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半年毎日受信料で宣伝ドラマは止めませんか?

コシノ三姉妹、ニッカウヰスキー、大同生命保険、暮しの手帖、ファミリア、吉本興業、これらの企業(事業)に共通する事は何でしょうか? それは「カーネーション」、「マッサン」、「あさが来た」、「とと姉ちゃん」、「べっぴんさん」、「わろてんか」というNHKの朝の連続テレビ小説の題材となった企業(事業)だということです。

先日発表された2018年秋に大阪放送局で作られる朝ドラは「まんぷく」で、日清食品創業者の安藤百福氏夫妻の伝記になるそうですが、今回の発表は二重の意味で優遇されていると感じます。

まず、安藤百福氏をモデルとした朝ドラとしてはすでに作詞家のなかにし礼氏の本を参考にしたミュージカル仕立ての朝ドラで、石原さとみさんや上野樹里さんの人気を不動のものにした「てるてる家族」にも、登場人物の秋子さんが出入りする先の研究者として中村梅雀さんが演じて登場しています。これは、戦後を代表する食品としてのアクセントという感じでしたが、今回日清食品を大々的にNHKがPRすることについて、二度目ということもありこの題材で本当に良かったのかという声はこれからどんどん大きくなっていくのではないでしょうか。

上に挙げさせていただいた企業の中で、今まではそれほどドラマを宣伝活動に利用したのはニッカウヰスキーや大同生命保険が目立つくらいでした(メディアの方から取材に行っていたと私自身が思っていたものは省いてありますが、当該企業の宣伝活動の全てを把握していないところもあるため、他のケースでも同じようなことがあったら自分の不明を詫びるしかありませんので、ご存知の宣伝活動があればご指摘下さい)。現在放送されている「わろてんか」をどのように吉本興業が扱うかはわからないものの、やりようによっては顧客訪問の際の話題作りとしても相当の「営業ツール」をNHKが提供していると言えると思います。そんな感じで来年の秋から日清食品がもし新製品を出してきたり、既存製品の大キャンペーンをするということになると、競合する同業他社の損出というものも生む可能性もあるわけです。

これが、民放のドラマで安定してスポンサー料を払う企業についてやるというのならそれだけお金を掛けているという事にもなるので、うまい宣伝だくらいにしか思わないのですが、もしドラマ連動した露骨なタイアップ販売が行なわれたとすれば、改めてNHKの存在意義というものを感じざるを得なくなってしまいます。

伝記系のドラマというのは、ある意味成功が約束されているということもあり、どんなにヒロインが厳しい目に遭わされていたとしても結局はその苦労は成功のための苦労だったという風に美化されてしまうのですが、そうは言っても、あの橋田壽賀子氏か書いたフィクション「おしん」が嫁ぎ先の佐賀で受けたほどの苦労までは描くことはできていないように思います。ある意味ぬるい苦労で成功が得られるのではという誤解を与えかねない事でもあるので、実在の人物には配慮しつつも、その苦労やいけずに対抗するために取った実際の話に近いことなどは、当然今放送中の「わろてんか」でも描いてこそ説得力を持つと思われます。そうした点は来年の「まんぷく」ではどうなるのか、やはりそれなりに厳しい目で視聴者は見ていかなければならないでしょうし、決してドラマで見たからと日清食品の製品を買うような短絡的な行動を取らないことが、今後の朝ドラのあり方を考える場合の見る側の対応ではないかと思います。

そもそも、今それほど大きくない会社であるものの、創業者に魅力があるところをたまに主人公にして朝ドラをやるならそう変にも思わないとは思うのですが、ここ最近の朝ドラはほとんど実在しそれなりに大きな商いをやっている企業の創業者をヒロインとして扱っているものが多いと思います。それこそ、企業からの働きかけがあって忖度したのか? というような疑惑が出てきても不思議ではないわけで、そんな疑惑が出てこないうちに、今のような朝ドラの作り方をNHKは止めるべきだと思うのは私だけではないはずです。


プロ野球中継の衰退はクライマックスシリーズとともに

2017年10月18日の新聞のテレビ欄を見て、ちょっとした違和感を持ちました。昨年も同じ対戦カードだったのでまさかとも思ったのですが、日本のプロ野球というのは対戦カードによって中継がされないのかと思ったのがリーグ戦1位の広島カープと同3位の横浜ベイスターズが日本シリーズ出場を掛けて争うセ・リーグの「クライマックス第2シリーズ」です。

同日行なわれているパ・リーグの方のクライマックス第2シリーズ「福岡ソフトバンク対東北楽天ゴールデンイーグルス」の方は衛星放送の設備は必要になるもののNHK BS1で中継をしていますし、同日に行なわれているもう一つの大きなスポーツ中継、プロサッカーの「FIFAクラブワールドカップ アジアチャンピオンリーグ準決勝2ndレグ 浦和レッズ対上海上港」の試合は同じBSですが民放の無料放送であるBS日テレで見られているのです。

そんな中、なぜか昔から人気のあるはずのプロ野球のセ・リーグの試合が同じように見られないという事実をここでしっかりと書かせていただきたいと思います。

その試合はたまたま、私がサッカーJリーグの試合を見るために有料で加入している「DAZN」で、広島県外からネットに接続している人には広島ホームの試合を配信しているのでそちらの方で試合経過は見ることができます。それ以外にリアルタイムに見る方法としては、有料のBS放送であるJ-Sportsに加入して見るしか方法がないという状況です。

個人的には、まだ衛星放送がそれほど普及していなかった頃、サッカーワールドカップアメリカ大会のアジア地区最終予選「日本対イラク」の試合を請け負ったのがあろうことかテレビ東京で、テレビ東京をリアルタイムで見られない地域に住んでいた人は衛星放送の設備がない人はあの「ドーハの悲劇」をリアルタイムで見ることができなかったことを思い出します。

プロ野球中継といえば一昔前には視聴率の取れる優良コンテンツで、野球中継を見たくない人の方が少数派であり、中継を延長しても最後まで見たいと思う人達が家庭内でテレビを占拠していたということがあったのでしょう。それが今では、プロ野球にしろバレーボールにしろ番組が後ろにずれるということは、ドラマやニュース・バラエティを見たいと思う人の数が多くなったため、夜から深夜にかけて通販番組をやっている事が多いBS放送を中心に野球中継が行なわれるようになってきました。

そう考えれば、NHKでも民放でもBSの無料放送のどこかでセ・リーグのクライマックスシリーズを放送する事はできたはずです。事実、クライマックスシリーズのファーストラウンドはNHK BS1がサブチャンネルを使ってセ・リーグとパ・リーグの試合を両方中継していたのですから、NHKに任せることもできたはずです。

ホームチームのある広島県内では地上波の民放で試合が中継されているのに、神奈川県内をカバーする独立局のTVKでは中継をしないというのも、横浜ベイスターズファンからすると不公平感が拭えないでしょう。もし横浜ベイスターズがリーグ戦一位になっていたとしたら、もしかしたら地上波の全国放送で見られていたかも知れなかったとか、色々考えると、これは単にテレビの話ではなく、プロ野球のあり方を変えていかないと、リーグ戦一位のチームがどこになるかによって、今回のように地上波だけでなく無料のBS放送でも見られないようになるなら考えてもいいのではないかとすら思います。

ちなみに、試合は5回終了後に雨のために長い中断を経て、5回終了しているということでホームの広島カープの勝利になりました。有料チャンネルで見ていた人たちはいつ再開するともわからないまま雨の降るグラウンドを延々と見続けなければならなかった分、大変だったと思いますし、今回の結果だけで言うと、ストレスが残りそうな横浜ファンにとっては見なくて良かったと思えるような事になってしまいました。しかしそれでも、長い中断をイライラしながら待つのも生中継をテレビで見ることの面白さであると思うので、もう少し国内のテレビ局もせっかくのクライマックスシリーズを大事に考えて、全国どこでも見られるような中継を行なっていただきたいと切に思います。

(2017.10.24 追記)

その後、広島対横浜のクライマックスシリーズは地上波のフジテレビによって中継放送が行われたので、このまま決着が付くまで全国のファンが見られるのかなと思っていたのですが、第五試合目の横浜が日本シリーズに王手を掛けた試合も、第一試合と同じくテレビでは有料チャンネルでしか見られなくなる状況が生まれてしまっています。

ネットのスマホやタブレットでも良ければ、この状況を見てDAZNの無料お試しを使って見ることはできます(広島県のエリアは除く)。もしドコモの携帯を家族の誰かが契約していれば、税抜980円ごとの月額でサッカーJリーグも見られるわけですから、今のテレビのスポーツ中継の有様に絶望してテレビで日本のプロ野球を見なくなる可能性すらあります。

DAZNはアメリカのワールドシリーズも生配信するそうなので、外出していて衛星放送が見られない場合のバックアップにもなるでしょう。こうしてかつてはテレビの独壇場だったプロ野球中継も無料のテレビでは見られなくなるのかと思ってしまうような状況をしみじみと感じています。現在私はDAZNのライブを大型テレビに映しながら今この文章を書いています。