月別アーカイブ: 2018年9月

広告がないNHKがあぶり出すネット不正広告の問題

今回紹介する「クローズアップ現代+」の再放送枠というのは、その週に放送された内容で反響が大きかったものが放送されるということですが、この内容についてはNHKの報道に感じることがある「しがらみ」がないせいなのか相当取材している感じがあり、テレビを見ている人が少しわかりずらいようなテーマの問題点を明確にしてくれたように感じます。

このサイトでも導入している「ネット広告」について、不正を行ない広告主から支払われるお金のうちの一部を手に入れている個人や組織を突き止めるための取材を軸に番組は進んでいきます。番組で紹介されているネット広告というのは、かなり具体的な話になりますが、事業者の「ヤフージャパン」が企画したネット広告について広告代理店の「電通」が「広告主」をとりまとめた上で契約を行ない、主にネットを見る人にピッタリと当てはまる種類の広告をウェブサイトに「ヤフージャパン」が表示することで、その広告が見られている回数に応じて掲載サイトの所有者に広告料の一部を支払うという流れになっています。取材したところ、広告主の多くは自らの広告が見られないまま広告料だけが「中抜き」されていること自体を全く知らないケースがほとんどでした。

実際、このサイトでも多くの人が見てくれればそれなりの広告料が入るはずですが、広く知られているサイトでは全くなく、個人的に努力する事にも限りがあります。その結果あまりにもサイトを見てくれる人が少なければ一切そうした広告料は入ってきませんし、サイトに広告を載せても利益など出せないサイトが大多数であるということ普通に言われています。しかし、不正をするような人は、ある巧妙な仕組みを使って多くの人のパソコンやスマホに自分のサイトを表示させるような仕組みを実行しているのです。

番組の説明によると、ターゲットは成人男性がほとんどだと思うのですが、その筋の人なら知っているアダルトコンテンツを扱う人気サイトにアクセスすると、表面上はそのアダルトサイトが表示されるのですが、実はその裏でブラウザが複数開くプログラムが実行されるように仕組まれていて、主サイトの後ろに回り込むような形で多くの広告が掲載されたサイトが利用者には見えないまま表示されるということなのです(番組では具体的には言っていませんでしたが、不正グループの本丸として「アダルトサイト」と「広告掲載サイト」、さらに「不正サイトを巧妙に隠すプログラムを開発する業者」を結ぶ業者の存在が示されていました)。

そして番組が取材した広告掲載サイトについて月のアクセスが3,000万ページビューにもなるところもあったそうで、単純に計算するとそのくらいのアクセスが有れば、サイトに支払われる広告料は条件によっては月に450万円くらいにもなる場合もあるという話です。実際にはそうしたアダルトコンテンツを隠れ蓑にした仕組みを提案し、連携する作業を行なっている元締めの業者にいくらかのフィードバックを行なう契約が行なわれていると思いますので、実際にどのくらいの利益を広告掲載サイトが得ているのかは不明ですが、サイト構築と維持にかかる費用はそこまで高くないので、一連の不正に参加している人たちは、かなりの金額を荒稼ぎしているだろうということが想像できます。

しかしここで考えていただきたいのは、普通の利用者はアダルトコンテンツを目的にサイトを訪れ、実際は自分が見ているサイトの裏で表示されているにも関わらず、その広告は一切見ないでコンテンツを見終ったらブラウザを閉じてしまいます。そうなると、広告主は本来ターゲットとすべき人に自社の広告を見てもらいたいためお金を払うのに、全体からすると9.1%もの広告費が不正な業者を通じて「多くのユーザーが広告を見たことにして」不正サイト管理者らに支払われてしまうという事実です。

ヤフージャパンの広告を利用している広告主の中には多くの人に知られた大企業や、さらに国や地方公共団体もいるということで、余分な広告費の支払いというのは企業が発売する商品の代金に跳ね返ってくるだけでなく、特に公の行政を行なっている団体の予算から広告費が出ていれば、回り回って国民が払う税金の中から不正業者にお金が流れてしまうことにもなります。

番組取材班は更にこうした広告料の不正取得を提案し、契約したユーザーとともに広告費を横取りするような不正の本丸にいる人達について、追加取材の予定も報告しています。今後こうした不正に対策をすることなくネット広告費を横取りする人たちを野放しにしておくようだと、ネットを見ても面白くなさそうなコンテンツが増えることで、今のようなネットへの興味が失せてしまう可能性があります。現代の子どもにとっての一番の人気職業と言われている「YouTuber」としてネットで生活しようといくら努力したとしても、中抜きされる広告費が多すぎて、広告主がネット広告を止めたり規模を縮小したりすると、これから初めたばかりの拙い内容のサイトまではお金は回って来ず、せっかく盛り上がったサイト構築への意欲をそいでしまうことにもなりかねません。

それはブログについてもまさにそうで、ドメインの維持手数料(年間数千円程度)ぐらいも年間に稼げないということになると、今まで有益な情報を提供してくれていた良サイトがいきなり閉鎖なんてことも起こってくるかも知れません。正直なところ、自分のサイトが多くの人に読まれるだけでなく、いくらかの収入を見込めるということになれば、自然と更新の意欲も高くなる方もいるでしょう。しかし多少の努力をしたとしても、不正にアクセスを稼ぐ不正サイトの陰に隠れてしまい、さらに広告料の儲けを持っていかれるということになると、今後面白いコンテンツを作る才能を持っている人がブログを書かなくなることも考えなければいけないでしょう。そうなるとインターネットの一つの魅力が無くなってしまうような感じにもなります。

せめてインターネット広告に関わる方々には、不正に多くのアクセス数を稼いで広告料をかすめとる中味のないサイトなのか、オリジナルのコンテンツで勝負しているサイトを分け、悪質なサイトへの広告配信を中止するなどネット自体の信頼性の構築にも協力していただきたいところです。不正利用者とは技術革新のたびにいたちごっこになるかも知れませんが、そこをきちんと分けないとネット広告にお金を出そうと思う人が減る可能性もあります。少なくとも今回の番組が本放送で評判になり、深夜ではありますが再放送されたことに希望を感じます。今後の取材でさらなる真実が明らかになるような続編が放送されることを期待したいですね。

(番組データ)

クローズアップ現代+選「追跡! ネット広告の”闇”」NHK総合
2018/09/08 01:40 ~ 2018/09/08 02:05 (25分)
出演者
中川淳一郎さん (ネットニュース編集者・元博報堂社員)
NHK記者
武田真一・田中泉 (キャスター)

(番組内容)

2018年9月4日の再放送。
急成長を遂げ、年間1兆5千億円を突破したネット広告市場。この巨大市場に不正の闇が広がっていることが分かってきた。4月に取り上げた海賊版サイト「漫画村」では、広告が実際には見られていないにも関わらず、大企業が広告費をだまし取られる“裏広告”の実態が明らかに。その後も取材を続けると、次から次へと新たな手法が浮き彫りになってきた。 被害は企業だけでなく、国や自治体にも広がり、税金がだまし取られていた可能性も浮上してきた。番組では、サイトに残された手がかりから、不正に関わると見られる業者を複数特定。個人か?それとも組織的な行為か?謎に包まれたネット広告の「闇」に迫る。


午前3時8分発生の地震はどう伝えられたか

北海道の内陸部を震源にし、最大震度7(厚真町)という激しい揺れがあり大きな被害となった9月6日の地震は、発生した時刻がテレビ放送がクロージングするのとオープニングになる時間の狭間で起こりました。さすがに私も地震前後にどのような形で各局が特番を始めたかというところまでは寝ていて見ていませんでした。

たまたま、夜中トイレに起きたのが午前3時半くらいだったので、時刻の確認のためにテレビを付けたらこの地震の報道をやっていたので一気に目が覚めてしまったのですが、BSの数局では特番に行かずに通常の番組を流していました。個人的な考えを言わせていただければ、今回地震特番を流さなかった局にもしニュースを流すネットワークがないのなら、ウェザーニュース社あたりと緊急時だけでも提携してYoutubeと同じものでも公共の電波で流してもらえば、これから書く各局の報道の中でもかなり利用価値のある放送になるのではないかと期待しているのですが。

ともあれ、地上波およびBSでは地震発生後しばらくして全て地震に関する報道になりましたが、ざっとこちらで見られるチャンネルを見た限りでは、地震が起きた時間に首都圏の地上波(東京ローカルを除く)ではニュースを流しているところはほぼなかったのですが、地元静岡のローカル局ではBSと同じように日本テレビ系の「静岡第一テレビ」がインターネットの「日テレNEWS24」をオープニングの前に同時放送していたので、そこからすぐに地震のニュースを流すことができ、機動力は高かったように見えました。

その「日テレNEWS24」ですが、私が見出してすぐに地震の起こった北海道を放送エリアにしている日本テレビ系の系列局「STV札幌テレビ放送」が主導する放送に切り替えていました。これは、まず現地はどうなっているのかと思って見る立場で言うと、東京と札幌、そして現場というような形でのやり取りがない分、かなりスムーズに現場の様子が伝わってきたような感じがします。この点は全国にキー局が少ないテレビ東京や、独立系のBS局には厳しいかも知れませんが、それこそ先に提案させていただいたようにウェザーニュースとの提携など地元提携以外にも災害の様子を伝える手段はあると思いますので、その点は各局で考えながらいかに早く正確に今起こっている状況を伝えるかということを考えていただけると幸いです。

今回のように深夜に災害が起こった場合、とるものも取りあえずまずスマホを持って逃げる人が少なくないと思います。被災した場所によってはネットが通じない場所というものもあると思いますので、ワンセグ付きのスマホなら電波が届かなくてもテレビのワンセグ電波を受信して災害の状況を知ることができます。ただ逆に、ワンセグの付いていないいわゆる格安SIM系のスマホを使っている場合、テレビ放送は見られないわけでもあります。もしネットに繋ぐことが可能であるなら、以下の事を今後試してみて下さい。格安SIMの場合一定の高速クーポンが付いた契約がほとんどだと思いますが、もし高速クーポンを使わない「低速通信」にアプリなどで切り替えて使えるような場合は、まずはいざという時のために高速クーポンを使わない設定にし低速通信でネットを使うようにするのをおすすめします。

低速通信ではウェブサイトからの文字情報を見るくらいしかできないと思いがちですが、実はそうでもありません。アプリを利用してラジオ放送の同時放送を聞く場合(NHKの「らじる★らじる」や民放の「radiko」)、低速でも十分に聞くことができます。さらに、動画による放送についてもテレビ朝日系列の「AbemaTV」のアプリの設定で「通信節約モード」のところにチェックを入れ、画質の「モバイル回線時」の設定で「通信節約モード(1GBあたり約10時間)」にチェックを入れると、低速でもそれほどストレスなくAbemaTVを見られます。

これは、低速専用回線ということで個人的に導入した「ロケットモバイル」の神プランのSIMを利用して車での移動中にもAbemaTVが見られたという実体験に基づいた情報です(ちなみにロケットモバイルの低速専用「神プラン」のスピードは120kbps程度と相当遅いです)。被災地では多くの人がネットに接続しようとするので同じようにはいかないかも知れませんが、AbemaTVのニュースでも地上波と同等の情報をリアルタイムで流してくれますし、今持っているスマホが格安SIM契約と同時に購入した安い海外製のワンセグの付かないタイプの場合、今後の事を考えて「らじる★らじる」「radiko」「AbemaTV」という3つのアプリは入れておいて、いざという時に使えるようにしておくだけでも状況は変わってくるのではないかと思います。

北海道ではまだ大きな余震が来る可能性も言われていますので、口コミではなくこうした公共の電波やネットで流れる情報を入手して今後の避難などにお役立ていただければ幸いです。


NHKは「阿波おどり」を広く見てもらう気がないらしい?

ちょっとテレビの番組表を見ていて気になったのですが、2018年の徳島市で8月のお盆に行なわれた「阿波おどり」ですが、同じNHKBSでは生中継があったような気がしていたのですが、今年は何と月曜日の午後4時前に録画編集したものを放送しました。2018年は「総踊り」が中止になったり市長や徳島新聞が批判の矢面に立たされた報道によるところもあったのでしょうが、過去最低の人出と言われ、もし生中継をしたら何が起こるかわからないと思って録画中継にするのは理解できるにしても、放送する時間は一体どうなの? と思ったのは私だけではないはずです。

中継の演舞場の席は最初の連の時には埋まっていて、そうした事も編集された結果だということを感じていました。阿波おどり開催中の観覧席はかなり売れ残って空いていたという報道もあり、実際にガラガラの観客席の写真をこの夏に何枚も見ました。これは、テレビの画面というものがそこで起こっている状況を全て映しているというわけではなく、あくまでカメラで撮られた部分のみしか映らないということもあります。

自分も写真を撮る時にはそれほど盛り上がっていない状況でも画面を切り取ることで大盛況のような写真をあえて撮ることもありますが、恐らく今回の阿波おどりについてもそんな感じで人がいる時間帯や、人が集まっている場所を狙って撮影したのではないかという風にも思えます。例年なら多少席が埋まっていなくても全くその事には関心はなく、あくまで踊りのクオリティや迫力だけを見て楽しむだけなのですが、2018年という年は阿波おどりにとって難儀な年だったと思ってしまいます。

ただ、今年は逆に踊り以外にも、観客席の上にある看板にはどんな企業が入っているのだとか、どのお客が招待券を利用して、どのお客がお金を出してチケットを買って見ているのか、その踊りへの声援の掛け方でわからないかと思ったりとか(^^;)、そんな事も気になってしまいました。

しかし、番組を見続けていく中で、私はその瞬間を見てしまいました。番組の半ばに今回の騒動の概要は伝えたものの、あくまで徳島市が準備をしっかりやって開催にこぎつけたというニュアンスの説明だけで、市長が禁止した「総踊り」についての言及もありませんでした。ただ、その直後に踊りの様子が紹介された「阿呆連」の踊りの最初の部分では、多分踊りのスタート地点付近だと思うのですが、見事にガラガラの観客席が一瞬映し出されていました。さすがに、テレビで踊りの全てを流す中では、一部の客席がガラガラなのを隠すことはできなかったという印象です。

阿波おどりの魅力を伝える番組ということで、あくまで前向きに、騒動については極力伝えずに現場は盛り上がっているよ! という事を伝えたいというのが番組の目的なのかも知れませんが、だったら見る人の限られる(わざわざ録画して見る人を含めて)月曜のまだ夕方前の時間帯にぶつけて放送することの意味というものは何なのか? と改めて考えてしまいます。

結局、毎年阿波おどりについて番組を作ることは決まっていて、今年は騒動の影響で生中継できず、どんなに隠そうとしてもガラガラの客席を映さざるを得ない事がわかった時、これは放送時間をずらして放送してやれという風にしか私には感じられませんでした。

私はたまたまその前に見ていた深作欣二監督の忠臣蔵の映画を見た流れで見ることができましたが、これも月曜日の昼間に休みだったからという事があって、そうでなければ全く見ることのできない時間帯でした。毎年、この中継やVTRの取材を受けたちびっ子を含めた踊り手さんもさぞや残念だろうと思います。なぜ同じウィークデーでも多くの人が仕事終わりで見ることのできる夜に編成できなかったのか。それがテレビだと言われればそれまでですが、やはりこうした日本の祭りというのはそこで行なわれているものをリアルタイムで見たり、参加した人たちが家族そろって見られる時間に放送することに意義があるのではないかと思うのですが。

さらに言うと、今年だったらテレビ中継される演舞場でも当日券が余っていたのではないかと思われるので、本当に阿波おどりを間近で急に見たくなったら近くにいる人がテレビを見て現場に押しかけることもできます。これもテレビの即時性の一つです。

いつのころからかこうした日本の祭りや花火大会を生中継する番組がBSを中心に全国放送されることが多くなりました。私はもっぱらテレビで見てその魅力を感じるだけではありますが、テレビで見て大きな魅力を感じたものについてはいつか直接出掛けて見に行きたいものもあります。しかし、今年の阿波おどりの録画中継は、あらゆる意味で不満が残ることになったことだけは確かではないでしょうか。

ちなみに、再放送予定はすでにあるのですが、同じ9月ですが27日(木)深夜(28日(金)) 午前2時50分からというまたとんでもない時間でした(^^;)。再放送についてはこんなものかなという気もしますが、来年はきっちりと生中継にして、現場の良いところも悪いところもしっかりと伝えて欲しいものです。

(番組データ)

徳島 阿波おどり2018 NHKBSプレミアム
9/3 (月) 15:45 ~ 16:58 (73分)
【ゲスト】瀧本美織,
【解説】阿波おどり情報誌編集長…南和秀,
【アナウンサー】高山大吾

(番組内容)

徳島を代表する夏の祭り、阿波おどり。熱演の数々をたっぷりご紹介します。ゲストは、俳優の瀧本美織さん。なんと瀧本さんも、阿波おどりに初挑戦!見事、観客の前で踊りきれるのか?さらに、クイズ形式で阿波おどりのディープな世界をご紹介。これを見れば、あなたも阿波おどり通になれるかも。