体力勝負で勝てない「卓球」の魅力

現在の日本の卓球ブームは当時小学校に上る前だった福原愛さんがテレビで大人のタレントと卓球勝負をして、「泣き虫愛ちゃん」として有名になったことから始まったのですが、最近は14歳で全日本卓球選手権の男子シングルスのタイトルを取ってしまった張本智和選手の人気もあり、今までの女子だけではなく男子にも注目が集まり、テレビでも卓球をバラエティーの企画にすることは当り前になりつつあります。

そんな中、ここでぜひとも紹介したいほど面白かったのが、元ボクシングの強い世界チャンピオンだった長谷川穂積さんが本格的に卓球の上達を目指して専用の練習場を作ったり、専属のコーチを雇って強化しているという話の中から、長谷川さんが芸能界最強と考える落語家の三遊亭小遊三さんとの芸能界ナンバーワンをかけた11点先取の2セットマッチが実現したのでした。

ちなみに、三遊亭小遊三さんは山梨県から国体に出場したほどの卓球の実力の持ち主で前回の東京オリンピックの聖火ランナーとしても走ったという山梨県内では知られた実力者でした。

ただ、現在の年齢は70歳ということで、37歳の長谷川さんと比べると明らかに脚力やパワーは劣ります。さらに試合前のVTRでは長谷川さんがまさにボクシング仕込みとしか思えない強打を打ち返すブロック技術や、相当威力のあるフォアハンドによる打ち込みを見て、これは小遊三さんも危ないのではないかと思った方も多いでしょう。しかし、対決はある意味勝負にならず、三遊亭小遊三さんの圧勝で終わりました。

まさに今回の番組はこの試合だけで見た甲斐があるというべきもので、単に力自慢の人が強烈な球を打つように練習していても、経験がある人が相手だったら全く歯が立たないスポーツであるということを証明することになりました。これが格闘技系のスポーツであったなら、ここまで長谷川さんもこてんぱんに負けることはなかったでしょうが、卓球はいかに先手を取って攻めるか、さらにその戦術はチェスに例えられるように理詰めなパターンもあります。

番組を見た方ならおわかりでしょうが、小遊三さんは強打は打つものの、その前後には力を抜いて無理をせず打ち返していましたが、長谷川さんは力任せに打つのが目立ちました。さらに、対策をしていないサービスでチャンスボールを呼び込むと、左側に寄って構えている長谷川さんをあざ笑うかのように、台の右端を狙ってストレートの「軽打」を叩き込むのです。正面で受けられれば長谷川さんにも返すすべがあるでしょうが、小遊三さんはできるだけノータッチで抜けるようなコースをねらって自分の体力と相談しながら軽打を打っているのがわかりました。

お二人のプレースタイルは昔の日本選手が採用していたものの、いまでは使う人の少ない「ペンホルダー」のラケットを使う攻撃型同士のものでしたが、私がさらにびっくりしたことがあります。長谷川選手のプレースタイルはフォア側に来たボールは強打で振り抜くものの、バック側に来たボールについては強打ができにくいのでブロックで当てて返すだけというかつての日本卓球の戦術をなぞっていたのに対し、小遊三さんは同じペンフォルダーでも裏面にもラバーを張り、サービスを裏面に当てて出すだけでなく、最近の日本選手がやることで有名になった「チキータ」と呼ばれる裏面を使った打法までものにしていたのです。これではいかに長谷川さんが若くて体力があっても勝てるわけがありません。

もし長谷川さんがサービスのときだけでも主導権を取り、相手のバック側を攻めて軽打を打たせないようにできればもう少しいい勝負になったのではないかと思いますが、それにはやはり相当な練習が必要で、すぐに芸能界の卓球の勢力図が変わることはないでしょう。個人的には長谷川さんはペンフォルダーでなく、張本選手や水谷選手のようなシェイクハンドラケットに変えてフォアでもバックでも振り回してパワーで小遊三さんを粉砕するくらい力をつければ面白いと思いますが、それと同時に打球のコースを計算して相手を追い詰めるような戦術も考えていかないと、経験豊富な小遊三さんにあしらわれるだけだと思います。

そう考えると、ある程度の経験を積めば素人に毛が生えたような体力自慢の人との対戦ならめったに負けないのが卓球の醍醐味であり、生涯スポーツとして大人になってから始めてもそれなりに楽しくできるということもあります。実は愛ちゃんがテレビでタレントを相手に試合をした時も、大人が真面目にやっても小学生に歯が立たないというところがあることで、まさに幼稚園児から80歳を超えても試合としてそれなりに成り立ってしまうことがあるというのが今回の特別試合によって多くの人が理解したのではないかと思います。

それとは別に、今後の長谷川穂積さんの卓球修行がどうなるかというのも気になります。おそらく、福澤朗さんあたりと試合をしても勝てないと思いますので、次は長谷川VS福澤というカードをマッチメイクしてくれるテレビ局があればお願いしたいですね。

(番組データ)

アウト×デラックス【夏菜テレビに毒吐きまくり!VS遠野なぎこ朝ドラ女優の悲哀】フジテレビ
2/15 (木) 23:00 ~ 23:40 (40分)
【MC】矢部浩之   マツコ・デラックス   山里亮太(南海キャンディーズ)
【ゲスト】  黒木渚   夏菜   長谷川穂積     (※五十音順)
【特別出演】  三遊亭小遊三
【アウト軍団】  大鶴義丹   加藤一二三   栗原類   ジャンボ織田信長書店ペタジーニ   高橋ひとみ   塚田僚一(A.B.C-Z)   遠野なぎこ   ミラクルひかる   矢部みほ
【チーフプロデューサー】  中嶋優一
【プロデューサー】  瓜生夏美   林田直子   児玉芳郎   大江菊臣   小林靖子
【演出】  鈴木善貴
【監修】  渡辺琢
【制作】  フジテレビ

(番組内容)

独特の世界観を持って生きているこだわりの人たちを招き、矢部浩之、マツコ・デラックスとアウトなトークを展開するトークバラエティー『アウト×デラックス』。バーのようなリラックス空間にリニューアルした新セットで、今回もゲストがアウト・トークを連発します!  ◆シンガーソングライターとして注目される黒木渚が、音楽よりも聞きたい他人の〇〇とは!?アウト軍団No.1に輝くのは!?

◆超高速連打、絶妙なカウンターパンチ、卓越したディフェンステクニックとスピードを誇る元・ボクシング世界三階級制覇王者の長谷川穂積が、現在卓球で芸能界No.1の三遊亭小遊三とマジ卓球対決!果たして気になる結果は!?  ◆最近、バラエティー番組に多く出演している夏菜!元・朝ドラヒロインが、各局のバラエティー番組に出演する中で見つけた局ごとの特性とは!?


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