日本のドラマの質を決める俳優は生き残っていけるのか

このブログを始める前に、テレビ朝日の編成の中でかなり変わったのが、土曜と日曜にも夜の定時に報道ステーション関連番組を持ってきたことにより、長年続いてきた土曜夜9時からの2時間サスペンスの枠を日曜の午前10時からに移動させたことです。

以前は夜だったのでサスペンスを見ていた部分もあったのですが、なかなか日曜の朝からサスペンスドラマを見るという感じではなく、日曜の朝から家にいる時でも実際他番組の方を優先して見ていました。今回この時間帯のドラマを見ようと思ったのは、ちょうど60才の男女を主人公にしたロードムービーのような作品「最後の同窓会」というサスペンスドラマではないものだったからということもあります。

内容自体はありきたりな設定だとは思いましたが、特に死体での演技を長時間行なっていたでんでんさんが一番大変だと思いましたが、周りの役者さんがうまくでんでんさんを「使う」ことで、ドラマのアクセントとして大変いい味を出していたように思います。若い世代から見てもうかなりの年だと思うかも知れない俳優さんたちの若さを感じる姿に、こうした内容は企画としてなかなか実現できないと思われる中、「文化庁芸術祭」というものをうまく使ってこういった稀有なドラマを作ったなという感じはします。もしNHKの朝ドラ「ひよっこ」を見ていた方なら、朝ドラで青春を謳歌していた世代が60代になったら? という感じで楽しむこともできたでしょう(脚本担当はどちらのドラマも岡田惠和氏です)。

ただ、夜のドラマでやっていたような方法をそのまま取り入れて、単にサスペンスドラマの枠にはめ込むというのはさすがに安易すぎると思えます。というのも、この時間帯の裏には強力なTBSの「サンデー・ジャポン」や、フジの「ワイドナショー」があり、親子孫三世代で一つのテレビを見る中で、このドラマ枠を三世代で見るような状況はちょっと想像できないですし、せっかく力を入れて作ったドラマが多くの人に見る機会を与えないま埋没してしまったのではないかとも思われます。

この時間変更というのは、サスペンスを含む一話完結のスペシャルドラマを作っている側にとっては、ボディブローのように効いてくる可能性もあるのではないでしょうか。個人的にはテレビ局はこのまま2時間サスペンスドラマ自体を止めてしまう方向で考えているのではないかという気もするのです。

こういう話をする中でつい思い出してしまうのが、2時間サスペンスドラマではかなりの本数に出演されていた男優の田中実さんが自殺をしてしまった事に関する情報だったりします。自殺の原因としては人間関係がうまく行っていなかったというような理由も取りざたされていましたが、テレビ局に入る広告費が少なくなったことで、経費のかかるドラマの中でまず時代劇が減らされ、次に来るのがサスペンスドラマの休止になるのではと言われた未来を悲観したのではないかという話もあります。

実際、そうした憶測の通りにテレビにおけるドラマの立ち位置がなってしまっていますし、なまじそれまで再現VTRや単発のサスペンスドラマに出演することで安定した収入を得られていた中堅の役者さんにとっては真剣に転職を考えなくてはならない状況も今後起こり得ますし、50代を過ぎた方の場合は一般的に正社員としての再就職すらままならない状況です。

先日紹介したマツコ・デラックスさんがテレビに出まくっているのも、比較的ギャラが安くて済む文化人扱いであるからで、ひな壇に座るお笑い芸人の方も安いギャラでも我慢して露出を増やすことによって食べているような状況があるでしょう。

果たしてこれで明るいテレビの未来があるのか? という事を真剣に考えてしまうのです。もし、ドラマの題材とするとしたら、今活躍している若手の俳優さんが60才という年齢に届いた時に彼らはどんな事をしているのか、リタイヤしたとしたらどうなっているのかなんてことの方が、より多くの人にとって身につまされるドラマになるのかも知れないと思うのです。

(番組データ)

スペシャルドラマ 最後の同窓会 テレビ朝日
11/26 (日) 10:00 ~ 11:50
平成29年度文化庁芸術祭参加作品
【出演】市村正親、角野卓造、でんでん/大路恵美、安藤玉恵、河井青葉、浦山可児/片岡鶴太郎(特別出演)/かとうかず子、松坂慶子
【脚本】岡田惠和
【監督】内片輝

(番組内容)

50年ぶりに再会した小学校の同級生たちが人生最大の大冒険!?連続テレビ小説『ひよっこ』の岡田惠和が贈る大人のための笑いと涙のロードムービー。高槻功(市村正親)が定年を迎えた日。小学校時代の同級生・坂田典夫(角野卓造)から、同窓会の誘いの電話が入る。欠席の返事を出していたが、典夫から「リーダーがいないとはじまらない」などとおだてられ顔を出すことに決めた。

当日、会場の小さなスナックに到着してみると、集まったのは功のほか、幹事の典夫、お調子者の田村実(でんでん)、影の薄い米倉正一(片岡鶴太郎)、マドンナの花岡真知子(松坂慶子)のたった5人。夜通し騒いだ明け方、功たちが目覚めると仲間の一人実が死んでいた。暗く沈んだ気持ちになった一同に無性に腹が立った功は、孫娘のピアノ発表会の会場まで実の遺体を連れて行ってあげようと一同に提案する。


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