月別アーカイブ: 2017年11月

タレント頼みのトークバラエティの危うさ

現在のテレビ番組の中で、魅力的なトークバラエティは数多くあります。私が今、一番に思い付くのは明石家さんまさんが司会をする「踊るさんま御殿」ですが、この番組から幅広くテレビに出てくるようになったタレントさんは列挙に暇がありませんが、さんまさんのこの番組の場合は、現在「尾木ママ」として有名になった教育評論家の尾木直樹氏のキャラクターを立てる役割をするなど、芸能界以外の人が醸し出す面白さをも引き出している点が正直に凄いと思えます。そうした文化人の面白さを引き出した番組としてテレビ局の枠を飛び越えて「ホンマでっかTV」に派生したりしているという点でも、明石家さんまさんという存在が単なるお笑い芸人としてすごいというだけではなく、新たなテレビ映えする才能を開花させることを笑いを取りながら行なっている点でも素晴しいと言わざるを得ません。

ただ、こうしたトークバラエティについての問題は、司会の人間の能力に頼り過ぎているという点です。話しをうまく回す司会者がいてこそ、特に素人の出演者の面白いトークを引き出すことができるわけですが、その司会を特定の個人に頼り切っていると、いざその本人がテレビから退場したりしたら番組自体が終了してしまうでしょう。これでは、せっかく一つのパターンを作ったトークバラエティが今後出てきても、相変わらず人の能力に任せきりということになってしまうかも知れません。

今回話題に挙げる「ねほりんぱほりん」は知らない人は全く知らないと思いますが、テレビ好きの方の中でならかなり注目されているトークバラエティではないかと思います。地上波のテレビ番組でこんな際どい事を言ってしまってもいいのかと思えるようなテーマに沿って、顔出しNGの素人出演者でもうまく豚のキャラクター人形化することによってかなり突っ込んだところまで業界の内幕を話してくれる内容になっています。ちなみに解説ということで出てくるNHKアナウンサーも牛の姿をした人形です。

司会として出演している山里亮太さんとYOUさんについても、本人がそのまま出演するのではなく、あくまでモグラのキャラクターの人形ねほりん(山里)ぱほりん(You)というように存在を変換した上で出てきますし、お二人ともうまく会話を回していくというタイプの方々で、せっかく出演をしているのにこんな事を書くと角が立つのかも知れませんが、特別な事情で出演者が代わってしまったとしても何とかさんまさんの番組とは違って中の人の声だけを変えても続けられるのではないかというところがあります。

もちろん、あらゆるクセがひどい出演者とのトークをうまくまとめていく山里さんYouさんの魅力がこの番組の肝であることは違いないと思いますが、あえて司会者を含めた出演者全てをキャラクター化して隠すことで、かなり番組としては汎用性のあるトークバラエティになっている感じがします。

ただし、これはこちらで気にすることではないかも知れませんが、もし近い将来Eテレから総合に移動して視聴率獲得を目指したり、番宣のために顔出しゲストを登場させるなんてことを始めるなんてことにでもなれば、民放での深夜番組がゴールデンに進出して大コケしてしまうような状況と同じように一気に番組そのものが終了なんと事もありえますので、そういった方向には進んで行って欲しくないと思いますが。

さて、今回のゲスト出演者は一日20時間以上ネットゲームにはまった廃人寸前の30代の男性タイチさんです。タイチさんはRPGゲームを時間の許す限り行なっていたところ、午前3時から6時まで寝るだけで本当に20時間以上ゲームをやり続けることで、ランキングの全国1位を目指しているのだとか。寝るのを我慢したりトイレを我慢するくだりについては、本当にこの人にとっては全国ランキングの1位を取ることというのは大事で、本当に「二位じゃ駄目」なんだなあと思います。

ちなみにタイチさんはゲームをやりながらアイテムやガチャで掛ける課金については月5万くらいで抑え、その分時間を長くやることで、全国一位になるためのポイントを稼いでいる方だったのですが、番組ではお金を掛けて成績を上げたりカードを入手するゲームに大金を投じている方にもインタビューをしていましたが、1枚のカードを出すために99万円も掛けてしまうなんていう若い女性の話を聞くと、個人的には引いてしまいますが、ホストに貢ぐよりは後々の人間関係でさらに痛めつけられることはないのでまだましかなんてことも考えましたが、それにしても金銭感覚が崩壊した後で振り返ると、本当に後悔しますので(^^;)、現在ゲームにはまりそうな感じのある方は、課金には特に注意して欲しいと正直思います。

実際、今回出演したタイチさんは仕事をしていないそうなのですが、何で生計を立てているのかというと、YouTubeに動画を上げることや、ゲームの攻略サイトに集客することでの広告収入が月数十万とけっこうあるんだそうです。ちなみに動画をアップしたりサイトを更新することはゲームをやりながらやっているとのことです。それなら「何故ゲームをやり続けるのか?」という番組内でも出ていた質問は、生活の糧という点もあるわけで、ゲームをやり続けてもその生活が回っているうちは決して破綻することはないので、あながち廃人ということでもないのではないかと個人的には思いました。

ゲームをやり続けることで人生が楽しいなら、借金をして人に多大な迷惑を与えない程度のはまり方ならそんなに問題ないとすら思ってしまう私の方が変なのでしょうか(^^;)。

また、番組ではゲームをやりながら会話している中で出合って結婚した20代の夫婦にもインタビューしていましたが、これは廃人以前の普通の方という感じでした。こうしたネット上での出会いは古くはパソコン通信の時代から相手の顔も見ないうちから付き合って結婚なんて話はありましたし、ゲームしながらチャットしつつ、他のどんな人間よりも長い時間同じゲームを通じてお互いの事を知っているわけですから、私なんかはむしろ、ネットで出会って結婚すること自体をおかしいと思われているような雰囲気がちょっと違和感感じまくりでした。

全体的に今回のテーマにはもう一つの盛り上がりの要素である下ネタ系が少なかったということもあるのかも知れませんが、他のテーマと比べるとかなり普通に面白い自分が体験できない世界の話が聞けて良かったというごく普通の感想になってしまいました(^^;)。

それにしても、普通なら司会が2名とゲスト1名を同じ画面に出して顔にモザイクをかければ手間もかからないものを、出演者に合わせた人形を作るところから始めるくらい全体の作りには凝っている番組なので、新作については翌月の12月に入ってからになるそうです。

そうした番組スタッフの努力が報われ、番組としての寿命が今後も伸びて行くことを個人的には希望したいですし、安易にタレントの力に頼らなくても、モグラと豚、牛やカエル(番組スタッフの変換後の姿)という設定だけでも十分見せられるトークバラエティに仕上がっている強さを今後も生かして、多くの人が普段関わる事のない人たちをどんどんテレビの場に出していろんな事を聞いて欲しいと思います。

(番組データ)

ねほりんぱほりん「ネトゲ廃人」登場!1日20時間以上、衝撃の実態を掘れ! NHK Eテレ1
11/8 (水) 23:00 ~ 23:30
【司会】山里亮太,YOU,
【語り】石澤典夫

(番組内容)

「ネトゲ廃人」とはネットゲームにのめり込み過ぎて正常な社会生活ができない状態の人。ゲストは全国1位を目指して廃人生活を10年以上送る30代男性。「時間は強さなり」と1日20時間以上プレイ。睡眠や食事時間を極限まで削り、トイレに行くにも猛ダッシュしてコンマ1秒を創出。数秒間ずつ目を閉じれば2週間寝なくても平気になった。今や楽しいを通り越して苦痛だと語る。なぜそこまでやるのか?末期症状の廃人を掘る。


山田風太郎の日記は学ぶべきか捨て去るべきか

三國連太郎さんが朗読する作家・山田風太郎さんの戦後から1993年まで43年間の未公開日記を時代別に辿りながら(『戦中派不戦日記』など、戦争時の日記は既に刊行されていました)、彼の残した言葉の意味を考えさせるような感じで番組は淡々と進んでいきます。三國連太郎さんが語る山田風太郎さんの言葉は、今の基準に照らすといわゆる「リベラル」的な考えのようで、中にはこのような番組など見るだけ無駄だと思っている方もいるのではないかと思います。

しかし、山田風太郎さんは戦前は自らの病弱に起因し、戦争に行けなかったことがあったからなのか筋金入りの皇国青年として育ち、昭和20年8月15日の太平洋戦争終結の日には仲間ともども降伏に反対し決起を考えたほど、思想的には右に寄った考えを持っていました。しかし、戦後のあまりの日本人の心の変化に(特に戦前から戦中の期間に軍国主義をうたっていた人たちの戦後になっての変化がすさまじかったので)、その後の日本政府や日本人の行動などを日記の中で憂うような考えを示すことになっていきます。経済的なメリットでアメリカ的なものにひれ伏すような感じではなく、あくまで地に足を付けて様々な日々通り過ぎていく事件などを日記に記していく中で、赤裸々な自身の考えを日記の中で表現しているように感じます。

作家の書く日記なので、もしかしたら書きながらある程度公開することも考えて書いているところもあったのかも知れません。現代にあてはめてみると、感じとしてはブログを使って今の自身の心況を自分のためだけでなく世間にも公表するような感じで書いていたのかも知れませんが、出版するにしてもまずは読んでくれる人がいるのかという問題もあり、実際に今まで出版されないところからも当時は必ず世間に公開されるという確信があって書かれていたのではないでしょう。今回の特集も「未公開日記」ということでの紹介なので、あざとい計算で書かれたものではないということは言えると思います。あえてあざといと言うなら、番組として強烈なインパクトを残すために三國連太郎さんを効果的に画面に出しつつ、さらに資料映像とからめて日記の一部分を抜き出して紹介する作り手としてのあざとさというのはあるかも知れませんが。

残念ながらこの番組で紹介された膨大な量の日記は未だ世に出てはいません。もしきちんと読めればこの番組の内容もきちんと検証することができるのかも知れませんが、研究者でもない限りは通しで読むことは難しいかも知れません。番組ゲストの五木寛之氏が番組を一緒に見た後でおっしゃっているように、山田風太郎の戦後の出来事を斜めから看ているようなネガティブさというものをたどる事は、豊かさがあふれる戦後の中で、現代にまで続くどんな問題が巣食っていったのかということを一部明らかにし、将来の自分たちが同じ失敗をしないようなヒントが隠されているような気がしないでもありません。

五木氏の言葉の力とはすごいもので、山田風太郎さんの未公開日記は司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」でなく「坂の下の霧」だと言えば、わかる人はどんなニュアンスの日記であるかがだいたいわかってしまいます。さらに登山でたとえると、一生懸命登って頂上まで至る登りも大切ではあるものの、安全に麓まで降りる下山というものも大切でどう実現するかということが大事だと思って書いたようなものだという話は、なるほどなと思います。日本はこれから単に下リ坂を転がり落ちていくのではなく、「収穫の時期」の楽しみもあると言い、これからの日本の「豊かさ」を楽しみに過ごすのも良いと締めくくられました。恐らく番組を見た方の年代によって感じるものが違ってくるのではないかと思います。

そう考えると、あんまり若い人がこの番組を見て老境に入ってしまうのも困りますし(^^;)、そんなネガティブな考えに凝り固まってしまうなら現状ではこんな番組を見たことなど忘れて自分の好きな事をやり通せばいいと思います。ただ、自分の信じた考え方でつき進んでいる若い方々に相手にされないまま、通り過ぎられてしまうというのでは悲し過ぎるので、こういった番組は定期的に放送していただくか、実際の山田風太郎さんの戦後の日記をどこかの出版社が出してくれると有難いものです。それこそ司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」に対比される書物として読まれ継がれていくのではないかというところもあるわけですし、関係各位のご英断を望みたいものです。

(番組データ)

プレミアムカフェ選 山田風太郎が見た日本~未公開日記が語る戦後60年~ NHK BS プレミアム
11/8 (水) 9:00 ~ 11:01
【朗読】三國連太郎,
【スタジオゲスト】作家…五木寛之,
【スタジオキャスター】渡邊あゆみ

(番組内容)

ハイビジョン特集 山田風太郎が見た日本~未公開日記が語る戦後60年~(初回放送:2005年)作家・山田風太郎晩年の未公開日記から、戦後60年の日本社会、経済の起伏を見つめる。朗読:三國連太郎


通販番組と遜色のない「住まい・暮らし バラエティ番組」がある?

これからの話を書く前に、一番下にある(番組データ)と(番組内容)をよくご覧になって下さい。基本的にはインターネット上にあるテレビ番組表の表記に準じてテレビ番組を紹介しているのですが、これだけ見ると、普通のお安い宿を紹介する旅行バラエティ番組のように思えます。

しかし、不審に思えることもあります。まず、他のバラエティでは必ず掲載のある出演タレント(この番組では「番組リポーター」と称する女性が出演しています)について、どこにも出演者の表記がありません。どんなゲスなリポーターであっても、自分を売り込むために名前くらいはテロップで出すはずなのにと思いつつ、番組を見ていったところ、この番組の正体がわかりました。

ちなみに、1泊2食付きで泊まれるというのは平日に限られていますし、料金も5,900円と、5千円台ぎりぎりです。土日や祝日に泊まりたい場合は当然ながら宿泊料はアップしますので、その点も考えておかないとまずはいけません。しかし、こういった手法は地上波民放の激安宿の紹介でも行なっていますし、この表記については嘘ではないので問題はないでしょう。しかし、私自身が問題にしたいことがこの番組にはあります。

宿の内容や食事を紹介した後で、どうしてこんな安い価格で泊まれるのかという事が明らかになるのですが、それは「セラヴィリゾート泉郷」というリゾートクラブの会員になった人だけがその価格で利用できるという事で、番組の目的は視聴者にリゾートクラブの内容を説明する全編そのリゾートクラブの宣伝に終始した番組だったのでありました。

こういう手法は、新聞にも「記事のような宣伝」というものがあることからわかるように、テレビでも使われている手法なのかも知れません。しかし、今では通販専門チャンネルなどもあり、通販番組とわかっていても見る層もあるので、あえてリゾートクラブの会員勧誘であることを隠したような番組にしなくても、番組の概要にも特定のリゾートクラブ紹介という宣伝の番組であることを明らかにした上で放送した方が良いのではないかと私自身は思ってしまいますね。

これはあくまで個人的な見解ですが、全国津々浦々を旅したいと思うなら、特定のリゾートクラブに入会すると、いくら宿泊費が安くても全国のどこでも会員なら安く泊まれるというものでなければ、別の方法でこうした施設を使い、気に入ってどうしても会員になってさらに安く利用したいと思ったら加入するのがいいと思います。

体験宿泊という手段を選んだ場合、一度利用した場合の勧誘が気になる方もいると思いますので、そうでなく他の予約の取り方で安く泊まれる方法があります。それは、私が知っている中では「日本自動車連盟JAF」が行なっている会員への宿泊斡旋です。JAFはこの番組の提供に近いくらいに宣伝に関与していると思われる「セラヴィリゾート泉郷」や他のホテルチェーンにおいて法人会員になっているので、すでにJAFの会員であればネットからログインしてホテル予約のページへ行くと、改めてJAF会員が各種ホテルチェーンやリゾートクラブが運営する宿泊施設に安く泊まれるプランについて具体的に説明しているページがあります。

そこから予約をした場合、この番組で紹介されていたホテルの場合、平日の素泊りで6千円くらい、基本的な洋食が+3,500円くらいで利用できるようですので(季節や状況によって上下する可能性はありますので、あくまで参考としてお考え下さい)、まずはこうした方法で実際に泊まってみてから判断しても遅くはないでしょう。

ちなみに、JAFの年会費は4000円です。この書き込み自体JAFの回し者が書いているわけではないので(^^;)、こうした書き方が気に入らなければ全く割引のない状態で泊まってみるのもいいでしょう。どちらにしても、ビジターにどのようなサービスを提供してくれるかというのがリゾート会員としてその組織がこれから発展して泊まれる場所が増えるのかそうではないのかの分かれ道になりますので、テレビの内容だけを鵜呑みにしないで慎重に選択するのがいいと思われます。

それにしても、宣伝に限りなく近い番組なら、もう少しわかるように書いてくれないと誤解をする視聴者も出るかも知れません。こうした裏切られ感というのは、そのままBS放送というブランドの価値を下げる方向にもつながってくるかも知れませんし、バラエティとして分類されている番組というのは決して宣伝に終始しないような番組の作り方をして欲しいと強く思います。

(番組データ)

1泊2食付き5000円台!?コスパ抜群賢いリゾートライフ術! BS12 トゥエルビ
11/6 (月) 21:00 ~ 21:30

(番組内容)

1泊2食付き5千円代のリゾートホテルがあると聞き、番組リポーターは伊豆高原と鳥羽へ。お料理の内容、客室や温泉露天風呂の広さ、是非、その目でお確かめください!


伝説の「牛肉のトマト煮」「塩むすび」を再びテレビで

先日、「テレビ体操」が放送開始から60周年という事を紹介しましたが、「きょうの料理」も今年が放送開始から60年ということで、今回の生放送での特番が実現したようです。個人的には「テレビ体操」の特番というものも見てみたい気もするのですが、興味が本来の体操でないところに行ってしまうことを恐れたNHKの対応が、「テレビ体操」は広報番組内の1コーナーでの紹介ということで落ち着かせたのだなあと思われます。

さて、「きょうの料理」特番の内容ですが、前半に平野レミさん、後半に土井善晴さんという料理講師を迎え、それぞれ生放送で料理を披露したのですが、まず前半の平野レミさんは、事前のアンケートで一番リクエストが多かったという彼女が初回に登場し、相当な物議を醸したといういわくつきのレシピ「レミ風トマト炒め」を再現したのでした。

平野レミさんの事を単にがさつでうるさいおばさんとしか思っていない人にとっては、受け入れがたい所もあるのかも知れませんが、お父さんがフランス文学者の平野威馬雄氏だということを考えつつこの料理を見ると、全く違った感情が出てくる方がいるかも知れません。平野威馬雄氏アメリカ人の父と日本人の母の子から生まれたハーフと言えば現代ではイケメンでということになるかも知れませんが、生まれが西歴1900年(明治33)ということで、かなりいじめられて孤独の中で育ったのだそうです。そんな中で、アメリカ人の父(平野レミさんから見ると祖父)が好んでよく食べていたのがこの「トマトと牛肉の炒め物」だと番組内で紹介し、100年の味だと言っていたのが個人的にはとても印象的でした。

つまり、トマトを茹でてから氷水に浸けた後、そこから包丁などを使わずにそのまま手で握りつぶすようにして(トマトの皮は握りつぶすときにうまく剥ける)使うことが「汚い」とか「がさつすぎる」と出演当時には非難の嵐になったわけですが、これは彼女のおじいさんの時代から同じ方法で作られており、なぜそんな作り方をするかと言うと、包丁で切るよりも手で潰した方が表面積が増え、味が良くしみるようになるというそれこそ100年の経験に基づいた正式な調理方法だったわけです。

また、今回の料理については全く関係ない話ですが、平野レミという名前(現在はイラストレーターの和田誠さんと結婚しているので本名は和田レミです)は本名で、お父さんが付けたと思われますが、お父さんの平野威馬雄さんはハーフということで孤独の中で育ったということで、父から『家なき子』の登場人物に因み、レミと呼ばれて育ったという話があります。その後、平野威馬雄氏が混血児の救済のために立ち上げた会の名前を「レミの会」としていることからも、この「レミ」という名に対する愛着というか執着が感じられます。そんな想いを持って付けられた名前が「レミ」で、後年平野威馬雄氏はおばけの研究などでも本を出されるほどの変わった人だったことを考えると、そんな遺伝子を受け継ぎ、親子ともその才能を認められて社会に広く認知された点で稀有な存在といえるでしょう。

親子とも世に出たという点で言えば、後半に出演した料理石研究家の土井善晴さんも、父親が「きょうの料理」に数多く出演した土井勝さんで、その遺伝子をしっかり受け継いでいるように感じます。番組では、小学校低学年の頃から土井善晴さんはお父さんに連れられてNHKのスタジオで見学をしていたという話を披露していて、料理で身を立てて有名になる道というものは「きょうの料理」があったからとも言えるかも知れません。

土井勝さんについても、番組では報道されませんでしたが、興味深い話があります。というのも、料理研究家としての土井勝さんというのはいわゆる「第二の人生」の努力によって料理の道に進まれた方であるのです。土井勝さんは陸上選手として18才の時に100メートル走で10秒8という記録を出し、1940年の東京オリンピックを本気で目指したものの、オリンピックそのものが太平洋戦争の拡大により中止に追い込まれたことで挫折をした経験を持っています。

その後、料理にはそれほど明るくない私でも「土井式」と呼ばれる画期的な黒豆の煮かたを開発するなど、家庭料理についての心使いに満ちあふれた、陸上という競技を極めた方ならではのきめ細やかな配慮に満ちたレシピの数々は土井善晴さんにも受け継がれています。

番組では限られた時間を使って、2014年に放送された土井善晴さんの「塩むすび」の作り方を生放送で再度解説してくれました。私自身は話には聞いていた「塩むすび」の作りかたを実際に見ることができたといううれしさと、出演者の方々が塩むすびを食べているのを見て、そのおいしさは画面を通しても十分伝わってきました。この「きょうの料理」における「塩むすび」の回というのは、他の民放でもこの回の様子が取り上げられるなど伝説の域に達しているのですが、今回の放送でも特に強調された点があります。

それは、手を丁寧に洗うことであったり、作った塩むすびはラップでくるまないというような事ですが、2014年の放送ではお米を炊く場合でも水に浸けたまま長時間放置しないようにザルに上げておくことの大切さなど、とにかく雑菌が繁殖する要素を極力減らることを考えた上でおいしくごはんを炊き、塩むすびを握ることについて説明されているのです。

料理の材料の中には最初から傷が付いているものがあり、多少ではありますがそこから雑菌が入ってしまうものもあります。大切なのは、いかに雑菌を繁殖させずに調理するかということで、「塩むすび」を作る回というのは、お米の炊き方から解説するということで単なる時間合わせだろうと思う方もいたかも知れませんが決してそうではありません。

料理に大切な基本を教えてくれるということでもあり、それが土井家に代々伝わっているものであったということで、親子2代でそうした事をテレビを通して教えていただけるというのは本当にありがたい事であると思います。

と、ここまで熱く書いてきた土井善晴さんの「塩むすび」ですが、残念ながらNHKの公式ページ(「みんなのきょうの料理」というサイトです)から検索できる塩むすびのレシピは、野崎洋光さんと小林カツ代さんのレシピのみしか「塩むすび」で検索しても出てきません。あれだけ反響があったのに、なぜちゃんと載せていないのか? と思って改めて調べてみたところ、番組では塩むすびを最終的に焼いていたということで「焼きみそおむすび」という名前で掲載していました。

お米をザルに上げる事についてもレシピの最後に説明があるので、放送を見ていない方でも十分納得の上で土井善晴さんの味を再現できるのではないかと思います。ただ、ネットと料理ということで言うと、クックパッドを始めとする公式アプリを利用して、スマホやタブレットをキッチンに持ち込んで料理をする方も少なくないこともあるので、テキストを売る商売として今までやってきたことではあるとは思いますが、60年を機にもう少しネットユーザーに寄せた形での展開も希望したいところです。

(番組データ)

祝60歳 きょうの料理伝説60
11/4 (土) 14:00 ~ 15:00 NHKEテレ
【出演】藤井隆,小倉優子,料理研究家…土井善晴,料理愛好家…平野レミ,
【司会】柘植恵水,後藤繁榮,
【語り】江原正士

(番組内容)

「きょうの料理」は今年で放送60周年!これまで紹介してきた神回レシピや講師などにまつわる60の伝説を生放送で紹介する。平野レミ&土井善晴があの料理を披露!


民放キラーの番組紹介番組 さらに特定のお店の宣伝まで?

中高年に向けて、「水戸黄門」無き後、月曜夜の定番の番組になりつつある「鶴瓶の家族に乾杯」ですが、今回は再放送の深夜に見ました。番組のコンセプトとしては、ゲストが選んだ地域に、アポイントを取らないで直接カメラを回し、その地域の家族を訪ねるというコンセプトの番組ですが、当初は今のようなNHKのドラマや新番組に出るゲストがゆかりの場所を回ることでちゃっかりそのドラマの広報までやってしまおうというような番組ではなかったのですが、現在の番組のテーマ曲を作曲した「さだまさし」さんが出なくなって変わってしまいました。

さらに、現在の番組の放送時間はかなり計算されて変えられているという印象です。最初はさだまさしさんと笑福亭鶴瓶さんとの2人旅で、月一回の特集バラエティという扱いでしたが、2005年から月曜夜8時からの45分番組になり、前後編を2週に分けて放送するという形式で月曜夜の視聴率競争に殴り込みを掛けたかのようにすごい勢いで視聴者を増やしていきました。

当時の月曜の夜と言えば、TBSの一人勝ちといった状況で、午後7時からの「東京フレンドパーク2」からの同8時には「水戸黄門」、さらに9時からは一話完結のサスペンスで渡瀬恒彦さんの十津川警部シリーズなど個性の強いキャラクターが登場と、ゴールデンの勢いをそのまま深夜まで保つような勢いがあったのですが、その中に割って入ろうとしたのが他の民放でなくNHKだったのですから当時はNHKもえげつないことをするなあと思いながら見ていました。

その後、テレビ時代劇全般の視聴率低迷が言われ、「水戸黄門」でさえも苦戦する中、「鶴瓶の家族に乾杯」は支持を中高年層に広げていき、その圧力や他民放の月曜夜7時台の攻勢に押し出されるような形で2009年に「東京フレンドパーク」が月曜から木曜に時間を変更したあたりから雲行きがさらにおかしくなりました。その状況を察したのか、1年後にフレンドパークの放送は月曜に戻りましたが1年木曜日へ行っている間に視聴者は他の民放に取られ、そのおかげであの水戸黄門でさえも、2011年末に最終話を迎えることになってしまいます。

パナソニック提供のドラマ枠は残ったものの、現代劇を見慣れない中高年の方々は、裏番組の水戸黄門を気にせずに鶴瓶の家族に乾杯を見られるようになったことで、さらにTBSの状況はおかしくなってしまったのではないかと私自身は思っています。それでも、現在の放送時間である午後7時半からの放送に変わるまでは、「鶴瓶の家族に乾杯」→「月曜ミステリー劇場(番組名は当時のもの)」という形でまだTBSは見られていたのではないかと思うのですが、現在は一話完結のドラマ枠が午後8時からと一時間開始時間が早まってしまったので、恐らく中高年の視聴者は途中からミステリー・ドラマを見ることはせず、他のチャンネルかNHKを見続ける方の方が多くなっているのではないかと思います。

こういった経緯を見ると、鶴瓶の家族に乾杯はTBSが自分で転んだという面はあるにせよ、きっちりと視聴者の流出を防ぐ形で巧みに編成されているということをまずは感じます。
番組内容はゲストが誰かによって面白さが違ってくるということはあるものの、安心して見ていられ、さらに露骨なNHKの番組とのタイアップであるにも関わらず(話題のドラマで人気の俳優はほとんど出ますので(^^;))、そうした姑息さを感じさせない笑福亭鶴瓶さんの働きはさすがというしかありません。

ただ、現在の一回完結のパターンになって唯一問題がある点といいますか、こんなものを流していいのか? と思うのが女優の常盤貴子さんがナレーションをする「家族に一杯」というコーナーです。

本編の中でもその土地の有名なお店に鶴瓶さんやゲストが突撃するので、これはそのお店にとってはかなりいい宣伝になるなと思っていて、本来NHK自体が商標登録をされた言葉を出さないなど、特定の人や会社が潤うような宣伝については厳しいはずなのに大丈夫かと思いながら見ていたのですが、「家族に一杯」というコーナーは鶴瓶さんとゲストの旅とは全く関係ない独自のコーナーなので、きちんとロケハンをして撮っているのに、明らに見る人が見ればわかるお店の有名なメニューを紹介したと思えば、番組を見た人が放送された土地に行ってあの一杯を食べてみたいと思っても、土地の人達の集まりのようなところでカメラを回し、土地の人が食べる家庭料理の紹介で終わってしまう場合もあるなど、首尾一貫していない中途半端なものになっている気がするのです。

そもそも、番組内でのあからさまなNHKで放送する番組宣伝以外の宣伝もどきの行動について、この番組だから許されるのか、NHKも変わってきたのかということもちょっとわかりかねます。番宣という行為すら、NHKの公共放送という理念とはちょっと違うのではないかと思う方もいるかも知れませんし、その辺を全てなあなあで済ましてしまっている感じがある、その象徴的なコーナーとして私はあの「家族に一杯」というコーナーを見ています。

ちなみに、今回のゲスト、リオデジャネイロオリンピック重量挙げ銅メダリストの三宅宏実さんをゲストで出したのも、政府が推進しNHKが主になって放送する2020年の東京オリンピックについて、多くの人に知ってもらうための告知という目的があってのものです。個人的にはNHKにはどこの部分が番宣だなんて野暮なことを民放を見ている時のように考えなくていいバラエティを放送して欲しいと思っているのですが、今のところそういった希望を叶えるためには、ネット放送の方に逃げるしかないのかなという感じになっているのが残念です。

(番組データ)

鶴瓶の家族に乾杯[再] NHK総合
11/3 (金) 0:10 ~ 1:25
【ゲスト】三宅宏実
【司会】笑福亭鶴瓶,小野文惠
【語り】久米明,常盤貴子

(番組内容)

「東京2020SP メダリスト三宅宏実とぶっつけ本番旅」
素敵な家族を求めて笑福亭鶴瓶とゲストのウエイトリフティングの三宅宏実が青森県黒石市でぶっつけ本番旅。二人は次々と素敵な出会いを繰り広げていく。

 

 


テレビを買うか迷うならHDMI端子対応/スピーカー内蔵の液晶モニターがおすすめ

ここは基本的には地上波やBSを中心にしたテレビ番組を見た感想を書くブログなのですが、新たに部屋を借りたりして家具家電などが据え付けられていない場合、自分でテレビを買って置くかということで悩んでいる方がいるかも知れません。しかし、自分が世帯主の住居においてテレビを設置している場合、まず間違いなくNHKの受信料の支払いを請求されることになります。

スマホについてはワンセグチューナーの付かないiPhoneを使っている方が若年層を中心に多いと思いますので、自室にテレビを置くか置かないでかなりの支出に違いが出てくることになると思いますので、この問題は意外と大きいような気がします。

というわけで、まず受信料はいくらかということを知らない方もいるかと思いますので、簡単にその事について説明します。契約内容は「地上波のみ」か「衛星放送付」かによって違ってきます。

当然ですが衛星放送を見るためには、地上波用のUHFアンテナだけでなくパラボラアンテナの追加購入および、テレビについても衛星チューナーが付いているものを用意することが必要になります。また、最近話題になっている4Kや、将来には実用になると言われている8KにはBS放送とは別に独自のプログラムで放送するチャンネルが用意されていて、対応するテレビにアンテナを繋げば、受信料としての追加料金なく多くの放送を見ることができるようになりますが、端末の価格はまだまだ高いです。

受信料の払込方法には口座振替・クレジットカードによる自動引き落としと振込票をコンビニに出して料金を払う振込払いで料金が違います。自動引落としの方が安くなっていて、さらに支払い回数にも違いがあり、2ヶ月毎・6ヶ月毎・12ヶ月毎という3つの支払い回数が用意されていますが、もちろんこれも長期前払いの方が安くなります。具体的な料金については以下の通りです。

(1)衛星及び地上波契約口座・クレジット 2ヶ月4,460円 6ヶ月12,730円 12ヶ月24,770円継続振込用紙支払 2ヶ月4,560円 6ヶ月13,015円 12ヶ月25,320円

(2)地上波のみ契約口座・クレジット 2ヶ月2,520円 6ヶ月7,190円 12ヶ月13,990円継続振込用紙支払 2ヶ月2,620円 6ヶ月7,415円 12ヶ月14,545円

この金額が全国共通なのですが、普通に考えて特に地上波について、全てのチャンネル及び地方のローカル局の入る東京・大阪・名古屋・福岡・札幌あたりと、民放が2局しかない宮崎県と地上波分の受信契約料金が同じというのは、NHKのせいではないとは言え、不公平感を感じる人も多いでしょう。受信料金についてはこれ以外にも使われ方についての議論もあり、不払い運動を行なっている人もいます。

ただ、色んな番組の見られる東京に住んでいる人でも、地上波だけで月1,200円から1,300円をテレビを持っているだけで取られるなら、無料でも見られるネット配信のAbemaTVやラジオやインターネットでニュースは仕入れ、無駄にお金を払いたくないと思う人もいるのではないかと思います。

しかし、テレビを置いて共同住宅用のアンテナに繋いだだけで受信料を払わざるを得ない事を考えると、自宅でほとんどテレビを見ないという人なら、まずはあえてチューナーを搭載しないパソコン用のモニターを用意するというのも一つの手ではないかと思うので、このブログではこんな提案をしてみたいと思います。

現在ノートパソコンを使っている方でも、自宅で使う場合は外付けのモニタを使って動画などを見るという手段が使えます。パソコンからAbemaTVを含む有料無料のビデオオンデマンドサービスやインターネット放送を楽しめるため、パソコンとHDMIケーブル一本で繋がる端子を持ち、ノートパソコンよりもいい音で動画や放送を楽しめるスピーカー内臓のパソコン用の外付モニタのみを購入すれば、別にインターネットの契約をするだけでパソコンで表示させる動画を大きなモニターで楽しむことができるようになります。

もし、古いノートパソコンが一台あれば、メインのノートパソコンはそのまま使い、古いノートパソコンをモニターに繋いで動画やインターネットラジオ受信専用にするという手もあります。ただ、少し予算があるようなら、「Amazon Fire Stick」や「Chromecast」というモニターのHDMI端子に接続するだけでモニターの画面からネット動画を楽しめる環境を作ることができます。

AbemaTVでは夕方のニュースや夜の「報道ステーション」を時間をずらす形でそのまま放送したりしていますので、その日のニュースをその日のうちに見ることもできますし、民放各局がYouTubeでの違法アップロード撲滅のために一定期間に限定で放送終了後のドラマやバラエティ番組を見ることのできる「TVer」というサイトもあります。

「Amazon Fire Stick」は小さなスティック状のパソコンのようなもので、専用のアプリのある動画サービスなら、本体で動画処理を行なってくれるのでかなり快適に見ることができますし、専用のアプリがない動画の場合は「Chromecast」を使い、パソコンやスマホで再生する画面をそのままテレビにスムーズに流すことができるようになります。全ての番組がネットで見られるわけではありませんが、工夫次第でNHKの受信契約をしなくても十分パソコン用のモニターを使った動画やインターネット放送を楽しめます。

この点ではかなりネットの出現によって環境は良くなったと言えると思います。もし、こうした状況でどうしても地上波のテレビを生で見たいと思ったら、改めてテレビを買うことを考えればいいでしょう。最初から受信料を払っていて当然受信料を払うというなら最初からテレビでもいいと思いますが、パソコンモニターの場合は画面の大きさがそれほど大きくなくても良ければ価格も手ごろで、後でテレビを買い足したとしてもパソコン用に使うもよし、ネット動画専用にするという手もあるので、残っても無駄になるということはないでしょう。

もしパソコン用モニターが部屋の中にあることをNHKの集金人さんに見付かったとしても、モニターにはそもそもチューナーがありませんし、現状ではパソコンに繋いでもNHKの番組が見られるということはないので、堂々と受信料支払義務が無いことを主張することができるというのもいいですね(^^;)。

そんなわけで、テレビとの付き合い方は人それぞれということもありますので、NHKとの対応を今後したくない人は、一度しっかり部屋を見てもらい、最初からテレビを見ないから契約しないということをはっきり告げるという意味でも、パソコン用のモニターを使って見られるものだけ見るという判断もありだということをまずは紹介させていただきました。