画としてかなり人気が出るのではないでしょうか。私の場合はとにかく昨年11月の長時間生放送のインパクトがすごすぎたのでそれにつられて見てしまったのですが、2時間という時間でも十分楽しめる番組として仕上がっていて、今後にも期待して次のスペシャル版を待ちたいという気分です。

(番組データ)

脳ベルヒットスタジオSP 昭和スターが一挙集結!名曲が蘇るスペシャルステージ!! BSフジ
6/16 (土) 19:00 ~ 20:55 (115分)
MC:岡田圭右【ますだおかだ】
ゲスト:
城みちる(60)
岡崎友紀(64)
晃【フィンガー5】(57)
嶋大輔(54)
麻倉未稀(57)
西口久美子(67)
ささきいさお(76)
森本英世(69)
つのだ☆ひろ(68)
平山みき(68)
瀬川瑛子(70)
松崎しげる(68)
畑中葉子(59)
サプライズゲスト:
北原ミレイ(69)
JAGER(0)
映像出演:
天龍源一郎(68)
大場久美子(58)
口上:大木凡人(72)
アシスタント:川野良子【フジテレビアナウンサー】
企画・編成:谷口大二/柏村信輔
構成:林田晋一/鈴木悟志
AP:村上ゆかり/荻野好美
ディレクター:井上佳央璃/深海真吾
チーフディレクター:松崎光洋
プロデューサー:小沢英治
演出:丸林徳昭
制作協力:ディ・コンプレックス
制作著作:BSフジ

(番組内容)

クイズ!脳ベルSHOW特別編!昭和の名曲が蘇るスターたちによるスペシャルステージをお届けします!題して「脳ベルヒットスタジオスペシャル!」 クイズ!脳ベルSHOWにはこれまでヒット曲を持つ歌手が多数出演!その中から選りすぐりの総勢15名に今なお愛される昭和のヒット曲を歌っていただきます!どんなヒット曲が歌われるか予想しながらお楽しみください!

《永遠のアイドルブロック》から城みちる(60)「イルカにのった少年」 岡崎友紀(64)「おくさまは18才」 晃(フィンガー5)「学園天国」(57) 嶋大輔(54)「男の勲章」《青春の主題歌ブロック》から麻倉未稀(57)「ヒーローHolding Out For A Hero」 西口久美子(67)「太陽がくれた季節」 ささきいさお(76)「宇宙戦艦ヤマト」 森本英世(69)「行け! タイガーマスク」 《こいうたブロック》からつのだ☆ひろ(68)「メリー・ジェーン」 平山みき(68)「真夏の出来事」 瀬川瑛子(70)「命くれない」 松崎しげる(68)「愛のメモリー」 畑中葉子(59)「カナダからの手紙」

さらに、リーゼントが似合うあの歌姫やあの星からやってきたスペシャルゲストも登場! 番組の合間にはクイズ!出張脳ベルSHOW?! 歌手の皆さんに音楽に関するクイズで競っていただきます!クイズを制するのは果たしてどのチームか!?お楽しみに!


卓球で中国に勝つ瞬間を全国で見られるようにするために

前回までの卓球の世界選手権は地上波のテレビ東京のみで放送され、BSジャパンではハイライトが放送されるだけでしたが、日本チームの実力が上がり注目度が上がってくるにつれて節目が変わり、テレビ東京系列の地上波放送局のない地方でもBSジャパンで生の試合が中継で見られるようになったのは実にうれしい事です。ただ、女子の準決勝はBSでは途中で中継打ち切り、男子の準々決勝は放送されずということで、改めて地上波とBSとの同時放送についての課題も出たのではないかと思える今回の世界選手権の中継だったように思います。

来年の世界選手権は個人戦なので、さらにテレビ中継をするには難しい編成の中で行なわれるようななるとは思いますが、ぜひ地上波との同時放送を行なっていただいて、今後あるかも知れない日本選手の快挙を生中継で見る機会を与えて欲しいと切に願っています。ただ、今回の決勝は地上波でもBSジャパンでも生中継の予定にはなっていなかったのを、結局試合を完全生中継し、翌日の0時半くらいまで放送し続けてくれたのは本当に感謝です。おかげで、日本女子と中国チームとの差がどのくらいになっているのかを理解することができました。

今回の出場選手、伊藤・石川・平野についてこの3人は中国以外には無双とも言えるような強さを発揮したものの、対中国に限ってはその能力の差というものを改めて感じるとともに、テレビ局や他マスコミの発する「過度な期待の大きさ」を出しすぎであるということも感じてしまいました。

今回の大会は冷静に見て優勝を本気で狙えるかというとそこまでの実力は付いていなかったと思います。唯一中国に対抗できていたのは伊藤美誠選手で、彼女には他の二人にはないパワーと、ボールを擦り上げて繋ぐドライブを決め球にするのではなく、バウンドした時の頂点を強くひっぱたくスマッシュを打ったり、逆チキータという従来のチキータとは回転の質を変えるレシーブを試合で普通に使えるだけの戦術の幅の広さがあり、十分に日本選手対策を行なってきた中国選手にも勝てるだけのポテンシャルを持っていたように思います。

対中国選手という面では伊藤選手より先に平野選手が中国選手を倒したことは記憶に新しいですが、昨日の試合ではすでに中国選手に対策をされて、為す術がなかったという状況でした。しかし希望はあります。というのも、早いピッチで打ち抜く平野選手の打球に対応するために、相手の丁寧選手は少し台から下がって余裕を作ってほぼ完璧に平野選手の攻撃を壁のように打ち返していました。

それは、過去の男子の水谷隼選手のように後ろからラリーに持ち込んで時には拾いながら逆襲をするプレイスタイルに近いような気がしますが、残念ながらそうした戦術は今は主流ではありません。今年男子の日本選手権で水谷選手が何もできずに張本選手に負けたのは、台から離れずに早いピッチで、さらに力強いボールを打つ張本選手が相手では後ろに下がって返す形の戦い方では勝負にならないからで、今では水谷選手も台から下がらないで打つ戦術に変更しつつあります。

つまり、平野選手がもう少しパワーを付け、今の高速卓球を維持したまま一発で打ち抜けるだけの威力のあるボールを出せるようにできれば、現在の中国の主力選手では対策をしても十分に戦うことができる存在になるでしょう。ただ、石川選手と中国選手とのパワーの差が大きいので、その点を克服するか新たに中国を粉砕できるパワーとスピードを兼ね備えた選手を育成するかというところが鍵になるでしょう。しかし、石川選手は現在世界ランク3位の選手であり、今回補欠として大会に参加した早田選手や長崎選手が石川選手に勝てるようになるには時間もかかるでしょう。そうした選手同士の切磋琢磨の中、時間の経過とともにさらに日本女子チームの実力は上がり、中国との差も縮まってくると思いますので、来年の世界選手権でどうなるか興味は尽きません。

このように考えると、次回の世界選手権は男子の巻き返しもあるでしょうし、女子も相当期待できるだけに、来年の放送はぜひ決定的な瞬間をせめてBSでも見られるように柔軟な編成をぜひお願いしたいです。

(番組データ)

世界卓球2018 団体戦 女子決勝 日本対中国 BSジャパン
2018/05/05 20:54 ~ 2018/05/05 22:48 (114分)
【解説】 宮崎義仁(前日本代表男子監督) 河野正和(前日本代表男子ジュニア監督) 平野早矢香(ロンドン五輪団体銀メダリスト)
【実況】 植草朋樹(テレビ東京アナウンサー) 中川聡(テレビ東京アナウンサー) 増田和也(テレビ東京アナウンサー)
【インタビュアー】 鷲見玲奈(テレビ東京アナウンサー)
【メインキャスター】 福澤朗
【キャスター】 福田典子(テレビ東京アナウンサー)
【ゲスト】 武井壮
【ゲスト解説】 森薗政崇(世界卓球2017男子ダブルス銀メダリスト)、藤井寛子(世界卓球2010団体銅メダリスト)
【日本女子チーム】 石川佳純(3位)、平野美宇(6位)、伊藤美誠(7位)、早田ひな(18位)、長崎美柚(81位)

(番組内容)

五輪を超えるハイレベルな世界最強国決定戦!それが世界卓球。今年は国の誇りとチームの絆を賭けた団体戦!男女共に新時代の才能が集結し、史上最強メンバーで戦う初めての団体戦で卓球ニッポンは半世紀ぶりの世界一を狙う! ※延長の場合あり


巡礼の最初に生臭い話から

すでにこの番組は4月8日に始まり、先週は第二回目の放送があったようですが、なかなかリアルタイムで見る機会がなく残念に思っていたのですが、今回第三回目とはならず、スタートから再放送しているようなので、他の方はまた最初からかと思う方もいるかも知れませんが、新たな気持ちで見ることができました。

四国八十八か所めぐりを行なうという番組の性質上、テレビのバラエティ番組での露出も多い小島よしおさんと狩野英孝さんのロケを中心にした番組ということで、単純にロケ日が限られているということと、ロケ現場ではかなりナチュラルに進行しているのでなかなか進まないということはあるとは思います。

しかしトゥエルビのホームページで「毎週放送」と書いてあることに嘘はないにしても、番組の進行としては月に1回から2回ぐらいになった場合、もう少しテレビ局側にも、今後の放送予定についてきちんとしたアナウンスは必要かと思います。

ただそうは言っても、今回の番組の仕上がりはかなり面白いものになっていたように思います。人の話を聞いているようで聞いていない二人がお遍路のしきたりを理解しないまま回ってしまってなかなか進まない様子は、今後の珍道中を予想させるわけですが、本当に最後まで回れるのか、番組自体が中途半端に終わってしまう可能性すらあると思っています。でも、この二人には何とかして八十八ヶ所巡礼を完結させて欲しいと思いながら見たいと思っています。

ただ今回、番組を見ていて思ったのが、四国八十八ヶ所巡りの利権と言いますか、そのコストの多くをいわば八十八ヶ所の一寺に過ぎないお寺が独占してしまうのは改めてこれでいいのか? という思いがありました。というのも、私自身もすでに八十八ヶ所巡りは結願しているのでその中で聞いた話があるのですが、どこだということはここでは控えますが、とある八十八ヶ所の一寺で納経帳に御朱印をいただいている時に、強く言われた事が今でも忘れられないからです。

多くの人はこの番組の小島よしおさんと狩野英孝さんのように何も持たずにこれからお遍路を始めようとする人は、一番札所の霊山寺でお遍路用品を揃えると思うのですが、装束から御札、数珠やローソク、線香に100円ライターまで進められるままに購入して一人あたり約12,000円くらいかかるのは仕方がないかも知れませんが、境内で鐘をつくにもお賽銭、さらに本堂と薬師堂でもお賽銭を払った上に御朱印をいただくために納経料を払うということになると、費用の面でなかなか大変だと思わざるを得ません。

さらに、番組では紹介されませんでしたし、現在はどうなっているかわかりませんのであくまで私の場合として紹介しますが、霊山寺で購入した納経帳の最後のページに「最初に参拝したお寺に八十八ヶ所結願したらお礼参り」という項目で御朱印をいただくようにページが用意されています。そのページについてとあるお寺の御朱印を書いていた方が言われるには、「このような事はしなくていい。お礼参りは高野山へ行けばいいので、このようなことをするのは特定のお寺の利益にしかならない」というような事を言われ、その意見がもっともだと思ったので、私はそのページにだけは御朱印をいただいていません。ただこれはその方の話が十分に私に理解できたからなので、最初にお参りしたお寺にぜひお礼参りをして御朱印をいただきたいと思うならば、そういう行為自体を咎めるものではありませんので誤解なきよう。

一つ言えるのは、あくまでこうしたことはお参りする個人の意志だとは言うものの、大切なのはスタンプラリーのように御朱印を集めまくることではなく、修行として全てのお寺の参拝をすることだと思います。今回の番組を見つつ、遍路の大変さを想いながらこの番組自体が結願する前にギブアップされることのないように、番組を立ち上げた以上は全うして欲しいと思います。もしかしたら、出演されている二人も、旅を終える頃には他の番組で見せる顔も変わってくるのではないかと期待しています。

(番組データ)

小島よしお&狩野英孝のチャリお遍路 #1 BS12 トゥエルビ
4/22 (日) 19:00 ~ 19:55 (55分)本放送は4/8
出演:小島よしお、狩野英孝

(番組内容)

芸能界きってのロードバイク乗りの小島よしおと、禊を済ませる理由が満載の狩野英孝が四国八十八ヵ所お遍路を自転車で巡ります。
旅のはじまりは徳島県。ロードバイク初心者の狩野英孝は、小島よしおから自転車講習を受ける。狩野英孝の自転車スキルに不安を感じつつ、二人は1番札所の霊山寺に向かう。