ボーカロイド「美空ひばり」は実現するのか?

データを音声に変換する「ボーカロイド」を作ったYAMAHAの技術者が全面協力し、番組タイトルにあるようにAI(自工知能)の技術を使い、できるだけ自然な人間の声に近づけようとして人工的に作った、すでにこの世の人ではない「美空ひばり」の歌を再現することはできるのか? というのが番組の目的で、そのボーカロイドに歌わせるための新曲は秋元康氏が中心になってさらに新曲の詞も秋元氏が書くということで、この番組は成立しています。

さらに、NHKのスタジオで完成披露と番組のラストとして新曲を紹介した際に、動く「美空ひばり」をCGによるホログラムで再現しています。動きの参考として天童よしみさんに今回披露した新曲を歌ってもらい、その仕草をCG作成の参考にしていました。

番組は完成披露したことで終了してしまいましたが、肝心の令和初の美空ひばりの新曲というのはどんな風になっているのかと思ったら、亡くなった頃からの時間の経過とも関係あるのか、ひばりさんが生きている時には決して歌いそうもない曲調のもので、ただ詞は秋元康さんの作品らしく実にわかりやすいもので、曲の間に入った「語り」をそれらしく聞かせるためのYAMAHAの技術者の苦労というものも紹介されていました。

当然、今回新しく作られた曲は美空ひばりさんの持ち歌としてはカウントされませんし、今の状況ではAIを駆使して機械で美空ひばりさんの色を再現しても、上手なものまね芸人にも劣るレベルではあります。しかし、個人的には今回のような番組が作られたことで、さらなるボーカロイドの可能性が出てきたような気もするので、生身の人間の歌とは違ったボーカロイドAIを使った「美空ひばり」という新しい音色が一般的になればという期待を感じてしまったことも確かです。

今後、ひばりプロダクションが許すかどうかわかりませんが、ボーカロイドで歌う「初音ミク」のように「美空ひばり」バージョンの音源が市販され、誰でもネット上で著作権の切れた楽曲や自作の曲を美空ひばり風に表現できるようになると、これはこれでまた面白くなるような気がします。美空ひばりさんは単なる演歌歌手ではなくポップスやジャズも器用に歌いますし、その声質はきわめて日本的と言えるということから、日本発の新しい音楽が美空ひばりさんの声質で歌われた時、改めて彼女の過去の楽曲が注目されることになるでしょうし、同時にそこから派生した新しい音楽が生まれる可能性もあります。

音楽の面白いところは、事前にきちんと今回の番組のように準備されて多くの人の手がかかったから良い作品が生まれるということではないということがあります。美空ひばりさんの代表曲の中に「リンゴ追分」がありますが、この曲は単にラジオドラマを作る過程の中でやっつけ的に作ったものに過ぎず、歌詞の内容も「リンゴの花びらが月夜の風に散った」という単純なものです。その詞と曲に美空ひばりさんが魂を込めたことにより大ヒットしたのですから不思議です。そんな化学反応が、個人で細々と音楽を作っているクリエイターが美空ひばりさんの声でボーカロイドに歌わせることで起こったとしたらそれはそれで素晴しいことです。ボーカロイドの性能も今後より進化していくでしょうし、新しい技術を人の手が妨げることのないように、少なくともこの番組に関わった方は考えていただけると幸いです。

(番組データ)

2019/09/29 21:00 ~ 2019/09/29 21:50 (50分)NHK総合
NHKスペシャル「AIでよみがえる美空ひばり」
【出演】秋元康,天童よしみ,森英恵,
【語り】三浦大知

(番組内容)

昭和の歌姫・美空ひばりが“復活”。秋元康プロデュースの新曲をAIひばりが熱唱する。人工知能は人々の心を揺さぶる感動を生むのか?今夜、歌謡史の新たな扉が開く。

美空ひばりさんがこの世を去って30年。NHKやレコード会社に残る音源や映像をもとに、人工知能・AIでひばりを現代によみがえらせるプロジェクト。国内最高レベルの技術者がAIを開発。新曲の作詞は秋元康、衣装デザインは森英恵、振り付けは天童よしみという強力布陣。令和の時代に現れる“AIひばり”が歌うのは、これまでにない曲調の新曲。歌声や表現力はどこまで再現できるのか。あなたの目と耳で確かめてください。


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結成30年の「渋さ知らズ」をテレビで見られる幸せ

知らない人は全く知らないものの、その存在を知っている人なら詳しく知っているバンドというのは、オリジナリティがあり長く続けている良質のバンドだと思うのですが、今回紹介する「渋さ知らズ」というバンド形態の集団のパフォーマンスを記録したのがこの番組でした。何と「渋さ知らズ」は結成30年が経ったということで、改めて衰えないパワーにその存在感の大きさを改めて感じました。

この番組は、CSでの放送なのですが、私は本放送を見ていません。どういう基準で選ばれたのかはわかりませんが、民放の見逃し配信をネットで一定期間見られるサービスの「TVer」で、しかも無料で見られるというのは本当に嬉しく、ネット配信では85分間だった箱根彫刻の森美術館でのライブに見入ってしまいました。

渋さ知らズの楽曲というのはほとんどが歌なしのもので、分かりやすく踊りやすいテーマをひとしきり流した後は、参加メンバーのソロ回しという、ちょっとジャズ的な展開になるので長尺の曲が多く、ロックフェスのようにずっと縦ノリの気分でという感じではありません。地上波のテレビで1コーラス流されて終わるヒットソングを聴き慣れている人からすると最初びっくりするもののだんだん退屈になり、そしてまた盛り上がるというような感じで曲が進んでいくのでかなり戸惑うことが多いのではないでしょうか。

さらに、渋さ知らズのメンバーは楽器を演奏する人だけでなく大きな人形を動かしたり自分の体を使ってパフォーマンスをしたりというような、様々な人がステージに入り乱れるように集まっています。初見ならまさに一昔前の「見せ物小屋」の中を覗くようなドキドキ感のある、今の日本のミュージックシーンでは珍しい音楽パフォーマンスではないかと個人的には思っています。

今回は音だけではなく、演奏場所となるテントを建てるところから、観客の様子にもカメラを向けながら、どのようにして渋さ知らズのパフォーマンスが作られ、どんな人が楽しんでいるのかということがわかるような構成になっていましたが、当然のごとくたまたま彫刻の森美術館に来館した人を除けば、結成30年ということで長年応援してきた年季の入ったファンの方々の姿が目立ちました。今回のテレビ放送が実現したのも、ある程度のコアなファンが番組を作っている側にもいるということになるのでしょうし、CSとはいえきちんとそのライブが放送され、その番組が一定の時期だけとは言え、ネット上から誰でも見られるような形でアップされていたというのは、渋さ知らズの音楽をもっと広く発信していきたいという志の表れという感じもしました。

私自身は結成当初から渋さ知らズの事は知っていて、番組では2体目のサキソフォンを吹く人形として登場した、メンバーの故・片山広明さん(ts)が登場したのには驚きとともにほろっとしました。本当はこの番組で吹きまくる片山さんの姿を見たかったと思うのは私だけではないでしょう。そうした想いを形にしたメンバーの表現というのは素晴らしいと思いますし、今後もこうしたパフォーマンスは続けて欲しいなと素直に思いました。

実際の演奏場面で印象に残ったのは、多分オリジナルのメンバーだと思われるギターの石渡明廣のソロでした。他の人々はホーンセクションが主だったので、立って勢いよく演奏するため目立つのですが、石渡さんはあえて立つこともせずに淡々と、でも熱いソロを延々と続ける姿に、こういう人もいて、ステージ前面で目立つ人もいて、渋さ知らズというユニットが成り立っているんだなと思い、機会を見付けてライブを見に行ってみたいものだと感じましたね(^^)。

ただこれはテレビの番組の中のライブだったので、掛け値なしのライブ感をそのまま感じることができたわけではありません。番組内でちょっと流れていた、林栄一さん作の「ナーダム」が流れていましたが、この曲は林さんのソロアルバムで聴いて以来の好きな曲なので、渋さ知らズの「ナーダム」もちゃんと聴きたかったなというところではあります。

そうは言ってもテレビというのはあくまで現実を写すショーウィンドウという側面があるので、この番組やTVerを見た人にとって、もし好運にも「渋さ知らズ」という人たちの事を知ってくれる人がいたとしたら、地上波のテレビでは収まらない音というものの存在を十分に感じさせたのではないかと思います。

もしこの文章を読んで「渋さ知らズ」というものに興味を持つ方がいましたら、同名でYou Tubeで検索をかければ、この番組よりも短いものの彼らのパフォーマンスを記録した動画をいくつも見付けられるでしょう。できれば、動画だけで満足せず、さらにはテレビのライブだけで良しとせずに、実際にライブパフォーマンスが近くで行なわれていたら、足を運んでみて下さい。

(番組データ)

渋さ知らズオーケストラ×彫刻の森美術館「箱根渋天幕芸術祭」フジテレビNEXT ライブ・プレミアム
2019/09/17 01:00 ~ 2019/09/17 02:30 (90分)

(番組内容)

彫刻の森美術館開館50周年を記念して開催された「箱根渋天幕芸術祭」。夕暮れのライブステージの模様をお届け
<収録>2019年8月24日(土)〜彫刻の森美術館


ナーバスな題材でも事実隠蔽は反発を招くだけ

このカテゴリーで前回書かせていただいた「ベルリンオリンピック陸上競技」の内容がドラマについにのってきました。前回のロサンゼルスオリンピックと比べるとベルリンオリンピックでは公式の記録映画が作られたこともあり、選手は吹き替えではなく一部本当の競技の内容を記録した映画のシーンを使っていました。

一部というのは実は、当時の機材では日没後に競技が延長されて続いた棒高跳びについては記録できなかったためで、映画や当番組で使われた日本の大江季雄、西田修平の跳躍については、翌日改めて競技の様子を映画用に録り直したものでありました。

ただ、前回の内容でちょっと触れましたが、やはりというかこの大河ドラマでは、メダル獲得者以外は興味がないようで、三段跳びの田島直人選手は出てきましたが、5千メートルと1万メートルでともに4位に入り、現地でも大人気だった村社講平選手の存在は全く出てきませんでした。

そして、ドラマのコンセプトであるマラソンについては、これも記録映画に残っているものをそのまま流し、金メダル孫基禎選手、銅メダル南昇龍選手のメダル獲得と、それまで日本マラソン界がなしえなかったオリンピックの金メダルと複数メダル獲得の快挙を伝えました。

番組の中では日本の放送席の隣に陣取っていた優勝候補のザバラ選手の母国であるアルゼンチンのクルーが、ザバラ選手の途中棄権がわかると、そのまま放送を終了して帰ってしまったことが出てきましたが、これは当時のNHKアナウンサーの証言そのものです。また、オリンピックのマラソン中継は、スタートの部分を実況したもののそこで放送は中断し、レースが終わってから改めて放送されたということも事実に即しています。当時の取材では全コースの模様をつぶさに実況できるような事はできなかったということで、恐らくドラマで表現されたような怒号のあとの歓喜というものは日本のあちこちで起こったものだと思われます。

マラソン金と銅の孫・南選手は当時は日韓併合の渦中にあった朝鮮半島出身のランナーで、いわゆる「金栗足袋」を履いての快挙であることも間違いありませんが、前回の放送から播磨屋の店頭に両選手が金栗足袋を履いていてオリンピック代表に決まったというくだりが実は正確ではありません。この点は日韓両国にとって実にナイーブな内容を含むのですが、今回の放送でメダルを取ったことがわかった後、一瞬「今回のメダル獲得は朝鮮半島出身ランナーの快挙で日本人選手ではない」ことに残念がる気分が広がったのですが、そうした当時の日本人の気分を忖度したのか、実は日本選手団が出発する時にもマラソン日本代表は決まっていない状態だったのです。

話はマラソン代表の選考会の時にまで遡るのですが、当時孫基禎選手は、以前から他の競技で活躍していた同じ朝鮮半島出身の先輩から、とんでもない情報を入手します。当時、選考会前に孫基禎選手は当時の世界新記録を出しており、マラソン代表は間違いなしと言われていました。朝鮮半島出身のランナーとしては今回紹介された南選手は実力的に孫選手に次ぐ力があっても、出場枠の3には入らず、当時の日本陸連は日本人選手2名を選ぶというのです。その話を逆手に取るような結果に選考会レースはなってしまうのですが、その結果は南選手が一位、孫選手が二位ということになってしまったのです。

普通に考えると世界記録を持っている孫選手を落とすことができず、さらに日本陸連のメンツにかけても朝鮮半島出身のランナーが代表で2名入ることは避けたいと思ったのかどうかはわかりませんが、ベルリンに派遣する選手は朝鮮半島の選手2名、日本選手2名とし、大会出場の3名はベルリン現地で行なう30キロの現地予選で決定するとしました。

こうした当時の日本陸連の選手選考における不可解さはそれこそ最近の日本のマラソン代表選考にも影響を及ぼしていたようにも思います。しかしドラマでは孫・南選手が大会に派遣される前から日本代表になっているかのような流れになっています。

この辺は2019年現在の日本と韓国との主に政府同士の関係の悪さもあり、史実をそのままドラマ化するよりもある程度フィクションを入れながら描いた方がいいという考えあってのことかも知れませんが、日本人が朝鮮半島出身のランナーに勝てないという状況の中で、露骨な日本人贔屓をした事実は事実として、それら多くの忖度による代表選考が続いたことの反省のもとで2020年東京オリンピック代表選考の一発選考「マラソン・グランド・チャンピオンシップ」が生まれたということもあるので、そうした背景とともに過去の歴史を学習する機会になれば良かったのではという気がしてしまうのです。

個人的には今回の内容自体がニュース配信され、さらなる日韓両国の関係悪化につながるような事にはなって欲しくないですね。まさか放送のあるタイミングで日本と韓国に関する騒動が加熱しているとは制作者側にとっては想定外だったかも知れませんが、この問題はシナリオを書く前から問題としては続いていたと思うので、今後に遺恨の種を残す可能性もある一連の放送ではなく、せめてドラマ終了後のミニコーナーの中ででも、きちんと日本側から見た当時の国内の状況をきちんと説明して欲しかったと思っています。

(番組データ)

いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~(35)「民族の祭典」NHK総合
2019/09/15 20:00 ~ 2019/09/15 20:45 (45分)
【出演】阿部サダヲ,中村勘九郎,上白石萌歌,柄本佑,杉咲花,仲野太賀,森山未來,神木隆之介,荒川良々,川栄李奈,トータス松本,リリー・フランキー,三宅弘城,皆川猿時,塚本晋也,薬師丸ひろ子ほか
【作】宮藤官九郎

(番組内容)

ベルリンオリンピックはナチスが総力をあげ運営する大規模な大会となり、田畑(阿部サダヲ)を圧倒し当惑させる。IOC総会では治五郎(役所広司)が日本開催を訴える。

1936年夏。ベルリンで4年後の次回大会の開催地を決めるIOC総会が始まり、嘉納治五郎(役所広司)は「日本で平和の祭典を!」と熱く訴える。その直後に開幕したベルリンオリンピックは政権を握るナチスが総力をあげて運営する大規模な大会となり、田畑政治(阿部サダヲ)を圧倒し当惑させる。マラソンでは金栗四三(中村勘九郎)と同じハリマヤ足袋を履くランナーが出場。水泳では前畑秀子(上白石萌歌)のレースが迫る。


アスリートとメディアの関係を掘り下げないと何も変わらない

2019年9月15日に行なわれる、2020年東京オリンピックマラソン代表を決める一発勝負、マラソングランドチャンピオンシップについて生放送する中で、かつて一発選考とされていた日本陸連の選考基準が変えられたソウルオリンピック男子代表の選考についてのVTRによる解説がされたのですが、その内容に気にかかることがありました。

当時、代表有力だったダイエー所属の中山竹道選手がインタビューに答えた週刊誌の記事が画面に大写しなり、選考レースである福岡国際に怪我のため出場が不可能となった瀬古利彦選手に向かって「這ってでも出てこい」と中山選手が発言したかのような当時と同じ内容を報じていましたが、あれから相当の時間が経ち、当時の状況を当時者が説明した本も出版される中、この内容についてそのままVTRにしてしまうのはいかがなものなのかという気がしたのです。

というのも、私自身はその後の中山竹道氏へのインタビューを読んだのですが、その中で言った言葉は「這ってでも出てこい」ではなく「自分なら這ってでも出ますけどね」というニュアンスの違いが今となっては明らかな事実として認識されています。その発言には瀬古利彦選手への敵意はなく、あくまで自分の心情を述べているだけなのですが、当時のマスコミはこの週刊誌の内容に沿って中山選手のイメージを作ってしまったのです。

当時のマスコミは、いわゆる「空白の一日」事件で悪役となったプロ野球読売ジャイアンツの江川卓選手のように、それまでの経緯や直接発言した内容を捻じ曲げたり肝心な事を紹介しなかったりしてまで、テレビの視聴率を上げたり、雑誌の売り上げを伸ばそうとしたり、そんな時代背景の中マラソンに関する話題もヒートアップしていったのだろうと思います。しかし、あらゆる報道の裏側が明らかになった2019年の今、まだ中山竹道氏の発言についての裏取りをしないで週刊誌報道をそのままVTRにして出してしまうのか、本当に理解に苦しむとともに、この番組に関わった人の中には本気で陸上競技を愛している人がいないのではないかと思ってしまいました。

ただ、番組が生放送で、VTRの最中に抗議の電話が局に入ったのか入らなかったのか、その真偽はわかりませんが、VTRが終わった後にスタジオでの話になった際、MCの安住紳一郎アナウンサーが有森裕子さんに振るような形でその話を出し、「自分なら這ってでも……」という内容を紹介したにとどまりました。本当ならソウルオリンピックに出場した瀬古利彦選手と不可解な選考基準によって落選した工藤一彦氏とのVTR対面を間接的に演出するよりも、当時の記事を湾曲して週刊誌に掲載した責任者が中山竹道氏のところに行って直接謝罪させるくらいの方が良かったのではないかと思います。ちなみに、スタジオの後ろに設置されている過去の内容を写真とともに紹介したパネルには「瀬古、這ってでも福岡へ来い!」という文字が刻まれていました。これはあくまで個人的な印象ですが、上記のコメントは用意されたものでなく、前半の内容についての批判の声が入ったから急遽行なわれたものではないかと思えて仕方ありません。

いつの世も、売らんがなのために実際の取材内容と微妙にニュアンスを変えて報道するマスコミはいるものですが、今回のマラソングランドチャンピオンシップについても、事前・事後に何らかのマスコミが起因する問題が起こった場合、TBSはどのように報道するのかということまで考えてしまった今回の放送でした。

(番組データ)

マラソン・グランド・チャンピオンシップ 東京五輪代表を懸けた運命の決戦へ TBS
2019年9月11日(水) 20時00分~22時00分(120分)
MC:安住紳一郎、江藤愛 ゲスト:有森裕子、高橋尚子、原晋、土田晃之
ドラマ:徳重聡、三浦理恵子、武井壮、佐藤真弓、手塚とおる、嶋大輔

(番組内容)

順位なのか、タイムなのか、はたまた実績なのか…。選手も国民もスッキリしない、あいまいな選考システム。その裏には、誰も踏み込めないマラソン界のタブーが存在していた…。ソウル五輪代表選考で、あいまいな選考基準によって、代表の座を逃した悲運の男が生まれたた。この騒動は、日本マラソン界最大の事件として、これまで誰も触れることができなかったのだ。あれから32年、悲劇のランナーが、封印してきた禁断の選考問題を初告白。そして今回、瀬古が長年心にしまっていた思いを初めて彼に伝える。「人生を変えてしまって申し訳なかった…」その思いを聞いた男は…。


CBCテレビ「ゴゴスマ」問題の根底にあるもの

毎日の事件を報道し、番組に出演しているコメンテーターが私見を述べるというのがワイドショーの定番ですが、出演者同士のバトルが大きな騒動になることもままあります。お互いの主義主張が違う中で、放送時間が限られている中で討論するわけですから、時には声が大きくなり、相手を罵倒することもこれまでのテレビの歴史の中では何度も起こってきました。

そんな騒動を引き起こす原因の一つとして、実は主演者同士をまるで闘犬の犬のようにけしかけてハプニング的にバトルを大きくして番組を注目させたいという番組制作側の決して表面には出さない意図というものがあると思います。そうした意図を暗黙のうちに了承し、騒動にならない程度のバトルを繰り広げるある種の「安全なトラブルメーカー」がこうした番組では重宝される傾向があるのですね。それこそ、テレビ朝日の今も続く名物番組である「朝まで生テレビ」の創世記のメンバー、映画監督の大島渚氏などはそうしたテレビ制作側の意図を汲み取って視聴者が寝落ちするのを見計らうように「バカヤロー!」と叫んだりすることは、松尾貴史さんがギャグにしたりしていました。

いわゆる「ヘイトスピーチ」をテレビのコメンテーターが行なうことについてはここでは書きませんが、同じCBCテレビで平日お昼に放送されている「ゴゴスマ」の騒動の一つとなっている東海大学教授の金慶珠氏と、タレントの東国原英夫氏との番組内での言い争い以上の罵倒については、その言動を謝罪した東国原英夫氏の言い訳の中に、喜怒哀楽の激しいキャラクターを演じるタレントと、そうしたキャラクターを出演させることで番組の注目を集めたい番組制作側との蜜月さというのが謝罪の態度にも表われていたような気がしました。

というのは、東国原英夫氏は自身の発言について謝罪したものの、その中で一定の言い訳も付けてきたのです。あらかじめ共演者の顔ぶれがわかっていて、金慶珠氏と共演する予定であることがわかっていれば、決して出演しなかったと発言した点について、事前に番組スタッフから渡された資料に記された出演者一覧の文字が「小さすぎて読めない!」とハズキルーペのCMのような制作サイドへの責任転嫁のような主張をしてきたのです。

個人的にはこの言い訳については、東国原英夫氏の番組サイドへの不信感から出たものではないかと思えます。これは想像でしかありませんが、小さなトラブルを望んでいるところもあるかも知れない番組制作側が、騒動が大きくなり東国原氏およびCBCへの批判が大きくなってくると、手のひらを返すような対応を東国原英夫氏に行なってきたのではないかと考えると、ちくっと番組スタッフに対しての批判を入れながら謝罪を行なった東国原氏の気持ちも少しはわかる気がするのです。

ただ、そのような番組の裏の顔を垣間見せるような言動を、テレビに映っている中でしてしまう人というのは、テレビ制作の側からすると「使いずらい」というイメージが大きくなってしまいます。今後、東国原氏のタレントとしての活動がどうなるかはわかりませんが、今のようにテレビに毎日出てお金を稼ぎたいなら主義主張よりもしっかり反省した体を装った方がいいわけです。

逆に言うと、全く問題を起こさないで適度に言いたいことを言っているようなタレントや文化人というのは、ほとんどテレビ制作側の犬のように、まさに闘犬の犬のようにテレビ画面の中で動かされているという風に捉えた方がいいということでしょう。好き勝手をやっているようでいても決して暴言を吐かないあの人この人というのは多くの人の頭に浮かぶのではないかと思うのですが、そういった人の出演する番組というのは総じて内容が乏しいものだということを今回の騒動は教えてくれたように思います。


後からの言い訳は傷口を広げるだけか?

私のいる静岡県内では、東京で7月5日深夜(実際の放送時間は7月6日未明)に放送された今回紹介する「2019年上半期のTBS」という番組が8月4日の午後という変則的な時間に放送されたので、今さらという感じもする方もいるかも知れませんが、このブログでも触れさせていただいた「世界リレー」中継に関するTBSの見解について司会の安住紳一郎氏がコメントしましたので、今回はその内容についてのみになりますがコメントの内容を検証していきたいと思います。

この「世界リレー」についての中継におけるドタバタ劇については、以前にこのブログで紹介させていただきました。

スポーツのライブ中継では何を伝えるべきなのか

上のリンクの中で3つの問題だと思った点を指摘させていただきました。それは以下のような事です。

・その1
世界リレー初日の地上波の放送前にBSで競技内容が中継されていたものの放送時間が終わってしまって中継できなかったレースについて、地上波内ではキャスターを含め全く伝えなかったこと。

・その2
地上波の中継でも全レースを中継する事ができず、直後にある通常の生放送番組「新・情報7DAYS ニュースキャスター」でも、番組が始まってレースの内容を中継するのに10分くらい時間がかかり、結果が気になる視聴者は、安住紳一郎氏とビートたけし氏の雑談にしばし付き合わされたこと。

・その3
翌日の第二日の中継におけるレース結果について、字幕では正しい結果が発表されているのに、本来はその事をきちんと伝えるべきキャスター(織田裕二氏・中井美穂氏)の元には伝わっておらず、しばし推測と憶測を元にしてのコメントが続いたこと。

このうち、番組で安住紳一郎氏が弁解した点はご自身が携わった「その2」の部分のみで、会社として陸上についてはかなり長いこと「TBSの顔」となっているお二人の事については最後まで全く触れませんでした。この点については、番組の最後に安住氏は「責任は全て私にある」と言っていましたのでここで会社やメインキャスターの事を書いても仕方がないと思いますので、今回は直接ご自身の問題として弁解した「その2」についてその内容とそれに対するコメントをしていきたいと思います。

まず、安住氏はスタッフから、世界リレーについてはタイムテーブル通りに進まないという事が想定外で、さらに中継できなかった競技についても「結果のみを伝えれば良い」と言われていたことを明かしました。しかし、この状況でレースの内容を伝えることは大事だということもあり、急遽録画したレース内容を「新・情報7DAYS ニュースキャスター」で放送するためには、元々構想になかった事なので、すでにスポーツ中継のスタッフが保存していた動画データから問題となったレースのスタートからゴールまでの部分を切り出し、さらに放送できるように編集するために7分から8分の時間がかかってしまうので、それまでの時間をビートたけしさんとのおしゃべりでつないでいたという説明でした。

ただ、そうした言い訳をするなら、番組開始冒頭にそういう話をした方が印象が良かったのではないかと普通に思えるのですが。安住氏からすると、自分の番組にも予定があり、放送すべき内容を削ってまでレースの録画放送をすることでこれ以上自分ら番組に責任はないと放送時には思っていた感じもあります。

もちろん、元々はタイムテーブルを発表し、さらにテレビ中継のある中でどんどん予定時間を過ぎてしまう世界リレーの運営サイドの問題であるのに、たまたまスポーツ中継後の生放送を担当していたキャスターが責任を問われるというのは厳しい話です。しかしアナウンサーがテレビ局の顔である以上、局に対する批判を和らげるためにも、番組開始直後のコメントをもう少し考えて行なった方がここまでのTBSに対する非難は大きくならなかったのではないかという点を考えると、全く安住氏やビートたけし氏に責任はないのかというと、少し考えてしまいます。

そして、今回の放送を見て改めて、TBSアナウンサーのレベルでは「世界陸上」のような大きなイベントの動向について文句も言えないのではないかと番組を見た側としては考えざるを得ません。この番組のホームページでは「TBSへのご意見を募集中」という投稿リンクがありましたが、どちらにしてもメインキャスターにご退場いただいたり、番組における発言内容を考えてくれと意見しても聞く耳を持たないんでしょと思わざるを得ません。やはり、こうした何が起こるかわからないスポーツ中継はインターネットによるキャスター無しの同時中継を責任を持ってやってもらう方が、同じような弁解を何回も安住紳一郎氏にさせるよりも楽に責任逃れができるのではないかと個人的には思います。

(番組データ)

安住紳一郎と2019年上半期のTBS★安住紳一郎と「水ダウ」藤井健太郎初タッグ! TBS
2019/07/06 00:20 ~ 2019/07/06 01:20 (60分)

(番組内容)

TBSで今年の上半期に起きた様々な出来事を振り返り、ハードTVウォッチャーとしても知られる安住紳一郎が出演者として…またTBS社員として…独自の目線で徹底解説!

日曜早朝に放送している『TBSレビュー』(TBSおよび放送全般が抱える問題について幅広く取上げ検証していく番組)を思いっきり柔らかくした感じの自己批評風バラエティ。アナウンサー安住紳一郎が独自の目線でこの1月~6月のTBSを振り返り、ときに現場の舞台裏を語りつつ、後輩アナウンサーからの疑問や悩みにも向き合いながら、上半期を締めくくります。

【MC】安住紳一郎(TBSアナウンサー)
【出演】日比麻音子(TBSアナウンサー)、山形純菜(TBSアナウンサー)、宇賀神メグ(TBSアナウンサー)


タレント事務所がテレビに与える影響の限界

テレビには芸能の部門においても「タブー」というものが存在していて、それが2019年の6月から7月にかけて、「ジャニーズ事務所」や「吉本興業」において、普通にテレビを見ている一般視聴者にまでその内容が知られることになってしまいました。

元々特定の事務所に所属していたタレントが、円満に退社することができなくなった場合、今回名前の出た事務所に限らず、元の事務所が目に見えない形で事務所を出たタレントに直接ではなくテレビ番組に出られないように「あの人を出すならうちの所属タレントをテレビに出さない」というような形でいやがらせをすることはまず間違いなくあったのではないかと思います。具体的な例については、今話題になっている島田紳助さんがプロデュースした「羞恥心」という男性3名のアイドルグループにおいて、一気の面では一番だった? とも思える野久保直樹さんだけを私たちはテレビで見ることはできないでいます。つるの剛士さんや上地雄輔さんは普通にテレビに出ているのにどうしてなのでしょう。

その理由は野久保直樹さんが勝手に自分のブログで渡辺プロダクションからの独立を一方的に宣言したことと関係があると言われていますが、それまでの芸能活動について、あまり所属プロダクションから良い待遇を受けられない中、なりふり構わず潜水の日本記録を作るなど体を張ってテレビに出ていく中で、あまり所属プロダクションからサポートを受けていなかったと感じていたからかも知れません。

何事も多くの人間の所属する所には派閥というものがあり、プロダクション上層部に可愛がられれば優先的にテレビに出してもらえることもあり、逆の立場にいる人間というのはそれこそ体を張ってでもチャンスを掴みたいと必死になるわけですが、その努力が報われた時にはきちんと面倒を見てあげるようにすれば、野久保直樹さんもいきなりの独立宣言など出すこともなかったのではないかと今になって考えたりするのです。

今回の吉本興業の騒動は、当然雑誌FRIDAYで指摘された反社会的勢力にいる人からお金をもらって飲み会に出たタレントに否があることに間違いはありません。しかし社長の会見を見ると、もし所属タレントの中でも上層部からあまり良く思われていない人にとっては、突然のタレントの契約解除という会社の発表には、明日は我が身であると思えてしまうような会社の勢力図というものを、これもまた一般の視聴者に広く伝えてしまったというところがあります。

ちなみに、私は吉本興業社長の会見を「AbemaTV」での生中継で見ていました。ネット中継では延長し放題なので、たとえ吉本興業がテレビ局に圧力を掛けて地上波での放送を差し止められたとしても、ネット中継や現場で会見の内容を録画してYou Tubeに流すというような事は止められません。

その後のワイドショーでも明らかに現吉本上層部寄りの論評をするメディアと、芸人側に立つメディアとの差が目立ちますが、これもいかに事務所が圧力を掛けたとしても、現場で起こった事が広くネットで見られるようになってくると、ごまかしというのはなかなか効きません。逆にそうした事をわかっている人が増えたことにより、本来もっと糾弾されるはずの宮迫博之・田村亮というタレントに対するバッシングが少なくなり(会見の内容が評価された部分はあるでしょう)、吉本興業および上層部と深い関係を持つタレントの方に関心が向くことになってしまいました。

今後はある程度は膠着状態が続く可能性もありますが、そもそもの吉本バッシングの原因である「反社会的勢力との交遊」という点がさらに白日の元にさらされる可能性もなくはありません。

現在の吉本興業は政府から事業をもらっている関係もあって、それまでの暴力団との関係を断ち切るために現会長・社長のような「師匠を持たないタレント」のはしりとなったダウンタウンのマネージャー出身の人物を登用し、それまでの会社としての暴力団との付き合いを断とうと努力してきたと思うのですが、逆に切られた方にしては、「この恨み晴らさでおくべきか」という気持ちを持ち続けている人がいるかも知れません。この辺については、吉本興業がどのように反社会的勢力との関係を断ってきたのかわからないのではっきりとしたことは言えませんが、今回FRIDAYに出たような写真はもっとあり、そこに写っている人物は、現在「男気」を見せている人であるかも知れません。

悪い奴がお金を目的にしないで脅すようなことがあれば、お金や圧力を掛けての解決というのは期待できませんし、少なくともそうした吉本興業が表ざたにしたくない写真があったとしても、近いうちに一般のメディアに向けて流される可能性もあると見ます。そうした事に心当たりがある場合は、タレントも事務所も、正直に話をしてきちんと釈明をするということを徹底しないと、さらにとんでもない事になる場合も出てきます。

ただ、そうした最悪のシナリオは政治家が介入して納めるという手段もあるのですが、それも必ずしも吉本興業が思う通りに解決できるかどうかはわかりません。そもそもイメージがそこまで良くない吉本興業のために動く政治家が出てきたとしても対応を誤れば、自分の政治生命にも影響が出るかも知れないわけですから。

今回の騒動は、古い体質の芸能事務所が今まで好きなようにタレントを使って設けてきたツケが出てきたと個人的には考えています。きちんとツケを払い、謝るべきところはきちんと謝った上で再生への道を進んで欲しいと思っています。


東京オリンピックでも「メダル至上主義」放送は続くのか

今回のNHK大河ドラマは途中で主人公が変わり、注目される種目も変わるというなじみのない展開になり、今回が阿部サダヲ演じる田畑政治氏がメインになって2回目の放送になりますが、まだ金栗四三氏の出番もあります。

ちなみに金栗四三氏はオリンピックのマラソンでは全くメダルには手が届かなかった選手で、そういう選手にスポットライトを当てたことで、いわゆる「勝利至上主義」をストレートに押してこないこれまでのドラマ展開をそのつもりで見ていたのですが、けたたましい調子でまくしたてる田畑氏の勢いそのまま、第二部は一気に「オリンピックは参加することに意義がある」ではなく、「オリンピックはメダルを獲ってこそ」という「メダル至上主義」の匂いを感じてしまった今回の放送でした。

今回のメインキャストははからずもアムステルダムオリンピックに日本女子選手として初めて参加し、金メダルを狙っていた100m走の準決勝で敗れたことで、一度も走ったことのない800m出場を役員に直訴し、何とか銀メダルを獲得して面目を施した(当時の期待された状況からするとドラマのようにそこまで手離しで喜べなかったと思うのですが)人見絹枝選手でした。

もちろん、女性の陸上競技の歴史の中では人見絹枝という存在は注目に値するでしょうが、あれほど日本のマラソンのために尽力した金栗四三氏が人見絹枝氏の結果だけを見て喜ぶシーンだけしか出さず、マラソン競技について全く触れなかったのはどう考えてもおかしな事です。落語のシーンをカットしても40キロ付近までトップで通過し、結果四位入賞した山田兼松選手の名前とそのレースの再現は入れないと、何でいままで金栗四三氏をメインで出してきたのか? もしかしてドラマ制作側の意図としては金栗四三氏は「マラソンの先駆者」ではなく「女子陸上普及の立役者」として出したかったのか? という風にも思えてきてしまいます。

それにひきかえ、前回まで全くドラマ的には出てこなかった陸上の三段飛び金メダリストの織田幹雄氏、そして水泳でも唐突に「新人」として出現し、前回出た東大地下の温水プールでは全く練習していないような(前回の筋ではこのプールを作って練習したことで日本の水泳チームが力を付けたように描かれていました)200m平泳ぎの金メダリスト鶴田義行氏はちゃっかりと出番がありました。

まさに、「メダリストはこれまでのストーリーとは無関係でもしっかり役者を付け名前を出すがメダルを取れなければストーリーに関係があっても名前すら出さない」という感じになってくるのです。

その予感が増大するのが、当時まだ小学生だったと思われるベルリン・オリンピックの平泳ぎで金メダリストになる前畑秀子選手が人見絹枝選手に続く日本人女子アスリートの象徴として出てきたことです。前畑選手を出した以上、戦前のベルリン・オリンピックについて触れないわけにはいかないでしょうが、果たしてそこで、当時の日本陸上界にとって悲願であったマラソン金メダルと銅メダルを獲得した朝鮮半島半身のランナー孫基禎・南昇龍の両選手の事はどう扱うのか。また、後のオリンピックチャンピオンになるザトペック選手が陸上を始めるきっかけになったという5000mと10000mでフィンランドの3選手と互角に渡り合うも両方のレースで無念の四位となった村社講平選手は出てくるのか、次回に向けて大変に楽しみになってきました(^^;)。

個人的にはメダルだけに執着し、メダリストばかり注目する状況というのは良いとは思わず、逆に四位入賞者にシンパシーを感じてしまうことがあります。マラソンでは2大会連続四位に入った中山竹通選手の凄さが印象に残っていますし、同じく2大会連続四位ということでは冬季五輪スキーモーグルの上村愛子選手の頑張りはメダリストに全く引けを取りません。しかも上村選手の夫はトリノオリンピックスラロームで四位入賞を果たした皆川賢太郎選手であるというところにもぐっとくるものがあります。

今回の大河ドラマは多くの視聴者を東京オリンピックに向けて盛り上げるために企画されたものだということはわかって見ていますが、今回の内容はあまりにもメダル至上主義が過ぎているという印象でした。次回に向けていくらかの軌道修正があるのか、とにかく次回を楽しみにしておきます。

(番組データ)

いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~(26)NHK総合
7/7 (日) 20:00 ~ 20:45 (45分)
【出演】
阿部サダヲ,中村勘九郎,桐谷健太,斎藤工,三浦貴大,大東駿介,上白石萌歌,柄本佑,森山未來,神木隆之介,荒川良々,川栄李奈,じろう,永山絢斗,菅原小春,根岸季衣,萩原健一ほか
【作】
宮藤官九郎

(番組内容)

アムステルダム五輪が迫り、体協が相変わらず資金難に苦しむ中、田畑政治(阿部サダヲ)は記者人脈を活かし、政界の大物、大蔵大臣の高橋是清(萩原健一)に選手派遣のための資金援助を直談判。本大会では女子陸上が正式種目に。国内予選を席巻した人見絹枝(菅原小春)はプレッシャーに押しつぶされ、期待された100mで惨敗。このままでは日本の女子スポーツの未来が閉ざされるー。絹枝は未経験の800mへの挑戦を決意する。


サブチャンネルを有効活用しないNHKの姿勢はデジタル化に反するか

2019年の陸上の大きな大会が地上波のテレビ中継とのからみで連続してトラブルになっているように私には思えます。今回は2019年の6月29日と翌日の30日に起きたNHKが放送権を持っていると思われる陸上の日本選手権について思うところを書いていこうと思います。

6月29日は大阪で開かれた各国の首脳が集うG20の会合がありました。その模様を伝えるニュースをNHKでは放送していたのですが、16時からの放送開始時にはトランプ大統領のスピーチをLIVEでずっと流していて、一時はネットを含むどのメディアでも中継がされない状況になってしまいました。

Twitterなどの情報では、直接NHKに抗議の電話を掛け、デジタル放送に切り替わる時にそのメリットとして言われていた「サブチャンネル」での放送についても出来ないという話のみだったということです。

この「サブチャンネル」というのは、同じNHKのBSで大リーグ中継を見ている方にはおなじみかと思いますが、画質は落ちるもののデジタルの特性を生かしてメインチャンネルからは外れるもののメインチャンネルで放送を延長するのではなく、通常の番組はメインチャンネルで行ない、試合終了まではサブチャンネルで伝えることで、大リーグを見たい人も株価が気になる人も(中継終了予定時刻からの番組はニュースや株価を知らせる番組が多い)どちらの人も見たいテレビ番組を見ることができるという、テレビがデジタル化されて良くなったと思える部分です。

よく、民放の地上波についてはサブチャンネルでの放送を嫌がるという向きがある傾向があることが知られています。というのも、民放の経営というのはスポンサーからの広告料金でまかなわれているというところがあるので、スポーツ中継を延長する場合、サブチャンネルになってしまうとメインチャンネルでドラマを放送した場合、広告はメインチャンネルで流れる契約だろうと思うので、多くの人がサブチャンネルに回してしまってメインチャンネルで流すコマーシャルを見てくれなくなる可能性があります。

やはりスポンサーあっての民放ということになると、ドラマとスポーツの両方を流したいからといって安易にサブチャンネルを使うと現状では広告の契約上ややこしいことになるのかも知れません。しかし、こうしたことはスポーツ番組の直後に予定されている番組に広告を出しているスポンサーにとっては、現状でも予定していた時間に広告を流せないことになってしまうので、こうした突発的な状況に備えた契約をしているのなら、改めてサブチャンネルを使うことを前提とした契約というのも作ってもいいのではないかと思います。それくらいサブチャンネルが活用されていないということを感じてしまう中、今回のNHKもサブチャンネルを活用してくれませんでした。

少なくともNHKにはスポンサーはなく、サブチャンネルについても大リーグ中継ではやり慣れているため技術的な問題もないと思えます。また、地域的な災害が起こった場合にも、タイムテーブル通りの放送を続けながらサブチャンネルでニュースを流すということも過去にはあったと思います。

しかしながら、翌日の30日にも、二日連続で16時から開始予定の陸上の日本選手権が時間通りに始まりませんでした。この日はまたアメリカのトランプ大統領が韓国と北朝鮮の国境の板門店を訪れ、北朝鮮の金正恩氏との会合の模様を流し続けたために起こりました。結局15分遅れの16時15分から中継は始まりましたが、それまではいつ始まるかわからず、さらに状況の変化によっては「動きがあり次第お伝えします」というテロップが流れ、もし本当に何かあったら再度中継が中断されるのかと思いながら見ていましたが、こういう時にこそサブチャンネルを使ってスポーツ中継や突発的なニュースを流すことは技術的にもできたでしょう。

その後の事についてもきちんとここで記録しておきます。16時54分頃に少しの間ニュース画面に切り替わり、さらに16時56分から17時15分までまたニュース画面に強制的に切り替わり競技を見られなくなりました。女子5000mのレース中継はテレビではカットされたことはその後の中継でも直後に触れていません。ただ、個人的には前日のテレビ中継が中断した時の情報でネットによるライブ配信が復活しているということがあったので、YouTubeから日本陸連のチャンネルを見ることもできましたが、ここまでできるというのはそれなりにわかっていないとだめなので、多くの人は結果を気にしながらニュースを見ていたのではないかと思います。

今後「臨機応変にサブチャンネルを活用した放送」がNHKに出来ないというなら、サブチャンネルとは違いますが複数のスポーツを並列して生中継することができるネットのスポーツチャンネルに放映権を潔く譲るべきです。ネット中継なら天候の悪化で見られなくなるようなBSでよくある事も無くなりますし、何よりスポーツチャンネルなら突発的なニュースが入っても中継を中断されることもありません。そうした事が無理そうな、東京オリンピックの中継については、NHK・民放が共同でテレビ以外にもネット同時放送のシステムを作り伝えるような事でもしないと、今回の事とは比べ物にならない騒動が起こるのではないでしょうか。ただそれは、鳴り物入りで切り替えたデジタル放送の利便性を放棄した結果でもあります。4K8K放送を大々的にアピールするよりもサブチャンネルの有効活用ができなければ、テレビはますますその信頼性を失うのではないでしょうか。


「闇営業での反社会勢力との交友」をネタにしたバラエティがあった

吉本興業は所属タレント11人が闇営業で反社会勢力(振り込め詐欺のグループ?)から金銭をもらっていたことを理由にして活動を自粛させると発表しました。ちなみにワタナベエンターテインメント所属のタレント2人についても謹慎処分になったそうです。そうした事は過去に遡ると常態化していたのでは? と思われることもありますが、私が克明に覚えているのが、この件を題材にした「ドッキリ企画」を行なった番組があったことです。改めてその番組のデータを紹介しましょう。

(引用ここから)

(番組データ)
金曜★ロンドンハーツ 2時間スペシャル 予想外すぎ!涙と笑いの新作ドッキリSP テレビ朝日
2018/10/26 20:00 ~ 2018/10/26 21:48 (108分)
【出演者】ロンドンブーツ1号2号/志尊淳/カンニング竹山、くっきー(野性爆弾)、小宮浩信(三四郎)、コロコロチキチキペッパーズ、チョコレートプラネット、Niki、藤田ニコル、藤本敏史(FUJIWARA)、山崎弘也(アンタッチャブル)、渡辺直美、他 [50音順]

(番組内容)

ブレイク前から現在に至るまで渡辺直美を支えてきた、「ある男性」に感謝の気持ちを伝えるために、直美がサプライズドッキリ企画を。しかし、決行当日に思いもよらない展開に…。直美も涙してしまった波乱の結末とは!? そして、現代社会で重要視されるコンプライアンスをおとり捜査!! 闇営業、怪しい薬、反社会的勢力からどんなに甘い誘惑があっても断る事ができるか!?チョコプラやニコル、くっきーの新作ドッキリも!

(引用ここまで)

お笑いコンビのコロコロチキンペッパーズ(よしもとクリエイティブ・エージェンシー東京本部所属)の「ナダル」さんがドッキリのターゲットで、闇営業のお金につられてつい反社会勢力と思しき(これは番組の仕込んだもの)男性にとり入ってしまうナダルさんのモラルの無さを嘲笑気味に笑い飛ばした事を覚えています。

この頃からナダルさんは「人間性を疑われる」ようなキャラクターでブレイクした感があり、当時は笑って見ることもできたのですが、この番組の出演者の中には今回よしもとから発表があった謹慎処分を受けた人物が一人混ざっており、もし彼がこのドッキリのVTRを見て心から笑っていたとしたら、もはや自分のやっていることを棚に上げての人のダメさ加減を笑っていたことになります。

そもそもこんな「闇営業で反社会勢力の人間からお金を受け取るか」ということをドッキリのネタにするということは、もはや芸人たちは当り前にこうした誘惑を受け、今回処分を受けていない人であっても実は裏で同じような事をやっていると思われるような状況があるからなのではなかったのでしょうか。だからこそドッキリにもリアリティがあったと考えることもできるという風に考えが及んでいくと、当時のロンドンハーツのスタッフもちょっと暴走してしまったのでは? と思わざるを得ません。

テレビバラエティは多少暴走するくらいでないと面白くないという意見を持たれる方もいるのではないかと思います。ただ、今回の場合は具体的に「振り込め詐欺」を行ない善良な視聴者の懐からなけなしのお金をだまし取った人達からお金を受け取って自分の遊びや生活のために使っていたということになるわけなので、もはやタレント本人がどんなにお詫びしても許されない可能性があります。単に他人の悪口を言ったり放送禁止用語(実際は各放送局の定めた自粛すべき言葉のリストにある言葉)を連呼したり、全裸になったりする「暴走」の場合は時間とともにほとぼりが冷める事がありますが、詐欺被害者はそのタレントを見ただけで過去の過ちを思い出したりするかも知れないので、なかなか難しい部分があります。

今回の報道では主にタレント個人に対する処分ということだけですが、今回あえて過去に遡って特定の番組を紹介させていただくことで、番組の企画を考える中でも注意したいものが存在するということを紹介させていただきました。