平成の終わりに「アメリカ横断ウルトラクイズ」の流れも消えるか

今まで、高校生クイズと言えば往年の名クイズ「アメリカ横断ウルトラクイズ」の手法をスポンサーである「ライオン」の力によって実現してくれるものだと思っていたのですが、今年はスポンサーは同じでも「地頭力対決」という形を取り、スタジオならびに宿泊先の東京のホテルでの収録というお金の掛からない方向に変わってしまいました。

もちろん、出場した高校生にとってはいい夏の思い出にはなったでしょうし、今年の番組については例年の視聴率と比べてもそこまで大きな変化はないだろうと思います。しかし、あえて言いたいのは「アメリカ横断ウルトラクイズ」の伝統をかろうじて繋いでいた高校生クイズの変化によって、クイズ番組らしさは出てきたように思いますが、反面バラエティやドキュメンタリーとしての面白さは無くなってしまったように思います。これは、準決勝前の収録休みの一日についてVTRでなく静止画の写真とナレーションだけで勝ち残ったメンバーの様子を極力短く済ませたことによって、完全にドキュメンタリーや人間ドラマ色を廃してクイズ番組化まっしぐらなんだなという確信に変わりました。

こうした番組の作り方というのは、最近テレビ界で東大の学生が出演するクイズ番組が多数出てきて、知識や能力の高いエリートの頭の良さを強調するような番組が人気になることで多くのキー局が追随したことと関係があるのでしょうか。この種の番組は恐らく少ないギャラとスタジオ収録でそれなりの視聴率を稼いでいるであろうことから、高校生クイズも極力経費をかけずに、勝ち残った日本のエリートが地頭の良さを出して盛り上がって行くような形式にしたかったのか? という感じもします。もしそうだとしたら、クイズ形式を切り替えたので過去の有力な高校が予選で敗退してしまったというのは制作側としても想定外のことだったのかも知れません。

さらに、制作者の想いとしてクイズに負けた学校にインタビューする時など、出演者の一生懸命さを伝えようと努力していたことは認めますが、やはり日本を出発してアメリカを転戦しながら連日クイズをやる中で参加校同士でもそれなりの関係ができ、さらにチーム内でも普段とは違う状況になっていくようなところを、東京での滞在期間があるとは言え短期間のスタジオ収録だけで出してもらうことは難しいと言わざるを得ません。その点でも昨年の番組と比べると画力に違いがあるということは見ていて本当に感じました。

今後の高校生クイズが単なるクイズとパズルで頭の柔らかい学校はどこか? ということを決めるだけであればこの方向で行くことについて何も文句を言うことではありませんが、視聴者の中には「金の切れ目が縁の切れ目」とばかり、毎年の視聴から離れる方も出るのではないかということも心配になります。

何より、やはり日本テレビのクイズというとあまりにも「アメリカ横断ウルトラクイズ」の印象が強いだけに、その流れを遂に平成の終わりとともに捨ててしまったという印象が個人的には大きく、もしこの方針転換がお金とは関係なく試されたパターンだったとしたらまた私たちはアメリカ横断する高校生の姿を見られるかも知れませんが、単に番組の制作資金の問題だとしたら大変残念に思います。

同じ高校生の全国大会のうちでも野球なら甲子園というように、予選を通って全国大会に出場した多くの高校生にとってもこの番組を大きな目標になっていると思いますが、アメリカへ行かなくなったことおよび、一次予選のクイズを一気に15問も省略してしまうことで、全出場校のメンバーも放送しないまませっかくスタジオ収録に臨んた学校の紹介も省略されてしまうのは、中途半端な地方のエリートはいらないという番組の意思表示であるとも考えることができます。

どちらにしても普通の高校生がいくら頑張っても太刀打ちできず、上位に入ってテレビに映る高校が固定されてしまうようだと、あえて予選を行なうよりもテレビ的に面白くなりそうな高校対抗戦のようにした方が余分なクイズがあったことを紹介することもないですし、スッキリするのではないでしょうか。ただそうなったら番組自体の魅力が薄れてくるような気がします。単にお金の問題でアメリカ横断ができなくなったのだとしたら、スポンサーがテレビに多額の広告費を出さなくなったことがわかってしまうわけですから、そこから日本のテレビ自体の衰退が始まるのではないかという危惧を感じざるを得ません。

(番組データ)

ライオンスペシャル 第38回全国高等学校クイズ選手権 日本テレビ
9/14 (金) 21:00 ~ 23:24 (144分)
【総合司会】桝太一(日テレアナウンサー)
【メインパーソナリティー】千鳥
【スペシャルパーソナリティー】千葉雄大
【メインサポーター】乃木坂46
【ゲスト】石原良純、岡井千聖、菊川怜、小島よしお、滝沢カレン、辻岡義堂(日テレアナウンサー)、ブリリアン、ブルゾンちえみ、ホラン千秋 五十音順
【有識者】猪子寿之、大村芳昭、川村康文、高橋智隆、湯本博文 五十音順

(番組内容)

千鳥、千葉雄大、乃木坂も大興奮&先の読めない展開に絶句!▼各地の代表50校・総勢150名の精鋭が地頭力クイズに立ち向かう▼プロジェクションマッピングで出題される実物大建造物のクイズとは!?海外で問題解決した実際のアイデアもクイズに!たばこのポイ捨て激減作戦とは?水不足対策の画期的商品とは?▼想像超える巨大セットに高校生茫然!高さ5mの壁を最も早く越える高校は一体どこか?前代未聞の熱戦が幕を開ける!


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